(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-26
(45)【発行日】2022-11-04
(54)【発明の名称】洗浄装置
(51)【国際特許分類】
B08B 3/02 20060101AFI20221027BHJP
C23G 3/00 20060101ALI20221027BHJP
【FI】
B08B3/02 A
B08B3/02 C
C23G3/00 Z
(21)【出願番号】P 2020007153
(22)【出願日】2020-01-20
【審査請求日】2021-09-28
(73)【特許権者】
【識別番号】520025127
【氏名又は名称】有限会社A.フォース
(73)【特許権者】
【識別番号】592010070
【氏名又は名称】株式会社進和
(74)【代理人】
【識別番号】100098741
【氏名又は名称】武蔵 武
(72)【発明者】
【氏名】丸山 明男
(72)【発明者】
【氏名】加藤 隆也
【審査官】大内 康裕
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-323264(JP,A)
【文献】特開2012-030173(JP,A)
【文献】特開2006-075967(JP,A)
【文献】特開2019-107598(JP,A)
【文献】特開2006-312770(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B08B 3/00~ 3/14
C23G 3/00~ 3/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被洗浄物を洗浄容器の内部に収容し、その洗浄容器内に洗浄液を供給して前記被洗浄物を洗浄するようにした洗浄装置であって、
前記洗浄容器内に洗浄液を供給する洗浄液供給流路と、
前記洗浄容器内の洗浄液を排出する洗浄液排出流路と、を備えており、
前記洗浄液供給流
路は、洗浄液を貯め得る第1貯液槽から同じく洗浄液を貯め得る第2貯液槽に、さらにその第2貯液槽から洗浄液の供給と停止を切り替え可能な開閉弁
を介して前記洗浄容器に通じるようになし、
また、前記第2貯液槽には、所定貯液量を越えた余剰の洗浄液を前記第1貯液槽に戻す返戻流路を設けてなり、
一方、前記洗浄液排出流
路は、前記洗浄容器内の外気と洗浄液とを吸引可能な吸引手段が設けられ
ると共に、その吸引手段を介して前記洗浄容器から前記第1貯液槽に通じるようになっており、
前記開閉弁を閉じて前記洗浄容器内への洗浄液の供給を停止すると共に前記吸引手段で前記洗浄容器内の外気を吸引して負圧となし、
前記洗浄容器内が負圧の状態で前記開閉弁を開いてその洗浄容器内に洗浄液を供給し、
さらに前記洗浄容器内に洗浄液が供給されている状態で前記開閉弁を閉じて洗浄液の供給を停止すると共に前記洗浄容器内の洗浄液を前記吸引手段で吸引して前記洗浄液排出流路に排出するようにしたことを特徴とする洗浄装置。
【請求項2】
前記吸引手段は、前記第1貯液槽の洗浄液を循環ポンプで循環させる循環流路と、流入部と流出部と吸引部とを有すると共に前記流入部と前記流出部を前記循環流路の途中に接続してなるエジェクターと、からなり、そのエジェクターの前記吸引部に前記洗浄液排出流路を接続してなることを特徴とする請求項
1記載の洗浄装置。
【請求項3】
前記第2貯液槽は、前記洗浄容器より高所に設けられており、前記開閉弁が開いた状態でその第2貯液槽の洗浄液が、自重による落液と前記吸引手段による吸引作用とにより前記洗浄容器内に流入し得るようにしたことを特徴とする請求項1
又は2記載の洗浄装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加工後の機械加工部品等を洗浄するための洗浄装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車産業や電機産業では、部品の製造過程において、「洗浄」が重要な役割を担っている。ここで部品の「洗浄」とは、製品の信頼性や後工程の品質を確保するために行われるもので、前加工で付着した汚れを除去する処理をいう。
洗浄方法は、湿式と乾式に大別され、さらに化学洗浄と物理洗浄に分類することができる。
アルカリ洗浄や溶剤洗浄に代表される化学洗浄は、洗浄剤の溶解や分散作用により汚れを除去するため、多量な汚れや重質な汚れに対し高い洗浄効果を発揮するものの、洗浄液のすすぎや、すすぎ液の液切り乾燥などの後処理が必要となり、行程数が増え処理時間も長くなり、設備費とエネルギーの増大につながるおそれがある。
一方、ブロー洗浄に代表される物理洗浄は、空気などの気体流により汚れを払拭除去するものであり、行程数が少なく高速で処理することが可能であるため、合理的な洗浄方法に位置づけられるものの、化学洗浄に比べて高い洗浄品質を得ることは困難であり、また、局所的に洗浄のエネルギーを集中させることで汚れを除去するため、広領域や複雑な形状の部位を被洗浄領域とすると適用困難なケースが発生する。
そこで、化学洗浄の作用と物理洗浄の作用とを組みあわせた洗浄方法として、
図2に示したように、被洗浄物Wを洗浄容器100内に収容し、そこに洗浄液を強制的に流通させるようにした洗浄方式(通称:流速洗浄、ダイレクトパス洗浄など)が従来より知られている(例えば、特許文献1~3参照)。
なお、
図2に示した従来の洗浄装置は、上面が開口する箱状の下治具100aと、下面が開口する逆さ箱状の上治具100bとを組み合わせて被洗浄物Wを収容可能にしてなる洗浄容器100と、洗浄液を貯め得る貯液槽101と、その貯液槽101の洗浄液を洗浄容器100に供給するための配管102と循環ポンプ103とからなる洗浄液供給流路104と、洗浄容器100内の洗浄液を貯液槽101に排出する一本の配管からなる洗浄液排出流路105と、を備えており、前記循環ポンプ103を稼働させて洗浄容器100内へ洗浄液を強制的に流通させ、その洗浄液の化学作用と物理的作用で被洗浄物Wに付着した汚れを洗浄除去し、洗浄後の洗浄液を洗浄液排出流路105から貯液槽101に戻して循環させるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平7-328565号公報
【文献】特開平8-332463号公報
【文献】特開平8-337890号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来の洗浄装置は、洗浄液が洗浄容器100内を一方向に通過させて洗浄するものであるため、被洗浄物の形状によっては十分な洗浄品質が得られないおそれがあった。
本発明は、上記に鑑みなされたもので、その目的は、洗浄品質の向上が可能な洗浄装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の目的を達成するため本発明は、
被洗浄物を洗浄容器の内部に収容し、その洗浄容器内に洗浄液を供給して前記被洗浄物を洗浄するようにした洗浄装置であって、
前記洗浄容器内に洗浄液を供給する洗浄液供給流路と、
前記洗浄容器内の洗浄液を排出する洗浄液排出流路と、を備えており、
前記洗浄液供給流路は、洗浄液を貯め得る第1貯液槽から同じく洗浄液を貯め得る第2貯液槽に、さらにその第2貯液槽から洗浄液の供給と停止を切り替え可能な開閉弁を介して前記洗浄容器に通じるようになし、
また、前記第2貯液槽には、所定貯液量を越えた余剰の洗浄液を前記第1貯液槽に戻す返戻流路を設けてなり、
一方、前記洗浄液排出流路は、前記洗浄容器内の外気と洗浄液とを吸引可能な吸引手段が設けられると共に、その吸引手段を介して前記洗浄容器から前記第1貯液槽に通じるようになっており、
前記開閉弁を閉じて前記洗浄容器内への洗浄液の供給を停止すると共に前記吸引手段で前記洗浄容器内の外気を吸引して負圧となし、
前記洗浄容器内が負圧の状態で前記開閉弁を開いてその洗浄容器内に洗浄液を供給し、
さらに前記洗浄容器内に洗浄液が供給されている状態で前記開閉弁を閉じて洗浄液の供給を停止すると共に前記洗浄容器内の洗浄液を前記吸引手段で吸引して前記洗浄液排出流路に排出するようにした洗浄装置を提供する。
【0007】
また、請求項2に記載したように、前記吸引手段は、前記第1貯液槽の洗浄液を循環ポンプで循環させる循環流路と、流入部と流出部と吸引部とを有すると共に前記流入部と前記流出部を前記循環流路の途中に接続してなるエジェクターと、からなり、そのエジェクターの前記吸引部に前記洗浄液排出流路を接続してなる請求項1記載の洗浄装置を提供する。
【0008】
また、請求項3に記載したように、前記第2貯液槽は、前記洗浄容器より高所に設けられており、前記開閉弁が開いた状態でその第2貯液槽の洗浄液が、自重による落液と前記吸引手段による吸引作用とにより前記洗浄容器内に流入し得るようにした請求項1又は2記載の洗浄装置を提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の洗浄装置によれば、洗浄容器内が負圧であることと、吸引手段による吸引作用とにより供給される洗浄液の流速が増し、乱流状態で洗浄容器内に流入してそこに収容されている被洗浄物の表面を隈無く流通するため、付着する汚れを効率よく除去し得る。また、洗浄容器内にある洗浄液は、吸引手段の吸引作用により素早く排出されるため、被洗浄物の液切りも短時間で行える。したがって、洗浄品質の向上と洗浄コストの低減が可能になる。
【0010】
また、本発明の洗浄装置によれば、第2貯液槽の所定貯液量を越えた余剰の洗浄液が返戻流路を通って第1貯液槽に戻されるため、洗浄液供給流路の第2貯液槽への送液量を一定に保ちつつ、開閉弁を開閉させるだけで被洗浄物の洗浄が行える。したがって、洗浄液供給流路の送液量を洗浄のタイミング毎に制御する必要がないため、構造の簡素化と、運転コスト・洗浄コストの低減が可能になる。
【0011】
また、請求項2に記載の洗浄装置によれば、循環流路の途中に接続したエジェクターで洗浄容器内の外気と洗浄液とが吸引可能であり、しかも、吸引した洗浄液が、エジェクターから循環流路を循環する洗浄液に合流して自動的に第1貯液槽に戻るため、構造が簡単で低コストであり、しかもメンテナンスも容易である。
【0012】
また、請求項3に記載の洗浄装置によれば、第2貯液槽の液面から洗浄容器までの落差と、吸引手段の吸引作用による洗浄容器内の負圧と、連続的な吸引力とにより、洗浄容器内に供給される洗浄液の流速が急激に高められるため、洗浄液の流れを洗浄容器内で層流から乱流へと確実に遷移させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】洗浄装置の全体を示す概略のフロー図である。
【
図2】従来の洗浄装置の全体を示す概略のフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に本発明の実施の形態を
図1を参照しつつ説明する。
本発明の洗浄装置1は、被洗浄物Wを洗浄容器2の内部に収容し、その洗浄容器2内に洗浄液3を供給して収容した被洗浄物Wを洗浄するものである。
【0015】
[1.洗浄液と被洗浄物]
実施形態の洗浄装置1の洗浄の対象となる被洗浄物Wは、油脂類の汚れが付着した機械加工後の金属部品であり、使用する洗浄液3はアルカリ性洗浄剤である。
被洗浄物Wは、連続する搬送コンベア4の途中に設けられた洗浄ポイントPに一個ずつ或は洗浄容器2に収容可能な複数個を一組にして順番に送られるか、又は、図示しないが、搬送方向に並べられた二本の搬送コンベアの間に設けられた洗浄ポイントに適宜な移送装置により上記の単位で順番に送られるようになっており、洗浄装置1は、その洗浄ポイントPに停止する被洗浄物Wを上記の単位で洗浄するものである。
【0016】
[2.洗浄容器]
洗浄容器2は、上面が開口する箱状の下治具2aと、下面が開口する逆さ箱状の上治具2bと、からなり、この上治具2bと下治具2aの開口同士を直接当接させるか又は両者を搬送コンベア4のフレーム4aの一部を介して連結することにより密閉し得るものであり、
図1の想像線に示したように、上治具2bが適宜昇降して開閉し得るようになっている。
【0017】
実施形態の洗浄装置1は、洗浄容器2を核として、その洗浄容器2内に洗浄液3を供給する洗浄液供給流路5と、洗浄容器2に供給された洗浄液3を排出する洗浄液排出流路6と、を備えている。
【0018】
[3.洗浄液供給流路]
洗浄液供給流路5は、洗浄液3を貯め得る第1貯液槽7と、同じく洗浄液3を貯め得る第2貯液槽8と、第1貯液槽7と第2貯液槽8とを連通させる供給第1配管9と、その供給第1配管9の途中に設けられた洗浄液供給ポンプ10と、第2貯液槽8と洗浄容器2とを連通させる供給第2配管11と、その供給第2配管11の途中に設けられた開閉弁12と、から概略構成される。
【0019】
前記第1貯液槽7は、洗浄容器2より低所に配設され、一方、第2貯液槽8は、洗浄容器2より高所(好ましくは洗浄容器2の直上)に配設されており、第1貯液槽7の洗浄液3が、供給第1配管9の洗浄液供給ポンプ10により高所の第2貯液槽8に揚送される。
【0020】
前記第2貯液槽8は、通気管13を介して外気と連通しており、第2貯液槽8に貯液された洗浄液3の大気圧断面積は、第2貯液槽8に連通している供給第2配管11の断面積に比べて十分広い関係にある。
また、第2貯液槽8には、洗浄液3を設定温度に調温し得る熱交換器14が装備されている。
さらに第2貯液槽8には、第1貯液槽7に連通する返戻流路15を有するオーバーフロー槽16が堰17を介して並設されており、第2貯液槽8の所定貯液量(好ましくは一回の洗浄に必要な洗浄液3の量)を越える余剰の洗浄液3が堰17から溢れてオーバーフロー槽16に落液し、その洗浄液3が自重により返戻流路15を通って第1貯液槽7に戻るようになっている。したがって、供給第1配管9の洗浄液供給ポンプ10は、洗浄のタイミングに拘わらず、常に一定の出力(流量)で効率よく作動させることができる。
【0021】
前記開閉弁12は、例えばソレノイド等を駆動源とする電磁弁であり、供給第2配管11を開閉して洗浄容器2への洗浄液3の供給と停止を択一的に且つ瞬時に切り替え得る。
【0022】
[4.洗浄液排出流路]
洗浄液排出流路6は、洗浄容器2の前記下治具2aに接続された排出配管18と、その排出配管18を通じて洗浄容器2内の外気と洗浄液3とを吸引可能な吸引手段19と、からなる。
前記吸引手段19は、第1貯液槽7から出て第1貯液槽7にUターンする循環流路20と、第1貯液槽7の洗浄液3を循環流路20で循環させる循環ポンプ21と、前記循環流路20の途中に接続したエジェクター(3方弁)22と、からなる。
このエジェクター22は、流入部22aと流出部22bと吸引部22cとを有する公知のものであり、流入部22aと流出部22bを循環流路20の途中に接続し、残る吸引部22cに前記洗浄液排出流路6の排出配管18が接続される。
【0023】
[5.洗浄方法]
次に、実施形態の洗浄装置1による洗浄方法について説明する。
洗浄装置1は、洗浄液供給流路5の洗浄液供給ポンプ10と、洗浄液排出流路6の循環ポンプ21を、ほぼ一定の出力で常時稼働させると共に、洗浄液供給流路5の開閉弁12を閉じて供給第2配管11の途中、つまり第2貯液槽8の底を閉じている。
したがって、洗浄液供給流路5では、第1貯液槽7から第2貯液槽8に洗浄液3がほぼ一定流量で揚送され、第2貯液槽8の所定貯液量を越えた余剰の洗浄液3が堰17を越えてオーバーフロー槽16に流入し、その洗浄液3がオーバーフロー槽16から返戻流路15を通って自重で第1貯液槽7に戻る、という循環が常時行われている。
一方、洗浄液排出流路6では、第1貯液槽7に貯液された洗浄液3が常にほぼ一定流量で循環流路20内を通って循環し、その洗浄液3の循環によりエジェクター22の吸引部22cから洗浄容器2(下治具2a)の外気が常に吸引されている。なお、液体の流れによりエジェクター22の吸引部22cから外気が吸引されるメカニズムについては周知であるため説明を省略する。
【0024】
洗浄装置1の洗浄容器2は、搬送コンベア4に載って移動する一個又は同時に洗浄する一組の被洗浄物Wが洗浄ポイントPで停止するまでの間、
図1想像線のように上治具2bが上昇して受け入れ可能な状態で待機している。そして、被洗浄物Wが洗浄ポイントPで停止すると、同図実線のように上治具2bが下降して下治具2aとの間に被洗浄物Wを密閉状態に収容する。
【0025】
先に説明したようにエジェクター22によって洗浄容器2の外気は常に吸引されているため、洗浄容器2が密閉されることでその内部は大気圧より減圧されて負圧の状態となる。
この状態で開閉弁12を開いて第2貯液槽8の底を開放すると、その第2貯液槽8の洗浄液3が、液面から上治具2bまでの高さと重力加速度から導出される流速V0で洗浄容器2内へ供給されることになる(トリチェリの定理)。また、洗浄容器2内では、負圧状態とエジェクター22による連続的な吸引作用とにより、供給された洗浄液3の流速が加速される。この時、洗浄液3は、洗浄容器2内で、限界レイノズル数(Re=2300)以上の液流となり、それまでの層流から乱流へと遷移する。このように洗浄容器2内を流通させる洗浄液3を層流から乱流へ遷移させることで、被洗浄物Wの表面と洗浄液3の界面における境界層厚みが小さくなるため、数ミクロン~サブミクロンレベルのパーティクルの除去性が格段に向上する。また、乱流流れが形成されることで、洗浄容器2内の流路設計が簡便となり、複数個のしかも異形状の被洗浄物Wを混流することができるため、洗浄装置1の汎用性が高まる。
そして、被洗浄物Wを流通した洗浄液3は、除去した汚れと共にエジェクター22を介し、循環流路20を循環する洗浄液3に合流して第1貯液槽7へ戻される。
【0026】
洗浄装置1は、洗浄を終えると、先に開いた開閉弁12を切り替えて第2貯液槽8の底を閉じ、洗浄液3の洗浄容器2内への供給を止める。なお、開閉弁12が開いている間、第2貯液槽8の洗浄液3は流出し続けて貯液レベルが低下するが、洗浄液供給ポンプ10により第1貯液槽7から一定流量で洗浄液3が供給され続けるため、開閉弁12を閉じると直ぐ第2貯液槽8は所定貯液量を回復する。
一方、開閉弁12を閉じて洗浄液3の供給が止まった後もエジェクター22による吸引作用は止まることなくそのまま続くため、洗浄容器2内に残った洗浄液3は最後まで強制的に吸い出される。したがって、被洗浄物Wの液切れも良好になる。
また、洗浄容器2が密閉されていることから、容器内部は減圧され負圧が進行するため、図示しないが供給第2配管11の開閉弁12と出口の間に大気開放弁を設けておいてこれを開放すれば、大気が洗浄容器2内に一気に導入されて被洗浄物Wに付着残留した洗浄液を払拭除去することもでき、さらに被洗浄物Wの液切れを良好にすることができる。
なお、開閉弁12の開閉を断続的に繰り返すことで水撃作用(エアハンマー現象)を伴わせることができるため、さらに洗浄性や洗浄液の液切性を高めることができる。
【0027】
以上のようにして洗浄容器2内での洗浄が終わり、洗浄容器2内の洗浄液3が全て排出されると、上治具2bが待機位置まで上昇し、搬送コンベア4が作動して洗浄ポイントPにある一個又は一緒に洗浄した一組の被洗浄物Wを次工程に送り出すと共に、次の被洗浄物Wを洗浄ポイントPに移動させる。
以下、洗浄装置1による上記の洗浄処理が繰り返し行われる。
【0028】
ところで、上記の洗浄処理を繰り返すとやがて第1貯液槽7には、洗浄液3中に分散しきれなくなった油脂類の汚れが浮上して、例えば
図1に一点鎖線で示したようなレベルで分離するため、第1貯液槽7には、そのような浮上した油脂汚れを排出するための廃油ドレン23が設けられている。
そして、この廃油ドレン23による油脂汚れの排出をより確実にする上で、使用する洗浄液は、油/水分離性の良い水溶性のものが望ましい。特に、温度により油脂類の溶解特性が変化する洗浄液は好適である。
非イオン性界面活性剤やグリコールエーテル系溶剤の一部の洗浄液3には、低温では透明または半透明の水溶液の状態であるが、液温度を上げるとある温度から濁るようになり、さらに温度を上げていくと水と相分離するものがある。この相分離する温度のことを当該洗浄液の曇点という。また、この現象は、曇点を下回るまで液温度を低下させると元の透明の水溶液の状態となる。したがって、曇点を上回るまで洗浄液温度を上げると相分離した洗浄剤成分は親油性の高い(水分濃度が低い)状態となり、油脂に対する洗浄(溶解)能力が向上する。また、曇点を下回るまで洗浄液温度を下げると透明または半透明の水溶液の状態、すなわち親水性の高い(油脂の溶解度が低い)状態となり洗浄剤成分に溶解していた油脂が洗浄液から離脱し、洗浄液との比重差により浮上分離することになる。
このような特性をもった洗浄液は、例えば、武蔵テクノケミカル社製MAシリーズ(MA-60など)、花王社製クリンスルー「LC-800」シリーズ、荒川化学社製パインアルファST-251EVAや三和油化社製サンクリーンXL-35などがあり、これらは廃油ドレン23から油脂汚れを排出する上で好適である。
これらの洗浄液3を使用する場合の運転条件として、第2貯液槽8の洗浄液温度を洗浄液3の曇点を上回る温度まで熱交換器14で加温し、さらに図示しない攪拌手段で洗浄液3を攪拌してエマルジョン状態とする。また、第1貯液槽7については、図示しない冷却手段を設けることにより、洗浄液3の洗浄液温度を曇点を下回る温度に保つ。
このように液温により油脂類の溶解特性が変化する洗浄剤と組み合わせると、簡易な機構で洗浄液の循環再利用が可能となり、洗浄液の長寿命化による洗浄コスト削減と洗浄廃液の発生が少ない小型・省エネ・環境調和型の汎用性の高い環境調和型洗浄システムが実現できる。
【0029】
以上、本発明を実施の形態について説明したが、もちろん本発明は上記実施形態に限定されるものではない。例えば、実施形態では、被洗浄物Wを一個ずつ或は洗浄容器2に収容可能な複数個を一組にして連続で洗浄するようにしたが、多数の被洗浄物Wを一括してバッチで別途処理するようにしてもよい。もっとも実施形態のように連続処理して小ロット化した場合には、設備サイズが小さくなるため洗浄工程のインライン化が可能となり、信頼性と合理性を向上させ得る点でより好ましい。
また、実施形態では、吸引手段19としてエジェクター22を使用したが、そのようなエジェクター22に代えて真空ポンプを別途設けるようにしてもよい。
また、開閉弁12は、電磁弁等の電動弁に限定されず、手動で切り替える手動弁にしてもよい。
【符号の説明】
【0030】
1 …洗浄装置
2 …洗浄容器
3 …洗浄液
5 …洗浄液供給流路
6 …洗浄液排出流路
7 …第1貯液槽
8 …第2貯液槽
12 …開閉弁
15 …返戻流路
19 …吸引手段
20 …循環流路
21 …循環ポンプ
22 …エジェクター
22a …流入部
22b …流出部
22c …吸引部
W …被洗浄物