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  • 特許-X線分析装置 図1
  • 特許-X線分析装置 図2
  • 特許-X線分析装置 図3
  • 特許-X線分析装置 図4A
  • 特許-X線分析装置 図4B
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-26
(45)【発行日】2022-11-04
(54)【発明の名称】X線分析装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 23/20008 20180101AFI20221027BHJP
   G01N 23/207 20180101ALI20221027BHJP
   G01N 23/201 20180101ALI20221027BHJP
【FI】
G01N23/20008
G01N23/207
G01N23/201
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019050689
(22)【出願日】2019-03-19
(65)【公開番号】P2020153724
(43)【公開日】2020-09-24
【審査請求日】2021-04-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000250339
【氏名又は名称】株式会社リガク
(74)【代理人】
【識別番号】110000154
【氏名又は名称】弁理士法人はるか国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】刑部 剛
(72)【発明者】
【氏名】小澤 哲也
(72)【発明者】
【氏名】尾本 和樹
【審査官】田中 洋介
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-017258(JP,A)
【文献】特開2002-286658(JP,A)
【文献】特開2015-102432(JP,A)
【文献】特開2013-098090(JP,A)
【文献】特表2006-526138(JP,A)
【文献】米国特許第04364122(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 23/00-23/2276
G21K 1/02-1/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の方向に延伸する入射側アームと固定部と受側アームとを備え、前記入射側アームが、前記固定部に対して回転軸を中心にして回転可能なゴニオメータと、
前記入射側アームに配置され、前記第1の方向に交差する第2の方向に延伸するX線ビームを発生させるX線源と、
前記固定部に配置され、試料を支持する支持台と、
前記固定部に配置され、前記X線源より発生する前記X線ビームの、前記回転軸に垂直な方向を除いて前記第2の方向に沿う線幅を制限する平行スリットと、
前記受側アームに配置され、前記試料より発生する散乱X線を検出する検出器と、
を備える、X線分析装置。
【請求項2】
請求項1に記載のX線分析装置であって、
前記平行スリットを前記第2の方向に移動させる移動機構を備える、
ことを特徴とする、X線分析装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のX線分析装置であって、
前記平行スリットは、リング形状を、前記リング形状の中心を通る2本の直線で切り取った円弧形状を有する、
ことを特徴とする、X線分析装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、X線分析装置に関し、特に、装置の小型化かつ微小部測定を実現する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、X線分析装置は、2本のアームを有するゴニオメータを備える。X線源及び入射側光学部品が一方のアームに配置され、検出器及び受光側光学部品が他方のアームに配置される。
【0003】
試料に対して入射側に、平行スリットを備えるX線分析装置が用いられている。特許文献1に、試料に対して入射側に配置されるシュルツスリットが開示されている。特許文献2に、試料に対して入射側に配置される長手制限スリットが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平11-281595号公報
【文献】特開2015-102432号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、微小部に対する測定を可能とするX線分析装置の需要が高まっている。特許文献1及び特許文献2に開示される通り、シュルツスリット(又は長手制限スリット)を用いることにより、入射側のX線ビームの線幅を制限し、照射する試料におけるX線の照射領域を制限することができる。
【0006】
X線分析装置の小型化および汎用化が望まれている。一般的に汎用的なX線分析装置は、ゴニオメータのアームが長いので多数多様な光学系部品をアームに配置することができる。しかしながら、X線分析装置を小型化すると、X線発生装置及び入射光学系部品により構成される光学系が限定されてしまう。
【0007】
本発明はかかる課題を鑑みてなされたものであり、簡単な構成により小型で微小部測定が可能な光学系が実現されるX線分析装置の提供を、その目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)上記課題を解決するために、本発明に係るX線分析装置は、第1の方向に延伸する入射側アームと固定部と受光側アームとを備え、前記固定部が前記入射側アームに対してθ回転するときに前記受光側アームが前記入射側アームに対して相対的に2θ回転する、ゴニオメータと、前記入射側アームに配置され、前記第1の方向に交差する第2の方向に延伸する線状X線源と、前記固定部に配置され、試料を支持する、支持台と、前記固定部に配置され、前記線状X線源より発生するX線ビームの前記第2の方向に沿う線幅を制限する、平行スリットと、前記受光側アームに配置され、前記試料より発生する散乱X線を検出する、検出器と、を備える。
【0009】
(2)上記(1)に記載のX線分析装置であって、前記平行スリットを前記第2の方向に移動させる移動機構を備えていてもよい。
【0010】
(3)上記(1)又は(2)に記載のX線分析装置であって、前記平行スリットは、中空円の一部となる形状を有していてもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明により、簡単な構成により小型で微小部測定が可能な光学系が実現されるX線分析装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の第1の実施形態に係るX線分析装置の構成を示す概略図である。
図2】本発明の第1の実施形態に係るX線分析装置の機能を示す模式図である。
図3】本発明の第1の実施形態に係る平行スリットの構造を示す模式図である。
図4A】本発明の第2の実施形態に係るX線分析装置の主要部の構成を示す模式図である。
図4B】本発明の第2の実施形態に係るX線分析装置の主要部の構成を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、図面は説明をより明確にするため、実際の態様に比べ、寸法、形状等について模式的に表す場合があるが、あくまで一例であって、本発明の解釈を限定するものではない。また、本明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には、同一の符号を付して、詳細な説明を適宜省略することがある。
【0014】
[第1の実施形態]
図1は、本発明の第1の実施形態に係るX線分析装置1の構成を示す概略図である。図2は、当該実施形態に係るX線分析装置1の機能を示す模式図である。図2は、機能を簡単に説明するために、主要な部品を模式的に示している。ここで、当該実施形態に係るX線分析装置1はX線回折測定装置(XRD)であるが、これに限定されることはなく、小角X線散乱測定装置(SAXS)であってもよく、さらに、他のX線分析装置であってもよい。当該実施形態に係るX線分析装置1は、X線源部11と、入射側スリット12と、平行スリット13と、試料100を支持する支持台14と、2次元検出器15と、ゴニオメータ21と、を備える。
【0015】
ゴニオメータ21は、試料水平配置型のθ-θ型ゴニオメータである。ゴニオメータ21は、入射側アーム21Aと、固定部21Bと、受光側アーム21Cと、を備える。入射側アーム21AにX線源部11と入射側スリット12とが配置され、固定部21Bに平行スリット13と支持台14とが配置され、受光側アーム21Cに2次元検出器15が配置される。ゴニオメータ21は、支持台14に支持される試料100を水平に保持したまま、2θスキャンを行うことが出来る。試料100を水平に置くことで、試料100の自重による歪の影響を最小限にすることができ、試料100の落下に対する危険性を抑制することができる。ゴニオメータ21において、入射側アーム21A(X線源部11)が固定部21B(支持台14)に対してθ回転するときに、受光側アーム21C(2次元検出器15)が固定部21Bに対して反対向きにθ回転する。すなわち、受光側アーム21Cが入射側アーム21Aに対して相対的に2θ回転する。
【0016】
X線源部11は、ローターターゲットを備える。ローターターゲットに断面が線状の電子線を照射することによりローターターゲット表面よりX線を発生させる。ローターターゲットの回転軸に平行に配置されるスリット窓により、ローターターゲットより発生するX線のうち、スリット窓を透過するX線が外部へ出射する。
【0017】
ここで、入射側アーム21Aの延伸方向(スリット窓を通過するX線の伝播方向:第1の方向)をx軸方向とする。x軸方向に垂直な平面をyz平面とし、入射側アーム21Aの回転断面を貫く方向をy軸方向と、回転断面に平行な方向をz軸方向とする。かかるX線源部11は、y軸方向(第2の方向)に延伸する線状X線源11Aを有するとみなすことができる。なお、X線源部11は、線状X線源11Aを有する(とみなすことができる)ものを含んでいればよく、ローターターゲットに限定されることはなく、例えば封入管であってもよい。なお、第2の方向は、第1の方向と垂直であるのが望ましいが、第1の方向と交差するものであればよい。その場合であっても、第1の方向と第2の方向がなす角は85度以上(90度以下)であるのが望ましい。また、第2の方向は、入射側アーム21Aの平面(xy平面)に対して平行であるのが望ましい。
【0018】
入射側スリット12は、y軸方向を長手方向とする単スリットであり、X線源部11より発生するX線のz軸方向の発散を制限するものである(単スリットのz軸方向の幅は、任意である)。
【0019】
平行スリット13は、第1の幅Wの間隙を維持して互いに対向する2枚の平行板を含む。各平行板は、中空円(リング形状)の一部(円弧)となる形状を有する。すなわち、中空円の中心を通る2本の直線で中空円を切り取った形状である。ここで、外縁を構成する円弧の半径は55mmであり、内縁を構成する円弧の半径は35mmであり、この場合、平行スリット13の長さL(後述)は20mmであり、第1の幅Wは約0.44mmである。2枚の平行板の積層方向はy軸方向に沿って配置される。内縁を構成する円弧の半径は、試料100を支持する支持台14のサイズによって決定される。ここで試料100が配置される領域は、試料100の中心から21.5mmの距離以内に収められる。例えば、試料100は長さ35mmの板形状をしている。中空円の一部となる形状の(円の)中心の位置は試料100の表面にあるよう配置されるのが望ましい。組立精度により、かかる中心の位置は、試料100の内部であっても、試料100の近傍であってもよい。平行スリット13は、第1の幅Wの単スリットを複数並べた構造と等価であり、y軸方向に沿う線幅を制限する機能を有する。なお、平行スリットは、シュルツ(Schultz)スリットと呼ばれることもある。
【0020】
試料100を支持する支持台14は、平行スリット13とともに、固定部21Bに配置される(固定される)。平行スリット13と、支持台14が支持する試料100との相対的な位置関係は固定されており、ゴニオメータ21の入射側アーム21A及び受光側アーム21Cの回転から独立している。
【0021】
2次元検出器15は、試料100より発生する散乱X線を検出する。ここで、散乱X線は、試料100より発生する回折X線を含んでいる。また、当該実施形態において、検出器は2次元検出器に限定されることはなく、1次元検出器であってもよいし0次元検出器(例えばシンチレーションカウンター)であってもよい。
【0022】
図3は、当該実施形態に係る平行スリット13の構造を示す模式図である。図3は、平行スリット13をxy平面で切断した断面を示している。前述の通り、平行スリット13は、第1の幅Wの単スリットを区切ることなく一方向に連続的に配置した構造であり、平行スリット13の長さ(外縁の円弧と内縁の円弧との距離)をLとすると、図3に示す発散角度θは、θ=2arctan(W/L)で示される。W=0.5mmのとき、θを2.5°以下とするためには、平行スリット13の長さLが22.91mm以上必要となる。
【0023】
当該実施形態に係るX線分析装置1は、線状X線源11Aを用いる、ブラッグ・ブレンターノ(Bragg-Brentano)光学系(集中法)又は平行ビーム法による微小部(ポイント)測定装置を簡便な方法で実現することが出来ている。平行スリット13と2次元検出器(N次元検出器:N=0,1,2)を併用することで、スメアリングの出現が抑制される。
【0024】
当該実施形態に係るX線分析装置1では、線状X線源11Aを用いており、試料100に照射されるX線ビームの光量が高い(fluxが高い)光学系が実現されている。また、平行スリット13を組み合わせることで、簡便に微小部光学系切り替えることが可能である。
【0025】
試料100と平行スリット13の位置関係が固定されていることと、平行スリット13の(2枚の平行板の)形状により、ゴニオメータ21の回転に対して試料100に照射されるX線ビームの強度ばらつきが抑制されている。ブラッグ・ブレンターノ光学系において、X線ビームの照射面積を実質的に一定に制限する測定が可能となる。従って、照射面積を制限しながら集光することにより、試料の配向による強度変動が低減できる。
【0026】
当該実施形態に係るX線分析装置1は、平行スリット13を支持台14が配置される固定部21Bに配置させること以外は、既存のX線源及び入射側光学部品などを用いて簡便に実現することが出来る。当該実施形態に係るX線分析装置1は、微小部測定用の光学系であり、微小部測定だけでなく極点測定及び応力測定に最適である。
【0027】
[第2の実施形態]
本発明の第2の実施形態に係るX線分析装置1は、平行スリット13が少なくともy軸方向に沿って平行スリット13を移動させる移動機構25を備えるが、それ以外の構成については第1の実施形態に係るX線分析装置1と同じである。
【0028】
図4A及び図4Bは、当該実施形態に係るX線分析装置1の主要部の構成を示す模式図である。平行スリット13は移動機構25を備えることにより、平行スリット13のスリット部分をy軸方向に移動させることが出来る。図4A及び図4Bは、y軸方向の走査により、異なる位置にある平行スリット13と、かかる場合に試料100に照射されるX線ビームの異なる領域とが、それぞれ示している。その結果、試料100を固定した状態でy軸方向にマッピング測定を可能とする。
【0029】
平行スリット13のスリット部分(第1の幅Wの間隙)のy軸方向に沿う移動を、y軸方向における線状X線源11Aの線状の両端の範囲(線状の長さPの範囲)内に収めることにより、y軸方向の走査に対して試料100に照射されるX線ビームの強度ばらつきを抑制することが出来る。さらに、線状X線源11Aの線状の両端付近では、X線ビームの強度も低下するので、両端部分の影響が受けないよう、平行スリット13のスリット部分のy軸方向に沿う移動を、線状の両端それぞれより所定の長さq内側に収めるのがさらに望ましい。すなわち、平行スリット13の移動域sはP-2qである。ここで、線状X線源11Aの線状の長さPは12mm程度であり、試料位置は20mm程度の範囲を有している。線状の両端の影響が十分に抑制されるための所定の長さqは4mm程度であり、それゆえ、平行スリット13のスリット部分のy軸方向に沿う移動の範囲は4mm程度である。
【0030】
当該実施形態に係るX線分析装置1では、試料100を固定した状態でマッピング測定を可能としている。さらに、マッピング測定の際に、試料100に照射されるX線ビームの光量のばらつきが抑制されている。
【0031】
当該実施形態では、平行スリット13は移動機構25を備え、移動機構25は平行スリット13をy軸方向に移動させるとしたが、これに限定されることはない。平行スリット13を固定して、支持台14を移動させる移動機構を備えていてもよい。この場合、かかる移動機構は支持台14をy軸方向に移動させることにより、試料100をy軸方向に移動させることが出来る。また、かかる移動機構は支持台14をxy平面で移動させることにより、試料100のマッピング測定を可能にする。
【0032】
以上、本発明の実施形態に係るX線分析装置について説明した。上記実施形態では、平行スリット13の2枚の平行板の形状を中空円の一部となる形状としているが、これに限定されることはない。ゴニオメータ21の回転範囲が小さい(θが小さい)場合には、平行スリット13の2枚の平行板の形状は矩形状をしていてもよいし、必要に応じて適切な形状が選択されればよい。また、装置の小型化の観点から、上記実施形態に係るX線分析装置1の入射側には、X線源11と入射側スリット12と平行スリット13のみが配置され、簡便な構成で光学系を構成しているが、必要に応じてX線を平行化する光学部品などがさらに配置されてもよい。また、上記実施形態に係るX線分析装置1の受光側には2次元検出器15のみが配置されているが、必要に応じて受光側スリットなどの光学部品が配置されてもよい。
【0033】
上記実施形態では、試料の配向によるX線ビームの強度変動を低減することができている。特に、X線ビームの照射面積を実質的に一定に制限する測定が可能となる。従って、照射面積を制限しながら集光することにより、試料の配向による強度変動が低減できている。
【0034】
上記実施形態に係るX線分析装置1のゴニオメータ21は、試料水平配置型のθ-θ型ゴニオメータとしたが、これに限定されることはなく、入射側アーム21Aが固定され、入射側アーム21Aに対して固定部21Bがθ回転し、入射側アーム21Aに対して受光側アーム21Cが2θ回転する2θ-θ型ゴニオメータであってもよい。
【符号の説明】
【0035】
1 X線分析装置、11 X線源部、11A 線状X線源、12 入射側スリット、13 平行スリット、14 支持台、15 2次元検出器、21 ゴニオメータ、21A 入射側アーム、21B 固定部、21C 受光側アーム、25 移動機構、100 試料。
図1
図2
図3
図4A
図4B