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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-26
(45)【発行日】2022-11-04
(54)【発明の名称】トンネル工事の先受鋼管による掘削工法
(51)【国際特許分類】
   E21D 9/04 20060101AFI20221027BHJP
【FI】
E21D9/04 F
E21D9/04 A
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2018172975
(22)【出願日】2018-09-14
(65)【公開番号】P2020045637
(43)【公開日】2020-03-26
【審査請求日】2021-09-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000000549
【氏名又は名称】株式会社大林組
(73)【特許権者】
【識別番号】000158910
【氏名又は名称】株式会社亀山
(74)【代理人】
【識別番号】100081824
【弁理士】
【氏名又は名称】戸島 省四郎
(72)【発明者】
【氏名】中間 祥二
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 哲
(72)【発明者】
【氏名】萩野 知
(72)【発明者】
【氏名】亀山 元則
(72)【発明者】
【氏名】坂口 穂積
(72)【発明者】
【氏名】田中 正広
(72)【発明者】
【氏名】松藤 祐一
(72)【発明者】
【氏名】堤 孝秋
【審査官】松本 泰典
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-113080(JP,A)
【文献】特開2012-017648(JP,A)
【文献】特開2015-143556(JP,A)
【文献】特開2003-155888(JP,A)
【文献】特開2015-110994(JP,A)
【文献】特開2011-153402(JP,A)
【文献】特開2000-297592(JP,A)
【文献】特開2004-332242(JP,A)
【文献】特開2017-002723(JP,A)
【文献】特開2012-158969(JP,A)
【文献】特開2012-144964(JP,A)
【文献】登録実用新案第3182663(JP,U)
【文献】特開2001-323459(JP,A)
【文献】特開2016-53268(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E21D 9/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定長さの地山を掘削する毎に掘削されたトンネル内周に掘削方向に連続するように支保鋼を延長構築し、構築された前記支保鋼の最前端の前方にある次の掘削予定の切羽を掘削する作業の前に、次の掘削予定の切羽の前方上方又は外周の地山に向けて、鋼管を複数本ねじ螺合して継いで長尺とした先受鋼管を打ち込み、その後先受鋼管から地盤改良材を注入して次の掘削予定の切羽の前方上方又は外周の地山を地盤改良して地山の地盤強度を高めた後、次の掘削予定の切羽の掘削作業を行い、その後掘削されたトンネルの内周に支保鋼を延長構築するトンネル工事に於いて、
前記先受鋼管のねじ螺合する先頭鋼管と中間鋼管となる鋼管の鋼管材質として高張力鋼を用い、端末鋼管のみを普通鋼製の材質の鋼管とし、端末鋼管の基端部外周に1m程の所定間隔毎に折損し易くする切欠溝を複数個所設け、更に地山に打ち込まれた前記普通鋼製の端末鋼管の基端部分をトンネル空間内に突出するように残し、トンネル内周面の支保鋼の延長構築前に端末鋼管の切欠溝個所から折切して支保鋼の構築の支障にならないようにし、先受鋼管の先頭鋼管と中間鋼管とに高張力鋼管を使用することで先受鋼管が軽量となり、それ自体のたわみによる地山のゆるみを抑制するとともに打ち込み作業の労力軽減し且つ安全となり、しかも地山に残される高張力の鋼管が地山の地盤強度を高張力鋼でない鋼製鋼管に比べてより高めることができることを特徴とする、トンネル工事の先受鋼管による掘削工法。
【請求項2】
先受鋼管の各鋼管同士のネジ螺合連結にテーパーネジを使用した、請求項1記載のトンネル工事の先受鋼管による掘削工法。
【請求項3】
地盤改良材としてシリカレジンを使用した、請求項1又は2記載のトンネル工事の先受鋼管による掘削工法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
トンネル工事の切羽の掘削作業において、切羽近くまで支保鋼が施された切羽前方を掘削する作業の前に地山の前方上方又は外周に向けて複数本継いで長尺にした先受鋼管を打ち込み、打ち込んだ先受鋼管から地盤改良材を注入することで地山を地盤改良し、その後切羽を掘削し、掘削したトンネル内周に次の切羽現場近くまで支保鋼を延長構築するトンネル工事の掘削の先受工法と支保工法の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に示される従来技術では、山岳トンネルで天井部の地山が悪い場合や地表面までの土被り高さが小さい場合などでは、トンネル掘削に先行して天井部に高さ12m程度の先受鋼管(以下AGF鋼管とも記す)を打ち込んでからトンネル掘削を行う。これにより、天井部の崩落を未然に防止し、安全な掘削ができる。しかしながら、地山の強度が低く、先受鋼管にかかる土荷重が想定よりも大きく、鋼管の曲げ耐力以上の力が作用する場合には、鋼管増強が必要となる。
従来は、その対策として先受鋼管を打ち込む掘削方向の打込み間隔を短くして打設本数を増やすことで地山の地盤強度の増強をしていた。もしくは、パイプルーフというさらに鋼管径と肉厚が大きい鋼管を採用し、専用の削岩機で施工する工法を採用していた。
【0003】
上記工法では、AGF鋼管本数を増やす場合は鋼管本数が2倍となるが、従来の鋼管1本3mの仕様は口径φ114.3mm、肉厚t=6mmであり、1本あたりの重量は約50kg、これに付属部品の削孔ロッドを加えると80~90kgの重量物となる。トンネルの天井部での作業は狭隘なバスケット上となる。狭隘な上、重量物を人力作業で接続する重労働であり、効率が悪く、施工時間がかかる。加えて、安全面に課題があり、これまでも鋼管で指を挟む、重量物のため腰を痛める、鋼管を足に落とすなどの災害が発生している。又、土砂地山や小土被りの場合、先受鋼管の本数が増えると自重が増加するためそれ自体のたわみが増加し、それに伴う地山のゆるみも増加する可能性がある。できる限り軽量で強度を増加させることが望まれていた。
【0004】
次に、パイプルーフを採用する場合はトレビマシンなどの専用マシンを用いるが、専用機を新たに搬入するため輸送費用と時間を要すること、作業員も専属となること、切羽を大型の専用マシンで占有することから工期も遅延するなど課題が多かった。更に、打ち込まれた先受鋼管はトンネル内周壁の支保鋼構築の為に打ち込んだ端末管のトンネル内にある部分及びトンネル内周壁に近い部分の基端部を切断・除去する作業が必要となるが、この作業が容易にするため端末管となる先受鋼管の基端部を破断し易い素材のものにする対策がされているが、これでは先受鋼の打ち込み強度が不足することがあり、又複合素材の端末管の製造も必要となってくるという問題があった。
又、特許文献2で示すように先受鋼管のネジ螺合は同径の雄ネジと雌ネジでもって螺合して継いでいるため、このネジ螺合部分の継手部の強度が不足するという問題もあった。
従来のトンネル工事の先受鋼管打設する先受工法では、鋼管同士のネジ螺合連結は鋼管の接続部にねじ山が同径の雄ねじと雌ねじを設け、これでもってねじ螺合して連結する技術が採用されている。このねじ螺合ではねじ螺合部が破損し易いものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2012-158969号公報
【文献】特開2012-144964号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、従来の問題点を解消し、先受鋼管の重量が大きいことによる先受鋼管の継ぎ作業の労力を軽減して作業を効率化を図り、又ネジ螺合部の強度補強して先受鋼管の継手不良を少なくし、更に打ち込み後の先受鋼管自体の重さが軽量で且つ高い強度材となることで地盤の改良強度を高めることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
かかる課題を解決した本発明の構成は、
1) 所定長さの地山を掘削する毎に掘削されたトンネル内周に掘削方向に連続するように支保鋼を延長構築し、構築された前記支保鋼の最前端の前方にある次の掘削予定の切羽を掘削する作業の前に、次の掘削予定の切羽の前方上方又は外周の地山に向けて、鋼管を複数本ねじ螺合して継いで長尺とした先受鋼管を打ち込み、その後先受鋼管から地盤改良材を注入して次の掘削予定の切羽の前方上方又は外周の地山を地盤改良して地山の地盤強度を高めた後、次の掘削予定の切羽の掘削作業を行い、その後掘削されたトンネルの内周に支保鋼を延長構築するトンネル工事に於いて、
前記先受鋼管のねじ螺合する先頭鋼管と中間鋼管となる鋼管の鋼管材質として高張力鋼を用い、端末鋼管のみを普通鋼製の材質の鋼管とし、端末鋼管の基端部外周に1m程の所定間隔毎に折損し易くする切欠溝を複数個所設け、更に地山に打ち込まれた前記普通鋼製の端末鋼管の基端部分をトンネル空間内に突出するように残し、トンネル内周面の支保鋼の延長構築前に端末鋼管の切欠溝個所から折切して支保鋼の構築の支障にならないようにし、先受鋼管の先頭鋼管と中間鋼管とに高張力鋼管を使用することで先受鋼管が軽量となり、それ自体のたわみによる地山のゆるみを抑制するとともに打ち込み作業の労力軽減し且つ安全となり、しかも地山に残される高張力の鋼管が地山の地盤強度を高張力鋼でない鋼製鋼管に比べてより高めることができることを特徴とする、トンネル工事の先受鋼管による掘削工法。
2) 先受鋼管の各鋼管同士のネジ螺合連結にテーパーネジを使用した、前記1)記載のトンネル工事の先受鋼管による掘削工法
3) 地盤改良材としてシリカレジンを使用した、前記1)又は2)記載のトンネル工事の先受鋼管による掘削工法
にある。
【発明の効果】
【0008】
先受鋼管のねじ螺合する先頭鋼管と中間鋼管の鋼管材質として高張力鋼を用い、端末鋼管のみを普通鋼鉄の材質の鋼管とした本発明を、先受鋼管の先頭鋼管・中間鋼管及び端末鋼管の全ての鋼管を高張力鋼とした図示の参考例との対比の上で説明する。本発明は端末鋼管が普通鋼鉄にするだけで参考例に近く、従来のものと比べてこの参考例の高い強度と軽量の特性を略有し、参考例と同様な作業労力を軽減し、且つ安全とする共通利点を有する。
参考例では、先受鋼管の全ての鋼管として高張力鋼を使ったことによって薄肉化ができて1本の先受鋼管の重量を同じ鋼管強度では4割程軽減でき、従来1本の先受鋼管が約50kgでこれに付属の削孔ロッドを加えた合計重量は80~90kg程となり、人力での先受鋼管の継ぎ作業は重労働で、しかも時間がかかるものであった。更に、鋼管の落下・手の持ち作業で足・手を痛め、腰を悪くすること等の人身事故を発生させていたのが、本参考例によれば高張力鋼を用いることで1本の先受鋼管の重さを30kg程にできる(大略4割の重量削減できる)ことで削孔ロッドとの加算合計重量を60~70kgに出来、先受鋼管の継ぎ作業、打ち込み作業の労力の負担がかなり軽減でき、又人身事故を少なくできるものとした。又、作業効率を高めることができる。
【0009】
先受鋼管の鋼管材質を全て高張力鋼とした参考例の場合の自重の軽量化に伴うゆるみの抑制例の大略の計算数値は下記のようになる。
ゆるい土砂(単位体積重量=16N/m3)の場合、
先受鋼管の長さが12.5m、シリカレジン改良径φ450(注入量を10kg/m)とすると、先受鋼管1本あたりの重さを比較する。
従来の先受鋼管の厚みt=6mm 3,320kg(鋼管+改良体)
参考例の先受鋼管の厚みt=3.5mm 3,240kg(鋼管+改良体)
先受鋼管の重さが12.5mあたりで80kg減り、割合としては2.5%減る。
このように、先受鋼管自体の重量を僅かであるが軽減できた。これに加え、高張力鋼の先受鋼の曲げる強度が従来の鋼製の2~3倍を有するので、地盤に与える地盤強度向上は大きいものとなる。よって、ルーズな土砂地山のような崩落の危険対策となりうるものである。
【0010】
これに先受鋼管の継手のねじ螺合をテーパーネジとしたことで継手強度も大巾に向上でき、地山に打ち込んだ高張力先受鋼は軽量で高張力であるので、地山の補強強度を従来のSTK400素材の鋼管に比べ、地山の補強強度を高くできる。
【0011】
この点を詳しく説明すると、長尺先受鋼管に高強度材料を用いることで、AGF鋼管の打設本数を同一本数以下でも地山の崩落を防止できる仕様とした。施工はこれまで同様のドリルジャンボで実施できる。従来AGF鋼管に用いる材質STK400に対し、STK1000の高張力鋼材を採用することで曲げ強度が2.5倍以上となる。
加えて高強度材料の採用により、鋼管の肉厚の薄肉化が図れる。従来AGF鋼管の肉厚6mmの6割の3.5mmとした場合で、鋼管強度は同等以上となる。通常のAGF鋼管の替わりに用いることで軽量化が図れる。鋼管重量も60%以下の約30kgとなる。人ひとりで持ち上げられる重さである。
又、高強度材料を用いることで、小口径φ76.3mmの鋼管の高強度仕様(STK1000、t=3mm以下)も選択して採用できる。小口径φ76.3とφ114.3の普通強度、高強度の4種類を地山状況に応じて使い分けることが可能となる。更には、応用としてφ114.3mmの鋼管内にφ76.3mm鋼管を挿入することで、鋼管強度をアップさせる二重管長尺鋼管先受も可能である。
更に、地山の土荷重が大きい場合の弱点となっていた継手部を、高強度材を用いることで増強が図れる。材質に高張力鋼を使用することでネジ形状にはテーパーネジを採用することができ、採用すればさらなる増強も可能である。
【0012】
よって、不良地山でもこれまでのAGF鋼管の本数を増加することなく、天井の地山補強が可能となる。継手部が増強し、弱点を補強できる。
薄肉化をすれば鋼管重量が低減するため、バケット上で作業性が向上する。作業の安全性も向上する。
地山状況に応じて、普通強度、高強度、小口径、114.3mmを選択可能となる。小口径+114.3mmの二重管方式も可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は本発明の参考例の先受鋼管打ち込みの先受工法を示す説明図である。
図2図2参考例の高張力先受鋼管の打ち込み状態とトンネル内周の支保鋼を示す説明図である。
図3図3参考例の3本継いだ高張力先受鋼管を示す正面図である。
図4図4参考例の高張力先受鋼管の寸法を示す正面図である。
図5図5参考例の切羽での先受鋼管の打ち込み状態を示す説明図である。
図6図6参考例の高張力先受鋼管のテーパーネジによるねじ螺合部と端末鋼管の切欠溝を示す説明図である。
図7図7参考例の先受鋼管の打ち込み機の装着状態を示す説明図である。
図8図8参考例の先受鋼管の打ち込みに使用する削孔ツールの分解説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
参考例の先受鋼管の高張力鋼としてはSTK1000の使用が代表例であるが、他社の高張力鋼の使用も可能である。
参考例の形態で先受鋼管の先頭鋼管と中間鋼管のみを高張力鋼とし、端末鋼管はSTK400の普通鋼材を用いることで本発明の実施例となる。この実施例は参考例の利点を略有する。
又、本発明の先受鋼管の構成鋼管のねじ螺合部はテーパーネジで螺合せず、通常のネジ山が一定寸法の非テーパーネジで連結することが含まれるが、参考例の如くテーパーネジを用いることがネジ螺合部の強度を高めて好ましい。
【実施例
【0015】
図1~8に示す参考例は、12.98m長尺の先受鋼管を形成する長さ3.63mの先頭鋼管・長さ3.05mの中間鋼管及び長さ3.05mの端末鋼管の全ての鋼管の材質としてSTK1000の高張力鋼材を使用して曲げ強度を従来の普通鋼材STK400に比べ2.5倍としている。それで使用した高張力鋼管の口径は114mm程で、その肉厚を3.5mm(従来の普通鋼材の鋼管の肉厚6mmの58%厚み)のものを使用している。又、図6に示すように各高張力鋼管のネジ螺合連結にはテーパーネジを使用している。又、実施例の地盤改良材としてはA液,B液を使用したシリカレジンを使用している。その為のホース,圧送ポンプ等の図面は周知技術であるので省略している。
次に、端末鋼管の高張力鋼管となる基端部には略1m毎に折切用の切欠溝(グルーブ)を設けている。
【0016】
参考例の構造及び符号の説明)
Dは鋼管打込機、DTは鋼管打込機Dに装置した削孔ツール、Kは切羽、Tはトンネル、Sはトンネル内周の支保鋼、Gは上記実施例のトンネル工事の先受鋼管による掘削工法、Kは切羽Kの地肌に吹付ける鏡吹付コンクリート、Sは支保鋼Sに吹付ける吹付コンクリート、1は高張力綱STK1000材を使用した高張力鋼管をテーパーネジで連結して約13m程の長さの長尺にした先受鋼管、1aは同先受鋼管1の高張力先頭鋼管、1bは同素材の高張力中間鋼管、1cは同素材の高張力端末鋼管、3は折切の為に高張力端末鋼管に設けた切欠溝で、いずれの高張力鋼管は肉厚3.5mm,口径114mmで長さは3.5m又は3.05mとしている。各高張力鋼管のねじ連結はテーパーネジを使用している。2,2,2,2は高張力鋼管1のテーパーネジを用いたねじ螺合部である。
は鋼管打込機Dのドリフター、Dは鋼管打込機Dに使用する削孔ツールDTの先頭鋼管1a内に挿入される中継ロッド、Dは同中継ロッドDを打込機Dのヘッドに取付けるシャンクロッド、Dはディスチャージヘッド、Dは先頭鋼管1aの下端に取付けるリングビット、Dは中継ロッドDの下端に取付けるインナービット、Dは中継ロッドDとシャンクロッドDとを接続する異径スリーブである。
【0017】
本参考例では、図1に示すように切羽Kの位置まで鋼管打込機D・削孔ツールDT及び高張力鋼管1a,1b,1cを移動させ、鋼管打込機DのドリフターDに削孔ツールDTを取付ける。
又、切羽Kまでのトンネルの内周には支保鋼Sが施され、吹付コンクリートSが吹付けられている。トンネルの既設の後方では吹付コンクリートSの内側には型枠によってトンネルコンクリート壁が設けられる。
切羽Kの表面には崩落防止・防水の為に鏡吹付コンクリートKが吹付けられている。
【0018】
この切羽Kに鋼管打込機DのドリフターD上に削孔ツールDTを取付ける。この削孔ツールDTに先受鋼管1の高張力鋼の先頭鋼管1a,中間鋼管1b及び端末鋼管1cをテーパーネジのねじ螺合部2,2,2,2を介して連結した先受鋼管1を取付けている。
【0019】
図8に示すように削孔ツールDTのケーシングシュD,ディスチャージヘッドDを介して先受鋼管1の高張力先頭鋼管1a,同中間鋼管1b,同端末鋼管1cが取付けられ、ケーシングシュDを介してリングロストビットのリングビットDが取付けられている。
【0020】
一方、削孔ツールDTのシャンクスリーブDと中継ロッドDとスリーブとを介してインナービットDが取付けられている。先受鋼管1の各鋼管1a,1b,1cはテーパーネジのねじ螺合部2,2,2,2を介して連結されている。
【0021】
切羽Kでの先受鋼管1の打ち込み作業は、図1,2,5に示すように鋼管打込機Dの削孔ツールDTをもって切羽面から切羽前方上方の地山に向けて10°の傾きをもって高張力鋼の先受鋼管1を複数本打ち込む。打ち込まれた先受鋼管1内に軽量のシリカレジンの地盤改良材を圧入し、切羽周辺の地山の地盤改良し、地盤強度を高める。
【0022】
シリカレジンを注入して地山が地盤強化された後、その端末鋼管1cをトンネル内に突出させた部分を切欠溝(グルーブ)3から折切を行う。端末鋼管1cと中間鋼管1bのねじ螺合部も折切する。
【0023】
トンネル突出した端末鋼管1cを折切すれば、トンネル掘削内面にH型鋼の支保鋼Sを付設し、吹付コンクリートSを吹付け安定させ、又掘削した切羽面にも鏡吹付コンクリートKを吹付けて安定化させる。
【0024】
このようにして、先受鋼管1を打ち込みながら掘削と支保鋼施工を行って、トンネル工事を行う。
【0025】
本実施例では、先受鋼管は1本30kg程で、削孔ツールDTを付加して50~70kgにできることで作業が重労働でなく、労力が軽減され、作業が容易で効率的に且つ安全にできるようになる。
【0026】
(本発明の実施形態)
上記参考例において、先受鋼管のうち高張力鋼を使用するのを先頭鋼管1a,中間鋼管1bのみとし、寸法が同じ端末鋼管1cのみをSTK400の普通鋼材で製作して使用することで本発明の実施例にできる。この場合、ねじ螺合は参考例と同様にテーパーネジにできる。
この本発明の実施形態では、折切して大部分廃棄される端末鋼管1cのみSTK400鋼材とすることで先受鋼管1を安価にでき、又折切し易くできる。その他は、参考例の全て高張力鋼を使用する先受鋼管の利点を大略有することでき、従来の全ての鋼管をSTK400のものにするものに比べると、重量も軽減できて作業を容易にできる。又、地中の補強も全部高張力鋼の先受鋼管1の場合と同程度に近いものを得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0027】
本発明は、トンネル工事ばかりでなく法面の掘削作業・都市地下地盤の掘削作業にも使える。
【符号の説明】
【0028】
参考例のトンネル工事の先受鋼管による掘削工法
D 鋼管打込機
ドリフター
中継ロッド
シャンクロッド
ディスチャージヘッド
リングビット
インナービット
異径スリーブ
ケーシングシュ
シャンクスリーブ
DT 削孔ツール
K 切羽
鏡吹付コンクリート
T トンネル
S 支保鋼
吹付コンクリート
1 先受鋼管
1a 高張力先頭鋼管
1b 高張力中間鋼管
1c 高張力端末鋼管
,2,2,2 テーパーネジのねじ螺合部
3 切欠溝
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8