(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-26
(45)【発行日】2022-11-04
(54)【発明の名称】アミン系化合物の分解方法及びアミン系化合物分解触媒
(51)【国際特許分類】
B01J 23/68 20060101AFI20221027BHJP
A61L 9/00 20060101ALI20221027BHJP
B01J 35/10 20060101ALI20221027BHJP
A61L 9/01 20060101ALI20221027BHJP
B01D 53/94 20060101ALI20221027BHJP
【FI】
B01J23/68 A
A61L9/00 C ZAB
B01J35/10 301J
B01J35/10 301H
A61L9/01 B
B01D53/94 220
(21)【出願番号】P 2018131725
(22)【出願日】2018-07-11
【審査請求日】2021-06-03
(73)【特許権者】
【識別番号】391018341
【氏名又は名称】株式会社NBCメッシュテック
(73)【特許権者】
【識別番号】305027401
【氏名又は名称】東京都公立大学法人
(74)【代理人】
【識別番号】100087398
【氏名又は名称】水野 勝文
(74)【代理人】
【識別番号】100128783
【氏名又は名称】井出 真
(74)【代理人】
【識別番号】100128473
【氏名又は名称】須澤 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100160886
【氏名又は名称】久松 洋輔
(74)【代理人】
【識別番号】100192603
【氏名又は名称】網盛 俊
(72)【発明者】
【氏名】新見 奈央
(72)【発明者】
【氏名】直原 洋平
(72)【発明者】
【氏名】中山 鶴雄
(72)【発明者】
【氏名】村山 徹
(72)【発明者】
【氏名】春田 正毅
(72)【発明者】
【氏名】武井 孝
(72)【発明者】
【氏名】宍戸 哲也
(72)【発明者】
【氏名】林 明月
(72)【発明者】
【氏名】安 宝祥
【審査官】若土 雅之
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-105904(JP,A)
【文献】特開2009-254981(JP,A)
【文献】特表2018-516170(JP,A)
【文献】特開2015-163394(JP,A)
【文献】特開2004-033936(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61L 9/00-9/01
9/015-9/04
9/12-9/22
B01D 53/73
53/86-53/90
53/94
53/96
B01J 21/00-38/74
JSTPlus(JDreamIII)
JST7580(JDreamIII)
JSTChina(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸性の固体金属酸化物
(ただし、窒素ドープされた固体金属酸化物を除く)からなる担体と、該担体に担持されている、金粒子および/または白金粒子である貴金属粒子と、を含む触媒に、アミン系化合物を含む被処理気体を酸素の存在下で接触させることを特徴とするアミン系化合物の分解方法。
【請求項2】
前記触媒と前記被処理気体とを20℃以上200℃以下の温度で接触させることを特徴とする請求項1に記載のアミン系化合物の分解方法。
【請求項3】
前記固体金属酸化物が酸化ニオブであることを特徴とする請求項1又は2に記載のアミン系化合物の分解方法。
【請求項4】
前記酸化ニオブが水熱合成によって合成された酸化ニオブであることを特徴とする請求項3に記載のアミン系化合物の分解方法。
【請求項5】
前記担体の比表面積が20m
2/g以上であることを特徴とする請求項1から4のいずれか一つに記載のアミン系化合物の分解方法。
【請求項6】
前記担体に担持されている前記貴金属粒子の密度が3μmol/m
2以下であることを特徴とする請求項1から5のいずれか一つに記載のアミン系化合物の分解方法。
【請求項7】
前記担体が0.1cm
3/g以上の容積のメソ孔を有することを特徴とする請求項1から6のいずれか一つに記載のアミン系化合物の分解方法。
【請求項8】
前記担体に対する前記貴金属粒子の担持量が0.5質量%以上12.0質量%以下であることを特徴とする請求項1から7のいずれか一つに記載のアミン系化合物の分解方法。
【請求項9】
酸性の固体金属酸化物
(ただし、窒素ドープされた固体金属酸化物を除く)からなる担体と、
該担体に担持されている、金粒子および/または白金粒子である貴金属粒子と、
を含むアミン系化合物分解触媒。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アミン系化合物の分解方法及びアミン系化合物を分解することができるアミン系化合物の分解触媒に関する。
【背景技術】
【0002】
魚介類や青果物など、天然有機物が腐敗する際にアンモニアやトリメチルアミンなどの悪臭物質が発生する。また、ディーゼル機関等の内燃機関においては排気ガス中の窒素酸化物をアンモニアで還元分解するシステムが設置されている場合があるが、還元分解で使用されなかったアンモニアが排気ガス中に混入する場合がある。これらアンモニアやアミンが発生する恐れがあるところでは、これらを除去する様々な手段が施されている。
【0003】
アンモニアやアミンを除去する方法としては、活性炭などの吸着剤への吸着、プラズマ発生装置によるラジカルや、オゾンなど活性種による分解除去方法などが広く用いられている。しかしながら吸着剤による吸着処理では、吸着量に上限があり、定期的な吸着剤の交換が必要である。
【0004】
また、アンモニアやアミンを分解除去する方法としては、上述したプラズマ法のような物理的に発生させた活性種で酸化して分解する方法以外に、触媒を用いて酸化して分解する方法も検討されている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
触媒を用いてアンモニアやアミンを分解すると、アンモニアやアミンに含まれる窒素が窒素酸化物まで酸化され、有害な窒素酸化物が副生する場合がある。そのため、アンモニアやアミンを分解できることに加え、窒素酸化物が発生しにくいアンモニアやアミンの分解方法が求められている。
【0007】
本発明は、アミン系化合物の分解方法に係る新規な技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の要旨は以下のとおりである。
[1] 酸性の固体金属酸化物からなる担体と、該担体に担持されている、金粒子および/または白金粒子である貴金属粒子と、を含む触媒に、アミン系化合物を含む被処理気体を酸素の存在下で接触させることを特徴とするアミン系化合物の分解方法。
[2] 前記触媒と前記被処理気体とを20℃以上200℃以下の温度で接触させることを特徴とする[1]に記載のアミン系化合物の分解方法。
[3] 前記固体金属酸化物が酸化ニオブであることを特徴とする[1]又は[2]に記載のアミン系化合物の分解方法。
[4] 前記酸化ニオブが水熱合成によって合成された酸化ニオブであることを特徴とする[3]に記載のアミン系化合物の分解方法。
[5] 前記担体の比表面積が20m2/g以上であることを特徴とする[1]から[4]のいずれか一つに記載のアミン系化合物の分解方法。
[6] 前記担体に担持されている前記貴金属粒子の密度が3μmol/m2以下であることを特徴とする[1]から[5]のいずれか一つに記載のアミン系化合物の分解方法。
[7] 前記担体が0.1cm3/g以上の容積のメソ孔を有することを特徴とする[1]から[6]のいずれか一つに記載のアミン系化合物の分解方法。
[8] 前記担体に対する前記貴金属粒子の担持量が0.5質量%以上12.0質量%以下であることを特徴とする[1]から[7]のいずれか一つに記載のアミン系化合物の分解方法。
[9] 酸性の固体金属酸化物からなる担体と、該担体に担持されている、金粒子および/または白金粒子である貴金属粒子と、を含むアミン系化合物分解触媒。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、アミン系化合物の分解方法に係る新規な技術を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について詳述する。
【0011】
本実施形態のアミン系化合物の分解方法では、アミン系化合物を含む被処理気体を酸素の存在下で触媒に接触させることを含む。本実施形態の分解方法では、被処理気体が触媒と接触することにより、被処理気体中のアミン系化合物が酸化分解される。
【0012】
本実施形態の分解方法で用いられる触媒は、酸性の固体金属酸化物からなる担体と、該担体に担持されている、金粒子および/又は白金粒子である貴金属粒子(以下、単に「貴金属粒子」ともいう。)とで構成されている。
【0013】
なお、金粒子や白金粒子には、その粒子を構成する元素(白金や金)以外の金属元素が含まれていてもよい。具体的には、金粒子としては、金元素と金元素以外の金属元素との合金の粒子であってもよく、白金粒子としては、白金元素と白金元素以外の金属元素との合金の粒子であってもよい。金や白金以外の金属元素は、合金を形成できれば特に限定しないが,Ag、Ru、Rh、Pd、Os、Irなどの貴金属や、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Y、Zr、Nb、Mo、Tc、Cd、Wなどの卑金属が挙げられる。
【0014】
本実施形態の分解方法で用いられる触媒は、酸性の固体金属酸化物である担体を有する。担体は、触媒中に複数個含有されていてもよい。本明細書において固体金属酸化物が「酸性」であるとは、等電点のpHが5以下であることを意味し、等電点は、例えば、JIS R 1638:1999に基づいて、ゼータ電位測定装置を用いて測定することができる。担体が酸性の固体金属酸化物であると高いアミン系化合物の分解率を示す理由は明らかではないが、塩基性であるアミン系化合物を容易に吸着できることが、その理由として考えられる。
【0015】
上記の酸性の固体金属酸化物としては、酸化ニオブ、ポリオキソメタレート(具体的には、例えばケイタングステン酸,ケイモリブデン酸,リンタングステン酸,リンモリブデン酸,モリブデン酸アンモニウム,タングステン酸アンモニウム等)、酸化タングステン、酸化タンタル、酸化モリブデン、酸化バナジウム等が挙げられる。中でも、触媒活性をより高めることができるため、酸化ニオブ、ポリオキソメタレート、酸化タングステン、酸化タンタル、酸化モリブデン、酸化バナジウムからなる群より選択される一種以上が好ましく、触媒活性を高めることができる観点から、酸化ニオブがより好ましい。
【0016】
担体の形状は特に制限されないが、触媒活性をより高めることができるため、複雑な3次元構造を有しているのが好ましく、特に酸化ニオブ、ポリオキソメタレート、酸化タングステン、酸化タンタル、酸化モリブデン、酸化バナジウムにおいては、MO4四面体、MO5正方錘、MO6六面体またはMO5三方両錘からなる基本単位において、脱水縮合反応により酸素原子が基本単位間を架橋し、頂点、稜または面を介して結合してなる3次元構造体であるのが好ましい。また、これらの中でも特に水熱合成によって合成された酸化ニオブが、その理由は不明であるが触媒活性が高く、好ましい。
【0017】
水熱合成による酸化ニオブは、例えば、アンモニウムニオビウムオキサレートなどのニオブの塩を水に溶解して耐圧容器に注入し、150℃から300℃にて10時間から30時間加熱する。生じた固形分を濾別し、50℃から150℃で乾燥させ、次いで350℃から500℃にて1時間から4時間加熱することで得ることができる。
【0018】
触媒活性をより高めることができるため、担体の比表面積が20m2/g以上であることが好ましく、20~500m2/gであるのがより好ましく、比表面積が100~300m2/gであるのがさらに一層好ましく、比表面積が150~300m2/gであるのが最も好ましい。なお、本実施形態に係る比表面積は、300℃で2時間の前処理を行い、液体窒素温度での窒素吸着測定で実施し、BET法による自動比表面積測定装置を用いて算出することができる。
【0019】
触媒活性をより高めることができるため、担体はメソ孔(孔径が1nm以上100nm以下の孔)を有していることが好ましい。また、メソ孔は、担体に複数形成されていてもよい。該メソ孔容量であるメソ孔容積は、触媒活性をより高める観点から、0.1cm3/g以上であるのが好ましく、0.2cm3/g以上であるのがさらに好ましい。なお、メソ孔容積の上限値は特に限定されないが、例えば0.7cm3/g以下とすることができる。
【0020】
ここでメソ孔であることはBET法により孔径の値を得ることで特定することができる。また、メソ孔容積は、吸着質が脱離するときの相対圧と吸着量の関係である脱着等温線から細孔径を求めるBJH法(E.P.Barrett, L.G.Joyner, P.H.Halenda:J.Am.Chem. Soc., 73, 373 (1951))により算出でき、担体に形成されるメソ孔の容積の平均値を示す。
【0021】
また、触媒活性をより高めることができるため、担体の粒径は、平均粒子径で5~1000nmであるのが好ましく、5~500nmであるのがさらに好ましい。
【0022】
なお、本実施形態に係る担体の粒径は、透過型電子顕微鏡(TEM)の画像写真から測定できる担体の直径であり、担体の平均粒径は、触媒に含まれる担体が200個以下である場合には、全ての担体の直径を加算平均した値であり、触媒に含まれる担体が200個を超える場合には、少なくとも200個の担体の直径を加算平均した値である。なお、担体の直径は、エタノールなどの溶媒中で超音波分散した担体を用いて測定してもよい。
【0023】
担体には、金粒子および/又は白金粒子である貴金属粒子が担持されている。つまり、担体としては、金粒子が担持される担体や、白金粒子が担持される担体や、金粒子と白金粒子の両方が担持される担体を用いることができる。100℃以下(例えば、20℃以上100℃以下)の非常に低い温度で、被処理気体と触媒との接触を行う場合には、アミン系化合物をより分解しやすくなる観点から、貴金属粒子としては、白金粒子よりも、金粒子を用いることが好ましい。担体には、複数個の貴金属粒子が担持されていてもよい。貴金属粒子の粒径は、触媒活性をより高めることができるため、平均粒径が5nm以下であるのが好ましく、0.1~3nmであるのがさらに好ましい。
【0024】
なお、本実施形態に係る貴金属粒子の粒径は、透過型電子顕微鏡(TEM)の画像写真から測定できる貴金属粒子の直径であり、貴金属粒子の平均粒子径は、触媒に含まれる貴金属粒子が200個以下である場合には、全ての貴金属粒子の直径を加算平均した値であり、触媒に含まれる貴金属粒子が200個を超える場合には、少なくとも200個の貴金属粒子の直径を加算平均した値である。
【0025】
触媒活性をより高めることができるため、本実施形態に係る貴金属粒子の担持量は、担体100質量%に対して0.1~15.0質量%であるのが好ましく、0.5~12.0質量%がさらに好ましい。なお、貴金属粒子の担持量とは、貴金属粒子として金粒子と白金粒子のいずれか一方が用いられる場合には、その一方の粒子の担持量を示し、貴金属粒子として金粒子と白金粒子の両方が用いられる場合には、両方の粒子の担持量の合計値を示す。
【0026】
また、触媒活性をより高めることができるため、上記貴金属粒子の密度(面密度)は、担体の表面に対し、好ましくは3μmol/m2以下、より好ましくは2μmol/m2以下、更に一層好ましくは0.1~0.30μmol/m2である。この密度は、特に担体の比表面積が上述の好ましい範囲の場合に特に有効であり、少ない貴金属粒子の密度でも活性が増大するという点で特に効果的である。なお、貴金属粒子の密度とは、貴金属粒子として金粒子と白金粒子のいずれか一方が用いられる場合には、担体に担持されるその一方の粒子の単位面積あたりの物質量を示し、貴金属粒子として金粒子と白金粒子の両方が用いられる場合には、担体に担持される両方の粒子の単位面積当たりの物質量を示す。
【0027】
上記密度は下記(1)式に基づき求めることができる。
Cp:貴金属粒子の担持量(質量%)
Mp:貴金属粒子の分子量(g/mol)
貴金属粒子が金の場合、Mpは197g/mol
貴金属粒子が白金の場合、Mpは195g/mol
貴金属粒子が金と白金の場合、Mpは196g/mol
Sc:担体の比表面積(m
2/g)
【0028】
本実施形態に係る触媒において、貴金属粒子は上記担体の表面に担持されているようにしてもよい。また、上述のように担体が3次元構造体である場合、担体内部に空洞(メソ孔)が生じている場合もあり、その場合には貴金属粒子は当該空洞内の担体表面に担持されていてもよい。
【0029】
なお、本実施形態の触媒においては、貴金属粒子に加えて、金や白金以外の他の金属元素から構成される助触媒粒子が担体に担持されていてもよく、特に限定されない。具体的には、助触媒粒子と貴金属粒子が混在するもの(例えば、助触媒粒子と貴金属粒子の複合粒子)などが挙げられる。貴金属粒子単独で用いる場合や貴金属粒子と助触媒粒子とを混在させたものを用いる場合には、貴金属粒子は上述の大きさの範囲内(粒径が0.1nm以上5nm以下)とすることができる。助触媒粒子において用いることができる金属粒子(ナノ粒子)としては、Pd、Irなどといった貴金属およびその酸化物、または卑金属およびそれらの酸化物の金属粒子などが挙げられる。これらの貴金属およびその酸化物、卑金属およびその酸化物の金属粒子は2種以上混合されて、担体に担持されてもよい。
【0030】
また、水分によって触媒が影響を受け難くするために、触媒を疎水化したり、吸湿材や乾燥剤を添加してもよい。
【0031】
本実施形態の分解方法では、アミン系化合物を含む被処理気体を、酸素の存在下において、触媒と接触させる。被処理気体が触媒と接触することにより、被処理気体中のアミン系化合物が酸化分解される。また、本実施形態の分解方法では、アミン系化合物を酸素の存在下で分解しているため、アミン系化合物に含まれる水素が水に転化されやすい。言い換えれば、反応性の高い水素ガスが生成されにくい。つまり、本実施形態の分解方法では、アミン系化合物を窒素、水、二酸化炭素などの無害な物質に酸化分解しやすく、分解生成物をそのまま大気中に排出することができる。加えて、本実施形態の分解方法は、アミン系化合物に含まれる窒素が窒素ガスに転化されやすく、窒素酸化物など有害な物質の産出が極めて少ない特徴を有する。つまり、アミン系化合物中の窒素量に対する分解反応後の窒素ガス中の窒素量の比率である窒素選択率が高いという特徴を有する。
【0032】
本実施形態の分解方法で分解されるアミン系化合物は、アンモニア(NH3)及び、アンモニアの水素原子を炭化水素基等の原子団で置換した化合物(すなわち、アミン)を指す。具体的なアミンとしては、トリメチルアミンやトリエチルアミンなどの脂肪族アミン類、アニリンなどの芳香族アミンが例示される。その発生源は特に限定されず、生物の腐敗から生じるアミン系化合物に限らず、自動車や住宅の内装材、塗料、接着剤、洗浄剤などからの揮発成分、あるいは内燃機関の排気ガスなどに含有されるアミン系化合物であってもよい。
【0033】
アミン系化合物の濃度は、特に限定されるものではないが、分解率を高くできるという観点から、被処理気体に対して体積基準で5ppm以上、50体積%以下とすることが好ましい。被処理気体には、アミン系化合物と酸素の他に、窒素、アルゴンなどの他の成分が含有されていてもよい。
【0034】
被処理気体と触媒とを接触する方法や条件は、特に限定されるものではないが、分解率を高くできるという観点から、被処理気体を10,000/時以上5,000,000/時以下の空間速度で触媒に接触することが好ましい。なお、空間速度とは、単位時間当たりに、触媒の体積の何倍の体積の被処理気体が触媒を接触(通過)したかを速度として表したものであり、単位時間当たりの被処理気体の流量(体積)を、触媒の体積で除した値である。また、被処理気体と触媒との接触は、大気圧下で行ってもよく、減圧雰囲気や加圧雰囲気下で行ってもよい。
【0035】
酸素の存在下において、被処理気体と触媒と接触させる方法としては、酸素を含有する被処理気体を触媒に接触させる方法や、被処理気体とともに酸素を含む気体を触媒に接触させる方法を挙げることができる。本実施形態の分解方法で用いられる酸素の濃度は、特に限定されるものではないが、水素ガスの発生を抑制し、処理後の被処理気体の安全性、安定性が高まるという観点から、被処理気体に含まれるアミン系化合物の濃度に対し、体積基準で1.0倍以上とすることが好ましい。
【0036】
被処理気体と触媒との接触を行う温度は、特に限定されるものではないが、20℃以上200℃以下であることが好ましい。従来の分解方法では、200℃を超える高温で被処理気体と触媒とを接触させないと、アミン系化合物が分解しにくくなったり、窒素酸化物が発生しやすくなったりするという問題があったが、本実施形態の分解方法では、200℃以下の低温で被処理気体と触媒とを接触させたとしても、アミン系化合物を分解できることに加え、窒素酸化物が発生しにくい(つまり、窒素選択率が高い)。また、本実施形態の分解方法において、被処理気体と触媒との接触を20℃以上で行う場合には、被処理気体と触媒との接触を20度未満で行う場合と比較してアミン系化合物がより分解されやすくなる。
【0037】
被処理気体と触媒との接触を行う温度は、触媒を加熱・冷却することで調整でき、また、被処理気体を加熱・冷却したりすることで調整することもできる。なお、触媒と被処理気体の両方を加熱・冷却することで調整してもよい。具体的には、触媒を20℃以上200℃以下にしたり、被処理気体の温度を20℃以上200℃以下にしたりすることで、被処理気体と触媒との接触を20℃以上200℃以下の温度で行うことができる。
【0038】
ここで、本実施形態の分解方法で用いられる触媒の形状は、特に限定しないが上述の通り、被処理気体との接触面積が大きくアミン系化合物の分解反応が進行しやすいので、粉末状、粒子状、ペレット状などの形状が好ましい。また、基材上に触媒を形成させて用いることもできる。このとき、基材の形状も特に限定しないが、ハニカム状、繊維状などの基材が好ましい。繊維状、ハニカム状であれば被処理気体の通風時の圧力損失が小さくなるので好ましい。
【0039】
基材上に形成したときの触媒の密度(面密度)は、基材の表面に対して、0.005g/m2以上0.5g/m2以下であるのが好ましい。0.5g/cm2を超えると、触媒同士が凝集しやすくなり、上記範囲内にある場合と比較して触媒活性が減少しやすくなる。また、0.005g/cm2未満では、上記範囲内にある場合と比較して、十分な触媒活性が得られにくい。より好ましい触媒の密度(面密度)は、基材の表面に対して0.010g/m2以上0.5g/m2以下であり、さらに好ましい触媒の密度(面密度)は、基材の表面に対して0.1g/m2以上0.5g/m2以下である。
【0040】
基材は、本実施形態に係る触媒を製造する際に高温に加熱する場合があるため、当該加熱温度に耐える耐熱性を有する材料で構成されていることが望ましい。具体的には基材の材料としては、金属材料、セラミックス、ガラス、炭素繊維、炭化珪素繊維や耐熱性有機高分子材料などが好ましく、さらには金属、金属酸化物、ガラスがより好ましい。
【0041】
基材に用いられる金属材料としては、タングステン、モリブデン、タンタル、ニオブ、TZM(Titanium Zirconium Molybdenum)、W-Re(tungsten-rhenium)などの高融点金属や、銀、ルテニウムなどの貴金属及びそれらの合金または酸化物、チタン、ニッケル、ジルコニウム、クロム、インコネル、ハステロイなどの特殊金属、アルミニウム、銅、ステンレス鋼、亜鉛、マグネシウム、鉄などの汎用金属およびこれら汎用金属を含む合金またはこれら汎用金属の酸化物を用いることができる。また、各種めっき及び真空蒸着や、CVD法や、スパッタ法などにより、上述した金属、合金または酸化物の被膜が形成された部材を金属材料として用いてもよい。
【0042】
さらに、基材に用いられるセラミックスとしては、土器、陶器、石器、磁器などの陶磁器、セメント、石膏、ほうろう及びファインセラミックスなどのセラミックスを挙げることができる。セラミックスの組成は、元素系、酸化物系、水酸化物系、炭化物系、炭酸塩系、窒化物系、ハロゲン化物系、及びリン酸塩系などを挙げることができ、また、それらの複合物でもよい。
【0043】
また、基材に用いられるセラミックスとしては、さらに、チタン酸バリウム、チタン酸ジルコン酸鉛、フェライト、アルミナ、フォルステライト、ジルコニア、ジルコン、ムライト、ステアタイト、コーディエライト、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、炭化ケイ素、ニューカーボンなどや、高強度セラミックス、機能性セラミックス、超伝導セラミックス、非線形光学セラミックス、抗菌性セラミックス、生分解性セラミックス、及びバイオセラミックスなどのセラミックスを挙げることができる。
【0044】
また、基材に用いられるガラスとしては、ソーダ石灰ガラス、カリガラス、クリスタルガラス、石英ガラス、カルコゲンガラス、ウランガラス、水ガラス、偏光ガラス、強化ガラス、合わせガラス、耐熱ガラス・硼珪酸ガラス、防弾ガラス、ガラス繊維、ダイクロ、ゴールドストーン(茶金石・砂金石・紫金石)、ガラスセラミックス、低融点ガラス、金属ガラス、ニューガラス、及びサフィレットなどのガラスを挙げることができる。
【0045】
また、基材にはその他に、普通ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメント、超早強ポルトランドセメント、中庸熱ポルトランドセメント、低熱ポルトランドセメント、耐硫酸塩ポルトランドセメント、及びポルトランドセメントに高炉スラグ、フライアッシュ、シリカ質混合材を添加した混合セメントである高炉セメント、シリカセメント、及びフライアッシュセメントなどのセメントを使用することも可能である。
【0046】
また、基材にはその他に、チタニアや、ジルコニア、アルミナ、セリア(酸化セリウム)、ゼオライト、アパタイト、シリカ、活性炭、珪藻土などを使用することができる。さらに、基材には、クロム、マンガン、コバルト、ニッケル、錫などからなる金属酸化物を用いることも可能である。
【0047】
さらに、基材には、ポリイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリフェニレンスルフィド、ポリアラミド、ポリベンゾチアゾール、ポリベンゾオキサゾール、ポリベンゾイミダゾール、ポリキノリン、ポリキノキサリン、フッ素樹脂などや、フェノール樹脂やエポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂などの当業者に公知な耐熱性有機高分子材料を用いることも可能である。
【0048】
本実施形態の分解方法で用いられる触媒を基材上に形成する場合は、例えば、基材に担体である固体金属酸化物を固定し、次いで固体金属酸化物に貴金属粒子を担持させる工程を行うことにより基材上に形成された触媒を製造することができる。
【0049】
基材に固体金属酸化物を固定する工程は、例えば、基材を固体金属酸化物の懸濁液に浸漬して基材表面に担体である固体金属酸化物を付着させ、その後200℃以上500℃以下で焼成することで、基材表面に固着させることができる。
【0050】
次に、担体である固体金属酸化物に貴金属粒子を担持させる担持工程を説明する。
【0051】
貴金属粒子を固体金属酸化物に担持させる方法は、担持させる貴金属粒子に対応する化合物(貴金属粒子を構成する元素を含む化合物)の溶液もしくはコロイド溶液(以下、これらを単に「貴金属化合物溶液」とも称する)に固体金属酸化物を浸漬し、固体金属酸化物の表面(固体金属酸化物にメソ孔が形成されている場合には、固体金属酸化物の表面及びメソ孔内部の表面)に貴金属化合物溶液を接触させる。貴金属粒子を構成する元素(金,白金)と卑金属との合金が担持されるようにする場合は、貴金属粒子を構成する元素を含む化合物に加えて卑金属の塩をさらに溶解した溶液を貴金属化合物溶液として用いるなどすればよい。その後、焼成および/または還元処理を行い固体金属酸化物の表面(固体金属酸化物にメソ孔が形成されている場合には、固体金属酸化物の表面及びメソ孔内部の表面)に貴金属粒子を形成することにより、貴金属粒子を固体金属酸化物に固定することができる。この工程により、本実施形態に係る触媒を得ることができる。
【0052】
貴金属粒子を固体金属酸化物に担持させる方法をさらに具体的に説明する。まず、貴金属化合物溶液を20~90℃、好ましくは50~70℃に加温、攪拌しながら、pH3~10、好ましくはpH5~8になるようにアルカリ溶液を用いて調整する。次いで、固体金属酸化物を貴金属化合物溶液に投入し、続いて、減圧脱気処理を行い貴金属化合物溶液を固体金属酸化物に浸透させる。固体金属酸化物にメソ孔が形成されている場合には、減圧脱気処理により、メソ孔内部にも貴金属化合物溶液が進入する。その後、200~600℃で加熱焼成を行うことで貴金属粒子を固体金属酸化物に担持することができる。
【0053】
また、上述のように固体金属酸化物を貴金属化合物溶液に浸透させた後に、200~600℃の焼成処理と100~300℃の水素気流に晒す処理を行う水素還元法や、水素化ホウ素ナトリウム溶液に浸漬する液相還元法など公知の還元操作を実施することでも、貴金属粒子を固体金属酸化物に担持させることができる。なお、貴金属化合物溶液に含有させる化合物の種類によっては、上述の公知な還元操作を実施することなく200~600℃の加熱焼成処理のみで、貴金属粒子を固体金属酸化物に担持させることもできる。また、固体金属酸化物にメソ孔が形成されている場合には、貴金属化合物溶液に含まれる化合物の還元が一部に留まり、メソ孔内に白金粒子や金粒子とともに、白金や金の酸化物の粒子が共存してもよい。
【0054】
貴金属粒子に対応し、貴金属粒子を構成する元素を含む化合物(以下、「貴金属化合物」ともいう。)としては、例えば、金化合物としてHAuCl4・4H2O、NH4AuCl4、KAuCl4・nH2O、KAu(CN)4、Na2AuCl4、KAuBr4・2H2O、NaAuBr4などが、白金化合物については塩化白金酸、ジニトロジアンミン白金、ジクロロテトラアンミン白金などが挙げられる。貴金属化合物溶液における貴金属化合物の濃度は特に限定されないが、1×10-2~1×10-5mol/Lとして溶液を調製するのが、生成した貴金属粒子が凝集しにくいので好ましい。
【0055】
貴金属化合物溶液に含まれ得る卑金属の塩としては、溶液に溶解でき、貴金属化合物と共存しても沈殿を生じない化合物であれば特に限定されず、卑金属の塩化物、臭化物などのハロゲン化塩、硝酸塩、炭酸塩、重炭酸塩、カルボン酸塩などが例示される。卑金属塩の濃度は特に限定されないが、1×10-2~1×10-5mol/Lとして溶液を調製するのが、生成した貴金属粒子が凝集しにくいので好ましい。
【0056】
また、固体金属酸化物に担持させる粒子が金粒子の場合は、以下に記述する金コロイド溶液を用いるコロイド法を用いて金粒子を固体金属酸化物に担持すると金粒子の担持が安定するので、特に好ましい。
【0057】
金粒子担持工程においては、上記固体金属酸化物として、比表面積が好ましくは20m2/g以上、更に好ましくは100m2/g以上、より好ましくは150m2/g以上の高比表面積のものを用い、金コロイド溶液として、粒径5nm以下、好ましくは0.5~3nmの金粒子(表面修飾された金粒子を含む)を含有する金コロイド溶液を用いることができる。比表面積が上記範囲外の場合及び金粒子の粒径が5nmを超える場合には、固体金属酸化物からなる担体に金粒子が担持されにくくなる。
【0058】
金粒子担持工程では、金コロイド溶液に固体金属酸化物を浸漬し、その後固体金属酸化物を濾別して焼成することで、金粒子を担持させることができる。具体的には、例えば、金コロイド溶液に固体金属酸化物を浸漬し、金コロイド溶液のpHを8~11に水酸化ナトリウムなどを用いて調整しつつ30分~2時間撹拌混合する。ついで、水素化ホウ素ナトリウムをコロイド溶液中の金粒子100質量部に対して50~200質量部添加する。コロイド溶液から固体金属酸化物を濾別して洗浄し、60~100℃にて乾燥させた後、200~500℃にて2~10時間空気中で焼成して、固体金属酸化物の表面(固体金属酸化物にメソ孔が形成されている場合には、固体金属酸化物の表面及びメソ孔内部の表面)に金粒子を担持することができる。この処理により、金粒子が担持されている固体金属酸化物を得ることができる。なお、固体金属酸化物にメソ孔が形成されている場合には、固体金属酸化物が浸漬した金コロイド溶液に減圧脱気処理を施すと、固体金属酸化物のメソ孔内への金コロイド溶液の進入が促進されるので、望ましい。
【0059】
ここで、固体金属酸化物は市販のものを使用してもよいほか、例えば公知の製造方法により得たものを使用してもよい。例えば、酸化ニオブにより固体金属酸化物を構成する場合には、NH4{NbO(C2O4)2(H2O)}・nH2O(Nb:6mmol)を水に溶解し、150~300℃にて10~30時間水熱合成を行う。次いで得られた固体を吸引ろ過した後、50~150℃にて乾燥し、350~500℃にて1~4時間熱処理することで酸化ニオブからなる固体金属酸化物を得ることができる。
【0060】
金コロイド溶液は、水中でコロイドを形成する化合物を水中に溶解させることにより形成することができる。この際用いることができる化合物としてはテトラクロロ金酸、HAuCl4、Au(en)2Cl3等(en:エチレンジアミン基)を挙げることができる。テトラクロロ金酸を用いる場合は、テトラクロロ金酸のトルエン溶液とテトラオクチルアンモニウムブロミドのトルエン溶液とを水素化ホウ素ナトリウムの存在下に水中に投入することにより金コロイド溶液を得ることができる。また、HAuCl4を用いる場合には、テトラオクチルアンモニウムブロミドのトルエン溶液をHAuCl4と共に水素化ホウ素ナトリウムの存在下に水中に投入することにより金コロイド溶液を得ることができる。また、Au(en)2Cl3については、そのまま水中に投入することにより金コロイド溶液を得ることができる。なお、水素化ホウ素ナトリウムは上述のように担持させる際に添加し、コロイド化においては特に添加しないで金コロイド溶液を調整することもできる。
【0061】
本実施形態の分解方法で用いられる触媒は、例えば、アミン系化合物を除去する作用または機能を有する部材や気体浄化装置に使用することができ、酸素の存在下で、アミン系化合物を含む被処理気体を接触させて用いることができる。当該部材や装置としては、エアコン、冷蔵庫、倉庫やショーケース内に設置する空気浄化装置、オフィスや喫煙室に設置する空気清浄機、あるいは内燃機関などの排気ガス浄化装置などを挙げることができる。当該部材や装置には触媒の加熱機構や触媒へ被処理気体を送る送風機構など、触媒が好適に作動する使用環境が設定できる機能を設けてもよい。また、本実施形態の分解方法で用いられる触媒は、アミン系化合物を含む悪臭を抑制する悪臭抑制剤として用いることもできる。悪臭抑制剤は、酸素の存在下で、アミン系化合物を含む被処理気体と触媒とを接触することができるものであれば、剤形について特に限定されず、また、触媒以外の他の成分が含有されていてもよい。
【実施例】
【0062】
次に、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明する。ただし、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0063】
[製造例1]
アンモニウムニオビウムオキサレートを純水に溶解し、耐圧容器中で175℃、24時間加熱した。生成した固形分を分別回収し、純水で数回洗浄後、120℃にて6時間加熱、その後400℃にて2時間加熱して酸化ニオブ(水熱合成した酸化ニオブ,等電点のpHが2.55)を得た。
【0064】
塩化金酸水溶液、トルエン、テトラオクチルアンモニウムブロミドを混合、攪拌しながら、ドデカンチオールを加え、水素化ホウ素ナトリウムで還元した。トルエン相を回収し、金コロイド溶液を得た。さらにトルエンで希釈し、所定濃度の金コロイド溶液を調製した。
【0065】
上述の水熱合成した酸化ニオブを、酸化ニオブに対して金が1.0質量%となるよう金濃度を調整した金コロイド溶液に投入し90分攪拌した。溶媒を減圧留去し得られた固形分を、100℃で一昼夜真空乾燥を行った。次いで、焼成炉に入れ、1時間かけて300℃まで昇温し、そのまま300℃で2時間焼成して、金粒子を担持した酸化ニオブ(触媒)を得た。
【0066】
得られた触媒の、酸化ニオブに対する金粒子の含有量、酸化ニオブの比表面積、メソ孔容積、酸化ニオブに担持されている金粒子密度、金粒子の平均粒子径は、それぞれ1.1質量%、174m2/g、0.33cm3/g、0.32μmol/m2、2.8nmであった。
【0067】
[製造例2]
製造例1で用いた金コロイド溶液を酸化ニオブに対して金が3.0質量%となるよう金濃度を調整した金コロイド溶液に換えた以外は製造例1と同様な操作を行って、金粒子を担持した酸化ニオブ(触媒)を得た。
【0068】
得られた触媒の、酸化ニオブに対する金粒子の担持量、酸化ニオブの比表面積、メソ孔容積、酸化ニオブに担持されている金粒子密度、金粒子の平均粒子径は、それぞれ2,8質量%、168m2/g、0.34cm3/g、0.85μmol/m2、2.7nmであった。
【0069】
[製造例3]
製造例1で用いた酸化ニオブを市販の酸化ニオブ(双日社製、水熱合成で製造されていない酸化ニオブ,等電点のpHが2.89)に換えた以外は製造例1と同様の操作を行って。金粒子を担持した触媒を得た。
【0070】
得られた触媒の、酸化ニオブに対する金粒子の含有量、酸化ニオブの比表面積、メソ孔容積、酸化ニオブに担持されている金粒子密度、金粒子の平均粒子径は、それぞれ1.1質量%、84.3m2/g、0.08cm3/g、0.66μmol/m2、2.9nmであった。
【0071】
[製造例4]
製造例1記載の方法と同様の方法で水熱合成した酸化ニオブを得た。
【0072】
ジアンミンジニトロ白金硝酸を含む溶液に上記の水熱合成した酸化ニオブを投入し、攪拌した。溶液から固形分を濾別して300℃で3時間乾燥後、水素ガス10%、窒素ガス90%の還元処理ガス中で250℃、1時間焼成し、白金粒子を担持した酸化ニオブ(触媒)を得た。
【0073】
得られた触媒の、酸化ニオブに対する白金粒子の含有量、酸化ニオブの比表面積、メソ孔容積、酸化ニオブに担持されている白金粒子密度、白金粒子の平均粒子径は、それぞれ1.0質量%、197m2/g、0.26cm3/g、0.26μmol/m2、0.75nmであった。
【0074】
[製造例5]
製造例1で用いた酸化ニオブを市販の酸化チタン(日本アエロジル社製,等電点のpHが6.04)に換えた以外は製造例1と同様の操作を行って、金粒子を担持した酸化チタン(触媒)を得た。
【0075】
得られた触媒の、酸化チタンに対する金粒子の担持量、酸化チタンの比表面積、メソ孔容積、酸化チタンに担持されている金粒子密度、金粒子の平均粒子径は、それぞれ0.96質量%、52.9m2/g、0.48cm3/g、0.92μmol/m2、4.1nmであった。
【0076】
[製造例6]
製造例1で用いた酸化ニオブを市販の酸化ジルコニウム(和光純薬社製,等電点のpHが10.0)に換えた以外は製造例1と同様の操作を行って、金粒子を担持した酸化ジルコニウム(触媒)を得た。
【0077】
得られた触媒の、酸化ジルコニウムに対する金粒子の担持量、酸化ジルコニウムの比表面積、メソ孔容積、酸化ジルコニウムに担持されている金粒子密度、金粒子の平均粒子径は、それぞれ0.97質量%、126m2/g、0.38cm3/g、0.39μmol/m2、3.3nmであった。
【0078】
[製造例7]
製造例1記載の方法と同様の方法で水熱合成した酸化ニオブを得た。得られた酸化ニオブを触媒とした。
【0079】
得られた触媒の、比表面積とメソ孔容積は、それぞれ208m2/g、0.57cm3/gであった。
【0080】
[製造例8]
製造例1の酸化ニオブを市販の酸化セリウム(和光純薬社製,等電点のpHが6.76)に換えた以外は製造例1と同様の操作を行って、金粒子を担持した酸化セリウム(触媒)を得た。
【0081】
得られた触媒の、酸化セリウムに対する金粒子の担持量、酸化セリウムの比表面積、メソ孔容積、酸化セリウムに担持されている金粒子密度、金粒子の平均粒子径は、それぞれ0.98質量%、24.8m2/g、0.08cm3/g、2.0μmol/m2、4.5nmであった。
【0082】
なお、製造例1~8において、貴金属粒子の担持量は、原子吸光光度計を用いて測定した。担体の比表面積は、高精度ガス吸着量測定装置(マイクロトラックベル社製)を用いて、液体窒素温度にて窒素吸着等温線を測定し、BET法に基づき算出した。また、メソ孔容積は同装置で脱着等温線を測定し、BJH法に基づき算出した。また、担体に担持されている貴金属粒子の密度は、貴金属粒子の担持量結果および担体の比表面積結果を用いて、上述の(1)式を用いて算出した。また、貴金属粒子の平均粒子径は、TEMによる確認される貴金属粒子120個の粒径を目視によって基準長さと照らし合わせて算出し、その平均値を算出した。また、担体の等電点は、JIS R 1638:1999に基づき、担体を電解質水溶液に分散させ、ゼータ電位測定装置を用いて測定した。
【0083】
[アンモニア分解試験]
100ppmアンモニア/N2ガス、O2ガス、Arガスを体積比50:20:30で混合した混合ガスを被処理気体として、流量コントローラーで制御しながら100mL/分の流量で、後述する所定温度に制御した0.15gの各製造例の触媒に供給した。触媒供給前の被処理気体と触媒供給後の被処理気体それぞれの、アンモニア、一酸化二窒素、一酸化窒素および二酸化窒素の濃度を赤外分光光度計(FTIR-6000、日本分光株式会社製)を用いて測定した。
【0084】
測定結果を用いて、下記(2)式に基づき、アンモニア分解率を算出し、下記(3)式に基づき、窒素選択率を算出した。
【0085】
CA
a:触媒に供給する前の被処理気体に含まれるアンモニア濃度(ppm)
CA
b:触媒に供給した後の被処理気体に含まれるアンモニア濃度(ppm)
【0086】
CA
a:触媒に供給する前の被処理気体に含まれるアンモニア濃度(ppm)
CA
b:触媒に供給した後の被処理気体に含まれるアンモニア濃度(ppm)
CN1
b:触媒に供給した後の被処理気体に含まれる一酸化窒素濃度(ppm)
CN2
b:触媒に供給した後の被処理気体に含まれる二酸化窒素濃度(ppm)
C2N
b:触媒に供給した後の被処理気体に含まれる一酸化二窒素濃度(ppm)
【0087】
[トリメチルアミン分解試験]
アンモニアをトリメチルアミンに換えた以外はアンモニア試験と同様の方法でトリメチルアミン分解試験を実施した。なお、被処理気体の触媒供給前後のトリメチルアミン濃度もアンモニア分解試験と同様に赤外分光光度計(FTIR-6000、日本分光株式会社製)を用いて測定した。
【0088】
測定結果を用いて、下記(4)式に基づき、トリメチルアミン分解率を算出し、下記(5)式に基づき、窒素選択率を算出した。
【0089】
CT
a:触媒に供給する前の被処理気体に含まれるトリメチルアミン濃度(ppm)
CT
b:触媒に供給した後の被処理気体に含まれるトリメチルアミン濃度(ppm)
【0090】
CT
a:触媒に供給する前の被処理気体に含まれるトリメチルアミン濃度(ppm)
CT
b:触媒に供給した後の被処理気体に含まれるトリメチルアミン濃度(ppm)
CN1
b:触媒に供給した後の被処理気体に含まれる一酸化窒素濃度(ppm)
CN2
b:触媒に供給した後の被処理気体に含まれる二酸化窒素濃度(ppm)
C2N
b:触媒に供給した後の被処理気体に含まれる一酸化二窒素濃度(ppm)
【0091】
[実施例1]
製造例1の触媒を用いて、上述のアンモニア分解試験を試験温度150℃で実施した。
アンモニア分解率及び窒素選択率を表1に示す。
【0092】
[実施例2]
製造例2の触媒を用いて、上述のアンモニア分解試験を試験温度150℃で実施した。
アンモニア分解率及び窒素選択率を表1に示す。
【0093】
[実施例3]
製造例3の触媒を用いて、上述のアンモニア分解試験を試験温度150℃で実施した。
アンモニア分解率及び窒素選択率を表1に示す。
【0094】
[実施例4]
製造例4の触媒を用いて、上述のアンモニア分解試験を試験温度150℃で実施した。
アンモニア分解率及び窒素選択率を表1に示す。
【0095】
[実施例5]
製造例4の触媒を用いて、上述のアンモニア分解試験を試験温度80℃で実施した。
アンモニア分解率及び窒素選択率を表1に示す。
【0096】
[実施例6]
製造例1の触媒を用いて、上述のアンモニア分解試験を試験温度80℃で実施した。
アンモニア分解率及び窒素選択率を表1に示す。
【0097】
[実施例7]
製造例1の触媒を用いて、上述のアンモニア分解試験を試験温度210℃で実施した。
アンモニア分解率及び窒素選択率を表1に示す。
【0098】
[実施例8]
製造例2の触媒を用いて、上述のトリメチルアミン分解試験を試験温度80℃で実施した。トリエチルアミン分解率および窒素選択率を表1に示す。
【0099】
[実施例9]
製造例3の触媒を用いて、上述のトリメチルアミン分解試験を試験温度80℃で実施した。トリエチルアミン分解率および窒素選択率を表に示す。
【0100】
[比較例1]
製造例5の触媒を用いて、上述のアンモニア分解試験を試験温度150℃で実施した。
アンモニア分解率及び窒素選択率を表1に示す。
【0101】
[比較例2]
製造例6の触媒を用いて、上述のアンモニア分解試験を試験温度150℃で実施した。
アンモニア分解率及び窒素選択率を表1に示す。
【0102】
[比較例3]
製造例7の触媒を用いて、上述のアンモニア分解試験を試験温度150℃で実施した。
アンモニア分解率及び窒素選択率を表1に示す。
【0103】
[比較例4]
製造例5の触媒を用いて、上述のアンモニア分解試験を試験温度210℃で実施した。
アンモニア分解率及び窒素選択率を表1に示す。
【0104】
[比較例5]
製造例8の触媒を用いて、上述のトリメチルアミン分解試験を試験温度80℃で実施した。トリメチルアミン分解率および窒素選択率を表1に示す。
【0105】
【0106】
表1に示すように、実施例1~7では、アンモニアが分解されており、窒素選択率が100%であった。一方、比較例1~2,4では、アンモニアの分解率が56%以上であるものの、窒素選択率が48.3%以下であり、実施例1~7の窒素選択率と比較して51.7%以上も窒素選択率が低かった。また、比較例3では、窒素選択率が100%であるものの、アンモニアの分解率が2.6%であり、実施例1~7の分解率と比較して、半分以下の分解率であった。これら結果から、実施例1~7は、比較例1~4と比較して、アンモニアの分解と窒素酸化物の生成の抑制を両立しやすいことが理解できた。
【0107】
また、実施例8~9では、表1に示すように、トリメチルアミンが分解されており、窒素選択率が81.6%以上であった。一方、比較例5では、トリメチルアミンの分解率が6%であり、実施例8~9の分解率と比較して17.8%以上も分解率が低かった。加えて比較例5では、窒素選択率が0%であり、実施例8~9の窒素選択率と比較して81.6%以上も窒素選択率が低かった。これら結果から、実施例8~9は、比較例5と比較して、トリメチルアミンの分解と窒素酸化物の生成の抑制を両立しやすいことが理解できた。
【0108】
また、試験温度のみ変更した実施例1,実施例6,実施例7の窒素選択率から理解できるように、本実施形態に係る分解方法では、200℃以下の低温でアンモニアを分解したとしても、200℃超える高温でアンモニアを分解したときと比較して窒素選択率に変化がなかった。この結果から、本実施形態の分解方法によれば、200℃以下の低温でアミン系化合物の分解を行ったとしても、アミン系化合物を分解できるとともに、窒素酸化物が発生しにくいことが理解できた。
【0109】
また、水熱合成で製造された酸化ニオブを担体として使用した実施例1では、水熱合成で製造されていない酸化ニオブを担体として使用した実施例3と比較して、金粒子の担持量が同じであるにも関わらず、アンモニア分解率が42.6%も向上していた。この結果から、水熱合成で製造された酸化ニオブを用いることで、水熱合成で製造されていない酸化ニオブを用いる場合と比較し、アミン系化合物をより分解しやすくなることが理解できた。