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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-26
(45)【発行日】2022-11-04
(54)【発明の名称】靴下
(51)【国際特許分類】
   A41B 11/00 20060101AFI20221027BHJP
【FI】
A41B11/00 K
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2017207589
(22)【出願日】2017-10-26
(65)【公開番号】P2019077972
(43)【公開日】2019-05-23
【審査請求日】2020-08-03
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000151380
【氏名又は名称】アルケア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112874
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 薫
(72)【発明者】
【氏名】真田 亜希子
(72)【発明者】
【氏名】藤田 裕貴
【審査官】▲桑▼原 恭雄
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-106047(JP,A)
【文献】実開平06-004006(JP,U)
【文献】特開2007-144075(JP,A)
【文献】登録実用新案第3211225(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A41B 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、つま先部、踵部、足首部、ふくらはぎ部、及び足口部、からなる弾力性の靴下において、
少なくとも前記ふくらはぎ部に前記靴下の長手方向のねじれを確認するねじれ確認部が前記靴下の長手方向に沿って設けられ
前記ねじれ確認部は、前記足首部から前記足口部の下部まで連続して設けられ、
前記ねじれ確認部は、靴下の表面に浮き出るように形成され、
前記ねじれ確認部は、フロート編みで形成され、且つ、
前記ねじれ確認部の周囲は、プレーン編みで形成された、靴下。
【請求項2】
前記ねじれ確認部は、視覚及び/又は触覚による識別を可能に形成された、請求項1に記載の靴下。
【請求項3】
前記ねじれ確認部は、足口部側より足首側のほうが表面に浮き出るように形成された、請求項1又は2に記載の靴下。
【請求項4】
前記足口部に設けられる足口の位置合わせをする足口用位置教示部、前記つま先部に設けられるつま先の位置合わせをするつま先用位置教示部、又は前記踵部に設けられる踵の位置合わせをする踵用位置教示部、のいずれか1以上の視覚及び/又は触覚による識別を可能に形成された位置教示部が設けられた、請求項1からのいずれか一項に記載の靴下。
【請求項5】
前記位置教示部は、文字又は図により装着部位の名称が表記された、請求項に記載の靴下。
【請求項6】
前記位置教示部は、前記靴下の足口部側から視てその文字又は図が視認できるように表記された、請求項に記載の靴下。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、靴下に関する。より詳しくは、所定の位置で着用し、適正な着圧のもとで着用することができる弾力性の靴下に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、下肢における静脈瘤、静脈血栓症といった静脈還流障害やリンパ浮腫等の疾患の予防又は治療等に弾力性の靴下が用いられる。また、日常生活における下肢の疲れやむくみの予防又は軽減等にもこのような靴下が用いられる。
【0003】
このような弾力性靴下は、普通の靴下に比べ、下肢を外側から強く圧迫するようにつくられており、静脈還流を効果的に促進させるために、足首部から大腿部へと段階的に圧迫圧が弱くなるように設計されている。このような弾力性靴下を装着する際には、その単調な筒型形状、個人の体型差や靴下のサイズ等が関係して、靴下の特定部位が意図した下肢部位に装着されない場合があり、靴下に施した前記圧迫圧分布が有効に発揮されない問題があった。また、この種の靴下は、下肢に強い圧迫圧をかけるため、非常に強い弾力性を有しており、装着する時に大きな力を要するため、女性や高齢者、関節障害のある患者等にとっては、装着するのが容易ではなく、適切な部位に靴下を装着する困難さは更に増大する。このような問題に対して、所定の圧迫圧分布を備える弾力性靴下において、装着する部位の認識用のマークを設けた靴下が提案されている(特許文献1、2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2006-9216号公報
【文献】特開2006-124874号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来提案されていた弾力性靴下に付与された部位認識用のマークは、部分的に付与された単調な形状であるため、その表示をどの部位に合わせればよいか分かりにくい場合があり、特に、装着する患者などにとっては装着時の姿勢や向きによって必ずしも認識が容易でなかった。
【0006】
そこで、本発明では、上述した問題点に鑑み、所定の位置で着用し、適正な着圧のもとで着用することができる弾力性の靴下を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本技術では、少なくとも、つま先部、踵部、足首部、ふくらはぎ部、及び足口部、からなる弾力性の靴下において、少なくとも前記ふくらはぎ部に前記靴下の長手方向のねじれを確認するねじれ確認部が前記靴下の長手方向に沿って設けられた、靴下を提供する。
また、本技術において、前記ねじれ確認部は、前記足首部から前記足口部の下部まで連続して設けられていてもよい。
更に、本技術において、前記ねじれ確認部は、視覚及び/又は触覚による識別を可能に形成されていてもよい。
加えて、本技術において、前記ねじれ確認部は、靴下の表面に浮き出るように形成されていてもよい。この場合、前記ねじれ確認部は、足口部側より足首側のほうが表面に浮き出るように形成されていてもよい。
また、本技術において、前記ねじれ確認部は、フロート編みで形成されていてもよい。
更に、本技術において、前記ねじれ確認部の周囲は、プレーン編みで形成されていてもよい。
【0008】
また、本技術では、前記足口部に設けられる足口の位置合わせをする足口用位置教示部、前記つま先部に設けられるつま先の位置合わせをするつま先用位置教示部、又は前記踵部に設けられる踵の位置合わせをする踵用位置教示部、のいずれか1以上の視覚及び/又は触覚による識別を可能に形成された位置教示部が設けられていてもよい。
更に、本技術において、前記位置教示部は、文字又は図により装着部位の名称が表記されていてもよい。この場合、前記位置教示部は、前記靴下の足口部側から視てその文字又は図が視認できるように表記されていてもよい。
【0009】
本技術に係る靴下において、「つま先部」とは、人体のつま先を覆う部分であり、「踵部」とは、人体の踵を覆う部分であり、「足首部」とは、人体の足首を覆う部分であり、「ふくらはぎ部」とは、人体のふくらはぎを覆う部分である。また、「足口部」とは、本技術に係る靴下の足口の部分である。更に、「膝部」とは、人体の膝を覆う部分であり、「大腿中央部」とは、人体の大腿中央を覆う部分である。
【発明の効果】
【0010】
本技術によれば、弾力性の靴下を、所定の位置で着用し、適正な着圧のもとで着用することができる。なお、ここに記載された効果は、必ずしも限定されるものではなく、本開示中に記載されたいずれかの効果であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本技術に係る靴下10の第1実施形態を示す六面図である。
図2】本技術に係る靴下10の第2実施形態を示す六面図である。
図3】本技術に係る靴下10の他の実施形態を示す正面図である。
図4】本技術に係る靴下10の他の実施形態を示す正面図である。
図5】位置教示部を設けた、本技術に係る靴下10の第3実施形態を示す六面図である。
図6】位置教示部を設けた、本技術に係る靴下10の第4実施形態を示す六面図である。
図7】位置教示部を設けた、本技術に係る靴下10の他の実施形態を示す正面図である。
図8】位置教示部を設けた、本技術に係る靴下10の他の実施形態を示す正面図である。
図9】第3実施形態に係る靴下10の使用状態を説明する状態説明図である。
図10】第4実施形態に係る靴下10の使用状態を説明する状態説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本技術を適用可能な実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、以下に説明する実施形態は、本技術の代表的な実施形態の一例を示したものであり、これにより本技術の範囲が狭く解釈されることはない。
【0013】
<1.靴下10>
本技術に係る靴下10は、少なくとも、つま先部1、踵部2、足首部3、ふくらはぎ部4、及び足口部5、からなる弾力性の靴下において、少なくともふくらはぎ部4に靴下10の長手方向のねじれを確認するねじれ確認部20が靴下10の長手方向に沿って設けられたことを特徴とする。また、靴下10は、必要に応じて、膝部6、大腿中央部7までを覆っていてもよく、図1で示したハイソックス、及び図2で示したストッキング以外の、オーバーニーソックスやパンティーストッキング等の外形を呈していてもよい。
【0014】
靴下10における編構造は、従来公知の編構造を採用でき、例えば、平編み、ゴム編、パール編等を用いることができる。また、使用する糸も従来公知のものを採用でき、例えば、編構造の編目を構成する糸としてナイロンマルチフィラメント、その編目に横方向から挿入する糸としてポリウレタン弾性糸等を用いることができる。この横方向に挿入する弾性糸としては、ポリウレタン弾性糸を芯糸として、その周囲に他の糸を巻きつけたカバードヤーンを用いることが好ましい。靴下の圧迫圧は、糸の密度、編み目の大きさ、弾性糸の伸張度をコントロールすることで、所定の値を付与することができる。
【0015】
本技術において、下肢への圧迫圧は特に限定されないが、足首部3からふくらはぎ部4へと順次圧迫圧が弱くなる圧迫圧分布を備えることが好ましい。例えば、足首部3の圧迫圧を100としたとき、ふくらはぎ部4の圧迫圧の比は44~80の範囲とすることが好ましい。また、靴下10が大腿中央部7まで覆う場合は、足首部3から大腿部中央部7へと順次圧迫圧が弱くなる圧迫圧分布を備えることが好ましい。例えば、足首部3の圧迫圧を100としたとき、ふくらはぎ部4の圧迫圧の比は44~80、大腿中央部7の圧迫圧は20~65の範囲とすることが好ましい。これにより、圧迫療法や血栓予防等に好適な圧迫圧及び圧迫圧分布が得られる。
【0016】
また、足首部3、ふくらはぎ部4、又は大腿中央部7の圧迫圧は、具体的には、それぞれ、15~67hPa、9~54hPa、4~44hPaとすることが好ましい。これにより、圧迫療法や血栓予防等に好適な圧迫圧及び圧迫圧分布が得られる。前記各部の圧迫圧は、例えば、圧力測定器MST(Salzmann AG社製)を使用し、以下のように定義する測定部位に対し計測することができる。すなわち、足首部3は、下腿最小囲部分であり、ふくらはぎ部4は、下腿最大囲部分であり、大腿中央部7は、股下部と膝蓋骨中央部の中央部分である。
【0017】
<2.ねじれ確認部20>
本技術では、図1及び図2等に示すように、少なくともふくらはぎ部4に靴下10の長手方向のねじれを確認するねじれ確認部20が靴下10の長手方向に沿って設けられていることを特徴とする。弾力性の靴下は、ねじれたまま着用していると、ねじれた部分を圧迫し過ぎてしまうなど、所望の圧迫圧を所定の部位に付与することができない。そこで、ねじれ確認部20を設けることで、靴下10のねじれの程度を確認でき、適正な着圧のもとで着用することができる。
【0018】
ねじれ確認部20は、特に限定されないが、視覚及び/又は触覚による識別を可能に形成されていることが好ましい。これにより、ねじれの程度をより確実に把握することができる。具体的には、ねじれ確認部20は、例えば、図1図4に示すように、視覚による識別を可能に形成する場合には、点、線、幾何学的模様、文字、図等の1種又は複数の形状を組み合わせて靴下10の長手方向に線状に形成することができる。また、触覚による識別を可能にねじれ確認部20を形成する場合には、靴下の表面生地に凹凸等の触感の変化を与える編組織を用いる方法、樹脂・インク等の編組織を構成する糸とは別の材料を塗布・含浸して触感の変化を与える方法等を用いることができる。触覚による識別を可能にするねじれ確認部20も、視覚の場合と同様に、点、線、幾何学的模様、文字、図等の1種又は複数の形状を組み合わせて靴下10の長手方向に線状に形成することができる。また、これらを対象部位に部分的に設けてもよく、連続的、反復的、又は不連続的に設けてもよい。本技術では、特に、ねじれ確認部20を、図1図4に示すように、足首部3から足口部5の下部まで連続して設けることが好ましい。これにより、着用時にねじれ確認部20を認識しやすくなり、より効率的にねじれの解消を図ることができる。
【0019】
本技術において、ねじれ確認部20は、靴下10の表面に浮き出るように形成されていることが好ましい。これにより、位置教示部を視覚的及び触覚的に認識可能にすることもできる。また、この場合、ねじれ確認部20は、足口部5側より足首部3側のほうが表面に浮き出るように形成されていることが好ましい。ねじれ確認部20を靴下10の表面に浮き出るように形成することで、図5図6図9のA、及び図10のAに示すように、靴下の着用前及び着用時(靴下10が伸張された際)の両方においてねじれ確認部20を確認でき、更に着用前より着用時の方がより顕著にねじれ確認部20を確認することができる。
【0020】
本技術において、ねじれ確認部20は、靴下10の表側(皮膚と接触しない側)及び/又は裏側(皮膚と接触する側)に設けることができるが、少なくとも靴下10の表側に設けることが好ましい。
【0021】
ねじれ確認部20の形成方法としては、後述する位置教示部の形成方法と同様の方法を採用できるが、本技術では、特に、ねじれ確認部20とそれ以外の部分とで、異なる編組織を用いる方法が好ましい。これにより、靴下10を製作する際の編工程と同時に、このねじれ確認部20用の糸を編込むことが可能なため、製造上有利であり、更に、靴下10の編構造の一部として組み込むことにより、耐久性に優れたねじれ確認部20となる。また、このねじれ確認部20は、靴下10の編構造を構成する主要な糸と色、太さ、形体等の外観が異なる糸を編み込む又は縫い込んで、視覚的又は触覚的に認識可能なものとして形成することができる。
【0022】
本技術では、特に、ねじれ確認部20はフロート編みで形成されていることが好ましい。また、本技術では、特に、ねじれ確認部20の周囲は、プレーン編みで形成されていることが好ましい。ねじれ確認部20とそれ以外の部分をフロート編みとプレーン編みとで編み分けることで、適切な圧迫圧を確保しつつ、効率的にねじれ確認部20を形成することができ、靴下10の製造効率の向上を図ることができる。また、ねじれ確認部20とそれ以外の部分をフロート編みとプレーン編みとで編み分けることで、靴下の着用前及び着用時の両方においてねじれ確認部20を確認でき、更に着用前より着用時の方がより顕著にねじれ確認部20を確認することができる。
【0023】
<3.位置教示部>
図5は、位置教示部を設けた、本技術に係る靴下10の第3実施形態を示す六面図であり、図6は、位置教示部を設けた、本技術に係る靴下10の第4実施形態を示す六面図である。本技術では、このように、足口部5に設けられる足口の位置合わせをする足口用位置教示部51、つま先部1に設けられるつま先の位置合わせをするつま先用位置教示部11、及び踵に設けられる踵の位置合わせをする踵用位置教示部21からなる群のいずれか1以上の視覚及び/又は触覚による識別を可能に形成された位置教示部が設けることができる。また、靴下10が膝部6を覆う場合、靴下10は、膝の位置合わせをする膝用位置教示部61を設けていてもよい。靴下10に位置教示部を設けることにより、該位置教示部を手掛かりにして、弾力性の靴下10を、所定の位置で着用し、より適正な着圧のもとで着用することができる。その結果、所望の治癒効果を確実に得ることができる。
【0024】
また、位置教示部に基づいて着用すれば、前回着用時との位置関係の差異が殆どなくなるため、靴下10に緩みが生じた場合には、装着違和感に基づき、緩みの判別がつきやすくなる。これにより、靴下10を長期間、複数回に渡って使用した場合等に、靴下10の交換時を明確に判定できる。本技術において、位置教示部は、足口部5、つま先部1、及び踵部2からなる群のいずれか1以上の部位に設けられていればよいが、下肢全体に渡って正確な着用を期すためには、位置教示部を設ける部位は多いほどよく、図5及び図6等に示すように、全ての部位に設けることが好ましい。
【0025】
また、位置教示部は、視覚及び/又は触覚による識別を可能に形成されていれば特に限定されず、例えば、図5図8に示すように、視覚による識別を可能に形成する場合には、点、線、幾何学的模様、文字、図等の1種又は複数の形状を組み合わせて形成することができる。また、触覚による識別を可能に形成する場合には、靴下の表面生地に凹凸等の触感の変化を与える編組織を用いる方法、樹脂・インク等の編組織を構成する糸とは別の材料を塗布・含浸して触感の変化を与える方法等を用いることができる。また、これらを対象部位に部分的に設けてもよく、連続的、反復的、又は不連続的に設けてもよい。本技術では、特に、靴下10の周囲に連続的又は反復的に設ければ、着用時にどのような角度からでも位置教示部の位置が認識できるため好ましい。
【0026】
また、本技術において、位置教示部としては、特に、図5図6図7のA、及び図8のAに示すように、文字又は図により着用部位の名称が表記されていることが好ましい。これにより、単なるライン等で位置教示されている場合と比較して、医師、看護師、介護者等のみならず装着者自身も、着用部位を視覚で確実に把握することができる。着用部位の名称は、対象部位に対応したものであり、例えば、足口用位置教示部51であれば、「ひざ(膝)下」、「また(股)下」等、つま先用位置教示部11であれば、「つま(爪)先」等、踵用位置教示部21であれば、「かかと(踵)」等、膝用位置教示部61であれば、「ひざ(膝)」等の文字、又はこれらの名称に対応する図などを用いることができる。なお、本技術では、これらの位置教示部のうちいずれか一つ以上に文字又は図により着用部位の名称が表記されていることが好ましいが、特に、足口用位置教示部51に表記されていることが好ましい。
【0027】
また、本技術において、位置教示部は、図5図6図7のA、及び図8のAに示すように、靴下10の足口部側から視てその文字又は図が視認できるように表記されていることが好ましい。これにより、靴下10を着用した者が、上から足元を視た際に、文字が通常読む方向で確認できるため、確実に着用部位を確認することができる。本技術において、位置教示部は、靴下10の表側(皮膚と接触しない側)及び/又は裏側(皮膚と接触する側)に設けることができるが、少なくとも靴下10の表側に設けることが好ましい。
【0028】
位置教示部の形成方法としては、靴下10の編構造を構成する主要な糸とは異なる糸を靴下10の編構造に編込む(縫込む)方法、編構造に部分的に孔やスリットを形成し、この孔やスリット部分が位置教示部として認識できるように靴下10を編成する方法、染料の印刷又は樹脂を塗布する方法、靴下の所定位置に粘着シート又はテープを貼付する方法等が挙げられる。本技術においては、位置教示部の形成方法としては、特に、糸を編込む方法が好ましい。これにより、靴下10を製作する際の編工程と同時に、この位置教示部用の糸を編込むことが可能なため、製造上有利であり、更に、靴下10の編構造の一部として組み込むことにより、耐久性に優れた位置教示部となる。
【0029】
なお、この位置教示部用の糸は、靴下10の編構造を構成する主要な糸と色、太さ、形体等の外観が異なり、視覚的又は触覚的に認識可能なものを用いることができる。また、位置教示部となる糸は、靴下10の圧迫圧のバランスを崩さない程度に編込み、靴下10の周囲に線状に連続的に挿入することが好ましく、その線の幅は、0.05~50mmが好ましい。
【0030】
本技術では、特に、靴下10の編構造を、編目を構成する糸と、その編目の横方向に挿入される弾性糸から構成し、その編目を構成する糸に位置教示部用の糸を採用することが好ましい。これにより、編目を構成する糸の方が、横方向に挿入する弾性糸に比べ、靴下10の圧迫圧に与える影響が少ないため、適切な圧迫圧を確保し易くなる。なお、この編目を構成する糸に位置教示部用の糸を採用する場合は、位置教示部用の糸だけで編目を形成してもよいし、靴下10の編目を構成する主要な糸(位置教示部用の糸以外の糸)に、位置教示部用の糸を沿わせる又は並列させるように挿入し、その2つの糸で編目を形成するようにしてもよい。
【0031】
また、前記編構造に位置教示部用の糸を編み込む方法ではなく、前記染料の印刷又は樹脂を塗布する方法を採用する場合には、従来公知の方法が利用でき、例えば、インクジェットプリント、転写プリント、スクリーン印刷等が挙げられる。また、合成樹脂をストッキング表面に塗布し、その塗布厚により靴下表面に凹凸を形成したり、樹脂を塗布した部分だけ触感を変化させたりして、位置教示部を触覚的に認識可能にすることもできる。このようにすることで、視力が弱い人が自身で靴下10を着用する際に特に役立つ。また、靴下の所定位置に、粘着シート又はテープを貼付した場合は、着用後に取り外すことができるようにすることで、着用時の美観を向上させることができる。
【0032】
<4.その他>
本技術に係る靴下10は、必要に応じて、その他の構成を有していてもよい。
【0033】
[モニターホール8]
靴下10は、モニターホール8を設けていてもよい。このモニターホール8を介して、靴下10の着用時であっても、採血、つま先の状態確認等の必要な検査や施術を円滑に行うことができる。モニターホール8の形成位置は、特に限定されず、例えば、図5及び図6に示すように、つま先部1の上面側に設けることもできるし、図7のC及び図8のCに示すように、つま先部1の下面側に設けることもできる。また、モニターホール8を設けた場合、つま先用位置教示部11は、図5及び図6等に示すように、該モニターホール8の外周を囲うように設けることが好ましい。これにより、モニターホール8からつま先を飛び出させて着用するといった不適切な着用を防ぐことができる。
【0034】
[滑り止め]
靴下10は、装着時のズリ落ちを防止する滑り止めを所定の位置に設けていてもよい。滑り止めの形成位置は、特に限定されず、例えば、足口部の裏面に設けることができる。また、滑り止めの形成方法等も、特に限定されず、例えば、高摩擦性の繊維を靴下10の裏面に縫い付ける等して形成することができる。
【符号の説明】
【0035】
10 靴下
1 つま先部
11 つま先用位置教示部
2 踵部
21 踵用位置教示部
3 足首部
4 ふくらはぎ部
5 足口部
51 足口用位置教示部
6 膝部
61 膝用位置教示部
7 大腿中央部
8 モニターホール
20 ねじれ確認部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10