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特許7165365三次元束状多層カーボンナノチューブとその調製方法並びに作用電極の応用
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  • 特許-三次元束状多層カーボンナノチューブとその調製方法並びに作用電極の応用 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-26
(45)【発行日】2022-11-04
(54)【発明の名称】三次元束状多層カーボンナノチューブとその調製方法並びに作用電極の応用
(51)【国際特許分類】
   C01B 32/162 20170101AFI20221027BHJP
   H01G 11/36 20130101ALI20221027BHJP
【FI】
C01B32/162
H01G11/36
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021150889
(22)【出願日】2021-09-16
【審査請求日】2021-09-16
(73)【特許権者】
【識別番号】521409238
【氏名又は名称】崑山科技大学
(74)【代理人】
【識別番号】100146374
【弁理士】
【氏名又は名称】有馬 百子
(72)【発明者】
【氏名】許 豪麟
(72)【発明者】
【氏名】陳 建宏
【審査官】森坂 英昭
(56)【参考文献】
【文献】特表2012-506492(JP,A)
【文献】国際公開第2013/161317(WO,A1)
【文献】特表2010-513010(JP,A)
【文献】特開2019-129142(JP,A)
【文献】特開2009-078956(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 32/00 - 32/991
H01G 11/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
合金触媒及び遷移元素を提供し、希ガス雰囲気中で混合して30~90分間熱処理を行い、金属間化合物を得るステップS1と、
基板を提供し、前記基板に前記金属間化合物を設置するステップS2と、
水素を提供し、前記基板を前記水素中で、第一温度まで加熱し、前記第一温度で前記水素により前記金属間化合物を15~45分間還元するステップS3と、
保護ガス及び炭素源ガスを提供し、前記基板を第二温度まで加熱し、前記基板を前記保護ガス及び前記炭素源ガス中で、前記第二温度にて30~90分間反応を行い、前記炭素源ガスが分解して発生する炭素原子を前記金属間化合物の底部に堆積させ、三次元束状多層カーボンナノチューブを生成し、第二温度での反応が完了した後、室温まで冷却すると共に前記三次元束状多層カーボンナノチューブを収集するステップであって、前記希ガスは第18族元素を含み、前記第二温度は前記第一温度以上であり、前記保護ガス及び前記炭素源ガスの体積の混合割合は1:6~1:12の範囲である、ステップS4と、を含む
ことを特徴とする三次元束状多層カーボンナノチューブの調製方法。
【請求項2】
前記合金触媒はプラチナ-ルテニウム合金(Pt-Ru)、ニッケル-コバルト合金(Ni- Co)、ニッケル-マグネシウム合金(Ni-Mg)、マンガン-プラチナ合金相(Mn-Pt)、コバルト-プラチナ合金(Co-Pt)、及びマンガン-コバルト合金(Mn-Co)のうちの少なくとも1種を含み、前記遷移元素はカドミウム、ロジウム、パラジウム及びモリブデンのうちの少なくとも1種を含むことを特徴とする請求項1に記載の三次元束状多層カーボンナノチューブの調製方法。
【請求項3】
前記基板はガラス、石英、セラミック、ダイヤモンド、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、又はポリイミドを含むことを特徴とする請求項1に記載の三次元束状多層カーボンナノチューブの調製方法。
【請求項4】
前記炭素源ガスは酸化炭素、メタン、アセチレン、エタン、エチレン、プロピレン、及びプロピンのうちの少なくとも1種を含み、前記保護ガスは水素、窒素、アンモニア、並びに不活性ガスであるヘリウム(He)、ネオン(Ne)、アルゴン(Ar)、クリプトン(Kr)、キセノン(Xe)及びラドン(Rn)のうちの少なくとも1種を含むことを特徴とする請求項1に記載の三次元束状多層カーボンナノチューブの調製方法。
【請求項5】
前記熱処理の温度は100~180℃の範囲であることを特徴とする請求項1に記載の三次元束状多層カーボンナノチューブの調製方法。
【請求項6】
前記第一温度は400~700℃の範囲であり、前記第二温度は550~900℃の範囲であることを特徴とする請求項1に記載の三次元束状多層カーボンナノチューブの調製方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カーボンナノチューブの調製方法に関し、特に束状多層カーボンナノチューブの調製方法に関し、また、三次元束状多層カーボンナノチューブの電極関連の応用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
カーボンナノチューブ(Carbon nanotubes, CNTs)は最初は1991年に日本電気株式会社(Nippon Electric Company, NEC)の飯島澄男博士がアーク放電法によりフラーレン(Fullerenes)合成実験を行った際に、透過型電子顕微鏡により炭素クラスターを観察した際に発見したものである。これは多層カーボンナノチューブを主成分とし、グラファイトを平面的に丸めて形成したチューブ状材料であり、その本体の構造は単層(Single-Walled Carbon Nanotubes、SWCNTs)及び多層(Multi-Walled Carbon Nanotubes、MWCNTs)カーボンナノチューブの2種類の形式に分けられ、単層カーボンナノチューブは1993年に磁性金属(Fe、Co、Ni)を含むカーボンナノカプセルが合成された際に発見された。
【0003】
単層カーボンナノチューブは比表面積が大きいナノ効果及びファンデルワールス力の要因により、多くはチューブが束形状で配列されている。多層カーボンナノチューブの多くは1本のカーボンナノチューブが存在するのみである。近年、束状のチューブを配列するものを主とする多層カーボンナノチューブが発展し、新しいメカニズムとして成長している。これはファンデルワールス力により多層カーボンナノチューブを束状に配列するものではなく、触媒により層状キャリアに配列されるように吸着し、CVD法(chemical vapor deposition)によりカーボンチューブの成長を促すものである。このようなカーボンチューブの成長メカニズムの多くはNi/Mg/Mo系統の混合合金を金属触媒として利用し、例えば、高温でMoO4またはMoO3金属粒子を含む基底に炭素源ガスを送入し、CVD法によりカーボンナノチューブを生成している。図1はCVD法によりカーボンナノチューブを生成するメカニズムの簡単な説明であり、基底に散布する金属触媒をカーボンチューブの生長源として利用し、炭化水素化合物またはグラファイト棒を高温で熱分解した後、金属触媒根基底部に沈着し、気化した後の炭素源を金属触媒の底部に不断で沈着すると共に金属粒子をゆっくりと上に押し、中空のカーボンナノチューブを形成する。中空のカーボンナノチューブ生成メカニズムは図2に示す。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前述の方式により生成したカーボンナノチューブは、ラマン分析の結果によると、その炭素-炭素二重結合及び不定形炭素強度比率は1(IG/ID < 1)未満である。不定形炭素または無定形炭素構造の多くはグラファイト構造であり、純化処理を行って純粋な束状カーボンナノチューブを獲得するが、製造プロセスに時間がかかり、コストも高くなった。
【0005】
電気活性材料や多孔質物質により電気エネルギーを保存するスーパーキャパシタ(supercapacitor)は優れたエネルギー保存特性を有し、従来の化学電池とは異なり、従来のキャパシタと電池との間に位置する特殊な性能を持った電源であり、数十万回反復して充放電を行える。スーパーキャパシタと比較すると、従来のキャパシタは高いパワー密度を有しているが、伝送エネルギー密度は低く、スーパーキャパシタのエネルギー密度はさらに高く、寿命もより長く、充放電時間にかかるも短く、動作温度範囲もより広かった。
【0006】
従来は、主に各種導電材料をペーパースーパーキャパシタに塗布してエネルギー密度を高めているが、この方法では通常パワー密度が低下してしまった。このため、製造プロセスを簡略化しつつエネルギー密度を高め、パワー密度を保持する方法が現在産学共同で注力している課題であった。
【0007】
2015年にKumar氏等が「ACS Applied Materials & Interfaces」で発表した「Self-Assembled Hierarchical Formation of Conjugated 3D Cobalt Oxide Nanobead-CNT-Graphene Nanostructure Using Microwaves for High-Performance Supercapacitor Electrode」において、活性カソード電極材料は主に炭素材料であり、活性炭素(activated carbon)、炭素繊維(carbon fibers)、カーボンナノチューブ(carbon nanotubes)、カーボンエアロゲル(carbon aerogels)、グラフェン(graphene)、及び炭素合金材料(carbide derived carbons)等を含み、カソード電極材料の選択及び構造はキャパシタのエネルギー保存能力に相当程度影響する。1つの三次元(3D)構造の電気化学性能により3D自己集合分層ナノ構造を合成し、前記構造は零次元(0D)酸化コバルトナノビーズ(Co-nb)、一次元(1D)カーボンナノチューブ(CNT)、及び二次元(2D)グラフェンナノシート(GNS)で構成され、高性能スーパーキャパシタ電極に応用されている。このような3D自己集合の分層ナノ構造Co3O4ナノビーズ-CNTs-GNSs(3D:Co-nb @ CG)は簡単に便利且つ高速にマイクロ波を放射することで大規模に生長させることができる。3D:Co-nb @ CGナノ構造中では、Co3O4ナノビーズはGNS上で生長しているCNT表面に付着し、酸化コバルト及びCNTをグラフェンナノシート上で同時に生長させ、且つ高導電性足場内にカーボンナノチューブ及び酸化コバルトの固有分散性を構築し、3D:Co-nb @ CG電極がさらに好適な電気化学性能を発揮する。KOH電解液中の充放電電流密度が0.7A/gである場合、最大比容量は600F/gとなり、比を修飾したCo3O4はグラフェン(Co-np @ G)ナノ構造の1.56倍となり、前記電極は電気化学性能を増強するように協同で作用する。
【0008】
Sajjad氏等が「High Energy Density Asymmetric Supercapacitor Based on NiCo2S4/CNTs Hybrid and Carbon Nanotube Paper Electrodes」に記載したワンステップソルボサーマル法によりNiCo2S4 / CNTs(NCS / CNTs)ハイブリッドナノ構造を合成し、スーパーキャパシタの電極材料として評価する場合、合成後のNCS / CNT-1複合ハイブリッド体は、5 A g-1の電流密度で容量が1,690 F g-1となった。さらに重要なことは、NCS / CNT-1を陽電極とし、カーボンナノチューブペーパーを陰電極として装設し、8 kW kg-1のパワー密度で58 Wh kg-1の高いエネルギー密度を提供する。良好な機械安定性、高電導率、及び充放電中の体積の変化により電気化学性能が大幅に高まっている。
【0009】
CVD法により生成されたカーボンナノチューブは、基底に散布された3成分金属間化合物金属ナノ触媒をカーボンチューブの生長源とし、高温で熱分解し気化した後の炭素源を金属触媒根基底部に徐々に沈着し、且つ金属粒子を徐々に上に押して中空のカーボンナノチューブを形成している。しかしながら。ラマン分析ではその炭素-炭素二重結合及び不定形炭素の強度比率が1 (IG/ID < 1)未満であることが示されている。具体的には、カーボンナノチューブの構造において、不定形炭素または無定形炭素構造がグラファイト構造よりも多く、この方法により生成されたカーボンナノチューブはさらに純化処理を行わなければ純粋な束状カーボンナノチューブを獲得できなかった。このため、製造プロセスにかかる時間が長くなり、生産コストが上昇した。
【0010】
また、スーパーキャパシタが優れたエネルギー保存特性を備えるようにするため、従来技術では遷移元素により調製した疑似キャパシタまたは高比表面積の多孔質物質で調製したこの種のキャパシタを採用しているものが多い。スーパーキャパシタは従来の化学電池とは異なり、数十万回反復して充放電可能であり、且つエネルギー密度が高く、寿命が長く、充放電時間が短く、動作温度範囲がさらに広くなる。従来は各種導電材料をスーパーキャパシタ電極に塗布してエネルギー密度を高めようとしていたが、この可能な方法では通常等価直列抵抗(Rs)または電荷移動抵抗(Rct)が増加し、エネルギー密度またはパワー密度が低下した。
【0011】
このため、前述の問題を解決するため、本発明では製造プロセスを簡略化したカーボンナノチューブ調製方法を提示し、且つ調製されたカーボンナノチューブにより高いエネルギー密度の作用電極をさらに調製し、調製された作用電極が反復して充放電した後もパワー密度を保持し、前述の産学共同で注力している課題を克服する。
【0012】
本発明は、このような従来の問題に鑑みてなされたものである。上記課題解決のため、本発明は、三次元束状多層カーボンナノチューブの調製方法を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するために、本発明のある態様の三次元束状多層カーボンナノチューブの調製方法は、 合金触媒及び遷移元素を提供し、希ガス雰囲気中で均一に混合すると共に、温度100~180℃で30~90分間熱処理を行い、金属間化合物を獲得するステップS1と、
前記金属間化合物が設置されている基板を提供するステップS2と、
水素を提供し、前記基板を前記水素中で、第一温度まで加熱し、前記第一温度で前記水素により前記金属間化合物を15~45分間還元するステップS3と、
【0014】
保護ガス及び炭素源ガスを提供し、前記基板を第二温度まで加熱し、前記保護ガス及び前記炭素源ガス中で、前記第二温度で30~90分間反応を行い、前記炭素源ガスが分解して発生する炭素原子を前記金属間化合物の底部に堆積させ、且つ三次元束状多層カーボンナノチューブを徐々に生成し、第二温度で反応が完了した後、室温まで冷却して処理すると共に前記三次元束状多層カーボンナノチューブを収集するステップ4を含む。ここでは、前記希ガスは第18族元素を含み、前記第二温度は前記第一温度と同等或いはそれより高く、前記保護ガス及び前記炭素源ガスの体積の混合割合は1:6~1:12の間の範囲である。
ここで、合金触媒は、2成分合金触媒であることが好ましい。
また、水素中で、第一温度まで加熱し、第一温度で金属間化合物を還元するステップでは、水素を流すこともできるし、水素雰囲気中で基板を通過させることもできる。
同様に、保護ガス及び炭素源ガス中で、第二温度にて反応を行う工程では、保護ガス及び炭素源ガスを流すこともできるし、保護ガス及び炭素源ガス中で基板を通過させることもできる。
【0015】
一実施形態によれば、前記合金触媒はプラチナ-ルテニウム合金(Pt-Ru)、ニッケル-コバルト合金(Ni- Co)、ニッケル-マグネシウム合金(Ni-Mg)、マンガン-プラチナ合金相(Mn-Pt)、コバルト-プラチナ合金(Co-Pt)、及びマンガン-コバルト合金(Mn-Co)のうちの少なくとも1種を含む。
【0016】
一実施形態によれば、前記遷移元素はカドミウム、ロジウム、パラジウム及びモリブデンのうちの少なくとも1種を含む。
【0017】
一実施形態によれば、前記基板はガラス、石英、セラミック、ダイヤモンド、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、またはポリイミドを含む。
【0018】
一実施形態によれば、前記炭素源ガスは酸化炭素、メタン、アセチレン、エタン、エチレン、プロピレン、またはプロピンを含む。
【0019】
一実施形態によれば、前記保護ガスは水素、窒素、アンモニア、或いはヘリウム(He)、ネオン(Ne)、アルゴン(Ar)、クリプトン(Kr)、キセノン(Xe)、ラドン(Rn)のような不活性ガスを含む。
【0020】
一実施形態によれば、前記第一温度は400~700℃の間の範囲である。
【0021】
一実施形態によれば、前記第二温度は550~900℃の間の範囲である。
【0022】
また、本発明の他の目的は、三次元束状多層カーボンナノチューブ(前述の調製方法で調製された三次元束状多層カーボンナノチューブ)を提供する。
【0023】
また、本発明のさらなる他の目的は、作用電極を提供する。この作用電極は、導電性及びドレイン材料と、前記導電性及びドレイン材料に設置されている導電性接着剤と、前記導電性接着剤に設置され、前述の調製方法で製造されている複数の三次元束状多層カーボンナノチューブと、を備えている。
【0024】
一実施形態によれば、前記導電性及びドレイン材料はITO導電ガラス、FTO導電ガラス、発泡ニッケルネット、鉛板、耐酸性耐アルカリ性のカーボンプレート、導電性高分子複合材料、或いはステンレス金属材料で製造され、前記導電性接着剤はカーボン粘着テープ、炭素繊維布、グラファイトフェルト、炭素フェルト、グラファイトペーパー、カーボン紙、黒鉛ブラシ、カーボンブラシ、導電ペースト、導電性銀ペースト、或いは導電性高分子を含む。
【0025】
一実施形態によれば、前記作用電極は前記作用電極を使用する際に設置する導電性電解質をさらに含み、前記導電性電解質は液体、コロイド状態、凝固体、全固体、水溶液、高分子電解質、及びエネルギー蓄積装置を使用して設置することを含む。
【発明の効果】
【0026】
このように、本発明の調製方法で製造される三次元束状多層カーボンナノチューブは、下記利点を有している。
【0027】
1.本発明により調製された金属間化合物合金ナノ触媒は製造プロセスが簡単であり、エネルギーを消費して高温や高圧で焼却する必要がなく、希ガス雰囲気中で均一に混合し、簡易な加熱処理を行った後に調製して獲得できる。
【0028】
2.本発明により調製された三次元束状多層カーボンナノチューブは3成分ナノ金属間化合物合金により成長させた三次元束状多層カーボンナノチューブの比表面積が約95.3 m2/gである。一般的には、活性炭素またはグラフェンの比表面積は少なくとも800 m2/g以上であるが、本発明により調製された三次元束状多層カーボンナノチューブの比表面積は通常の活性炭素やグラフェンよりもずっと小さい。
【0029】
3.本発明により調製された三次元束状多層カーボンナノチューブは一次元束状多層カーボンナノチューブ及び二次元層状合金材料を根底部として接合し、多層カーボンナノチューブ及び層状合金材料の導電効果を向上し、電気二重層イオン分布保存効率を高め、電極の容量及びエネルギー密度を大幅に高めている。
【0030】
4.本発明により調製された三次元束状多層カーボンナノチューブで調製された作用電極により、定電流で充放電試験を行う際に、非常に優れたエネルギー密度及びパワー密度を発揮する。本発明により調製された三次元束状多層カーボンナノチューブは固体キャパシタとする潜在力を有している。
【0031】
5.本発明により調製された三次元束状多層カーボンナノチューブはナノ構造のシナジー効果及び良好な機械安定性を有し、加えて高い電導率で層状構造を備えており、電気二重層保存効果をさらに高めている。イオンの拡散速度も効果的に速まり、且つ充放電中の体積の変化が小さく、三次元束状多層カーボンナノチューブの電極の容量及びエネルギー密度性能を大幅に向上している。
【0032】
6.本発明により調製された三次元束状多層カーボンナノ複合電極の比容量保持率は初期比容量保持率より高く、良好な導電性及び低い電荷移動抵抗を示し、低いイオン抵抗で電解質イオンが導電三次元束状多層カーボンナノチューブ構造を通過して高速に遷移するようにし、三次元束状多層カーボンナノチューブ複合電極材料と電解質との間の高速な電荷移動に貢献する。
【0033】
7.本発明により調製された三次元束状多層カーボンナノ複合作用電極は、定電流で充放電試験を行う際に、非常に優れたエネルギー密度、パワー密度、及び循環使用する静電容量保持率を示す。本発明により調製された三次元束状多層カーボンナノチューブはスーパーキャパシタ、電気二重層キャパシタ、疑似キャパシタ、全固体キャパシタ、及び関連するエネルギー保存素子並びに電池セル材料として応用する潜在力を有している。
【0034】
本発明の他の特徴については、本明細書及び添付図面の記載により明らかにする。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1】本発明のMg/MoO4触媒で束状多層カーボンナノチューブを成長する生成モードを説明する概略図である。
図2】本発明の束状多層カーボンナノチューブの成長メカニズムを説明する概略図である。
図3】本発明の一実施例に係る三次元束状多層カーボンナノチューブの調製方法を説明する概略フローチャート図である。
図4】本発明の作用電極の構成要素と対応する関係を示す概略構成図である。
図5A】本発明の三次元束状多層カーボンナノチューブを50,000倍に拡大する画像を示す電子顕微鏡画像である。
図5B】本発明の三次元束状多層カーボンナノチューブを150,000倍に拡大する画像を示す電子顕微鏡画像である。
図6】本発明の第2実施例で調製された作用電極を定電流充放電試験GCDに用いられるグラフである。
図7A】本発明の第2実施例で調製された作用電極の電圧の-1.0~1.0Vのサイクリックボルタンメトリー分析を説明するグラフである。
図7B】本発明の第2実施例で調製された作用電極の電圧の0~1.0Vのサイクリックボルタンメトリー分析を説明するグラフである。
図8】本発明の第2実施例で調製された作用電極のACインピーダンス分析分光法を説明するグラフである。
図9】本発明の第2実施例で調製された作用電極が定電流CVサイクル後に得られた静電容量保持率の割合を説明するグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。なお、本開示は、下記の実施形態に何ら限定されることはなく、本開示の技術的範囲に属する限り種々の形態を採りうる。
【0037】
本発明の一実施方式では三次元束状多層カーボンナノチューブの調製方法を提供する。図1は前記調製方法のフローチャートであり、前記調製方法は、
2成分合金触媒及び遷移元素を提供し、希ガス雰囲気中で均一に混合し、且つ温度180℃内で30~90分間簡易な熱処理を行い、金属間化合物を獲得するステップS1と、
【0038】
前記金属間化合物を設けている基板を提供するステップS2と、
水素を提供し、前記水素に前記基板を通過させ、前記基板を第一温度まで加熱し、前記第一温度で前記水素により前記金属間化合物を15~45分間還元するステップS3と、
【0039】
保護ガス及び炭素源ガスを提供し、前記基板を第二温度まで加熱し、前記保護ガス及び前記炭素源ガスに前記基板を通過させ、前記第二温度で30~90分間反応を行い、前記炭素源ガスが分解されて発生する炭素原子が前記金属間化合物の底部に堆積し、且つ三次元束状多層カーボンナノチューブを徐々に生成し、第二温度での反応が完了した後、室温まで冷却すると共に前記三次元束状多層カーボンナノチューブを収集し、前記希ガスは第18族元素を含み、前記第二温度は前記第一温度と同等或いはそれより高く、前記保護ガス及び前記炭素源ガスの体積の混合割合は1:6~1:12の間の範囲であるステップS4と、を含む。
【0040】
本実施例では、熱CVD(Thermal Chemical Vapor Deposition)により前記三次元束状多層カーボンナノチューブを調製する。具体的には、前記金属間化合物は前記基板表面に粘着し、且つ定流50 sccm (standard-state cubic centimeter per minute)で前記水素を送入し、加熱後に前記第一温度に保ち、前記水素及び前記金属間化合物に還元反応を発生させ、還元反応を15~45分間持続させる。本実施方式において、前記基板はガラス、石英、セラミック、ダイヤモンド、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、またはポリイミドを含む。
【0041】
ある実施例では、前記熱処理温度は100~180℃の間の範囲である。ある実施例では、前記第一温度は400~700℃の間の範囲であり、好ましくは、前記第一温度は600℃である。還元反応が終了した後、定流1000 sccmで不活性ガスを送入して還元反応後の水素を完全に置換し、且つ前記金属間化合物の鈍化処理を行う。具体的には、不活性ガスはアルゴンガス(Ar)でもよい。ガスの置換が完了した後、前記第二温度まで加温すると共に保温し、不活性ガスの供給を中断してから前記保護ガス及び前記炭素源ガスを送入する。前記第二温度で反応を行って前記三次元束状多層カーボンナノチューブを生成し、アニーリング処理を行った後、前記三次元束状多層カーボンナノチューブを収集する。
【0042】
本実施例では、前記第二温度は前記第一温度と同等或いはそれより高い。ある実施例では、前記第二温度は550~900℃の間の範囲であり、好ましくは、前記第二温度は800℃である。前記保護ガス及び前記炭素源ガスの体積の混合割合は1:6~1:12の間の範囲であり、好ましくは、前記保護ガス及び前記炭素源ガスの体積の混合割合は1:9である。前記保護ガスは水素、窒素、アンモニア、或いはヘリウム(He)、ネオン(Ne)、アルゴン(Ar)、クリプトン(Kr)、キセノン(Xe)、ラドン(Rn)のような不活性ガスを含み、好ましくは、前記保護ガスは水素である。前記炭素源ガスは酸化炭素(CO)、メタン(CH4)、アセチレン(C2H2)、エタン(C2H6)、エチレン(C2H4)、プロピレン(C3H6)、またはプロピン(C3H4)を含む。好ましい実施例において、前記炭素源ガスはメタンである。
【0043】
本実施例では、前記三次元束状多層カーボンナノチューブの生成メカニズムは頂端生長であり、具体的には、高温で分解された炭素源ガスが金属間化合物の底部に徐々に析出し、且つ沈着堆積してカーボンナノチューブフラグメントを形成し、且つ金属間化合物の底部に徐々に沈殿してカーボンナノチューブを生成する。生成されたカーボンナノチューブは金属間化合物を基板から離間する方向に押し出される。本実施例では、前記第二温度で析出されたカーボンナノチューブフラグメントは、前記金属間化合物の底部に徐々に堆積し、且つ隣接するカーボンナノチューブフラグメントと共に前記三次元束状多層カーボンナノチューブを形成する。
【0044】
形成された三次元束状多層カーボンナノチューブはさらなる純化を行う必要がなく、高純度の三次元束状多層カーボンナノチューブを獲得する。また、前記三次元束状多層カーボンナノチューブは3成分ナノ金属間化合物合金により成長した三次元束状多層カーボンナノチューブであり、その比表面積は100 m2/g未満である。一般的な活性炭素やグラフェンの比表面積は800 m2/g 以上であり、比較すると本実施方式により調製された三次元束状多層カーボンナノチューブは小さい比表面積を有している。
【0045】
本実施例では、前記金属間化合物は加熱処理を経て調製することで獲得する。具体的には、前記2成分合金触媒及び前記遷移元素を均一に混合した後、180℃内で熱処理を行って前記3成分金属間化合物を獲得し、前記熱処理は30~90分間持続して行う。好ましい実施例では、前記熱処理は60分間持続して行う。ある実施例では、前記合金触媒はプラチナ-ルテニウム合金(Pt-Ru)、ニッケル-マグネシウム合金(Ni-Mg)、マンガン-プラチナ合金相(Mn-Pt)、コバルト-プラチナ合金(Co-Pt)、またはマンガン-コバルト合金(Mn-Co)を含む。前記遷移元素はロジウム、パラジウム、モリブデンを含む。
【0046】
本発明の他の実施方式は、作用電極2を提供する。図4は前記作用電極2の概略構成図であり、前記作用電極2の構成部材間の対応関係を説明する。前記作用電極2は導電性及びドレイン材料23と、導電性接着剤22と、複数の三次元束状多層カーボンナノチューブ21と、を備えている。前記導電性接着剤22は前記導電性及びドレイン材料23に設置され、前記複数の三次元束状多層カーボンナノチューブ21は前記導電性接着剤22に設置され、前述の前記導電性及びドレイン材料23、前記導電性接着剤22、及び前記複数の三次元束状多層カーボンナノチューブ21が圧着された後に前記作用電極2が形成される。前記導電性及びドレイン材料23は例えばITO導電ガラス、FTO導電ガラス、発泡ニッケルネット、鉛板、高度な耐酸性耐アルカリ性を備えたカーボンプレート、導電性高分子複合材料、或いはステンレス金属材料である。
【0047】
前記導電性カーボン接着剤は多様な形式のカーボン材料を含み、例えば、カーボン粘着テープ、炭素繊維布、グラファイトフェルト、炭素フェルト、グラファイトペーパー、カーボン紙、黒鉛ブラシ、或いはカーボンブラシである。好ましい実施例では、前記導電性接着剤はカーボン粘着テープである。他の実施例では、前記作用電極2は導電性電解質をさらに含み、前記作用電極2の使用時に設置する前記導電性電解質は液体、コロイド状態、凝固体、全固体、水溶液、高分子電解質、及びエネルギー蓄積装置を使用して設置することを含む。
【0048】
本実施例では、前記三次元束状多層カーボンナノチューブ21の調製方法は、2成分合金触媒及び遷移元素を提供し、希ガス雰囲気中で均一に混合して30~90分間熱処理を行い、金属間化合物を獲得するステップと、前記金属間化合物が設置されている基板を提供するステップと、水素を提供し、前記水素に前記基板を通過させ、前記基板を第一温度まで加熱し、前記第一温度で前記水素により前記金属間化合物を15~45分間還元するステップと、保護ガス及び炭素源ガスを提供し、前記基板を第二温度まで加熱し、前記保護ガス及び前記炭素源ガスに前記基板を通過させ、前記第二温度で30~90分間反応を行い、前記炭素源ガスが分解されて発生する炭素原子が前記金属間化合物の底部に堆積し、且つ三次元束状多層カーボンナノチューブを徐々に生成し、第二温度で反応が完了した後、室温まで冷却すると共に前記三次元束状多層カーボンナノチューブを収集し、前記希ガスは第18族元素を含み、前記第二温度は前記第一温度と同等或いはそれより高く、前記保護ガス及び前記炭素源ガスの体積の混合割合は1:6~1:12の間の範囲であるステップと、を含む。
【0049】
ある実施例では、前記合金触媒はプラチナ-ルテニウム合金(Pt-Ru)、ニッケル-コバルト合金(Ni- Co)、ニッケル-マグネシウム合金(Ni-Mg)、マンガン-プラチナ合金相(Mn-Pt)、コバルト-プラチナ合金(Co-Pt)、或いはマンガン-コバルト合金(Mn-Co)を含む。前記遷移元素はカドミウム、ロジウム、パラジウム、モリブデンを含む。
【0050】
ある実施例では、前記基板はガラス、石英、セラミック、ダイヤモンド、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、またはポリイミドを含む。
【0051】
ある実施例では、前記炭素源ガスは酸化炭素、メタン、アセチレン、エタン、エチレン、プロピレン、またはプロピンを含む前記保護ガスは水素、窒素、アンモニア、或いはヘリウム(He)、ネオン(Ne)、アルゴン(Ar)、クリプトン(Kr)、キセノン(Xe)、ラドン(Rn)のような不活性ガスを含む。
【0052】
ある実施例では、前記熱処理温度は100~180℃の間の範囲である。
【0053】
ある実施例では、前記第一温度は400~700℃の間の範囲である。
【0054】
ある実施例では、前記第二温度は550~900℃の間の範囲である。
【0055】
[第1実施例]
本実施例では、3成分金属間化合物は乾燥した合金触媒Ni-Mg金属間2成分合金ナノ粉末及び遷移元素Mo前駆物質を均一に混合した後、60分間熱処理を行って獲得し、3成分を有している金属間化合物Ni-Mo-Mg金属間化合物合金ナノ粉末である。次いで、反応炉中に基板を設置し、本実施例では石英管を基板として採用し、石英管の中心位置に3 mgの金属間化合物Ni-Mo-Mgを設置し、石英管をロックした後に石英管内部を真空にする。石英管内部を真空にした後にアルゴンガスを送入し、定流50 sccmで水素を送入すると共に600℃まで加熱し、600℃で金属間化合物 Ni-Mo-Mgを30分間還元する。次いで、水素をアルゴンガスに切り替え、前記基板を800℃まで加熱し、定流1000 sccmで保護ガス及び炭素源ガスを送入する。本実施例において、保護ガスは水素であり、炭素源ガスはメタンであり、水素及びメタンは1:9の体積流量比で混合し、且つ800℃で保温して60分間反応を行う。反応が完了した後、混合ガスをアルゴンガスに切り替え、且つ温度が室温まで降下した後、調製が完了した三次元束状多層カーボンナノチューブを収集する。
【0056】
図5Aは本実施例に係る調製された三次元チューブ束状カーボンナノチューブを電子顕微鏡で50,000倍に拡大したカーボンナノチューブ構造を示す。図5Bは本実施例に係る調製された管束状カーボンナノチューブを電子顕微鏡で150,000倍に拡大したカーボンナノチューブ構造を示す。図5A及び図5Bによると、本実施例に係る調製された管束状カーボンナノチューブは複数のカーボンナノチューブが集合して構成された三次元管束状構造を呈している。
【0057】
[第2実施例]
本実施例では、第1実施例に係る調製された三次元束状多層カーボンナノチューブにより作用電極を調製し、作用電極は導電性及びドレイン材料、導電性接着剤、及び複数の三次元束状多層カーボンナノチューブで構成されている。まず、導電性接着剤を導電性及びドレイン材料に設置し、本実施例では、導電性及びドレイン材料はITO導電ガラスであり、導電性接着剤はカーボン粘着テープである。次いで、複数の三次元束状多層カーボンナノチューブをカーボン粘着テープに設置し、前述のITO導電ガラス、カーボン粘着テープ、及び複数の三次元束状多層カーボンナノチューブを圧着して作用電極を形成する。
【0058】
[実験例1]
第2実施例で調製された作用電極に定電流での充放電分析を行い、今回の定電流充放電分析は3M NaOH(aq)電解液中で実施する。図6は第2実施例の定電流充放電の分析結果図を示す。今回の分析結果において、0.23 A/gの電流密度で、第2実施例の最大比容量は1,560 F/gであり、エネルギー密度及びパワー密度はそれぞれ195 Wh/kg及び0.21 kW/kgに達する。2.33 A/gの電流密度で、第2実施例のエネルギー密度及びパワー密度がそれぞれ0.4 Wh/kg 及び2.11 kW/kgに達し、本発明により調製された第2実施例が異なる電流密度で高いエネルギー密度及び高いパワー密度のポテンシャルを有し、固体キャパシタとして応用する高い潜在力を有している。本発明の第2実施例で調製された作用電極は三次元束状多層カーボンナノチューブを採用し、その比表面積は活性炭素やグラフェンの比表面積と比べて小さく、前述の試験結果は、一次元カーボンチューブ及び二次元層状材料の根部が接合された三次元構造が電気化学性能を高める潜在力を有し、これは比表面積によるものではないことをさらに説明している。
【0059】
[実験例2]
図7Aは第2実施例の作用電極により実施する電圧の-1.0V~1.0Vのサイクリックボルタンメトリー(cyclic voltammetry)分析のグラフを示し、本実験例のサイクリックボルタンメトリー分析において、銀/塩化銀(Ag/AgCl)を基準電極(reference electrode)とし、且つプラチナ金属(Pt)を対電極(counter electrode)とするが、但しこれに限られない。3M NaOH(aq)電解液中でサイクリックボルタンメトリー試験を行い、それぞれ10、50、100 mV/sのスキャン速度で実行し、第2実施例の作用電極の電圧が1.0Vから-1.0Vに低下した場合及び電圧が-1.0Vから1.0Vに上昇した場合の誘導電流を計測し、その結果を図7Aに示す。図7Aは第2実施例の作用電極により計測した結果を示す。図7Aから分かるように、ブランク電極に三次元束状多層カーボンナノチューブ材料が粘着されていない場合は容量がほぼ発生せず、ブランク電極の容量は無視できる。0.52Vの電流が発生した場合の酸化のピークは水溶剤の酸化によるものである。異なるスキャン速度で誘導電流が表示する曲線形状が相似している。すなわち、スキャン速度が10 mV/sから10倍の100 mV/sに増した状況で計測した電流の曲線回路にも歪みは発生せず、第2実施例の作用電極の酸化/還元電気化学反応が可逆性を有している以外、電気二重層キャパシタの特性も有している。
【0060】
[実験例3]
図7Bは第2実施例の作用電極が実施する電圧が0Vから1.0Vのサイクリックボルタンメトリー分析のグラフを示し、同様に銀/塩化銀(Ag/AgCl)を基準電極(reference electrode)とし、且つプラチナ金属(Pt)を対電極(counter electrode)とするが、但しこれに限られない。3M NaOH(aq)電解液中でサイクリックボルタンメトリーの試験を行い、100 mV/sのスキャン速度で実行し、キャパシタ電極の電圧が1.0Vから0Vに低下した場合及び電圧が0Vから1.0Vに上昇した場合の誘導電流を計測し、その結果を図7Bに示す。図7Bは第2実施例の作用電極により計測した結果を示し、図7Bから分かるように、100 mV/sのスキャン速度でブランク電極に三次元束状多層カーボンナノチューブ材料が粘着されていない場合は容量がほぼ発生せず、ブランク電極の容量は無視できる。前記第2実施例の作用電極が示す誘導電流曲線は、計測された電流の回路が矩形に近似し、第2実施例の作用電極が電気化学反応を発生させると電気二重層キャパシタの特性を有していることが明らかである。
【0061】
[実験例4]
本実施例では、第2実施例で調製された作用電極の電気化学ACインピーダンス分光法(electrochemical AC impedance spectroscopy、EIS)分析を行い、EISでは電池の電極の作用を計測し、材料の電子インピーダンスを分析し、ACインピーダンス分光器によりACインピーダンスのナイキスト線図(Nyquist plot)を取得し、これにより電池内部に発生する可能性のある電気化学反応の動力を分析する。
【0062】
図8は第2実施例で調製された作用電極で行うACインピーダンス分光法について説明する。図8から分かるように、作用電極のナイキスト線図は高周波領域が半円形を呈し、小さい周波数に関連する半円インピーダンス曲線を示し、中周波及び低周波領域は1本の垂直な直線を示し、作用電極が良好な電気二重層キャパシタ作用及び高速なイオン拡散性質を有していることを示している。
【0063】
作用電極中の高速なイオン拡散は三次元束状多層カーボンナノチューブ及び層状3成分金属間化合物合金で形成された三次元ミクロ構造に起因している。前述の三次元ミクロ構造には非常に良好な多孔質拡散チャンネルが形成され、電解質イオンの高速化効率を高め、電極内の活性材料及び電解質の直接接触を強化し、且つイオン拡散の制限を低減させている。
【0064】
また、等価回路図はRs、Rct、及び実際にキャパシタが並列された定位相要素(CPE)を含む。図8を参照すると、本実験例のACインピーダンス分析から分かるように、搭載される第2実施例の電池はRs抵抗が低く、極低い電圧で駆動しても作用電極が作用することを示す。本実施例のACインピーダンス分析から分かるように、第2実施例は本発明の調製方法で調製された三次元束状多層カーボンナノチューブを有し、低い等価直列抵抗を有している。これは三次元束状多層カーボンナノチューブが作用電極上で形成する多孔質構造であり、電解液のイオン拡散伝導がスムーズになり、電気化学活性物質がさらに容易に導通し、低いインピーダンス及び高い電導率の効果を達成している。
【0065】
[実験例5]
本実験例では、電池が第2実施例の作用電極を搭載し、1.67 A/g の電流密度で2,000回連続でCVサイクルを行う。図9は第2実施例で調製された作用電極が定電流でCVサイクルした後に得られた静電容量保持率の割合を示し、図9から分かるように、前記作用電極の比容量保持率はCVサイクルにおいて明確に増加し、128%まで増幅し、本発明に係る作用電極が循環充放電を行う条件で、本来の比容量を保持するのみならず、比容量がさらに増加することを示している。これは作用電極と電解液との間で徐々に湿潤になる界面、及び三次元束状多層カーボンナノチューブ構造がさらに多くの電解質イオンが到達する領域を有しているため、調製された複合電極材料が低いイオン抵抗を示し、電解質イオンが導電三次元束状多層カーボンナノチューブ構造を高速に遷移する。また、三次元束状多層カーボンナノチューブ複合電極が良好な導電性及び低い電荷移動抵抗を示し、複合電極材料と電解質との間の電荷高速移動がさらに有利になる。
【0066】
依本発明の調製方法で製造された三次元束状多層カーボンナノチューブは、下記利点を有している。
【0067】
1.本発明により調製された金属間化合物合金ナノ触媒は製造プロセスが簡単であり、エネルギーを消費して高温や高圧で焼却する必要がなく、希ガス雰囲気中で均一に混合し、簡易な加熱処理を行った後に調製が。
【0068】
2.本発明により調製された三次元束状多層カーボンナノチューブは3成分ナノ金属間化合物合金により成長させた三次元束状多層カーボンナノチューブの比表面積が約95.3 m2/gである。一般的には、活性炭素またはグラフェンの比表面積は少なくとも800 m2/g以上であり、本発明により調製された三次元束状多層カーボンナノチューブの比表面積は通常の活性炭素やグラフェンよりもずっと小さい。
【0069】
3.本発明により調製された三次元束状多層カーボンナノチューブは一次元束状多層カーボンナノチューブ及び二次元層状合金材料を根底部として接合し、多層カーボンナノチューブ及び層状合金材料の導電効果を向上し、電気二重層イオン分布保存効率を高め、電極の容量及びエネルギー密度を大幅に高めている。
【0070】
4.本発明により調製された三次元束状多層カーボンナノチューブで調製された作用電極により、定電流で充放電試験を行う際に、非常に優れたエネルギー密度及びパワー密度を発揮する。本発明により調製された三次元束状多層カーボンナノチューブは固体キャパシタとする潜在力を有している。
【0071】
5.本発明により調製された三次元束状多層カーボンナノチューブはナノ構造のシナジー効果及び良好な機械安定性を有し、加えて高い電導率で層状構造を備えており、電気二重層保存効果をさらに高めている。イオンの拡散速度も効果的に速まり、且つ充放電中の体積の変化が小さく、三次元束状多層カーボンナノチューブの電極の容量及びエネルギー密度性能を大幅に向上している。
【0072】
6.本発明により調製された三次元束状多層カーボンナノ複合電極の比容量保持率は初期比容量保持率より高く、良好な導電性及び低い電荷移動抵抗を示し、低いイオン抵抗で電解質イオンが三次元束状多層カーボンナノチューブ構造を高速で遷移し、複合電極材料と電解質との間の電荷の高速移動に貢献する。
【0073】
7.本発明により調製された三次元束状多層カーボンナノチューブ複合作用電極は、定電流で充放電試験を行う際に、非常に優れたエネルギー密度、パワー密度、及び循環使用する静電容量保持率を示す。上述のように、本発明により調製された三次元束状多層カーボンナノチューブはスーパーキャパシタ、電気二重層キャパシタ、疑似キャパシタ、全固体キャパシタ、及び関連するエネルギー保存素子及び電池セル材料において非常に高い応用の潜在力を有している。
【0074】
本発明は、その精神又は主要な特徴から逸脱することなく、他のいろいろな形態で実施することができる。そのため、上述の実施形態はあらゆる点で単なる例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。本発明の範囲は特許請求の範囲によって示すものであって、明細書本文には何ら拘束されない。更に、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、すべて本発明の範囲内のものである。
【符号の説明】
【0075】
1 三次元束状多層カーボンナノチューブの調製方法のフローチャート
S1 ステップ
S2 ステップ
S3 ステップ
S4 ステップ
2 作用電極
21 三次元チューブ束状カーボンナノチューブ
22 導電性接着剤
23 導電性ドレイン材料
【要約】      (修正有)
【課題】三次元束状多層カーボンナノチューブとそれを調製する方法の提供。
【解決手段】方法は、合金触媒及び遷移元素を提供し、希ガス雰囲気中で均一に混合すると共に、温度100~180℃で30~90分間熱処理を行い、金属間化合物を獲得するステップS1と、前記金属間化合物が設置されている基板を提供するステップS2と、水素を提供し、前記基板を前記水素中で、第一温度まで加熱し、水素により前記金属間化合物を15~45分間還元するステップS3と、保護ガス及び炭素源ガスを提供し、前記基板を第二温度まで加熱し、前記保護ガス及び前記炭素源ガス中で、30~90分間反応を行い、前記炭素源ガスが分解して発生する炭素原子を前記金属間化合物の底部に堆積させ、且つ三次元束状多層カーボンナノチューブを徐々に生成し、反応が完了した後、室温まで冷却して処理すると共に前記三次元束状多層カーボンナノチューブを収集するステップ4を含む。
【選択図】図3
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6
図7A
図7B
図8
図9