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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-26
(45)【発行日】2022-11-04
(54)【発明の名称】通気弁
(51)【国際特許分類】
   E03C 1/122 20060101AFI20221027BHJP
   F16K 24/06 20060101ALN20221027BHJP
【FI】
E03C1/122 A
F16K24/06 C
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019015026
(22)【出願日】2019-01-31
(65)【公開番号】P2020122527
(43)【公開日】2020-08-13
【審査請求日】2021-12-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000157212
【氏名又は名称】丸一株式会社
(72)【発明者】
【氏名】久保内 秀樹
【審査官】加藤 昌人
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-151020(JP,A)
【文献】特開2018-165537(JP,A)
【文献】特開2018-159457(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03C 1/12- 1/33
F16K 21/00-24/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
配管に接続され、外部の空気を配管内に導入することで負圧を解消する通気弁であって、
外部と配管を繋ぐ連通口を備える通気弁本体と、
通気弁本体内部に配置された、軟質材から成る弁体を備え、
上記弁体は、配管内が負圧になった際に変位するとともに、
連通口を開閉する開閉部と、
弁体の変位方向に延設され、弁体の変位を案内する弁軸を有し、
上記弁軸は、硬質材から成る剛性部材が取り付けられていることを特徴とする通気弁。
【請求項2】
上記弁体は、
弁軸が軟質材から成ることを特徴とする請求項1に記載の通気弁。
【請求項3】
上記剛性部材は、
断面視略C字形状のリング体であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の通気弁。
【請求項4】
上記剛性部材は、
2つ以上の部材を組み合わせて構成されることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1つに記載の通気弁。
【請求項5】
上記剛性部材は、
弁軸の外側に配置されていることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1つに記載の通気弁。
【請求項6】
上記剛性部材は、
弁軸の内側に配置されていることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1つに記載の通気弁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配管に接続される通気弁に関するものである。
【背景技術】
【0002】
洗面台や流し台、浴槽等の設備機器は、その使用に伴い発生する排水を下水側へ排出するための配管が連続している。このような配管は、内部に大量の排水が流れた際等に、サイフォン現象が生じることによって配管内が負圧となる場合がある。この時、配管内の排水は負圧によって勢いよく下流側へと排出される。
ここで、配管には、内部に排水を貯留し、配管内の一部を排水で満たすことで封水を形成し、下水側からの臭気や害虫等が逆流することを防ぐ排水トラップが取り付けられている。しかし、上記サイフォン現象が生じると、排水終了時に封水が負圧によって引き込まれて下水側へと排出されてしまい、排水トラップの逆流防止機能が破壊されてしまうことがあった。
【0003】
そこで、配管に対して通気弁を接続することによって、上記負圧を解消させる構造が知られている。
通気弁は外部と配管を繋ぐ連通口を備える通気弁本体と、通気弁本体に配置された弁体を備えている。弁体は連通口を開閉する開閉部と、開閉部の中心において、弁体の変位方向に延設された軸部を備えている。
上記通気弁は、配管内に負圧が生じた際に弁体が軸方向に沿って変位し、連通口を開放する。この時、連通口を通じて外部の空気を配管内に導入されることで、配管内の負圧が解消される。尚、配管内に正圧が生じた際、又は配管内と外部の大気圧が等しい状態において、弁体は通気口を閉塞していることによって、配管内の臭気や排水、害虫等が配管よりも外側に漏れ出すことはない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-090036号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、上記通気弁は、弁体が変位する幅よりも弁軸が長く構成されていることにより、通気弁本体から弁体が外れることを防止している。しかし、弁体は開閉部及び弁軸がゴム等の弾性材により一体形成されていることから、部材の輸送中や設備機器の施工中において、通気弁に衝撃が加わった際に弁軸が変形し、通気弁本体から弁体が外れてしまうことがあった。
【0006】
本発明は上記問題点に鑑み発明されたものであって、弁軸の変形に伴う弁体の外れ防止を課題とする。又、当該弁体に関し、安価に製造可能且つ生産性を向上させることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための請求項1に記載の本発明は、配管に接続され、外部の空気を配管内に導入することで負圧を解消する通気弁であって、
外部と配管を繋ぐ連通口を備える通気弁本体と、
通気弁本体内部に配置された、軟質材から成る弁体を備え、
上記弁体は、配管内が負圧になった際に変位するとともに、
連通口を開閉する開閉部と、
弁体の変位方向に延設され、弁体の変位を案内する弁軸を有し、
上記弁軸は、硬質材から成る剛性部材が取り付けられていることを特徴とする通気弁である。
【0008】
請求項2に記載の本発明は、上記剛性部材は、
断面視略C字形状のリング体であることを特徴とする請求項1に記載の通気弁である。
【0009】
請求項3に記載の本発明は、上記剛性部材は、
2つ以上の部材を組み合わせて構成されることを特徴とする請求項1は請求項2に記載の通気弁である。
【0010】
請求項4に記載の本発明は、上記剛性部材は、
弁軸の外側に配置されていることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1つに記載の通気弁である。
【0011】
請求項5に記載の本発明は、上記剛性部材は、
弁軸の内側に配置されていることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1つに記載の通気弁である。
【発明の効果】
【0012】
上記本発明によれば、弁軸に対して、硬質材から成る剛性部材が取り付けられていることから、弁軸の変形を防ぐことによって、弁体の脱落を防止することが可能となる。
ここで、一般的なゴム等の軟質材から成る部材の成形を行う際には、金型を高温にして成形する。従って、剛性部材が非耐熱素材である場合、インサート成形による部材の作成を行うことができず、剛性部材を金属等の耐熱素材とした場合、製品単価が増加してしまう。しかし、本発明の通気弁においては、剛性部材は成形が完了した弁体に対して取り付ける構造となっていることから、剛性部材の材質を非耐熱素材とすることが可能となり、安価に通気弁を製造することが可能となる。又、剛性部材が断面視略C字状のリング体や2つ以上の部材を組み合わせて構成されることから、成形が完了した弁体に対して容易に取り付けを行うことができ、生産性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の第一実施形態を示す断面図である。
図2】通気弁の構成を示す分解斜視図である。
図3】通気弁を示す断面図である。
図4図3のA-A’断面図である。
図5】本体部を示す斜視図である。
図6】弁体の構成を示す分解斜視図である。
図7】通気時における弁体の変位を示す断面図である。
図8図7のA-A’断面図である。
図9】第二実施形態に係る弁体を示す分解斜視図である。
図10】第三実施形態に係る弁体を示す(a)断面図(b)(a)のA-A’断面図である。
図11】第四実施形態に係る弁体を示す(a)断面図(b)(a)のA-A’断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照しながら本発明の第一実施形態を説明する。尚、以下に記載する説明は実施形態の理解を容易にするためのものであり、これによって発明が制限して理解されるものではない。又、特に断りのない限りにおいて、上下左右は図1に示す断面図を基準として説明する。尚、図7及び図8において、配管P内が負圧となった際の空気の流れを矢印にて示している。
【0015】
図1乃至図8に示す、本発明の第一実施形態に係る通気弁1は、流し台等の槽体(図示せず)から連続する配管Pに接続されている。配管Pは内部に排水が流れる排水流路を形成する排水配管であり、槽体から流れた排水を下水側へと排出する。
排水トラップ8は上記配管Pの流路中に形成されており、排水流路を屈曲させることによって形成された側面視略S字形状を成す排水配管であって、第一の下り部81、第一屈曲部82、昇り部83、第二屈曲部84、第二の下り部85から構成されている。第一の下り部81は排水を下方に向けて排出するとともに、その下端において第一屈曲部82と連続している。第一屈曲部82は排水流路を約180度屈曲させ、第一の下り部81と昇り部83を繋ぐとともに、底部に清掃口が形成されている。第二屈曲部84は昇り部83と第二の下り部85を繋ぐ屈曲部分であり、その頂点に通気弁1が取り付けられている。第二の下り部85は更に下流側の排水配管と接続され、槽体からの排水を下流側へと排出する。
上記排水トラップ8は第一屈曲部82の周辺において、内部に流入した排水を貯留する封水部86を形成する。当該封水部86は貯留された排水によって排水トラップ8内の排水流路を排水で満たすことで封水を形成し、閉塞することによって下流側からの臭気や害虫が逆流することを防ぐ逆流防止機能を備えている。
【0016】
図1乃至図4に示すように、通気弁1はカバー体3及び本体部4から成る通気弁本体2と、通気弁本体2に配置された逆流防止弁である弁体6を備えており、アダプター5を介して配管Pに接続されている。
【0017】
カバー体3は通気弁1の上面を覆う円筒状の被覆部材であり、外周において、本体部4に形成された係合部47と係合する被係合部31が開口している。又、カバー体3はその中心の裏面において、上昇した弁体6の上面が当接する位置に凸部32が突設されている。
【0018】
図3乃至図5に示すように、本体部4は上下が解放された筒状であって、吸気口41、通気路42、連通口43が形成されている。又、本体部4の上方はカバー体3によって覆われており、外周に形成された係合部47が被係合部31と係合している。又、下方はアダプター5を介して排水トラップ8に接続されている。
吸気口41は本体部4の中心を挟んで対向する位置に形成された、外部からの空気が流入する開口であり、本体部4内側に向けて通気路42が連続している。
通気路42は吸気口41から流入された空気が通る流路であり、対向する吸気口41を繋ぐように架設されている。
連通口43は上記通気路42の中心において上方に向けて形成された、配管Pの外部と配管Pを繋ぐ開口であって、その中心には筒状の軸受け46が形成されている。又、当該軸受け46に弁体6の弁軸62が挿通されている。ここで、連通口43の上端は弁体6が当接することによって連通口43を開閉する弁座44として機能する。
【0019】
図6に示すように、弁体6はゴム等の軟質材によって一体成型され、平面視円形の薄板状である開閉部61と、開閉部61の中央裏面から下方に向けて延設された弁軸62から成り、配管P内が負圧になった際に変位するとともに、当該弁軸62の外周には硬質材から成る剛性部材7が取り付けられている。
開閉部61は連通口43よりも大径であって、弁体6が下降している状態において、その裏面が弁座44と全周に亘り当接する。これにより、開閉部61は連通口43を上方から隙間なく覆い、配管P内が正圧又は配管Pと配管Pの外部の圧力が等しい状態において連通口43を閉塞し、外部と配管Pを完全に遮断することで、配管Pからの臭気や害虫の逆流を防止している。一方、配管Pが負圧となり、弁体6が上昇した際には連通口43を開放し、外部の空気が配管P内に導入される。
弁軸62は開閉部61の中央裏面より下方に向けて延設され、軸受け46に挿通されていると共に、外周に剛性部材7が取り付けられている。即ち、弁軸62は弁体6の変位方向に延設されており、弁体6の変位方向を案内する。又、弁軸62は中程が一部小径となっており、当該小径部分に剛性部材7が嵌着されている。尚、弁軸62は弁体6が作動により変位する幅よりも長く形成されている。
剛性部材7はPP等の非耐熱性の硬質樹脂であって、弁体6を構成する軟質材よりも剛性が高く、且つ摩擦係数の低い素材から成り、一部が切り欠かれた断面視C字状のリング体を成している。尚、剛性部材7の内径は、弁軸62の小径部分とほぼ同一であり、弁軸62下端よりも小径となっている。又、剛性部材7が弁軸62に取り付けられた状態において、剛性部材7の外周は弁軸62の外周よりも外側に位置しており、弁軸62を補強している。
【0020】
上記通気弁1は、以下のように組み立てられる。
まず、剛性部材7の切り欠き部分を拡開させ、弁体6の弁軸62に剛性部材7を取り付ける。この時、剛性部材7は弁軸62の小径部分に配置され、弁軸62下端から剛性部材7が抜脱することはない。
次に、剛性部材7が取り付けられた弁軸62を軸受け46に挿通する。この時、弁軸62と軸受け46によって弁体6の変位方向が案内されるとともに、軸受け46の内周面には摩擦係数の低い剛性部材7の外周が当接することから、弁体6をスムーズに変位させることができる。
最後に、本体部4の係合部47にカバー体3の被係合部31を係合させ、アダプター5を介して排水トラップ8の第二屈曲部84に通気弁1を接続することで組み立てが完了する。
【0021】
上記通気弁1が接続された配管P内の圧力が外部に比べて低くなり、配管P内が負圧となった場合、当該負圧によって弁体6が上方に向けて変位し、連通口43を開放する。この時、図7及び図8において矢印で示すように、外部の空気が吸気口41より流入し、通気路42を通り本体部4の中央にまで到達した後、連通口43を通過し、排水トラップ8の第二屈曲部84より配管P内に導入される。
上記空気の導入によって、配管P内の負圧を解消されることから、通気弁1は封水が下流側へ流れてしまうことを防ぐことが可能となる。尚、上方に向けて変位した弁体6はカバー体3の中央裏面に形成された凸部32に当接するため、弁体6がカバー体3に張り付いてしまうことはない。
配管P内の負圧が解消されると、弁体6は自重によって下方へと変位し、弁座44と当接することで開閉部61が再び連通口43を閉塞する。
【0022】
一方、配管P内の圧力が外部に比べて高くなり、配管P内が正圧となった場合には、弁体6に対し、開閉部61が弁座44に当接する方向に圧力が加わることから、弁体6の開閉部61は連通口43の閉塞を維持し、配管P内の空気が外部へと排出されることはない。
【0023】
上記通気弁1において、弁体6は開閉部61が弁座44に当接する下降位置から、凸部32と当接する上昇位置までの幅において変位可能となっている。一方、当該弁体6が変位可能な幅よりも弁軸62が長く形成されていることから、弁軸62が変形しない限りにおいて弁体6が通気弁本体2から外れることはない。ここで、本発明の通気弁1は弁軸62に対して剛性部材7が取り付けられていることから、弁軸62の変形を防ぐことができる。従って、本発明の通気弁1は、部材の輸送中や施工中に外部から応力が加わったとしても、確実に弁体6の外れを防止することができる。
又、上述の通り、剛性部材7は弁体6を形成する軟質材よりも摩擦係数が低いことから、配管P内に負圧が発生した際における弁体6の変位をスムーズにすることができる。
又、本発明の剛性部材7は成形が完了した弁体6に対して後付けされることから、金型を高温にして成形する、一般的なゴム等の軟質材の成形方法によって弁体6を成形することができる。即ち、剛性部材7をPP等の非耐熱素材とすることが可能となるため、安価且つ容易に通気弁1を製造することができる。
又、剛性部材7が断面視略C字状のリング体であることから、成形が完了した弁体6に対して容易に取り付けることができ、生産性が向上する。
【0024】
本発明の第一実施形態は以上であるが、本発明の通気弁は上記第一実施形態の形状に限られるものではない。尚、以下に記載する各実施形態について、上記第一実施形態と同一の構成に関しては、第一実施形態と同一の番号を付してその記載を省略する。
【0025】
上記第一実施形態において、剛性部材7は断面視C字状のリング体であって、1つの部材から成る形状であったが、図9に示す第二実施形態のように、剛性部材7が2つ以上の部材を組み合わせることによって形成されても良い。尚、組み合わせの方法については係合・嵌合・接着等、その方法は適宜選択可能である。第二実施形態によれば、剛性部材7の形状を円形又はその他の形状とすることが可能となる。
【0026】
又、図10に示す第三実施形態や、図11に示す第四実施形態のように、剛性部材7が弁軸62の内側に配置されていても良い。当該第三実施形態に係る剛性部材7は断面視略円形であって、第四実施形態に係る剛性部材7は断面視略C字状のリング体を成している。
【0027】
本発明の実施形態は以上であるが、発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の設計変更を加えても良い。
例えば、各実施形態における弁軸62は弁体6の下方にのみ延設されていたが、上方に向けて延設されていても良く、上下共に延設されていても良い。又、上方にも弁軸62が延設される場合において、当該上方に延設された弁軸62に対しても剛性部材7を取り付けて良い。尚、上下共に弁軸62が延設される場合において、各弁軸62に合わせて複数の剛性部材7を使用しても良い。一方で、第三実施形態及び第四実施形態に係る弁体6のように、弁軸62の内部に剛性部材7が配置される場合においては、上下の弁軸62内に配置される長さを有する1つの剛性部材7を用いて、上下の弁軸62を1つの剛性部材7によって補強しても良い。
又、上記第一実施形態において、通気弁1は流し台から連続する配管Pに接続されていたが、洗面台や浴槽から連続する配管に接続されても良い。
又、配管Pは排水配管に限られるものではなく、通気弁が必要とされる配管であればどのような用途・形状であっても良い。
又、本発明は剛性部材の素材を非耐熱素材とする際に特に有用であるが、当該剛性部材の素材を非耐熱素材に限定するものではない。従って、剛性部材の素材を金属やセラミック等の耐熱素材としても良い。
【符号の説明】
【0028】
1 通気弁
2 通気弁本体
3 カバー体
31 被係合部
32 凸部
4 本体部
41 吸気口
42 通気路
43 連通口
44 弁座
46 軸受け
47 係合部
5 アダプター
6 弁体
61 開閉部
62 弁軸
7 剛性部材
8 排水トラップ
81 第一の下り部
82 第一屈曲部
83 昇り部
84 第二屈曲部
85 第二の下り部
86 封水部
P 配管
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11