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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-26
(45)【発行日】2022-11-04
(54)【発明の名称】着色方法
(51)【国際特許分類】
   C09B 67/20 20060101AFI20221027BHJP
   C09B 57/00 20060101ALI20221027BHJP
   C03C 17/22 20060101ALI20221027BHJP
   C03C 17/25 20060101ALI20221027BHJP
   C03C 17/28 20060101ALI20221027BHJP
   B05D 1/02 20060101ALI20221027BHJP
   B05D 7/24 20060101ALI20221027BHJP
   C01B 32/156 20170101ALI20221027BHJP
   C09D 1/00 20060101ALN20221027BHJP
   C09D 7/20 20180101ALN20221027BHJP
【FI】
C09B67/20 F
C09B57/00
C03C17/22 Z
C03C17/25 B
C03C17/28 Z
B05D1/02 Z
B05D7/24 303A
C01B32/156
C09D1/00
C09D7/20
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2017232111
(22)【出願日】2017-12-01
(65)【公開番号】P2019099685
(43)【公開日】2019-06-24
【審査請求日】2020-11-30
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】511187214
【氏名又は名称】株式会社FLOSFIA
(72)【発明者】
【氏名】香取 重尊
(72)【発明者】
【氏名】四戸 孝
(72)【発明者】
【氏名】井川 拓人
【審査官】上條 のぶよ
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-099686(JP,A)
【文献】特開2016-216332(JP,A)
【文献】特開2006-160799(JP,A)
【文献】特開2002-255525(JP,A)
【文献】特開2004-160388(JP,A)
【文献】特開2005-263617(JP,A)
【文献】特開2005-097329(JP,A)
【文献】特表2011-519179(JP,A)
【文献】特表2004-532096(JP,A)
【文献】国際公開第2008/081845(WO,A1)
【文献】特開2016-138260(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09B 67/20
C09B 57/00
C03C 17/22
C03C 17/25
C03C 17/28
B05D 1/02
B05D 7/24
C09D 1/00
C09D 7/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
着色剤と溶媒とを少なくとも含む原料溶液のミストまたは液滴を用いて基体上に着色膜を成膜することにより該基体を着色する方法であって、前記溶媒が、無極性溶媒および該無極性溶媒よりも沸点の高い極性溶媒を、前記無極性溶媒と前記極性溶媒との体積比が4:1~7:3となるように含み、前記着色剤が、多環式顔料であり、前記成膜を、前記ミストまたは前記液滴を前記基体上で熱反応させることにより行うことを特徴とする着色方法。
【請求項2】
前記極性溶媒が、非プロトン性極性溶媒である請求項1記載の着色方法。
【請求項3】
前記無極性溶媒が、下記式(1)で表される請求項1または2に記載の着色方法。
【化1】
(式中、R~Rは、それぞれ同一または異なって、水素原子または置換基を有していてもよい炭化水素基を表し、R~Rから選ばれる任意の2つの基が結合して環を形成してもよい。)
【請求項4】
前記無極性溶媒と前記極性溶媒との沸点差が50℃以上である請求項1~3のいずれかに記載の着色方法。
【請求項5】
前記熱反応を、前記極性溶媒の沸点以下の温度で行う請求項1~4のいずれかに記載の着色方法。
【請求項6】
前記熱反応を、キャリアガスを前記ミストまたは前記液滴に供給し、ついで、該キャリアガスを用いて前記ミストまたは前記液滴を前記基体まで搬送した後に行う請求項1~5のいずれかに記載の着色方法。
【請求項7】
前記ミストまたは前記液滴が、超音波振動を用いて得られたものである請求項1~6のいずれかに記載の着色方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原料溶液を用いて基体を着色する着色方法に関する。
【背景技術】
【0002】
基体上に着色膜を形成することによって、基体を着色する技術が知られており、着色膜の形成手段としては、スパッタリング法、インクジェット法、ゾルゲル法、スプレー法等が検討されている。例えば、特許文献1には、スパッタリング法を用いてガラス基板上にアルミニウム金属層、コバルト酸化物層、およびアルミニウム金属層をこの順に形成して着色膜被覆ガラスを作製することが記載されている。しかしながら、特許文献1に記載のスパッタリング法は、真空装置が必須であるため、コストが高くなってしまう等の問題があり、十分に満足できるものではなかった。
【0003】
また、特許文献2には、有機顔料および所望により染料を含む着色用硬化性樹脂組成物を、スピンコートによってガラス基板上に塗布した後、加熱することにより、着色塗膜を形成することが記載されている。しかしながら、特許文献2に記載の方法では、基板上に着色用硬化性樹脂組成物を塗布した後、加熱等によって乾燥を行うことが必須であり、このような乾燥処理は、作業の手間を増加させるだけでなく、乾燥時に着色膜にひび割れが生じたり着色剤の凝集が起こったりして、得られる着色膜の均一性や表面平坦性などに悪影響を及ぼす問題があった。また、特許文献2に記載の着色方法は、バインダーとして樹脂を用いることが必須であるため、コストの増加につながったり、得られる着色膜の色合いに悪影響を及ぼすなどの問題があった。また、着色剤とバインダー樹脂との親和性がない場合、分散性が低下してしまい、十分な透明性を有する着色膜が得られなかった。
【0004】
特許文献3には、ガラス製品の製造工程において、金属化合物を含むコーティング液を除冷前のガラス基材の表面に噴霧し、ガラス表面の温度を利用して被膜を形成することにより着色ガラス製品を作製することが記載されている。しかしながら、特許文献3に記載の方法は、スプレーガンを用いてコーティング液を噴霧しており、基体上に均一に着色膜を形成することが困難であり、膜の平坦性にも課題があった。また、着色剤としての金属化合物が均一に分散させることが困難であり、本来の着色力や透明性が発揮できない問題があった。また、特許文献3に記載の方法では、製造工程後のガラス製品への適用が困難であり、満足のいくものではなかった。
【0005】
そのため、上記した問題がなく、工業的有利に、均一且つ良好に基体を着色することができる着色方法が待ち望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2003-095701号公報
【文献】特開2015-086379号公報
【文献】特開2008-074477号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、工業的有利に、均一且つ良好に基体を着色することができる新規な着色方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意検討した結果、着色剤と溶媒とを少なくとも含む原料溶液のミストまたは液滴を用いて基体上に着色膜を成膜することにより該基体を着色する方法において、前記溶媒として、無極性溶媒および該無極性溶媒よりも沸点の高い極性溶媒を含む溶媒を用いると、霧化または液滴化に適した原料溶液が得られ、さらに、前記成膜を、前記ミストまたは前記液滴を前記基体上で熱反応させることにより着色を行うと、バインダーとしての樹脂を使用することなく、効率的に、均一且つ良好に基体を着色することができ、さらに、得られた着色膜が透明性にも優れており、このような着色方法が、上記した従来の問題を一挙に解決できるものであることを見出した。
また、本発明者らは、上記知見を得た後、さらに検討を重ねて、本発明を完成させるに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、以下の発明に関する。
[1] 着色剤と溶媒とを少なくとも含む原料溶液のミストまたは液滴を用いて基体上に着色膜を成膜することにより該基体を着色する方法であって、前記溶媒が、無極性溶媒および該無極性溶媒よりも沸点の高い極性溶媒を含み、前記成膜を、前記ミストまたは前記液滴を前記基体上で熱反応させることにより行うことを特徴とする着色方法。
[2] 前記着色剤が、顔料である前記[1]記載の着色方法。
[3] 前記着色剤が、有機顔料である前記[1]または[2]に記載の着色方法。
[4] 前記無極性溶媒と極性溶媒との体積比が5:1~1:1である前記[1]~[3]のいずれかに記載の着色方法。
[5] 前記無極性溶媒と極性溶媒との体積比が4:1~7:3である前記[1]~[4]のいずれかに記載の着色方法。
[6] 前記極性溶媒が、非プロトン性極性溶媒である前記[1]~[5]のいずれかに記載の着色方法。
[7] 前記無極性溶媒が、下記式(1)で表される前記[1]~[6]のいずれかに記載の着色方法。
【化1】
(式中、R~Rは、それぞれ同一または異なって、水素原子または置換基を有していてもよい炭化水素基を表し、R~Rから選ばれる任意の2つの基が結合して環を形成してもよい。)
[8] 前記無極性溶媒と前記極性溶媒との沸点差が50℃以上である前記[1]~[7]のいずれかに記載の着色方法。
[9] 前記熱反応を、前記極性溶媒の沸点以下の温度で行う前記[1]~[8]のいずれかに記載の着色方法。
[10] 前記熱反応を、キャリアガスを前記ミストまたは前記液滴に供給し、ついで、該キャリアガスを用いて前記ミストまたは前記液滴を前記基体まで搬送した後に行う前記[1]~[9]のいずれかに記載の着色方法。
[11] 前記ミストまたは前記液滴が、超音波振動を用いて得られたものである前記[1]~[10]のいずれかに記載の着色方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明の着色方法によれば、工業的有利に、均一且つ良好に基体を着色することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施例において用いた成膜装置の概略構成図である。
図2】実施例における紫外可視吸収測定の結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の着色方法は、着色剤と溶媒とを少なくとも含む原料溶液のミストまたは液滴を用いて基体上に着色膜を成膜することにより該基体を着色する方法であって、前記溶媒が、無極性溶媒および該無極性溶媒よりも沸点の高い極性溶媒を含み、前記成膜を、前記ミストまたは前記液滴を前記基体上で熱反応させることにより行うことを特長とする。
【0013】
(基体)
前記基体は、成膜する膜を支持できるものであれば特に限定されない。前記基体の材料も、本発明の目的を阻害しない限り特に限定されず、公知の基体であってよく、有機化合物であってもよいし、無機化合物であってもよい。多孔質構造体であってもよい。
【0014】
また、表面の一部または全部の上に、金属膜、半導体膜、導電性膜および絶縁性膜の少なくとも1種の膜が形成されているものも、前記基体として好適に用いることができる。前記金属膜の構成金属としては、例えば、ガリウム、鉄、インジウム、アルミニウム、バナジウム、チタン、クロム、ロジウム、ニッケル、コバルト、亜鉛、マグネシウム、カルシウム、シリコン、イットリウム、ストロンチウムおよびバリウムから選ばれる1種または2種以上の金属などが挙げられる。半導体膜の構成材料としては、例えば、シリコン、ゲルマニウムのような元素単体、周期表の第3族~第5族、第13族~第15族の元素を有する化合物、金属酸化物、金属硫化物、金属セレン化物、または金属窒化物等が挙げられる。また、前記導電性膜の構成材料としては、例えば、スズドープ酸化インジウム(ITO)、フッ素ドープ酸化インジウム(FTO)、酸化亜鉛(ZnO)、アルミニウムドープ酸化亜鉛(AZO)、ガリウムドープ酸化亜鉛(GZO)、酸化スズ(SnO)、酸化インジウム(In)、酸化タングステン(WO)などが挙げられるが、本発明においては、導電性酸化物からなる導電性膜であるのが好ましく、スズドープ酸化インジウム(ITO)膜であるのがより好ましい。前記絶縁性膜の構成材料としては、例えば、酸化アルミニウム(Al)、酸化チタン(TiO)、酸化シリコン(SiO)、窒化シリコン(Si)、酸窒化シリコン(Si)などが挙げられる。
【0015】
なお、金属膜、半導体膜、導電性膜および絶縁性膜の形成手段は、特に限定されず、公知の手段であってよい。このような形成手段としては、例えば、ミストCVD法、スパッタ法、CVD法(気相成長法)、SPD法(スプレー熱分解堆積法)、蒸着法、ALD(原子層堆積)法、塗布法(例えばディッピング、滴下、ドクターブレード、インクジェット、スピンコート、刷毛塗り、スプレー塗装、ロールコーター、エアーナイフコート、カーテンコート、ワイヤーバーコート、グラビアコート、インクジェット塗布等)などが挙げられる。
【0016】
前記基体の形状としては、どのような形状のものであってもよく、あらゆる形状に対して有効であり、例えば、平板や円板等の板状、繊維状、棒状、円柱状、角柱状、筒状、螺旋状、球状、リング状などが挙げられるが、本発明においては、基板が好ましい。基板の厚さは、本発明においては特に限定されないが、0.5μm~100mmが好ましく、1μm~10mmがより好ましい。前記基板は、板状であって、成膜する膜の支持体となるものであれば特に限定されない。絶縁体基板であってもよいし、半導体基板であってもよいし、金属基板や導電性基板であってもよい。
【0017】
また、本発明においては、前記基板として、透明基板を用いるのも好ましい。前記透明基板は、無機材料からものであっても、有機材料からなるものであってもよい。前記無機材料としては、例えば、ガラス(ソーダガラス、ホウケイ酸ガラス、クラウンガラス、バリウム含有ガラス、ストロンチウム含有ガラス、ホウ素含有ガラス、低アルカリガラス、無アルカリガラス、結晶化透明ガラス、シリカガラス、石英ガラス、耐熱ガラスなど)、アルミナ、サファイア、ジルコニア、チタニア、酸化イットリウムなどが挙げられる。前記有機材料としては、例えば、ポリメタクリル酸メチル系樹脂、スチレン系樹脂、塩化ビニル系樹脂、ポリエステル系樹脂(ポリアリレート系樹脂や液晶ポリマーを含む)、ポリアミド系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂、ポリイミド系樹脂、セルロース誘導体、フッ素樹脂などが挙げられる。本発明においては、前記基板が、透明基板であるのが好ましく、ガラス基板であるのがより好ましい。本発明の着色方法によれば、このような透明基板に対して着色を行う場合にも、透明性を維持しつつ、均一且つ良好に着色を行うことができる。
【0018】
(ミストまたは液滴)
前記ミストまたは前記液滴は、通常、原料溶液を霧化または液滴化することにより得られる。霧化手段または液滴化手段は、原料溶液を霧化または液滴化できさえすれば特に限定されず、公知の手段であってよいが、本発明においては、超音波を用いる霧化手段または液滴化手段が好ましい。超音波を用いて得られたミストまたは液滴は、初速度がゼロであり、空中に浮遊するので好ましく、例えば、スプレーのように吹き付けるのではなく、空間に浮遊してガスとして搬送することが可能なミストであるので衝突エネルギーによる損傷がないため、非常に好適である。液滴サイズは、特に限定されず、数mm程度の液滴であってもよいが、好ましくは50μm以下であり、より好ましくは100nm~10μmである。
【0019】
(原料溶液)
原料溶液は、前記着色剤と溶媒とを少なくとも含んでおり、霧化または液滴化が可能なものであれば、特に限定されない。前記原料溶液は、本発明の目的を阻害しない限り、さらに、無機材料を含んでいてもよいし、有機材料を含んでいてもよい。また、前記原料溶液は、無機材料および有機材料の両方の材料をさらに含んでいてもよい。
【0020】
(着色剤)
前記着色剤は、前記基体を着色可能なものであれば、特に限定されない。前記着色剤としては、例えば、直接染料、酸性染料、塩基性染料、分散染料、建染染料もしくは反応染料などの染料または無機顔料若しくは有機顔料などの顔料等が挙げられる。本発明においては、前記着色剤が、顔料であるのが好ましく、有機顔料であるのがより好ましい。
【0021】
(染料)
前記直接染料としては、例えば、アゾ系直接染料、チアゾール系直接染料、アントラキノン系直接染料、オキサジン系直接染料またはフタロシアニン系直接染料等が挙げられる。前記酸性染料としては、例えば、アントラキノン系酸性染料、フタロシアニン系酸性染料、キノリン系酸性染料、アジン系酸性染料、インジゴイド系酸性染料、キサンテン系酸性染料またはトリフェニルメタン系酸性染料等が挙げられる。前記塩基性染料としては、例えば、アゾ系塩基性染料、アジン系塩基性染料、アクリジン系塩基性染料、メチン系塩基性染料、チアゾール系塩基性染料、チアジン系塩基性染料、オキサジン系塩基性染料、アントラキノン系塩基性染料、キサンテン系塩基性染料またはトリアリールメタン系塩基性染料等が挙げられる。油溶性染料としては、例えば、アントラキノン系油溶性染料、フタロシアニン系油溶性染料、キノリン系油溶性染料、アジン系油溶性染料、インジゴイド系油溶性染料、メチン系油溶性染料、アゾ系油溶性染料、アミノケトン系油溶性染料、キサンテン系油溶性染料またはトリフェニルメタン系油溶性染料等が挙げられる。前記分散染料としては、例えば、アントラキノン系分散染料、キノリン系分散染料、インジゴイド系分散染料、キノフタロン系分散染料、メチン系分散染料、アゾ系分散染料、アミノケトン系分散染料またはキサンテン系分散染料等が挙げられる。前記建染染料としては、例えば、インダントロン系建染染料、ピラントロン系建染染料、ベンザントロン系建染染料、アントラキノンカルバゾール系建染染料、アントラキンオキサゾール系建染染料またはインジゴ系建染染料などが挙げられる。前記反応染料としては、例えば、ピラゾロンアゾ系反応染料、ベンゼンアゾ系反応染料、ナフタレンアゾ系反応染料、ピリドンアゾ系反応染料、J酸アゾ系反応染料、H酸アゾ系反応染料、K酸アゾ系反応染料、アントラキノン系反応染料、金属錯塩型モノアゾ系反応染料、ホルマザン系反応染料、フタロシアニン系反応染料、ジスアゾ系反応染料、アジン系反応染料またはジオキサジン系反応染料等が挙げられる。
【0022】
(顔料)
前記無機顔料としては、例えば、バリウム(Ba)、銅(Cu)、鉄(Fe)、マンガン(Mn)、クロム(Cr)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、ジルコニウム(Zr)、バナジウム(V)、モリブデン(Mo)、亜鉛(Zn)、セレン(Se)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、バリウム(Ba)、パラジウム(Pd)、銀(Ag)、カドニウム(Cd)、インジウム(In)、スズ(Sn)、アンチモン(Sb)、水銀(Hg)、鉛(Pb)、ビスマス(Bi)、ケイ素(Si)及びアルミニウム(Al)から選ばれる1種または2種以上の金属の金属酸化物、複合酸化物、金属塩化物、金属窒化物、金属炭化物、金属水酸化物、金属硫化物、金属硫酸鉛、金属錯塩もしくは金属炭酸塩または炭素類(カーボンブラック)、金属粉類などが挙げられる。
前記有機顔料は、前記基体を着色可能なものであれば、本発明の目的を阻害しない限り、特に限定されない。前記有機顔料としては、例えば、アゾ顔料または多環式顔料などが挙げられる。前記アゾ顔料としては、例えば、不溶性アゾ系顔料、縮合アゾ系顔料、溶性アゾ系顔料またはこれらの誘導体等が挙げられる。前記多環式顔料としては、例えば、フタロシアニン系顔料、ペリレン系顔料、ペリノン系顔料、アントラキノン系顔料、キナクリドン系顔料、キナクリドンキノン系顔料、ジオキサジン系顔料、インジゴ系顔料、チオインジゴ系顔料、ピランスロン系顔料、アンスアンスロン系顔料、フラバンスロン系顔料、インダンスロン系顔料、イソインドリノン系顔料、キノフタロン系顔料、金属錯系顔料、フラーレン系顔料およびこれらの誘導体からなる群から選ばれる1種または2種以上等が挙げられる。
【0023】
前記不溶性アゾ系顔料としては、例えば、C.I.ピグメントレッド1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、20、21、22、23、31、32、37、38、41、95、111、112、114、119、136、146、147、148、150、164、170、184、187、188、210、212、213、222、223、238、245、253、256、258、261、266、267、268、269、C.I.ピグメントオレンジ1、2、5、6、13、15、16、22、24、34、38、44、C.I.ピグメントバイオレット13、25、44、50、C.I.ピグメントブラウン1、C.I.ピグメントイエロー1、2、3、5、6、10、12、13、14、17、49、55、60、63、65、73、74、75、81、83、87、90、97、98、106、111、113、114、116、121、124、126、127、130、136、152、165、167、170、171、172、174、176、188、またはC.I.ピグメントブルー25等が挙げられる。前記縮合アゾ系顔料としては、例えば、C.I.ピグメントイエロー93、94、95、128、166、C.I.ピグメントオレンジ31、C.I.ピグメントレッド144、166、214、220、221、242、248、262、C.I.ピグメントブラウン23、41、42等が挙げられる。前記溶性アゾ系顔料としては、例えば、C.I.ピグメントイエロー93、94、95、128、166、C.I.ピグメントオレンジ31、C.I.ピグメントレッド144、166、214、220、221、242、248、262、またはC.I.ピグメントブラウン23、41、42等が挙げられる。
【0024】
前記フタロシアニン系顔料は、フタロシアニン骨格を有しているものであれば、特に限定されない。また、フタロシアニン系顔料に含まれる中心金属としては、フタロシアニン骨格を構成できる金属であればよく、特に限定されない。その中でも、中心金属としては、マグネシウム、チタン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、アルミニウムが好ましく用いられる。前記フタロシアニン系顔料としては、具体的には、例えば、C.I.ピグメントブルー15、C.I.ピグメントブルー15:1、C.I.ピグメントブルー15:2、C.I.ピグメントブルー15:3、C.I.ピグメントブルー15:4、C.I.ピグメントブルー15:5、C.I.ピグメントブルー15:6、C.I.ピグメントブルー16、C.I.ピグメントブルー17:1、C.I.ピグメントブルー75、C.I.ピグメントブルー79、C.I.ピグメントグリーン7、C.I.ピグメントグリーン36、C.I.ピグメントグリーン37、クロロアルミニウムフタロシアニン、ヒドロキシアルミニウムフタロシアニン、アルミニウムフタロシアニンオキシド、または亜鉛フタロシアニンが挙げられる。
【0025】
前記ペリレン系顔料は、ペリレン骨格を有しているものであれば、特に限定されない。前記ペリレン系顔料としては、具体的には、例えば、C.I.ピグメントレッド123、149、155、178、179、190、224、C.I.ピグメントバイオレット29、またはC.I.ピグメントブラック31、32等が挙げられる。前記ペリノン系顔料は、ペリノン骨格を有しているものであれば、特に限定されない。前記ペリノン顔料としては、具体的には、例えば、C.I.ピグメントオレンジ43、C.I.ピグメントレツド123、149、178、179、189、190、194、224、C.I.ピグメントバイオレツト29、3、またはバットレッド14などが挙げられる。前記アントラキノン顔料は、アントラキノン骨格を有しているものであれば、特に限定されない。前記アントラキノン系顔料としては、具体的には、例えば、C.I.ピグメントレッド89、177等が挙げられる。
【0026】
前記キナクリドン顔料は、キナクリドン骨格を有するものであれば、特に限定されない。前記キナクリドン顔料としては、具体的には、例えば、C.I.ピグメントバイオレット19、42、C.I.ピグメントレッド122、192,202、206、207、209、またはC.I.ピグメントオレンジ48、49等が挙げられる。ジオキサジン顔料は、ジオキサジン骨格を有するものであれば、特に限定されない。前記ジオキサジン顔料としては、具体的には、例えば、C.I.ピグメントバイオレット23、37などが挙げられる。
【0027】
前記インジゴ系顔料は、インジゴ骨格を有するものであれば、特に限定されない。前記インジゴ系顔料としては、具体的には、例えば、C.I.ピグメントブルー63、73015:X等が挙げられる。前記チオインジゴ系顔料は、チオインジゴ骨格を有するものであれば、特に限定されない。前記チオンジゴ系顔料としては、具体的には、例えば、C.I.ピグメントレッド88、181等が挙げられる。イソインドリノン顔料は、イソインドリノン骨格を有するものであれば、特に限定されない。前記ピランスロン系顔料は、ピランスロン骨格を有するものであれば、特に限定されない。前記ピランスロン系顔料としては、具体的には、例えば、C.I.ピグメントレッド216、226、C.I.ピグメントオレンジ40、51等が挙げられる。前記アンスアンスロン系顔料は、アンスアンスロン骨格を有するものであれば、特に限定されない。前記アンスアンスロン系顔料としては、具体的には、例えば、C.I.ピグメントレッド168、C.I.ピグメントバイオレット31、またはバットオレンジ3等が挙げられる。前記フラバンスロン系顔料は、フラバンスロン骨格を有するものであれば、特に限定されない。前記フラバンスロン系顔料としては、具体的には、例えば、C.I.ピグメントイエロー24またはバットイエロー1等が挙げられる。
【0028】
前記インダンスロン系顔料は、インダンスロン骨格を有するものであれば、特に限定されない。前記インダンスロン系顔料としては、具体的には、例えば、C.I.ピグメントブルー60、64、またはバットブルー4等が挙げられる。前記イソインドリノン系顔料は、イソインドリノン骨格を有するものであれば、特に限定されない。前記イソインドリノン顔料としては、具体的には、例えば、C.I.ピグメントイエロー109、110、173、またはC.I.ピグメントオレンジ61等が挙げられる。前記キノフタロン系顔料は、キノフタロン骨格を有するものであれば、特に限定されない。前記キノフタロン系顔料としては、具体的には、例えば、C.I.ピグメントイエロー138等が挙げられる。前記金属錯系顔料としては、具体的には、例えば、C.I.ピグメントグリーン10、C.I.ピグメントイエロー117、129、150、153、177、179、257、271、またはC.I.ピグメントオレンジ59、65、68等が挙げられる。
【0029】
前記フラーレン系顔料は、フラーレン骨格を有するものであれば、特に限定されない。化学修飾されたフラーレン誘導体であっても、化学修飾されていないフラーレンであってもよいが、本発明においては、化学修飾されていないフラーレンであるのが好ましい。本発明においては、化学修飾されていないフラーレンを用いた場合であっても、良好に成膜を行うことができる。前記フラーレンとしては、例えば、C36フラーレン、C60フラーレン、C70フラーレン、C76フラーレン、C78フラーレン、C82フラーレン、C84フラーレン、C90フラーレン、C96フラーレン等が挙げられる。本発明においては、前記フラーレンがC60フラーレンであるのが好ましい。
【0030】
本発明においては、前記有機顔料が、多環式顔料であるのが、より均一且つ良好に前記基体を着色することができるため、好ましく、フラーレン系顔料であるのが、より好ましい。
【0031】
また、前記着色剤は、さらに、他の顔料または染料を含んでいてもよい。前記の他の顔料または染料は、前記例示した顔料または染料以外の顔料または染料であってもよい。
【0032】
前記原料溶液中の前記着色剤の配合割合は、特に限定されないが、好ましくは、0.001重量%~80重量%であり、より好ましくは、0.01重量%~80重量%である。
【0033】
前記無極性溶媒は、溶媒として用いることができ、前記極性溶媒よりも沸点が低く、極性を有していない溶媒であれば、特に限定されない。前記無極性溶媒としては、例えば、炭化水素化合物または芳香族化合物などが挙げられる。本発明においては、前記無極性溶媒が、芳香族化合物であるのが、より良好に成膜を行うことができるため、好ましく、下記式(1)で表される化合物であるのが、より好ましい。
【0034】
【化2】
(式中、R~Rは、それぞれ同一または異なって、水素原子または炭化水素基を表し、R~Rから選ばれる任意の2つの基が結合して環を形成してもよい。)
【0035】
本発明においては、前記無極性溶媒が、アルキル芳香族化合物であるのが好ましい。前記アルキル芳香族化合物は、1または2以上のアルキル基を有する芳香族化合物であれば特に限定されない。
【0036】
本発明における「アルキル基」は、炭素数1~20の直鎖状、分岐状又は環状アルキル基が好ましい。アルキル基の具体例としては、例えば、メチル、エチル、n-プロピル、2-プロピル、n-ブチル、1-メチルプロピル、2-メチルプロピル、tert-ブチル、n-ペンチル、1-メチルブチル、1-エチルプロピル、tert-ペンチル、2-メチルブチル、3-メチルブチル、2,2-ジメチルプロピル、n-ヘキシル、1-メチルペンチル、1-エチルブチル、2-メチルペンチル、3-メチルペンチル、4-メチルペンチル、2-メチルペンタン-3-イル、3,3-ジメチルブチル、2,2-ジメチルブチル、1,1-ジメチルブチル、1,2-ジメチルブチル、1,3-ジメチルブチル、2,3-ジメチルブチル、1-エチルブチル、2-エチルブチル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、トリデシル、テトラデシル、ペンタデシル、ヘキサデシル、ヘプタデシル、オクタデシル、ノナデシル、イコシル、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル又はシクロヘキシル等が挙げられる。アルキル基は、中でも炭素数1~10のアルキル基がより好ましく、炭素数1~6のアルキル基が更に好ましく、炭素数1~4のアルキル基がとりわけ好ましい。
【0037】
炭化水素基としては、例えば、アルキル基、アリール基又はアラルキル基等が挙げられる。
【0038】
アルキル基としては、前記したアルキル基等が挙げられる。
【0039】
アリール基としては、炭素数6~20のアリール基が好ましい。アリール基の具体例としては、フェニル、インデニル、ペンタレニル、ナフチル、アズレニル、フルオレニル、フェナントレニル、アントラセニル、アセナフチレニル、ビフェニレニル、ナフタセニル又はピレニル等が挙げられる。アリール基は、中でも炭素数6~14のアリール基がより好ましい。
【0040】
アラルキル基としては、炭素数7~20のアラルキル基が好ましい。該アラルキル基の具体例としては、ベンジル、フェネチル、1-フェニルプロピル、2-フェニルプロピル、3-フェニルプロピル、1-フェニルブチル、2-フェニルブチル、3-フェニルブチル、4-フェニルブチル、1-フェニルペンチルブチル、2-フェニルペンチルブチル、3-フェニルペンチルブチル、4-フェニルペンチルブチル、5-フェニルペンチルブチル、1-フェニルヘキシルブチル、2-フェニルヘキシルブチル、3-フェニルヘキシルブチル、4-フェニルヘキシルブチル、5-フェニルヘキシルブチル、6-フェニルヘキシルブチル、1-フェニルヘプチル、1-フェニルオクチル、1-フェニルノニル、1-フェニルデシル、1-フェニルウンデシル、1-フェニルドデシル、1-フェニルトリデシル又は1-フェニルテトラデシル等が挙げられる。アラルキル基は、中でも炭素数7~12のアラルキル基がより好ましい。
【0041】
本発明においては、前記式(1)において、R~Rから選ばれる任意の2つの基が縮合して環を形成するのも好ましい。R~Rから選ばれる任意の2つの基が縮合して形成される環としては、例えば5~20員環などが挙げられる。形成される好ましい環としては、例えば、シクロペンタン環、シクロヘキサン環、シクロヘプタン環、シクロオクタン環、シクロデカン環、シクロドデカン環、シクロテトラデカン環、シクロペンタデカン環、シクロヘキサデカン環又はシクロヘプタデカン環等の単環;ジヒドロナフタレン環、インデン環またはインダン環等の縮合環などが挙げられる。また、これらの環は、炭化水素基等で置換されていてもよい。炭化水素基の具体例としては、前記の炭化水素基に記載したものなどが挙げられる。
【0042】
前記アルキル芳香族化合物の具体例としては、例えば、トルエン、キシレン、トリメチルベンゼン、エチルベンゼン、エチルトルエン類、エチルキシレン類、ジエチルベンゼン類、プロピルベンゼン類等のアルキルベンゼン類、あるいはメチルナフタレン類、エチルナフタレン類、ジメチルナフタレン類等のアルキルナフタレン類、その他アルキルビフェニル類またはアルキルアントラセン類等が挙げられる。本発明においては、前記アルキル芳香族化合物がトリメチルベンゼンであるのが好ましい。前記トリメチルベンゼンとしては、例えば、1,2,3-トリメチルベンゼン、1,2,4-トリメチルベンゼン、1,3,5-トリメチルベンゼン等が挙げられる。本発明においては、前記トリメチルベンゼンが、1,3,5-トリメチルベンゼンであるのが好ましい。
【0043】
前記無極性溶媒の沸点は、前記極性溶媒の沸点よりも低ければ、特に限定されない。本発明においては、前記無極性溶媒の沸点が、200℃以下であるのが好ましく、100℃~200℃であるのがより好ましい。ここで、沸点とは、大気圧下における沸点を意味する。
【0044】
前記極性溶媒は、溶媒として用いることができ、極性を有するものであって、前記無極性溶媒よりも沸点の高いものであれば、特に限定されない。水等の無機溶媒であってもよいし、有機溶媒であってもよい。前記水としては、例えば、純水、超純水、水道水、井戸水鉱泉水、鉱水、温泉水、湧水、淡水、海水などが挙げられる。
【0045】
前記有機溶媒としては、例えば、プロトン性極性溶媒または非プロトン性極性溶媒などが挙げられる。前記プロトン性極性溶媒としては、例えば、アルコール系溶媒、カルボン酸系溶媒またはフェノール系溶媒等が挙げられる。前記アルコール系溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、メトキシメタノール、メトキシエタノール、メトキシプロパノール、メトキシブタノール、エチレングリコール、またはプロピレングリコール等が挙げられる。前記カルボン酸系溶媒としては、例えば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、または酪酸等が挙げられる。前記フェノール系溶媒としては、例えば、フェノール、o-クレゾール、m-クレゾール、p-クレゾール、2,3-キシレノール、2,4-キシレノール、2,5-キシレノール、2,6-キシリノール、3,4-キシレノールまたは3,5-キシレノール等が挙げられる。
【0046】
前記非プロトン性極性溶媒としては、例えば、アミド系溶媒、ラクトン系溶媒、スルホキシド系溶媒、ニトリル系溶媒、有機リン系溶媒およびセロソルブ系溶媒から選ばれる1種または2種以上等が挙げられる。前記アミド系溶媒としては、例えば、N、N-ジメチルアセトアミド、N-メチル-ピロリドン、2-ピロリドン、N-メチルカプロラクタム、N、N-ジメチルホルムアミド、N、N-ジエチルホルムアミド、N、N-ジエチルアセトアミド、N-メチルプロピオンアミドまたはメチルイミダゾリジノン等が挙げられる。前記ラクトン系溶媒としては、例えば、β―プロピオラクトン、βブチロラクトンなどのβ―ラクトン類、γ―ブチロラクトン、γ―バレロラクトン、γ―カプロラクトン、γ―カプリロラクトン、γ―ラウロラクトンなどのγ―ラクトン類、δ―バレロラクトンなどのδ―ラクトン類、又はε―カプロラクトンなどのε―ラクトン類等が挙げられる。前記スルホキシド系溶媒としては、例えば、ジメチルスルホキシド、ジエチルスルホキシド、メチルフェニルスルホキシドまたはテトラメチレンスルホキシド等が挙げられる。前記ニトリル系溶媒としては、ベンゾニトリル、アセトニトリル、プロピオニトリル、ブチロニトリルまたはアジポニトリル等が挙げられる。前記有機リン系溶媒としては、テトラメチルホスホリックアミドまたはヘキサメチルホスホリックアミド等が挙げられる。前記セロソルブ系溶媒としては、エチルセロソルブアセテートまたはメチルセロソルブアセテート等が挙げられる。
【0047】
本発明においては、前記極性溶媒が、有機溶媒であるのが好ましく、非プロトン性極性溶媒であるのがより好ましく、アミド系溶媒であるのが最も好ましい。
【0048】
前記極性溶媒の沸点は、前記無極性溶媒の沸点よりも高ければ、特に限定されないが、本発明においては、150℃以上であるのが好ましく、200℃以上であるのがより好ましく、200℃~300℃であるのが最も好ましい。ここで、沸点とは、大気圧下における沸点を意味する。また、前記極性溶媒と前記無極性溶媒との沸点差も特に限定されないが、本発明においては、30℃以上であるのが、より安定的に成膜を行うことができるため、好ましく、50℃以上であるのがより好ましく、70℃以上であるのが最も好ましい。
【0049】
前記原料溶液中の前記極性溶媒の配合割合は、特に限定されないが、0.0001モル%~90モル%が好ましく、0.001モル%~50モル%がより好ましい。前記原料溶液中の前記無極性溶媒の配合割合は、特に限定されないが、好ましくは、0.01モル%~99モル%であり、より好ましくは、1モル%~95モル%である。また、本発明においては、前記無極性溶媒と前記極性溶媒との体積比が5:1~1:1であるのが、より霧化または液滴化に適した原料溶液が得られるため、好ましく、4:1~2:1であるのがより好ましく、4:1~7:3であるのが最も好ましい。
【0050】
前記溶媒は、前記無極性溶媒と前記極性溶媒とを上記の割合で含んでいれば、特に限定されず、さらに、他の溶媒を含んでいてもよい。他の溶媒は、特に限定されず、前記極性溶媒または前記無極性溶媒以外の溶媒であってよく、有機溶媒であってもよいし、無機溶媒であってもよい。前記有機溶媒としては、例えば、アルコール類、エステル類、エーテル類等があげられる。前記無機溶媒としては、水等が挙げられ、より具体的には、例えば、純水、超純水、水道水、井戸水鉱泉水、鉱水、温泉水、湧水、淡水、海水などが挙げられる。
【0051】
前記原料溶液は、さらに、添加剤が含まれていてもよい。前記添加剤は、本発明の目的を阻害しない限り特に限定されず、酸、塩基、溶媒等であってよく、公知の添加剤であってよい。無機材料であってもよいし、有機材料であってもよい。前記酸としては、例えば、弗酸、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硫酸、リン酸、硝酸、酢酸、炭酸、蟻酸、安息香酸、亜塩素酸、次亜塩素酸、亜硫酸、次亜硫酸、亜硝酸、次亜硝酸、亜リン酸、次亜リン酸等のプロトン酸またはこれらの混合物等が挙げられる。また、前記塩基としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウムまたはこれらの混合物等が挙げられる。前記溶媒は、本発明の目的を阻害しない限り、特に限定されず、前記無極性溶媒または前記極性溶媒以外の有機溶媒であってもよいし、無機溶媒であってもよい。有機溶媒と無機溶媒の混合溶媒であってもよい。前記有機溶媒としては、例えば、アルコール類、エステル類、エーテル類等があげられる。前記無機溶媒としては、水等が挙げられ、より具体的には、例えば、純水、超純水、水道水、井戸水鉱泉水、鉱水、温泉水、湧水、淡水、海水などが挙げられる。
【0052】
前記原料溶液は、例えば、前記着色剤と、前記極性溶媒と、前記無極性溶媒とを混合することにより得られる。前記混合手段は特に限定されず、公知の混合手段であってよい。より具体的には、例えば、前記着色剤を、前記極性溶媒および前記無極性溶媒に溶解または分散させることにより得られる。
【0053】
本発明においては、キャリアガスを前記ミストまたは前記液滴に供給し、ついで、該キャリアガスを用いて前記ミストまたは前記液滴を前記基体まで搬送するのが、より均一かつ良好に基体を着色することができるため、好ましい。前記キャリアガスとしては、本発明の目的を阻害しない限り特に限定されず、例えば、酸素、オゾン、窒素やアルゴン等の不活性ガス、または水素ガスやフォーミングガス等の還元ガスなどが好適な例として挙げられる。また、キャリアガスの種類は1種類であってよいが、2種類以上であってもよく、流量を下げた希釈ガス(例えば10倍希釈ガス等)などを、第2のキャリアガスとしてさらに用いてもよい。また、キャリアガスの供給箇所も1箇所だけでなく、2箇所以上あってもよい。キャリアガスの流量は、特に限定されないが、0.01~20L/分であるのが好ましく、1~10L/分であるのがより好ましい。希釈ガスの場合には、希釈ガスの流量が、0.001~2L/分であるのが好ましく、0.1~1L/分であるのがより好ましい。
【0054】
前記熱反応は、熱反応は、熱でもって前記ミストまたは液滴が反応すればそれでよく、反応条件等も本発明の目的を阻害しない限り特に限定されない。本工程では、通常、300℃以下の温度で熱反応を行うが、本発明においては、前記熱反応を、前記極性溶媒の沸点より低い温度で行うのが、より均一に前記基体を着色することができるため、好ましい。なお、下限については、本発明の目的を阻害しない限り特に限定されないが、100℃以上が好ましく、120℃以上がより好ましい。また、熱反応は、本発明の目的を阻害しない限り、真空下、非酸素雰囲気下、還元ガス雰囲気下および酸素雰囲気下のいずれの雰囲気下で行われてもよいが、非酸素雰囲気下または酸素雰囲気下で行われるのが好ましい。また、大気圧下、加圧下および減圧下のいずれの条件下で行われてもよいが、本発明においては、大気圧下で行われるのが好ましい。なお、膜厚は、成膜時間を調整することにより、設定することができる。
【0055】
また、本発明においては、前記成膜後、アニール処理を行ってもよい。アニールの処理温度は、本発明の目的を阻害しない限り、特に限定されず、通常、50℃~650℃であり、好ましくは、100℃~300℃である。また、アニールの処理時間は、通常、1分間~48時間であり、好ましくは10分間~24時間であり、より好ましくは30分間~12時間である。なお、アニール処理は、本発明の目的を阻害しない限り、どのような雰囲気下で行われてもよいが、好ましくは非酸素雰囲気下であり、より好ましくは窒素雰囲気下である。
【0056】
本発明においては、前記基体上に、直接、成膜してもよいし、バッファ層(緩衝層)や応力緩和層等の他の層を介して成膜してもよい。バッファ層(緩衝層)や応力緩和層等の他の層の形成手段は、特に限定されず、公知の手段であってよいが、本発明においては、ミストCVD法が好ましい。
【0057】
上記のようにして成膜することで、工業的有利に、均一且つ良好に基体を着色することができる。
【実施例
【0058】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0059】
(実施例1)
1.成膜装置
図1を用いて、本実施例で用いた成膜装置1を説明する。成膜装置1は、キャリアガスを供給するキャリアガス源2aと、キャリアガス源2aから送り出されるキャリアガスの流量を調節するための流量調節弁3aと、キャリアガス(希釈)を供給するキャリアガス(希釈)供給源2bと、キャリアガス(希釈)供給手段2bから送り出されるキャリアガス(希釈)の流量を調節するための流量調節弁3bと、原料溶液4aが収容されるミスト発生源4と、水5aが入れられる容器5と、容器5の底面に取り付けられた超音波振動子6と、ホットプレート8と、ホットプレート8上に載置された基板10と、ミスト発生源4から基板10近傍までをつなぐ供給管9とを備えている。
【0060】
2.原料溶液の作製
C60フラーレンをメシチレン(1,3,5-トリメチルベンゼン)および2-ピロリドンに混合し、これを原料溶液とした。なお、溶液中のメシチレンと2-ピロリドンの混合比は、3:1(体積比)とし、溶液中のC60フラーレンの濃度は1.4×10-3mol/Lとした。
【0061】
3.成膜準備
上記2.で得られた原料溶液4aを、ミスト発生源4内に収容した。次に、基板10として、ガラス/ITO基板(20mm×25mm)をホットプレート8上に設置し、ホットプレート8を作動させて基板10の温度を210℃にまで昇温させた。次に、流量調節弁3aおよび3bを開いて、キャリアガス供給源2aから供給されるキャリアガスの流量を2.0L/分に、キャリアガス(希釈)2bから供給されるキャリアガス(希釈)の流量を4.0L/分に調節した。なお、キャリアガスとして窒素を用いた。
【0062】
4.着色膜の成膜
次に、超音波振動子6を2.4MHzで振動させ、その振動を、水5aを通じて原料溶液4aに伝播させることによって、原料溶液4aを霧化させてミスト4bを生成させた。このミスト4bに対して、キャリアガスが供給され、該キャリアガスによって、ミスト4bが供給管9内を通って、基板10へと搬送され、大気圧下、210℃にて、基板10近傍でミストが熱反応して、基板10上にフラーレン膜が形成された。なお、得られたフラーレン膜の膜厚は約50nmであった。
【0063】
5.評価
上記4.にて得られたフラーレン膜の色は黄色であり、基板は透明性を維持しつつ、均一且つ良好に着色されていた。また、得られたフラーレン膜につき、紫外可視吸収測定を行った。その結果を図2に示す。図2から分かるように、得られたフラーレン膜は、波長300nm~400nmの間に吸光ピークを有していた。
【0064】
(実施例2)
成膜温度を、180℃としたこと以外は、実施例1と同様にして、フラーレン膜を成膜した。得られたフラーレン膜の色は黄色であり、基板は透明性を維持しつつ、均一且つ良好に着色されていた。また、得られたフラーレン膜につき、実施例1と同様にして、紫外可視吸収測定を行った。その結果を図2に示す。図2から分かるように、実施例2で得られたフラーレン膜は、波長300nm~400nmの間に吸光ピークを有していた。
【0065】
(実施例3~4)
実施例3、実施例4として、実施例1の成膜温度をそれぞれ150℃、120℃としたこと以外は、それぞれ実施例1と同様にして、フラーレン膜を成膜した。得られたフラーレン膜の色は黄色であり、基板は透明性を維持しつつ、均一且つ良好に着色されていた。また、得られたフラーレン膜につき、実施例1と同様にして、紫外可視吸収測定を行ったところ、得られたフラーレン膜は、波長300nm~400nmの間に吸光ピークを有していた。
【0066】
(実施例5~8)
実施例5~8として、実施例1~4のメシチレンと2-ピロリドンとの混合比をそれぞれ、4:1(体積比)としたこと以外は、実施例1~4とそれぞれ同様にして、フラーレン膜を成膜した。得られたフラーレン膜の色は黄色であり、基板は透明性を維持しつつ、均一且つ良好に着色されていた。また、得られたそれぞれのフラーレン膜につき、実施例1と同様にして、紫外可視吸収測定を行ったところ、得られたフラーレン膜は、いずれも波長300nm~400nmの間に吸光ピークを有していた。
【0067】
(実施例9~12)
実施例9~12として、実施例1~4のメシチレンと2-ピロリドンとの混合比をそれぞれ、7:3(体積比)としたこと以外は、実施例1~4とそれぞれ同様にして、フラーレン膜を成膜した。得られたフラーレン膜の色は黄色であり、基板は透明性を維持しつつ、均一且つ良好に着色されていた。また、得られたそれぞれのフラーレン膜につき、実施例1と同様にして、紫外可視吸収測定を行ったところ、得られたフラーレン膜は、いずれも波長300nm~400nmの間に吸光ピークを有していた。
【0068】
(比較例1)
メシチレンのみを溶媒として用いたこと以外は、実施例1と同様にして、成膜を行った。その結果、成膜レートが実施例1の1/10以下であり、着色ムラもあった。
【0069】
(比較例2)
2-ピロリドンのみを溶媒として用いたこと以外は、実施例1と同様にして、成膜を行った。しかしながら、C60フラーレンが溶媒にほとんど溶けず、さらに霧化することも困難であり、成膜することができなかった。
【0070】
本発明の着色方法は、バインダーとしての樹脂を用いることなく、工業的有利に、均一且つ良好に基体を着色することができ、特に、低温、大気圧および非真空で着色を行うことができるので、基板等の制限もなく、種々の幅広い分野に利用可能である。
【符号の説明】
【0071】
1 成膜装置
2a キャリアガス源
2b キャリアガス(希釈)源
3a 流量調節弁
3b 流量調節弁
4 ミスト発生源
4a 原料溶液
4b ミスト
5 容器
5a 水
6 超音波振動子
7 ノズル
8 ホットプレート
9 供給管
10 基板

図1
図2