(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-26
(45)【発行日】2022-11-04
(54)【発明の名称】組成物および成形品
(51)【国際特許分類】
C08L 27/12 20060101AFI20221027BHJP
C08L 83/04 20060101ALI20221027BHJP
C08L 77/00 20060101ALI20221027BHJP
C08G 69/12 20060101ALI20221027BHJP
【FI】
C08L27/12
C08L83/04
C08L77/00
C08G69/12
(21)【出願番号】P 2020562550
(86)(22)【出願日】2019-12-27
(86)【国際出願番号】 JP2019051608
(87)【国際公開番号】W WO2020138493
(87)【国際公開日】2020-07-02
【審査請求日】2021-06-09
(31)【優先権主張番号】P 2018246995
(32)【優先日】2018-12-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】504409543
【氏名又は名称】国立大学法人秋田大学
(73)【特許権者】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000486
【氏名又は名称】とこしえ特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】松本 和也
(72)【発明者】
【氏名】寺境 光俊
(72)【発明者】
【氏名】山田 修史
(72)【発明者】
【氏名】野口 剛
(72)【発明者】
【氏名】上谷 文宏
(72)【発明者】
【氏名】▲柳▼田 佳穂
【審査官】三宅 澄也
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/133108(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/030427(WO,A1)
【文献】特開平11-172074(JP,A)
【文献】特開2018-024612(JP,A)
【文献】国際公開第2017/126688(WO,A1)
【文献】特開2005-232024(JP,A)
【文献】特開2011-063660(JP,A)
【文献】特開2010-024400(JP,A)
【文献】国際公開第00/064980(WO,A1)
【文献】国際公開第2007/105754(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08K 3/00- 13/08
C08L 1/00-101/14
C08G69/00- 69/50
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
含フッ素ポリマー、および、ケイ素含有化合物を含有する組成物であって、前記組成物のリン含有量が、20ppm以下であり、前記ケイ素含有化合物が、一般式(1)で表されるかご型シルセスキオキサンであり、前記かご型シルセスキオキサンが、ハイパーブランチポリマーである組成物。
一般式(1):
【化80】
(一般式(1)中、R
1~R
8は、それぞれ独立に、
一般式(2)で表される末端基Tを含む有機基である。)
一般式(2):
【化81】
(一般式(2)中、X
1
およびX
2
は、それぞれ独立に、-NH
2
、-NH-CO-Ar(Arは置換もしくは非置換のアリール基)、または、下記式:
【化84】
(式中、Arは置換もしくは非置換のアリール基である。)
で表される基である。)
【請求項2】
前記含フッ素ポリマーは、含フッ素エラストマーである請求項
1に記載の組成物。
【請求項3】
前記ケイ素含有化合物の含有量が、前記含フッ素ポリマー100質量部に対して、0.5~100質量部である請求項1
または2に記載の組成物。
【請求項4】
前記組成物のアミド溶媒の含有量が1000ppm未満である請求項1~
3のいずれかに記載の組成物。
【請求項5】
前記組成物のフッ素原子を含まない溶媒の含有量が1000ppm未満である請求項1~
4のいずれかに記載の組成物。
【請求項6】
架橋剤をさらに含有する請求項1~
5のいずれかに記載の組成物。
【請求項7】
成形材料である請求項1~
6のいずれかに記載の組成物。
【請求項8】
請求項1~
7のいずれかに記載の組成物から得られる成形品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、含フッ素ポリマーを含む組成物、および、それから得られる成形品に関する。
【背景技術】
【0002】
含フッ素エラストマー、特にテトラフルオロエチレン(TFE)単位を含むパーフルオロエラストマーは、優れた耐薬品性、耐溶剤性および耐熱性を示すことから、航空宇宙分野、半導体製造装置分野、化学プラント分野などの過酷な環境下でシール材などとして広く使用されている。
【0003】
また、シール材に要求される特性を向上させるために、含フッ素エラストマーに充填剤を添加することが知られている。
【0004】
たとえば、特許文献1では、含フッ素エラストマーに、かご型シルセスキオキサンを添加することが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
半導体製造プロセスにおいて不純物が存在すると、半導体デバイスの歩留りや信頼性に大きな影響を与える。このような不純物としては、リンなどが知られている。
【0007】
本開示では、含フッ素ポリマーおよびケイ素含有化合物を含有する組成物であって、リンの含有量が極めて少ない組成物を提供することを第1の目的とする。
【0008】
また、本開示では、含フッ素ポリマーおよびケイ素含有化合物を含有する組成物であって、アミド溶媒の含有量が極めて少ない組成物を提供することを第2の目的とする。
【0009】
また、本開示では、含フッ素ポリマーおよびケイ素含有化合物を含有する組成物であって、高い純度が求められる場合であっても、容易に製造することができる組成物を提供することを第3の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本開示によれば、含フッ素ポリマー、および、ケイ素含有化合物を含有する組成物であって、前記組成物のリン含有量が、20ppm以下である組成物が提供される(本開示において、「本開示の第1の組成物」ということがある)。
【0011】
また、本開示によれば、含フッ素ポリマー、および、ケイ素含有化合物を含有する組成物であって、前記組成物のアミド溶媒の含有量が1000ppm未満である組成物が提供される(本開示において、「本開示の第2の組成物」ということがある)。
【0012】
本開示の第1および第2の組成物において、前記ケイ素含有化合物が、一般式(1)で表されるかご型シルセスキオキサンであることが好ましい。
一般式(1):
【化1】
(一般式(1)中、R
1~R
8は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子または有機基であり、R
1~R
8の少なくとも1つは有機基である。)
【0013】
本開示の第1および第2の組成物において、R
1~R
8が、それぞれ独立に、一般式(2)で表される末端基Tを含むことが好ましい。
一般式(2):
【化2】
(式中、X
1およびX
2は、それぞれ独立に、-NH
2、-OH、-SH、-H、-NH-CO-CF
3、-NH-CO-Ar(Arは置換もしくは非置換のアリール基)、下記式:
【化3】
で表される基、下記式:
【化4】
で表される基、または、下記式:
【化5】
(式中、Arは置換もしくは非置換のアリール基である。)
で表される基である。)
【0014】
また、本開示によれば、含フッ素ポリマー、および、ケイ素含有化合物として、一般式(1)で表されるかご型シルセスキオキサンを含有する組成物が提供される(本開示において、「本開示の第3の組成物」ということがある)。
一般式(1):
【化6】
(一般式(1)中、R
1~R
8は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子または有機基であり、R
1~R
8の少なくとも1つは、一般式(3-1)または一般式(3-2)で表される末端基Tを含む有機基である。
一般式(3-1):
【化7】
(式中、Arは、それぞれ独立に、置換もしくは非置換のアリール基である。)
一般式(3-2):
【化8】
(式中、Arは、それぞれ独立に、置換もしくは非置換のアリール基である。))
【0015】
本開示の第3の組成物において、一般式(3-1)および一般式(3-2)で表される末端基Tが、下記の基のいずれかであることが好ましい。
【化9】
【化10】
【化11】
【0016】
本開示の第1、第2および第3の組成物(本開示において、単に「本開示の組成物」ということがある)において、前記かご型シルセスキオキサンが、デンドリマーまたはハイパーブランチポリマーであることが好ましい。
【0017】
本開示の組成物において、前記含フッ素ポリマーは、含フッ素エラストマーであることが好ましい。
本開示の組成物において、前記ケイ素含有化合物の含有量が、前記含フッ素ポリマー100質量部に対して、0.5~100質量部であることが好ましい。
【0018】
本開示の第1および第3の組成物は、アミド溶媒の含有量が1000ppm未満であることが好ましい。
本開示の組成物は、フッ素原子を含まない溶媒の含有量が1000ppm未満であることが好ましい。
【0019】
本開示の組成物は、架橋剤をさらに含有することが好ましい。
本開示の組成物は、成形材料であることが好ましい。
【0020】
また、本開示によれば、上記の組成物から得られる成形品が提供される。
【発明の効果】
【0021】
本開示によれば、含フッ素ポリマーおよびケイ素含有化合物を含有する組成物であって、リンの含有量が極めて少ない組成物を提供することができる。
【0022】
また、本開示によれば、含フッ素ポリマーおよびケイ素含有化合物を含有する組成物であって、アミド溶媒の含有量が極めて少ない組成物を提供することができる。
【0023】
また、本開示によれば、含フッ素ポリマーおよびケイ素含有化合物を含有する組成物であって、高い純度が求められる場合であっても、容易に製造することができる組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本開示の具体的な実施形態について詳細に説明するが、本開示は、以下の実施形態に限定されるものではない。
【0025】
本開示の第1および第2の組成物は、含フッ素ポリマー、および、ケイ素含有化合物を含有する。
【0026】
上記ケイ素含有化合物は、無機ケイ素化合物であっても、有機ケイ素化合物であってもよいが、有機ケイ素化合物であることが好ましい。上記無機ケイ素化合物としては、酸化ケイ素、炭化ケイ素、窒化ケイ素などが挙げられる。また、上記ケイ素含有化合物は、充填剤として知られているものであることが好ましい。すなわち、本開示の第1および第2の組成物は、上記ケイ素含有化合物を充填剤として含有することが好ましい。また、本開示の第1および第2の組成物は、上記ケイ素含有化合物として、有機ケイ素化合物と無機ケイ素化合物とを含有するものであってもよい。
【0027】
上記ケイ素含有化合物としては、一般式(1)で表されるかご型シルセスキオキサンが好ましい。
一般式(1):
【化12】
(一般式(1)中、R
1~R
8は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子または有機基であり、R
1~R
8の少なくとも1つは有機基である。)
【0028】
本開示の第1および第2の組成物が、上記ケイ素含有化合物として、上記かご型シルセスキオキサンを含有する場合、耐熱性に優れ、さらに半導体の製造工程で曝されるフッ素系プラズマおよび酸素プラズマに対して、ともに重量変化が小さい成形品を与えることができる。
【0029】
さらに、本開示の第1の組成物は、リン含有量が20ppm以下である。したがって、本開示の第1の組成物から得られる成形品を、半導体製造プロセスで用いる含フッ素ポリマー成形品として使用した場合であっても、成形品からリンが溶出することがなく、高品質の半導体デバイスを、高い歩留りで製造することができる。
【0030】
本開示において、組成物中のリン含有量は、組成物のシートを用いて、蛍光X線分析法により、求めることができる。
【0031】
上記のリンの低含有量を達成するためには、上記かご型シルセスキオキサンなどの上記ケイ素含有化合物の製造工程において、リン化合物を使用しないことが求められる。このような上記かご型シルセスキオキサンの製造方法は、たとえば、次の化学反応式で示される。化学反応式中のnは、括弧内に示される構造単位の数を表し、かご型シルセスキオキサンがデンドリマーまたはハイパーブランチポリマーである場合、かご型シルセスキオキサンの世代数や分子量、分子量分布により決まる。
【化13】
【0032】
上記の化学反応式では、出発物質として3,5-ジアミノ安息香酸を用いたが、3,5-ジアミノ安息香酸以外にも、3,5-ビス(4-アミノフェノキシ)安息香酸などを用いることができる。また、これらの化合物は、アミンの塩であってもよく、たとえば、3,5-ジアミノ安息香酸二塩酸塩などを用いることができる。
【0033】
上記の化学反応式は、3,5-ジアミノ安息香酸とN-メチル-2-ピロリドン(NMP)およびSOCl2との反応により生成する活性化されたカルボン酸を有する化合物が、アミノ基を有するかご型シルセスキオキサンと反応して、ハイパーブランチポリマーを生成する反応式を示しているが、かご型シルセスキオキサンの製造方法は、この化学反応式に従うものに限定されない。活性化されたカルボン酸を有する化合物中のN-スルフィニル基は、加熱もしくは水と反応させることでアミノ基に変化し、重合が進行する。着色が少なく、分子量分布が狭いハイパーブランチポリマーを得る観点からは、N-スルフィニル基を水との反応により分解し、加熱をせずに重合反応を行うことが好ましい。
【0034】
上記の化学反応式における各反応は、溶媒中で行うことができる。溶媒としては、N-メチルピロリドン(NMP)、N-エチル-2-ピロリドン(NEP)、ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)、N-n-ブチルピロリドン、N-イソブチルピロリドン、N-t-ブチルピロリドン、N-n-ペンチルピロリドン、N-(メチル置換ブチル)ピロリドン、環状メチル置換N-プロピルピロリドン、環状メチル置換N-ブチルピロリドン、N-(メトキシプロピル)ピロリドン、1,5-ジメチル-ピロリドン、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ポリ(エチレングリコール)ジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、1,3-ジオキソラン、ジメチルスルホキシド(DMSO)、メチル-5-(ジメチルアミノ)-2-メチル-5-オキソペンタノエート、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン(DMI)、スルホラン、テトラヒドロフラン(THF)、アセトンなどが挙げられる。
【0035】
溶媒としては、フッ素原子を含有しない溶媒が好ましく、アミド溶媒がより好ましく、N-メチルピロリドン(NMP)、N-エチル-2-ピロリドン(NEP)、ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)、N-n-ブチルピロリドン、N-イソブチルピロリドン、N-t-ブチルピロリドン、N-n-ペンチルピロリドン、N-(メチル置換ブチル)ピロリドン、環状メチル置換N-プロピルピロリドン、環状メチル置換N-ブチルピロリドン、N-(メトキシプロピル)ピロリドンおよび1,5-ジメチル-ピロリドンからなる群より選択される少なくとも1種がさらに好ましい。
【0036】
溶媒は、N-メチルピロリドン(NMP)、N,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)などであってよい。また、溶媒として、非生殖発生毒性の溶媒を用いることも好ましい。非生殖発生毒性の溶媒としては、たとえば、N-n-ブチルピロリドン、N-イソブチルピロリドン、N-t-ブチルピロリドン、N-n-ペンチルピロリドン、N-(メチル置換ブチル)ピロリドン、環状メチル置換N-プロピルピロリドン、環状メチル置換N-ブチルピロリドン、N-(メトキシプロピル)ピロリドン、1,5-ジメチル-ピロリドン、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ポリ(エチレングリコール)ジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、1,3-ジオキソラン、ジメチルスルホキシド(DMSO)、メチル-5-(ジメチルアミノ)-2-メチル-5-オキソペンタノエート、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン(DMI)などが挙げられる。
【0037】
溶媒の沸点は特に限定されない。本開示によれば、沸点が150℃以上、170℃以上、190℃以上または200℃以上の比較的沸点が高い溶媒を用いる場合であっても、アミド溶媒、フッ素原子を含まない溶媒などの残留溶媒の含有量が少ないかご型シルセスキオキサンなどのケイ素含有化合物を製造することができ、さらに、溶媒の含有量が極めて少ない組成物が得られる。溶媒の沸点は、300℃以下、270℃以下、240℃以下または210℃以下であってよい。
【0038】
上記の製造方法に続いて、たとえば、次の化学反応式で示される製造方法により、R
1~R
8の末端を所望の有機基に変換してもよい。化学反応式中のXは、塩素原子などのハロゲン原子を表す。
【化14】
【0039】
上記の化学反応式においては、X-CO-Phで表される化合物を用いてR1~R8のいずれかの末端をフェニル基に変換しているが、末端を変換するための化合物はこれに限定されず、たとえば、X-CO-Ar(Arは置換もしくは非置換のアリール基)で表される化合物などの他の化合物を用いることができる。R1~R8の末端を所望の有機基に変換することにより、本開示の第3の組成物を容易に製造することができる。
【0040】
所望の化合物が得られた後、必要に応じて、得られた化合物をアルコールにより洗浄してもよい。また、ろ過、乾燥などの操作を行ってもよい。
【0041】
さらに、本開示の第2の組成物は、アミド溶媒を含有してもよいが、アミド溶媒の含有量が1000ppm未満である。したがって、本開示の第2の組成物を用いることにより、残留アミド溶媒に起因する発泡などの成形不良の発生を抑制しながら、成形品を効率よく生産することができる。また、本開示の第2の組成物から得られる成形品を、半導体製造プロセスで用いる含フッ素ポリマー成形品として使用した場合であっても、成形品から残留アミド溶媒が溶出することがなく、高品質の半導体デバイスを、高い歩留りで製造することができる。
【0042】
アミド溶媒としては、たとえば、かご型シルセスキオキサンなどのケイ素含有化合物を製造するために用いるアミド溶媒として例示したものが挙げられる。アミド溶媒は、フッ素原子を含有しないことが好ましい。
【0043】
本開示の第2の組成物のアミド溶媒の含有量としては、好ましくは300ppm以下であり、より好ましくは60ppm以下であり、最も好ましくは10ppm以下である。アミド溶媒の含有量の下限は、特に限定されず、低いほど好ましいが、たとえば、1ppm以上であってよい。なお、本開示において、特に断らない限り、「ppm」は質量基準である。
【0044】
本開示の第2の組成物は、フッ素原子を含まない溶媒を含有してもよいが、フッ素原子を含まない溶媒の含有量が1000ppm未満であることが好ましい。したがって、本開示の第2の組成物を用いることにより、組成物中に残留したフッ素原子を含まない溶媒に起因する発泡などの成形不良の発生を抑制しながら、成形品を効率よく生産することができる。また、本開示の第2の組成物から得られる成形品を、半導体製造プロセスで用いる含フッ素ポリマー成形品として使用した場合であっても、成形品から組成物中に残留したフッ素原子を含まない溶媒が溶出することがなく、高品質の半導体デバイスを、高い歩留りで製造することができる。
【0045】
フッ素原子を含まない溶媒としては、たとえば、かご型シルセスキオキサンなどのケイ素含有化合物を製造するために用いる溶媒として例示したものが挙げられる。
【0046】
本開示の第2の組成物のフッ素原子を含まない溶媒の含有量としては、好ましくは300ppm以下であり、より好ましくは60ppm以下であり、最も好ましくは10ppm以下である。フッ素原子を含まない溶媒の含有量の下限は、特に限定されず、低いほど好ましいが、たとえば、1ppm以上であってよい。
【0047】
上記の溶媒量を達成するために、上記の化学反応式に従った反応により化合物を得た後、得られた化合物を適切な条件で乾燥させることが好ましい。乾燥温度としては、好ましくは100~300℃であり、より好ましくは150~200℃である。比較的高い乾燥温度は、反応により得られた化合物が、NMPなどの比較的沸点の高い溶媒を含有する場合に特に好適である。
【0048】
乾燥時間としては、好ましくは1~12時間であり、より好ましくは2~6時間である。
【0049】
乾燥は、減圧下で行うことが好ましく、乾燥圧力としては、好ましくは1~1000Paであり、より好ましくは1~100Paである。
【0050】
反応により得られた化合物を、適切な条件で乾燥することによって、残留溶媒量の少ない化合物が得られ、結果として、本開示の第2の組成物を容易に製造することができる。本開示において、組成物中の溶媒の含有量は、ガスクロマトグラフィーにより、求めることができる。
【0051】
本開示の第2の組成物は、リン含有量が20ppm以下であることが好ましい。リン含有量が20ppm以下である場合、本開示の第2の組成物から得られる成形品を、半導体製造プロセスで用いる含フッ素ポリマー成形品として使用した場合であっても、成形品から残留溶媒およびリンが溶出することがなく、高品質の半導体デバイスを、高い歩留りで製造することができる。
【0052】
また、本開示の第1の組成物についても、アミド溶媒を含有してもよいが、アミド溶媒の含有量が1000ppm未満であることが好ましい。本開示の第1の組成物中に残留するアミド溶媒の含有量を低減することによって、残留アミド溶媒に起因する発泡などの成形不良の発生を抑制しながら、成形品を効率よく生産することができる。また、本開示の第1の組成物から得られる成形品を、半導体製造プロセスで用いる含フッ素ポリマー成形品として使用した場合であっても、成形品からリンおよび残留アミド溶媒が溶出することがなく、高品質の半導体デバイスを、高い歩留りで製造することができる。
【0053】
アミド溶媒としては、たとえば、かご型シルセスキオキサンなどのケイ素含有化合物を製造するために用いるアミド溶媒として例示したものが挙げられる。アミド溶媒は、フッ素原子を含有しないことが好ましい。
【0054】
本開示の第1の組成物のアミド溶媒の含有量としては、好ましくは300ppm以下であり、より好ましくは60ppm以下であり、最も好ましくは10ppm以下である。アミド溶媒の含有量の下限は、特に限定されず、低いほど好ましいが、たとえば、1ppm以上であってよい。
【0055】
また、本開示の第1の組成物は、フッ素原子を含まない溶媒を含有してもよいが、フッ素原子を含まない溶媒の含有量が1000ppm未満であることが好ましい。本開示の第1の組成物中に残留するフッ素原子を含まない溶媒の含有量を低減することによって、組成物中に残留したフッ素原子を含まない溶媒に起因する発泡などの成形不良の発生を抑制しながら、成形品を効率よく生産することができる。また、本開示の第1の組成物から得られる成形品を、半導体製造プロセスで用いる含フッ素ポリマー成形品として使用した場合であっても、成形品からリンおよびフッ素原子を含まない溶媒が溶出することがなく、高品質の半導体デバイスを、高い歩留りで製造することができる。
【0056】
フッ素原子を含まない溶媒としては、たとえば、かご型シルセスキオキサンなどのケイ素含有化合物を製造するために用いる溶媒として例示したものが挙げられる。
【0057】
本開示の第1の組成物のフッ素原子を含まない溶媒の含有量としては、好ましくは300ppm以下であり、より好ましくは60ppm以下であり、最も好ましくは10ppm以下である。フッ素原子を含まない溶媒の含有量の下限は、特に限定されず、低いほど好ましいが、たとえば、1ppm以上であってよい。
【0058】
一般式(1)における上記有機基は、アルキル基、アルコキシ基またはフェニル基であってよい。
【0059】
上記アルキル基およびアルコキシ基は、炭素数が1~1000であることが好ましく、1~600であることがより好ましく、1~400であることがさらに好ましい。また、炭素数が2以上である場合、2つの炭素原子がアミド結合、イミド結合、エステル結合、ウレタン結合、カーボネート結合、エーテル結合等により結合していてもよい。また、炭素原子に結合した水素原子の一部または全部がフッ素原子により置換されていてもよい。
【0060】
上記R1~R8は、芳香族環等の環状構造を含むものであってもよい。また、上記R1~R8は、アミノ基、ニトロ基、カルボキシル基、スルホ基、水酸基、ビニル基、エポキシ基、シリル基、イソシアネート基等を含むものであってもよい。上記フェニル基は、1以上の置換基により置換されたものであってもよい。
【0061】
一般式(1)において、R1~R8の少なくとも1つが、芳香族環等の環状構造を含む有機基であることが好ましく、R1~R8の全てが、芳香族環等の環状構造を含む有機基であることがより好ましい。
R1~R8が芳香族環等の環状構造を含むことにより、かご型シルセスキオキサン格子の頂点に剛直な構造が放射状に配置されることから、かご型シルセスキオキサンの耐熱性、耐プラズマ性が優れたものとなる。
【0062】
一般式(1)において、R1~R8の少なくとも1つが、アルキレン基、オキシアルキレン基または-C6H4-NH-で表される2価の基と、2~6価のベンゼン環とを含む有機基であることがさらに好ましい。R1~R8の全てがこのような有機基でない場合、残りのR1~R8は、水素原子、ハロゲン原子または置換もしくは非置換のフェニル基であってよい。しかしながら、上記R1~R8の全てが、アルキレン基、オキシアルキレン基または-C6H4-NH-で表される2価の基と、2~6価のベンゼン環とを含む有機基であることが特に好ましい。上記ベンゼン環は3価であることが好ましい。上記アルキレン基およびオキシアルキレン基の炭素数は、それぞれ、1~10であってよく、1~5であることが好ましい。
なお、本明細書中で「n価のベンゼン環」と記載する場合は、ベンゼン環のn個の水素原子が、他の有機基に置換されているものを意味する。
【0063】
上記かご型シルセスキオキサンは、デンドリマーおよびハイパーブランチポリマーのいずれであってもよいが、製造の容易性および分子設計の自由度の観点から、ハイパーブランチポリマーであることが好ましい。
【0064】
上記かご型シルセスキオキサンのデンドリマーは、コアとしてかご型シルセスキオキサン骨格を有し、デンドロンとしてR1~R8を有する。上記デンドリマーは、単峰型(unimodal)であり、分子量分布を有していない。上記組成物がかご型シルセスキオキサンのデンドリマーを含むものであると、半導体デバイスの製造工程で曝されるフッ素系プラズマおよび酸素プラズマに対してともに重量変化が小さい成形品を得ることができる。また、その世代数により、分子の大きさを制御できるという利点もある。
【0065】
上記かご型シルセスキオキサンのハイパーブランチポリマーは、通常、分子量と分子構造に分布が存在する。ハイパーブランチポリマーは、コアから規則正しく完全に樹状分岐をしているデンドリマー(単一分子量の高分子であり、分子量分布が存在しない)と比較して非常に合成が容易である。上記かご型シルセスキオキサンのハイパーブランチポリマーの分子量分布(Mw/Mn)は、1~20であってよく、10以下が好ましく、5以下がより好ましく、3以下が特に好ましく、1超が好ましい。
上記分子量分布は、ゲル浸透クロマトグラフィー分析により求めることができる。
【0066】
上記ハイパーブランチポリマーは、溶解性の観点で、2,000~300,000の数平均分子量を有することが好ましい。上記ハイパーブランチポリマーは、より好ましくは、4,000~100,000の数平均分子量を有する
上記数平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー分析により求めることができる。
【0067】
上記ハイパーブランチポリマーは、高度に分岐した分子構造を有しており、非晶質である。また、機能性基を導入可能な鎖末端を多数有する。
上記ハイパーブランチポリマーは、多官能基を有するモノマーを一段階ずつ化学反応させて規則的な分岐構造(コア部分を中心に複数の分岐した鎖状部分を有する構造)を形成させるデンドリマーに比べ、モノマーから重縮合で一気に製造することができるため、デンドリマーよりも製造が容易である。また、製造コストも安価である。
さらに、合成条件を適宜調整することにより分岐の数を制御でき、用途に応じた分子設計も容易に実施できる。
【0068】
上記ハイパーブランチポリマーは、コアとしてかご型シルセスキオキサン骨格を有し、ハイパーブランチとしてR1~R8を有する。上記組成物がかご型シルセスキオキサンのハイパーブランチポリマーを含むものであると、半導体デバイスの製造工程で曝される酸素プラズマおよびフッ素系プラズマに対してともに重量変化が小さい成形品を得ることができる。また、分岐の数を制御することによって、分子の大きさを制御できるという利点もある。
【0069】
上記かご型シルセスキオキサンとしては、一般式(1)において、R1~R8が、それぞれ独立に、一般式(2)で表される末端基Tを含む有機基であることが好ましい。
【0070】
【0071】
一般式(2)において、X
1およびX
2は、それぞれ独立に、-NH
2、-OH、-SH、-H、-NH-CO-CF
3、-NH-CO-Ar(Arは置換もしくは非置換のアリール基)、下記式:
【化16】
で表される基(2-1)、下記式:
【化17】
で表される基(2-2)、または、下記式:
【化18】
(式中、Arは置換もしくは非置換のアリール基である。)
で表される基(2-3)であり、-NH
2、-NH-CO-Arまたは基(2-3)であることが好ましく、-NH-CO-Arまたは基(2-3)であることがより好ましい。X
1およびX
2の一方または両方が-NH-CO-Arまたは基(2-3)であると、かご型シルセスキオキサンがアルコールに溶解しにくく、合成反応によりかご型シルセスキオキサンを得た後に、アルコールによって洗浄することが可能となり、高純度のかご型シルセスキオキサンを容易に製造できる。結果として、高純度の組成物を容易に製造できることとなる。
【0072】
-NH-CO-Arおよび基(2-3)におけるArは、置換もしくは非置換のアリール基を表す。Arとしては、非置換のアリール基が好ましい。また、アリール基としては、置換もしくは非置換のフェニル基が好ましく、非置換のフェニル基がより好ましい。
【0073】
アリール基の置換基としては、アルキル基、アルコキシ基、アミノ基、ニトロ基、カルボキシル基、スルホ基、水酸基、ビニル基、エポキシ基、シリル基、イソシアネート基などが挙げられる。アルキル基およびアルコキシ基は、非フッ素化アルキル基、フッ素化アルキル基、フッ素化アルコキシ基または非フッ素化アルコキシ基であってよい。また、アルキル基およびアルコキシ基の炭素数は、好ましくは1~10である。アリール基の置換基としては、-CF3、-C2F5、-CH2F、-CH2CF3、-CH2C2F5などの炭素数1~10、特に1~6のフッ素原子含有低級アルキル基が好ましく、-CF3がより好ましい。置換基の数は、1または2であってよい。
【0074】
上記R
1~R
8は、下記式:
【化19】
で表される末端基Tを含む有機基であることも好ましい。式中、R
9は、同じかまたは異なり、-NH
2、-NHR
10、-OHまたは-SHであり、R
10は、フッ素原子または1価の有機基である。
【0075】
上記R10における1価の有機基としては、例えば、脂肪族炭化水素基、フェニル基またはベンジル基があげられる。具体的には、たとえば、R10の少なくとも1つが-CH3、-C2H5、-C3H7などの炭素数1~10、特に1~6の低級アルキル基;-CF3、-C2F5、-CH2F、-CH2CF3、-CH2C2F5などの炭素数1~10、特に1~6のフッ素原子含有低級アルキル基;フェニル基;ベンジル基;-C6F5、-CH2C6F5などのフッ素原子で1~5個の水素原子が置換されたフェニル基またはベンジル基;-C6H5-n(CF3)n、-CH2C6H5-n(CF3)n(nは1~5の整数)などの-CF3で1~5個の水素原子が置換されたフェニル基またはベンジル基が好ましい。
【0076】
架橋反応性が良好であるため、上記R9は-NH2または-OHであることが好ましく、-NH2であることがより好ましい。
【0077】
上記末端基Tのフェニル基において、-NH2とR9とがオルト位に位置していると、上記かご型シルセスキオキサンが架橋剤としても作用する。従って、後述するような一般的な架橋剤を用いることなく、耐熱性および耐プラズマ性に一層優れる成形品を与えることができる。
【0078】
【0079】
で表される基、下記式:
【0080】
【0081】
で表される基、下記式:
【0082】
【0083】
で表される基、または、下記式:
【0084】
【0085】
で表される基であることがより好ましい。
【0086】
また、高純度の組成物を容易に製造できるという観点からは、R
1~R
8の少なくとも1つが、一般式(3-1):
【化24】
(式中、Arは、それぞれ独立に、置換もしくは非置換のアリール基である。)、または、一般式(3-2):
【化25】
(式中、Arは、それぞれ独立に、置換もしくは非置換のアリール基である。)で表される末端基Tを含む有機基であることも好ましい。R
1~R
8の全てが一般式(3-1)または一般式(3-2)で表される末端基Tを含む有機基でない場合、残りのR
1~R
8は、水素原子、ハロゲン原子または置換もしくは非置換のフェニル基(ただし、一般式(3-1)または一般式(3-2)で表されるものを除く)であってよい。しかしながら、R
1~R
8の全てが、一般式(3-1)または一般式(3-2)で表される末端基Tを含む有機基であることがより好ましい。
【0087】
末端基Tが一般式(3-1)または一般式(3-2)で表されるものである場合に、高純度の組成物を容易に製造できる理由は、一般式(3-1)または一般式(3-2)で表される末端基Tを含む有機基を有するかご型シルセスキオキサンがアルコールに溶解しにくく、合成反応によりかご型シルセスキオキサンを得た後に、かご型シルセスキオキサンをアルコールによって洗浄することが可能となり、高純度のかご型シルセスキオキサンを容易に製造でき、結果として、高純度の組成物を容易に製造できるからである。
【0088】
一般式(3-1)または一般式(3-2)におけるArは、置換もしくは非置換のアリール基を表す。Arとしては、非置換のアリール基が好ましい。また、アリール基としては、置換もしくは非置換のフェニル基が好ましく、非置換のフェニル基がより好ましい。
【0089】
アリール基の置換基としては、アルキル基、アルコキシ基、アミノ基、ニトロ基、カルボキシル基、スルホ基、水酸基、ビニル基、エポキシ基、シリル基、イソシアネート基などが挙げられる。アルキル基およびアルコキシ基は、非フッ素化アルキル基、フッ素化アルキル基、フッ素化アルコキシ基または非フッ素化アルコキシ基であってよい。また、アルキル基およびアルコキシ基の炭素数は、好ましくは1~10である。アリール基の置換基としては、-CF3、-C2F5、-CH2F、-CH2CF3、-CH2C2F5などの炭素数1~10、特に1~6のフッ素原子含有低級アルキル基が好ましく、-CF3がより好ましい。置換基の数は、1または2であってよい。
【0090】
一般式(3-1)および一般式(3-2)で表される末端基Tとしては、下記のいずれかであることが好ましい。
【化26】
【化27】
【化28】
【0091】
本開示の第3の組成物は、含フッ素ポリマー、および、ケイ素含有化合物を含有する組成物であって、ケイ素含有化合物として、一般式(1)において、R1~R8の少なくとも1つが、一般式(3-1)または一般式(3-2)で表される末端基Tを含む有機基である、かご型シルセスキオキサンを含有する。R1~R8の全てが一般式(3-1)または一般式(3-2)で表される末端基Tを含む有機基でない場合、残りのR1~R8は、水素原子、ハロゲン原子または置換もしくは非置換のフェニル基(ただし、一般式(3-1)または一般式(3-2)で表されるものを除く)であってよい。しかしながら、R1~R8の全てが、一般式(3-1)または一般式(3-2)で表される末端基Tを含む有機基であることがより好ましい。
【0092】
一般式(3-1):
【化29】
(式中、Arは、それぞれ独立に、置換もしくは非置換のアリール基である。)
【0093】
一般式(3-2):
【化30】
(式中、Arは、それぞれ独立に、置換もしくは非置換のアリール基である。)
【0094】
本開示の第3の組成物は、上記かご型シルセスキオキサンを含有することから、耐熱性に優れ、さらに半導体の製造工程で曝されるフッ素系プラズマおよび酸素プラズマに対して、ともに重量変化が小さい成形品を与えることができる。
【0095】
本開示の第3の組成物は、さらには、一般式(3-1)または一般式(3-2)で表される末端基Tを含む有機基を有するかご型シルセスキオキサンを含有することから、高い純度が求められる場合であっても、容易に製造することができる。この理由は、一般式(3-1)または一般式(3-2)で表される末端基Tを含む有機基を有するかご型シルセスキオキサンは、アルコールに溶解しにくく、合成反応によりかご型シルセスキオキサンを得た後に、かご型シルセスキオキサンをアルコールによって洗浄することが可能となり、したがって、高純度のかご型シルセスキオキサンを容易に製造でき、結果として、高純度の組成物を容易に製造できるからである。
【0096】
本開示の第3の組成物が含有するかご型シルセスキオキサンのその他の特徴は、本開示の第1の組成物が含有するかご型シルセスキオキサンの上述した特徴と同様であってよい。
【0097】
本開示の第3の組成物は、リン含有量が20ppm以下であることが好ましい。リン含有量が20ppm以下である場合、本開示の第3の組成物から得られる成形品を、半導体製造プロセスで用いる含フッ素ポリマー成形品として使用した場合であっても、成形品からリンが溶出することがなく、高品質の半導体デバイスを、高い歩留りで製造することができる。
【0098】
本開示の第3の組成物は、アミド溶媒を含有してもよいが、アミド溶媒の含有量が1000ppm未満であることが好ましい。本開示の第3の組成物中に残留するアミド溶媒の含有量を低減することによって、残留アミド溶媒に起因する発泡などの成形不良の発生を抑制しながら、成形品を効率よく生産することができる。また、本開示の第3の組成物から得られる成形品を、半導体製造プロセスで用いる含フッ素ポリマー成形品として使用した場合であっても、成形品から残留アミド溶媒が溶出することがなく、高品質の半導体デバイスを、高い歩留りで製造することができる。
【0099】
アミド溶媒としては、たとえば、かご型シルセスキオキサンなどのケイ素含有化合物を製造するために用いるアミド溶媒として例示したものが挙げられる。アミド溶媒は、フッ素原子を含有しないことが好ましい。
【0100】
本開示の第3の組成物のアミド溶媒の含有量としては、好ましくは300ppm以下であり、より好ましくは60ppm以下であり、最も好ましくは10ppm以下である。アミド溶媒の含有量の下限は、特に限定されず、低いほど好ましいが、たとえば、1ppm以上であってよい。
【0101】
また、本開示の第3の組成物は、フッ素原子を含まない溶媒を含有してもよいが、フッ素原子を含まない溶媒の含有量が1000ppm未満であることが好ましい。本開示の第3の組成物中に残留するフッ素原子を含まない溶媒の含有量を低減することによって、組成物中に残留したフッ素原子を含まない溶媒に起因する発泡などの成形不良の発生を抑制しながら、成形品を効率よく生産することができる。また、本開示の第3の組成物から得られる成形品を、半導体製造プロセスで用いる含フッ素ポリマー成形品として使用した場合であっても、成形品からフッ素原子を含まない溶媒が溶出することがなく、高品質の半導体デバイスを、高い歩留りで製造することができる。
【0102】
フッ素原子を含まない溶媒としては、たとえば、かご型シルセスキオキサンなどのケイ素含有化合物を製造するために用いる溶媒として例示したものが挙げられる。
【0103】
本開示の第3の組成物のフッ素原子を含まない溶媒の含有量としては、好ましくは300ppm以下であり、より好ましくは60ppm以下であり、最も好ましくは10ppm以下である。フッ素原子を含まない溶媒の含有量の下限は、特に限定されず、低いほど好ましいが、たとえば、1ppm以上であってよい。
【0104】
本開示の第1、第2および第3の組成物(本開示において、単に「本開示の組成物」ということがある)のために用いる上記かご型シルセスキオキサンのデンドリマーとしては、一般式(1)において、R1~R8が、下式で表される3価の基Bを含む有機基であるデンドリマーであってもよい。
【0105】
【0106】
式中、L
1およびL
2は、それぞれ独立に、-NH-CO-、-O-CO-、-O-、-CO-、-OCH
2-、または、下記式:
【化32】
で表される2価の基である。L
1およびL
2は、それぞれ独立に、-NH-CO-、または、下記式:
【化33】
で表される2価の基であることが好ましい。
【0107】
上記かご型シルセスキオキサンのデンドリマーとしては、一般式(1)において、上記R1~R8が、いずれも、末端基Tおよび3価の基Bを含む有機基であることが好ましく、3価の基Bが-(CH2)l-NH-CO-(lは1~5の整数)で表される2価の基Aを介してかご型シルセスキオキサンのケイ素原子に結合している有機基であることがより好ましく、3価の基Bが上記の2価の基Aを介してかご型シルセスキオキサンのケイ素原子に結合しており、かつ、末端基Tが3価の基Bを介して2価の基Aに結合している有機基であることがさらに好ましい。複数の3価の基Bが結合して、規則的な繰り返し構造を形成していてもよい。
【0108】
上記かご型シルセスキオキサンのデンドリマーの世代数は、1以上であってよいが、好ましくは2以上であり、より好ましくは3以上であり、好ましくは8以下であり、より好ましくは6以下である。
【0109】
上記の3価の基Bは、式(4-1)または式(4-2)で表されるものが好ましい。
【0110】
【0111】
【0112】
また、本開示の組成物のために用いる上記かご型シルセスキオキサンのハイパーブランチポリマーとしては、一般式(1)において、R1~R8の少なくとも1つが、下式で表される2価の基B1を含む有機基であるハイパーブランチポリマーであってもよい。
【0113】
【0114】
式中、Lは、-NH-CO-、-O-CO-、-O-、-CO-、-OCH
2-、または、下記式:
【化37】
で表される2価の基である。Lは、-NH-CO-、または、下記式:
【化38】
で表される2価の基であることが好ましい。式中、X
3は、上記X
1およびX
2と同じである。式中、X
3は、-NH
2、下記式:
【化39】
で表される基、下記式:
【化40】
で表される基、または、下記式:
【化41】
(式中、Arは置換もしくは非置換のアリール基である。)
で表される基であることが好ましい。
【0115】
上記の2価の基B1は、式(4-3)~式(4-8)で表されるものであってもよい。
【0116】
【0117】
【0118】
式(4-5):
【化44】
(式中、Arは置換もしくは非置換のアリール基である。)
【0119】
【0120】
【0121】
式(4-8):
【化47】
(式中、Arは置換もしくは非置換のアリール基である。)
【0122】
上記かご型シルセスキオキサンのハイパーブランチポリマーとしては、一般式(1)において、R1~R8の少なくとも1つが、下式で表される3価の基B2を含む有機基であるものが好ましく、R1~R8の全てが、下式で表される3価の基B2を含む有機基であるものがより好ましい。
【0123】
【0124】
式中、L
1およびL
2は、それぞれ独立に、-NH-CO-、-O-CO-、-O-、-CO-、-OCH
2-、または、
【化49】
で表される2価の基である。L
1およびL
2は、-NH-CO-または、
【化50】
で表される2価の基であることが好ましい。
【0125】
上記の3価の基B2は、式(4-9)または式(4-10)で表されるものが好ましい。
【0126】
【0127】
【0128】
上記かご型シルセスキオキサンのハイパーブランチポリマーは、2価の基B1または3価の基B2が下記式:
【0129】
【化53】
で表される2価の基A1、または、-(CH
2)
l-NH-CO-(lは1~5の整数)で表される2価の基A2を介してかご型シルセスキオキサンのケイ素原子に結合しているものが好ましく、2価の基B1または3価の基B2が上記2価の基A1またはA2を介してかご型シルセスキオキサンのケイ素原子に結合しており、かつ、末端基Tが2価の基B1または3価の基B2を介して2価の基A1またはA2に結合しているものが好ましい。複数の2価の基B1または3価の基B2が結合していてもよい。
【0130】
溶解性の観点で、上記R1~R8は、2価の基B1および3価の基B2を、合計で1~250個含むものであることが好ましく、1~60個含むものであることがより好ましい。
【0131】
R1~R8としては、例えば、以下の構造を有するものが挙げられる。以下の式中Aは、上記A1またはA2である。式中Bは、3価の基B2である。
【0132】
【0133】
【0134】
【0135】
【0136】
上記の構造は、それぞれ、第2~5世代に相当するハイパーブランチが有する構造である。
【0137】
たとえば、第2世代に相当するハイパーブランチが有する構造は、以下のようなものである。
【化58】
【0138】
式中、A、X1、X2、L1およびL2は、上記のとおりである。
【0139】
上記ケイ素含有化合物の含有量は、含フッ素ポリマー100質量部に対して、好ましくは0.5~100質量部であり、より好ましくは5~50質量部であり、さらに好ましくは5~25質量部である。ケイ素含有化合物が少なすぎると補強性に乏しくなるおそれがあり、ケイ素含有化合物が多すぎると、得られる成形品が硬くてシール性が低下するおそれがある。
上記かご型シルセスキオキサンの含有量は、含フッ素ポリマー100質量部に対して、好ましくは0.5~100質量部であり、より好ましくは5~50質量部であり、さらに好ましくは5~25質量部である。かご型シルセスキオキサンが少なすぎると補強性に乏しくなるおそれがあり、かご型シルセスキオキサンが多すぎると、得られる成形品が硬くてシール性が低下するおそれがある。
【0140】
本開示の組成物は、含フッ素ポリマーを含有する。上記含フッ素ポリマーとしては、シール性、耐薬品性および耐熱性が優れることから、含フッ素エラストマーが好ましい。
【0141】
本開示において、含フッ素エラストマーとは、非晶質含フッ素ポリマーである。「非晶質」とは、含フッ素ポリマーの示差走査熱量測定〔DSC〕(昇温速度10℃/分)あるいは示差熱分析〔DTA〕(昇温速度10℃/分)において現われた融解ピーク(ΔH)の大きさが4.5J/g以下であることをいう。含フッ素エラストマーは、架橋することにより、エラストマー特性を示す。エラストマー特性とは、ポリマーを延伸することができ、ポリマーを延伸するのに必要とされる力がもはや適用されなくなったときに、その元の長さを保持できる特性を意味する。
【0142】
上記含フッ素エラストマーとしては、部分フッ素化エラストマーであってもよいし、パーフルオロエラストマーであってもよいが、耐薬品性、耐熱性がさらに優れている点よりパーフルオロエラストマーを用いることが好ましい。
【0143】
本開示において、部分フッ素化エラストマーとは、フルオロモノマー単位を含み、全重合単位に対するパーフルオロモノマー単位の含有量が90モル%未満の含フッ素ポリマーであって、20℃以下のガラス転移温度を有し、4.5J/g以下の融解ピーク(ΔH)の大きさを有する含フッ素ポリマーである。
【0144】
本開示において、パーフルオロエラストマーとは、全重合単位に対するパーフルオロモノマー単位の含有量が90モル%以上の含フッ素ポリマーであって、20℃以下のガラス転移温度を有し、4.5J/g以下の融解ピーク(ΔH)の大きさを有する含フッ素ポリマーであり、さらに、含フッ素ポリマーに含まれるフッ素原子の濃度が71質量%以上であるポリマーである。本開示において、含フッ素ポリマーに含まれるフッ素原子の濃度は、含フッ素ポリマーを構成する各モノマーの種類と含有量より、含フッ素ポリマーに含まれるフッ素原子の濃度(質量%)を計算により求めるものである。
【0145】
本開示において、パーフルオロモノマーとは、分子中に炭素原子-水素原子結合を含まないモノマーである。上記パーフルオロモノマーは、炭素原子及びフッ素原子の他、炭素原子に結合しているフッ素原子のいくつかが塩素原子で置換されたモノマーであってもよく、炭素原子の他、窒素原子、酸素原子及び硫黄原子を有するものであってもよい。上記パーフルオロモノマーとしては、全ての水素原子がフッ素原子に置換されたモノマーであることが好ましい。上記パーフルオロモノマーには、架橋部位を与えるモノマーは含まれない。
【0146】
上記部分フッ素化エラストマーとしては、ビニリデンフルオライド(VdF)系フッ素ゴム、テトラフルオロエチレン(TFE)/プロピレン(Pr)系フッ素ゴム、テトラフルオロエチレン(TFE)/プロピレン/ビニリデンフルオライド(VdF)系フッ素ゴム、エチレン/ヘキサフルオロプロピレン(HFP)系フッ素ゴム、エチレン/ヘキサフルオロプロピレン(HFP)/ビニリデンフルオライド(VdF)系フッ素ゴム、エチレン/ヘキサフルオロプロピレン(HFP)/テトラフルオロエチレン(TFE)系フッ素ゴム等が挙げられる。なかでも、ビニリデンフルオライド系フッ素ゴムおよびテトラフルオロエチレン/プロピレン系フッ素ゴムからなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0147】
上記ビニリデンフルオライド系フッ素ゴムは、ビニリデンフルオライド45~85モル%と、ビニリデンフルオライドと共重合可能な少なくとも1種の他のモノマー55~15モル%とからなる共重合体であることが好ましい。好ましくは、ビニリデンフルオライド50~80モル%と、ビニリデンフルオライドと共重合可能な少なくとも1種の他のモノマー50~20モル%とからなる共重合体である。
【0148】
本開示において、含フッ素ポリマーを構成する各モノマーの含有量は、NMR、FT-IR、元素分析、蛍光X線分析をモノマーの種類によって適宜組み合わせることで算出できる。
【0149】
上記ビニリデンフルオライドと共重合可能な少なくとも1種の他のモノマーとしては、TFE、HFP、フルオロアルキルビニルエーテル、クロロトリフルオロエチレン(CTFE)、トリフルオロエチレン、トリフルオロプロピレン、ペンタフルオロプロピレン、トリフルオロブテン、テトラフルオロイソブテン、ヘキサフルオロイソブテン、フッ化ビニル、一般式(11):CHX11=CX11Rf11(式中、2つのX11のうち、一方がHであり、他方がFであり、Rf11は炭素数1~12の直鎖または分岐したフルオロアルキル基)で表されるフルオロモノマー、一般式(12):CH2=CH-(CF2)n-X12(式中、X12はHまたはFであり、nは3~10の整数である。)で表されるフルオロモノマー;架橋部位を与えるモノマー;エチレン、プロピレン、アルキルビニルエーテル等の非フッ素化モノマーが挙げられる。これらをそれぞれ単独で、または、任意に組み合わせて用いることができる。これらのなかでも、TFE、HFP、フルオロアルキルビニルエーテルおよびCTFEからなる群より選択される少なくとも1種を用いることが好ましい。
【0150】
上記フルオロアルキルビニルエーテルとしては、
一般式(13):CF2=CF-ORf13
(式中、Rf13は、炭素数1~8のパーフルオロアルキル基を表す。)で表されるフルオロモノマー、
一般式(14):CF2=CFOCF2ORf14
(式中、Rf14は炭素数1~6の直鎖または分岐状パーフルオロアルキル基、炭素数5~6の環式パーフルオロアルキル基、1~3個の酸素原子を含む炭素数2~6の直鎖または分岐状パーフルオロオキシアルキル基である)で表されるフルオロモノマー、および、
一般式(15):CF2=CFO(CF2CF(Y15)O)m(CF2)nF
(式中、Y15はフッ素原子またはトリフルオロメチル基を表す。mは1~4の整数である。nは1~4の整数である。)で表されるフルオロモノマー
からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましく、一般式(13)で表されるフルオロモノマーがより好ましい。
【0151】
ビニリデンフルオライド系フッ素ゴムの具体例としては、VdF/HFP系ゴム、VdF/HFP/TFE系ゴム、VdF/CTFE系ゴム、VdF/CTFE/TFE系ゴム、VdF/一般式(11)で表されるフルオロモノマー系ゴム、VdF/一般式(11)で表されるフルオロモノマー/TFE系ゴム、VdF/パーフルオロ(メチルビニルエーテル)〔PMVE〕系ゴム、VdF/PMVE/TFE系ゴム、VdF/PMVE/TFE/HFP系ゴム等が挙げられる。VdF/一般式(11)で表されるフルオロモノマー系ゴムとしては、VdF/CH2=CFCF3系ゴムが好ましく、VdF/一般式(11)で表されるフルオロモノマー/TFE系ゴムとしては、VdF/TFE/CH2=CFCF3系ゴムが好ましい。
【0152】
上記VdF/CH2=CFCF3系ゴムは、VdF40~99.5モル%、および、CH2=CFCF30.5~60モル%からなる共重合体であることが好ましく、VdF50~85モル%、および、CH2=CFCF315~50モル%からなる共重合体であることがより好ましい。
【0153】
上記テトラフルオロエチレン/プロピレン系フッ素ゴムは、テトラフルオロエチレン45~70モル%、プロピレン55~30モル%、および、架橋部位を与えるフルオロモノマー0~5モル%からなる共重合体であることが好ましい。
【0154】
上記含フッ素エラストマーは、パーフルオロエラストマーであってもよい。上記パーフルオロエラストマーとしては、TFEを含むパーフルオロエラストマー、例えばTFE/一般式(13)、(14)または(15)で表されるフルオロモノマー共重合体、および、TFE/一般式(13)、(14)または(15)で表されるフルオロモノマー/架橋部位を与えるモノマー共重合体からなる群より選択される少なくとも1種が好ましい。
【0155】
その組成は、TFE/PMVE共重合体の場合、好ましくは、45~90/10~55(モル%)であり、より好ましくは55~80/20~45であり、さらに好ましくは55~70/30~45である。
【0156】
TFE/PMVE/架橋部位を与えるモノマー共重合体の場合、好ましくは45~89.9/10~54.9/0.01~4(モル%)であり、より好ましくは55~77.9/20~49.9/0.1~3.5であり、さらに好ましくは55~69.8/30~44.8/0.2~3である。
【0157】
TFE/炭素数が4~12の一般式(13)、(14)または(15)で表されるフルオロモノマー共重合体の場合、好ましくは50~90/10~50(モル%)であり、より好ましくは60~88/12~40であり、さらに好ましくは65~85/15~35である。
【0158】
TFE/炭素数が4~12の一般式(13)、(14)または(15)で表されるフルオロモノマー/架橋部位を与えるモノマー共重合体の場合、好ましくは50~89.9/10~49.9/0.01~4(モル%)であり、より好ましくは60~87.9/12~39.9/0.1~3.5であり、さらに好ましくは65~84.8/15~34.8/0.2~3である。
これらの組成の範囲を外れると、ゴム弾性体としての性質が失われ、樹脂に近い性質となる傾向がある。
【0159】
上記パーフルオロエラストマーとしては、TFE/一般式(15)で表されるフルオロモノマー/架橋部位を与えるモノマー共重合体、TFE/一般式(15)で表されるフルオロモノマー共重合体、TFE/一般式(13)で表されるフルオロモノマー共重合体、および、TFE/一般式(13)で表されるフルオロモノマー/架橋部位を与えるモノマー共重合体からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0160】
上記パーフルオロエラストマーとしては、国際公開第97/24381号、特公昭61-57324号公報、特公平4-81608号公報、特公平5-13961号公報等に記載されているパーフルオロエラストマーも挙げることができる。
【0161】
架橋部位を与えるモノマーとは、架橋剤により架橋を形成するための架橋部位を含フッ素ポリマーに与える架橋性基を有するモノマー(キュアサイトモノマー)である。
【0162】
架橋部位を与えるモノマーとしては、
一般式(16):CX4
2=CX5Rf
2X6
(式中、X4、X5は、それぞれ独立に、H、Fまたは炭素数1~5のアルキル基であり、Rf
2は1個以上のエーテル結合性酸素原子を有していてもよく、芳香環を有していてもよい、水素原子の一部または全部がフッ素原子で置換されていてもよい直鎖状または分岐鎖状のアルキレン基またはオキシアルキレン基であり、X6はヨウ素原子、臭素原子、ニトリル基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、水酸基、ビニル基、アジド基、スルホニルアジド基、カルボニルアジド基またはアルキン基である)で表されるモノマーが挙げられる。アルキン基は、エチニル基であってよい。
【0163】
架橋部位を与えるモノマーとしては、なかでも、
一般式(17):CX16
2=CX16-Rf16CHR16X17
(式中、X16は、それぞれ独立に、水素原子、フッ素原子またはCH3、Rf16は、フルオロアルキレン基、パーフルオロアルキレン基、フルオロ(ポリ)オキシアルキレン基またはパーフルオロ(ポリ)オキシアルキレン基、R16は、水素原子またはCH3、X17は、ヨウ素原子または臭素原子である)で表されるフルオロモノマー、
一般式(18):CX16
2=CX16-Rf17X17
(式中、X16は、それぞれ独立に、水素原子、フッ素原子またはCH3、Rf17は、フルオロアルキレン基、パーフルオロアルキレン基、フルオロ(ポリ)オキシアルキレン基またはパーフルオロ(ポリ)オキシアルキレン基、X17は、ヨウ素原子または臭素原子である)で表されるフルオロモノマー、
一般式(19):CF2=CFO(CF2CF(CF3)O)m(CF2)n-X18
(式中、mは0~5の整数、nは1~3の整数、X18は、シアノ基、アジド基、スルホニルアジド基、カルボニルアジド基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、アルキン基、ヨウ素原子、臭素原子、または、-CH2Iである)で表されるフルオロモノマー、
一般式(20):CH2=CFCF2O(CF(CF3)CF2O)m(CF(CF3))n-X19
(式中、mは0~5の整数、nは1~3の整数、X19は、シアノ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、ヨウ素原子、臭素原子、またはCH2OHである)で表されるフルオロモノマー、および、
一般式(21):CR20
2=CR20-Z-CR20=CR20
2
(式中、R20は、それぞれ独立に、水素原子または炭素数1~5のアルキル基である。Zは、直鎖または分岐状で酸素原子を有していてもよい、炭素数1~18のアルキレン基、炭素数3~18のシクロアルキレン基、少なくとも部分的にフッ素化している炭素数1~10のアルキレン基もしくはオキシアルキレン基、または、
-(Q)p-CF2O-(CF2CF2O)m(CF2O)n-CF2-(Q)p-
(式中、Qはアルキレン基またはオキシアルキレン基である。pは0または1である。m/nが0.2~5である。)で表され、分子量が500~10000である(パー)フルオロポリオキシアルキレン基である。)で表されるモノマーからなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0164】
X16は、フッ素原子であることが好ましい。Rf16およびRf17は炭素数が1~5のパーフルオロアルキレン基であることが好ましい。R16は、水素原子であることが好ましい。X18は、シアノ基、アルコキシカルボニル基、ヨウ素原子、臭素原子、または、-CH2Iであることが好ましい。X19は、シアノ基、アルコキシカルボニル基、ヨウ素原子、臭素原子、または-CH2OHであることが好ましい。
【0165】
架橋部位を与えるモノマーとしては、CF2=CFOCF2CF(CF3)OCF2CF2CN、CF2=CFOCF2CF(CF3)OCF2CF2COOH、CF2=CFOCF2CF(CF3)OCF2CF2CH2I、CF2=CFOCF2CF2CH2I、CH2=CFCF2OCF(CF3)CF2OCF(CF3)CN、CH2=CFCF2OCF(CF3)CF2OCF(CF3)COOH、CH2=CFCF2OCF(CF3)CF2OCF(CF3)CH2OH、CH2=CHCF2CF2I、CH2=CH(CF2)2CH=CH2、CH2=CH(CF2)6CH=CH2、および、CF2=CFO(CF2)5CNからなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましく、CF2=CFOCF2CF(CF3)OCF2CF2CNおよびCF2=CFOCF2CF2CH2Iからなる群より選択される少なくとも1種であることがより好ましい。
【0166】
上記含フッ素エラストマーは、高温における圧縮永久歪特性に優れる点から、ガラス転移温度が-70℃以上であることが好ましく、-60℃以上であることがより好ましく、-50℃以上であることがさらに好ましい。また、耐寒性が良好であるという点から、5℃以下であることが好ましく、0℃以下であることがより好ましく、-3℃以下であることがさらに好ましい。
【0167】
上記ガラス転移温度は、示差走査熱量計(メトラー・トレド社製、DSC822e)を用い、試料10mgを10℃/minで昇温することによりDSC曲線を得て、DSC曲線の二次転移前後のベースラインの延長線と、DSC曲線の変曲点における接線との2つの交点の中点を示す温度として求めることができる。
【0168】
上記含フッ素エラストマーは、耐熱性が良好な点で、170℃におけるムーニー粘度ML(1+20)が30以上であることが好ましく、40以上であることがより好ましく、50以上であることがさらに好ましい。また、加工性が良好な点で、150以下であることが好ましく、120以下であることがより好ましく、110以下であることがさらに好ましい。
【0169】
上記含フッ素エラストマーは、耐熱性が良好な点で、140℃におけるムーニー粘度ML(1+20)が30以上であることが好ましく、40以上であることがより好ましく、50以上であることがさらに好ましい。また、加工性が良好な点で、180以下であることが好ましく、150以下であることがより好ましく、110以下であることがさらに好ましい。
【0170】
上記含フッ素エラストマーは、耐熱性が良好な点で、100℃におけるムーニー粘度ML(1+10)が10以上であることが好ましく、20以上であることがより好ましく、30以上であることがさらに好ましい。また、加工性が良好な点で、120以下であることが好ましく、100以下であることがより好ましく、80以下であることがさらに好ましい。
【0171】
上記ムーニー粘度は、ALPHA TECHNOLOGIES社製 ムーニー粘度計MV2000E型を用いて、170℃または140℃、100℃において、JIS K6300に従い測定することができる。
【0172】
上述した部分フッ素化エラストマーおよびパーフルオロエラストマーは、常法により製造することができるが、得られる重合体の分子量分布が狭く、分子量の制御が容易である点、末端にヨウ素原子または臭素原子を導入することができる点から、連鎖移動剤としてヨウ素化合物または臭素化合物を使用することもできる。ヨウ素化合物または臭素化合物を使用して行う重合方法としては、例えば、実質的に無酸素状態で、ヨウ素化合物または臭素化合物の存在下に、加圧しながら水媒体中で乳化重合を行う方法が挙げられる(ヨウ素移動重合法)。使用するヨウ素化合物または臭素化合物の代表例としては、例えば、一般式:
R21IxBry
(式中、xおよびyはそれぞれ0~2の整数であり、かつ1≦x+y≦2を満たすものであり、R21は炭素数1~16の飽和もしくは不飽和のフルオロ炭化水素基またはクロロフルオロ炭化水素基、または炭素数1~3の炭化水素基であり、酸素原子を含んでいてもよい)で表される化合物が挙げられる。ヨウ素化合物または臭素化合物を使用することによって、ヨウ素原子または臭素原子が重合体に導入され、架橋点として機能する。
【0173】
ヨウ素化合物および臭素化合物としては、例えば1,3-ジヨードパーフルオロプロパン、2-ヨードパーフルオロプロパン、1,3-ジヨード-2-クロロパーフルオロプロパン、1,4-ジヨードパーフルオロブタン、1,5-ジヨード-2,4-ジクロロパーフルオロペンタン、1,6-ジヨードパーフルオロヘキサン、1,8-ジヨードパーフルオロオクタン、1,12-ジヨードパーフルオロドデカン、1,16-ジヨードパーフルオロヘキサデカン、ジヨードメタン、1,2-ジヨードエタン、1,3-ジヨード-n-プロパン、CF2Br2、BrCF2CF2Br、CF3CFBrCF2Br、CFClBr2、BrCF2CFClBr、CFBrClCFClBr、BrCF2CF2CF2Br、BrCF2CFBrOCF3、1-ブロモ-2-ヨードパーフルオロエタン、1-ブロモ-3-ヨードパーフルオロプロパン、1-ブロモ-4-ヨードパーフルオロブタン、2-ブロモ-3-ヨードパーフルオロブタン、3-ブロモ-4-ヨードパーフルオロブテン-1、2-ブロモ-4-ヨードパーフルオロブテン-1、ベンゼンのモノヨードモノブロモ置換体、ジヨードモノブロモ置換体、ならびに(2-ヨードエチル)および(2-ブロモエチル)置換体等が挙げられ、これらの化合物は、単独で使用してもよく、相互に組み合わせて使用することもできる。
【0174】
これらのなかでも、重合反応性、架橋反応性、入手容易性等の点から、1,4-ジヨードパーフルオロブタン、1,6-ジヨードパーフルオロヘキサン、2-ヨードパーフルオロプロパンを用いるのが好ましい。
【0175】
上記含フッ素ポリマーは、シアノ基を有することが好ましい。特に、かご型シルセスキオキサンを架橋剤として用いる場合、上記含フッ素ポリマーは、シアノ基を有することが好ましい。含フッ素ポリマーがシアノ基を有することによって、上記かご型シルセスキオキサンが架橋剤としてより好適に作用し、さらに、耐熱性に優れる成形品を得ることができる。
【0176】
上記シアノ基を有する含フッ素ポリマーとしては、主鎖末端および/または側鎖にシアノ基(-CN基)を有する含フッ素エラストマーであることが好ましい。
【0177】
主鎖末端および/または側鎖にシアノ基(-CN基)を有する含フッ素エラストマーとしては、たとえば、パーフルオロエラストマーおよび部分フッ素化エラストマーがあげられる。
【0178】
主鎖末端および/または側鎖にシアノ基(-CN基)を有するパーフルオロエラストマーとしては、上述した、TFE/一般式(13)、(14)または(15)で表されるフルオロモノマー/架橋部位を与えるモノマー共重合体のうち、架橋部位を与えるモノマーが、シアノ基(-CN基)を有するモノマーである共重合体が挙げられる。この場合、シアノ基(-CN基)を有するモノマー単位の含有量は、良好な架橋特性および耐熱性の観点から、TFE単位と一般式(13)、(14)および(15)で表されるフルオロモノマー単位との合計量に対して、0.1~5モル%であってよく、0.3~3モル%であってよい。さらに好適な組成は、上述したとおりである。
【0179】
また、シアノ基(-CN基)を有するモノマーとしては、たとえば、
式:CY1
2=CY1(CF2)n-CN
(式中、Y1は、それぞれ独立に、水素原子またはフッ素原子、nは1~8の整数である)
式:CF2=CFCF2Rf8-CN
(式中、Rf8は-(OCF2)n-または-(OCF(CF3))n-であり、nは0~5の整数である)
式:CF2=CFCF2(OCF(CF3)CF2)m(OCH2CF2CF2)nOCH2CF2-CN
(式中、mは0~5の整数、nは0~5の整数である)
式:CF2=CFCF2(OCH2CF2CF2)m(OCF(CF3)CF2)nOCF(CF3)-CN
(式中、mは0~5の整数、nは0~5の整数である)
式:CF2=CF(OCF2CF(CF3))mO(CF2)n-CN
(式中、mは0~5の整数、nは1~8の整数である)
式:CF2=CF(OCF2CF(CF3))m-CN
(式中、mは1~5の整数)
式:CF2=CFOCF2(CF(CF3)OCF2)nCF(-CN)CF3
(式中、nは1~4の整数)
式:CF2=CFO(CF2)nOCF(CF3)-CN
(式中、nは2~5の整数)
式:CF2=CFO(CF2)n-(C6H4)-CN
(式中、nは1~6の整数)
式:CF2=CF(OCF2CF(CF3))nOCF2CF(CF3)-CN
(式中、nは1~2の整数)
式:CH2=CFCF2O(CF(CF3)CF2O)nCF(CF3)-CN
(式中、nは0~5の整数)、
式:CF2=CFO(CF2CF(CF3)O)m(CF2)n-CN
(式中、mは0~5の整数、nは1~3の整数である)
式:CH2=CFCF2OCF(CF3)OCF(CF3)-CN
式:CH2=CFCF2OCH2CF2-CN
式:CF2=CFO(CF2CF(CF3)O)mCF2CF(CF3)-CN
(式中、mは0以上の整数である)
式:CF2=CFOCF(CF3)CF2O(CF2)n-CN
(式中、nは1以上の整数)
式:CF2=CFOCF2OCF2CF(CF3)OCF2-CN
で表されるモノマーなどがあげられ、これらをそれぞれ単独で、または任意に組み合わせて用いることができる。
【0180】
上記の中でも、
式:CF2=CF(OCF2CF(CF3))mO(CF2)n-CN
(式中、mは0~5の整数、nは1~8の整数である)で表されるモノマーが好ましく、CF2=CFOCF2CF(CF3)OCF2CF2CNがより好ましい。
【0181】
これらのパーフルオロエラストマーは、常法により製造することができる。
【0182】
かかるパーフルオロエラストマーの具体例としては、国際公開第97/24381号、特公昭61-57324号公報、特公平4-81608号公報、特公平5-13961号公報などに記載されているフッ素ゴムなどがあげられる。
【0183】
主鎖末端および/または側鎖にシアノ基(-CN基)を有する部分フッ素化エラストマーとしては、ビニリデンフルオライド(VdF)系フッ素ゴム、テトラフルオロエチレン(TFE)/プロピレン系フッ素ゴム、テトラフルオロエチレン(TFE)/プロピレン/ビニリデンフルオライド(VdF)系フッ素ゴム、エチレン/ヘキサフルオロエチレン(HFP)系フッ素ゴム、エチレン/ヘキサフルオロプロピレン(HFP)/ビニリデンフルオライド(VdF)系フッ素ゴム、エチレン/ヘキサフルオロプロピレン(HFP)/テトラフルオロエチレン(TFE)系フッ素ゴム、フルオロシリコーン系フッ素ゴム、またはフルオロホスファゼン系フッ素ゴムなどがあげられ、これらをそれぞれ単独で、または本開示の効果を損なわない範囲で任意に組み合わせて用いることができる。
【0184】
ビニリデンフルオライド系フッ素ゴムとは、ビニリデンフルオライド45~85モル%と、ビニリデンフルオライドと共重合可能な少なくとも1種の他のモノマー55~15モル%とからなる含フッ素共重合体をいう。好ましくは、ビニリデンフルオライド50~80モル%と、ビニリデンフルオライドと共重合可能な少なくとも1種の他のモノマー50~20モル%とからなる含フッ素共重合体をいう。
【0185】
ビニリデンフルオライドと共重合可能な少なくとも1種の他のモノマーとしては、たとえば、TFE、CTFE、トリフルオロエチレン、HFP、トリフルオロプロピレン、テトラフルオロプロピレン、ペンタフルオロプロピレン、トリフルオロブテン、テトラフルオロイソブテン、パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)(PAVE)、フッ化ビニルなどのフルオロモノマー、エチレン、プロピレン、アルキルビニルエーテルなどの非フッ素化モノマーがあげられる。これらをそれぞれ単独で、または、任意に組み合わせて用いることができる。これらのなかでも、TFE、HFP、パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)が好ましい。
【0186】
具体的なゴムとしては、VdF-HFP系ゴム、VdF-HFP-TFE系ゴム、VdF-CTFE系ゴム、VdF-CTFE-TFE系ゴムなどがあげられる。
【0187】
これらの部分フッ素化エラストマーは、常法により製造することができる。
【0188】
また、含フッ素エラストマーとして、エラストマー性含フッ素ポリマー鎖セグメントと非エラストマー性含フッ素ポリマー鎖セグメントからなる熱可塑性フッ素ゴムを用いてもよい。
【0189】
架橋剤は必須成分ではない。しかし、上記組成物は、架橋剤をさらに含有してもよい。上記架橋剤としては、パーオキサイド架橋、ポリオール架橋、ポリアミン架橋、トリアジン架橋、オキサゾール架橋、イミダゾール架橋、および、チアゾール架橋において用いる架橋剤が挙げられる。上記含フッ素ポリマーが主鎖末端および/または側鎖にシアノ基(-CN基)を有する含フッ素エラストマーである場合、架橋剤としては、オキサゾール架橋剤、イミダゾール架橋剤およびチアゾール架橋剤からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0190】
パーオキサイド架橋において用いる架橋剤は、熱や酸化還元系の存在下で容易にパーオキシラジカルを発生し得る有機過酸化物であればよく、具体的には、たとえば1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)-3,5,5-トリメチルシクロヘキサン、2,5-ジメチルヘキサン-2,5-ジヒドロパーオキサイド、ジ-t-ブチルパーオキサイド(パーブチルD)、t-ブチルクミルパーオキサイド(パーブチルC)、ジクミルパーオキサイド(パークミルD、パークミルD-40、パークミルD-40MB(T))、α,α-ビス(t-ブチルパーオキシ)-p-ジイソプロピルベンゼン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキサン(パーヘキサ25B、パーヘキサ25B-40)、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)-ヘキシン-3(パーヘキシン25B、パーヘキシン25B-40)、ベンゾイルパーオキサイド、t-ブチルパーオキシベンゼン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン(パーヘキサ25Z)、t-ブチルパーオキシマレイン酸(t-ブチルMA)、t-ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート(パーブチルI-75)、メチルエチルケトンパーオキサイド(パーメックD(DR)、パーメックH(HR、HY)、パーメックN(NR、NY)、パーメックS(SR)、パーメックF(FR)、パーメックG(GR、GY))、シクロヘキサノンパーオキサイド(パーヘキサH)、アセチルアセトンパーオキサイド(パーキュアーAH、AL)、1,1-ジ(t-ヘキシルパーオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン(パーヘキサTMH)、1,1-ジ(t-ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン(パーヘキサHC)、1,1-ジ(t-ブチルパーオキシ)-2-メチルシクロヘキサン(パーヘキサMC)、1,1-ジ(t-ブチルパーオキシ)シクロヘキサン(パーヘキサC-80(S)、パーヘキサC-75(EB)、パーヘキサC(C)、パーヘキサC-40、パーヘキサC-40MB(S))、2,2-ジ(t-ブチルパーオキシ)ブタン(パーヘキサ22)、4,4-ジ-(t-ブチルパーオキシ)ペンタン酸ブチル(パーヘキサV、パーヘキサV-40(F))、2,2-ジ(4,4-ジ-(t-ブチルパーオキシ)シクロヘキシル)プロパン(パーテトラA)、p-メンタンヒドロパーオキサイド(パーメンタH)、ジイソプロピルベンゼンヒドロパーオキサイド(パークミルP)、1,1,3,3-テトラメチルブチルヒドロパーオキサイド(パーオクタH)、クメンヒドロパーオキサイド(パークミルH-80)、t-ブチルヒドロパーオキサイド(パーブチルH-69)、ジ(2-t-ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン(パーブチルP、パーブチルP-40、ペロキシモンF-40、パーブチルP-40MB(K))、ジ-t-ヘキシルパーオキサイド(パーヘキシルD)、ジイソブチリルパーオキサイド(パーロイルIB)、ジ(3,5,5-トリメチルヘキサノイル)パーオキサイド(パーロイル355(S))、ジラウロイルパーオキサイド(パーロイルL)、ジコハク酸パーオキサイド(パーロイルSA)、ジ-(3-メチルベンゾイル)パーオキサイド、ベンゾイル(3-メチルベンゾイル)パーオキサイド、及び、ジベンゾイルパーオキサイドの混合物(ナイパーBMT-K40、ナイパーBMT-M)、ジベンゾイルパーオキサイド(ナイパーBW、ナイパーBO、ナイパーFF、ナイパーBS、ナイパーE、ナイパーNS)、ジ(4-メチルベンゾイル)パーオキサイド(ナイパーPMB)、ジ-n-プロピルパーオキシジカーボネート(パーロイルNPP-50M)、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート(パーロイルIPP-50、パーロイルIPP-27)、ジ(4-t-ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート(パーロイルTCP)、ジ(2-エチルヘキシル)パーオキシジカーボネート(パーロイルOPP)、ジ-sec-ブチルパーオキシジカーボネート(パーロイルSBP)、クミルパーオキシネオデカノエート(パークミルND、パークミルND-50E)、1,1,3,3-テトラメチルブチルパーオキシネオデカノエート(パーオクタND、パーオクタND-50E)、t-ヘキシルパーオキシネオデカノエート(パーヘキシルND、パーヘキシルND-50E)、t-ブチルパーオキシネオデカノエート(パーブチルND、パーブチルND-50E)、t-ブチルパーオキシネオヘプタノエート(パーブチルNHP)、t-ヘキシルパーオキシピバレート(パーヘキシルPV、パーヘキシルPV-50E)、t-ブチルパーオキシピバレート(パーブチルPV、パーブチルPV-40E)、1,1,3,3-テトラメチルブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート(パーオクタO)、2,5-ジメチル-2,5-ジ(2-エチルヘキサノイルパーオキシ)ヘキサン(パーヘキサ25O)、t-ヘキシルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート(パーヘキシルO、パーキュアーHO(N))、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート(パーブチルO、パーキュアーO)、t-ヘキシルパーオキシイソプロピルモノカーボネート(パーヘキシルI)、t-ブチルパーオキシ-3,5,5-トリメチルヘキサノエート(パーブチル355)、t-ブチルパーオキシラウレート(パーブチルL)、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキシルモノカーボネート(パーブチルE)、t-ヘキシルパーオキシベンゾエート(パーヘキシルZ)、t-ブチルパーオキシアセテート(パーブチルA)、t-ブチルパーオキシ-3-メチルベンゾエート及びt-ブチルパーオキシベンゾエートの混合物(パーブチルZT)、t-ブチルパーオキシベンゾエート(パーブチルZ)、t-ブチルパーオキシアリルモノカーボネート(ペロマーAC)、3,3’,4,4’-テトラ(t-ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン(BTTB-25)、2,3-ジメチル-2,3-ジフェニルブタン(ノフマーBC-90)などをあげることができる。なかでも、好ましいものは、ジアルキルタイプのものである。さらに、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキサンが特に好ましい。一般に活性-O-O-の量、分解温度などを考慮して有機過酸化物の種類並びに使用量が選ばれる。
【0191】
また、この場合に用いることのできる架橋助剤としては、パーオキシラジカルとポリマーラジカルに対して反応活性を有する化合物であればよく、たとえば-CH=CH2、-CH2CH=CH2、-CF=CF2、-C(CF3)=CF2、-C(CH3)=CF2、-CF=CF(CF3)、-CF=CF(CH3)、-C(C6H5)=CF2、-CF=CF(C6H5)、-CH=CF2、-CF=CHF、-C(CF3)=CHF、-CF=CH(CF3)、-CH=CF(CF3)などの官能基を有する多官能性化合物があげられる(各式中の「C6H5」はフェニル基を表す)。具体的には、たとえばトリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート(TAIC)、トリアクリルホルマール、トリアリルトリメリテート、N,N’-n-フェニレンビスマレイミド、ジプロパギルテレフタレート、ジアリルフタレート、テトラアリルテレフタレートアミド、トリアリルホスフェート、ビスマレイミド、フッ素化トリアリルイソシアヌレート(1,3,5-トリス(2,3,3-トリフルオロ-2-プロペニル)-1,3,5-トリアジン2,4,6-トリオン)、トリス(ジアリルアミン)-S-トリアジン、亜リン酸トリアリル、N,N-ジアリルアクリルアミド、1,6-ジビニルドデカフルオロヘキサンなどがあげられる。
【0192】
また、パーオキサイド架橋剤とともに用いる架橋助剤としては、一般式(31):
【化59】
(式中、6つのR
31は、それぞれ独立に、H、ハロゲン原子、または、エーテル結合が挿入されていてもよい、任意選択的にハロゲン化された1~5の炭素原子を有する基であり、Z
31は、ヘテロ原子を任意選択的に含有する、線状若しくは分岐状の炭素数1~18の任意選択的にハロゲン化されたアルキレン基、シクロアルキレン基、または、(パー)フルオロポリオキシアルキレン基)で表される化合物を挙げることもできる。
【0193】
一般式(31)で表される化合物としては、一般式(32):
【化60】
(式中、jは、2~10の整数、好ましくは4~8の整数であり、4つのR
32は、それぞれ独立に、H、Fまたは炭素数1~5のアルキル基若しくは(パー)フルオロアルキル基である)で表される化合物、一般式(33):
【化61】
(式中、Y
31は、それぞれ独立して、F、ClまたはHであり、Y
32は、それぞれ独立して、F、Cl、HまたはOR
33(ここで、R
33は、部分的に、実質的にまたは完全にフッ化若しくは塩素化されていてもよい、分岐若しくは直鎖のアルキル基である)であり、Z
33は、エーテル結合が挿入されていてもよい、任意選択的にフッ素化された、2~10個の炭素原子を有する二価の基であり、好ましくはZ
33は、mが3~5の整数である、-(CF
2)
m-基であり、一般式(33)で表される化合物は、好ましくはF
2C=CF-O-(CF
2)
5-O-CF=CF
2である)で表される化合物、一般式(34):
【化62】
(式中、Y
31、Y
32およびZ
33は、上記のとおりであり、R
34は、それぞれ独立に、H、Fまたは炭素数1~5のアルキル基若しくは(パー)フルオロアルキル基である)で表される化合物などを挙げることができる。
【0194】
架橋剤、または、パーオキサイド架橋剤とともに用いる架橋助剤としては、一般式(35):
【化63】
【0195】
(式中、R35~R37は、それぞれ独立に、水素原子、フッ素原子、アルキル基、フッ素化アルキル基、または、置換もしくは非置換のアリール基であり、R35~R37の少なくとも1つは、フッ素原子またはフッ素原子を含む基である。mは1~5の整数である。mが2以上である場合、m個のR35~R37は、それぞれ、同じであっても、異なっていてもよい。ベンゼン環の水素原子は、置換されていてもよい。)で表される構造を、少なくとも1つ有する化合物を挙げることもできる。mが1の場合は、該構造を2以上有することが好ましい。
【0196】
一般式(36)で表される構造を有する化合物としては、一般式(36):
【化64】
【0197】
(式中、R
35~R
37は、上記のとおり。pは0~2の整数であり、nは2~6の整数である。)で表される化合物、一般式(37):
【化65】
【0198】
(式中、R35~R37は、上記のとおり。R38は、単結合手、-SO2-、-O-、-S-、-CO-、ヘテロ原子含有基、置換もしくは非置換のアルキレン基、置換もしくは非置換のシクロアルキレン基または置換もしくは非置換のアリーレン基である。mは1~5の整数である。これらの基は一部又は全部がフッ素化されていてもよい。)で表される化合物などを挙げることができる。
【0199】
ヘテロ原子含有基としては、ヘテロ原子を含有する2価の基であれば、特に限定されない。ヘテロ原子としては、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、ホウ素原子、リン原子が例示できる。
【0200】
ポリオール架橋に用いる架橋剤としては、ビスフェノールA、ビスフェノールAFなどの多価アルコール化合物があげられる。
【0201】
ポリアミン架橋に用いる架橋剤としては、ヘキサメチレンジアミンカルバメート、N,N’-ジシンナミリデン-1,6-ヘキサンジアミン、4,4’-ビス(アミノシクロヘキシル)メタンカルバメートなどの多価アミン化合物があげられる。
【0202】
トリアジン架橋に用いる架橋剤としては、テトラフェニルスズ、トリフェニルスズなどの有機スズ化合物があげられる。
【0203】
オキサゾール架橋、イミダゾール架橋、チアゾール架橋に使用する架橋剤としては、たとえば一般式(41):
【0204】
【0205】
(式中、R41は-SO2-、-O-、-CO-、炭素数1~6のアルキレン基、炭素数1~10のパーフルオロアルキレン基または単結合手、または、
【0206】
【0207】
で示される基であり、R42およびR43は一方が-NH2であり他方が-NHR44、-NH2、-OHまたは-SHであり、R44は水素原子、フッ素原子または一価の有機基であり、好ましくはR42が-NH2でありR43が-NHR44である。炭素数1~6のアルキレン基の好ましい具体例としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基などをあげることができ、炭素数1~10のパーフルオロアルキレン基としては、
【0208】
【0209】
などがあげられる。なお、これらの化合物は、特公平2-59177号公報、特開平8-120146号公報などで、ビスジアミノフェニル化合物の例示として知られているものである)で表されるビスジアミノフェニル系架橋剤、ビスアミノフェノール系架橋剤、ビスアミノチオフェノール系架橋剤、一般式(42):
【0210】
【化69】
(R
41は、上記のとおり、R
45は、それぞれ独立に、以下の基のいずれかである。)
【化70】
【0211】
で表されるビスアミドラゾン系架橋剤、一般式(43):
【0212】
【0213】
(式中、Rf41は炭素数1~10のパーフルオロアルキレン基である)で表されるアミドラゾン系架橋剤、または一般式(44):
【0214】
【0215】
(式中、nは1~10の整数である)で表されるビスアミドオキシム系架橋剤、一般式(45):HN=CR
45R
46
(式中、R
45は、H、NH
2、およびNHR
47からなる群から選択され、R
46は、Ph、SO
2H、NR
48R
49、2-ピリジン、およびCH
2CONH
2からなる群から選択され、R
47は、Ph、NH
2、およびCNからなる群から選択され、R
48は、H、NHPh、CH
2CONH
2、炭素数1~8の直鎖アルキル基、および炭素数1~8の分枝アルキル基からなる群から選択され、かつ、R
49は、Ph、COOC(CH
3)
3、NH
2、CH
2COOH、CSNH
2、CNHNH
3
+Cl
-、p-フェニルCN、
【化73】
および、COPhからなる群から選択される)で表される化合物などがあげられる。これらのビスアミノフェノール系架橋剤、ビスアミノチオフェノール系架橋剤またはビスジアミノフェニル系架橋剤などは従来シアノ基を架橋点とする架橋系に使用していたものであるが、カルボキシル基およびアルコキシカルボニル基とも反応し、オキサゾール環、チアゾール環、イミダゾール環を形成し、架橋物を与える。
【0216】
また、架橋剤としては、一般式(46):X41-(CH2)n-R50-(CH2)m-X41(式中、X41は、それぞれ独立に、アルキン基、ニトリル基またはY41
PN3(Y41は、SO、SO2、C6H4またはCOであり、pは0または1である)であり、n、mは独立して1~4の整数であり、R50は、
i)炭素数3~10のフルオロアルキレン基、
ii)炭素数3~10のフルオロアルコキシレン基、
iii)置換アリーレン基、
iv)フッ化ビニリデンおよびパーフルオロ(メチルビニルエーテル)の共重合単位を含むオリゴマー、
v)フッ化ビニリデンおよびヘキサフルオロプロピレンの共重合単位を含むオリゴマー、
vi)テトラフルオロエチレンおよびパーフルオロ(メチルビニルエーテル)の共重合単位を含むオリゴマー、および、
vii)テトラフルオロエチレンおよび炭化水素オレフィンの共重合単位を含むオリゴマーからなる群から選択される)で表される架橋剤を挙げることもできる。この架橋剤は、ニトリル基、アジド基、スルホニルアジド基、カルボニルアジド基またはアルキン基を有する含フッ素エラストマーとともに用いることが好ましい。たとえば、含フッ素エラストマーのニトリル基と、架橋剤のアジド基とが反応して、テトラゾール環を形成し、架橋物を与える。
【0217】
とくに好ましい架橋剤としては、複数個の3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル基、もしくは3-アミノ-4-メルカプトフェニル基を有する化合物、または一般式(47):
【0218】
【0219】
(式中、R41、R42およびR43は上記のとおり)で表される化合物があげられ、具体的には、たとえば2,2-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン(一般名:ビス(アミノフェノール)AF)、2,2-ビス(3-アミノ-4-メルカプトフェニル)ヘキサフルオロプロパン、テトラアミノベンゼン、ビス-3,4-ジアミノフェニルメタン、ビス-3,4-ジアミノフェニルエーテル、2,2-ビス(3,4-ジアミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス[3-アミノ-4-(N-フェニルアミノ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス[3-アミノ-4-(N-メチルアミノ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス[3-アミノ-4-(N-エチルアミノ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス[3-アミノ-4-(N-プロピルアミノ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス[3-アミノ-4-(N-パーフルオロフェニルアミノ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス[3-アミノ-4-(N-ベンジルアミノ)フェニル]ヘキサフルオロプロパンなどである。
【0220】
これらの中でも、架橋剤としては耐熱性、耐スチーム性、耐アミン性、良好な架橋性の点から、2,2-ビス[3-アミノ-4-(N-フェニルアミノ)フェニル]ヘキサフルオロプロパンが好ましい。
【0221】
上記架橋剤の含有量は、含フッ素ポリマー100質量部に対して、好ましくは0.05~10質量部であり、より好ましくは0.5~5質量部である。
【0222】
上記組成物は、充填剤(ただし、上記ケイ素含有化合物を除く)を含有してもよい。
【0223】
充填剤(ただし、上記ケイ素含有化合物を除く)としては、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミドなどのイミド構造を有するイミド系フィラー、ポリアリレート、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルケトン、ポリオキシベンゾエートなどのエンジニアリングプラスチック製の有機フィラー、酸化アルミニウム、酸化イットリウムなどの金属酸化物フィラー、炭化アルミニウムなどの金属炭化物、窒化アルミニウムなどの金属窒化物フィラー、フッ化アルミニウム、フッ化カーボンなどの無機フィラーがあげられる。
【0224】
これらの中でも、各種プラズマの遮蔽効果の点から、酸化アルミニウム、酸化イットリウム、ポリイミド、フッ化カーボンが好ましい。
【0225】
また、上記無機フィラー、有機フィラーを単独で、または2種以上を組み合わせて配合してもよい。
【0226】
充填剤(ただし、上記ケイ素含有化合物を除く)の配合量は、含フッ素ポリマー100質量部に対して、好ましくは0.5~100質量部、より好ましくは5~50質量部である。
【0227】
とくに高純度かつ非汚染性が要求されない分野では、必要に応じて含フッ素ポリマー組成物に配合される通常の添加物、たとえば充填剤、加工助剤、可塑剤、着色剤などを配合することができ、前記のものとは異なる常用の架橋剤や架橋助剤を1種またはそれ以上配合してもよい。
【0228】
上記組成物は、有機塩基性化合物を含有してもよい。有機塩基性化合物としては、式:CH
3(CH
2)
17-NH
2のオクダデシルアミン;
式:H
2N-C(O)-(CH
2)
11-CH=CH-(CH
2)
7CH
3のエルカアミド;
式:H
2N-C(O)-(CH
2)
7-CH=CH-(CH
2)
7CH
3のオレアミド;
式:H
2N-(CH
2)
6-NH
2のヘキサメチレンジアミン
式:
【化75】
の1,8-ジアザビシクロウンデカ-7-エン(DBU)等を挙げることができる。
【0229】
上記組成物、および、上記組成物に含まれる含フッ素ポリマーは、原料として、実質的に金属化合物の不存在化で製造されたものが好ましい。上記組成物の金属含有量としては、好ましくは100ppm以下であり、より好ましくは50ppm以下であり、さらに好ましくは10ppm以下である。組成物の金属含有量が極めて少ないものであると、金属成分による汚染を回避すべき半導体製造プロセスや医薬製造プロセスにおいて使用可能な成形品が得られることから好ましい。上記金属含有量は、フレームレス原子吸光分析法または高周波誘導結合プラズマ発光分光分析法により測定することができる。本開示における金属含有量は、Fe、Cr、Ni、Cu、Al、Na、Mg、Ca、Zn、Ba、およびKの合計の金属含有量である。上記組成物の金属含有量としては、これら金属と、これら金属以外の金属の含有量の合計が、上記の範囲内であってもよい。
【0230】
上記組成物は、上記の各成分を、通常のポリマー用加工機械、たとえば、オープンロール、バンバリーミキサー、ニーダーなどを用いて混合することにより調製することができる。この他、密閉式混合機を用いる方法によっても調製することができる。上記組成物は、成形して成形品を得るための成形材料として好適に使用でき、また、架橋成形して成形品を得るための成形材料としても好適に使用できる。
【0231】
上記組成物を成形材料として予備成形体を得る方法は通常の方法でよく、金型にて加熱圧縮する方法、加熱された金型に圧入する方法、押出機で押出す方法など公知の方法で行なうことができる。ホースや電線などの押出製品の場合は押出後にスチームなどによる加熱架橋を行なうことで、成形品を得ることができる。
【0232】
上記架橋は、一次架橋、二次架橋の順で、行うことができる。一次架橋は、150~200℃で5~120分間行うことが好ましく、170~190℃で5~60分間行うことがより好ましい。架橋手段としては、公知の架橋手段を用いればよく、例えば、プレス架橋などをあげることができる。
【0233】
二次架橋は、250~320℃で2~24時間行うことが好ましく、280~310℃で5~20時間行うことがより好ましい。架橋手段としては、公知の架橋手段を用いれば良く、例えば、オーブン架橋などをあげることができる。
【0234】
本開示の成形品は、上記組成物から得られる。本開示の成形品は、上記ケイ素含有化合物として、上記かご型シルセスキオキサンを含有する場合、耐熱性に優れ、さらに半導体の製造工程で曝されるフッ素系プラズマおよび酸素プラズマに対して、ともに重量変化が小さい成形品を与えることができる。
【0235】
しかも、本開示の第1の組成物によれば、リン含有量が20ppm以下である成形品を得ることも可能である。また、本開示の第2の組成物によれば、残留アミド溶媒に起因した発泡などの成形不良が抑制されており、残留アミド溶媒による悪影響も抑制された成形品を得ることも可能である。また、本開示の第3の組成物によれば、容易に高純度の成形品を製造することが可能である。したがって、本開示の成形品は、半導体製造プロセスで用いる含フッ素ポリマー成形品として有用である。本開示の成形品を半導体プロセスにおいて用いる成形品として使用すれば、成形品からリン、アミド溶媒などの不純物が溶出することがなく、高品質の半導体デバイスを、高い歩留りで製造することができる。
【0236】
そのため、本開示の成形品は、特に耐熱性が要求される半導体製造装置、特に高密度プラズマ照射が行なわれる半導体製造装置のシール材として好適に使用できる。上記シール材としては、O-リング、角-リング、ガスケット、パッキン、オイルシール、ベアリングシール、リップシール等が挙げられる。
そのほか、半導体製造装置に使用される各種のポリマー製品、例えばダイヤフラム、チューブ、ホース、各種ゴムロール、ベルト等としても使用できる。また、コーティング用材料、ライニング用材料としても使用できる。
【0237】
なお、本開示でいう半導体製造装置は、特に半導体を製造するための装置に限られるものではなく、広く、液晶パネルやプラズマパネルを製造するための装置等、高度なクリーン度が要求される半導体分野において用いられる製造装置全般を含むものであり、例えば次のようなものを挙げることができる。
【0238】
(1)エッチング装置
ドライエッチング装置
プラズマエッチング装置
反応性イオンエッチング装置
反応性イオンビームエッチング装置
スパッタエッチング装置
イオンビームエッチング装置
ウェットエッチング装置
アッシング装置
(2)洗浄装置乾式エッチング洗浄装置
UV/O3洗浄装置
イオンビーム洗浄装置
レーザービーム洗浄装置
プラズマ洗浄装置
ガスエッチング洗浄装置
抽出洗浄装置
ソックスレー抽出洗浄装置
高温高圧抽出洗浄装置
マイクロウェーブ抽出洗浄装置
超臨界抽出洗浄装置
(3)露光装置
ステッパー
コータ・デベロッパー
(4)研磨装置
CMP装置
(5)成膜装置
CVD装置
スパッタリング装置
(6)拡散・イオン注入装置
酸化拡散装置
イオン注入装置
【0239】
本開示の成形品は、例えば、CVD装置、プラズマエッチング装置、反応性イオンエッチング装置、アッシング装置またはエキシマレーザー露光機のシール材として優れた性能を発揮する。
【0240】
以上、実施形態を説明したが、特許請求の範囲の趣旨および範囲から逸脱することなく、形態や詳細の多様な変更が可能なことが理解されるであろう。
【実施例】
【0241】
つぎに本開示の実施形態について合成例、調製例などをあげて説明するが、本開示はかかる例のみに限定されるものではない。
【0242】
各例の各数値は以下の方法により測定した。
【0243】
<分子量、分子量分布>
分子量および分子量分布は、ゲル浸透クロマトグラフィー(カラム:東ソー株式会社製TSKgel GMHHR-M)により,標準ポリスチレン換算値として測定した。
【0244】
<リン含有量>
含フッ素エラストマー組成物をシート状に成形後、蛍光X線分析法により、リン含有量を測定した。この測定方法の定量限界は20ppmである。
【0245】
<溶媒含有量>
ハイパーブランチポリマーを試料作製用溶媒に溶解し、ガスクロマトグラフィー(カラム:RESTEK社製Rtx-5 Amine)を用いて、ハイパーブランチポリマーのクロマトグラムを得た。
NMP、DMAcなどの合成に使用した溶媒について、検量線を作成した。
検量線に基づき、ハイパーブランチポリマーの合成に使用した溶媒の、ハイパーブランチポリマー中の溶媒含有量を算出した。
この測定方法の定量限界は1ppmである。
【0246】
製造例1
着火源をもたない内容積6リットルのステンレススチール製オートクレーブに、純水2.3リットル、乳化剤(C3F7OCF(CF3)CF2OCF(CF3)COONH4)23g、pH調整剤として炭酸アンモニウム0.2gを仕込み、系内を窒素ガスで充分に置換し脱気したのち、600rpmで撹拌しながら、50℃に昇温し、内圧が0.8MPaになるようにテトラフルオロエチレン(TFE)とパーフルオロ(メチルビニルエーテル)(PMVE)をTFE/PMVE=24/76(モル比)で仕込んだ。ついで、CF2=CFOCF2CF(CF3)OCF2CF2CN(CNVE)0.8gを窒素圧にて圧入した。過硫酸アンモニウム(APS)の1.2g/mLの濃度の水溶液10mLを窒素圧で圧入して反応を開始した。
【0247】
重合の進行により内圧が、0.7MPaまで降下した時点でTFE 12gおよびPMVE 13gをそれぞれ自圧にて圧入した。以後、反応の進行にともない同様にTFE、PMVEを圧入し、0.7~0.9MPaのあいだで、昇圧、降圧を繰り返すと共に、TFEとPMVEの追加量が80gごとにCNVE 1.5gを窒素圧で圧入した。
【0248】
TFEおよびPMVEの合計仕込み量が、680gになった時点で、オートクレーブを冷却し、未反応モノマーを放出して固形分濃度22質量%の水性分散体3110gを得た。
【0249】
この水性分散体3110gを水3730gで希釈し、4.8質量%硝酸水溶液3450g中に、撹拌しながらゆっくりと添加した。添加後30分間撹拌した後、凝析物をろ別し、得られたポリマーを水洗したのち、真空乾燥させ、680gの含フッ素エラストマーを得た。
【0250】
19F-NMR分析の結果、得られた含フッ素エラストマーのモノマー単位組成は、TFE/PMVE/CNVE=59.3/39.9/0.8(モル%)であった。赤外分光分析により測定したところ、カルボキシル基の特性吸収が1774.9cm-1、1808.6cm-1付近に、OH基の特性吸収が、3557.5cm-1および3095.2cm-1付近に認められた。
【0251】
また、得られた含フッ素エラストマーの金属含有量を、国際公開第94/28394号に記載の測定方法を用いて測定した。具体的には、定量すべき金属を含む所定量のサンプルをキュベット内で約1000℃の灰化温度で約240秒間の灰化時間を含む灰化条件で灰化した後、そのままフレームレス原子吸光分光光度計で吸光度を測定した。得られた含フッ素エラストマーの金属含有量は、10ppm以下であった。
【0252】
合成例1(ハイパーブランチポリマーの製造)
Polymer、2003、44、4491-4499に記載の方法を参照し、下記式:
【化76】
で表される手順で、アミノ基を有するPOSSを合成した。得られたアミノ基を有するPOSSは、上述した一般式(1)において、R
1~R
8が-C
6H
4-NH
2の化合物である。
【0253】
その後、アミノ基を有するPOSSを用いて、次の反応を行い、ハイパーブランチポリマーを得た。なお、式中のnは、ハイパーブランチポリマーの世代数や分子量、分子量分布により決まる。また、コアのPOSSに結合する8本の鎖の長さ(すなわち、nの数)は、同一または異なる。同一分子内でのnの分布や全分子におけるnの分布によって、ハイパーブランチポリマーの分子量分布が決まる。
【化77】
【0254】
上記の反応機構に示されるように、まず、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)10mLとSOCl2 3.49g(29.3mmol)を0℃で混合し、10分間撹拌させた。そこに、NMP 25mLに溶解させた3,5-ジアミノ安息香酸 1.35g(8.89mmol)を加えて0℃で20分間撹拌した後、NMP 5mLに溶解させたアミノ基を有するPOSS 0.183g(0.159mmol)を加えて0℃で30分間撹拌させた。そこに、水 0.192g(10.7mmol)を加えて0℃で10分間、室温で6時間撹拌させた後、塩化ベンゾイル 4.28g(30.4mmol)を加えて室温で90分間撹拌した。反応溶液を炭酸ナトリウムの3%水溶液に投入し、析出した固体を回収した。得られた固体を2-プロパノールに投入し、洗浄を行った後に回収し、80℃にて減圧乾燥を行った。収率は99%であった。得られたハイパーブランチポリマーは、第3世代相当であり、重量平均分子量(Mw)が19,400であり、分子量分布(Mw/Mn)が1.6であった。
【0255】
合成例2(ハイパーブランチポリマーの製造)
アミノ基を有するPOSSを用いて、次の反応を行い、ハイパーブランチポリマーを得た。
【化78】
【0256】
上記の反応機構に示されるように、まず、NMP 20mLとSOCl2 2.60g(21.8mmol)を0℃で混合し、10分間撹拌させた。そこに、NMP 30mLに溶解させた3,5-ビス(4-アミノフェノキシ)安息香酸 1.88g(5.60mmol)を加えて0℃で20分間撹拌した後、NMP 10mLに溶解させたアミノ基を有するPOSS 0.269g(0.233mmol)を加えて0℃で30分間撹拌させた。そこに、水 0.202g(11.2mmol)を加えて室温で3時間撹拌させた後、水 0.0908g(5.04mmol)を加えて室温で10分間撹拌後、塩化ベンゾイル 3.15g(22.4mmol)を加えて室温で90分間撹拌した。反応溶液を炭酸ナトリウムの3%水溶液に投入し、析出した固体を回収した。得られた固体をメタノールに投入し、洗浄を行った後に回収し、80℃にて減圧乾燥を行った。収率は90%であった。得られたハイパーブランチポリマーは、第2世代相当であり、重量平均分子量(Mw)が21,500であり、分子量分布(Mw/Mn)が1.6であった。
【0257】
合成例3(ハイパーブランチポリマーの製造)
アミノ基を有するPOSSを用いて、次の反応を行い、ハイパーブランチポリマーを得た。
【化79】
【0258】
上記の反応機構に示されるように、まず、NMP 5mLとSOCl2 4.76g(40.0mmol)を0℃で混合し、10分間撹拌させた。そこに、NMP 10mLに溶解させた3,5-ジアミノ安息香酸 1.35g(8.89mmol)を加えて0℃で20分間撹拌した後、NMP 5mLに溶解させたアミノ基を有するPOSS 0.183g(0.159mmol)を加えて0℃で30分間、60℃で3時間撹拌させた。そこに、塩化ベンゾイル 4.28g(30.4mmol)を加えて60℃で90分間撹拌した。反応溶液を炭酸ナトリウムの3%水溶液に投入し、析出した固体を回収した。得られた固体を2-プロパノールに投入し、洗浄を行った後に回収し、80℃にて減圧乾燥を行った。収率は100%であった。得られたハイパーブランチポリマーは、第3世代相当であり、重量平均分子量(Mw)が27,000であり、分子量分布(Mw/Mn)が3.9であった。
【0259】
合成例4(ハイパーブランチポリマーの製造)
減圧乾燥条件を200℃で3時間に変更した以外は、合成例2と同様にして、ハイパーブランチポリマーを得た。収率は93%であった。得られたハイパーブランチポリマーは、第2世代相当であり、重量平均分子量(Mw)が26,900であり、分子量分布(Mw/Mn)が1.1であった。得られたハイパーブランチポリマーのガスクロマトグラフィーにより求められた残存NMP量が101ppm、残存DMAc量は検出限界未満(1ppm未満)であった。
なお、合成例2で得られたハイパーブランチポリマーの残存NMP量は13183ppmであった。
【0260】
合成例5(ハイパーブランチポリマーの製造)
SOCl2と混合する溶媒をNMPからDMAcに変更し、減圧乾燥条件を200℃で3時間に変更した以外は、合成例2と同様にして、ハイパーブランチポリマーを得た。得られたハイパーブランチポリマーのガスクロマトグラフィーにより求められた残存NMP量は20ppm、DMAc量は40ppmであった。
【0261】
合成例6(ハイパーブランチポリマーの製造)
SOCl2と混合する溶媒、3,5-ビス(4-アミノフェノキシ)安息香酸を溶解させるための溶媒およびアミノ基を有するPOSSを溶解させるための溶媒を、NMPからDMAcに変更し、10倍量のスケールに変更し、減圧乾燥条件を200℃で3時間に変更した以外は、合成例2と同様にして、ハイパーブランチポリマーを得た。得られたハイパーブランチポリマーのガスクロマトグラフィーにより求められた残存NMP量は検出限界未満(1ppm未満)、残存DMAc量は280ppmであった。
【0262】
以上のとおり、合成例1~6では、アルコールを用いて回収した固体を洗浄することによって、高純度のハイパーブランチポリマーを得ることができた。さらに、合成例1~6では、アルコールによる洗浄によっても、ハイパーブランチポリマーがアルコールに溶解することがなく、高い収率でハイパーブランチポリマーを得ることができた。
【0263】
調製例1
製造例1で得られた含フッ素エラストマー100質量部に対して、合成例3で得られたハイパーブランチポリマー10質量部、架橋剤2,2-ビス[3-アミノ-4-(N-フェニルアミノ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン0.8質量部をオープンロールにて混練して含フッ素エラストマー組成物を得た。得られた含フッ素エラストマー組成物について、上記の方法により、リン含有量を測定したところ、20ppm未満であった。
【0264】
得られた含フッ素エラストマー組成物を、180℃で30分間プレスして架橋を行ったのち、さらに290℃のオーブン中で18時間かけてオーブン架橋し成形品を得た。
【0265】
また、合成例3で得られたハイパーブランチポリマーに代えて、合成例1または合成例2で得られたハイパーブランチポリマーを用いる以外は、調製例1と同様にして、リン含有量が20ppm未満の含フッ素エラストマー組成物および成形品を得ることができる。
【0266】
調製例2
合成例3で得られたハイパーブランチポリマーに代えて、合成例4で得られたハイパーブランチポリマーを用いた以外は、調製例1と同様にして、含フッ素エラストマー組成物および成形品を得た。
得られた含フッ素エラストマー組成物について、上記の方法により、リン含有量を測定したところ、20ppm未満であった。
また、調製に用いたハイパーブランチポリマーの残存NMP量が101ppm、残存DMAc量が1ppm未満であり、調製例2においては他の溶媒を用いなかったことから、得られた含フッ素エラストマー組成物のアミド溶媒およびフッ素原子を含まない溶媒の含有量は、101ppm以下と推測された。
【0267】
調製例3
合成例3で得られたハイパーブランチポリマーに代えて、合成例5で得られたハイパーブランチポリマーを用いた以外は、調製例1と同様にして、含フッ素エラストマー組成物および成形品を得た。
得られた含フッ素エラストマー組成物について、上記の方法により、リン含有量を測定したところ、20ppm未満であった。
また、調製に用いたハイパーブランチポリマーの残存NMP量は20ppm、DMAc量は40ppmであり、調製例3においては他の溶媒を用いなかったことから、得られた含フッ素エラストマー組成物のアミド溶媒およびフッ素原子を含まない溶媒の含有量は、60ppm以下と推測された。
【0268】
調製例4
合成例3で得られたハイパーブランチポリマーに代えて、合成例6で得られたハイパーブランチポリマーを用いた以外は、調製例1と同様にして、含フッ素エラストマー組成物および成形品を得た。
得られた含フッ素エラストマー組成物について、上記の方法により、リン含有量を測定したところ、20ppm未満であった。
また、調製に用いたハイパーブランチポリマーの残存NMP量は検出限界未満(1ppm未満)、残存DMAc量が280ppmであり、調製例4においては他の溶媒を用いなかったことから、得られた含フッ素エラストマー組成物のアミド溶媒およびフッ素原子を含まない溶媒の含有量は、280ppm以下と推測された。