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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-26
(45)【発行日】2022-11-04
(54)【発明の名称】ターンバックル用工具
(51)【国際特許分類】
   B25B 21/00 20060101AFI20221027BHJP
   B25B 13/48 20060101ALI20221027BHJP
【FI】
B25B21/00 H
B25B13/48 C
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021089590
(22)【出願日】2021-05-27
【審査請求日】2021-05-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000198787
【氏名又は名称】積水ハウス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】504082025
【氏名又は名称】株式会社イング
(74)【代理人】
【識別番号】100117101
【弁理士】
【氏名又は名称】西木 信夫
(74)【代理人】
【識別番号】100120318
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 朋浩
(72)【発明者】
【氏名】疊 将志
(72)【発明者】
【氏名】兼安 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】勝木 恵太
(72)【発明者】
【氏名】潮見 真生
(72)【発明者】
【氏名】土屋 明子
【審査官】大光 太朗
(56)【参考文献】
【文献】特開平05-008181(JP,A)
【文献】特開平05-069343(JP,A)
【文献】特開平09-295279(JP,A)
【文献】特開2011-025336(JP,A)
【文献】登録実用新案第3002955(JP,U)
【文献】特開2018-134707(JP,A)
【文献】特開2018-012155(JP,A)
【文献】特開平8-112772(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25B 21/00
B25B 13/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブレース鋼に対して回転自在なターンバックル胴を有するターンバックルに用いるターンバックル用工具であって、
本体ケースと、
第1端が上記本体ケースから突出しており、当該第1端が電動回転工具の出力端と嵌合して第1軸線周りに回転する入力軸と、
上記入力軸において上記第1端と反対側の第2端に位置し上記本体ケース内に収容されるウォームギアと、
中心孔と連続して1つの空間を形成する開口を有しており、上記入力軸の第1軸線と直交する仮想直線に平行な第2軸線を中心として回転するウォームホイールと、を備えるターンバックル用工具であって、
上記ウォームホイールは、上記本体ケースに回転自在に支持された状態で上記ウォームギアと噛合しており、
上記開口は、上記第2軸線の周方向に沿った開口幅が上記ブレース鋼の外径寸法よりも大きく、且つ上記ターンバックル胴の軸線方向の中央部分の最小外形寸法より小さく、
上記中心孔は、上記ターンバックル胴が上記第2軸線に沿って挿入可能であって、上記ウォームホイールの上記第2軸線を中心とした回転を、挿入された上記ターンバックル胴に伝達可能に嵌合し、中心孔径が上記開口幅よりも大きいターンバックル用工具。
【請求項2】
上記中心孔には、径方向外向きへ拡がる膨出空間が形成されており、
上記膨出空間は、上記開口幅よりも幅広であり、且つ、上記中心孔径よりも幅狭な半円形状である請求項1に記載のターンバックル用工具。
【請求項3】
上記本体ケースは、上記第1軸線と平行な方向であって上記入力軸が上記本体ケースから突出する向きと逆向きに開口する案内部が設けられており、上記ウォームホイールの開口は、上記案内部と連通可能である請求項1又は2に記載のターンバックル用工具。
【請求項4】
上記開口幅は、上記ウォームギアの上記第1軸線方向に沿った歯面長さよりも小さい請求項1から3のいずれかに記載のターンバックル用工具。
【請求項5】
上記本体ケースの外面に位置するマグネットを更に備えている請求項1から4のいずれかに記載のターンバックル用工具。
【請求項6】
上記ウォームホイールにおいて少なくとも上記中心孔を区画する部分は、合成樹脂製である請求項1から5のいずれかに記載のターンバックル用工具。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ターンバックルの長さを調節するためのターンバックル用工具に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1において開示するターンバックル用工具Aは、所定の間隔を隔てて配置された一対の取付板1、1の間において、1つの外歯歯車2と、2つの押えローラ3、3とがそれぞれ回転自在に設けられている。チェン4が一対の押え部材3、3によって支持され、上部位置の外歯歯車2に噛み合うように配置されている。ターンバックル用工具Aは、ターンバックル8をターンバックル保持用孔部22に保持した状態で、チェン4を所定の方向に引っ張ることでターンバックル8を回転させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】実登2599795号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のターンバックル用工具は、動力を伝達するため歯車やチェン4等の複数の要素から構成されるものであった。しかしながら、作業者は、ターンバックルを回転させる際、自分の肩よりも高い位置に工具を保持しながら作業しなければならないことがあるため、工具のサイズ及び重量が大きい場合、円滑に作業を行うのが困難であった。
【0005】
本発明は、前述された事情に鑑みてなされたものであり、軽量且つコンパクトであり、円滑に作業を行うことができるターンバックル用工具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1) 本発明に係るターンバックル用工具は、本体ケースと、第1端が上記本体ケースから突出しており、当該第1端が電動回転工具の出力端と嵌合して第1軸線周りに回転する入力軸と、上記入力軸の第2端部に位置するウォームギアと、ターンバックルが中心孔へ挿入可能な開口を有しており、当該開口を上記本体ケースから露出可能に上記本体ケース内に位置しており、上記入力軸の第1軸線と直交する仮想直線に平行な第2軸線を中心として回転するウォームホイールと、を備えている。上記ウォームホイールは、上記本体ケースに回転自在に支持された状態で上記ウォームギアと噛合する。
【0007】
上記構成によれば、ウォームギアにより回転されるウォームホイールの開口にターンバックルが挿入されることにより、電動回転工具の出力によってターンバックルを回転するのに足るトルクがウォームホイールに付与される。また、ウォームホイールの回転数を低くして、ターンバックル用工具が扱いやすいものになる。更に、ウォームホイールは、電動回転工具によって操作されるウォームギアの回転方向に応じて正回転又は逆回転可能である。
【0008】
(2) 好ましくは、上記本体ケースは、上記第1軸線と平行な方向であって上記入力軸が上記本体ケースから突出する向きと逆向きに開口する案内部が設けられており、上記ウォームホイールの開口は、上記案内部と連通可能である。
【0009】
上記構成によれば、案内部を通じて、ターンバックル又はブレース鋼がウォームホイールの開口に挿入される。また、水平の状態で保持されるターンバックルに対してはターンバックル用工具10を容易に嵌め込むことが可能となる。
【0010】
(3) 好ましくは、上記ウォームホイールの開口の幅は、上記中心孔の径よりも小さい。
【0011】
上記構成によれば、ウォームホイールの開口を通じてブレース鋼が中心孔に挿入され、ターンバックル用工具がブレース鋼の軸方向に移動されることによってターンバックルが中心孔に挿入される。中心孔に位置するターンバックルの外形寸法が開口の幅より広ければ、中心孔に挿入されているターンバックルが開口を通じて外れることが防止される。
【0012】
(4) 好ましくは、上記ウォームホイールの開口の幅は、上記ウォームギアの上記第1軸線方向に沿った歯面長さよりも小さい。
【0013】
上記構成によれば、ウォームホイールは、ウォームホイールの開口がウォームギアを向いているときにもウォームギアと噛合する。
【0014】
(5) 好ましくは、上記本体ケースの外面に位置するマグネットを更に備えている。
【0015】
上記構成によれば、マグネットにより、ターンバックル用工具が梁等の金属部材に固定される。
【0016】
(6) 好ましくは、上記ウォームホイールにおいて少なくとも上記中心孔を区画する部分は、合成樹脂製である。
【0017】
上記構成によれば、ウォームホイールとの接触によってターンバックルが損傷することが防止できる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、軽量且つコンパクトであり、円滑に作業を行うことができるターンバックル用工具が提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1図1(a)は、ターンバックル用工具10を使用してターンバックル80の長さを調節している状態を示す説明図であり、図1(b)は、羽子板83と梁95とを接合する状態を示す説明図である。
図2図2は、本発明の実施形態に係るターンバックル用工具10を示す右側面図である。
図3図3は、図2に示すターンバックル用工具10の背面図である。
図4図4は、図3のA-A線断面図について、ターンバックル用工具10にターンバックル胴81が挿入された状態で示す図である。
図5図5(a)から(d)は、本発明の実施形態に係るターンバックル用工具10の長さ調節について示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態について説明する。なお、以下に説明される実施形態は本発明の一例にすぎず、本発明の要旨を変更しない範囲で、本発明の実施形態を適宜変更できることは言うまでもない。また、以下の説明においては、入力軸12が延びる方向が前後方向4であり、欠歯歯車15(ウォームホイールの一例)の回転軸が延びる方向であって、前後方向4と直交する方向が左右方向5であり、前後方向4及び左右方向5のいずれとも直交する方向が上下方向6である。
【0021】
[ターンバックル80]
軽量鉄骨による建築においては、柱と梁を補強する目的でブレース79が設けられる。例えば、作業者は、図1(a)に示されるように、ブレース鋼82に対してターンバックル胴81を回転させてターンバックル80の長さを調節する。ターンバックル80の長さ調節の際には、インパクトドライバ90(電動回転工具の一例)の出力端91に形成された凹部92(図1(b)参照)にターンバックル用工具10が嵌められる。
【0022】
図1(b)に示されるように、ターンバックル80の長さが調節された後は、羽子板83に設けられた貫通孔84が天井を構成する梁95等の貫通孔96に合わされボルト99及びナット100で固定される。梁95は、例えばH形鋼である。梁95への羽子板83の固定には、インパクトドライバ90が用いられる。
【0023】
[ターンバックル用工具10]
ターンバックル用工具10は、インパクトドライバ90から入力された回転力をターンバックル80のターンバックル胴81に伝達するための工具である。
【0024】
図4に示されるように、ターンバックル用工具10は、本体ケース11と、本体ケース11から突出する入力軸12と、一対の支持部材13と、ウォームギア14と、欠歯歯車15(ウォームホイールの一例)とを備える。
【0025】
[本体ケース11]
図2から図4に示されるように、本体ケース11は、入力軸12の一部、ウォームギア14、一対の支持部材13、及び欠歯歯車15を収容する。
【0026】
本体ケース11は、第1ケース20と、第2ケース21とを有する。
【0027】
第1ケース20は、欠歯歯車15を回転自在に支持する。第1ケース20は、一対の平板材22(図3参照)が枠28の左右方向5の端面それぞれに当接されて箱状に構成される。一対の平板材22はそれぞれ、前後方向4及び上下方向6に沿って拡がる主面を有する同形状のものである。各平板材22は、概ね円盤形状であって、下方へ向かって突出する2つの突片26,27(図2参照)が前後方向4に離れて位置する。各平板材22の中央付近には円形のカバー穴29が形成されており、カバー穴29は前方へ向かって開口する案内部30が形成されている。枠28は、平板材22の円盤形状の外形に沿うように湾曲したC字形状である(図4参照)。一対の平板材22は、一方の平板材22に設けられた6つの貫通孔が、他方の平板材22に設けられた6つの貫通孔にそれぞれ合わされた状態で、それぞれの貫通孔に一方側から六角穴付ボルト60が挿入されて他方側に設けられたボルト受け61に螺合されることによって、枠28の両端面と嵌合した状態で一体に締結されて箱形状を形成している。箱形状の第1ケース20の内部空間には、欠歯歯車15が収容される。
【0028】
図2から図4に示されるように、第2ケース21は、平板材がコの字状に折り曲げられてなる。第2ケース21は、上方、前方、後方に開口する姿勢で第1ケース20の突片26,27を覆う。第2ケース21は、第1ケース20に組み合わされた状態で六角穴付ボルト62が左右方向5に沿って第1ケース20及び第2ケース21に挿入されてボルト受け63に螺合され、第1ケース20と一体に締結されている。第2ケースの内部空間には、ウォームギア14及び入力軸12の一部が収容される。
【0029】
第2ケース21の下面には、台座部31と、板状マグネット32(マグネットの一例)が設けられている。
【0030】
台座部31は、概ね平板形状であり、第2ケース21の下面にボルト101及びナット102によって固定されている。板状マグネット32は、台座部31の外面に接着されている。
【0031】
[入力軸12]
図2から図4に示されるように、入力軸12は、第1ケース20の前後方向4に沿って内外に延びる。入力軸12は、インパクトドライバ90の回転力が入力されることで、前後方向4に沿った第1軸線L1周りに回転する。第1軸線L1は、一対の平板材22の左右方向5の中央に位置する。入力軸12は、第1ケース20の突片26,27にそれぞれ挟まれて支持される一対の支持部材13により回転自在に支持されている。
【0032】
入力軸12は、第1端部35と、第2端部36とを有する。
【0033】
第1端部35は、入力軸12の前後方向4の後方に位置しており(図4参照)、本体ケース11の外部にある。
【0034】
第1端部35は、突出端37と、フランジ38とを有する。
【0035】
突出端37は、インパクトドライバ90の出力端91と嵌合する。突出端37は、第1軸線L1を中心とする六角柱形状であり、フランジ38から後方へ突出する。突出端37の前後方向4に沿った長さは、使用に際してターンバックル用工具10がインパクトドライバ90から容易に脱落しないように設定される。
【0036】
図2から図4に示されるように、フランジ38は突出端37の前端から第1軸線L1周りの外向きへ突出する。フランジ38の後端面には第1軸線L1周りに6つの凹陥部が形成されており、各凹陥部に円柱形状の着脱マグネット40が嵌め込まれている。
【0037】
図2及び図4に示されるように、円筒スペーサ39が、フランジ38と支持部材13との間に位置する。円筒スペーサ39は円筒形状であり、入力軸12に外嵌されている。円筒スペーサ39によって、フランジ38が支持部材13から後方に離間される。
【0038】
図4に示されるように、第2端部36は、入力軸12の第2ケース21の内部空間に収容されて一対の支持部材13により回転自在に支持されている。第2端部36の外側には、キー部材41を介してウォームギア14が固定される。キー部材41は、第2端部36の外周面に形成された溝部42に嵌められている。また、キー部材41は、ウォームギア14の内周面50と嵌合している。キー部材41によって、ウォームギア14は、第2端部36に対して軸線方向及び周方向に対して固定される。キー部材41によって、第2端部36の回転がウォームギア14に伝達される。
【0039】
[ウォームギア機構48]
図4に示されるように、ウォームギア機構48は、ウォームギア14と、ウォームギア14に噛合する欠歯歯車15とを備える。ウォームギア機構48は、入力軸12の回転力を欠歯歯車15に伝達する。ウォームギア機構48は、1段(1つのギアの噛み合い)で回転を大きく減速させることができる機構であり、入力軸12の回転数に対して欠歯歯車15の回転数を小さくできる。
【0040】
ウォームギア14は略円筒形状であり、第1軸線L1を軸線とする。ウォームギア14の外周面には、螺旋形状に連続する歯面49が形成されている。歯面49は、欠歯歯車15に噛合する。
【0041】
欠歯歯車15は、ウォームギア14から付与された回転力をターンバックル胴81に伝達する。欠歯歯車15は、略C字形状である。欠歯歯車15は本体ケース11の一対の平板材22に挟まれて回転自在に支持されている。欠歯歯車15は、入力軸12の第1軸線L1と直交する仮想直線に平行な第2軸線L2(図3参照)を中心として回転する。第1軸線L1と第2軸線L2の最短距離D(図4参照)は、ウォームギア14の半径と欠歯歯車15の半径との和と同程度である。
【0042】
図2から図4に示されるように、欠歯歯車15は、本体51と、嵌合部52と、開口53と、中心孔54と、を有する。本体51は一部が切り欠かれた平歯ギア形状であり、外周面に歯面51aが形成されている(図4参照)。本体51の歯面51aは、ウォームギア14の歯面49と噛合する。
【0043】
嵌合部52は、本体51の中央部分から軸線方向(左右方向5)にそれぞれ突出している(図3参照)。各嵌合部52は、一部が切り欠かれた円環形状である。各嵌合部52の外周面が、第1ケース20の平板材22の内周面に当接することにより、欠歯歯車15が第1ケース20に回転自在に支持されている。
【0044】
本体51の外周面の一部に開口53が形成されている(図4参照)。本体51の軸線の中心には中心孔54が形成されている。中心孔54は、本体51を厚み方向(左右方向5)に貫通する。開口53は、中心孔54と連続して、1つの空間を形成している。図4に示されるように、開口53の開口幅Eは、中心孔54に形成された中心孔径Fよりも小さい。第1ケース20の案内部30の上下方向6に沿った寸法は、開口幅Eと同等である。欠歯歯車15の開口53が第1ケース20の案内部30と合致すると、案内部30を通じて欠歯歯車15の中心孔54へブレース鋼82が挿入可能となる。したがって、開口幅Eは、ブレース鋼82の外径よりも大きく設定されている。開口幅Eは、ウォームギア14の第1軸線L1方向(前後方向4)に沿った歯面49の長さよりも小さい。
【0045】
中心孔54は、ターンバックル胴81の外形に応じて形成されている。本実施形態では、ターンバックル胴81は、両端部分が円筒形状であり、中央部分が中空の概ね平板形状である。ターンバックル胴81の中央部分における外形の最大寸法は、両端部分の外径よりも大きい。中心孔54の中心孔径Fは、ターンバックル胴81の両端部分の外径よりも若干大きい。したがって、ターンバックル胴81の両端部分は、中心孔54を通過可能である。図4に示されるように、中心孔54において開口53と同じ位置及び180°位相が異なる位置のそれぞれに、膨出空間55が形成されている。膨出空間55は、開口53の開口幅Eよりも幅広であり、且つ中心孔径Fよりも幅狭な半円形状である。中心孔54を挟んで2つの膨出空間55は連続している。2つの膨出空間55における最大寸法Gは、ターンバックル胴81の中央部分の外形の最大寸法よりも若干大きい。したがって、2つの膨出空間55により連続する空間には、ターンバックル胴81の中央部分が通過可能である。
【0046】
本実施形態では、欠歯歯車15は、少なくとも中心孔54を区画する部分、すなわち嵌合部52、が合成樹脂製である。なお、欠歯歯車15の全体が合成樹脂製であってもよい。
【0047】
[ターンバックル80の長さ調節]
以下、図5を参照しつつ、ターンバックル80の長さを調節するときのターンバックル80と、ターンバックル用工具10の動作について説明する。
【0048】
作業者は、ターンバックル80の一方の羽子板(不図示)を梁(不図示)等に接合し、梁などに接合されていない他方の羽子板83(図1(b)参照)を支持する。作業者によって支持される羽子板83が接合される位置は、作業者の頭より上にある。
【0049】
作業者は、図5(a)に示されるように、欠歯歯車15の開口53を第1ケース20の案内部30に合わせた後、ターンバックル用工具10をブレース鋼82の軸線に対して第1軸線L1が垂直になるように臨ませる。このとき、作業者は、ターンバックル用工具10の案内部30をブレース鋼82に当接させながら上下方向6に移動させることで、ブレース鋼82を容易且つ迅速に欠歯歯車15の開口53に導くことができる。
【0050】
図5(b)に示されるように、作業者は、羽子板83を支持した状態で、案内部30に導かれたブレース鋼82を欠歯歯車15の開口53から中心孔54まで挿入する。
【0051】
図5(c)に示されるように、作業者は、ブレース鋼82の軸線に沿ってターンバックル用工具10をスライドさせて、中心孔54にターンバックル胴81を嵌める。ターンバックル胴81の中央部分が中心孔54に嵌まると、ここまでの作業においてターンバックル用工具10は、インパクトドライバ90と接続された状態あってもよいし、ここまでの作業を終えてから、ターンバックル用工具10の突出端37にインパクトドライバ90の出力端91が接続されてもよい。
【0052】
作業者は、インパクトドライバ90のトリガ93(図1(b)参照)を押圧し、入力軸12に回転力を付与する。図5(d)に示されるように、入力軸12に入力された回転力は、ウォームギア14によって欠歯歯車15に伝達され、中心孔54に挿入されたターンバックル胴81が、欠歯歯車15の回転に応じて回転する。欠歯歯車15の開口幅Eは、ウォームギア14の歯面49の第1軸線L1方向の長さよりも小さいため、欠歯歯車15の開口53がウォームギア14の歯面49を通過する際においても欠歯歯車15とウォームギア14は常に噛合し回転力が確実に伝達される。また、作業者は、作業後及び作業途中において、インパクトドライバ90を逆回転させることでターンバックル胴81を逆回転させてターンバックル80を緩めることも可能である。
【0053】
上述の作業により、作業者は、ターンバックル80の長さを調節し、羽子板83の貫通孔84と梁95の貫通孔96とを合致させる。作業者は、羽子板83の貫通孔84が、梁95の貫通孔96と合致したとき、ターンバックル用工具10をインパクトドライバ90から取り外して、貫通孔94、96にボルト99とナット100を螺合して、梁95に羽子板83を固定する(図1(b)参照)。なお、作業者は、上記作業の途中において、板状マグネット32によって、インパクトドライバ90を梁等の金属部材に固定することもでき、両手を使った作業を行うことも可能である。
【0054】
[実施形態の作用効果]
本実施形態によれば、ターンバックル用工具10は、ウォームギア機構48、すなわちウォームギア14に噛合する欠歯歯車15、を用いている。このため、ウォームギア14によって回転される欠歯歯車15の中心孔54にターンバックル80のターンバックル胴81が挿入されることにより、インパクトドライバ90の出力によってターンバックル胴81を回転するのに足るトルクが欠歯歯車15に付与される。また、インパクトドライバ90の回転数を欠歯歯車15において低くすることができる。その結果、ターンバックル用工具10の回転数も低くすることができるため扱いやすいものになる。更に、ターンバックル用工具10の欠歯歯車15は、インパクトドライバ90によって第1軸線周りに回転操作されるウォームギア14の回転方向に応じて正回転又は逆回転が可能である。
【0055】
また、本実施形態によれば、欠歯歯車15の開口53が、本体ケース11から入力軸12が突出する向きと逆向き、すなわち前後方向4の前方、に開口する案内部30と連通可能である。このため、案内部30を通じて、ターンバックル80のブレース鋼82が欠歯歯車15の開口53に挿入される。また、インパクトドライバ90にターンバックル用工具10を装着した際、ターンバックル用工具10が欠歯歯車15の重みで第1軸線L1から下方に垂れ下がった状態となる。このため、水平の状態で保持されるターンバックル80に対しては、ターンバックル80に対するターンバックル用工具10の傾き調整をすることなく容易に嵌め込むことが可能となる。
【0056】
また、本実施形態によれば、欠歯歯車15の開口53を通じてブレース鋼82が中心孔54に挿入され、ターンバックル用工具10がブレース鋼82の軸方向に移動されることによってターンバックル胴81が中心孔54に挿入される。また、中心孔54に位置するターンバックル胴81の中央部分の最小外形寸法が開口53の幅より広ければ、中心孔54に挿入されているターンバックル胴81が開口53を通じて外れることが防止される。
【0057】
また、本実施形態によれば、欠歯歯車15は、欠歯歯車15の開口53がウォームギア14を向いているときにもウォームギア14と噛合する。すなわち、欠歯歯車15の開口53がウォームギア14の歯面49を通過する瞬間においても、欠歯歯車15の歯面51aが常にウォームギア14の歯面49に噛合した状態となる。このため、ウォームギア14の駆動力を欠歯歯車15に途切れることなく伝達することができる。
【0058】
また、本実施形態によれば、本体ケース11に板状マグネット32を備えることにより、ターンバックル用工具10を梁95等の金属部材に固定できる。このため、作業者は、必要に応じてターンバックル用工具10の使用を中断して両手を使った作業を行うことができる。
【0059】
また、本実施形態によれば、欠歯歯車15の少なくとも中心孔54を区画する部分である嵌合部52を合成樹脂製にすることで、欠歯歯車15に接触することによってターンバックル80が損傷するのを防ぐことができる。
【0060】
[変形例]
上記実施形態では、本体ケース11が、第1ケース20と、第2ケース21とを有する場合について説明したが、必ずしもこの構成に限らない。本体ケース11は、欠歯歯車15及びウォームギア14を収容する1つのケースで構成されるものであってもよい。
【0061】
上記実施形態では、着脱マグネット40が、フランジ38において周方向に離間して6つ設けられている場合を例にあげて説明したが、必ずしもこの構成に限らない。着脱マグネット40は、例えば、環状のものがフランジ38に埋め込まれていてもよい。
【0062】
なお、欠歯歯車15は、受け部材を介して本体ケース11に回転自在に支持される場合を例にあげて説明したが、必ずしもこの構成に限らない。欠歯歯車15は、軸受けを介して本体ケース11に支持されるものであってもよい。或いは、本体ケースに直接支持されるものであってもよい。
【符号の説明】
【0063】
10・・・ターンバックル用工具
11・・・本体ケース
12・・・入力軸
14・・・ウォームギア
15・・・欠歯歯車(ウォームホイール)
30・・・案内部
32・・・板状マグネット(マグネット)
35・・・第1端部(第1端)
36・・・第2端部
38・・・フランジ
40・・・着脱マグネット(マグネット)
53・・・開口
54・・・中心孔
90・・・インパクトドライバ(電動回転工具)
91・・・出力端
L1・・・第1軸線
L2・・・第2軸線
【要約】
【課題】本発明は、軽量且つコンパクトであり、円滑に作業を行うことができるターンバックル用工具を提供する。
【解決手段】ターンバックル用工具10は、本体ケース11と、第1端部35が本体ケース11から突出しており、第1端部35がインパクトドライバ90の出力端91と嵌合して第1軸線L1周りに回転する入力軸12と、入力軸12の第2端部36に位置するウォームギア14と、ターンバックル80が中心孔54へ挿入可能な開口53を有しており、開口53を本体ケース11から露出可能に本体ケース11内に位置しており、入力軸12の第1軸線L1と直交する仮想直線に平行な第2軸線L2を中心として回転する欠歯歯車15と、を備える。欠歯歯車15は、本体ケース11に回転自在に支持された状態でウォームギア14と噛合する。
【選択図】図4
図1
図2
図3
図4
図5