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  • 特許-捨て型枠及びコンクリート基礎 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-26
(45)【発行日】2022-11-04
(54)【発明の名称】捨て型枠及びコンクリート基礎
(51)【国際特許分類】
   E02D 27/01 20060101AFI20221027BHJP
【FI】
E02D27/01 D
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2017128801
(22)【出願日】2017-06-30
(65)【公開番号】P2019011607
(43)【公開日】2019-01-24
【審査請求日】2020-06-29
【審判番号】
【審判請求日】2022-01-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000112886
【氏名又は名称】フリー工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】390019323
【氏名又は名称】小岩金網株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100082418
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 朔生
(72)【発明者】
【氏名】富田 満
(72)【発明者】
【氏名】西村 康志
【合議体】
【審判長】居島 一仁
【審判官】藤脇 昌也
【審判官】西田 秀彦
(56)【参考文献】
【文献】実開昭55-101961(JP,U)
【文献】実開昭60-152747(JP,U)
【文献】実開昭61-146539(JP,U)
【文献】特開2000-8392(JP,A)
【文献】実開昭60-162144(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 27/01
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
無端帯状に連結した金網からなる型枠材と、
形状保持材と、を備え、
前記型枠材は、複数の列線を無端帯状に連結した菱形金網であり、
展開した前記型枠材の内部に配置した前記形状保持材によって、前記型枠材を内部から押圧することで、前記型枠材を円筒状に形状保持可能に構成したことを特徴とする、
捨て型枠。
【請求項2】
前記形状保持材は、複数の円環状の線材であることを特徴とする、請求項1に記載の捨て型枠。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の捨て型枠と、
前記捨て型枠の内部に充填されている充填材と、を備え、
前記型枠材の網目に浸入した前記充填材によって、前記捨て型枠の全周にわたる外周層を形成していることを特徴とする、
コンクリート基礎。
【請求項4】
前記充填材の内部に配筋材を備えることを特徴とする、請求項に記載のコンクリート基礎。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、捨て型枠及びコンクリート基礎に関し、特に運搬組立が容易で、コンクリートの品質を向上可能な捨て型枠と、これを用いてなる密実で高品質かつ高強度なコンクリート基礎に関する。なお、本発明において「コンクリート」とはモルタルを含む意味で使用する。
【背景技術】
【0002】
フェンスの基礎や太陽光モジュールの架台の基礎として、コンクリート基礎が用いられる。コンクリート基礎には、工場製作のプレキャスト基礎の他、合板型枠や厚紙製のボイド管内にコンクリートを打設する現場打ち基礎がある。
特許文献1及び2には、樹脂製や鋼製の捨て型枠を用いた現場打ちのコンクリート基礎が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014-227656号公報
【文献】特開2015-190303号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来技術には次のような欠点があった。
<1>プレキャスト基礎は、重量物であるため搬送に手間とコストがかかる。また、設置まで広い保管場所が必要となる。
<2>型枠による現場打ち基礎は、型枠の解体、撤去が必要となるため施工性が悪く、施工コストが嵩む。
<3>特許文献1、2の捨て型枠基礎は、型枠が嵩張るため搬送時の積載効率が悪く、設置まで広い保管場所が必要となる。また、捨て型枠とコンクリートの付着が悪く、捨て型枠が基礎の構造強度に殆ど寄与しない。
【課題を解決するための手段】
【0005】
以上の課題を解決する本発明の捨て型枠は、無端帯状に連結した金網からなる型枠材と、形状保持材と、を備え、展開した型枠材の内部に配置した形状保持材によって、型枠材を内部から押圧することで、型枠材を円筒状に形状保持可能に構成したことを特徴とする。
本構造によって、運搬組立を容易に行うことができる。また、コンクリートの品質を向上させることができる。
【0006】
本発明の捨て型枠は、型枠材が、複数の列線を無端帯状に連結した菱形金網であってもよい。
本構造によって、折り畳み時の嵩が小さく搬送と保管が容易になる。
【0007】
本発明の捨て型枠は、形状保持材が、複数の円環状の線材であってもよい。
本構造によって、型枠材を内側から外向きに均等に押圧することができる。
【0008】
本発明のコンクリート基礎は、捨て型枠と、捨て型枠の内部に充填されている充填材と、を備え、型枠材の網目に浸入した充填材によって、捨て型枠の全周にわたる外周層を形成していることを特徴とする。
本構造によって、密実で高品質かつ高強度なコンクリート基礎を提供できる。
【0009】
本発明のコンクリート基礎は、充填材の内部に配筋材を備えていてもよい。
本構造によって、充填材の外周部に加え、中心部も補強することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明の捨て型枠および基礎コンクリートは、以上の構成を備えるため、次の効果のうち少なくとも一つを備える。
<1>捨て型枠を折り畳むことができるので、搬送が容易で搬送コストが安い。また、折り畳み時の嵩が小さいので場所を取らず保管が容易である。
<2>捨て型枠の組立が容易で撤去を要しないため、施工効率が非常に高い。
<3>金網とコンクリートとの付着がよいため、両者が強固に連結することで、高い構造強度を発揮できる。
<4>金網の網目から余剰水やエアが抜けるため、密実で高品質なコンクリートを製作することができる。
<5>金網がコンクリートの乾燥収縮による引張応力に抵抗するため、クラックの発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明のコンクリート基礎の説明図。
図2】本発明の捨て型枠の説明図。
図3】本発明の捨て型枠を畳んだ状態の説明図。
図4】外周層の説明図。
図5】本発明のコンクリート基礎の製作方法の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照しながら本発明について詳細に説明する。
なお、捨て型枠については、コンクリート基礎の説明の中で説明する。
【実施例1】
【0013】
[コンクリート基礎]
<1>全体の構成(図1)。
本発明のコンクリート基礎1は、円筒状の金網からなる捨て型枠10と、捨て型枠10内に、捨て型枠10と一体に配置した充填材20からなる、円柱状の基礎である。
コンクリート基礎1は、捨て型枠10を現場で展開して組立て、内部に充填材20を打設し硬化させて製作する。捨て型枠10が金網からなるため、網目に浸入した充填材20が金網と一体に固結して堅固な構造を構成する。
【0014】
<2>捨て型枠(図2)。
捨て型枠10は、折り畳み自在な型枠である。
捨て型枠10は、円筒形の金網からなる型枠材11と、型枠材11を内部から展開して形状保持する形状保持材12と、を備える。
捨て型枠10は、充填材20の打設後も解体撤去せず残置することで、充填材20と一体化し、充填材20を補強する。
【0015】
<2.1>型枠材。
型枠材11は、捨て型枠10の外枠を構成する部材である。
本例では、型枠材11として、複数の列線11aを無端帯状に連結した菱形金網を採用する。無端帯状とは、菱形金網の展開方向の両辺を接続したベルト状の形状を意味する。
各列線11aは、端部をナックル加工して相互の抜け出しを防止する。
型枠材11は列線11aの連結体であり、単独では筒体の形状保持性を持たない為、重ね合わせて畳んだ状態で搬送することができる。このため、搬送が容易で、保管スペースを取らない(図3)。
なお、金網の種類は菱形金網に限られず、例えば亀甲金網など、平坦に畳むことができ、かつ形状保持材12によって円筒形状を保持可能な金網であればよい。
また、型枠材11は網目を備えるため、充填材20の付着が良い。
型枠材11の線径や目合いは、充填材20のスランプ値との関係において、要求されるコンクリートの品質を確保しつつ、網目からの充填材20の浸み出し量が少量になる組合せを選択する。
【0016】
<2.2>形状保持材。
形状保持材12は、型枠材11を円筒状に形状保持するための部材である。
本例では、形状保持材12として、複数の、剛性を備えた円環状の線材を採用する。これは、細径の鋼線を円環状に曲げ、両端を溶接して形成する。
形状保持材12の外径は、展開した型枠材11の内径より若干大きく構成する。
型枠材11は菱形金網であり円周方向に伸びるため、形状保持材12を型枠材11の内部に配置すると、形状保持材12の外側が型枠材11を内側から外向きに均等に押圧し、型枠材11を円筒状に形状保持する。
なお、形状保持材12は、円環状の線材に限られず、型枠材11の内部から押圧可能であれば、例えば円筒状のベルト材などであってもよい。
【0017】
<3>充填材。
充填材20は、型枠材11の内部に充填する構造材である。
充填材20として、公知の各種コンクリートを採用することができるが、型枠材11の網目からの浸み出し量を抑えるため、スランプ値の小さい硬練りコンクリートとするのが望ましい。
充填材20は、打設後、型枠材11と一体に硬化し、充填材20の外周部に外周層21が形成される。
【0018】
<3.1>外周層(図4)。
外周層21は、型枠材11の網目に浸入した充填材20が硬化することによって、充填材20の外周部に形成される層である。
型枠材11は厚みを備えた菱形金網からなるため、打設した充填材20が網目に入り込み内部で硬化することによって、充填材20の全周にわたって、型枠材11と充填材20とが一体に結合した外周層21が形成される。
外周層21が充填材20の円周方向の引張応力に抵抗することで、乾燥収縮等による表面クラックの発生を抑制することができる。
【0019】
<4>製作方法。
コンクリート基礎1の製作方法は以下の通りである。なお、以下の方法は一実施例に過ぎず、これに限られるものではない。
(1)型枠材11を円筒状に展開しつつ、内部に形状保持材12を挿入する。形状保持材12は、型枠材11の上端部付近、中間部付近、および下端部付近の3か所に配置する。形状保持材12によって型枠材11を内側から押圧して円筒形状の捨て型枠10を構成する。この際、形状保持材12の外周部が菱形金網の網目の溝にはまることで形状保持材12のズレが防止される。
(2)捨て型枠10を、開口を上方に向けた姿勢で地盤上に立設する。または、地盤を掘り下げてその底部に立設してもよい。
(3)機械練りした充填材20を人力投入で捨て型枠10内に打設する。
(4)充填材20をバイブレーターで締め固める。打設と締固めに伴って、捨て型枠10内の充填材20が型枠材11の網目に入りこみ、一部が表面に浸み出す。
(5)型枠材11の網目から外へ浸み出した充填材20を、コテや刷毛で整形する。型枠材11は菱形金網からなるため、充填材20をコテ等で網目に沿って斜めに掻き取ることで、型枠材11の表面に綺麗な線状模様が形成される。
(6)充填材20を養生する。本発明のコンクリート基礎1は、型枠材11の網目から充填材20内の余剰水やエアが抜けるため、コンクリートが緻密化し、高い品質を達成することができる。
(7)充填材20が固結することで、コンクリート基礎1が完成する。また、充填材20の外周部分には、型枠材11と一体化した外周層21が形成される。
【0020】
<4.1>実施状況(図5)。
本発明のコンクリート基礎1の製作の実施状況について説明する。
Φ2.0mm、目合い15mmの菱形金網に対し、スランプ値12cmのモルタルを人力投入した場合において、図5の(a)はモルタルの打設状況、(b)はバイブレーションによる締固め状況、(c)は金コテによる仕上げ状況、をそれぞれ表す。
本実施の組合せでは、打設およびバイブレーターの締固めによる網目からのモルタル流出量は少なく、コテ、刷毛いずれの仕上げにもよく馴染んだ。
【実施例2】
【0021】
[鉄筋コンクリートとする例]
実施例1のコンクリート基礎1は無筋であったが、捨て型枠10の内部に配筋材30を配置して、鉄筋コンクリートとしてもよい。
充填材20の外周部に加えて中心部も補強することで、土木工事用の構造材として利用することができる。
【符号の説明】
【0022】
1 コンクリート基礎
10 捨て型枠
11 型枠材
11a 列線
12 形状保持材
20 充填材
21 外周層
30 配筋材
図1
図2
図3
図4
図5