(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-26
(45)【発行日】2022-11-04
(54)【発明の名称】荷室ボード
(51)【国際特許分類】
B60R 7/08 20060101AFI20221027BHJP
【FI】
B60R7/08 R
(21)【出願番号】P 2019122242
(22)【出願日】2019-06-28
【審査請求日】2022-04-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000104674
【氏名又は名称】キョーラク株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126398
【氏名又は名称】浅野 典子
(72)【発明者】
【氏名】岩▲崎▼ 健司
【審査官】西田 侑以
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-187485(JP,A)
【文献】特開2000-177492(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0229642(US,A1)
【文献】国際公開第2014/102867(WO,A1)
【文献】特開平11-20850(JP,A)
【文献】国際公開第2016/125646(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 7/08
5/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂製の荷室ボード本体を有し開閉操作可能な荷室ボードであって、
前記荷室ボード本体にはテープ状の緩衝材が貼り付けられ、
前記緩衝材の少なくとも一方の端部において、荷室ボード本体の緩衝材貼り付け面に凹部が設けられ、前記緩衝材の端部が前記凹部内に入り込む形で貼り付けられていることを特徴とする荷室ボード。
【請求項2】
前記凹部は、前記緩衝材の端部に向うにしたがって次第に深さが深くなるように形成されており、前記緩衝材の端部における前記凹部の深さは緩衝材の厚さと略同一、若しくは緩衝材の厚さより深くされていることを特徴とする請求項1記載の荷室ボード。
【請求項3】
前記開閉操作の際に回動中心となる回動中心線と略直交する2辺に沿ってテープ状の緩衝材が貼り付けられ、
前記各緩衝材の回動中心線側の端部に前記凹部が設けられていることを特徴とする請求項1記載の荷室ボード。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、緩衝材を貼り付けた荷室ボードに関するものであり、特に、緩衝材の剥がれを防止する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、カーゴフロアパネル(自動車荷室の蓋パネルまたはラゲージボード)、リアパーセルシェルフ等の自動車用内装品しては、樹脂製の荷室ボードが知られている。中でも、熱可塑性樹脂をブロー成形することにより製造される中空成形体の表面に繊維シートを貼着した表皮付き中空成形体は、軽量で強度に優れるばかりでなく、外観や触感にも優れることから、この種の荷室ボードとして広く用いられている。
【0003】
例えば、特許文献1には、荷室ボード本体にストラップが取り付けられてなる荷室ボードが開示されており、当該荷室ボードでは、前記ストラップを利用して開閉操作を行うことが可能である。また、特許文献1に記載される荷室ボード本体は、、樹脂製の中空成形体を主体とするものであり、その表面にカーペット等の表皮材が貼り付けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、前記荷室ボードでは、通常、使用者側に臨む表面(上面)には表皮材が貼り付けられているが、これとは反対側の面(裏面)には表皮材は貼り付けられていない。したがって、荷室ボードの開閉操作を行った際に、表皮材が貼り付けられていない樹脂製の荷室ボード本体が車両の荷室に設けられた開口部の周辺部分に直接当接することになり、衝撃により樹脂製の荷室ボード本体や車両の開口部周辺が破損したり、衝撃音が発生する等の問題が生じている。
【0006】
本発明は、このような従来の実情に鑑みて提案されたものであり、開閉操作の際に確実に緩衝作用を得ることができ、これにより開閉に伴って衝撃が加わることのない荷室ボードを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前述の目的を達成するために、本発明の荷室ボードは、樹脂製の荷室ボード本体を有し開閉操作可能な荷室ボードであって、前記荷室ボード本体にはテープ状の緩衝材が貼り付けられ、前記緩衝材の少なくとも一方の端部において、荷室ボード本体の緩衝材貼り付け面に凹部が設けられ、前記緩衝材の端部が前記凹部内に入り込む形で貼り付けられていることを特徴とする。
【0008】
樹脂製の荷室ボード本体が車両の開口部の周辺部分に直接当接すると、開閉操作の際に衝撃が加わることになる。本発明の荷室ボードでは、荷室ボード本体の裏面にテープ状の緩衝材(例えば不織布)が貼り付けられており、当該不織布が緩衝材の役割を果たして荷室ボードを開閉する際の衝撃が緩和される。
【0009】
また、テープ状の不織布を貼り付けた荷室ボードにおいては、緩衝材の端部に不用意に何らかの力が加わると、ここから捲れて剥がれてしまうおそれがあるが、本発明の荷室ボードでは、緩衝材の端部において、荷室ボード本体の緩衝材貼り付け面に凹部が設けられ、前記緩衝材の端部が前記凹部内に入り込む形で貼り付けられている。そのため、テープ状の緩衝材の端面が露呈することがなく、緩衝材の不用意な剥離が確実に抑制される。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、開閉操作の際に確実に緩衝作用を得ることができ、これにより開閉に伴って衝撃が加わることのない荷室ボードを提供することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】車両の荷室に取り付けられた荷室ボードを示す要部概略斜視図である。
【
図2】荷室ボードを表面側から見た概略平面図である。
【
図4】荷室ボード本体に貼り付けられた不織布の端部近傍を裏面側から見た要部概略斜視図である。
【
図5】荷室ボード本体に貼り付けられた不織布の端部近傍の要部概略断面図である。
【
図6】荷室ボードを成形する工程を説明する図であり、溶融樹脂シートを垂下した状態を示す図である。
【
図7】荷室ボードを成形する工程を説明する図であり、芯材を挿入した状態を示す図である。
【
図8】凹部の形成による芯材の圧縮を説明する図であり、(A)は圧縮前の状態、(B)は圧縮後の状態をそれぞれ示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を車両用の荷室ボードに適用した実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0013】
本実施形態の荷室ボード1は、
図1に示すように、自動車10の荷室11に設置される荷室ボードとして使用されるものである。自動車10の後部座席12の後方には、荷室11が設けられており、荷室11の開口部11aを塞ぐ形で荷室ボード1を取り付けることで、一段高い床面が構成される。
【0014】
また、本実施形態の荷室ボード1は、その一端縁にストラップ13が取り付けられており、荷室11の開口部11aに取り付けられた荷室ボード1は、前記ストラップ13を引っ張ることで、容易に開閉操作することが可能である。
【0015】
荷室ボード1は、
図2に示すように、荷室11の開口部11aの形状に対応した形状を有した板状の部材であり、ストラップ13を引っ張って操作することにより、
図3に示すように、開閉操作が行われる。すなわち、荷室ボード1は、その1辺を回動中心として開閉操作が行われる。したがって、本実施形態の場合、荷室ボード1の回動中心となる回動中心線(
図3におけるx-x線)は、荷室ボード1の1辺1Aと概ね一致する。
【0016】
荷室ボード1は、前記の通り荷室11の開口部11aを塞ぐ形で装着されるものであり、
図2に示すように、開口部11aの周辺部分には開口部11aに沿って荷室ボード1の厚さ分だけ低くなった受け部11bが形成されている。荷室ボード1を装着した際には、この受け部11bによって荷室ボード1の裏面が支持される。
【0017】
次に、荷室ボード1の構成について説明すると、荷室ボード1は、
図4及び
図5に示すように、樹脂製の板状中空成形体からなる荷室ボード本体2と、表面に貼り付けられた表皮材3とから構成されている。また、板状中空成形体からなる荷室ボード本体2内には、芯材4が挿入されている。
【0018】
荷室ボード本体2は、例えば表面壁と裏面壁とからなるものであり、荷室ボード本体2を形成するための樹脂材料としては、ポリオレフィン系樹脂等が用いられる。ポリオレフィン系樹脂としては、ポリプロピレン樹脂やポリエチレン樹脂等を挙げることができ、メルトフローレートの異なる長鎖分岐構造を有するプロピレン単独重合体と直鎖構造を有するプロピレン単独重合体のブレンドを用いることも好適である。
【0019】
勿論、ポリオレフィン樹脂に限られるものではなく、任意の樹脂材料、例えばアクリル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリナフタレンテレフタレート(PEN)樹脂等のポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリスチレン系樹脂、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン(ABS)樹脂、アクリロニトリル・スチレン(AS)樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリブチレンテレフタレート(PBT)樹脂及びこれらの樹脂をブレンドした樹脂等も使用である。
【0020】
また、荷室ボード本体2を構成する熱可塑性プラスチックとして、前述のポリオレフィン系樹脂に例えばSBS樹脂(スチレン-ブタジエン-スチレン共重合体)、SEBS樹脂(スチレン-エチレン-ブタジエン-スチレン共重合体)等を配合してもよく、これにより、荷室ボード1の耐衝撃性を向上することができる。さらに、荷室ボード本体2は、発泡樹脂により成形されていてもよい。
【0021】
荷室ボード本体2を構成する中空成形体の中空部内には、補強材が埋め込まれていてもよいし、表面壁や裏面壁に補強リブが形成されていてもよい。中空部内には裏面壁から表面壁に達するインナーリブを形成した補強構造とすることもできる。
【0022】
荷室ボード本体2の表面に貼着される表皮材3であるが、例えば、いわゆる起毛タイプの比較的厚さの厚い表皮材(例えばタフトカーペット等)を用いることができる。タフトカーペットは、基布にループ状あるいはカット状のパイル糸を刺し込み、パイル糸が抜けないように裏面に接着剤をコーティングしパイル糸を固定したものである。
【0023】
あるいは、綿、麻、羊毛、絹等の天然繊維、ビスコースレーヨン、銅アンモニアレーヨン等の再生繊維、アセテート、レーヨン等の半合成繊維、ナイロン、ポリエステル、アクリル、ビニロン、ポリプロピレン、ポリウレタン等の合成繊維、及びこれらのブレンド繊維を加工して得られる編物、織物、不織布等の繊維シート等も用いることができる。
【0024】
芯材4は、例えば熱可塑性樹脂を用いて形成される発泡体である。芯材4を構成する樹脂材料は限定しないが、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン等のポリオレフィンや、ポリアミド、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル等のアクリル誘導体のいずれか、又は2種類以上の混合物を含む。芯材4に用いる発泡体の発泡倍率は特に限定するものではないが、例えば1.5~60倍程度である。
【0025】
ここで、前記表皮材3は荷室ボード本体2の一方の面(上面)にのみ貼り付けられている。
図4においては、表裏を逆にして荷室ボード1が図示されているため、表皮材3が下面に貼り付けられた形になっているが、表皮材3が貼り付けられているのは、荷室ボード1の使用形態において上面である。これにより、荷室ボード1を荷室11の開口部11aを覆って取り付けた際に、一段高い床面が表皮材3で被覆された形になり、荷室ボード1により構成される床面に衝撃緩衝作用が付加されるとともに、見た目の高級感等も付加される。
【0026】
ただし、荷室ボード本体2の表面(上面)にのみ表皮材3を貼り付ける構成とした場合、荷室ボード1の開閉操作の際に荷室ボード1の裏面に露出した樹脂製の荷室ボード本体2が前記開口部11aの周辺に形成された受け部11bと直接当接することになる。樹脂製の荷室ボード本体2は硬く、クッション性を有していないために、これが直接突き当たると衝撃が加わることになり、衝撃音が発生したり、極端な場合、破損が生ずる等、支障をきたすおそれがある。
【0027】
そこで、本実施形態の荷室ボード1では、荷室ボード1の裏面において、荷室ボード本体2にテープ状の不織布20を貼り付け、これを緩衝材として利用することとする。テープ状の不織布20は、
図2に示すように、荷室11の開口部11aの周囲に形成される受け部11bと対向する位置に貼り付けられ、本実施形態では、荷室ボード1の回動中心となる回動中心線(荷室ボード1の辺1A、
図3におけるx-x線)と直交する2辺に沿って貼り付けられている。
【0028】
テープ状の不織布20は、綿、麻、羊毛、絹等の天然繊維、ビスコースレーヨン、銅アンモニアレーヨン等の再生繊維、アセテート、レーヨン等の半合成繊維、ナイロン、ポリエステル、アクリル、ビニロン、ポリプロピレン、ポリウレタン等の合成繊維、及びこれらのブレンド繊維等を加工して得られるものであり、繊維のシートであるため良好なクッション性を有する。
【0029】
前記テープ状の不織布20は、荷室ボード本体2に接着剤等を用いて貼り付けられるが、テープ状であるがゆえに、また荷室ボード本体2から飛び出した状態であるために、外圧の影響を受け易く、その端部から捲れて剥がれ易いという問題がある。テープ状の不織布20の端部に不用意に何らかの力が加わると、粘着力や接着力に負けて剥がれのきっかけとなり、そこから不織布20が剥がれてしまう。特に、回動中心線と直交する2辺に沿ってテープ状の不織布20を貼り付けた場合、回動中心線側の端部20aにおいて不用意に力が加わる可能性が高く、ここから捲れて剥がれてしまうという現象が発生する。
【0030】
このような不都合を解消するため、本実施形態の荷室ボード1では、
図4及び
図5に示すように、前記荷室ボード本体2において、不織布20の回動中心線側の端部20aに対応する位置に凹部30を設け、この凹部30内に不織布20の端部20aが入り込むような形で貼り付けるようにしている。前記凹部30は、荷室ボード本体2を成形する際に、金型形状を工夫することで簡単に形成することが可能である。
【0031】
前記凹部30は、テープ状の不織布20の幅よりも若干広い幅をもって形成されており、不織布20の端部20aに向うにしたがって次第に深さが深くなるように形成されている。したがって、凹部30の底面30aは傾斜面である。
【0032】
また、
図5に示すように、不織布20の端部20aにおける前記凹部30の深さdは、不織布20の厚さtと略同一とされており、前記凹部30の内壁30bが不織布20の端面と対向する形になり、外圧の影響を受け難くなり、不織布20の端部20aが飛び出すことによる捲れの問題を確実に解消することができる。
【0033】
なお、本実施形態では、テープ状の不織布20の回動中心線側の端部20aに対応する位置にのみ凹部30を設けるようにしたが、不織布20の両方の端部に対応する位置に凹部30を設けるようにしてもよい。不織布20の両方の端部に対応して凹部30を設けることで、不織布20の端部における捲れを確実に防止することができる。一方で、外圧の影響を受け易いのは回動中心線側の端部20aであり、こちら側のみ凹部30を形成することで、外圧の影響を受け易い位置での捲れを確実に防止することができ、且つ他方の端部は不織布20が飛び出す形となるため、緩衝効果を最大限に得ることができるというメリットがある。
【0034】
前記凹部30の形成は、凹部30周辺における強度を向上する上でも有効である。凹部30を形成することで、荷室ボード本体2内に挿入された芯材4が圧縮され、発泡体である芯材4の発泡倍率が低下してその強度が増すことに繋がるからである。以下、荷室ボード1の成形方法を基にその理由を説明する。
【0035】
図6、7はそれぞれ、本実施形態の荷室ボード1の荷室ボード本体2を成形する工程を説明する図である。
【0036】
図6を参照すると、型締装置40は、押出装置(図示せず)から鉛直下方に押し出された溶融樹脂シートP,Pに対して略直交する方向に、開位置と閉位置との間で移動させられる一対の分割金型41A,41Bを有する。一対の分割金型41A,41Bは、各々に対応する形成面42A,42Bを対向させた状態で配置される。形成面42A,42Bは、荷室ボード1のおもて面及び裏面に対応した形状となっており、裏面に対応する形成面42Aには、前記凹部30を成形するための凸部46が形成されている。
【0037】
一対の分割金型41A,41Bの各々において、各々に対応する形成面42A,42Bの上下端近傍には、ピンチオフ部44A,44Bが形成されている。このピンチオフ部44A,44Bはそれぞれ、形成面42A,42Bのまわりに環状に形成され、対向する分割金型41B,41Aに向かって突出する。これにより、一対の分割金型41A,41Bを型締する際、それぞれのピンチオフ部44A,44Bの先端部が当接し、溶融樹脂シートP,Pの周縁にパーティングラインが形成されるようになっている。
【0038】
一対の分割金型41A,41Bには、形成面42A,42Bの周囲において、形成面42A,42Bから突出可能に摺動部45A,45Bが設けられている。摺動部45A,45Bは、形成面42A,42Bから突出した状態において、その端面を溶融樹脂シートP,Pに接触させ、それによって溶融樹脂シートP,Pと一対の分割金型41A,41Bの形成面42A,42Bとの間に密閉空間を形成するために設けられている。
【0039】
一対の分割金型41A,41Bには、真空チャンバ(図示せず)が内蔵されている。真空チャンバは、真空ポンプ及び真空タンク(いずれも図示せず)と接続されている。真空チャンバと形成面42A,42Bの間には、真空吸引のための連通路(図示せず)が設けられている。
【0040】
一対の分割金型41A,41Bは、金型駆動装置(図示せず)によって、開位置と閉位置の間を移動可能となるように駆動される。開位置では、一対の分割金型41A,41Bの間に、2枚の連続した溶融樹脂シートP,Pが、互いに間隔を隔てて配置可能となっている。2枚の溶融樹脂シートP,Pは、成形後に、荷室ボード1における荷室ボード本体2となる。閉位置では、一対の分割金型41A,41Bのピンチオフ部44A,44Bが当接する。
【0041】
荷室ボード1を成形するには、先ず、
図6に示したように、押出装置から溶融樹脂シートP,Pを鉛直下方に押し出し、一対の分割金型41A,41Bの形成面42A,42Bの間に供給する。この時点で、一対の分割金型41A,41Bは開位置にある。
【0042】
次に、形成面42A,42Bの周囲にある摺動部45A,45Bを突出させて、その端面を溶融樹脂シートP,Pに接触させる。これにより、溶融樹脂シートP,Pと一対の分割金型41A,41Bの形成面42A,42Bとの間に密閉空間が形成される。そして、真空チャンバと形成面42A,42Bの間に設けられた連通路によって、密閉空間内の空気を吸引する。この吸引により、2枚の溶融樹脂シートP,Pがそれぞれ、一対の分割金型41A,41Bの形成面42A,42Bに押圧させられ、
図7に示すように、形成面42A,42Bに沿った形状、すなわち、荷室ボード本体2の略外形に賦形(形成)される。
【0043】
なお、この時、一方の分割金型41B側においては、溶融樹脂シートPと分割金型41Bの形成面42Bの間に表皮材3を挿入し、荷室ボード本体2の一方の面(表面)に貼り付けるようにしている。
【0044】
次に、マニピュレータ(図示せず)を用いて一対の分割金型41A,41Bの間で、芯材4を位置決めし、
図7に示すように、側方より一方の分割金型(
図7では、分割金型41B)に押し付けるようにして挿入する。これにより、芯材4が一方の溶融樹脂シートPに溶着され、形成面42A,42Bに押圧させられた一対の溶融樹脂シートPの間に芯材4が配置される。
【0045】
その後、一対の分割金型41A,41Bを開位置から閉位置まで移動させて、型締めを行う。これにより、一方の溶融樹脂シートP(図面右側)に対して溶着されていた芯材4は、他方の溶融樹脂シートP(図面左側)に対しても溶着される。さらに、一対の分割金型41A,41Bのピンチオフ部44A,44Bにおいて、一対の溶融樹脂シートP,Pの周縁が溶着させられ、パーティングラインPLが形成される。
【0046】
最後に、一対の分割金型41A,41Bを再び開位置に移動させ、成形した荷室ボード1を形成面42A,42Bから離間させ、パーティングラインPLまわりに形成されたバリを、カッター等で切断して除去する。以上で、荷室ボード1が完成する。なお、上述した荷室ボード1の成形方法では、吸引により溶融樹脂シートPを一対の分割金型41A,41Bの形成面42A,42Bに押圧させる場合について説明したが、その限りではない。溶融樹脂シートPに空気等の流体を吹き付けることによって溶融樹脂シートPを一対の分割金型41A,41Bの形成面42A,42Bに押圧させるようにしてもよい(ブロー成形)。
【0047】
以上の成形方法により成形される荷室ボード1では、分割金型41Aの形成面42Aに凹部30を成形するための凸部46が形成されており、成形の際にこの凸部46(この凸部46で成形された溶融樹脂シートP)によって芯材4が圧縮される形になる。
図8(A)は成形前の状態、
図8(B)は成形後の状態である。
図8(B)に示すように、成形後には、芯材4が凸部46(この凸部46で成形された溶融樹脂シートP)によって圧縮されている。したがって、この部分において発泡体である芯材4の発泡倍率が低下し、その結果、芯材4の強度が向上し、凹部30周辺の強度向上が図られる。また、凹部30の周辺の強度が向上することで、不織布20を凹部30に貼り付け易くなり、貼り付けた後は剥がれ難くなる。
【0048】
前述の通り、本実施形態の荷室ボード1では、荷室ボード本体2の裏面にテープ状の不織布20が貼り付けられているので、当該不織布20が緩衝材の役割を果たして荷室ボード1を開閉する際の衝撃を緩和することができる。また、各不織布20の端部20aにおいて、荷室ボード本体2の不織布20貼り付け面に凹部30が設けられ、不織布20の端部20aが前記凹部30内に入り込む形で貼り付けられているので、テープ状の不織布20の捲れによる剥がれを確実に防止することができる。また、凹部30の形成は、荷室ボード1の強度向上にも有効である。
【0049】
以上、本発明を適用した実施形態についてを説明してきたが、本発明が前述の実施形態に限られるものでないことは言うまでもなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の変更を加えることが可能である。
【符号の説明】
【0050】
1 荷室ボード
2 荷室ボード本体
3 表皮材
4 芯材
10 車両
11 荷室
11a 開口部
11b 受け部
12 後部座席
13 ストラップ
20 不織布
20a 端部
30 凹部