IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ハイドログラヴ ゲーエムベーハーの特許一覧

特許7165295沈殿槽および沈殿槽の流入域に部分流を導く方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-26
(45)【発行日】2022-11-04
(54)【発明の名称】沈殿槽および沈殿槽の流入域に部分流を導く方法
(51)【国際特許分類】
   B01D 21/30 20060101AFI20221027BHJP
   B01D 21/24 20060101ALI20221027BHJP
   B01D 21/02 20060101ALI20221027BHJP
【FI】
B01D21/30 F
B01D21/24 D
B01D21/02 S
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2021532513
(86)(22)【出願日】2019-08-12
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-04
(86)【国際出願番号】 EP2019000240
(87)【国際公開番号】W WO2020035166
(87)【国際公開日】2020-02-20
【審査請求日】2021-05-12
(73)【特許権者】
【識別番号】521065953
【氏名又は名称】ハイドログラヴ ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100121441
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 竜平
(74)【代理人】
【識別番号】100154704
【弁理士】
【氏名又は名称】齊藤 真大
(74)【代理人】
【識別番号】100129702
【弁理士】
【氏名又は名称】上村 喜永
(74)【代理人】
【識別番号】100206151
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 惇志
(74)【代理人】
【識別番号】100218187
【弁理士】
【氏名又は名称】前田 治子
(74)【代理人】
【識別番号】100091683
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼川 俊雄
(74)【代理人】
【識別番号】100179316
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 寛奈
(72)【発明者】
【氏名】アームブルスター,マーティン
【審査官】富永 正史
(56)【参考文献】
【文献】特表2006-507918(JP,A)
【文献】特開昭56-163705(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第01864707(EP,A1)
【文献】米国特許出願公開第2011/0247987(US,A1)
【文献】特表平11-500056(JP,A)
【文献】米国特許第08087518(US,B1)
【文献】実開昭54-159369(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2005/0194322(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 21/00-21/34
C02F 1/52- 1/56
C02F 1/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
多層液体が、入口構造から、少なくとも一つの槽へ、少なくとも一つの入口構造を通って入口体積流QINで排出され、前記入口構造は、入口開口部を調整することで、入口エネルギーを継続的に最適化する方法であって、
前記多層液体は、前記入口開口部の流入領域を流通し、少なくとも一つの戻り体積流Qおよび一つの排出体積流Qの、異なる重量を有する層に分離され、いずれの層も、少なくとも一つの、かつ少なくとも一時的に沈殿槽内に分離され、
前記入口開口部は境界によって画定され、入口開口部の向きを互いに異ならせることにより、流入方向が互いに異なるよう、前記境界の位置は変更可能であり、
最大、前記入口体積流QINの全体まで、前記入口開口部の前記境界の位置を互いに異ならせることによって、少なくとも一つの部分体積流QIIは、高負荷時、前記入口構造から、主に水平方向に、時計における二時から四時の方向に向かって流出し、少なくとも一つの部分体積流Qは、低負荷時、前記入口構造から、主に垂直方向に、あるいは水平流方向に反して、時計における五時から十一時の方向に向かって流出する、ことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記流入領域を、異なる位置の部分領域に、少なくとも一時的に分流することを特徴とし、
体積分流Qおよび体積分流QII間(Q=QINかつQII=0、Q=0かつQII=QINいずれの場合も含む)への分流量は、一部または全体で、かつ段階的にまたは無段階的に、可変的に調節可能または自律調整可能である、
ことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記沈殿槽の瞬時負荷は、総負荷をもとに、直接的にあるいは間接的に検知され、それにより、前記体積分流Qおよび前記体積分流QIIへの前記分流量および/または流入する流れの位置を、制御あるいは規制によって調整できる、ことを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
入口体積流QINを有する多層液体を沈殿槽に供給するよう構成された入口構造(2)であって、
高さが可変の装置(5a、5b、5c)と、
高さ伸長が調整可能な壁(4)と、を備え、
前記壁(4)の下端から前記装置(5a、5b、5c)の高さまでの垂直方向の距離は調整可能であり、
前記壁(4)の前記下端および前記装置(5a、6)の外端が、少なくとも流入境界の一部を形成し、前記流入境界は、前記入口構造(2)から流出する際に前記多層液体に貫流され、またその高さは調整可能であって、
前記多層液体は、入口開口部の流入領域を流通し、
最大、前記入口体積流QINの全体まで、前記入口開口部の前記境界の位置を互いに異ならせることによって、少なくとも一つの部分体積流QIIは、高負荷時、主に水平方向に、時計における二時から四時の方向に調整可能であり、少なくとも一つの部分体積流Qは、低負荷時、前記入口構造から、主に垂直方向に、あるいは水平流方向に反して、時計における五時から十一時の方向に調整可能である、ことを特徴とする、入口構造。
【請求項5】
貫流領域を、例えば、閉鎖装置やその他装置、あるいは前記貫流領域の大きさや前記貫流領域における流動抵抗を左右する手段によって変更することで、前記沈殿槽への、前記入口開口部のうち少なくとも一つに関連する、体積分流の量が制御可能である、ことを特徴とする、請求項4に記載の入口構造。
【請求項6】
前記流入領域を、異なる位置の部分領域に、少なくとも一時的に分流することを特徴とし、
前記入口開口部の貫流領域Aは、少なくとも一つの上部装置によって画定され、前記装置は、その位置が可変であり、それにより前記入口開口部を上方向に制限し、領域Aを有する、少なくとも一つの第1入口開口部、および領域Aiiを有する、少なくとも一つの第2入口開口部の両方は、少なくとも一つの、さらに下部の制限装置によって画定され、前記装置は、その位置が可変である、
ことを特徴とする、請求項4または5に記載の入口構造。
【請求項7】
前記入口構造内あるいは前記入口構造付近に、少なくとも一つの伸縮自在または折り畳み式の手段、あるいは高さが調節可能な壁Wによって、領域Aを有する前記第1入口開口部の上側境界を決定する装置を備え、前記壁Wは、前記沈殿槽が矩形の場合は、有利となるよう、矩形を有し、前記沈殿槽が円形の場合は、有利となるよう、円形を有し、また、その他の形状を有し、
前記装置は、その下に配置される板Pとしての装置5bによって、領域Aを有する前記第1入口開口部の下側境界と、領域Aiiを有する前記第2入口開口部の上側境界および下側境界との両方を決定し、前記板Pは、部分PおよびPの、少なくとも二つの部位からなる、直線状、円形状、あるいは対称形状を有する装置であり、
前記壁Wの位置と、前記板の前記部分PおよびPの位置とが異なって調整されるため、領域Aを有する、貫流される入口開口部の大きさと、領域Aiiを有する、貫流される入口開口部の大きさとが、また、ひいては体積分流Qおよび体積分流QIIの大きさが変更可能である、ことを特徴とする、請求項6に記載の入口構造。
【請求項8】
前記入口構造内あるいは前記入口構造付近に、少なくとも一つの伸縮自在または折り畳み式の手段、あるいは高さが調節可能で、直線状、円形状、あるいは対称形状を有する壁Wによって、領域Aを有する前記第1入口開口部の上側境界を決定する装置を備え、
前記装置は、第1の壁の下に配置された、直線状、円形状、あるいは対称形状を有し、高さが調節可能な、少なくとも一つの単元装置あるいは多元装置によって、領域Aを有する前記第1入口開口部の下側境界と、領域Aiiを有する前記第2入口開口部の下側境界との両方を同時に決定し、
前記装置は、領域Aiiを有する前記第2入口開口部の上側境界を、第2の垂直壁の下端によって画定し、前記第2の垂直壁は、位置が可変、あるいは固定であり、前記板の移動経路における最も深い地点よりも上に位置しており、これにより、体積分流Qおよび体積分流QIIの大きさも変更可能である、ことを特徴とする、請求項6に記載の入口構造。
【請求項9】
貫流領域のうち、少なくとも一つが、少なくとも一時的に閉じるように、前記壁の位置および/または前記板の位置を調節可能であり、これにより、QIN>0である前記二つの体積分流のうちの一つに対し、Q≒0またはQII≒0が、一時的に満たされる、ことを特徴とする、請求項7または8に記載の入口構造。
【請求項10】
流出する体積流は、下側位置において、固定された流路偏向板7あるいは角度が調整可能な流路偏向板を通って、Qとして垂直方向に流出し、上側位置において、Qとして排他的に水平方向に導かれる、ことを特徴とする、請求項4乃至9のいずれか一項に記載の入口構造。
【請求項11】
前記体積分流QおよびQIIへの分流量は、制御あるいは規制によって、前記沈殿槽の瞬時負荷に合わせて調整できる、ことを特徴とする、請求項4乃至10のいずれか一項に記載の入口構造。
【請求項12】
偏向装置は、その角度を変更することにより、流出時の角度に影響を与えるよう、取り付けられる、ことを特徴とする、請求項4乃至11のいずれか一項に記載の入口構造。
【請求項13】
前記入口開口部を調整する前記装置同士は、ある位置においては、互いに、少なくとも部分的に影響しあい、その端部の取り付け位置においては、少なくとも一部が固定されうる、ことを特徴とする、請求項6乃至9のいずれか一項に記載の入口構造。
【請求項14】
部分開口部のうち、少なくとも一つは多孔装置やラメラの周囲に、流れを促進させる設備や拡張部を備える、ことを特徴とする、請求項4乃至13のいずれか一項に記載の入口構造。
【請求項15】
請求項6~9のいずれか一項に記載の入口構造(2)を備える沈殿槽であって、
斜め、あるいは平らな底面を有し、円形あるいは矩形を有する前記沈殿槽を備えた種々の装置は、デフレクタ5aまたは5bと、角度が調整可能な流路偏向板6または固定された前記流路偏向板7との、いかなる組合わせからなってもよい、
ことを特徴とする、沈殿槽。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、沈殿槽に関する。前記沈殿槽は、少なくとも二層の懸濁液を、少なくとも一時的に分離する役割、特に、濁物質および浄化バイオマスの混合物である下水沈積物を、液体である浄化水から分離する役割を有し、少なくとも一つの入口開口部を通って、その形状および配置に応じた総体積流QINが沈殿槽に流入し、総体積流QINは、少なくとも二つの部分流QおよびQの合計からなり、重量層から分離した軽量層が部分流Qと共に沈殿槽から流出し、重量層から分離した、粘度が増した懸濁濃縮液が部分流Qと共に除去され、沈殿槽への流入は、少なくとも一つの入口開口部を通るよう導かれ、前記入口開口部は、沈殿槽内での境界の相対位置および絶対位置の変化に対応した、エネルギーの最適条件に調節可能である、ことを特徴とする。本発明はまた、入口開口部の形状、大きさ、および/または配置を制御することにより、前記沈殿槽の流入域に部分流を導く方法に関する。
【背景技術】
【0002】
前記沈殿槽は、排水処理場のバイオ処理工程、例えば、一次浄化、中間浄化、二次浄化等において、広く使用されている。こうした処理において、濁物質は、総流QINと共に流れる懸濁液の部分流Qから分離され、部分流Q中に濃縮された形で沈殿槽から再び排出される。特に、排水処理全体の成功は、二次浄化において部分流Qから濁物質をいかに効率的に分離できるかに掛かっている。二次浄化において、通常、2,500mg/l~4,000mg/lの濃度のバイオマスを含有する懸濁液が、浄水流出量Qの浄化済排水と共に、流入量QINに含まれて流入し、二次浄化後、1リットルあたり数ミリグラム程度の未分離バイオマスが排出されたとする。これは、排水処理場において、特に、リンおよび炭素化合物の保持の点で、総合的にみて成功と言えるだろう。平均前後の精度で設計された槽において、流出量Q中の濾過可能物質の平均排出濃度が、約15mg/l~約20mg/lの範囲であるところ、精度よく設計された入口構造を有するものでは、約5mg/l~約10mg/lの範囲である。このように、Q中の濾過可能物質を、1リットルあたり数ミリグラムにまで減少させることは、相当な改善と言える。
【0003】
今日の二次浄化において、特許文献1による入口構造が数多く導入されている。ここで、入口構造からの流入は、入口開口部を通って、基本的には、水平方向に導かれる。前記入口開口部は、境界の相対位置および絶対位置を変化させることにより、エネルギーの最適条件に調節可能である。QおよびQは、両方とも変数である。例えば、排水処理場の浄水排出Qは、夜よりも日中、特に、乾燥した天候よりも雨天の際に増加する。戻り体積流Qは、排水処理場の排出Qによって制御され、それに伴って変動する。こうした制御において、Q/Qの比率の目標値は、通常、約0.5~約0.75である。しかしながら、機械技術の観点から、Qは、その最小値および最大値間に、取れる値が限られることが多い。つまり、低負荷時の戻り体積流Qは、浄水排出Qよりもはるかに多くなることがあり、そのため、Q/Q>>1.0となる。これによる好ましくない状況として、体積分流Qint>>総体積流QINからのQ、すなわち、沈殿槽の流入域に部分流を導く方法において必要とされる、槽を通過するQにあたる一部よりも、はるかに多くの体積分流Qintが、入口開口部からの流出方向に応じて、槽を経由して流れてしまうことになる。
【0004】
とQの和である体積流QIN(QIN=Q+Q)は、入口構造から入口開口部を通って、沈殿槽へ流れる。この過程において、主に垂直方向に導かれる流出方向および主に水平方向に導かれる流出方向の二つに大きく分かれる、QINが沈殿槽に流入する方向に応じて、入口開口部が設計される。この過程において、各貫流領域は、各領域を制限する非貫流境界によって定義される。したがって、水平貫流領域は、少なくとも一つの高境界および一つの低境界を有し、垂直貫流領域は、同一の、あるいは少なくとも同様の高さにある、少なくとも二つの境界を有する。
【0005】
基本的に垂直方向に導かれる流入方向は、特に英米地域においてよく見られ、例えば、特許文献2に記載されている。基本的に水平方向に導かれる流出方向は、欧州においてよく使用され、例えば、特許文献1に記載されている。この二つのタイプは、例えば、米国公開では「減勢槽」や「偏向バッフル」、欧州公開では「入口管」、「管リング」や「リング板」と称される装置の一部を、共通して有している。こうした要素は、懸濁液が、沈降工程が行われる入口開口部を通って領域に流入する前に貫流する空間をなす。この領域または装置の一部が、いわゆる沈殿槽の入口構造をなす。
【0006】
なお、より正確には、遮蔽物またはベルトでの不純物除去、および吸引での不純物除去等、戻り沈積物流Qの排水における、詳細な種々の変形例には、少なくとも二つの基本形がある。沈殿槽自体の形状が、円形、角形、あるいはいずれの幾何学形状にも制限されないように、処理済排水Qの排水方法は、本発明の機能になんら影響しない。本発明の目的は、QとQの和である体積流QIN(QIN=Q+Q)を槽に供給することにある。
【0007】
入口構造には、いくつかの機能が備わっている。最重要機能としては、懸濁液を入口構造に流すのに必要な、流入する体積流の運動エネルギーを、意図的に発散させること、そして、懸濁液が、入口開口部へ、つまり入口構造および沈降室間の境界へ、均一かつ均等に分かれて流入するよう保証することの二つが挙げられる。沈降工程が行われる沈殿槽の領域は、沈降室と定義される。これは、円形の入口構造に対し、水平方向に隣接する領域である。入口構造の内部、入口構造の構造体下の領域、およびスラッジファネル内の領域は、この定義に照らし合わせると、沈殿槽の沈降室には当てはまらず、入口構造下の領域およびスラッジファネル内の領域は、入口構造および沈降室のどちらにも属さない。
【0008】
給気槽から二次浄化への、つまり、入口構造への流入は、通常、沈降工程を避けるため、高速で、例えば、約70cm/秒~約1.5m/秒の範囲の最大流量を有する高い運動エネルギーで行われる。しかしながら、入口開口部における適正入口速度、つまり、沈殿槽の沈降室への流入速度の測定は、正確には、沈降を避けるための高エネルギーの側面からなされるのではなく、むしろ、最小エネルギー入力に対する最適化により、沈降工程阻害を避ける側面からなされる。入口開口部におけるエネルギー流を確定する測度として、密度フルード数Fが用いられる。F=1が満たされる場合、潜在エネルギー流および沈殿槽への運動エネルギー流の圧力成分の総和は、最小限となる。これにより、入口開口部の所定の線形伸長LINは、エネルギー的に最適な入口伸長hoptから導出され、hopt=(Q IN/B IN/g′)1/3を満たすように、hoptは、現状の流入QINおよび密度測定上、有効なリフト加速g′に依存する。沈殿槽への物理的に不必要なエネルギー入力は、逆効果となる乱流および撹拌工程を引き起こす。そのため、流入に必要なエネルギー入力が最小ですむため、F=1を満たす、あるいはhoptを有する流入は、明らかに最適であるといえる。境界状況によっては、二次浄化における入口開口部を通る流速度は、不可に依存し、F=1の条件を満たす時、約4cm/秒~8cm/秒となるのが最適である。したがって、入口構造は、E=1/2QUで定義される運動エネルギー流Eを発散させる、重要な第1の機能を有していることが明らかである。運動エネルギー流Eは、入口構造への入口において、1,000倍、あるいは、その体積の範囲内で、排出口での最適な運動エネルギー流(150/4>>1.000)の99.9%に達することができる。目的とするブレーキ比およびエネルギー発散効果を得るため、口径または密閉空間から測る入口管の大きさを大幅に超えるという特徴を備えた「入口構造の大きさ」に加え、流れを促進させる目的で設置、延長する多孔板、デフレクタ、オリフィス板、およびラメラと同様に、形状という点においては、入口構造および入口開口部の幾何学形状にも着目する。したがって、入口構造は、管とは比べ物にならないほど大きな体積を有する、独立した構造である。
【0009】
二次浄化への流入は、常に大きな乱流を伴い、レイノルズ数Re>>500を満たす。沈殿槽において、そこに到達する乱流運動エネルギーは、特に、二次浄化における「沈積物高さ」と呼ばれる層境界において、密度層化流を不安定化させるという負の特性を有する。乱流により、沈積物高さが不安定になった結果、微細な浮遊粒子が浄水中に渦巻き、そして、体積流Qと共に排出される。沈降室に到達する不安定な乱流運動エネルギーは、体積流が増加するのとともに増加する。したがって、沈殿槽に体積分流を不用意に導いてしまった場合、層境界において、本来であれば避けられる微細な浮遊粒子の放出につながる。特許文献1は、浮力エネルギーEおよび圧力成分Eのエネルギー入力、そして最終的には、運動エネルギー流Eのエネルギー入力を最小限にすることを目的としている。この目的において、沈殿槽において、いかなるタイミング、いかなる流れによる負荷がかかったとしても、E=0およびF=1が満たせるように、また、入口構造から直接、槽の沈降室に向かって、主に水平方向に、流入QINが起こるように、入口構造の形状および入口開口部の形状を、変動する流境界に常時適応させる。そのため、既述の技術では、エネルギー最適化において避けては通れない最小エネルギー流Eを、粘度が増した懸濁液に対し、斜めに、あるいは、垂直方向に導入することを確実に避ける。斜めに、あるいは、垂直方向に導入された場合、特に高負荷層、つまり高いQでは、既に分離した濁物質が再び撹拌され、懸濁してしまう。こうした再懸濁液では、槽の内部負荷、特に高い外部負荷Qが再び大幅に増加してしまうというデメリットが生じてしまう。
【0010】
当分野での長きにわたる調査および種々の根本的改良にも関わらず、こうした槽は、特にQINを低減することにおいて、未だ最適に機能しているとは言えない。分離性能は、未だ満足のいくものではなく、QINを低減するという目的においては改善の余地がある。特に、後ほど明らかにする軽量層の排出値は、Qの低減に伴い、さらに低減させることができる。よって、沈殿槽にQINを垂直に導くとする当技術の現状では、既述の通り、入口でエネルギーが生じることが避けられず、既に沈降した濁物質を再び浮遊させ、再懸濁液となることにより、沈殿槽内の負荷を大幅に増加させてしまうという、明らかなデメリットが存在する。流入する懸濁液が入口構造から垂直方向に流出し、Qが増加、つまり、Q負荷の絶対値が、水平排出の場合と比べて、明らかに低い場合、沈殿槽は早い段階で機能を果たせなくなる。垂直方向に流入させることのデメリットは、当該技術分野において、Qが多く高い負荷がかかる際に、特に顕著である。一方、水平排出であっても、特に、低負荷の場合、つまり、沈積物から分離する、処理済排水におけるQの量が小さく、それに伴って、沈積物高さが槽内の深いところにある場合に、明確なデメリットが存在する。しかしながら、機械的な制限により、最小体積流Qは高いままである。このように、高いままのQとQの和である体積流QIN(QIN=Q+Q)は、低負荷(小さいQ)の場合、沈積物が少ない、あるいは、さらに低負荷の場合、沈積物のない沈降室に、大きい乱流エネルギーと共に、直接水平方向に進入することになる。結果、乱流による不安定化を招き、これにより、浄水に多くの微細な浮遊粒子が進入することになる。槽が、常時、エネルギー的に最適化可能な領域AINにおいて、流入の変動を許容する特許文献1に記載の入口形状を有していたとしても、特に、低負荷の場合、不利な方向、一般的には、主に水平流出方向でのデメリットは解消されない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】欧州特許第1607127号明細書
【文献】米国特許第4222879号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
当該技術分野における上述のデメリットを鑑みると、技術課題は、最適な沈殿槽を設計することにあり、具体的に、沈殿槽は、第一に、高負荷において、可能な限り高い分離性能を発揮し、第二に、あらゆる負荷において、優れた排出値を出し、第三に、継続的なエネルギー最適化により低内部負荷を増加させ、かつ、第四に、特に、槽の主流における不必要な流成分に対して、あまり干渉しない動作を行うこと、を特徴とする。本発明は、下記の実現をもって、技術的課題を解決しようとするものである。すなわち、特許文献1で記載されるように、低負荷において、入口構造から流れ出る体積流が、槽に向かって、深く多量に水平方向に流れないように、また、少なくとも充分な量の部分流Qが、入口構造から分流して、大部分は垂直方向に、あるいは、従来の水平流入方向とは違う方向に、流れるようにする。よって、クロックポジションにおいて、水平流出の大部分における主流方向が略二時から四時方向である場合、主流において負の影響を持つ、少なくとも一部の流れは、低負荷において、略五時から九時方向、極端な場合、略十一時方向に向かって、入口構造から離れるように流れる。この場合、入口体積流QIN(Q+Qの和)から体積流Qに流入する、少なくとも一部の乱流は、主流と共に直接槽内に、そして槽を通って流れることはないという利点を有する。よって、この部分流は、沈積物高さでの、不安定な乱流エネルギーに寄与しない。さらに、特に低負荷の場合において、少なくとも一つの入口開口部は、槽の深い位置にあるという利点がある。しかしながら、高負荷の場合、総体積流QIN全体、あるいはその少なくとも大部分は、槽の深くに流れ込んで、既に沈降した沈積物を再び浮遊させないように、しかし同時に、高すぎる位置まで上がって、浄水に流れ込まないように、主に水平方向に、つまり、略二時から四時方向に向かって流れる。
【課題を解決するための手段】
【0013】
入口構造から主に垂直方向に流出する際の利点は、沈積物を吸い出す窪み部、いわゆるスラッジファネルの近傍に入口開口部が位置する槽において、充分な量の流入体積流が、スラッジファネルに向かって、あるいはスラッジファネル内に流れ込む際に発揮される。入口開口部がスラッジファネルから離れて位置する槽、あるいは、スラッジファネルが設けられていない槽において、主に垂直方向に流出際の利点は、流れ込む体積流が、まず底部に直接導かれ、底部と構造との間に入る際に発揮される。前記構造は、流れが上向きになり、入口構造の下の領域に入ることを制限する。
【0014】
入口開口部を異なる方向に向けて、入口方向も異なる方向に向くように、入口開口部同士の境界を位置づける。もしくは、体積流の一部あるいは体積流全体を、開き状態の、あるいは少なくとも一部が閉状態の、複数の入口開口部に向かって一時的に流し、負荷によっては、入口構造から、大部分を水平方向に、あるいは大部分を垂直方向に流出させる。上記どちらの方法でも、異なる負荷で体積流を制御することができる。入口開口部の総領域AINは、有利に変動するよう設計され、それにより、少なくとも大部分において、各流入量でFr=1が満たされるよう最適化される。よって、体積流および/または投入懸濁液の濃度に依存して、入口領域における、元来回避可能な、不安定なモーメント変化を、負荷に依存する方向の変化とともに、防ぐことができる。
【0015】
流入位置を揃える際の、負荷に依存する最適化は、入口開口部の向きを変化させることによって実現される。入口開口部の向きを変化させるには、入口開口部の上端および下端の相対配置を変化させるか、総流を、少なくとも二つの部分流QおよびQ(QIN=Q+Q=Q+Qii=Q+Qを満たす)に分流する際に、変化をつける。ここで、QおよびQは、少なくとも二つの異なる方向、つまり、少なくとも二つの異なる部分領域AおよびAiiを通って、槽に流れ込む。この過程において、一般的に、水平部分流Qおよび垂直部分流Qは、体積流QおよびQとは総和が等しいが、比の値は異なる。また、負荷の計量検知と、流れによる負荷に応じた、沈殿槽の入口開口部の種類および大きさの調整によって、分流が行われる。例えば、流圧や濃度差を利用した、完全自動あるいは部分自動の調整は、本発明に反するものではない。本発明の目的は、請求項1に記載の方法により達成される。前記方法では、多層液体が、入口構造から、少なくとも一つの槽へ、少なくとも一つの入口構造および可変するよう設計された、少なくとも一つの入口開口部を通って、入口体積流QINで排出され、少なくとも一つの戻り体積流Qおよび一つの排出体積流Qの、異なる重量を有する層に分離され、いずれの層も、少なくとも一つの、かつ少なくとも一時的に沈殿槽内に分離される。流入QINは、入口構造内あるいは入口構造付近において、エネルギー的に最適化されており、少なくとも一つの入口開口部ともう一方の入り口開口部との流入境界の位置を異ならせることにより、あるいは、少なくとも二つの部分流QおよびQに、少なくとも一時的に分離することによって、流入QINは、入口構造を離れ、負荷状況に応じて、すなわち、高負荷の場合、主に二時から四時方向、および、低負荷の場合、主に五時から十一時方向のように、異なる方向、あるいは異なる方向に向けた流れに向かう、ことを特徴とする。
【0016】
本発明の目的は、請求項4に記載の沈殿槽により達成される。前記沈殿槽では、多層液体が、少なくとも一つの入口構造、および可変するよう設計された、少なくとも一つの入口開口部を通って、少なくとも一つの、かつ少なくとも一時的な沈殿槽に入口体積流QINで供給され、少なくとも一つの戻り体積流Qおよび一つの排出体積流Qの、異なる重量を有する層に分離される。いずれにおいても、流入QINは、入口構造内あるいは入口構造付近において、エネルギー的に最適化され、少なくとも一つの入口開口部ともう一方の入り口開口部との流入境界の位置を異ならせることにより、あるいは、少なくとも二つの部分流QおよびQに、少なくとも一時的に分離することによって、流入QINは、負荷状況に応じて、すなわち、高負荷の場合、主に二時から四時方向、および、低負荷の場合、主に、少なくとも大部分は、四時から十一時方向のように、異なる方向、あるいは異なる部分領域を通って、槽まで流れることを特徴とする。
【0017】
本発明の有利な実施形態は、従属項よりもたらされる。
【発明の効果】
【0018】
槽の入口構造における入口開口部が、二つの高さが変動する境界によって画定されることによって、前記槽の設計上の利点が発揮されている。これらの境界は、少なくとも一つの境界が、もう一方の境界の高さの上、あるいは下になるよう、設計されている。例えば、円形入口構造の場合、入口開口部が、垂直方向に伸縮するシリンダおよび垂直方向に変位可能なリング板によって画定され、シリンダの内径がリング板の外径よりも大きい。シリンダの高さが変動する下端が、リング板の上端の現状の高さよりも上に配置されている場合、変動する大きさを有し、垂直方向に向いている入口開口部の境界は、この二つの部位によって形成される。そのため、その境界の大部分は水平方向に貫流され、同時に、エネルギー的に、流れによる負荷に最適化される。シリンダの下端が、リング板の上端の高さよりも下に配置されている場合、変動する大きさを有し、水平方向に向いている入口開口部の境界は、この二つの部位によって形成される。そのため、その境界の大部分は垂直方向に貫流され、また、エネルギー的に最適化される。
【0019】
入口構造の入口開口部が二つの高さが変動する境界によって画定され、下に位置する流境界が、少なくとも二つの部位からなることによって、前記槽の設計上の利点が発揮されている。低い位置において、下に位置する流境界が有する二つの部位は、異なる高さにあり、そのため、第2の貫流領域がこの二つの部位の間に広がっている。また、前記領域を流れる体積分流Qを、主に垂直方向に略五時から九時方向まで、もしくは、主流方向に逆らって略十一時方向まで流す。
【0020】
種々に設計された入口開口部を槽の周囲に配置することによって、前記槽を円形または矩形に設計する際の利点が発揮されている。
【0021】
流れ込む懸濁液への干渉として、入口の上に位置する流路偏向板を通して、沈殿槽の下部領域から、より高い濃度の懸濁液を排他的に供給することを確実にする。これにより、フロックフィルタ効果を意図した、より高い濃度を有する領域からの建設的干渉を促進することができる。
【0022】
本発明の実施形態は、添付の図面を参照しながら、以下の説明から、より詳細に明らかにされる。添付の図面は以下の通りである。全ての図面において、沈殿槽は、最大限に簡素化した断面図にて表す。同一要素は、同一符号を付すことによって示す。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1a】二つの高さが変動する境界を有する入口構造が配置された、円形沈殿槽または矩形沈殿槽を表し、入口構造は、少なくとも一つの境界が、他方の境界の高さよりも上あるいは下にくることができるよう設計され、これにより、低負荷(図1a)の場合、流入量が入口構造から垂直方向に導かれ、高負荷(図1bおよび図1c)の場合は、水平方向に導かれる。
図1b】二つの高さが変動する境界を有する入口構造が配置された、円形沈殿槽または矩形沈殿槽を表し、入口構造は、少なくとも一つの境界が、他方の境界の高さよりも上あるいは下にくることができるよう設計され、これにより、低負荷(図1a)の場合、流入量が入口構造から垂直方向に導かれ、高負荷(図1bおよび図1c)の場合は、水平方向に導かれる。
図1c】二つの高さが変動する境界を有する入口構造が配置された、円形沈殿槽または矩形沈殿槽を表し、入口構造は、少なくとも一つの境界が、他方の境界の高さよりも上あるいは下にくることができるよう設計され、これにより、低負荷(図1a)の場合、流入量が入口構造から垂直方向に導かれ、高負荷(図1bおよび図1c)の場合は、水平方向に導かれる。
図2a】二つの高さが変動する境界を有する入口構造が配置された沈殿槽を表し、ここで、低い方の流境界は、二つの部位からなる。最低位置において、流入してきた流れは、Q図1a)として垂直方向に導かれ、中間位置では、垂直流入Qおよび水平方向に導かれる流入Q図1a)に分流され、高い位置では、Qとして、排他的に水平方向に導かれる。
図2b】二つの高さが変動する境界を有する入口構造が配置された沈殿槽を表し、ここで、低い方の流境界は、二つの部位からなる。最低位置において、流入してきた流れは、Q図1a)として垂直方向に導かれ、中間位置では、垂直流入Qおよび水平方向に導かれる流入Q図1a)に分流され、高い位置では、Qとして、排他的に水平方向に導かれる。
図2c】二つの高さが変動する境界を有する入口構造が配置された沈殿槽を表し、ここで、低い方の流境界は、二つの部位からなる。最低位置において、流入してきた流れは、Q図1a)として垂直方向に導かれ、中間位置では、垂直流入Qおよび水平方向に導かれる流入Q図1a)に分流され、高い位置では、Qとして、排他的に水平方向に導かれる。
図3a】二つの高さが変動する境界および二つの部位からなる、低い方の流境界を有する入口構造が配置される沈殿槽を表し、最低位置において、流入してきた流れは、Qとして、略九時から十一時方向(図3a)に、内側に向かい、高い位置では、Qとして、排他的に水平方向に導かれる。
図3b】二つの高さが変動する境界および二つの部位からなる、低い方の流境界を有する入口構造が配置される沈殿槽を表し、最低位置において、流入してきた流れは、Qとして、略九時から十一時方向(図3a)に、内側に向かい、高い位置では、Qとして、排他的に水平方向に導かれる。
図4a】二つの高さが変動する境界および固定配置された流路偏向板7を有する入口構造が配置される沈殿槽を表し、最低位置において、流入してきた流れは、流路偏向板7(図4a)によって垂直偏向されたQとして、垂直方向に導かれ、高い位置では、Qとして、排他的に水平方向に導かれる(図4a)。
図4b】二つの高さが変動する境界および固定配置された流路偏向板7を有する入口構造が配置される沈殿槽を表し、最低位置において、流入してきた流れは、流路偏向板7(図4a)によって垂直偏向されたQとして、垂直方向に導かれ、高い位置では、Qとして、排他的に水平方向に導かれる(図4a)。
図5a】二つの高さが変動する境界を有し、角度が調節可能な流路偏向板6を一方の境界に有する入口構造を配置した沈殿槽を表し、最低位置において、流入してきた流れは、角度が調節可能な流路偏向板(図5a)を通って、Qとして、垂直方向に導かれ、高い位置では、Qとして、排他的に水平方向に導かれる(図5a)。
図5b】二つの高さが変動する境界を有し、角度が調節可能な流路偏向板6を一方の境界に有する入口構造を配置した沈殿槽を表し、最低位置において、流入してきた流れは、角度が調節可能な流路偏向板(図5a)を通って、Qとして、垂直方向に導かれ、高い位置では、Qとして、排他的に水平方向に導かれる(図5a)。
図6a】基本的に、本発明が、入口構造が設けられている槽が矩形か円形か、また、入口構造が設けられている位置が槽の中間か層の周辺かに依存しないことを示し、図6aは、図1の周辺を表す。
図6b】基本的に、本発明が、入口構造が設けられている槽が矩形か円形か、また、入口構造が設けられている位置が槽の中間か層の周辺かに依存しないことを示し、図6bは、一例として、本発明と同様の設計が、中央配置にてなされた場合を表す。
図7a】本発明を円形沈殿槽における中心設計に適用した場合の模式断面図である。
図7b】本発明を円形沈殿槽における中心設計に適用した場合の模式断面図である。
図7c】本発明を円形沈殿槽における中心設計に適用した場合の模式断面図である。
図8a】本発明を円形沈殿槽における中心設計に適用した場合の模式断面図である。
図8b】本発明を円形沈殿槽における中心設計に適用した場合の模式断面図である。
図8c】本発明を円形沈殿槽における中心設計に適用した場合の模式断面図である。
図9a】本発明を円形沈殿槽における周辺設計に適用した場合の模式断面図である。
図9b】本発明を円形沈殿槽における周辺設計に適用した場合の模式断面図である。
図9c】本発明を矩形沈殿槽における周辺設計に適用した場合の模式断面図である。
図9d】本発明を矩形沈殿槽における周辺設計に適用した場合の模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図1a乃至図1cに、その一部が例示される槽1は、円形あるいは矩形(1aまたは1b)であり、入口構造2を有する。入口構造2は、入口開口部3を有し、境界4および5aによって画定される。入口開口部3は、負荷に応じて、ひいては、高さが伸長することで変動する壁4の調整された高さ、およびその高さが変動する装置5aに応じて、基本的には水平方向に貫流される入口開口部3a、あるいは、基本的には直角に、つまり垂直方向に、または内側方向に貫流される入口開口部3bのいずれかになる。
【0025】
図1aは、低負荷時に、壁4が下まで伸長し、その下端が装置5aの高さよりも下にある状態を表す。発揮される利点として、壁4は、少なくとも、装置5aの外端と壁4の内端との間の水平方向の距離と同じ分だけ、装置5aの高さから下方向に伸長することができる。これにより、開口部3bは、内側方向に、少なくとも水平方向に対して45度の角度で傾斜する。仕切ミラー10は、低負荷に対応するような深さに位置する。この構成において、基本的には直角に、つまり垂直方向に、または内側方向に貫流される入口開口部3bは、壁4の下端および装置5aの外端によって形成される。
【0026】
図1bは、中程度の負荷時の状態を表す。仕切ミラー10は、わずかに上昇しており、壁4は、その下端の高さが装置5aの高さよりも上になるよう、短縮している。ここで、本発明の目的に係る、基本的には水平方向に貫流される入口開口部は、壁4の下端および装置5aの外端によって形成される。壁4の下部領域の偏向ガイド板4aによって、入口開口部での水平流が保たれる。これにより、高負荷時に、壁4に沿った垂直流を回避し、流れを内側方向に、水平面に向かって流す。その結果、流れが、水平方向に、かつ外側方向に向かって、装置5aに押し付けられる。
【0027】
図1cは、高負荷時の状態を表す。仕切ミラー10は、さらに上昇し、壁4はより短縮され、装置5aは、わずかに上に移動している。ここでもまた、ともに偏向ガイド板4aに支持される壁4および装置5aが、本発明に係る入口開口部を形成する。入口開口部は、高負荷時、基本的には水平方向に貫流されるが、増加した入口伸長hoptを有する、より大きい流入QINにおいて、流境界の高さの差がさらに広がることによりエネルギーが最適化されている。
【0028】
図2a乃至図2cは、入口開口部3aおよび/または3bを有する境界4および5bによって画定される、入口構造2を表す。入口開口部3は、負荷に応じて、ひいては、高さが伸長することで変動する壁4の調整された高さ、およびその高さが変動する装置5bに応じて、基本的には水平方向に貫流される入口開口部3a(図2bおよび図2c)、あるいは、基本的には直角に、つまり垂直方向に、または内側方向に貫流される入口開口部3b(図2aおよび図2b)のいずれかになる。部分PおよびPを有する板Pとして例示される多元下部偏向5bは、体積流Qを、形成される入口開口部3b(図2a)を経由して垂直方向に導き、体積流Qを垂直方向に、そして体積流QIIを水平方向に、同時に、開口部3aおよび3b(図2b)を経由して導き、図2cでは、体積流QIIを、開口部3aを経由して水平方向に導く。
【0029】
図3aおよび3bは、さらに流路偏向5cを有する多元下部偏向を備えた入口構造2を表す。図3aでは、流路偏向5cは、体積流を、九時から十一時方向に逆流させ、一方、図3bでは、体積流は、正面に向かって、主に水平方向に流出する。
【0030】
図4aおよび図4bは、単元下部偏向5aと、さらに固定配置された流路板7とを備えた入口構造2を表す。図4aでは、流路板7は、体積流を垂直方向に導き、一方、図4bでは、体積流は、正面に向かって、主に水平方向に流出する。
【0031】
図5aおよび図5bは、単元下部偏向5aと、さらに角度が調節可能な流路偏向板6とを備えた入口構造2を表す。図5aでは、流路偏向板6は、体積流を垂直方向に導き、一方、図5bでは、体積流は、正面に向かって、主に水平方向に流出する。
【0032】
図6aおよび図6bは、本発明と同様の特徴が、周辺設計(図6a)および中心設計(図6b)においても実現されることを示す。
【0033】
同様に、図7図8、および図9もまた、異なる形状の沈殿槽を模式断面図に表しながら、本発明の特徴は、槽の形状に依存するものではないことを示し、一例として、本発明を円形沈殿槽(図7および図8)における中心設計に適用し、さらに円形沈殿槽(図9aおよび図9b)および矩形沈殿槽(図9cおよび図9d)の周辺設計においても適用可能であることを示している。
【符号の説明】
【0034】
1a 円形槽
1b 矩形槽
2 入口構造
3 入口開口部
3a 基本的には水平方向に貫流される入口開口部
3b 基本的には直角に、垂直方向または内側に貫流される入口開口部
4 高さ、つまり垂直伸長が調整可能な壁
4a 壁4の下部領域にある偏向ガイド板
5a 内側偏向同様、下部の、かつ一時的な単元あるいは多元装置
5b 一時的に、体積流QおよびQII、また同時に体積流QIIの流境界における分流装置としても機能する、部分PおよびPからなる板Pとしての多元下部偏向装置
5c 体積流QIIをさらに上方流路偏向する、5bに準ずる装置
6 角度が調節可能な流路偏向板
7 固定配置された流路偏向板
8 浄水排出
9 濁物質排出
10 仕切ミラー
P 部分板PおよびPを有する板
IN 入口体積流
領域Aの部分領域を流れる体積分流
II 領域AIIの部分領域を流れる体積分流
図1a
図1b
図1c
図2a
図2b
図2c
図3a
図3b
図4a
図4b
図5a
図5b
図6a
図6b
図7a
図7b
図7c
図8a
図8b
図8c
図8d
図9a
図9b
図9c
図9d