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特許7165390球状シリカゲルの製造方法、並びに、触媒の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-26
(45)【発行日】2022-11-04
(54)【発明の名称】球状シリカゲルの製造方法、並びに、触媒の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C01B 33/154 20060101AFI20221027BHJP
   C01B 33/157 20060101ALI20221027BHJP
   B01J 27/16 20060101ALI20221027BHJP
   B01J 35/08 20060101ALI20221027BHJP
   C07C 29/08 20060101ALN20221027BHJP
   C07C 31/08 20060101ALN20221027BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20221027BHJP
【FI】
C01B33/154
C01B33/157
B01J27/16 Z
B01J35/08 Z
C07C29/08
C07C31/08
C07B61/00 300
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018119811
(22)【出願日】2018-06-25
(65)【公開番号】P2020001936
(43)【公開日】2020-01-09
【審査請求日】2021-06-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000237112
【氏名又は名称】富士シリシア化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】浅野 達也
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 睦弘
(72)【発明者】
【氏名】笹野 茂
【審査官】田口 裕健
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-359543(JP,A)
【文献】特開平03-279349(JP,A)
【文献】特開2000-262909(JP,A)
【文献】特開昭60-053775(JP,A)
【文献】特開昭57-037683(JP,A)
【文献】中国実用新案第201488497(CN,U)
【文献】特開平09-030809(JP,A)
【文献】特開平11-292529(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 33/12-33/193
F27B 7/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
原料を配管内で流動させる処理を含む球状シリカゲルの製造方法であって、
前記原料の流路のうち、前記配管よりも下流側を減圧することで、前記原料を前記配管内で流動させ、
前記配管内に備えられた挿入部材により、前記配管内を流動する前記原料を、前記配管の軸を中心として回転するように駆動し、
前記原料は、球状シリカヒドロゲル、又は、前記処理を行う前の球状シリカゲルを含む球状シリカゲルの製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の球状シリカゲルの製造方法であって、
前記処理により、製造された球状シリカゲルの透明度を、前記原料に含まれる前記処理を行う前の球状シリカゲルよりも低くする球状シリカゲルの製造方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の球状シリカゲルの製造方法であって、
製造された球状シリカゲルの全光線透過率の相対比は0.95以下である球状シリカゲルの製造方法。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の球状シリカゲルの製造方法により球状シリカゲルを製造し、
製造された球状シリカゲルに酸又は金属を担持させる触媒の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、球状シリカゲル及びその製造方法、並びに、触媒及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、リン酸を担持させたシリカ系触媒の存在下、オレフィンを高温、高圧の気相中で水蒸気と反応させ、アルコール類を製造する技術が知られている(特許文献1~3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開昭50-146585号公報
【文献】特許第3901233号公報
【文献】特許第4489295号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のシリカ系触媒は、継続的に使用すると活性が低下するという問題があった。本開示の一局面は、継続的に使用しても活性が低下しにくい触媒及びその製造方法、その触媒の製造に使用できる球状シリカゲル及びその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様は、原料を配管内で流動させる処理を含む球状シリカゲルの製造方法であって、前記原料は、球状シリカヒドロゲル、又は、前記処理を行う前の球状シリカゲルを含む球状シリカゲルの製造方法である。
【0006】
本開示の球状シリカゲルの製造方法により製造した球状シリカゲルは、例えば、触媒の担体とすることができる。本開示の球状シリカゲルの製造方法により製造した球状シリカゲルを担体とする触媒は、継続的に使用しても活性が低下しにくい。
【0007】
本開示の別態様は、上述した球状シリカゲルの製造方法により球状シリカゲルを製造し、製造された球状シリカゲルに酸又は金属を担持させる触媒の製造方法である。
本開示の触媒の製造方法により製造した触媒は、継続的に使用しても活性が低下しにくい。
【0008】
本開示の別態様は、原料を配管内で流動させる処理により製造される球状シリカゲルであって、前記原料は、球状シリカヒドロゲル、又は、前記処理を行う前の球状シリカゲルを含む球状シリカゲルである。
【0009】
本開示の球状シリカゲルは、例えば、触媒の担体とすることができる。本開示の球状シリカゲルを担体とする触媒は、継続的に使用しても活性が低下しにくい。
本開示の別態様は、上述した球状シリカゲルと、前記球状シリカゲルに担持された酸又は金属と、を含む触媒である。本開示の触媒は、継続的に使用しても活性が低下しにくい。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】球状シリカゲルを製造する方法を表す説明図である。
図2】球状シリカゲルを製造する方法を表す説明図である。
図3】スパイラル管103の構成を表す説明図である。
図4】実施例1で製造した球状シリカゲルと、比較例1で製造した球状シリカゲルとを表す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本開示の実施形態を説明する。
1.球状シリカゲルの製造方法
(1)原料
球状シリカゲルの製造方法における原料は、球状シリカヒドロゲル、又は球状シリカゲルを含む。以下では、製造した球状シリカゲルと区別するために、原料に含まれる球状シリカゲルを原料シリカゲルとする。原料シリカゲルは、後述する「原料を配管内で流動させる処理」を行う前の球状シリカゲルに対応する。
【0012】
原料は、球状シリカヒドロゲル及び原料シリカゲル以外の成分を含んでいてもよい。原料の形態は、例えば、固体の粒子である。
球状シリカヒドロゲルは、例えば、ケイ酸アルカリ水溶液を酸で中和することにより製造することができる。酸として、例えば、硫酸、塩酸、硝酸等が挙げられる。原料シリカゲルは、例えば、球状シリカヒドロゲルを乾燥させることにより製造できる。
【0013】
原料に含まれる球状シリカヒドロゲル又は原料シリカゲルの物性は、以下の範囲内が好ましい。これらの範囲内である場合、製造した球状シリカゲルを用いて製造した触媒の触媒活性が一層高くなる。
【0014】
細孔容積:0.50~1.80ml/g
比表面積:20~600m/g
平均細孔径:6~100nm
平均粒子径:0.5~10mm
それぞれの物性はJIS K1150-1994に準じ、次の方法で測定した。
【0015】
比表面積の測定方法:
容量法によって求めた窒素吸着等温線を基にBETプロット法を用いて求めた。
細孔容積及び平均細孔径の測定方法:
平均細孔径が 14nm 以上の場合は、Thermo Qurest Italia社製PASCL240を用いて、外部から圧力を加え純粋な水銀をその圧力に応じて逐次細孔内に充満させ,圧力と圧入水銀量を測定し,圧力に対応する細孔直径に換算して得られる細孔径分布から平均細孔径を求めた。また、累積値から細孔容積を求めた。
平均細孔径が14nm未満の場合には容量法によって求めた窒素吸着等温線より相対圧が0.99の吸着容積量をもって細孔容積とした。また、平均細孔径は、BETプロット法より求めた。
平均粒子径の測定方法:
JIS標準フルイを用いた試料を標準ふるい及び振とう機を用いてふるい分け、各ふるい上に残った試料の質量積算値から計算した目開きの粒子径と、質量割合の積算グラフを書き、質量割合50%の粒子径を平均粒子径とした。
(2)原料を配管内で流動させる処理
本開示の球状シリカゲルの製造方法は、原料を配管内で流動させる処理を含む。原料を配管内で流動させる処理は、球状シリカヒドロゲル又は原料シリカゲルの表面に傷を形成する作用を奏する。配管としては、例えば、ロータリーキルン等が挙げられる。ロータリーキルンは、例えば、内部を加熱するヒータを備える。ロータリーキルンは、例えば、原料に回転力を与える駆動ギヤを備える。ロータリーキルンが駆動ギヤを備える場合、原料は、ロータリーキルン内を流動するとき、その軸を中心として回転する。
【0016】
また、配管内に、挿入部材を備えてもよい。挿入部材は、例えば、配管内を流動する原料を、配管の軸を中心として回転するように駆動する。そのような挿入部材として、例えば、配管の軸に沿って延びる長尺の板を、配管の軸方向を中心として捩じったスパイラル形状を有する部材等が挙げられる。
【0017】
原料が、配管の軸方向を中心として回転しながら配管内を流動する場合、球状シリカヒドロゲル又は原料シリカゲルの表面に傷を形成する作用が一層顕著になる。その結果、製造した球状シリカゲルの表面における後述する殻の形成が一層抑制され、形成された殻の脱離が一層促進される。
【0018】
配管は、1つの直線に沿って延びるものであってもよいし、曲線に沿って延びるものであってもよい。配管は、入口及び出口を有する配管であってもよいし、環状の配管であってもよい。配管の材質は特に限定されず、例えば、金属、セラミクス、樹脂等が挙げられる。
【0019】
原料を配管内で流動させる方法として、例えば、原料を加圧して配管に送り込む方法がある。また、原料を配管内で流動させる方法として、例えば、配管における上流側に原料を供給するとともに、配管における下流側を減圧する方法がある。また、原料を配管内で流動させる方法として、高低差を利用する方法がある。
【0020】
原料が球状シリカヒドロゲルを含む場合、原料が配管内を流動した後、又は、原料が配管内を流動しているときに、球状シリカヒドロゲルを乾燥させて球状シリカゲルとすることができる。
(3)製造された球状シリカゲルの物性
本開示の球状シリカゲルの製造方法により製造された球状シリカゲルにおける細孔容積、比表面積、平均細孔径、平均粒子径は、例えば、原料に含まれる球状シリカヒドロゲル又は原料シリカゲルと同様である。
本開示の球状シリカゲルの製造方法により製造された球状シリカゲルは、その表面に微細な傷を多数備える。この傷は、原料が配管内を流動するとき、原料同士の接触、又は、原料と配管の内壁との接触により生じる傷である。本開示の球状シリカゲルの製造方法により製造された球状シリカゲルは、上記の傷のために、原料に含まれる球状シリカヒドロゲル又は原料シリカゲルに比べて、表面形状が粗く、透明度が低い。
透明度は、積分球ユニットを取り付けた分光光度計(JASCO製V-650)にて全光線透過率として700nmの波長で測定した。実施例の球状シリカゲルは、全光線透過率の低下が見られた。球状シリカゲル粒子表面の傷による全光線透過率の相対比として、0.95以下である事が好ましく、より好ましくは0.90以下である。
全光線透過率の相対比とは、配管内で流動させる処理行っていない球状シリカゲルの全光線透過率に対する、全光線透過率の比率を意味する。
【0021】
2.触媒の製造方法
本開示の触媒の製造方法では、前記「球状シリカゲルの製造方法」で製造した球状シリカゲルを担体とする。本開示の触媒の製造方法では、例えば、以下の方法で触媒を製造する。まず、球状シリカゲルを含む担体(以下ではシリカ担体とする)を、触媒成分を含む溶液に浸漬する。触媒成分として、例えば、酸又は金属等が挙げられる。酸としては、例えば、ヘテロポリ酸等が挙げられる。ヘテロポリ酸として、例えば、リン酸等が挙げられる。金属としては、例えば、Pt、Pd、Zr、Al、Cu、Ti等が挙げられる。酸溶液における酸の濃度は、20~70質量%の範囲内が好ましい。酸濃度がこの範囲内である場合、酸を担持した触媒の触媒活性が一層高くなる。金属を含む溶液における金属の濃度は、数ppm~数十質量%の範囲内が好ましい。金属の濃度がこの範囲内である場合、金属を担持した触媒の触媒活性が一層高くなる。
【0022】
次に、触媒成分を含む溶液からシリカ担体を取り出し、シリカ担体の表面から溶液を除去する。最後に、シリカ担体を乾燥して、触媒を完成する。この触媒は、シリカ担体と、それに担持された酸又は金属と、を含む。
【0023】
本開示の触媒の製造方法で製造した触媒は、継続的に使用しても活性が低下しにくい。その理由は以下のように推測される。
発明者は、触媒の活性が低下する原因が、触媒の表面に形成される殻であることを発見した。この殻は、触媒が高温、高圧にさらされ、触媒成分を含む相とシリカ担体の相との相分離等の構造変化が生じることで形成される。形成された殻がシリカ担体の細孔を塞ぎ、さらに、殻同士が融着してブロック状の塊になることで、触媒の活性が低下する。
【0024】
本開示の触媒の製造方法で製造した触媒に含まれる球状シリカゲルは、その表面に複数の傷を有するため、上記の殻の形成を抑制するとともに、形成された殻の脱離を促進する。その結果、本開示の触媒の製造方法で製造した触媒は、継続的に使用しても活性が低下しにくい。
【0025】
3.アルコールの製造方法
前記「触媒の製造方法」により製造した触媒のうち、酸を担持した触媒(以下では酸担持触媒とする)は、例えば、アルコールの製造に使用できる。例えば、酸担持触媒の存在下、オレフィンを高温、高圧の気相中で水蒸気と反応させ、アルコール類を製造することができる。
【0026】
オレフィンとしては、例えば、エチレン、プロピレン等が挙げられる。反応における温度は、例えば、150~300℃とすることができる。反応における圧力は、例えば、1~25MPaとすることができる。オレフィンがエチレンである場合、反応における温度を、例えば、200~300℃とし、反応における圧力を6~8MPaとすることができる。また、オレフィンがプロピレンである場合、反応における温度を、例えば、150~200℃とし、反応における圧力を2~4MPaとすることができる。
【0027】
アルコールの製造における条件は、例えば、「第9版アルコールハンドブック」(通商産業省基礎産業局アルコール課監修、1997年8月10日発行)の「4 合成アルコールによるアルコール製造方法」の項における第247~254頁の記載、並びに「5.1.2合成アルコール蒸留装置」の項における第257頁の記載に基づき設定することができる。
(実施例1)
(1-1)原料である球状シリカヒドロゲルの製造
ケイ酸ナトリウム溶液と、希硫酸とを混合室にて連続的に混合してシリカヒドロゾルを生成した。そして、混合室よりシリカヒドロゾルを空中へ散布してゲル化を行い、生成した球状シリカヒドロゲルを水槽に収容した。
【0028】
次に、生成した球状シリカヒドロゲルに対し、酸処理を行った。酸処理は、球状シリカヒドロゲルと約0.5Nの硫酸とを、循環タンクにおいて循環させる処理である。
【0029】
次に、球状シリカヒドロゲルに対し、バッチ式の循環水洗を10回前後繰り返した。バッチ式の循環水洗は、球状シリカヒドロゲルと、水とを循環水洗タンクにおいて循環させる処理である。バッチ式の循環水洗では、1回ごとに水洗水を入れ替えた。バッチ式の循環水洗を10回前後繰り返すことで、球状シリカヒドロゲル内の硫酸ナトリウムが取り除かれた。また、バッチ式の循環水洗における最後の数回では、球状シリカヒドロゲルのpHは一定であった。
【0030】
(1-2)原料を配管内で流動させる処理
前記(1-1)で得た球状シリカヒドロゲルを、図1に示す原料タンク1へ充填した。次に、原料タンク1から、ロータリーキルン3の入口5へ、球状シリカヒドロゲルを連続的に投入した。投入には電磁フィーダー7を用いた。球状シリカヒドロゲルは、ロータリーキルン3内を流動し、出口9から排出され、製品タンク11に収容された。
【0031】
ロータリーキルン3の管直径は300mmであり、全長は4000mmである。ロータリーキルン3は、セラミックヒータ13を備えている。セラミックヒータ13は、ロータリーキルン3の軸方向に沿って配列している。ロータリーキルン3の設定温度は250℃とした。ロータリーキルン3は、駆動源である駆動ユニット15を備える。駆動ユニット15はモータ及び減速機を備える。ロータリーキルン3は配管に対応する。
【0032】
また、球状シリカヒドロゲルがロータリーキルン3内を流動するとき、ブロア17を用いて、ロータリーキルン3の出口9に空気を導入した。空気は、ロータリーキルン3内を、球状シリカヒドロゲルとは逆方向に流れ、入口5から排出され、空気配管19、吸引用バッファタンク21、及びブロア23の順に流れる。
【0033】
製品タンク11に収容された球状シリカヒドロゲルを、180℃に設定した棚式乾燥機で12時間乾燥し、球状シリカゲルを得た。次に、目開き2.36mmの篩いを用いて、球状シリカゲルのうち、2.36mm以下の粒子を除去した。得られた球状シリカゲルをCB1とする。
(実施例2)
(2-1)原料である球状シリカゲルの製造
前記(1-1)で製造した球状シリカヒドロゲルを、180℃に設定した棚式乾燥機で12時間乾燥し、球状シリカゲル(すなわち原料シリカゲル)を得た。
【0034】
(2-2)原料を配管内で流動させる処理
前記(2-1)で得た原料シリカゲルを、図2に示す原料タンク101に充填した。原料タンク101から、スパイラル管103、減圧ホッパー25、及びダンパー27を経て、製品タンク111に至る経路が設けられている。また、減圧ホッパー25は、ブロア29により減圧されている。
【0035】
スパイラル管103は、図3に示すように、中空円筒形状のステンレス管31と、その内部に挿入された挿入部材33とを備える。ステンレス管31の全長は4000mmであり、口径は25mmである。挿入部材33は、全長4000mm、厚さ2mm、幅23mmのステンレス板を、その長手方向を中心として繰り返し捩じった形状を有する部材である。挿入部材33における捩じりの頻度は、1000mm当たり5回である。
【0036】
ブロア29で減圧ホッパー25を減圧することにより、原料タンク101内の原料シリカゲルは、スパイラル管103、減圧ホッパー25、及びダンパー27を経て、製品タンク111に連続的に送られた。このとき、原料シリカゲルは、スパイラル管103内で流動する。スパイラル管103内を流動するとき、原料シリカゲルは、挿入部材33によって、スパイラル管103の軸を中心として回転するように駆動される。原料シリカゲルのフィード量は60Kg/hであった。原料シリカゲルは、スパイラル管103内を流動するとき、目的物である球状シリカゲルとなった。
【0037】
次に、目開き2.36mmの篩いを用いて、製品タンク111に収容された球状シリカゲルのうち、2.36mm以下の粒子を除去した。得られた球状シリカゲルをCB2とする。
(比較例1)
前記(1-1)で製造した球状シリカヒドロゲルを、180℃に設定した棚式乾燥機で12時間乾燥し、球状シリカゲルを得た。この球状シリカゲルに対し、配管内を流動させる処理は行わなかった。次に、目開き2.36mmの篩いを用いて、球状シリカゲルのうち、2.36mm以下の粒子を除去した。得られた球状シリカゲルをRB1とする。
(球状シリカゲルにおける物性の測定)
実施例1、2、及び比較例1で製造した球状シリカゲルの平均粒子径、平均細孔径、細孔容積、比表面積及び粒子圧縮破壊強度を測定した。平均粒子径、平均細孔径、細孔容積、比表面積の測定方法は上述したとおりである。粒子圧縮破壊強度の測定方法は、木屋式硬度計を用いた方法である。粒子圧縮破壊強度の測定におけるn数は50個とし、50個における平均値を粒子圧縮破壊強度の測定値とした。物性の測定結果を表1に示す。粒子圧縮破壊強度の測定方法は、JIS K1150-1994に準じた方法である。
【0038】
【表1】
実施例1で製造した球状シリカゲルと、比較例1で製造した球状シリカゲルとを、光学顕微鏡で観察し、写真を撮影した、その写真を図4に示す。実施例1で製造した球状シリカゲル(図4における左側)の表面には、多数の傷が形成され、透明度が低かった。比較例1で製造した球状シリカゲル(図4における右側)の表面には、傷がほとんど形成されておらず、透明度が高かった。このことから、原料を配管内で流動させる処理により、球状シリカゲルの表面に多数の傷が形成され、球状シリカゲルの透明度が低下することが確認できた。
実施例1、2で得られた球状シリカゲルおよび比較例1で得られた球状シリカゲルについて、700nm波長における全光線透過率(T%)を測定した。測定は、各測定試料につき3回行った。測定には、JASCO製分光光度計V-650を用いた。測定においては、積分球ユニットを用い、装置付属の標準白板を反射標準とし、光路長1cmのセルに当該試料を充填した。原料を配管内で流動させる処理により、球状シリカゲルの表面に多数の傷が形成された。多数の傷が形成された球状シリカゲルは、表面処理を行っていない比較例1の球状シリカゲルに比べ透過率が低下する。
球状シリカゲルCB1、CB2、RB1のそれぞれについて、全光透過率を測定した。測定は各試料について3回行った。また、球状シリカゲルCB1、CB2、RB1のそれぞれについて、全光線透過率の相対比を算出した。その結果を表4に示す。
【表4】
(実施例3)
(3-1)酸担持触媒の製造
実施例1、2及び比較例1で製造した球状シリカゲルをシリカ担体として用い、酸担持触媒を製造した。具体的には、まず、球状シリカゲルを65質量%濃度のリン酸水溶液に含浸した。次に、球状シリカゲルをリン酸水溶液から取り出し、球状シリカゲルの表面からリン酸水溶液を除去した。最後に、110℃に設定した棚式乾燥機で12時間乾燥し、酸担持触媒を得た。
【0039】
以下では、実施例1の球状シリカゲルを用いて製造した酸担持触媒をC1とし、実施例2の球状シリカゲルを用いて製造した酸担持触媒をC2とし、比較例1の球状シリカゲルを用いて製造した酸担持触媒をR1とする。
(3-2)焼成試験
酸担持触媒C1、C2、R1を、ヤマト科学社製電気炉を用いて、10時間焼成し、その後、放冷させた。焼成は、100℃、150℃、200℃、300℃の温度でそれぞれ行った。放冷後の酸担持触媒C1、C2、R1を電子顕微鏡観察により観察し、粒子表面に殻が形成されているか否かを確認した。その結果を表2に示す。
【0040】
【表2】
表2に示すとおり、酸担持触媒C1、C2では、いずれの焼成温度の場合も、粒子表面に殻は形成されていなかった。酸担持触媒R1では、150℃以上の焼成温度の場合、粒子表面に殻が形成されていた。この結果は、酸担持触媒C1、C2が、殻の形成を抑制できることを示している。
(3-3)暴露試験
実施例1、2、比較例1で得られた球状シリカゲルCB1、CB2、RB1のそれぞれについて、以下の暴露試験を行った。まず、球状シリカゲルを円筒状の籠に収容した。この籠は、タンタル金属製の金網から成る。籠の直径は100mmであり、高さは150mmである。
【0041】
次に、上記の籠を、エタノールの製造装置が備える反応塔内の最上部に設置した。この製造装置は、上記の「第9版アルコールハンドブック」の「4 合成アルコールによるアルコール製造方法」の項における第247~254頁の記載、並びに「5.1.2合成アルコール蒸留装置」の項における第257頁の記載の方法により、酸担持触媒の存在下、エチレンを原料とする水和反応により、エタノールを製造する装置である。
【0042】
上記の製造装置を用いて、10ヶ月間エタノールの製造と同様の工程を行った。その後、球状シリカゲルを反応塔から取り出した。取り出した球状シリカゲルを電子顕微鏡により観察し、粒子表面に殻が形成されているか否かと、粒子表面からの殻の脱離の有無とを確認した。その結果を表3に示す。
【0043】
【表3】
球状シリカゲルCB1、CB2では、粒子表面の一部において殻の形成は認められたが、形成された殻にひびが入り、粒子表面における広範囲にわたって殻が脱離していた。球状シリカゲルRB1では、粒子表面における広範囲にわたって殻が形成されており、殻の脱離は認められなかった。この結果は、球状シリカゲルCB1、CB2では、粒子表面に殻が形成されたとしても、その殻が粒子表面から脱離しやすいことを示している。
【0044】
以上、本開示の実施形態について説明したが、本開示は上述の実施形態に限定されることなく、種々変形して実施することができる。
(1)上記各実施形態における1つの構成要素が有する機能を複数の構成要素に分担させたり、複数の構成要素が有する機能を1つの構成要素に発揮させたりしてもよい。また、上記各実施形態の構成の一部を省略してもよい。また、上記各実施形態の構成の少なくとも一部を、他の上記実施形態の構成に対して付加、置換等してもよい。なお、特許請求の範囲に記載の文言から特定される技術思想に含まれるあらゆる態様が本開示の実施形態である。
【0045】
(2)上述した球状シリカゲル及び酸担持触媒の製造方法の他、アルコールの製造方法、アルコールの製造装置等、種々の形態で本開示を実現することもできる。
【符号の説明】
【0046】
1、101…原料タンク、3…ロータリーキルン、5…入口、7…電磁フィーダー、9…出口、11、111…製品タンク、13…セラミックヒータ、15…駆動ユニット、17…ブロア、19…空気配管、21…吸引用バッファタンク、23…ブロア、25…減圧ホッパー、27…ダンパー、29…ブロア、31…ステンレス管、33…挿入部材、103…スパイラル管
図1
図2
図3
図4