(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-26
(45)【発行日】2022-11-04
(54)【発明の名称】汚泥乾燥方法
(51)【国際特許分類】
C02F 11/12 20190101AFI20221027BHJP
B09B 3/20 20220101ALI20221027BHJP
【FI】
C02F11/12 ZAB
B09B3/20
(21)【出願番号】P 2018185141
(22)【出願日】2018-09-28
【審査請求日】2021-06-21
(31)【優先権主張番号】P 2018143838
(32)【優先日】2018-07-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】511000304
【氏名又は名称】株式会社タスク東海
(73)【特許権者】
【識別番号】513088397
【氏名又は名称】株式会社アイテス
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】嶋田 光夫
(72)【発明者】
【氏名】井田 達也
(72)【発明者】
【氏名】熊谷 俊宏
【審査官】富永 正史
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-185307(JP,A)
【文献】特開2012-236160(JP,A)
【文献】特開2006-026604(JP,A)
【文献】特開2013-034956(JP,A)
【文献】特開2012-122044(JP,A)
【文献】特表2019-502013(JP,A)
【文献】米国特許第05910454(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 11/00-11/20
B09B 3/00- 3/80
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
汚泥用の乾燥促進材であってコーヒー滓を主成分とする含水率25%以下の乾燥促進材に、高含水の汚泥を1/3以下の重量割合で混合攪拌し、含水率を25%以下まで低下させる第一工程と、
前記第一工程で得られた混合乾燥物に、新たな汚泥を1/3以下の重量割合で混合攪拌し、含水率を25%以下まで低下させる第二工程と、
を備えており、前記第二工程以降は、前工程で得られた前記混合乾燥物の一部又は全部に、更に新たな汚泥を1/3以下の重量割合で混合攪拌し、含水率を25%以下に低下させることを繰り返す、汚泥乾燥方法。
【請求項2】
前記第二工程以降、前記混合乾燥物内の前記コーヒー滓の固形分重量比率が30%を下回らないようにする為に、新たなコーヒー滓を添加する、あるいは、新たな乾燥促進材に切り替える、請求項
1に記載の汚泥乾燥方法。
【請求項3】
前記第二工程以降、汚泥の連続投入により乾燥器内の混合乾燥物の重量が増加することから、攪拌乾燥効率が低下しないように、乾燥器から時々乾燥物を所定量抜き取る、請求項
1又は2に記載の汚泥乾燥方法。
【請求項4】
前記乾燥促進材は、コーヒー滓単独、又は、コーヒー滓と汚泥の混合物であってコーヒー滓を固形分重量比率30%以上含有している、請求項1に記載の汚泥乾燥方法。
【請求項5】
前記乾燥促進材に対して1/3以下の重量比で高含水の汚泥を混合して乾燥させた後の混合乾燥物が、新たな乾燥促進材として少なくとも15回以上再利用可能である、請求項1又は4に記載の汚泥乾燥方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書が開示する技術は、汚泥乾燥方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1、2に、含水率が高く、かつ、臭気を伴う汚泥を使って固形燃料を生成する技術が開示されている。特許文献1は、臭気を消すためにコーヒー滓と有機系沈殿汚泥を高含水の活性汚泥に添加して乾燥させる方法を開示している。特許文献1では、含水率50~80%のコーヒー滓を、活性汚泥に対して0.5~2倍の重量割合で混合撹拌する。有機系沈殿汚泥は、エマルジョン又はラテックス含有排水を凝集沈殿処理したときに発生するものを用いる。この有機系沈殿汚泥が効果的に活性汚泥の乾燥を促進する。
【0003】
特許文献2が開示する固形燃料製造方法は次の通りである。高含水有機汚泥と食品廃棄物を混合した配合物に粒状乾燥物を添加して撹拌し、乾燥させて固形燃料を得る。添加する粒状乾燥物は、予め同一配合で高含水有機汚泥と食品廃棄物を混合後、乾燥により含水率20%以下で粒径5mm以下の粒状にしたものである。食品廃棄物としては、コーヒー滓、ふすま、米糠、乾燥おから等が挙げられている。食品廃棄物としてコーヒー滓を使用する場合、高含水有機汚泥と食品廃棄物の混合割合は、高含水有機汚泥:食品廃棄物(含水率60%)=1:0.4~1.0(重量比)が好ましいとされている。乾燥したコーヒー滓の場合は、高含水有機汚泥:食品廃棄物(乾燥)=1:0.2~0.5(重量比)が好ましいとされている。
【0004】
特許文献2では、得られた乾燥粒状物の一部を、次回の配合物(高含水有機汚泥と食品廃棄物の混合物)の乾燥工程に戻すことが提案されている。配合物と戻す乾燥粒状物との割合は、配合物:粒状乾燥物=1:0.1~1.5(重量比)とされている。特許文献2でも、エマルジョン又はラテックス含有排水を凝集沈殿処理したときに発生する有機系沈殿汚泥を添加すると良いとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2012-122044号公報
【文献】特開2014-185307号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1、2の発明者らは、さらに試験・研究を重ね、より簡便で汚泥を処理する技術の向上に努めた。特許文献1では食品廃棄物(コーヒー滓)と有機系沈殿汚泥が汚泥の乾燥を早める乾燥促進材として機能する。特許文献2では粒状乾燥物(高含水有機汚泥と食品廃棄物(コーヒー滓)を混合して乾燥させたもの)が汚泥の乾燥を早める乾燥促進材として機能する。特許文献1、2では、コーヒー滓(含水)は、汚泥に対して2倍程度の重量割合で混合される。乾燥コーヒー滓の場合は汚泥に対して0.5倍程度の重量割合で混合される(特許文献2)。
【0007】
本願の発明者らは、汚泥に対してもっと多くのコーヒー滓を乾燥促進材として用いることで、予想を超える汚泥乾燥が実現できることを見出した。
【0008】
本発明の対象となる汚泥とは、有機系汚泥類と家畜糞尿である。この2つを合わせると、全産業廃棄物中の約50%(有機汚泥1.2億トン/年・家畜糞尿1憶トン/年)を占める膨大な排出量となっている。今現在の処理コスト平均が約10円(処理費や輸送費)であれば、約2兆円規模の処理事業としての規模を有する。発明者らは、前発明(特許文献1、2の発明)に基づく技術により、様々な有機系汚泥類や家畜糞尿の減容化及び排出物の付加価値向上の為の検討を市場で実施してきた。その結果、次のことが明確となった。有機系汚泥類を排出する事業所の数は膨大である。しかもその規模たるや1日の汚泥排出量が5Kg程度/日から100ton/日規模まである。その規模により大きく3つに分類される。即ち、1日の排出量により、小規模施設(1ton以下)・中規模施設(1~10ton)・大規模施設(10ton以上)に分類される。その中でも、小規模施設が全体の95%以上と大部分を占める。それらの小規模施設では、投資効果等より汚泥処理に設備投資などできない。従って、非常に高い処理コストと輸送費(20~35円/kg)をかけて処理をしている。
【0009】
なぜそのようなことになっているのか。それは、今までの汚泥処理技術が中大規模施設のみを対象としたものであり、膨大な設備投資を伴うものであるからに尽きる。例として、下水処理場の場合、全国で10か所以上(全て下水汚泥の1日発生量が50t/日以上の大型施設)に、炭化処理システムを主体とした大型の下水汚泥の乾燥・炭化システムを導入し、下水汚泥の固形燃料化を実施している。下水汚泥の固形燃料に関する日本工業規格(JIS)の制定も行われ、今後も下水汚泥大量排出施設(50t/日以上)を中心に設備投資が進んでいくものと思われる。ただし、その設備費用は、数十億円から80億円程度の規模のものである。
【0010】
それに対し、有機系汚泥類が排出されている施設の95%は、汚泥日量排出量が1t/日以下の小規模排出施設である。例えば化学系の施設を例にとれば、エマルジョン・ラテックス系接着剤や塗料(共に水系)を製造している施設、並びにこれらの水系接着剤や水系塗料を使用している自動車・電気・化学・木材等の各種事業所からは、接着剤や塗料を使用した後に、洗浄等から大量の洗浄水が発生する。それを排水処理することで、1日に発生する排水処理汚泥数十kgから1t/日の事業所が全国に非常に多数存在する。
【0011】
しかし、これらの施設から排出される汚泥に関しては、処理方法も含めて何の手段も開発されていないのが現実である。何故なら、これらの施設では、多額の投資は不可能であり、設備投資するくらいなら、廃棄物処理業者に産業廃棄物として費用(処理費と運搬費で凡そ25~40円/kg程度かかる)を出して処理してもらった方がいいとの考え方が一般的になっていた。ところが近年、処理する側も、堆肥過剰やセメント利用限界などの様々な問題より、今後処理コストのアップが避けられない状態となってきている。その為、汚泥排出事業所は将来にわたり、安定的に処理できなければ、企業の存続にも影響が出かねない状況となってきている。
【0012】
これらの現状を踏まえて、本願の発明者は発想の転換を試みた。我々が今まで開発してきた技術を応用し、大型設備だけではなく小規模施設向けのアナログ的な設備で、安い投資で処理でき、且つ処理コストの低減まで可能な方法があれば画期的なスキームになると判断した。その為には、小規模施設向けの安価なアナログ設備が発明を完成するうえで、非常に大きなポイントとなった。我々は、市販されている様々なバッチ式攪拌装置(設備)の検討を試みた。次の6点が選択の基準である。(1)安価であること。(2)設備が投入物の容器として機能すること。(3)ON-OFF程度の操作で使用できる簡単な設備であること。(4)攪拌により粒状物の乾燥を促進するもので、混練方式ではないこと。(5)できるだけ粉化の少ない設備であること。(6)粒状乾燥物に泥状物を添加して速やかに分散混合できるものであること。これらの6つの基準を満たすものとして、検討の結果、最も小規模な施設に対応するものは、攪拌羽根をもつ水平のたらい形のもの(例えばモルタルミキサ)、更に規模が大きくなった場合には、リボン式ミキサ(リボン形状の羽根を有するもの)が前記6つの基準を満たす、最適な攪拌設備として選択された。これらの設備を攪拌乾燥器として使用することで、小規模規模施設(汚泥日量1t/日以下)に適応可能なシステムの提供が可能となり、小規模から大規模施設の全般に適応可能なスキームの提供が可能となる。
【課題を解決するための手段】
【0013】
発明者らは、これまで、エマルジョンまたはラテックス含有排水を凝集沈殿処理したときに発生する凝集沈殿汚泥とコーヒー滓を使って高含水汚泥を効率良く乾燥させ、固形燃料を得る技術を開発してきた(特許文献1、2)。対象となる汚泥は、下水汚泥、家畜糞尿処理汚泥、各種工場から排出される食品汚泥や凝集沈殿汚泥、飲食関係の厨房等かで発生するグリストラップ汚泥、ペーパースラッジなどであり、様々な業種で大量に発生する。それらの汚泥は、含水率が非常に高く(70%以上)、また、臭気を伴うことから、取扱いが困難である。そのような汚泥は、これまで、専門業者に引き取りを依頼しており、処理に相応のコストを要していた。市場のニーズを調査すると、固形燃料として価値を高めることも有効であるが、それよりも汚泥を低コストで迅速に減容化する技術が望まれていることがわかった。
【0014】
発明者らは、凝集沈殿汚泥を使わずに乾燥を早められないか検討した。汚泥は毎日排出される。臭気のある汚泥を蓄えておき一度に大量に処理するよりも、少量であってもその日に発生した汚泥はその日(あるいは短期間のうちに)乾燥させて減容化無臭化する方がよい。また、汚泥の発生する事業所では、毎日ほぼ一定の量の汚泥が発生し続ける。これらは処理業者に引き取ってもらうまで事業所内に蓄えておく。臭気の強い泥状物を事業所内に蓄積することは、環境上・衛生上もいいことではない。発明者らは、毎日発生する汚泥を、前述した撹拌乾燥器(モルタルミキサやリボン式ミキサ)を設置しておき、そこに発生した汚泥を投げこむだけで、自動的に自然乾燥で汚泥処理できるシステムを想定した。そのような方法で使用可能な乾燥促進材の開発を試みた。
【0015】
乾燥促進材を検討する場合、通常は、如何に少量の乾燥促進材で対象物(汚泥)を乾燥させられるかに焦点を当てるところである。一方、市場で販売されるコーヒー飲料の量は膨大であり、コーヒー滓は大量に排出される。それに伴い産業廃棄物として大量のコーヒー滓が全国各所で排出されている。しかも、コーヒー滓は以外にも有効なリサイクル処理が確立していない。一部には、消臭機能・燃料使用等言われているが、現実的には大部分のコーヒー滓は、処理業者に廃棄物(マイナス原料)として排出され、堆肥等で処理されているのが現実である。しかも、堆肥としての使用に関しては、一部から問題点も指摘されており、現時点では排出飲料水メーカーも有効なリサイクル処方は持っていない。そこで発明者らは、発想を逆転し、非効率的であろうと推測されたが、少量の汚泥を、汚泥の量に対して相対的に大量のコーヒー滓を使って乾燥させることを試みた。
【0016】
発明者らは、コーヒー滓を主成分とする乾燥促進材に対して重量比で1/3以下の高含水の汚泥を混合・撹拌すると、短時間で乾燥できるとともに、乾燥後の混合物が良好な乾燥促進材として再利用できることを見出した。1/3以上では、混合直後の含水率が高くなり、混合物の含水率を25%以下にまで下げるには長時間の攪拌が必要となる。それにより、攪拌に必要な電気エネルギー消費が大幅に大きくなり、処理コストの上昇を招く。汚泥1/3以下の場合、通常の攪拌時間は8時間、汚泥1/3倍以上では12時間以上を要する。コーヒー滓に対する汚泥の割合を減らすほど乾燥が促進されることは当然に予想されることではあるが、汚泥に対して3倍以上の乾燥促進材を用いるという発想は常識的ではない。もはや「促進材」の域を超える量であるし、撹拌乾燥器(例えばモルタルミキサやリボン式ミキサ)の容量の半分未満しか汚泥を処理できなくなり、効率が悪いと推測されるからである。
【0017】
しかしながら、先に述べたように、少量であっても毎日汚泥を処理できる方がよい。発明者らは、より低コストの乾燥方法を求めて試行錯誤を繰り返し、乾燥促進材に混合する汚泥の量を重量割合で1/3以下にすると、熱量を加えることなく撹拌するだけで、しかも短時間で、混合物の含水率が25%以下まで乾燥できることを見出した。含水率25%は、自然乾燥で到達可能な含水率であるとともに、25%以下に含水率が下がれば、手に取っても全く手に付着しない無臭の乾燥物となり、保存してもかびの発生や腐敗はないものとなり、減容化としても十分である。特に、自然乾燥方式での乾燥は、乾燥物が25%以下まで乾燥された場合は、ほぼ無臭化できる。また、混合物を乾燥させたものが新たに乾燥促進材として利用できる。即ち、乾燥促進材に対して重量比で1/3以下の汚泥を投入して混合物を乾燥させた翌日にまた所定量の汚泥を投入することがきる。乾燥させた混合物に手を加える必要がなく、毎日新たな汚泥を投入して撹拌混合するだけでよい。
【0018】
汚泥よりもはるかに乾燥促進材が多いと、撹拌した際に汚泥が細かく分散し、コーヒー滓の適度な凝集力と耐水性と相まって乾燥が早まるものと推測される。更に撹拌により、分散して粒状化するため、拡散効果により更に乾燥が促進される。乾燥した混合物は、3-5mm以下の粒状となる。汚泥と乾燥促進材を混合撹拌して乾燥させた混合物を新たな乾燥促進材として再利用する毎にコーヒー滓の割合は減っていく。しかしながら、汚泥が大量の粒状物(即ち乾燥促進材)の中に広く拡散することにより、汚泥は素早く乾燥する。結果的に、大量の乾燥促進材の中で少量の汚泥を乾燥させることを繰り返す方が、乾燥効率がよい。
【0019】
乾燥させた混合物が永久に乾燥促進材として再利用できるわけではないが、汚泥の投入量を調整すれば、15回以上は成分調整をせずに連続して汚泥を乾燥させることができる。すなわち、本明細書が開示する乾燥促進材は、最初の乾燥促進材に対して1/3以下の重量比で高含水の汚泥を混合して乾燥させた後の混合乾燥物が、新たな乾燥促進材として少なくとも15回以上は再利用が可能である。1か月30日から休日を除く稼働日が25日程度と仮定すると、概ね1か月に2回以下の成分調整(新たな乾燥促進材との入替を含む)だけで、毎日汚泥を乾燥させることができる。
【0020】
本明細書が開示する乾燥促進材は、コーヒー滓を主成分とする含水率25%以下のものである。本明細書が開示する乾燥促進材は、コーヒー滓単独、又は、コーヒー滓と汚泥の混合物であってコーヒー滓を固形分重量比率30%以上含有していることが好ましい。固形分重量比率30%とは、コーヒー滓の固形分と汚泥の固形分の総重量の30%以上がコーヒー滓であることを意味する。
【0021】
本明細書が開示する乾燥促進材は、高含水率の汚泥を乾燥促進材に対して1/3以下の重量割合で混合撹拌して汚泥を乾燥させた後の混合物が新たな乾燥促進材として15回以上再利用可能である。即ち、最初の乾燥促進材に対して毎日新たな汚泥を加えて乾燥することを一か月続けられることになる。
【0022】
本明細書は、上記した乾燥促進材を用いた汚泥乾燥方法を提供する。まず、本明細書が開示する乾燥促進材に、高含水の汚泥を1/3以下の重量割合で混合撹拌し、含水率を25%以下まで低下させる(第一工程)。次に、第一工程で得られた混合乾燥物に、新たな汚泥を1/3以下の重量割合で混合撹拌し、含水率を25%以下まで低下させる(第二工程)。第二工程以降は、前工程で得られた混合乾燥物の一部又は全部に、更に新たな汚泥を1/3以下の重量割合で混合撹拌し、含水率を25%以下まで低下させることを繰り返す。ここで、第二工程以降、汚泥とコーヒー滓の混合物におけるコーヒー滓の固形分重量比が30%を下回らないように別の新たな汚泥の量を調整する、あるいは、新たな乾燥促進材を加えるとよい。コーヒー滓の固形分重量比30%以上を保持することで、汚泥が塊状にならず、撹拌した際に汚泥が細かく分散し、コーヒー滓の適度な凝集力と耐水性と相まって乾燥が早まるものと推測される。
【0023】
より具体的には、前述したように汚泥を毎日処理できるボックスと考え、予めオープン型の攪拌乾燥器(モルタルミキサやリボン式ミキサなど)に乾燥促進材を充填しておき、そこに、重量比で乾燥促進材の1/3以下の汚泥を投入して攪拌乾燥により乾燥させる。乾燥後の混合乾燥物は、新たな乾燥促進材として少なくとも15回以上再利用可能となる。撹拌乾燥器の使用においては、乾燥のための熱量を加える必要はなく、必要なエネルギーは撹拌のための電気エネルギーだけで済む(もちろん、加熱することによる乾燥を否定するものではない)。
【0024】
コーヒー滓の固形分重量比が30%を下回らないようにするには、別の新たな汚泥の量を調整するか、あるいは、新たな乾燥促進材を加えるとよい。また、撹拌装置の容量にも限界があるので、定期的に、前工程で得られた混合物から所定量を取り除くとよい。その過程で、汚泥の連続投入により、汚泥の固形分が乾燥器内に残存していく為、徐々に乾燥器内の混合乾燥物(乾燥促進材)の重量は徐々に増加していく。したがって、乾燥器内の混合乾燥物(乾燥促進材)の量を調整する為、随時、混合乾燥物(乾燥促進材)の抜き取りを行うことで、乾燥器内の混合乾燥物(乾燥促進材)を適正量に保つ。更に、汚泥の連続投入回数が増加するに伴い、混合乾燥物内の汚泥とコーヒー滓の固形分重量比が連続的に変化する。つまり、汚泥投入回数が増加するに従い、コーヒー滓の固形分重量比率は低下し、汚泥の固形分重量比率が増加していく。その際、コーヒー滓の固形分重量比が30%を下回ると、徐々に乾燥促進機能が低下している。そうなった場合は、新たなコーヒー滓を加えて乾燥促進機能を回復させる方法か、乾燥促進核材の全面入れ替えをおこなう。それにより、乾燥促進材としての機能である汚泥の細粒分散化が回復し、コーヒー滓の適度な凝集力と耐水性と相まって乾燥が早まる。
【0025】
本明細書が開示する技術の詳細とさらなる改良は以下の「発明を実施するための形態」にて説明する。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【発明を実施するための形態】
【0027】
乾燥の対象となる汚泥は、下水汚泥、家畜糞尿処理汚泥、各種工場から排出される食品汚泥や凝集沈殿汚泥、飲食関係の厨房等かで発生するグリストラップ汚泥、ペーパースラッジなどである。これらの汚泥は、含水率が非常に高く(通常70%~90%)、また、臭気を伴うことから、取扱いが困難である。そのような汚泥は、これまで、専門業者に引き取りを依頼しており、処理に相応のコストを要していた。
【0028】
本発明は、産業廃棄物であるコーヒー滓を乾燥促進材として利用することで、汚泥を安価に迅速に乾燥させることができる。コーヒー滓は以外にも有効なリサイクル処理が確立していない。一部には、消臭機能・燃料使用等言われているが、現実的には大部分のコーヒー滓は、処理業者に廃棄物(マイナス原料)として排出され、堆肥等で処理されているのが現実である。しかも、堆肥としての使用に関しては、一部から問題点も指摘されており、現時点では排出飲料水メーカーも有効なリサイクル処方は持っていない。
【0029】
コーヒー滓と汚泥の混合物を乾燥させたもの(乾燥混合物)は、新たな乾燥促進材として再利用ができる。乾燥促進材に汚泥を混合撹拌し、得られる乾燥混合物に新たな汚泥を混合撹拌する工程を繰り返すことで、より安価に汚泥を処理することが可能になる。工程を繰り返すと乾燥混合物におけるコーヒー滓の割合が減少していくが、後述するように、乾燥混合物(即ち乾燥促進材)よりも少ない量(重量比)の新たな汚泥を投入すると、コーヒー滓の割合が多い場合と比較して概して遜色なく新たな汚泥を乾燥させることができる。当然ながら、乾燥促進剤を無限に再利用することはできないが、再利用のサイクルを数回~数十回繰り返す毎に適宜に新たな乾燥促進材(即ち乾燥コーヒー滓)を加えることで、再び乾燥促進効果が戻る。後述するが、試験により、少なくとも15回以上の繰り返しが可能であるとの結果を得ている。
【0030】
本発明の乾燥促進材は、再利用可能であるが、最初に投入する乾燥促進材は、含水率25%以下のコーヒー滓を主成分とするのが好ましい。乾燥促進材の全てがコーヒー滓であってもよいし、汚泥とコーヒー滓の混合物であってコーヒー滓と汚泥の固形分総重量に対してコーヒー滓の割合が固形分重量比で30%以上含有しているとよい。そのような乾燥促進材に対して高含水の汚泥を1/3以下の重量割合で混合撹拌すると、汚泥が迅速に乾燥するだけでなく、乾燥後の混合物が新たな乾燥促進材として25回程度は再利用が可能となる。コーヒー滓を使うので、乾燥後の混合物においては臭気も解消される。
【0031】
汚泥乾燥方法の一実施例を、
図1を参照して説明する。
【0032】
(第一工程)新しい乾燥促進材3をミキサ2に投入する(A)。ミキサとしては、例えば、モルタルミキサやリボン式ミキサなど、汎用のものでよいが、投入口が常に開いているオープン型であることが望ましい。コーヒー滓を主成分とする乾燥促進材3は、含水率が25%以下であり、また、3mm程度の粒状である。ミキサ2に、重量比で乾燥促進材3の1/3以下の高含水汚泥4を投入する(B)。乾燥促進材3と汚泥4の混合物をミキサ2で混合撹拌し、含水率を25%以下まで低下させる(C)。乾燥促進材3の重量が投入する汚泥4の重量よりも3倍以上多いので、混合撹拌の開始とともに汚泥は乾燥促進材3の中に拡散し、コーヒー滓の凝集力と耐水性の作用により粒状化していく。汚泥は練り状になるとミキサ2の羽根に粘着するなどして乾燥の効率が著しく低下する。投入する汚泥に比べて大量の乾燥促進材3を使うことで、汚泥は速やかに粒状化する。汚泥は1日で含水率25%以下まで乾燥する。
【0033】
(第二工程)第一工程で得られた含水率25%以下の混合物に新たな高含水の汚泥4を加え、混合撹拌する。この工程は、
図1の(C)の工程とその次に行われる(B)の工程である。即ち、前の第一工程で得られた混合乾燥物を、新たな乾燥促進材として再利用する。ここで投入する汚泥4の量は、第一工程で得られた含水率25%以下の混合乾燥物の1/3以下の重量割合である。第一工程の場合と比較して、新たな乾燥促進材の中のコーヒー滓の割合は減っているが、高含水の汚泥4に対して乾燥促進材の重量が大きいので、汚泥4は、乾燥促進材の中へ拡散し、練り状にならずに粒状化する。第二工程でも、新たに投入した汚泥と乾燥促進材の混合物の含水率が25%以下となるまで混合撹拌する(
図1(B)から(C)へ)。この場合も、1日で含水率が25%以下まで低下する。
【0034】
(第三工程)第二工程で得られた含水率25%以下の混合乾燥物に、さらに新たな高含水の汚泥4を加え、混合撹拌する。この第三工程は、第二工程の繰り返しである。ここで加える汚泥4の量も、第二工程の場合と同様に、前工程(第二工程)で得られた混合乾燥物の1/3以下の重量割合とする。
【0035】
以後、第三工程を繰り返す。即ち、
図1の(B)と(C)を繰り返す。ただし、そのままでは、ミキサ2の中の混合乾燥物の容量が増えてしまう。ミキサ2の中の混合乾燥物の容量がミキサ2の許容値を超える前に、適当な量の混合乾燥物をミキサ2から取り出した後、高含水の汚泥4を加える。この工程は、
図1の(C)から(D)を経由して(B)へ移ることに相当する。
【0036】
また、第三工程を繰り返していると、乾燥促進材におけるコーヒー滓の割合が減少していく。第三工程を無限に繰り返すことができるわけではない。汚泥と乾燥促進材の混合物の乾燥度合を見計らい、適当なタイミングで新たな乾燥促進材6(含水率25%以下のコーヒー滓を固形分重量比で30%以上含むもの)を加え、混合撹拌する。この工程は、
図1の(B)から(E)を経由して(C)へ移ることに相当する。
【0037】
高含水の汚泥に対して重量比で3倍以上の乾燥促進材を加えて混合撹拌することを繰り返すことで、結果的に大量の汚泥を乾燥させることができる。
【0038】
図2と
図3を参照して本明細書が開示する乾燥方法の試験結果を示す。
図2は、試験結果を示す表であり、
図3は、汚泥と乾燥促進材を混合撹拌した混合物の翌日の含水率と気温の変化を示すグラフである。乾燥促進材は、初日に30[kg]をミキサに入れただけである。投入する汚泥は、食品の汚泥であり、含水率は90%である。なお、3日目と10日目は日曜日に該当し、新たな汚泥の投入は行わなかった。
【0039】
日曜を除く毎日、汚泥を6[kg]ずつ投入し、混合撹拌する。使用した攪拌機は、モルタルミキサであり、その容量は100[kg]以上であるので、11日目まで、混合物は取り出さなかった。
【0040】
添加した汚泥の乾燥物が増加していくことから、汚泥と乾燥促進材の固形分重量比は日ごとに汚泥乾燥物が増加していく。1日後の汚泥と乾燥促進材の重量比は、汚泥:乾燥促進材=0.1:5である。11日後の重量比は、汚泥:乾燥促進材=1:5である。添加した汚泥の固形分は乾燥促進材中に残るが、水分は蒸発する。
【0041】
2日目は平均気温が低かったので、翌日含水率が23.38[%]まで上昇しているが、その他の日は、翌日含水率は概ね20[%]以下となっている。11日目まで、日曜日を除く毎日6[kg]を投入したが、最終日の翌日含水率は19[%]であり、乾燥促進材の効果が下がっていないことがわかる。
【0042】
図4に別の試験結果を示す。
図4は、コーヒー滓単体の乾燥促進材に対して汚泥を毎日、乾燥促進材/汚泥=3/1の割合で混合し撹拌した試験の結果である。グラフは、含水率25%以下まで乾燥後の成分比率(コーヒー滓固形分と汚泥固形分の重量比)を示している。
図5は比較例であり、初期の乾燥促進材として、汚泥とコーヒー滓の固形分重量比が汚泥/コーヒー滓=74/26のものを使ったときの結果である。
図4及び
図5の左端の「初回」グラフは、乾燥対象の汚泥の投入前の乾燥促進材における汚泥/コーヒー滓の割合を示している。
図5も、毎日、乾燥促進材/汚泥=3/1の割合で混合し撹拌した試験の結果である。即ち、
図5の比較例は、コーヒー滓の固形分含有量が30%に満たない乾燥促進材を使ったときの結果である。比較例では、乾燥促進材として繰り返し利用可能であった回数は5回が限界であった。5回目の段階で乾燥促進材内の固形物全体重量に対するコーヒー滓の固形分比率は21.6%であった。6回目より、含水率が26%以上となり、乾燥性が低下した。
【0043】
これに対して、初期の乾燥促進材としてコーヒー滓単体を用いた場合(
図4)、汚泥を25日間連続して添加しても乾燥促進材としての性能に変化はなく、毎回、含水率20%以下を達成できた。さらに乾燥物の粒度も増大しなかった。25回目における乾燥後の粒度は3mm以下が92%であった。なお、開始時は粒度3mm以下が100%である。
【0044】
以上の結果より、含水率25%以下のコーヒー滓の含有量(固形分比率)が30%以上であれば、乾燥促進材として良好な性能を示すとともに、繰り返し利用も可能となる。そして、含水率25%以下のコーヒー滓の含有量が30%を下回らないように乾燥促進材を追加すれば、毎日(あるいは数日おきに)汚泥を乾燥/減容することをずっと継続することが可能となる。
【0045】
もう一つの実施例として、リボン式ミキサでの試験結果を示す(
図6)。この実施例では、1日当たり凝集沈殿汚泥50kgを処理した。
【0046】
試験条件は以下の通りである。
・攪拌乾燥設備:0.8m3のリボン式ミキサ
・乾燥促進材 :200kgを投入
・汚泥投入量 :1日あたり50kgの汚泥含水率79%の凝集沈殿汚泥を投入
・攪拌乾燥時間:1日あたり8時間
【0047】
ここで、凝集沈殿汚泥とは、より詳しくは、エマルジョンまたはラテックス含有排水を凝集沈殿処理したときに発生する凝集沈殿汚泥である。
【0048】
測定とチェック項目は以下の通りである。
・含水率測定:投入翌日に、その日の汚泥を添加する前に測定
・外気温 :ロガー連続測定
・重量測定 :撹拌機内の重量測定(1週間に1回)
・測定期間 :1ヶ月(投入回数21回)
【0049】
なお、
図6の表における気温は、24時間の平均気温である。回数の増加に伴う、0.1mm以下の粉化物の発生はほとんど見られず、リボン式ミキサは、モルタルミキサより粉化しないことが明確になった。今回は抜き取りも行わず、土日を除く毎日、1日一回(合計で21回)、汚泥を投入した。それでも全く問題を生じなかった。すなわち、毎回、1日あたり8時間の撹拌だけで、含水率を概ね25%以下に抑えることができた。
【0050】
本明細書が開示する乾燥促進材は、産業廃棄物であるコーヒー滓を主成分とするので安価に入手できる。しかも、コーヒー滓は以外にも有効なリサイクル処理が確立していない。一部には、消臭機能・燃料使用等言われているが、現実的には大部分のコーヒー滓は、処理業者に廃棄物(マイナス原料)として排出され、堆肥等で処理されているのが現実である。しかも、堆肥としての使用に関しては、一部から問題点も指摘されており、現時点では排出飲料水メーカーも有効なリサイクル処方は持っていない。本明細書が開示する乾燥促進材は、その重量よりも少ない汚泥を混合・撹拌することで、得られた乾燥混合物を新たな乾燥促進材として再利用することができる。
【0051】
再利用する場合にも、乾燥促進材に対して重量比で同量未満の汚泥を混合、撹拌することで、混合物は、多数回の再利用に耐え得る。再利用の毎に、あるいは、特定回数の再利用のたびに、混合物の一部を取出し、混合物の総量を所定の許容量以下に保つとよい。また、乾燥物の粒度をモニタしつつ、適当な再利用回数にて、新たな(乾燥コーヒー滓を主成分とする)乾燥促進材を加えるとよい。
【0052】
本明細書が開示する乾燥促進材、および、それを用いた汚泥乾燥方法には、以下の効果が期待できる。
(1)汚泥が発生する現場において小規模施設での施設内処理が可能となる。
(2)汚泥発生現場にて処理可能であるため、汚泥状態での外部搬出が不要。
(3)汚泥発生現場での減容化による乾燥物への転換(扱いが容易となる。また臭気が改善される)。
(4)汚泥減容化によって廃棄物が低減する(1/3~1/4程度に低減できる)。
(5)常温乾燥が可能であり(加熱するコストが不要)、施設内での臭気も改善する。
(6)発生した汚泥を連続的(毎日)に処理することで、汚泥での保存が無くなり衛生的である。
(7)排出乾燥物を、乾燥促進材として有効利用できる。排出乾燥物は、燃料・堆肥等にも利用できる。
(8)設備がシンプルで非常に安価であり、小規模施設でも処理コスト低減が可能である。
(9)省エネルギーシステムであり、二酸化炭素削減効果がある。
【0053】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成し得るものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。