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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-26
(45)【発行日】2022-11-04
(54)【発明の名称】釣り用ルアー及び重心移動管
(51)【国際特許分類】
   A01K 85/16 20060101AFI20221027BHJP
【FI】
A01K85/16
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2020214780
(22)【出願日】2020-12-24
(65)【公開番号】P2022100673
(43)【公開日】2022-07-06
【審査請求日】2022-02-03
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】595015214
【氏名又は名称】メガバス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】394000493
【氏名又は名称】ヒーハイスト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100074675
【弁理士】
【氏名又は名称】柳川 泰男
(72)【発明者】
【氏名】伊東 浩一
(72)【発明者】
【氏名】福留 弘人
【審査官】川野 汐音
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/110424(WO,A1)
【文献】特開2016-145625(JP,A)
【文献】特開2003-333960(JP,A)
【文献】特開2005-102582(JP,A)
【文献】特開平11-187783(JP,A)
【文献】米国特許第06671996(US,B1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0360737(US,A1)
【文献】国際公開第2018/003354(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/008643(WO,A1)
【文献】特開平10-215730(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01K 85/00
A01K 85/10-85/18
F16C 29/00-29/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
小魚を模した細長い形状を持ち、その内部に細長の空間を持つルアー本体そして該本体に取り付けられた釣り針を含み、本体の内部の空間に、幅方向に左右対称な形状を持ち、長さ方向の円滑な移動が可能とされた棒状の重心体を収容する長さ方向の全体が直管形状とされた重心移動管が固定されている釣り用ルアーであって、
(1)上記直管形状の重心移動管は、その内部に収容された重心体が、その長さ方向の中心軸がルアー本体の内部空間内の中心軸の下方側の位置で移動するように、ルアー本体の内部空間に配置されていること、
(2)上記重心体は、その幅方向の断面が、その断面の最大径に沿う平面が平坦な頂面とされている多角形、半円形、もしくは多角形と半円形が組み合わされた複合形となるような形状を持つこと、
そして
(3)重心体は、その断面が、底面の横幅よりも頂面の横幅が大きい台形の形状を持ち、その台形の対向する側面の各々と対向する底隅部の各々に、相互に連結された二条の溝からなる球体循環溝と該球体循環溝に充填された球体が備えられていること、
を特徴とする釣り用ルアー。
【請求項2】
管体、そして管体の内側に、管体の長さ方向に沿う移動が可能なように挿入されている、幅方向に左右対称な形状を持つ棒状の重心体が備えられた長さ方向の全体が直管形状とされた重心移動管であって、
(1)上記重心体は、その幅方向の断面が、その断面の最大径に沿う平面が平坦な頂面とされている多角形、半円形、もしくは多角形と半円形が組み合わされた複合形となるような形状を持つこと、
そして、
(2)重心体は、その断面が、底面の横幅よりも頂面の横幅が大きい台形の形状を持ち、その台形の対向する側面の各々と対向する底隅部の各々に、相互に連結された二条の溝からなる球体循環溝と該球体循環溝に充填された球体が備えられていること、
を特徴とする重心移動管。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、重心移動管を内蔵する釣り用ルアーそして釣り用ルアーに内蔵させるに適した重心移動管に関する。
【背景技術】
【0002】
河川、湖沼などの淡水域や海域などで大型の魚を釣るために用いる擬餌鉤(プラグ)として、えさとなる小魚の形状に似せた、細長い形態を持ち、腹部や尾部などに鉤(フック)を装着させた釣り用ルアー(以下、単に「ルアー」とも記載することがある)が一般的に利用されている。例えば、海域でのルアーを用いる釣り操作の代表的な例としては、釣り糸の先端に装着したルアーを浜辺や岸壁あるいは船舶上などから遠方の海域に投げる投げ釣りが知られている。この投げ釣りでは、ルアーをできるだけ遠方に投げ飛ばす必要があるため、ルアーを、その内部に錘(重り)を内臓させた構成とすることが多い。
【0003】
ルアーを用いる投げ釣りにおける通常の一連のルアーの投擲操作は、特許文献1に図示されている。この特許文献1に掲載されているルアーの投擲操作を示す図1を、本明細書に図1として転載する。
【0004】
擬餌鉤としてのルアーは通常、海面などの水面に投げ入れられた後は、釣り人による釣り糸の操作に従い、水面あるいは水中において、生きている小魚と同様に、頭部が若干下方を向くような姿勢でスムースに動き回ることができる構造であることが望まれる。このため、近年、その目的に沿った重心移動システムを内蔵する釣り用ルアーが開発され、実際に市販されている。
【0005】
上記の特許文献1には、小魚を模した細長い形状を持ち、その内部に細長の空間を持つルアー本体(ボディ)そしてその本体に取り付けられた釣り針を含み、本体の内部空間内に収容固定されたガイドシャフトと、そのガイドシャフトに沿う前後方向の移動が可能になるように装着された、両端部に錘を持つリニアブッシュ(これが重心体として機能する)とからなる重心移動システムが組み込まれた釣り用ルアーが開示されている。
【0006】
そこで、特許文献1に開示の釣り用ルアーの構成の具体的な構成を、その特許請求の範囲の請求項1の記載に沿って以下に説明する。
【0007】
特許文献1に開示の釣り用ルアーは、小魚を模した外観形状を持つルアーボディの先端部付近に、前下がり傾斜するリップを付設した釣り用ルアーであって、ルアーボディの中空内部に前部付近から後部にかけてガイドシャフトを設けると共に、このガイドシャフトに装着された両端部に錘を備えたリニアブッシュ(これが重心体として機能する)がガイドシャフトに沿って前後にスライド可能となるように装着されている。そして、ルアーボディの前端付近に、マグネット(磁石)が装着されていて、ルアーの海中への投げ込み後に、このマグネットに前記リニアブッシュが磁着保持されるようにされている。
【0008】
特許文献1に開示されている図面から釣り用ルアーの構造を示す図面を選び、本明細書の添付図面に、図2として掲載した。この図2の釣り用ルアーの構成と作動とを、特許文献1の記載に沿って以下に説明する。
【0009】
図2の(A)、(B)、(C)のそれぞれは、特許文献1に開示の釣り用ルアーの全体構成と重心移動システムとを模式的に示すルアー本体の側面断面図である。この内、(A)は、図1に示したルアー10の通常の投げ込み操作の開始前(そして保管時)の重心体の位置(マグネットに磁着保持された状態)を示し、(B)は、ルアーの投げ込み操作の開始直後における重心体の移動状態を示し、そして(C)は、ルアーの水面に投げ込まれる直前と水中に投入された時点での重心体の位置(重心体がルアー本体の尾部に近接している状態)を示す。このルアーは、図2の(C)の状態となった後に、釣り人がルアーを引き寄せる操作を行うと、重心体が前方側に移動して、前方に備えられたマグネットに磁着保持されて、(A)の状態に戻る。
【0010】
図2において、釣り用ルアー10は、小魚の形状を模した中空のルアーボディ(通常は合成樹脂の成形により製造される)11を主構成部とする。このルアーボディ11の前端部(小魚の頭部に相当する)には、糸環が備えられ、この糸環には、釣り糸(もしくはライン)13が結び付けられている。ルアーボディ11の前端に近い腹部から後端部にかけて、複数個のフックハンガーが備えられていて、それぞれには、スプリットリングを介してフロントフック(前部釣針)18、ミドルフック(中間部釣針)19、リアフック(後部釣針)20が備えられている。そして、ルアーボディの前端部下側には、薄板状のリップ(潜水板として機能する)21が若干下側に傾斜した状態で取り付けられている。また、この釣り用ルアー10の中空の内部には、両端部に錘を備えたリニアブッシュ(重心体)23が長さ方向に移動可能に装着されている。
このような構成を持つ釣り用ルアー10は、水面に投げ入れられた後、釣り人が釣り糸13を引いてルアー10を引き寄せると、リップ21はルアーの周囲の水の抵抗を受け、その結果、その内部に移動可能に装着されている重心体23はガイドシャフト22に沿って前方側に移動し、マグネット29に接触することにより、ルアーの前方位置にて固定される。このため、ルアーボディ11は前傾姿勢にて海中などの水中にて自然な潜る動きを行う。
【0011】
図3の(A)、(B)は、釣り用ルアー10が水面に投げ込まれた直後に水中で示す上記の挙動の推移を示した図であり、水中に投げ込まれた時点での重心体23の位置は、(A)に示すように、ルアー10の後端部にあり、次いで、釣り人が釣り糸13を引いて、前方にルアー10を引き寄せると、重心体23はルアーの前方に移動して、磁石29に接触し、仮固定される。
【0012】
なお、図2図3に図示されたリニアブッシュの内周面には、一般的な摺動部品として用いられるリニアブッシュと同様に、ガイドシャフト22の周面に沿って長手方向に循環移動しながら回転するボール(球体)が装着されている。このようなリニアブッシュ本体の構成により、ルアーボディ11の傾斜状態に応じて、リニアブッシュがガイドシャフトに沿って円滑に前方側に移動し、マグネット29に磁着固定される。
【0013】
特許文献1に開示された上記の釣り用ルアーは使い勝手が良く、優れた釣り用ルアーと云うことができる。
【0014】
特許文献2には、本明細書の添付図面の図4図5に示すように、特許文献1に記載の釣り用ルアーと同様に、内部が中空とされた構造を持つが、その内部に形成された空間には重心移動管41が内蔵された構造を持つルアー41が開示されている。そして、この重心移動管41は、円筒状の管体41aとその管体内部に収容された円柱状の重心体(重り)42から構成されていて、この重心体42は、管体内部にて長さ方向に円滑な移動を行うようにされている。
【0015】
図4図5に示された上記の移動可能な重心体42もまたリニアブッシュではあるが、このリニアブッシュは円周外側面に循環移動が可能なボール群を備えた円柱形状を持つ。従って、特許文献2に開示の重心移動管は、管体、そしてその管体の内部に移動可能に収容されている円柱状のリニアブッシュからなる重心体から構成されていると云うことができる。すなわち、この円柱状の重心体は、管体の内周面の直径よりも僅かに小さい直径を持ち、その外周面には、多数の微小な球体(ボールベアリング)43を循環可能に収容保持する、相互に連結された二条の溝からなる球体循環溝44が三列以上、互いに平行に配置されているリニアブッシュである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【文献】特開2016-82907号公報
【文献】WO2018/110424 A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
特許文献1及び特許文献2に記載されているルアーの重心移動機構は、いずれも、釣り用ルアーに用いる重心移動機構として優れた機能を持つ。
【0018】
しかしながら、本発明者の検討によると、それぞれの特許文献に掲載された図から理解できるように、ルアーの本体内で重心移動機構を支持する機能を持つガイドシャフトあるいは重心移動管がルアー本体の内部空間内で上下方向でほぼ中央となる位置(内部空間内でおよそ半分となる高さ)に固定されていることから、ルアーの重心が比較的高い位置になる結果となる。このため、水中に投げ込まれ、ルアーの重心体が前方に磁着固定された後であっても、そのルアーでは、生きている小魚が水中で示す自然な遊泳状態とは異なる不自然な揺動(横揺れ)が発生し易いという問題があることが判明した。
【0019】
従って、本発明の課題は、特許文献1や特許文献2に開示されている重心移動機構と同様に、重心体の移動が円滑に実現し、かつルアーが、水中に投げ込まれた後において、生きている小魚が水中で示す自然な遊泳状態に近い自然な動きに近似した動きを示し易い釣り用ルアーの改良構造を提供することにある。
また、本発明は、釣り用ルアーの重心移動機構を構成するための重心移動管としての有用性が更に向上した重心移動管を提供することにもある。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明の発明者は、上記の課題の解決のために、特許文献2に開示された釣り用ルアーの重心移動機構の改良と重心移動管の開発を目的とした研究を行った。そして、その結果、上記の課題の解決に有効な釣り用ルアーの重心移動機構として、釣り用ルアーの内部空間における重心移動管の設置位置を(上下方向での位置、あるいは高さ)を低くすることが可能にした重心移動管の構造を見出した。
【0021】
本発明は第一に、下記の釣り用ルアーにある。
小魚を模した細長い形状を持ち、その内部に細長の空間を持つルアー本体そして該本体に取り付けられた釣り針を含み、本体の内部の上記空間に、幅方向に左右対称な形状を持ち、長さ方向の円滑な移動が可能とされた棒状の重心体を収容する重心移動管が固定されている釣り用ルアーであって、
(1)上記重心移動管は、その内部に収容された重心体が、その長さ方向の中心軸がルアー本体の内部空間内の中心軸の下方側の位置で移動するように、ルアー本体の内部空間に配置されていること、そして
(2)上記重心体は、その幅方向の断面が、その断面の最大径に沿う平面が平坦な頂面とされている多角形、半円形、もしくは多角形と半円形が組み合わされた複合形となるような形状を持つこと、但し、上記重心体の平坦な頂面の上には、その頂面の上方側となる部分が下方側となる部分よりも大きな質量とならない限り任意の形状の突起が備えられていてもよい、を特徴とする釣り用ルアー。
なお、本発明の釣り用ルアーの本体の前部(小魚の頭部に相当する)には、特許文献1に記載の釣り用ルアーや特許文献2に記載の釣り用ルアーと同様に、リップが付設されていても良いが、このリップの付設は、必須ではない。
【0022】
本発明は第二に、内部に中空空間を持つ釣り用ルアーに内蔵させるために有用な下記構成の重心移動管にある。
管体、そして管体の内側に、管体の長さ方向に沿う移動が可能なように挿入されている、幅方向に左右対称な形状を持つ棒状の重心体が備えられた重心移動管であって、上記重心体は、その幅方向の断面が、その断面の最大径に沿う平面が平坦な頂面とされている多角形、半円形、もしくは多角形と半円形が組み合わされた複合形となるような形状を持つこと、ただし、上記重心体の平坦な頂面の上には、その頂面の上方側となる部分が下方側となる部分よりも大きな質量とならない限り任意の形状の突起が備えられていてもよい、を特徴とする重心移動管。
【0023】
上記の本発明の釣り用ルアーの重心移動管の好ましい態様は以下の通りです。
(1)上記重心体の平坦な頂面の上に突起を備えることがない。
(2)上記重心体の幅方向の断面が、底面の横幅よりも頂面の横幅が大きい台形の形状を持つ。
(3)上記重心体が断面が、底面の横幅よりも頂面の横幅が大きい台形の形状を持ち、その台形の対向する側面の各々と対向する底隅部の各々に、相互に連結された二条の溝からなる球体循環溝と該球体循環溝に充填された球体が備えられている。
【発明の効果】
【0024】
本発明の釣り用ルアーは、その重心が比較的低い位置(本体腹部に近い位置)にある。このため、本発明の釣り用ルアーは、水中に投げ込まれた後に、生きている小魚が水中で示す自然な遊泳状態に近い挙動を示しやすい。従って、本発明の釣り用ルアーは、釣り用ルアーとして特に高い価値を持つ。
本発明の重心移動管は、これを釣り用ルアーに内蔵させる目的で使用すると、釣り用ルアーの内部の比較的低い位置に装着させやすい。このため、本発明の重心移動管を装着させた釣り用ルアーは、水中において、生きている小魚の遊泳状態に近い挙動を示すため、釣り用ルアーとして特に高い価値を持つようになる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】特許文献1に開示されている釣り竿に取り付けられたルアーの海面(あるいは水面)への投げ込みの過程の全体を模式的に示す図である。
図2】特許文献1に開示されている釣り用ルアーの全体構成と重心移動システムを模式的に示す図である。
図3】釣り用ルアーが海面(あるいは水面)に投げ込まれた後に海中(あるいは水中)で示す挙動の推移を示す図である。
図4】特許文献2に開示の釣り用ルアーの全体構成と重心移動管を模式的に示す側面断面図である。
図5図4の釣り用ルアーの重心移動管の斜視図である。
図6】本発明の釣り用ルアーの代表例の側面断面図である。
図7】本発明の釣り用ルアーの代表例の長さ方向の中央部の幅方向に沿って切断した断面図である。
図8】本発明の重心移動管の構成の代表例を示す斜視図(側面切り欠いて示してある)。
図9図8の重心移動管に収容されている重心体の前面図と側面図である。
図10図7に示した重心移動管の断面図における重心体の重心位置を示す説明図である。
図11】本発明の重心移動管の構成の他の例を示す斜視図(図8と同様に、側面切り欠いた図として示してある)。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明の釣り用ルアーと重心移動管を、添付図面の図6図11を参照しながら詳しく説明する。
【0027】
本発明の釣り用ルアーの全体構成と内部構成は、図6図10を参照することにより理解できる。
【0028】
本発明の釣り用ルアーは、図6から理解できるように、特許文献2に記載されている釣り用ルアーと同様に、小魚を模した細長い形状を持ち、その内部に細長の空間52を持つルアー本体11そして該本体に取り付けられた釣り針を含み、本体の内部空間52に、幅方向に左右対称な形状を持ち、長さ方向の円滑な移動が可能とされた棒状の重心体42を収容する重心移動管41が固定されている釣り用ルアーであるが、下記の構成を持つことを特徴とする。
(1)上記重心移動管は、その内部に収容された重心体が、その長さ方向の中心軸がルアー本体の内部空間内の中心軸の下方側の位置で移動するように、ルアー本体の内部空間に配置されていること、そして
(2)上記重心体は、その幅方向の断面が、その断面の最大径に沿う平面が平坦な頂面とされている多角形、半円形、もしくは多角形と半円形が組み合わされた複合形となるような形状を持つこと、但し、上記重心体の平坦な頂面の上には、その頂面の上方側となる部分が下方側となる部分よりも大きな質量とならない限り、任意の形状の突起が備えられていてもよい。
【0029】
次に、本発明の釣り用ルアーと重心移動管について詳しく説明するが、釣り用ルアーの本体(ボディ)は、特許文献2に記載のものと大きな違いはないため、特許文献2の記載を、本発明の釣り用ルアーの本体(ボディ)を説明する記載とする。
【0030】
前述のように、特許文献2に記載の釣り用ルアーと本発明の釣り用ルアーとの本質的な差異は、ルアー本体の内部空間における重心移動管の装着位置、そして重心移動管の形状と重心体の形状の違いであることから、この点について以下に詳しく説明する。
【0031】
まず、本発明の釣り用ルアーは、図6図7、そして図10に例示されているように、重心移動管41が、重心体42の中心軸がルアー本体の内部空間52の内部の中心軸の下方側で移動するように配置されていることが第一の特徴である。ここで、重心体42の中心軸とは、重心体の形状の幅方向(左右方向)での中央の位置でもあり、高さ方向(上下方向)での中央となる位置の交点(図7のA)を通って、重心体42の長さ方向に延ばした直線(仮想直線)に一致する軸を云う。
そして、ルアー本体の内部空間の内部の中心軸もまた、ルアー本体の内部空間(ここでは、上下幅が最も大きい部分での内部空間を意味する)の左右方向での中央の位置でもあり、上下方向での中央となる位置の交点(図7のB)を通って、ルアー本体の内部空間を本体の長さ方向に沿って延ばした直線(仮想直線)に一致する軸を云う。この特徴的な構成は、図6図7から明確に理解できるであろう。なお、図7図8に示されているように、重心体42は通常、長尺の皿状の管体41aに長さ方向の円滑な移動が可能なように収容されていて、その管体41aの上部は同じく長尺の蓋で覆われている。そして、そのように構成された重心移動管41は、通常、ルアー本体の内側に突出するように形成された重心移動管固定手段(図7参照)により、ルアー本体内に固定される。
【0032】
次に、本発明の釣り用ルアーは、図7図9に例示されているように、上記重心体は、その幅方向の断面の基本形状が、その断面の最大径に沿う平面が平坦な頂面とされている多角形、半円形、もしくは多角形と半円形が組み合わされた複合形となるような形状を持つことも特徴となる。
【0033】
本発明の釣り用ルアーの本体は、通常、樹脂材料の割型成形により得た一対の成形体から製造する。そして、その一対の成形体の内部に重心移動管を装着させたのち、それらの成形体を貼り合わせるなどの方法により一体化する方法を利用して製造することができる。そして、重心体は、ステンレスチールなどの金属材料から形成することが望ましいが、所望により、金属材料と樹脂材料との複合材料あるいは樹脂材料単独から形成することもできる。
【0034】
図7図8に示された重心体は、代表的形状である幅方向の断面が台形の形状を持ち、その台形の底面の横幅よりも頂面の横幅が大きい多角形の形状を持つ重心体である。多角形であるとの表現は、機械部品として一般的な隅部の丸み付け(面取り)を施した多角形を排除するものではない。本発明で用いる重心体はまた、その幅方向の断面が、その断面の最大径に沿う平面が平坦な頂面とされている限り、他の形状であってもよい。すなわち、他の多角形(台形以外の四辺形、五角形などのような四辺形以上の多辺形)、半円形、もしくは多角形と半円形が組み合わされた複合形となるような形状であってもよい。
【0035】
本発明の幅方向の断面が、その断面の最大径に沿う平面が平坦な頂面とされている多角形、半円形、もしくは多角形と半円形が組み合わされた複合形となるような形状の重心体は、下部そして底部側で横幅が狭くなっていく形状を持つルアー本体内部の下側位置に装着しやすいという利点を持つ。
【0036】
本発明の重心移動管に収容される重心体は、上記のように、底面の横幅よりも頂面の横幅が大きい多角形もしくは半円形の形状を持つ重心体であり、その平坦な頂面の上には、任意の形状の突起が形成されていてもよいが、その頂面の上方側となる突起部分が、その頂面の下方側となる部分よりも大きな質量となることは好ましくない。すなわち、本発明の重心移動管の重心体の低い重心位置を確保する必要があるためである。例えば、図10において一点鎖線で示したような、重心体が断面が円形(真円形状)の丸棒である場合には、重心体の中心軸の位置(C)が相対的に高くなりやすく、重心体を収容する重心移動管のルアー内部空間への低い位置での装着が困難になる。
【0037】
なお、重心体の側面と側面底部(隅部)には、図7図9に示されているように、多数の球体(ボールベアリング)を並べた状態で収容して、その循環移動を可能にする球体を循環可能に収容保持する、互いに平行に配置され、かつ相互に連結された二条の溝からなる球体循環溝が形成されていることが望ましい。これらの球体循環溝は、それぞれ閉じられた底部を持っており、両球体循環溝の一方(側面底部(隅部)側)の溝に収容されている球体は、重心体の移動時には重心移動管の管体の内周面に接触した状態で溝内を回転しながら循環移動するとともに、他の一方の溝に収容されている球体も回転しながら循環移動する構成とされている。
【0038】
本発明の釣り用ルアーの内部空間に装着する重心移動管は、管体内を上記の重心体が円滑に移動するように収容している。管体は、全体が一体とされた多角形などの断面を持つ管体であっても良いが、その製造の観点から見ると、図7図9に示されているように、重心体を収容保持する部分と蓋部分とから構成した管体であることが好ましいであろう。
【0039】
本発明の釣り用ルアーの重心移動管の他の構成例の一つを図11に示す。図11に示すように、重心移動管41は、その内部に収容された重心体42が長さ方向に円滑に移動できる限り、図6図10に示したような、重心移動体の円滑な移動を可能にするボールベアリングの装着は必須ではない。
【符号の説明】
【0040】
10 釣り用ルアー
11 ルアーボディ
13 釣り糸
22 ガイドシャフト
23 リニアブッシュ
41 重心移動管
41a 管体
42 重心体
43 球体(ボール)
44 球体循環溝
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11