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特許7165294駆動力制御と空調制御の協調制御方法及び協調制御装置
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  • 特許-駆動力制御と空調制御の協調制御方法及び協調制御装置 図1
  • 特許-駆動力制御と空調制御の協調制御方法及び協調制御装置 図2
  • 特許-駆動力制御と空調制御の協調制御方法及び協調制御装置 図3
  • 特許-駆動力制御と空調制御の協調制御方法及び協調制御装置 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-26
(45)【発行日】2022-11-04
(54)【発明の名称】駆動力制御と空調制御の協調制御方法及び協調制御装置
(51)【国際特許分類】
   B60H 1/32 20060101AFI20221027BHJP
   F02D 29/04 20060101ALI20221027BHJP
【FI】
B60H1/32 623N
F02D29/04 B
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018110800
(22)【出願日】2018-06-11
(65)【公開番号】P2019214219
(43)【公開日】2019-12-19
【審査請求日】2021-03-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000006286
【氏名又は名称】三菱自動車工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】240000327
【弁護士】
【氏名又は名称】弁護士法人クレオ国際法律特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大森 将裕
(72)【発明者】
【氏名】大村 寧
(72)【発明者】
【氏名】杉山 興祐
【審査官】町田 豊隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-041246(JP,A)
【文献】特開2018-083562(JP,A)
【文献】特開平11-227446(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0327121(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60H 1/32
F02D 29/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行用駆動源の駆動力制御と、前記走行用駆動源により直接的又は間接的に駆動されるコンプレッサを有するエアコンシステムの空調制御との協調制御を行うコントローラを備える駆動力制御と空調制御の協調制御方法において、
加速要求が有るか否かを判定し、
フロントウインドウの窓晴れ要求が有るか否かを判定し、
アクセル踏み込み操作量やアクセル踏み増し操作量により前記加速要求の大きさを推定し、推定される前記加速要求の大きさに応じて加速後の目標車速を算出し、現在の車速が前記目標車速に到達するであろうと推定される所要時間をエアコンOFF時間として算出し、
前記加速要求有りとの判定結果を入力すると、前記エアコンOFF時間をタイマ時間としてエアコンOFF要求を出力することで、前記コンプレッサを停止して動力性能を確保する加速時空調停止機能を有し、
前記加速要求が有り、かつ、前記窓晴れ要求が無い場合、前記加速時空調停止機能を許可し、前記コンプレッサを停止して動力性能を優先し、
前記加速要求が有り、かつ、前記窓晴れ要求が有る場合、前記加速時空調停止機能を禁止し、前記コンプレッサを駆動して窓晴れ性能を優先する
ことを特徴とする駆動力制御と空調制御の協調制御方法。
【請求項2】
請求項1に記載された駆動力制御と空調制御の協調制御方法において、
前記加速要求は、アクセル開度が加速要求判定閾値以上の場合に加速要求有りと判定する
ことを特徴とする駆動力制御と空調制御の協調制御方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載された駆動力制御と空調制御の協調制御方法において、
前記エアコンシステムによる空調モードを手動選択する場合、窓晴れを要求する空調モードが選択されていると前記窓晴れ要求が有りと判定する
ことを特徴とする駆動力制御と空調制御の協調制御方法。
【請求項4】
請求項1又は2に記載された駆動力制御と空調制御の協調制御方法において、
前記エアコンシステムによる空調モードを自動選択する場合、窓晴れ要求する空調モードの選択情報を入力すると前記窓晴れ要求が有りと判定する
ことを特徴とする駆動力制御と空調制御の協調制御方法。
【請求項5】
走行用駆動源の駆動力制御と、前記走行用駆動源により直接的又は間接的に駆動されるコンプレッサを有するエアコンシステムの空調制御との協調制御を行うコントローラを備える駆動力制御と空調制御の協調制御装置において、
前記コントローラは、
加速要求が有るか否かを判定する加速要求判定部と、
フロントウインドウの窓晴れ要求が有るか否かを判定する窓晴れ要求判定部と、
アクセル踏み込み操作量やアクセル踏み増し操作量により前記加速要求の大きさを推定し、推定される前記加速要求の大きさに応じて加速後の目標車速を算出し、現在の車速が前記目標車速に到達するであろうと推定される所要時間をエアコンOFF時間として算出するエアコンOFF時間算出部と、
前記加速要求有りとの判定結果を入力すると、前記エアコンOFF時間をタイマ時間としてエアコンOFF要求を出力することで、前記コンプレッサを停止して動力性能を確保する加速時空調停止機能を有するカット時間タイマ機能部と、
前記カット時間タイマ機能部からのカット要求と前記窓晴れ要求判定部からの判定結果を入力する実施判定部と、を有し、
前記実施判定部は、
前記加速要求が有り、かつ、前記窓晴れ要求が無い場合、前記加速時空調停止機能を許可し、前記コンプレッサを停止して動力性能を優先し、
前記加速要求が有り、かつ、前記窓晴れ要求が有る場合、前記加速時空調停止機能を禁止し、前記コンプレッサを駆動して窓晴れ性能を優先する
ことを特徴とする駆動力制御と空調制御の協調制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、駆動力制御と空調制御の協調制御方法及び協調制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、エンジンの絞り弁が全開状態であることが検知されると、コンプレッサの作動を一時停止する車両用空気調和装置のコンプレッサ一時停止装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】実開昭56-79645号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来装置は、エアコン作動中、アクセルペダルを所定開度以上踏み込んだ場合、コンプレッサの作動が一時停止されることで、エンジン負荷が低下し、エンジン出力による駆動力を増加させている。しかし、動力性能優先でエアコン負荷を低減(エアコンOFF)し続けると、エバポレータの温度が徐々に上昇し、除湿能力が低下してしまい、フロントウインドウの曇りが発生してしまう。また、フロントデフロスタスイッチONにより、乗員が窓晴れ要求をした場合、動力性能優先でエアコンOFFにすると、窓曇り除去ができない、という問題があった。
【0005】
本開示は、上記問題に着目してなされたもので、窓晴れ要求が無いシーンで動力性能を確保しつつ、窓晴れ要求が有るシーンで窓晴れによる外界視認性を確保することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本開示は、走行用駆動源の駆動力制御と、走行用駆動源により直接的又は間接的に駆動されるコンプレッサを有するエアコンシステムの空調制御との協調制御を行うコントローラを備える。そして、以下の手順による駆動力制御と空調制御の協調制御方法としている。
加速要求が有るか否かを判定する。
フロントウインドウの窓晴れ要求が有るか否かを判定する。
アクセル踏み込み操作量やアクセル踏み増し操作量により加速要求の大きさを推定し、推定される加速要求の大きさに応じて加速後の目標車速を算出し、現在の車速が目標車速に到達するであろうと推定される所要時間をエアコンOFF時間として算出する。
加速要求有りとの判定結果を入力すると、エアコンOFF時間をタイマ時間としてエアコンOFF要求を出力することで、コンプレッサを停止して動力性能を確保する加速時空調停止機能を有する。
加速要求が有り、かつ、窓晴れ要求が無い場合、加速時空調停止機能を許可し、コンプレッサを停止して動力性能を優先する。
加速要求が有り、かつ、窓晴れ要求が有る場合、加速時空調停止機能を禁止し、コンプレッサを駆動して窓晴れ性能を優先する。
【発明の効果】
【0007】
このように、フロントウインドウの窓晴れ要求が有ると、動力性能よりも窓晴れ性能を優先する空調制御が実施される。この結果、窓晴れ要求が無いシーンで動力性能を確保しつつ、窓晴れ要求が有るシーンで窓晴れによる外界視認性を確保することができる。加えて、加速時空調停止機能をそのまま活用し、窓晴れ要求の有無判定を加えるだけで容易に駆動力制御と空調制御の協調制御を組み込むことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施例1の駆動力制御と空調制御の協調制御方法及び協調制御装置が適用されたエンジン車を示す全体システム図である。
図2】エンジンコントロールモジュールに有する協調コントローラの構成を示すブロック図ある。
図3】エンジンコントロールモジュールに有する協調コントローラで実行されるエンジン駆動力制御と空調制御との協調制御処理の流れを示すフローチャートである。
図4】加速要求の有無と窓晴れ要求の有無とが様々な組み合わせとなるシーンにおけるエアコンカット指令の有無を示すタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示による駆動力制御と空調制御の協調制御方法及び協調制御装置を実施するための形態を、図面に示す実施例1に基づいて説明する。
【実施例1】
【0010】
実施例1における駆動力制御と空調制御の協調制御方法及び協調制御装置は、走行用駆動源として搭載されたエンジンにより直接的に駆動されるコンプレッサを有するエアコンシステムを装備したエンジン車に適用したものである。以下、実施例1の構成を、「全体システム構成」、「協調コントローラの構成」、「エンジン駆動力制御と空調制御との協調制御処理構成」に分けて説明する。
【0011】
[全体システム構成]
図1は、実施例1の駆動力制御と空調制御の協調制御方法及び協調制御装置が適用された車載エアコンシステムを含む全体システム構成を示す。以下、図1に基づいて全体システム構成を、エンジン車駆動系1とエアコンシステム2と駆動伝達機構3とエンジン制御系4とエアコン制御系5とに分けて説明する。
【0012】
エンジン車駆動系1は、図1に示すように、エンジン11(走行用駆動源)と、トルクコンバータ12と、無段変速機13と、ファイナルドライブ14と、を備えている。さらに、左ドライブシャフト15Lと、右ドライブシャフト15Rと、左駆動輪16Lと、右駆動輪16Rと、を備えている。
【0013】
即ち、エンジン11からの駆動力は、トルクコンバータ12と無段変速機13を経由してファイナルドライブ14へと伝達される。そして、ファイナルドライブ14からは左ドライブシャフト15Lを経由して左駆動輪16Lに駆動力が伝達され、右ドライブシャフト15Rを経由して右駆動輪16Rに駆動力が伝達される。
【0014】
エアコンシステム2は、冷媒を循環させる冷凍サイクルを、コンプレッサ21と、コンデンサ22と、レシーバ23と、エキスパンションバルブ24と、エバポレータ25とによって構成している。このエアコンシステム2には、冷凍サイクルの構成要素以外に、コンデンサファン26とブロワファン27を備えている。
【0015】
コンプレッサ21は、エンジン11により直接的に駆動される圧縮器である。コンプレッサ21によって圧縮された冷媒(エアコンガス)は高温高圧の半液体の状態でコンデンサ22に入る。
【0016】
コンデンサ22は、コンデンサファン26と共に走行風を導入する車両前部位置等に配置される凝縮器である。コンプレッサ21からコンデンサ22に入ってきた冷媒は、コンデンサファン26の風によって冷却され、さらに液化が進みレシーバ23へ送られる。
【0017】
レシーバ23は、コンデンサ22の出口直後に配置される冷媒の気液分離器である。レシーバ23は、コンデンサ22からの液化が進んだ冷媒のうち、液化できなかった冷媒を液冷媒として分離する。なお、レシーバ23は、気液分離機能以外に、乾燥剤やストレーナによって冷媒から水分や不純物を取り除く機能も有する。
【0018】
エキスパンションバルブ24は、エバポレータ25の入口位置に配置される冷媒の膨張弁である。エキスパンションバルブ24では、レシーバ23からの液冷媒を微小なノズル穴から噴射することで膨張させ、一気に冷媒を気化させ、エバポレータ25へ気化冷媒を送る。
【0019】
エバポレータ25は、空調ユニットケース内にブロワファン27と共に設けられる蒸発器である。エバポレータ25では、エキスパンションバルブ10から送られてきた気化した冷媒が周りの熱を奪っていき、それによってエバポレータ25が冷やさる。そこにブロワファン27の風を通過させて冷風を起こす。そして、エバポレータ25を出た冷媒は、再びコンプレッサ21に戻り圧縮される。
【0020】
ここで、レシーバ23とエキスパンションバルブ24とエバポレータ25とブロワファン27は、図外のダッシュパネルとインストルメントパネルにより挟まれた車室空間内に配置される空調ユニットケース内に設けられる。よって、車室内の空気中の水分は冷たくなっているエバポレータ25の表面で凝縮されて水滴となり、車外へ放出される。これにより除湿が行われる。なお、空調ユニットケース内には、エンジン冷却水が流れる熱交換器やPTCヒータ等による暖房ユニットも設けられる。
【0021】
駆動伝達機構3は、エンジン11とコンプレッサ21との間で駆動伝達状態と駆動遮断状態を切り替える機構である。この駆動伝達機構3は、エンジンクランク軸31に設けられた第1プーリ32と、コンプレッサ駆動軸33に設けられた第2プーリ34と、両プーリ32,34に掛け渡されたベルト35によって構成される。さらに、コンプレッサ駆動軸33と第2プーリ34との間には電磁クラッチ36が介装されている。
【0022】
即ち、電磁クラッチ36をクラッチON(クラッチ締結)にすると、エンジン11とコンプレッサ21とが駆動伝達状態で連結される。一方、電磁クラッチ36をクラッチOFF(クラッチ解放)にすると、エンジン11とコンプレッサ21とが駆動遮断状態で切り離される。
【0023】
エンジン制御系4は、エンジンコントロールモジュール41と、車速センサ42と、アクセル開度センサ43と、エンジンクランク角センサ44と、燃料噴射アクチュエータ45と、を備えている。
【0024】
エンジンコントロールモジュール41で実行されるエンジン駆動力制御は、車速センサ42からの車速VSPとアクセル開度センサ43からのアクセル開度APOとに基づいて目標駆動力を算出する。そして、目標駆動力を、エンジン性能マップを用いて目標エンジン回転数に換算し、エンジンクランク角センサ44からの実エンジン回転数が目標エンジン回転数に一致するように、燃料噴射アクチュエータ45へ燃料噴射指令を出力することで行われる。
【0025】
エアコン制御系5は、HVACコントロールモジュール51と、クラッチドライバー52と、エアコンON/OFFスイッチ53と、オートスイッチ54と、モードスイッチ55と、フロントデフロスタスイッチ56と、を備えている。これ以外に、内外気切り替えスイッチ57と、風量調節スイッチ58と、温度調節スイッチ59等を備えている。
なお、「HVAC」とは、「Heating Ventilation and Air Conditioning」の略称である。
【0026】
HVACコントロールモジュール51は、各種のスイッチ信号やセンサ信号を入力し、コンプレッサ21のON/OFF制御や風量制御やドア開閉制御や吹き出し口の選択制御、等により空調制御を実施する。HVACコントロールモジュール51とエンジンコントロールモジュール41は情報交換可能に接続されている。そして、HVACコントロールモジュール51は、電磁クラッチ36のON要求やエンジン11の駆動力制御許可信号等の様々な情報をエンジンコントロールモジュール41へ出力する。
【0027】
クラッチドライバー52は、コンプレッサ21のON/OFF制御を実施する電磁クラッチ36の駆動回路である。HVACコントロールモジュール51からコンプレッサ21のON要求をクラッチドライバー52が入力すると、電磁クラッチ36をクラッチONとし、エンジン11とコンプレッサ21とを駆動伝達状態で連結する。一方、HVACコントロールモジュール51からコンプレッサ21のOFF要求をクラッチドライバー52が入力すると、電磁クラッチ36をクラッチOFFとし、エンジン11とコンプレッサ21とが駆動遮断状態で切り離す。
【0028】
クラッチドライバー52では、HVACコントロールモジュール51からの要求以外に、エンジンコントロールモジュール41に有する協調コントローラ46からのON/OFF要求を受け付ける。このとき、加速要求と窓晴れ要求の少なくとも一方に基づいて協調コントローラ46からON/OFF要求があると、HVACコントロールモジュール51からのON/OFF要求に優先して受け付ける。
【0029】
エアコンON/OFFスイッチ53は、空調制御を開始/作動するエアコンONと空調制御を終了するエアコンOFFを切り替えるスイッチである。
【0030】
オートスイッチ54は、自動空調制御に切り替えるスイッチである。オートスイッチ54を投入し、自動空調制御を選択すると、冷房・暖房の切り替え、吹き出し口、風量、内気循環/外気導入の切り替えを自動調節し、車室内温度を設定温度に維持する制御が行われる。
【0031】
モードスイッチ55は、乗員操作により選択されるベントモードやフットモードやデフロスタモード等によって吹き出し口を切り替えるスイッチである。
【0032】
フロントデフロスタスイッチ56は、乗員操作によりデフロスタモードを選択するスイッチである。デフロスタモードを選択すると、インストルメントパネルの上面にフロントウインドウ28に向けて設定された吹き出し口を開け、例えば、除湿された空調風をフロントウインドウ28に吹き付けることでウインドウ内面の曇りを除去する。
【0033】
[協調コントローラの構成]
図2は、エンジンコントロールモジュール41に有する協調コントローラ46の構成を示す。以下、図2に基づいて協調コントローラ46の構成を説明する。
【0034】
協調コントローラ46は、図2に示すように、加速要求判定部46aと、エアコンOFF時間算出部46bと、カット時間タイマ機能部46cと、窓晴れ要求判定部46dと、実施判定部46eと、を備えている。そして、協調コントローラ46は、加速要求が有る場合、コンプレッサ21を停止して動力性能を確保する加速時エアコンOFF機能(加速時空調停止機能)を有する。つまり、加速要求が有る場合、エンジン11とコンプレッサ21とを切り離すことでエンジン11のコンプレッサ負荷を抑え、コンプレッサ負荷分のエンジン11の余裕駆動力を高めて加速要求に応える機能を有する。
【0035】
加速要求判定部46aは、アクセル開度APOと車速VSPを入力し、加速要求が有るか否かを判定する。例えば、下記の場合に加速要求が有ると判定する。
(a)ドライバーによるアクセル踏み込み操作によるアクセル開度APOが加速要求判定閾値(例えば、APO≧3/8開度程度)以上の場合、加速要求(ドライバー要求)が有ると判定する。
(b)先行車追従制御や自動運転制御等において、アクセル開度APOが加速要求判定閾値以上になる加速要求があると、加速要求(システム要求)が有ると判定する。
【0036】
なお、加速要求判定閾値は、走行負荷の大きさによって変更(走行負荷が大きいほど高アクセル開度)しても良い。さらに、車速VSPの高低に応じて変更(発進時に比べて走行中は高アクセル開度)しても良い。
【0037】
エアコンOFF時間算出部46bは、アクセル開度APOと車速VSPを入力し、エアコンOFF時間を算出する。エアコンOFF時間は、例えば、アクセル踏み込み操作量やアクセル踏み増し操作量により推定される加速要求の大きさに応じて加速後の目標車速を算出し、現在の車速VSPが目標車速に到達するであろうと推定される所要時間を算出する。即ち、高車速走行中に加速追い越しをするときは時間を要するというように、車速VSPが高いほど長いエアコンOFF時間を算出する。
【0038】
カット時間タイマ機能部46cは、加速要求判定部46aから加速要求有りとの判定結果を入力すると、エアコンOFF時間算出部46bからのエアコンOFF時間をタイマ時間としてカット要求(エアコンOFF要求)を実施判定部46eに出力する。
【0039】
窓晴れ要求判定部46dは、フロントウインドウ28の窓晴れ要求が有るか否かを判定する。例えば、下記の場合、窓晴れ要求が有りと判定する。
(a)エアコンシステム2による空調モードを手動選択する場合、窓晴れを要求する空調モードの選択スイッチであるフロントデフロスタスイッチ56がオンであると、窓晴れ要求(ドライバー要求)が有りと判定する。
(b)エアコンシステム2による空調モードを手動選択する場合、モードスイッチ55によりデフロスタモード(窓晴れを要求する空調モード)が選択されると、窓晴れ要求(ドライバー要求)が有りと判定する。
(c)エアコンシステム2による空調モードをオートスイッチ54の投入により自動選択する場合、デフロスタモード(窓晴れ要求する空調モード)の選択情報を入力すると、窓晴れ要求(システム要求)が有りと判定する。
【0040】
実施判定部46eは、カット時間タイマ機能部46cからのカット要求と窓晴れ要求判定部46dからの判定結果を入力し、窓晴れ要求が無い場合、加速要求に基づく動力性能を優先する空調制御を実施する。一方、窓晴れ要求が有る場合、加速要求に基づく動力性能よりも窓晴れ要求に対する窓晴れ性能を優先する空調制御を実施する。より詳細には、加速要求が有り、かつ、窓晴れ要求が無い場合、加速時エアコンOFF機能を許可し(エアコンOFF要求を出力し)、コンプレッサ21を停止して動力性能を優先する。一方、加速要求が有り、かつ、窓晴れ要求が有る場合、加速時エアコンOFF機能を禁止し(エアコンON要求を出力し)、コンプレッサ21を駆動して窓晴れ性能を優先する。
【0041】
[エンジン駆動力制御と空調制御との協調制御処理構成]
図3は、エンジンコントロールモジュール41に有する協調コントローラ46で実行されるエンジン駆動力制御と空調制御との協調制御処理の流れを示す。以下、図3の各ステップについて説明する。
【0042】
ステップS1では、加速要求判定部46aにおいて加速要求有りか否かを判定する。YES(加速要求有り)の場合はステップS3へ進み、NO(加速要求無し)の場合はステップS2へ進む。
【0043】
ステップS2では、ステップS1での加速要求無しであるとの判定に続き、加速時エアコンOFF機能を禁止し、リターンへ進む。
【0044】
ステップS3では、ステップS1での加速要求有りであるとの判定に続き、窓晴れ要求判定部46dにおいて窓晴れ要求有りか否かを判定する。YES(窓晴れ要求有り)の場合はステップS4へ進み、NO(窓晴れ要求無し)の場合はステップS5へ進む。
【0045】
ステップS4では、ステップS3での窓晴れ要求有りであるとの判定に続き、加速時エアコンOFF機能を禁止し、リターンへ進む。
【0046】
ステップS5では、ステップS3での窓晴れ要求無しであるとの判定に続き、加速時エアコンOFF機能を許可し、リターンへ進む。
【0047】
次に、実施例1の作用を、「エンジン駆動力制御と空調制御との協調制御処理作用」、「エンジン駆動力制御と空調制御との協調制御作用」に分けて説明する。
【0048】
[エンジン駆動力制御と空調制御との協調制御処理作用]
加速要求無しのときは、図3のフローチャートにおいて、S1→S2→リターンへと進む流れが繰り返される。S2では、加速時エアコンOFF機能が禁止される。このように、加速要求無しのときは、加速時エアコンOFF機能が禁止され、コンプレッサ21は、HVACコントロールモジュール51からのON/OFF要求にしたがってON/OFFの制御が行われる。
【0049】
加速要求有り、かつ、窓晴れ要求無しのときは、図3のフローチャートにおいて、S1→S3→S5→リターンへと進む流れが繰り返される。S5では、加速時エアコンOFF機能が許可される。このように、加速要求有り、かつ、窓晴れ要求無しのときは、加速要求が有るため、協調コントローラ46からのエアコンOFF要求にしたがってコンプレッサ21を停止する制御が行われる。つまり、動力性能優先でのエンジン駆動力制御と空調制御との協調制御が実施される。
【0050】
一方、加速要求有り、かつ、窓晴れ要求有りのときは、図3のフローチャートにおいて、S1→S3→S4→リターンへと進む流れが繰り返される。S4では、加速時エアコンOFF機能が禁止される。このように、加速要求有り、かつ、窓晴れ要求有りのときは、加速要求が有るにもかかわらず、協調コントローラ46からのエアコンON要求にしたがってコンプレッサ21を作動させる制御が行われる。つまり、窓晴れ性能優先でのエンジン駆動力制御と空調制御との協調制御が実施される。
【0051】
[エンジン駆動力制御と空調制御との協調制御作用]
加速要求が有る場合、窓晴れ要求の有無にかかわらず、コンプレッサを停止して動力性能を確保する加速時エアコンOFF機能を発揮するものを比較例とする。
【0052】
この比較例の場合、例えば、エアコン作動中にアクセルペダルを所定値以上踏み込んだ場合は、エアコンシステムのコンプレッサを停止させることでエンジン負荷を低下させ、駆動力を増加させる動力性能優先の協調制御が行われる。
【0053】
しかし、動力性能優先の協調制御を行い、コンプレッサの停止を継続してエンジン負荷を低下させると、エバポレータの温度が徐々に上昇し、除湿能力が低下してしまい、フロントウインドウに曇りが発生してしまう。このとき、フロントデフロスタスイッチをONにして乗員が窓晴れ要求をしても、動力性能優先でエアコンシステムがOFFにされていると、フロントウインドウの曇りを除去することができない。
【0054】
フロントウインドウの曇りが除去でないと、車両前方の外界視認性が損なわれ、運転走行に支障を与えることになる。また、車両前方を撮像するフロントカメラを装備した車両の場合、フロントカメラからの画像データが不鮮明なものになる。
【0055】
さらに、窓晴れ要求に対して窓晴れ性能を満足させるには、エアコンシステムがONであることが必要条件になる。これに対し、動力性能については、例えば、エアコンシステムがONであってもエンジンに余裕駆動力が有る場合は、アクセル踏み増し等により加速要求に対して動力性能を満足できる。よって、動力性能と窓晴れ性能を対比した場合、窓晴れ性能を優先することが有利である。
【0056】
本発明は、上記課題と窓晴れ性能を優先することが有利である点に着目してなされたものである。即ち、エンジン駆動力制御と空調制御との協調制御では、窓晴れ要求が無い場合、加速要求に基づく動力性能を優先する空調制御を実施する。窓晴れ要求が有る場合、加速要求に基づく動力性能よりも窓晴れ要求に対する窓晴れ性能を優先する空調制御を実施する手段を採用した。
【0057】
ここで、エンジン駆動力制御と空調制御との協調制御作用の一例を、図4に示すタイムチャートにより説明する。
【0058】
時刻t1と時刻t2の区間は、加速要求有り、かつ、窓晴れ要求無しである。このため、時刻t1と時刻t2の区間は、協調コントローラ46からの電磁クラッチ36を切り離すカット指令有りとなる。よって、電磁クラッチ36が切り離され、加速要求に基づく動力性能が優先される。
【0059】
時刻t2と時刻t3の区間は、加速要求無し、かつ、窓晴れ要求無しである。このため、時刻t2と時刻t3の区間は、協調コントローラ46からの電磁クラッチ36を切り離すカット指令無しとなる。よって、電磁クラッチ36のON/OFFは、HVACコントロールモジュール51からの要求に委ねられる。
【0060】
時刻t3と時刻t4の区間は、加速要求無し、かつ、窓晴れ要求有りである。このため、時刻t3と時刻t4の区間は、協調コントローラ46からの電磁クラッチ36を切り離すカット指令無しとなる。よって、HVACコントロールモジュール51からのON要求により電磁クラッチ36が締結され、デフロスタモードによる窓晴れ要求に応える空調制御が実施される。
【0061】
時刻t4と時刻t5の区間は、加速要求有り、かつ、窓晴れ要求有りである。このように時刻t4と時刻t5の区間は、加速要求有りであるが、窓晴れ要求有りであるため、協調コントローラ46からの電磁クラッチ36を切り離すカット指令無しとなる。よって、HVACコントロールモジュール51からのON要求により電磁クラッチ36が締結され、デフロスタモードによる窓晴れ要求に応える空調制御が実施され、動力性能よりも窓晴れ要求に基づく窓晴れ性能が優先される。
【0062】
時刻t5と時刻t6の区間は、加速要求無し、かつ、窓晴れ要求有りである。このため、時刻t5と時刻t6の区間は、協調コントローラ46からの電磁クラッチ36を切り離すカット指令無しとなる。よって、HVACコントロールモジュール51からのON要求により電磁クラッチ36が締結され、デフロスタモードによる窓晴れ要求に応える空調制御が実施される。
【0063】
時刻t6と時刻t7の区間は、加速要求有り、かつ、窓晴れ要求有りである。このように時刻t6と時刻t7の区間は、加速要求有りであるが、窓晴れ要求有りであるため、協調コントローラ46からの電磁クラッチ36を切り離すカット指令無しとなる。よって、HVACコントロールモジュール51からのON要求により電磁クラッチ36が締結され、デフロスタモードによる窓晴れ要求に応える空調制御が実施され、動力性能よりも窓晴れ要求に基づく窓晴れ性能が優先される。
【0064】
時刻t7と時刻t8の区間は、加速要求有り、かつ、窓晴れ要求無しである。このため、時刻t7と時刻t8の区間は、協調コントローラ46からの電磁クラッチ36を切り離すカット指令有りとなる。よって、電磁クラッチ36が切り離され、加速要求に基づく動力性能が優先される。
【0065】
時刻t8以降の区間は、加速要求無し、かつ、窓晴れ要求無しである。このため、時刻t8以降の区間は、協調コントローラ46からの電磁クラッチ36を切り離すカット指令無しとなる。よって、電磁クラッチ36のON/OFFは、HVACコントロールモジュール51からの要求に委ねられる。
【0066】
このように、窓晴れ要求が無い場合、加速要求に基づく動力性能を優先する空調制御を実施することで、加速要求が有ると、電磁クラッチ36を切り離し、動力性能を優先する制御が実施される(t1~t2区間、t7~t8区間)。よって、エンジン11が分担するコンプレッサ負荷が低下し、コンプレッサ負荷低下分のエンジン余裕駆動力により、加速要求に応える動力性能が確保される。
【0067】
一方、フロントウインドウ28の窓晴れ要求が有ると、窓晴れ性能を優先する空調制御を実施することで、加速要求があっても、電磁クラッチ36を締結し、窓晴れ性能を優先する制御が実施される(t4~t5区間、t6~t7区間)。よって、デフロスタモードによる窓晴れ要求に応える空調制御が実施され、窓晴れによる外界視認性が確保される。
【0068】
この結果、窓晴れ要求が無いシーンで動力性能を確保しつつ、窓晴れ要求が有るシーンで窓晴れによる外界視認性を確保することができる。例えば、動力性能優先の協調制御の実施(電磁クラッチ36の切り離し)によりエバポレータ25での除湿能力が低下し、フロントウインドウ28に曇りが発生したとする。この場合、乗員がフロントデフロスタスイッチ56をONにして窓晴れ要求をすると、エアコンシステム2が作動し、空調風をフロントウインドウ28に吹き付けることでウインドウ内面の曇りが速やかに除去される。このため、車両前方の外界視認性が確保され、運転走行に支障を与えることを防止することができる。また、車両前方を撮像するフロントカメラを装備した車両の場合、フロントカメラからの画像データの鮮明さを確保することができる。
【0069】
以上説明したように、実施例1の駆動力制御と空調制御の協調制御方法及び協調制御装置にあっては、下記に列挙する効果を奏する。
【0070】
(1) 走行用駆動源(エンジン11)の駆動力制御と、走行用駆動源により直接的又は間接的に駆動されるコンプレッサ21を有するエアコンシステム2の空調制御との協調制御を行うコントローラ(協調コントローラ46)を備える駆動力制御と空調制御の協調制御方法において、
加速要求が有るか否かを判定し、
フロントウインドウ28の窓晴れ要求が有るか否かを判定し、
窓晴れ要求が無い場合、加速要求に基づく動力性能を優先する空調制御を実施し、
窓晴れ要求が有る場合、加速要求に基づく動力性能よりも窓晴れ要求に対する窓晴れ性能を優先する空調制御を実施する(図4)。
このように、フロントウインドウ28の窓晴れ要求が有ると、動力性能よりも窓晴れ性能を優先する空調制御が実施される。この結果、窓晴れ要求が無いシーンで動力性能を確保しつつ、窓晴れ要求が有るシーンで窓晴れによる外界視認性を確保する駆動力制御と空調制御の協調制御方法を提供することができる。
【0071】
(2) コントローラ(協調コントローラ46)は、加速要求が有る場合、コンプレッサ21を停止して動力性能を確保する加速時空調停止機能(加速時エアコンOFF機能)を有し、
加速要求が有り、かつ、窓晴れ要求が無い場合、加速時空調停止機能を許可し、コンプレッサ21を停止して動力性能を優先し、
加速要求が有り、かつ、窓晴れ要求が有る場合、加速時空調停止機能を禁止し、コンプレッサ21を駆動して窓晴れ性能を優先する(図3)。
このように、予めコントローラ(協調コントローラ46)に有する加速時空調停止機能(加速時エアコンOFF機能)をベースとし、協調制御が組み込まれる。この結果、加速時空調停止機能(加速時エアコンOFF機能)をそのまま活用し、窓晴れ要求の有無判定を加えるだけで容易に駆動力制御と空調制御の協調制御を組み込むことができる。
【0072】
(3) 加速要求は、アクセル開度APOが加速要求判定閾値以上の場合に加速要求有りと判定する(図2)。
このため、アクセル開度APOの大きさにより、容易に加速要求の有無を判定することができる。
【0073】
(4) エアコンシステム2による空調モードを手動選択する場合、窓晴れを要求する空調モード(デフロスタモード)が選択されていると窓晴れ要求が有りと判定する(図2)。
このため、窓晴れを要求する空調モード(デフロスタモード)の手動選択により、容易に窓晴れ要求の有無を判定することができる。
【0074】
(5) エアコンシステム2による空調モードを自動選択する場合、窓晴れ要求する空調モード(デフロスタモード)の選択情報を入力すると窓晴れ要求が有りと判定する(図2)。
このため、窓晴れを要求する空調モード(デフロスタモード)の自動選択により、容易に窓晴れ要求の有無を判定することができる。
【0075】
(6) 走行用駆動源(エンジン11)の駆動力制御と、走行用駆動源により直接的又は間接的に駆動されるコンプレッサ21を有するエアコンシステム2の空調制御との協調制御を行うコントローラ(協調コントローラ46)を備える駆動力制御と空調制御の協調制御装置において、
コントローラ(協調コントローラ46)は、
加速要求が有るか否かを判定する加速要求判定部46aと、
フロントウインドウ28の窓晴れ要求が有るか否かを判定する窓晴れ要求判定部46dと、
窓晴れ要求が無い場合、加速要求に基づく動力性能を優先する空調制御を実施し、窓晴れ要求が有る場合、加速要求に基づく動力性能よりも窓晴れ要求に対する窓晴れ性能を優先する空調制御を実施する実施判定部46eと、を有する(図2)。
このように、フロントウインドウ28の窓晴れ要求が有ると、動力性能よりも窓晴れ性能を優先する空調制御が実施される。この結果、窓晴れ要求が無いシーンで動力性能を確保しつつ、窓晴れ要求が有るシーンで窓晴れによる外界視認性を確保する駆動力制御と空調制御の協調制御装置を提供することができる。
【0076】
以上、本開示の駆動力制御と空調制御の協調制御方法及び協調制御装置を実施例1に基づいて説明してきた。しかし、具体的な構成については、この実施例1に限られるものではなく、特許請求の範囲の各請求項に係る発明の要旨を逸脱しない限り、設計の変更や追加等は許容される。
【0077】
実施例1では、コンプレッサ21として、エンジン11により直接的に駆動されるコンプレッサを用いる例を示した。しかし、コンプレッサとしては、走行用駆動源により間接的に駆動される電動コンプレッサを用いても良い。電動コンプレッサの場合、走行用駆動源によりジェネレータを駆動して発電し、これをバッテリに充電し、バッテリ電源によりコンプレッサモータを駆動する。よって、走行用駆動源にはジェネレータによる発電負荷が加わるため、動力性能を優先する場合、発電負荷を低減することで、その分、駆動力を確保することにより実現できる。
【0078】
実施例1では、協調コントローラ46として、加速要求が有り、かつ、窓晴れ要求が無い場合、加速時エアコンOFF機能を許可し、コンプレッサ21を停止して動力性能を優先する。加速要求が有り、かつ、窓晴れ要求が有る場合、加速時エアコンOFF機能を禁止し、コンプレッサ21を駆動して窓晴れ性能を優先する例を示した。しかし、協調コントローラとしては、例えば、コンプレッサが可変容量型コンプレッサの場合、コンプレッサのON/OFF制御ではなく、コンプレッサ容量制御により実施する例としても良い。この場合、動力性能を優先する場合には容量小側への変更制御とし、窓晴れ性能を優先する場合には容量大側への変更制御とする。また、コンプレッサが電動コンプレッサの場合、ジェネレータによる発電負荷制御により実施する例としても良い。この場合、この場合、動力性能を優先する場合には発電負荷小側への変更制御とし、窓晴れ性能を優先する場合には発電負荷大側への変更制御とする。
【0079】
実施例1では、協調コントローラ46として、加速要求が有る場合、コンプレッサ21を停止して動力性能を確保する加速時エアコンOFF機能を有し、加速時エアコンOFF機能をベースとして協調制御を実施する例を示した。しかし、協調コントローラとしては、加速時エアコンOFF機能を有さないコントローラを用いて協調制御を実施する例であっても良い。
【0080】
実施例1では、協調コントローラ46として、エンジンコントロールモジュール41に有する例を示した。しかし、協調コントローラとしては、HVACコントロールモジュールに有する例であっても良いし、また、エンジンコントロールモジュールとHVACコントロールモジュールとは独立に有する例であっても良い。
【0081】
実施例1では、加速要求を、アクセル開度APOが加速要求判定閾値以上の場合に加速要求有りと判定する例を示した。しかし、加速要求を、アクセル開度以外に、アクセル開速度等を用いて加速要求の有無を判定する例であっても良い。また、自動運転車両において目標経路と共に目標経路に沿った車速プロファイルが生成される場合、車速プロファイルの上昇勾配により加速要求の有無を判定する例であっても良い。
【0082】
実施例1では、窓晴れ要求の有無を、エアコンシステム2の空調モードとして窓晴れ要求する空調モード(デフロスタモード)が手動選択や自動選択されているか否かにより判定する例を示した。しかし、窓晴れ要求の有無を、エバポレータ温度の変化を直接的又は間接的に監視することによりエバポレータの除湿能力の有無を推定し、エバポレータの除湿能力が無いと推定されると、窓晴れ要求有りと判定する例であっても良い。
【0083】
実施例1では、本開示の駆動力制御と空調制御の協調制御方法及び協調制御装置を、走行用駆動源として搭載されたエンジンにより駆動されるコンプレッサを有するエアコンシステムを装備したエンジン車に適用する例を示した。しかし、本開示の駆動力制御と空調制御の協調制御方法及び協調制御装置は、走行用駆動源としてエンジンとモータが搭載されたハイブリッド車両や走行用駆動源としてモータが搭載された電気自動車に対しても適用することができる。要するに、走行用駆動源により直接的又は間接的に駆動されるコンプレッサを有するエアコンシステムを装備した車両であれば適用できる。
【符号の説明】
【0084】
1 エンジン車駆動系
11 エンジン(走行用駆動源)
2 エアコンシステム
21 コンプレッサ
22 コンデンサ
23 レシーバ
24 エキスパンションバルブ
25 エバポレータ
3 駆動伝達機構
36 電磁クラッチ
4 エンジン制御系
41 エンジンコントロールモジュール
42 車速センサ
43 アクセル開度センサ
44 エンジンクランク角センサ
45 燃料噴射アクチュエータ
46 協調コントローラ
46a 加速要求判定部
46b エアコンOFF時間算出部
46c カット時間タイマ機能部
46d 窓晴れ要求判定部
46e 実施判定部
5 エアコン制御系
51 HVACコントロールモジュール
52 クラッチドライバー
53 エアコンON/OFFスイッチ
54 オートスイッチ
55 モードスイッチ
56 フロントデフロスタスイッチ
図1
図2
図3
図4