(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-26
(45)【発行日】2022-11-04
(54)【発明の名称】アルミロール端面揃え装置
(51)【国際特許分類】
B21C 47/02 20060101AFI20221027BHJP
【FI】
B21C47/02 E
(21)【出願番号】P 2016067160
(22)【出願日】2016-03-30
【審査請求日】2019-02-20
【審判番号】
【審判請求日】2021-02-26
(73)【特許権者】
【識別番号】307016180
【氏名又は名称】地方独立行政法人鳥取県産業技術センター
(73)【特許権者】
【識別番号】594001041
【氏名又は名称】株式会社片木アルミニューム製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100116861
【氏名又は名称】田邊 義博
(72)【発明者】
【氏名】新見 浩司
(72)【発明者】
【氏名】福谷 武司
(72)【発明者】
【氏名】片木 威
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 貴浩
(72)【発明者】
【氏名】矢瀧 敬三
(72)【発明者】
【氏名】永原 巧也
【合議体】
【審判長】見目 省二
【審判官】田々井 正吾
【審判官】松原 陽介
(56)【参考文献】
【文献】実開昭64-003742(JP,U)
【文献】特開平03-052709(JP,A)
【文献】特開平10-230319(JP,A)
【文献】特開2008-290158(JP,A)
【文献】実開平06-041903(JP,U)
【文献】特開平08-238522(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21C 47/00 - 47/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
連続的に供給される一定幅の
アルミ薄板の帯を巻きつける軸棒と、
軸棒を回転させアルミ薄板
の帯を巻き取る回転手段と、
軸棒に巻き付くより上流の位置にて、送られてくる帯の縁の位置ずれの量を検知する検知手段と、
検知手段より上流の帯の左右にそれぞれ配したローラであって、独立して、帯の左側または右側を押し下げて厚み方向に圧力をかけるローラと、
検知手段による位置ずれの量に基づき、はみ出している側のローラを帯に押し当て、ローラを押し当てる圧力またはローラを押し当てる時間を制御して位置ずれをなくすローラ制御手段と、
を具備し、
アルミロールを形成することを特徴とするアルミロール端面揃え装置。
【請求項2】
軸棒に対して複数のアルミ薄板
の帯を巻きつけ、
検出手段と左右それぞれのローラとを組にして、各アルミ薄板
の帯に配したことを特徴とする請求項1に記載のアルミロール端面揃え装置。
【請求項3】
アルミ薄板
の帯を供給方向に切断して前記複数のアルミ薄板
の帯に分割する切断刃を上流に設けたことを特徴とする請求項2に記載のアルミロール端面揃え装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、帯状の金属薄板を巻き取り、その端面をきれいに揃える金属ロール端面揃え装置に関する。
【背景技術】
【0002】
トランスは一般的に、絶縁シートと導電シートとが交互に巻かれた構成を有する。発電所や変電所には大型のトランスが備わるが、これも原理は同じであり、導電シートには、たとえば、厚みが1mm~2mm程度、幅が500mm~800mm、長さは500m~1500mの帯状の金属薄板が用いられる。
【0003】
トランスを製造する際には、金属薄板と絶縁シートとを揃えて捲回していくが、このとき、金属薄板の送り出し側に精度が求められ、端面の揃った金属薄板のロールが必要とされる。
【0004】
従来では、ロール端面を揃える方式として、
図4(a)に示したような、巻き付ける軸自体を軸方向に前後させる端面移動調整方式や、
図4(b)に示したような、一定のテンションをかけ続けて巻き取る、ルーフピット・テンションパッド方式などが知られていた。
【0005】
しかしながら、従来の技術では以下の問題点があった。
生産性の観点から巻取速度は、500mm/sec以上を要求され、500mm以上もある巾を1mm以内のずれで常時収める必要があるため、
図4(a)の方式では、油圧を用いて巻取側を前後せざるをえず、油圧駆動部分も含めると装置が極めて大がかりとなる、という問題点があった。
【0006】
また、この方式では、一軸に対して一つのロールしか形成できないので、生産性が低いという問題点があった。
【0007】
図4(b)の方式では複数ロールを同時に巻き取ることが可能であるが、一旦垂れ下げて巻取張力を調整するピットが必要となり、こちらも装置が大がかりとなるという問題点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2001-1023号
【文献】特開2002-274718号
【文献】特開2011-42459号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は上記に鑑みてなされたものであって、装置の大型化を招来せず端面の揃った金属ロールを形成可能な装置を提供することを目的とする。
また、一軸で多数のロールの形成も可能な金属ロール端面揃え装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1に記載の金属ロール端面揃え装置は、連続的に供給される一定幅のアルミ薄板の帯を巻きつける軸棒と、軸棒を回転させアルミ薄板の帯を巻き取る回転手段と、軸棒に巻き付くより上流の位置にて、送られてくる帯の縁の位置ずれの量を検知する検知手段と、検知手段より上流の帯の左右にそれぞれ配したローラであって、独立して、帯の左側または右側を押し下げて厚み方向に圧力をかけるローラと、検知手段による位置ずれの量に基づき、はみ出している側のローラを帯に押し当て、ローラを押し当てる圧力またはローラを押し当てる時間を制御して位置ずれをなくすローラ制御手段と、を具備し、アルミロールを形成することを特徴とする。
【0011】
すなわち、請求項1にかかる発明は、簡便な機構により端面を揃えることができる。具体的には、はみ出し側にローラを押し当ててはみ出しをもとに戻す(規定値以内に収める)ことができる。また、従量的な動的制御を実現する。
【0012】
なお、軸棒は、金属薄板の湾曲癖が強くない方が良いので、大径、たとえば、直径300mm程度とするのが好ましい。
ローラは、車輪様でも円筒様でも球様でもよく、押圧ないし押し込み(押し下げ)できるものであれば特に限定されない。
【0013】
請求項2に記載の金属ロール端面揃え装置は、請求項1に記載の金属ロール端面揃え装置において、軸棒に対して複数のアルミ薄板の帯を巻きつけ、検出手段と左右それぞれのローラとを組にして、各アルミ薄板の帯に配したことを特徴とする。
【0014】
すなわち、請求項2にかかる発明は、一軸にて複数ロールを形成することができる。
なお、ローラ制御手段は、それぞれのローラを制御できるのはいうまでもない。
【0015】
請求項3に記載の金属ロール端面揃え装置は、請求項2に記載の金属ロール端面揃え装置において、アルミ薄板の帯を供給方向に切断して前記複数のアルミ薄板の帯に分割する切断刃を上流に設けたことを特徴とする。
【0016】
すなわち、請求項3にかかる発明は、要求される製品仕様にあわせて効率よく複数ロールを同時に形成することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、装置の大型化を招来せず端面の揃った金属ロールを形成可能な装置を提供することができる(請求項1)。
また、一軸で多数のロールの形成も可能な装置を提供することができる(請求項2,3)。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図2】ロールによる押し当ての様子を示した説明図である。
【
図3】一つの軸棒に対して二つの金属ロールを形成する揃え装置の構成例を示した概要図である。
【
図4】従来の揃え装置のうち、端面移動調整方式(a)と、ルーフピット・テンションパッド方式(b)を示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照しながら詳細に説明する。ここでは、上流から送られてくる、切れ目のない巾500mm、厚み1.5mmのアルミ薄板Aの帯を、端面を揃えてロール状に巻き取る例について説明する。なお、以降では、本発明の金属ロール端面揃え装置を、単に揃え装置と称することとする。
図1は、揃え装置の外観構成図である。
図2は、ロールによる押し当ての様子を示した説明図である。なお、説明の便宜上、各構成部は必ずしも縮尺を同じとせず描画している。
【0020】
揃え装置1は、軸駆動部10と、センサ20と、押圧部30と、制御部40と、を有する。
【0021】
軸駆動部10は、軸棒11と、駆動部12と、軸受13と、により構成される。
軸棒11は、直径300mmの円柱であり、ここに薄板Aを巻き付ける。なお、ロール状に巻き付けると薄板Aには癖がつきやすくなるが、曲率が小さいほど(直径が大きいほど)癖が残りにくいので、軸棒11は大径としている。
駆動部12は、軸棒11を一方向に回転し軸棒11による薄板Aの巻き取りをおこなう。最終的に外径約700mmのロールを形成していくが(内径は300mm)、薄板Aが軸棒11に巻き付くにしたがってロールが太くなるため、アルミ薄板Aの移送速度(巻き取り速度)が500mm/secとなるように駆動部12はその回転速度を調整するようにしている。なお、駆動に際しては、モータを介したベルトドライブ方式を採用している。
軸受13は、大重量となるロールを、軸棒11による片支えとならないように、軸棒11の他端を受けて、安定的な回転を実現する。
【0022】
センサ20は、軸棒11による巻き付き位置から500mm上流に配され、アルミ薄板Aの端部をモニタリングする。ここでは、端面へ向けてレーザ光を照射し、透過したか否かで境界(縁)を検出し、規定位置からどれだけずれているか(はみ出しているか、引っ込んでいるか)を検知する透過型レーザセンサを採用している。なお、サンプリングは0.01秒ごととしている。
【0023】
押圧部30は、ローラ31と、昇降部32と、により構成され、センサ20の500mm程度上流の薄板Aの左右に配されている(以降では、軸棒11を背にして右側をローラ31R,左側をローラ31Lと称することとする)。
ローラ31は、直径40mm長さ90mmの円筒ローラであって、軸ホルダ33により自由に回転する。
昇降部32は、この軸ホルダ33を昇降させローラ31の薄板Aへの押し当てまたは引き戻しをおこなう。駆動には、ここではACサーボシリンダを用いている。
図2に、非作動時の状態(a)と、作動時(降下時)の状態(b)を示した。ローラ31が押しあたると、移送されてくる薄板Aは他方のローラ31側へ少しずつ移動していく。すなわち、薄板Aは、ローラ31Rが下がるとローラ31L側寄りとなり、ローラ31Lが下がるとローラ31R側寄りとなる。なお、移動量はローラ31が押しあたる強さまたは時間に依存する。
【0024】
制御部40は、センサ20からずれ量を入力し、設定値である0.5mmプラス、または0.5mmマイナスを超えた場合、はみ出している側のローラ31を降下させるべく昇降部32に降下信号を送出する。
なお、制御部40は、設定値以内に収まったら上昇信号を送信してもよいし、それまでのはみ出し量の推移から、はみ出し速度やはみ出し加速度を算出し、それに基づいて押し当て時間や押し当て強さ(降下深さ)を調整するようにしても良い。
【0025】
揃え装置1の構成は、以上であるので、位置ずれをなくしつつ巻き取って、端面の揃った金属ロールを形成することができる。軸棒11はただ回転するだけであり、軸棒11自体の移動が不要であり、装置構成を大がかりとすることなく、効率的かつ経済的な端面揃えが可能となる。
【0026】
なお、揃え装置は上記の態様に限定されない。
たとえば、上流から供給される幅広のアルミ薄板Aを中途で分割し、それぞれに対して、センサと押圧部と制御部とを有し、軸棒一つで複数の金属ロールを形成することもできる。
【0027】
図3は、一つの軸棒に対して二つの金属ロールを形成する揃え装置の構成例を示した概要図である。なお、ここでは、説明の便宜上、分割された一方のアルミ薄板を薄板A1、他方を薄板A2と称することとする。また上記の説明と同様の構成部分は同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0028】
揃え装置2は、軸駆動部10と、センサ20と、押圧部30と、制御部40と、切断刃50と、を有する。なお、センサ20と押圧部30と制御部40とは、セットとなり、それぞれ、薄板A1と薄板A2に備わる。
【0029】
切断刃50は、押圧部30の上流に配され、軸棒11を介した軸駆動部10による薄板Aの引っ張り力に伴い薄板Aを連続的に二分割していく。ここでは、固定刃を採用しているが、仕様の態様により、回転刃を用いてもよい。
【0030】
下流では、軸棒11に対して、薄板A1によるロールと、薄板A2によるロールがそれぞれ形成される。ここで、それぞれの薄板に対して、それぞれのセットがずれを動的に補正していくので、一回の巻取動作にて、所望の幅(同じ幅であってもよい)の、端面の揃った二つのロールを調製することができる。
【0031】
なお、この例では元の帯状薄板を二つに切断しながら巻き取る例を説明したが、切断刃50を複数設け、形成するロールの数を増やしてもよい。
【0032】
揃え装置2によれば、巻取時間は同じままで、端面の揃った複数のロールを得ることができ、生産性を向上させることができる。また、揃え装置1と同様に装置の大型化も招来しない。
【産業上の利用可能性】
【0033】
以上の説明ではアルミ薄板を対象としたが、これに限らず、他の金属薄板でもよく、更には、ローラの当接によりヨレが生じない、ある程度の厚みがある、または、ある程度の剛性があるシート状素材であれば、同様に端面の揃ったロールを形成することが可能である。
【符号の説明】
【0034】
1,2 揃え装置
10 軸駆動部
11 軸棒
12 駆動部
13 軸受
20 センサ
30 押圧部
31 ローラ
32 昇降部
33 軸ホルダ
40 制御部
50 切断刃