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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-26
(45)【発行日】2022-11-04
(54)【発明の名称】端子、及び、端子付き電線
(51)【国際特許分類】
   H01R 13/11 20060101AFI20221027BHJP
   H01R 4/50 20060101ALI20221027BHJP
【FI】
H01R13/11 C
H01R4/50 B
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019108474
(22)【出願日】2019-06-11
(65)【公開番号】P2020202092
(43)【公開日】2020-12-17
【審査請求日】2021-09-28
(73)【特許権者】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001036
【氏名又は名称】弁理士法人暁合同特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】魏 綾那
(72)【発明者】
【氏名】田端 正明
【審査官】井上 信
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-143028(JP,A)
【文献】実開平4-10973(JP,U)
【文献】特開2019-79674(JP,A)
【文献】特開昭61-223656(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 13/11
H01R 4/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
相手方端子と接続される端子であって、
筒部と電線接続部とを備え、
前記電線接続部は前記筒部の後端部に設けられており、
前記筒部の内部に弾性接触片が設けられており、
前記弾性接触片は前記筒部の前側から挿入された前記相手方端子を前記筒部の内壁に向けて押圧し、
前記筒部の側壁に第1開口と第2開口とが形成されており、
前記第1開口は前記弾性接触片が前記相手方端子を押圧する方向と交差する方向の一方の側に形成されており、前記第2開口は他方の側に形成されており、前記第1開口又は前記第2開口のいずれか一方から入った光が他方から出ていく光路が確保された状態で、前記弾性接触片の一部が前記第1開口及び前記第2開口から露出しており、
前記筒部は板状の金属部材が環状に曲がって周方向の一端部と他端部とが接続された形状であり、前記筒部は、係止片と、第3開口と、被係止片とを有し、
前記係止片は前記一端部の縁部から張り出しており、
前記第3開口は少なくとも一部が前記係止片に形成されており、
前記被係止片は前記他端部の縁部から張り出して前記第3開口に挿入されており、
前記第1開口又は前記第2開口のいずれか一方が前記第3開口と一体化している、端子。
【請求項2】
請求項1に記載の端子であって、
前記筒部の前記内壁に内方に突出する突部が形成されており、
前記突部は前記弾性接触片によって押圧された前記相手方端子が接触するものであり、
前記被係止片は前記突部が形成されている前記内壁の縁部に形成されており、
前記被係止片における前記筒部の内方を向く面が、前記突部の先端と同一面上又は前記突部の先端よりも外方に位置するように形成されている、端子。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の端子であって、
前記電線接続部は電線挟持片を有し、
前記電線挟持片は電線の芯線を挟持する、端子。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の端子と、
前記電線接続部に接続されている電線と、
を備える、端子付き電線。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、端子、及び、端子付き電線に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、相手方端子が挿入される筒部と、電線が接続される電線接続部とを備える端子が知られている(例えば、特許文献1参照)。具体的には、特許文献1に記載のアルミ電線圧着端子は、筒状に形成されている端子間接続部(筒部に相当)と、電線が接続される複数のバレル(電線接続部に相当)とを備えている。
一般にこのような端子は筒部の内部に弾性接触片が設けられており、筒部に挿入された相手方端子を弾性接触片によって筒部の内壁に向けて押圧する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2005-50736号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
筒部の内部に弾性接触片が設けられている端子を製造する場合、弾性接触片と筒部の内壁との間隔にばらつきが生じることがある。弾性接触片と内壁との間隔が大きいと、相手方端子と端子との接続が緩くなる。逆に、間隔が小さいと、作業者が相手方端子を筒部に挿入するときに大きな力が必要となり、作業性が低下する。
【0005】
このため、従来、上述した間隔を検査することが行われている。具体的には例えば、筒部の外から筒部の前側の開口に向かって光を照射し、後側の開口から出てくる光を受光部によって受光した受光結果から間隔を検査することが行われている。
【0006】
特許文献1に記載のアルミ電線圧着端子の場合は、電線が接続された状態であっても、端子間接続部の前側の開口(バレルが設けられている側の開口とは逆側の開口)に向けて光を照射すると、照射された光の一部が端子間接続部の内部を通過して後側の開口(バレルが設けられている側の開口)から出てくるので容易に検査が可能である。
【0007】
しかしながら、電線接続部の形状によっては、電線接続部によって光の進行が妨げられて筒部の内部を光が真っ直ぐに進行しない場合がある。あるいは一部の光が筒部の内部を真っ直ぐに進行したとしても、電線接続部があることによって光路の断面積が狭くなり、十分な量の光が出てこない場合がある。このような場合は間隔を精度よく検査できない。
【0008】
本明細書では、電線接続部の形状によらず弾性接触片と筒部の内壁との間隔を精度よく検査できる技術を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示の端子は、相手方端子と接続される端子であって、筒部と電線接続部とを備え、前記電線接続部は前記筒部の後端部に設けられており、前記筒部の内部に弾性接触片が設けられており、前記弾性接触片は前記筒部の前側から挿入された前記相手方端子を前記筒部の内壁に向けて押圧し、前記筒部の側壁に第1開口と第2開口とが形成されており、前記第1開口は前記弾性接触片が前記相手方端子を押圧する方向と交差する方向の一方の側に形成されており、前記第2開口は他方の側に形成されており、前記第1開口又は前記第2開口のいずれか一方から入った光が他方から出ていく光路が確保された状態で、前記弾性接触片の一部が前記第1開口及び前記第2開口から露出している、端子である。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、電線接続部の形状によらず弾性接触片と筒部の内壁との間隔を精度よく検査できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、実施形態1に係る端子付き電線の断面図(図7に示すA-A線の断面図)である。
図2図2は、端子の斜視図である。
図3図3は、端子を左側から見た側面図である。
図4図4は、図7に示すB-B線の断面図である。
図5図5は、端子を前側から見た側面図である。
図6図6は、図3に示すD-D線の断面図である。
図7図7は、端子の上面図である。
図8図8は、端子の下面図である。
図9図9は、図7に示すC-C線の断面図である。
図10図10は、スライド部をスライドさせる前の端子付き電線の断面図である。
図11図11は、間隔の検査工程における光源部及び受光部の配置を説明するための断面図である。
図12図12は、他の実施形態に係る筒部の断面図である。
図13図13は、他の実施形態に係る筒部の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施態様が列記して説明される。
本開示の端子は、
(1)相手方端子と接続される端子であって、筒部と電線接続部とを備え、前記電線接続部は前記筒部の後端部に設けられており、前記筒部の内部に弾性接触片が設けられており、前記弾性接触片は前記筒部の前側から挿入された前記相手方端子を前記筒部の内壁に向けて押圧し、前記筒部の側壁に第1開口と第2開口とが形成されており、前記第1開口は前記弾性接触片が前記相手方端子を押圧する方向と交差する方向の一方の側に形成されており、前記第2開口は他方の側に形成されており、前記第1開口又は前記第2開口のいずれか一方から入った光が他方から出ていく光路が確保された状態で、前記弾性接触片の一部が前記第1開口及び前記第2開口から露出している、端子である。
【0013】
上記の端子によれば、第1開口から第2開口に至る経路上に電線接続部がないので、例えば筒部の外から第1開口に向かって光を照射し、第1開口と第2開口とを通過した光を受光部によって受光した受光結果に基づいて間隔を検査することにより、電線接続部の形状によらず弾性接触片と筒部の内壁との間隔を精度よく検査できる。
【0014】
(2)前記筒部は板状の金属部材が環状に曲がって周方向の一端部と他端部とが接続された形状であり、前記筒部は、係止片と、第3開口と、被係止片とを有し、前記係止片は前記一端部の縁部から張り出しており、前記第3開口は少なくとも一部が前記係止片に形成されており、前記被係止片は前記他端部の縁部から張り出して前記第3開口に挿入されており、前記第1開口又は前記第2開口のいずれか一方が前記第3開口と一体化していることが好ましい。
【0015】
第1開口や第2開口を設けると端子の強度が低下することが懸念される。上記の端子によれば、第1開口又は第2開口のいずれか一方が第3開口と一体化しているので、当該一方の開口を第3開口とは別に形成する場合に比べて端子の強度の低下を抑制できる。
【0016】
(3)前記筒部の前記内壁に内方に突出する突部が形成されており、前記突部は前記弾性接触片によって押圧された前記相手方端子が接触するものであり、前記被係止片は前記突部が形成されている前記内壁の縁部に形成されており、前記被係止片における前記筒部の内方を向く面が、前記突部の先端と同一面上または前記突部の先端よりも外方に位置するように形成されていることが好ましい。
【0017】
被係止片の面が突部よりも弾性接触片側に位置していると、第1開口から第2開口に至る光路の一部が被係止片によって遮られ、光路の断面積が小さくなる。光路の断面積が小さくなると十分な量の光が出てこないことによって間隔を検査できない可能性がある。上記の端子によれば、被係止片における筒部の内方を向く面が、突部の先端と同一面上または突部の先端よりも外方に位置するように形成されているので、被係止片によって光路の断面積が小さくなることを抑制できる。
【0018】
(4)前記電線接続部は電線挟持片を有し、前記電線挟持片は電線の芯線を挟持することが好ましい。
【0019】
上記の端子によれば、電線挟持片が電線の芯線を挟持することによって端子に電線を接続できる。しかしながら、電線挟持片によって電線が挟持された状態では、電線挟持片があることによって光路の断面積が狭くなり、十分な量の光が出てこない可能性がある。上記の端子によれば、第1開口から第2開口に至る光路上(または第2開口から第1開口に至る光路上)に電線挟持片がないので、第1開口及び第2開口の面積を適切に設定することにより、電線接続部の形状によらず十分な量の光が出てくる。このため、電線接続部の形状によらず間隔を精度よく検査できる。
【0020】
(5)本開示の端子付き電線は、上記(1)から(4)のいずれか1に記載の端子と、前記電線接続部に接続されている電線と、を備える端子付き電線である。
【0021】
上記の端子付き電線によれば、電線接続部の形状によらず弾性接触片と筒部の内壁との間隔を精度よく検査できる。
【0022】
[本開示の実施形態の詳細]
本開示の端子付き電線の具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。本開示はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0023】
<実施形態1>
本開示の実施形態1が図1から図11を参照しつつ説明される。以下の説明において上下方向、前後方向、左右方向とは図2に示す上下方向、前後方向、左右方向を基準とする。各図において方向を示す矢線に付されているUPは上、DWは下、FRは前、RRは後、Lは左、Rは右を意味する。複数の同一部材については、一部の部材にのみ符号を付し、他の部材の符号を省略する場合がある。
図1に示すように、本実施形態にかかる端子付き電線1は、電線10と、電線10に接続された端子11とを有する。
【0024】
[電線10]
図1に示すように、電線10は前後方向に延びて配されている。電線10は芯線10Aの外周を絶縁性の合成樹脂からなる絶縁被覆10Bで包囲されている。本実施形態にかかる芯線10Aは1本の金属線からなる。芯線10Aは複数の金属細線が撚り合わされてなる撚線であってもよい。芯線10Aを構成する金属は、銅、銅合金、アルミニウム、アルミニウム合金等、必要に応じて任意の金属を適宜に選択できる。本実施形態にかかる芯線10Aは銅、または銅合金からなる。
【0025】
[端子11]
図2に示すように、端子11は全体に角筒状に形成されており、金属製の端子本体12と、端子本体12に対して前後方向にスライド可能なスライド部13とを備える。
【0026】
[端子本体12]
図3に示すように、端子本体12は、図示しない相手方端子が前側から挿入される筒部14と、筒部14の後方に位置して電線10と接続される電線接続部15とを有する。
端子本体12は所定の形状に形成された板状の金属部材にプレス加工を施すことによって形成される。端子本体12を構成する金属は、銅、銅合金、アルミニウム、アルミニウム合金、ステンレス鋼等、必要に応じて任意の金属を適宜に選択できる。本実施形態にかかる端子本体12は、銅、又は銅合金からなる。端子本体12の表面にはめっき層が形成されていてもよい。めっき層を構成する金属は、スズ、ニッケル、銀等必要に応じて任意の金属を適宜に選択できる。本実施形態にかかる端子本体12にはスズめっきが施されている。
【0027】
[電線接続部15]
図2に示すように、電線接続部15は前後方向に延びる角筒状をなしている。図1に示すように、電線接続部15は電線10の芯線10Aを挟持する一対の電線挟持片16(上側挟持片16A及び下側挟持片16B)を有している。上側挟持片16Aは電線接続部15の上壁から後方に延びている。下側挟持片16Bは電線接続部15の下壁から後方に延びている。上側挟持片16Aと下側挟持片16Bとは前後に延びた細長い形状をなしている。上側挟持片16Aと下側挟持片16Bとの前後方向の長さ寸法は略同じに形成されている。
【0028】
上側挟持片16Aの下面には上側保持突部17Aが設けられている。下側挟持片16Bの上面には下側保持突部17Bが設けられている。下側保持突部17Bは下側挟持片16Bの後端部に設けられている。上側保持突部17Aの後端は下側保持突部17Bの前端よりも前方に位置している。
【0029】
[筒部14]
図2に示すように、筒部14は前後方向に延びる角筒状をなしている。筒部14は前述した板状の金属部材が環状に曲がって周方向の一端部(上壁18の左側の端部)と他端部(左側壁19の上側の端部)とが接続された形状である。上壁18の左側の縁部には係止片24が一体形成されている。係止片24は左側の縁部から矩形状に張り出して下側に曲げられている。係止片24には略矩形の開口24A(第3開口の一例)が形成されている。本実施形態では、開口24Aは上壁18の左側の縁部から係止片24にかけて形成されている。
【0030】
図4に示すように、左側壁19において係止片24に対応する領域は、左側壁19の他の領域より係止片24の厚み分だけ右側に凹んだ段部19Aとして形成されている。係止片24の左側を向く面と、左側壁19の左側を向く面であって段部19A以外の領域の面とは略面一になっている。何らかの原因で左側壁19を左側に開く方向の力が作用した場合、段部19Aが係止片24に当接することによって開きが防止される。
【0031】
図4に示すように、段部19Aには上方向に矩形状に張り出す被係止片26が形成されている。図2及び図3に示すように、被係止片26は開口24Aに挿入されている。被係止片26の前後方向の幅は開口24Aの前後方向の幅より小さく形成されている。
【0032】
図5に示すように、筒部14の左側壁19には内方に突出する2つのビード27(突部の一例)が上下に並んで形成されている。ビード27は後述する弾性接触片29によって押圧された相手方端子が接触するものである。各ビード27は前後方向に延びている。ビード27は左側壁19をプレス加工することによって形成されたものである。
図4に示すように、上側のビード27は、前後方向において段部19Aに対応する区間が段部19Aと一体化している。このため、当該区間ではビード27の先端と、被係止片26の面であって筒部14の内方を向く面とが同一面上に形成されている。
【0033】
図6に示すように、筒部14の右側壁28には弾性変形可能な弾性接触片29が配されている。弾性接触片29は後側を基端として前側に延びる略長方形状に形成されている。弾性接触片29は前側に向かって左側に傾斜した後、右側に傾斜することによって左側に凸となる形状に形成されている。筒部14の前側から相手方端子が挿入されると弾性接触片29が相手方端子に弾性接触することにより、相手方端子がビード27に向けて押圧される。これにより相手方端子と端子11とが電気的に接続される。
【0034】
弾性接触片29は、筒部14とは別に形成されて溶接などによって右側壁28に固定されたものであってもよいし、右側壁28を切り欠くことによって形成されたものであってもよいし、筒部14を構成している金属部材の周方向の一方の端部を右側壁28の内側まで回り込ませ、内側まで回り込ませた部分を前側に延ばすことによって形成されたものであってもよい。
【0035】
図7に示すように、筒部14の上壁18には、弾性接触片29と筒部14の内壁(より具体的にはビード27)との間隔を検査するための矩形状の上側検査口30(第1開口の一例)が形成されている。上側検査口30は係止片24の開口24Aを拡張する形態で形成されている。すなわち、上側検査口30は開口24Aと一体化している。
図8に示すように、筒部14の底壁31には矩形状の下側検査口32(第2開口の一例)が形成されている。
【0036】
図9に示すように、弾性接触片29が相手方端子を押圧する方向は左右方向左側である。上側検査口30は左右方向に直交する上下方向の上側(一方の側の一例)に設けられており、下側検査口32は下側(他方の側の一例)に設けられている。下側検査口32の形状及び大きさは上側検査口30と同じである。
【0037】
図7に示すように、弾性接触片29は一部が上側検査口30から露出している。より具体的には、図7に示す例では、弾性接触片29において頂点部分よりやや後側の傾斜部分が露出している。図8に示す下側検査口32についても同様である。
図7及び図8に示すように、弾性接触片29は上側検査口30や下側検査口32から見える範囲の一部だけを占めている。このため、上側検査口30及び下側検査口32のいずれか一方から入った光は、当該範囲のその他の領域を通過して他方から出ていくことができる。すなわち、上側検査口30及び下側検査口32のいずれか一方から入った光が他方から出ていく光路が確保されている。
【0038】
[スライド部13]
図2に示すように、スライド部13は前後方向に延びる角筒状をなしている。スライド部13は、切削加工、鋳造、プレス加工等、必要に応じて公知の手法により形成される。スライド部13を構成する金属は、銅、銅合金、アルミニウム、アルミニウム合金、ステンレス鋼等、必要に応じて任意の金属を適宜に選択できる。本実施形態にかかるスライド部13は、特に限定されないが、ステンレス鋼からなる。スライド部13の表面にはめっき層が形成されていてもよい。めっき層を構成する金属は、スズ、ニッケル、銀等必要に応じて任意の金属を適宜に選択できる。
【0039】
スライド部13の内形状の断面は、端子本体12のうち、上側挟持片16Aと下側挟持片16Bとが設けられた領域の外形状の断面と同じか、やや大きく形成されている。これにより、スライド部13は、端子本体12のうち、上側挟持片16Aと下側挟持片16Bとが設けられた領域の外方に配されるようになっている。
【0040】
図10に示すように、スライド部13の上壁33には、下方に突出する上側加圧部34が設けられている。スライド部13の下壁35には、上方に突出する下側加圧部36が形成されている。
【0041】
図1及び図10を参照して、電線10の接続について説明する。電線10の接続では、スライド部13が図10に示す位置から図1に示す位置にスライドされる。スライド部13は図1に示す位置まで移動すると図示しないロック機構によってロックされることによって前後方向の移動が規制される。
【0042】
図1に示す状態では、上側加圧部34が上方から上側挟持片16Aを押圧することによって上側挟持片16Aが下方に弾性変形するとともに、下側加圧部36が下方から下側挟持片16Bを押圧することによって下側挟持片16Bが上方に弾性変形する。これにより、上側保持突部17Aおよび下側保持突部17Bが、芯線10Aの表面に形成された酸化被膜に食い込む。これらが酸化被膜に食い込むと酸化被膜が剥がれ、芯線10Aの金属表面が露出する。この金属表面と上側保持突部17Aおよび下側保持突部17Bとが接触することにより、芯線10Aと電線接続部15とが電気的に接続される。
【0043】
[間隔の検査工程]
間隔の検査工程は、弾性接触片29と筒部14の内壁(より正確にはビード27)との間隔を検査する工程である。本実施形態では、間隔の検査工程は電線接続部15に電線10が接続された後に実施される。
図11に示すように、間隔の検査工程では、上側検査口30の上方にレーザ光源37(光源部の一例)が配置され、下側検査口32の下方に受光センサ38(受光部の一例)が配置される。レーザ光源37は上方から上側検査口30に向けてレーザ光を照射するものである。受光センサ38は複数の受光素子が行列状に配列されたエリアセンサである。レーザ光源37が下側検査口32の下方に配置され、受光センサ38が上側検査口30の上方に配置されてもよい。
【0044】
レーザ光源37及び受光センサ38は図示しないコンピュータに接続されている。コンピュータがレーザ光源37を制御して上側検査口30にレーザ光を照射すると、レーザ光の一部が上側検査口30と下側検査口32とを通過して受光センサ38によって受光される。受光センサ38は各受光素子の受光量を表す値をコンピュータに出力する。
【0045】
弾性接触片29と筒部14の内壁との間隔が小さい場合はレーザ光が上側検査口30から下側検査口32に至る光路の断面積が小さくなるため、受光センサ38においてレーザ光を受光する受光素子の数が少なくなる。逆に、間隔が大きい場合は光路の断面積が大きくなるため、レーザ光を受光する受光素子の数が多くなる。コンピュータは、受光量が基準値以上である受光素子の数を判断し、受光量が基準値以上である受光素子の数あるいは受光素子の総数に対する受光量が基準値以上である受光素子の数の割合から間隔を判断する。
【0046】
コンピュータは各受光素子の受光量の合計値や平均値から間隔を判断してもよい。レーザ光を受光した受光素子の数が多いほど合計値や平均値が大きくなるからである。受光センサ38の受光結果からどのように間隔を判断するかは適宜に決定できる。
【0047】
コンピュータは、間隔が所定の上限値以上である場合(すなわち間隔が広すぎる場合)や所定の下限値以下である場合(すなわち間隔が狭すぎる場合)は不良と判断する。
【0048】
[本実施形態の作用効果]
本実施形態にかかる端子11は、相手方端子と接続される端子11であって、筒部14と電線接続部15とを備え、電線接続部15は筒部14の後端部に設けられており、筒部14の内部に弾性接触片29が設けられており、弾性接触片29は筒部14の前側から挿入された相手方端子を筒部14の内壁に向けて押圧し、筒部14の側壁(上壁18及び底壁31)に上側検査口30と下側検査口32とが形成されており、上側検査口30は上側(弾性接触片29が相手方端子を押圧する方向と交差する方向の一方の側)に形成されており、下側検査口32は下側(他方の側)に形成されており、上側検査口30又は下側検査口32のいずれか一方から入った光が他方から出ていく光路が確保された状態で、弾性接触片29の一部が上側検査口30及び下側検査口32から露出している。
端子11によれば、上側検査口30から下側検査口32に至る経路上には電線接続部15がないので、筒部14の上から上側検査口30に向かって光を照射し、上側検査口30と下側検査口32とを通過した光を受光センサ38によって受光した受光結果に基づいて間隔を検査することにより、電線接続部15の形状によらず弾性接触片29と筒部14の内壁との間隔を精度よく検査できる。
端子11によれば、上側検査口30と下側検査口32との間隔が端子本体12の長さに比べて短いので、筒部14の外から筒部14の前側の開口に向かって光を照射する場合に比べて光が拡散し難い。このため、前側の開口に向かって光を照射する場合に比べて検査の精度が向上するという利点もある。
【0049】
端子11の筒部14は板状の金属部材が環状に曲がって周方向の一端部と他端部とが接続された形状であり、筒部14は、係止片24と、開口24A(第3開口)と、被係止片26とを有し、係止片24は一端部の縁部から張り出しており、開口24Aは少なくとも一部が係止片24に形成されており、被係止片26は他端部の縁部から張り出して開口24Aに挿入されており、上側検査口30が開口24Aと一体化している。
端子11によれば、上側検査口30が開口24Aと一体化しているので、上側検査口30を開口24Aとは別に形成する場合に比べて端子11の強度の低下を抑制できる。
【0050】
端子11は、筒部14の内壁に内方に突出するビード27が形成されており、ビード27は弾性接触片29によって押圧された相手方端子が接触するものであり、被係止片26はビード27が形成されている内壁の縁部に形成されており、ビード27の先端と、被係止片26の面であって筒部14の内側を向く面とが同一面上に形成されている。
端子11によれば、被係止片26によって光路の断面積が小さくなることを抑制できる。
【0051】
端子11の電線接続部15は電線挟持片16を有し、電線挟持片16は電線10の芯線10Aを挟持する。
端子11によれば、電線挟持片16が芯線10Aを挟持することによって端子11に電線を接続できる。しかしながら、図1に示すように、電線挟持片16(上側挟持片16A及び下側挟持片16B)によって電線10を挟持するため、筒部14の外から筒部14の前側の開口に向かって光を照射した場合、電線挟持片16によって光の進行が妨げられて筒部14の内部を光が真っ直ぐに進行しない、あるいは一部の光が筒部14の内部を真っ直ぐに進行したとしても、電線接続部15があることによって光路の断面積が狭くなり、十分な量の光が出てこない。
端子11によれば、上側検査口30から下側検査口32に至る光路上(または下側検査口32から上側検査口30に至る光路上)に電線挟持片16がないので、上側検査口30及び下側検査口32の面積を適切に設定することにより、電線接続部15の形状によらず十分な量の光が出てくる。このため、電線接続部15の形状によらず間隔を精度よく検査できる。
【0052】
本実施形態にかかる端子付き電線1は、端子11と、電線接続部15に接続されている電線10と、を備える。
端子付き電線1によれば、電線接続部15の形状によらず、端子11に電線10が接続された状態で、弾性接触片29と筒部14の内壁との間隔を精度よく検査できる。
【0053】
<他の実施形態>
(1)実施形態1では電線接続部15が上側挟持片16A、下側挟持片16B及びスライド部13を備えている場合を例に説明したが、電線接続部15の構成はこれに限られるものではなく、任意の構成を採用できる。
【0054】
(2)実施形態1では、弾性接触片29が相手方端子を押圧する方向が左右方向であり、弾性接触片29が相手方端子を押圧する方向と交差する方向が上下方向である場合を例に説明した。すなわち、交差する方向が、弾性接触片29が相手方端子を押圧する方向と直交している場合を例に説明した。しかしながら、交差する方向は必ずしも弾性接触片29が相手方端子を押圧する方向と直交する方向に限られない。例えば、図12に模式的に示すように、交差する方向41は、弾性接触片29が相手方端子を押圧する方向40に対して傾いていてもよい。
【0055】
(3)実施形態1では弾性接触片29が相手方端子を押圧する方向と交差する方向が、筒部14の軸方向と直交している場合を例に説明した。しかしながら、交差する方向は必ずしも筒部14の軸方向と直交する方向に限られない。例えば、図13に模式的に示すように、交差する方向43は筒部14の軸方向42に対して傾いていてもよい。
【0056】
(4)実施形態1では上側検査口30の形状及び大きさと下側検査口32の形状及び大きさとが同じである場合を例に説明したが、弾性接触片29と筒部14の内壁との間隔を検査可能であれば、これらは必ずしも同じでなくてもよい。例えば、下側検査口32は上側検査口30より大きくてもよいし、小さくてもよい。下側検査口32の形状は上側検査口30の形状と異なっていてもよい。
【0057】
(5)実施形態1では上側検査口30が係止片24の開口24Aと一体化している場合を例に説明したが、上側検査口30は開口24Aとは独立した開口として形成されてもよい。
【0058】
(6)実施形態1では上側検査口30が開口24Aと一体化している場合を例に説明したが、下側検査口32が開口24Aと一体化している構成であってもよい。
【0059】
(7)実施形態1では筒部14の内壁にビード27が形成されている場合を例に説明したが、ビード27は必ずしも形成されていなくてもよい。
【0060】
(8)実施形態1では筒部14が角筒状である場合を例に説明したが、筒部14は角筒状に限られるものではなく、例えば円筒状であってもよい。
【0061】
(9)実施形態1では光源部としてレーザ光源を例に説明したが、光源部はレーザ光源に限られない。例えば、光源部は発光ダイオード(LED:Light Emitting Diode)であってもよい。
【0062】
(10)実施形態1では電線挟持片16が一対である場合を例に説明したが、電線挟持片16は1つ又は3つ以上であってもよい。
【0063】
(11)実施形態1では、電線接続部15に電線10が接続された後に間隔の検査工程が実施されるが、間隔の検査は電線接続部15に電線10が接続される前に実施されてもよい。
【0064】
(12)実施形態1では、ビード27の先端と、被係止片26の面であって筒部14の内側を向く面とが同一面上に形成されている場合を例に説明したが、被係止片26の面であって筒部14の内側を向く面は、ビード27の先端よりも外方(図4においてビード27の左端よりも左側)に位置するように形成されていてもよい。
【符号の説明】
【0065】
1…端子付き電線
2…右側壁
10…電線
10A…芯線
10B…絶縁被覆
11…端子
12…端子本体
13…スライド部
14…筒部
15…電線接続部
16…電線挟持片
16A…上側挟持片
16B…下側挟持片
17A…上側保持突部
17B…下側保持突部
18…上壁
19…左側壁
19A…段部
24…係止片
24A…開口(第3開口の一例)
26…被係止片
27…ビード(突部の一例)
28…右側壁
29…弾性接触片
30…上側検査口(第1開口の一例)
31…底壁
32…下側検査口(第2開口の一例)
33…上壁
34…上側加圧部
35…下壁
36…下側加圧部
37…レーザ光源(光源部の一例)
38…受光センサ(受光部の一例)
40…方向
41…方向
42…軸方向
43…方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13