(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-26
(45)【発行日】2022-11-04
(54)【発明の名称】半導体装置および半導体装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/336 20060101AFI20221027BHJP
H01L 29/78 20060101ALI20221027BHJP
H01L 21/283 20060101ALI20221027BHJP
H01L 21/316 20060101ALI20221027BHJP
H01L 29/12 20060101ALI20221027BHJP
H01L 21/338 20060101ALI20221027BHJP
H01L 29/778 20060101ALI20221027BHJP
H01L 29/812 20060101ALI20221027BHJP
【FI】
H01L29/78 301G
H01L29/78 301B
H01L21/283 B
H01L21/283 C
H01L21/316 X
H01L21/316 M
H01L21/316 P
H01L29/78 653A
H01L29/78 652T
H01L29/78 652K
H01L29/80 H
(21)【出願番号】P 2019017158
(22)【出願日】2019-02-01
【審査請求日】2021-10-29
(73)【特許権者】
【識別番号】504139662
【氏名又は名称】国立大学法人東海国立大学機構
(73)【特許権者】
【識別番号】000003609
【氏名又は名称】株式会社豊田中央研究所
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】塩崎 宏司
(72)【発明者】
【氏名】白石 賢二
(72)【発明者】
【氏名】加地 徹
(72)【発明者】
【氏名】長川 健太
(72)【発明者】
【氏名】成田 哲生
(72)【発明者】
【氏名】菊田 大悟
【審査官】市川 武宜
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-186127(JP,A)
【文献】特開2013-140835(JP,A)
【文献】特開2012-54341(JP,A)
【文献】特開2007-329237(JP,A)
【文献】特開2017-55004(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0204207(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/283
H01L 21/316
H01L 21/336
H01L 21/338
H01L 29/778
H01L 29/78
H01L 29/812
H01L 29/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
窒化物半導体上に設けられたゲート絶縁膜を有する半導体装置であって、
前記ゲート絶縁膜は、
前記窒化物半導体上に設けられており、酸化アルミニウムと酸化シリコンとを含む第1のゲート絶縁層と、
前記第1のゲート絶縁層上に設けられている第2のゲート絶縁層であって、酸化アルミニウムと酸化シリコンとを含み、前記第2のゲート絶縁層におけるシリコン原子とアルミニウム原子の総和におけるシリコン原子の割合である第2の混合比が、前記第1のゲート絶縁層におけるシリコン原子とアルミニウム原子の総和におけるシリコン原子の割合である第1の混合比よりも小さい、前記第2のゲート絶縁層と、
を備える、半導体装置。
【請求項2】
前記第1の混合比は、20%以上である、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記第1のゲート絶縁層と前記第2のゲート絶縁層が積層されている方向における前記第1のゲート絶縁層の厚みは、5nm以上である、請求項1又は2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記第2の混合比は、13%以上である、請求項1~3のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項5】
半導体装置の製造方法であって、
窒化物半導体上に、酸化アルミニウムと酸化シリコンとを含む第1のゲート絶縁層を成膜する工程と、
前記第1のゲート絶縁層上に、第2のゲート絶縁層であって、酸化アルミニウムと酸化シリコンとを含み、前記第2のゲート絶縁層におけるシリコン原子とアルミニウム原子の総和におけるシリコン原子の割合である第2の混合比が、前記第1のゲート絶縁層におけるシリコン原子とアルミニウム原子の総和におけるシリコン原子の割合である第1の混合比よりも小さい、前記第2のゲート絶縁層を成膜する工程と、
前記窒化物半導体上に積層されている前記第1のゲート絶縁層と前記第2のゲート絶縁層とを熱処理する工程と、
を備える、半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書で開示する技術は、半導体装置および半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、窒化物半導体上にゲート絶縁膜を有する半導体装置が開示されている。この半導体装置において、ゲート絶縁膜は酸化アルミニウムと酸化シリコンとを含む混合膜である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般的に、ゲート絶縁膜が酸化アルミニウムのみを含む場合における窒化物半導体とゲート絶縁膜の界面近傍の欠陥準位は、ゲート絶縁膜が酸化シリコンのみを含む場合における窒化物半導体とゲート絶縁膜の界面近傍の欠陥準位よりも多くなる。窒化物半導体とゲート絶縁膜の界面近傍における欠陥準位が多い程、ゲート閾値電圧の再現性が低下する。また、酸化アルミニウムのみを含むゲート絶縁膜の誘電率は、酸化シリコンのみを含むゲート絶縁膜の誘電率よりも大きい。誘電率が小さい程、一定のゲート電圧に対して、反転層の濃度が低下し、チャネル抵抗が増加する。
【0005】
特許文献1の半導体装置では、ゲート絶縁膜が酸化アルミニウムと酸化シリコンとを含んでいる。このため、ゲート絶縁膜が酸化アルミニウムのみを含んでいる場合と比較して、窒化物半導体とゲート絶縁膜の界面近傍における欠陥準位が低減される。従って、ゲート絶縁膜が酸化アルミニウムのみを含んでいる場合と比較して、ゲート閾値電圧の再現性が高い。また、ゲート絶縁膜が酸化シリコンのみを含んでいる場合と比較して、ゲート絶縁膜全体の誘電率が高い。従って、ゲート絶縁膜が酸化アルミニウムのみを含んでいる場合と比較して、一定のゲート電圧に対するチャネル抵抗が低い。
【0006】
半導体装置の性能を向上させるために、ゲート閾値電圧の再現性、及び、ゲート絶縁膜の誘電率をより高めることが望まれる。しかしながら、特許文献1の半導体装置では、ゲート閾値電圧の再現性を高めるために、ゲート絶縁膜におけるシリコン原子とアルミニウム原子の総和におけるシリコン原子の混合比を高めると、ゲート絶縁膜の誘電率が低下してしまう。また、ゲート絶縁膜の誘電率を高めるために、ゲート絶縁膜におけるシリコン原子とアルミニウム原子の総和におけるアルミニウム原子の混合比を高めると、ゲート閾値電圧の再現性が低下してしまう。従って、ゲート閾値電圧の再現性、及び、ゲート絶縁膜の誘電率をより高めることが困難である。
【0007】
本明細書では、ゲート閾値電圧の変動を抑制し、かつ、誘電率を高めることができる半導体装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本明細書で開示する半導体装置の一実施形態は、窒化物半導体上に設けられたゲート絶縁膜を有する半導体装置である。前記ゲート絶縁膜は、前記窒化物半導体上に設けられており、酸化アルミニウムと酸化シリコンとを含む第1のゲート絶縁層と、前記第1のゲート絶縁層上に設けられている第2のゲート絶縁層であって、酸化アルミニウムと酸化シリコンとを含み、前記第2のゲート絶縁層におけるシリコン原子とアルミニウム原子の総和におけるシリコン原子の第2の混合比が、前記第1のゲート絶縁層におけるシリコン原子とアルミニウム原子の総和におけるシリコン原子の第1の混合比よりも小さい、前記第2のゲート絶縁層と、を備える。
【0009】
上記の構成では、ゲート絶縁膜は、第1のゲート絶縁層と第2のゲート絶縁層とを備える。そして、第1のゲート絶縁層は、窒化物半導体上に設けられている。このため、第1のゲート絶縁層における第1の混合比を調整することで、窒化物半導体と第1のゲート絶縁層の界面近傍における欠陥準位を低減することができる。また、上記の半導体装置では、第2のゲート絶縁層における第2の混合比は、第1のゲート絶縁層における第1の混合比よりも小さい。従って、第1のゲート絶縁層及び第2のゲート絶縁層を含むゲート絶縁膜全体におけるリコン原子とアルミニウム原子の総和におけるシリコン原子の混合比は、ゲート絶縁膜全体における混合比が第1の混合比である場合よりも小さくなる。従って、ゲート絶縁膜全体における混合比が第1の混合比である場合よりも、ゲート絶縁膜全体の誘電率を高めることができる。従って、ゲート閾値電圧の変動を抑制し、かつ、誘電率を高めることができる。
【0010】
第1の混合比は、20%以上であってもよい。効果の詳細は実施例で説明する。
【0011】
第1のゲート絶縁層と第2のゲート絶縁層が積層されている方向における第1のゲート絶縁層の膜厚は、5nm以上であってもよい。効果の詳細は実施例で説明する。
【0012】
第2の混合比は、13%以上であってもよい。効果の詳細は実施例で説明する。
【0013】
本明細書が開示する半導体装置の製造方法は、窒化物半導体上に、酸化アルミニウムと酸化シリコンとを含む第1のゲート絶縁層を成膜する工程と、前記第1のゲート絶縁層上に、第2のゲート絶縁層であって、酸化アルミニウムと酸化シリコンとを含み、前記第2のゲート絶縁層におけるシリコン原子とアルミニウム原子の総和におけるシリコン原子の割合である第2の混合比が、前記第1のゲート絶縁層におけるシリコン原子とアルミニウム原子の総和におけるシリコン原子の割合である第1の混合比よりも小さい、前記第2のゲート絶縁層を成膜する工程と、前記窒化物半導体上に積層されている前記第1のゲート絶縁層と前記第2のゲート絶縁層とを熱処理する工程と、備える。効果の詳細は実施例で説明する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】第1実施例の半導体装置の要部断面図を模式的に示す。
【
図2】第1実施例の半導体装置の製造方法を示すフローチャートである。
【
図3】第1実施例の半導体装置の製造工程を示す図である。
【
図4】第1実施例の半導体装置の製造工程を示す図である。
【
図5】熱処理前における窒化物半導体と第1ゲート絶縁層の界面近傍の準位を示す図である。
【
図6】熱処理後における窒化物半導体と第1ゲート絶縁層の界面近傍の準位を示す図である。
【
図7】ゲート絶縁層中の混合比とゲート絶縁層中のSi-O-Si結合の割合の相関図である。
【
図8】第2実施例の半導体装置の要部断面図を模式的に示す。
【
図9】第3実施例の半導体装置の要部断面図を模式的に示す。
【
図10】第4実施例の半導体装置の要部断面図を模式的に示す。
【
図11】第5実施例の半導体装置の要部断面図を模式的に示す。
【
図12】第6実施例の半導体装置の要部断面図を模式的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(第1実施例)
(半導体装置1の構造)
図1の要部断面図に示されるように、半導体装置1は、横型のMOSFETである。半導体装置1は、半導体基板10、窒化物半導体20、ドレイン電極32、ソース電極34、及び、絶縁ゲート40を備えている。
【0016】
半導体基板10は、窒化物半導体20の下地基板であり、窒化物半導体20が結晶成長可能な組成の材料で構成されている。半導体基板10は、いわゆる窒化物半導体基板であり、例えばGaNの単結晶基板である。
【0017】
窒化物半導体20は、半導体基板10の表面上に設けられている。窒化物半導体20は、GaNの単結晶からなる。窒化物半導体20は、p型のボディ領域22、n+型のドレイン領域24、及び、n+型のソース領域26を有している。
【0018】
ボディ領域22は、GaNのエピ成長層であり、ドレイン領域24とソース領域26を隔てるように設けられている。ドレイン領域24は、ボディ領域22上に設けられており、窒化物半導体20の表層部の一部に設けられており、窒化物半導体20の表面に露出している。ドレイン領域24は、窒化物半導体20の表面上の一部に設けられているドレイン電極32にオーミック接触している。ソース領域26は、ボディ領域22上に設けられており、窒化物半導体20の表層部の一部に設けられており、窒化物半導体20の表面に露出している。ソース領域26は、窒化物半導体20の表面上の一部に設けられているソース電極34にオーミック接触している。このように、ボディ領域22の一部は、ドレイン領域24とソース領域26の間に配置されており、窒化物半導体20の表面に露出している。なお、ボディ領域22は、p型に代えてi型であってもよい。
【0019】
絶縁ゲート40は、ドレイン領域24とソース領域26の間に位置するボディ領域22に対向するように、窒化物半導体20の表面上に設けられており、ゲート絶縁膜42及びゲート電極44を有している。ゲート絶縁膜42は、窒化物半導体20(詳細にはボディ領域22)の表面に接しており、窒化物半導体20とゲート電極44の間に配置されている。ゲート絶縁膜42は、第1のゲート絶縁層42aと第2のゲート絶縁層42bとを有している。第1のゲート絶縁層42aは、窒化物半導体20の表面上に設けられており、酸化アルミニウム(Al2O3)と酸化シリコン(SiO2)とを含む。第1のゲート絶縁層42aにおいて、第1のゲート絶縁層42aにおけるシリコン原子とアルミニウム原子の総和におけるシリコン原子の割合である第1の混合比は、50%である。第1ゲート絶縁膜の膜厚t1は、10nmである。第2のゲート絶縁層42bは、第1のゲート絶縁層42a上に設けられており、酸化アルミニウム(Al2O3)と酸化シリコン(SiO2)とを含む。第2のゲート絶縁層42bにおいて、第2のゲート絶縁層42bにおけるシリコン原子とアルミニウム原子の総和におけるシリコン原子の割合である第2の混合比は、15%である。即ち、第2の混合比は、第1の混合比よりも小さい。ゲート電極44は、ゲート絶縁膜42(詳細には第2のゲート絶縁層42b)上に設けられている。ゲート電極44は、ゲート絶縁膜42を介してドレイン領域24とソース領域26の間に位置するボディ領域22に対向している。ゲート電極44は、例えばアルミニウムである。
【0020】
次に、半導体装置1の動作を説明する。ゲート電極44にオン電圧が印加されると、ゲート絶縁膜42の下方のボディ領域22に反転層が形成される。これにより、ドレイン電極32に接続するドレイン領域24とソース電極34に接続するソース領域26が反転層を介して接続され、ドレイン電極32とソース電極34が導通する。以下では、ドレイン電極32とソース電極34との間の導通が開始される際に、ゲート電極44に印加される電圧をゲート閾値電圧と呼ぶ。
【0021】
(半導体装置1の製造方法)
図2~
図4を参照して、半導体装置1の製造方法について説明する。
図2のフローチャートのステップS1において、窒化物半導体形成工程が行われる。具体的には、GaNの単結晶基板である半導体基板10を用意し、周知の有機金属気相成長法(MOCVD:Metal Organic Chemical Vapor Deposition)を用いて、半導体基板10上に、2~4μm程度の窒化物半導体20を成長させる。
【0022】
ステップS2において、窒化物半導体20に、ドレイン領域24及びソース領域26を形成する(ドレイン領域、ソース領域形成工程)。具体的には、周知のフォトリソグラフィー技術及びドライエッチング加工を用いて、窒化物半導体20上に、ドレイン領域24及びソース領域26が開口しているマスクを加工する。次いで、マスクを介してSiイオンを注入する。次いで、窒化物半導体20上のマスクを除去し、窒化物半導体20上に、保護膜(例えば、SiO2、AlN膜)を成膜し、窒素中において、熱処理する。これにより、窒化物半導体20に注入されたSiイオンが活性化され、ドレイン領域24及びソース領域26が形成される。その後、窒化物半導体20上の保護膜を除去する。
【0023】
ステップS3において、窒化物半導体20の表面に形成される酸化膜(GaO膜)を洗浄する(表面洗浄工程)。表面洗浄工程では、希フッ酸(DHF)が利用される。
【0024】
ステップS4において、原子層堆積法(ALD法)を利用して、窒化物半導体20上に、第1のゲート絶縁層42aを成膜する(第1成膜工程)。原子層堆積法では、酸化アルミニウム(Al
2O
3)層を成膜する工程(酸化アルミニウム成膜工程)と、酸化シリコン(SiO
2)層を成膜する工程(酸化シリコン成膜工程)と、が行われる。第1成膜工程では、第1のゲート絶縁層42aにおける混合比が第1の混合比(50%)となるように、酸化アルミニウム成膜工程のサイクル数と酸化シリコン成膜工程のサイクル数とを調整する。これにより、
図3に示す構造が形成される。なお、変形例では、第1のゲート絶縁層42aは、化学気相堆積法(CVD法)やスパッタリング法等の公知の方法を用いて成膜されてもよい。この時点において、第1のゲート絶縁層42a内の一部の酸化アルミニウムには、酸素空孔が生じている。即ち、第1のゲート絶縁層42a中の一部の酸化アルミニウムは、Al-Al結合を有する。第1のゲート絶縁層42a中に酸化アルミニウムの酸素空孔の影響で、
図5に示すように、窒化物半導体20とゲート絶縁膜42(詳細には第1のゲート絶縁層42a)の界面近傍における価電子帯VBと伝導体CBとの間の禁制帯FB中に欠陥準位DLが存在する。
【0025】
ステップS5において、原子層堆積法を利用して、第1のゲート絶縁層42a上に、第2のゲート絶縁層42bを成膜する(第2成膜工程)。第2成膜工程では、第2のゲート絶縁層42bにおける混合比が第2の混合比(15%)となるように、酸化アルミニウム成膜工程のサイクル数と酸化シリコン成膜工程のサイクル数とを調整する。これにより、
図4に示す構造が形成される。なお、第2のゲート絶縁層42b内の一部の酸化アルミニウムにも、酸素空孔が生じている。
【0026】
ステップS6において、熱処理が行われる(熱処理工程)。熱処理の条件は、第1のゲート絶縁層42aと第2のゲート絶縁層42bとを含むゲート絶縁膜42中のAl-Al結合と、当該Al-Al結合に隣接するSi-O-Si結合が反応するように、調整される。本実施例では、3eV以上のエネルギーが与えられるように、熱処理の条件が設定される。これにより、ゲート絶縁膜42全体において、Al-Al結合と、当該Al-Al結合に隣接するSi-O-Si結合が反応し、Al-O-Al結合及びSi-Si結合が形成される。本実施例では、第1のゲート絶縁層42aにおける第1の混合比は50%であり、第2の混合比は15%である。この場合、第1のゲート絶縁層42aでは、第2のゲート絶縁層42bと比較して、多くのAl-Al結合がAl-O-Al結合に変化する。なお、Si-O-Si結合がSi-Si結合に変化することで、酸化シリコンに酸素空孔が生じる。しかしながら、酸化シリコンに酸素空孔が生じても、禁制帯FB中に欠陥準位DLを生じない。このため、第1のゲート絶縁層42a中の酸化アルミニウムの酸素空孔が低減することで、
図6に示すように、禁制帯FB中に欠陥準位DLが存在しなくなる。
【0027】
ステップS7において、ゲート絶縁膜42上に、ゲート電極44を形成する(ゲート電極形成工程)。次いで、周知のフォトリソグラフィー技術およびドライエッチング加工を用いて、絶縁ゲート40以外の領域に形成されているAl層を除去する。これにより、ゲート電極44が形成される。
【0028】
ステップS8において、窒化物半導体20上に、ドレイン電極32及びソース電極34を形成する(ドレイン電極、ソース電極形成工程)。具体的には、周知のフォトリソグラフィー技術およびドライエッチング加工を用いて、ドレイン電極32及びソース電極34を形成する領域のゲート絶縁膜42を除去する。次いで、Ti層及びAl層の積層膜を成膜する。次いで、周知のフォトリソグラフィー技術およびドライエッチング加工を用いて、Ti層およびAl層を、ドレイン電極32及びソース電極34に加工する。次いで、窒素中で熱処理を行う。これにより、
図1に示す半導体装置1が形成される。
【0029】
(本実施例の効果)
一般的に、MOSFET等の半導体装置では、ゲート閾値電圧の再現性が高く、かつ、ゲート絶縁膜42の誘電率が高いことが望ましい。ゲート閾値電圧の再現性は、窒化物半導体20とゲート絶縁膜42の界面近傍における価電子帯VBと伝導体CBとの間の禁制帯FB中の欠陥準位DLに依存する。禁制帯FB中に欠陥準位DLが存在すると、電子、ホールが捕獲され得る。このため、禁制帯FB中に欠陥準位DLが存在すると、ゲート絶縁膜42に帯電が生じ、この結果、ゲート閾値電圧の変動が引き起こされる。従って、ゲート電圧の再現性を高めるためには、禁制帯FB中における欠陥準位DLを低減する必要がある。また、ゲート絶縁膜の誘電率が小さい程、一定のゲート電圧に対して、反転層の濃度が低下し、チャネル抵抗が増加する。従って、一定のゲート電圧に対するチャネル抵抗を低減させるためには、ゲート絶縁膜の誘電率を高くする必要がある。
【0030】
そこで、本実施例の半導体装置1では、ゲート絶縁膜42は、第1のゲート絶縁層42aと第2のゲート絶縁層42bとを備えている。そして、第1のゲート絶縁層42aが、窒化物半導体20上に設けられている。このため、第1のゲート絶縁層42aにおける第1の混合比を調整することで、窒化物半導体20と第1のゲート絶縁層42aの界面近傍における禁制帯FB中の欠陥準位DLを低減することができる。また、本実施例の半導体装置1では、第2のゲート絶縁層42bにおける第2の混合比は、第1のゲート絶縁層42aにおける第1の混合比よりも小さい。従って、第1のゲート絶縁層42a及び第2のゲート絶縁層42bを含むゲート絶縁膜42全体におけるリコン原子とアルミニウム原子の総和におけるシリコン原子の混合比は、ゲート絶縁膜42全体における混合比が第1の混合比である場合よりも小さくなる。従って、ゲート絶縁膜42全体における混合比が第1の混合比である場合よりも、ゲート絶縁膜42全体の誘電率を高めることができる。従って、ゲート閾値電圧の変動を抑制し、かつ、誘電率を高めることができる。
【0031】
また、上記の半導体装置1では、第1の混合比は50%であり、20%よりも大きい。
図7に、ゲート絶縁層中の混合比とゲート絶縁層中の酸化シリコンに占めるSi-O-Si結合の割合の相関が示されている。
図7において、近似直線PLは、混合比が20%以上である場合に、混合比が20%未満である場合と比較して、ゲート絶縁層中の混合比が大きくなることに応じてゲート絶縁層中のSi-O-Si結合の割合が大きくなりやすい傾向にあることを示す直線である。本発明者らは、第1のゲート絶縁層42aにおける第1の混合比が20%以上である場合に、禁制帯FB中に欠陥準位DLが存在しなくなることを見出した。従って、第1の混合比を20%以上にすることで、禁制帯FB中に欠陥準位DLが存在しなくすることができ、この結果、ゲート閾値電圧の変動をより抑制することができる。
【0032】
また、上記の半導体装置1では、第1のゲート絶縁層42aの膜厚t1は、10nmであり、5nm以上である。禁制帯FB中に欠陥準位DLが存在する場合において、帯電は、窒化物半導体20とゲート絶縁膜42との界面から約5nmの範囲で発生する。このため、第1のゲート絶縁層42aの膜厚t1を5nm以上にすることで、禁制帯FB中の帯電する領域内に欠陥準位DLが存在しないようにすることができ、この結果、ゲート絶縁膜42中に帯電が発生することを防止することができる。
【0033】
また、上記の半導体装置1では、第2のゲート絶縁層42bの第2の混合比は、15%であり、13%以上である。本発明者らは、ゲート絶縁層の混合比が13%未満である場合に、熱処理が行われると、ゲート絶縁層が微結晶化しやすい傾向にあることを見出した。ゲート絶縁層が微結晶化すると、結晶粒界を介してリーク電流が流れやすくなり、この結果、半導体装置1の絶縁破壊電界強度が低下する。このため、第2のゲート絶縁層42bの第2の混合比を13%以上にすることで、
図2のステップS6の熱処理において、第2のゲート絶縁層42bが微結晶化することが抑制される。従って、半導体装置1の絶縁破壊電界強度が低下することを抑制することができる。
【0034】
(第2実施例)
図8に、第2実施例の半導体装置201の要部断面図を模式的に示す。半導体装置201は、縦型のMOSFETであり、トレンチゲート型である。半導体装置201は、半導体基板210、窒化物半導体220、シリコン酸化膜からなる絶縁膜228、ドレイン電極232、ソース電極234、及び、絶縁ゲート240を備える。半導体基板210は、GaNの単結晶基板である。窒化物半導体220は、n
-型のドリフト領域222と、p型のボディ領域224と、n
+型のソース領域226と、を備える。
【0035】
半導体装置201の表層部には、トレンチ型の絶縁ゲート240が形成されている。絶縁ゲート240は、トレンチ240T内に設けられている。トレンチ240Tは、絶縁膜228、ソース領域226、及び、ボディ領域224を貫通してドリフト領域222の一部に到達している。絶縁ゲート240は、ゲート絶縁膜242及びゲート電極244を備えている。ゲート絶縁膜242は、第1のゲート絶縁層242a及び第2のゲート絶縁層242bを備えている。第1のゲート絶縁層242a、第2のゲート絶縁層242bは、それぞれ、第1実施例の第1のゲート絶縁層42a、第2のゲート絶縁層42bと同様の構造を有する。ゲート電極244は、ゲート絶縁膜242上に設けられている。
【0036】
ソース領域226の表面の一部には、ソース電極234が配置されている。ソース電極234とゲート電極244とは、絶縁膜228によって絶縁されている。上述のように、第2のゲート絶縁層242bにおける第2の混合比(15%)は、第1のゲート絶縁層242aにおける第1の混合比(50%)よりも小さい。従って、半導体装置201は、第1実施例の半導体装置1と同様の効果を奏することができる。
【0037】
(第3実施例)
図9に第3実施例の半導体装置301の要部断面図を模式的に示す。半導体装置301は、縦型のMOSFETであり、プレーナゲート型である。半導体装置301は、半導体基板310、窒化物半導体320、シリコン酸化膜からなる絶縁膜328、ドレイン電極332、ソース電極334、及び、絶縁ゲート340を備える。半導体基板310は、GaNの単結晶基板である。
【0038】
窒化物半導体320は、半導体基板310の表面上に設けられている。窒化物半導体320は、n-型のドリフト領域322と、p型のボディ領域324と、n+型のソース領域326と、を備える。ドリフト領域322は、窒化物半導体320の表層部の一部に設けられており、窒化物半導体320の表面に露出している。ボディ領域324は、ドリフト領域322の上に設けられており、互いに離間している。ボディ領域324の一部は、窒化物半導体320の表面に露出している。ソース領域326は、ボディ領域324に囲まれており、窒化物半導体320の表面に露出している。
【0039】
絶縁ゲート340は、ドリフト領域322、ボディ領域324、及び、ソース領域326に対向するように、窒化物半導体30の表面上に設けられており、ゲート絶縁膜342及びゲート電極344を備えている。ゲート絶縁膜342は、第1のゲート絶縁層342a及び第2のゲート絶縁層342bを備えている。第1のゲート絶縁層342a、第2のゲート絶縁層342bは、それぞれ、第1実施例の第1のゲート絶縁層42a、第2のゲート絶縁層42bと同様の構造を有する。ゲート電極344は、ゲート絶縁膜342上に設けられている。
【0040】
ボディ領域324、及び、ソース領域326の表面の一部には、ソース電極334が配置されている。ソース電極334とゲート電極344とは、絶縁膜328によって絶縁されている。上述のように、第2のゲート絶縁層342bにおける第2の混合比(15%)は、第1のゲート絶縁層342aにおける第1の混合比(50%)よりも小さい。従って、半導体装置301は、第1実施例の半導体装置1と同様の効果を奏することができる。
【0041】
(第4実施例)
図10に、第4実施例の半導体装置401の要部断面図を模式的に示す。半導体装置401は、HEMT(High Electron Mobility Transistor)であり、ノーマリオン型である。半導体装置401は、半導体基板410、窒化物半導体420、シリコン酸化膜からなる絶縁膜426、ドレイン電極432、ソース電極434、及び、絶縁ゲート440を備えている。半導体基板410は、Siの単結晶基板である。窒化物半導体420は、超格子(AlN/GaN)又は窒化アルミニウムガリウム(AlGaN)からなるバッファ層421、アンドープのGaNからなる電子走行層422、AlGaNからなる電子供給層424が積層している構造を備える。窒化物半導体420の表面には、ドレイン電極432及びソース電極434が配置されている。ドレイン電極432、ソース電極434は、絶縁膜426によって絶縁されている。
【0042】
半導体装置401の表層部には、トレンチ型の絶縁ゲート440が形成されている。絶縁ゲート440は、トレンチ440T内に設けられている。トレンチ440Tは、絶縁膜426を貫通し、窒化物半導体420の表面に到達している。絶縁ゲート440は、ゲート絶縁膜442及びゲート電極444を備えている。ゲート絶縁膜442は、第1のゲート絶縁層442a及び第2のゲート絶縁層442bを備えている。第1のゲート絶縁層442a、第2のゲート絶縁層442bは、それぞれ、第1実施例の第1のゲート絶縁層42a、第2のゲート絶縁層42bと同様の構造を有する。即ち、第2のゲート絶縁層442bにおける第2の混合比(15%)は、第1のゲート絶縁層442aにおける第1の混合比(50%)よりも小さい。従って、半導体装置401は、第1実施例の半導体装置1と同様の効果を奏することができる。
【0043】
(第5実施例)
図11に、第5実施例の半導体装置501の要部断面図を模式的に示す。半導体装置501は、HEMTであり、ノーマリオフ型である。第5実施例の半導体基板510、窒化物半導体520(バッファ層521、電子走行層522、電子供給層524)、ドレイン電極532、ソース電極534は、それぞれ、第4実施例の半導体基板410、窒化物半導体420(バッファ層421、電子走行層422、電子供給層424)、ドレイン電極432、ソース電極434と同様の構造を有する。
【0044】
半導体装置501の表層部には、トレンチ型の絶縁ゲート540が形成されている。絶縁ゲート540は、トレンチ540T内に設けられている。トレンチ540Tは、絶縁層526、電子供給層524を貫通し、電子走行層522の一部に到達している。絶縁ゲート540は、ゲート絶縁膜542及びゲート電極544を備えている。ゲート絶縁膜542は、第1のゲート絶縁層542a及び第2のゲート絶縁層542bを備えている。第1のゲート絶縁層542a、第2のゲート絶縁層542bは、それぞれ、第1実施例の第1のゲート絶縁層42a、第2のゲート絶縁層42bと同様の構造を有する。即ち、第2のゲート絶縁層542bにおける第2の混合比(15%)は、第1のゲート絶縁層542aにおける第1の混合比(50%)よりも小さい。従って、半導体装置501は、第1実施例の半導体装置1と同様の効果を奏することができる。
【0045】
(第6実施例)
図12に、第6実施例の半導体装置601の要部断面図を模式的に示す。半導体装置601は、横型のMOSFETの一実施形態である。半導体装置601は、半導体基板610、窒化物半導体620、シリコン酸化膜からなる絶縁膜628、ドレイン電極632、ソース電極634、及び、絶縁ゲート640を備える。
【0046】
窒化物半導体620は、バッファ層621と、p型のボディ領域622、n-型の第1ドレイン領域624、n+型の第2ドレイン領域625、n+型のソース領域626を有している。窒化物半導体620の表面には、ドレイン電極632、ソース電極634、及び、絶縁膜628が設けられている。ドレイン電極632、ソース電極634は、絶縁膜628によって絶縁されている。
【0047】
半導体装置601の表層部には、トレンチ型の絶縁ゲート640が形成されている。絶縁ゲート640は、トレンチ640T内に設けられている。トレンチ640Tは、絶縁膜628を貫通し、窒化物半導体620の表面に到達している。絶縁ゲート640は、ゲート絶縁膜642及びゲート電極644を備えている。ゲート絶縁膜642は、第1のゲート絶縁層642a及び第2のゲート絶縁層642bを備えている。第1のゲート絶縁層642a、第2のゲート絶縁層642bは、それぞれ、第1実施例の第1のゲート絶縁層42a、第2のゲート絶縁層42bと同様の構造を有する。即ち、第2のゲート絶縁層642bにおける第2の混合比(15%)は、第1のゲート絶縁層642aにおける第1の混合比(50%)よりも小さい。従って、半導体装置601は、第1実施例の半導体装置1と同様の効果を奏することができる。
【0048】
第2実施例~第6実施例に示すように、本明細書が開示するゲート絶縁膜は、種々の半導体装置に用いることができる。これらの半導体装置においても、電極と窒化物半導体との間に本明細書が開示するゲート絶縁膜を配置することによって、ゲート閾値電圧の変動を抑制し、かつ、誘電率を高めることができる。
【0049】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。また、本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成し得るものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【符号の説明】
【0050】
1:半導体装置、10:半導体基板、20:窒化物半導体、22:ボディ領域、24:ソース領域、26:ドレイン領域、32:ソース電極、34:ドレイン電極、40:絶縁ゲート、42:ゲート絶縁膜、42a:第1のゲート絶縁層、42b:第2のゲート絶縁層、44:ゲート電極