(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-26
(45)【発行日】2022-11-04
(54)【発明の名称】組換え自己相補的アデノ随伴ウイルスを使用して疾患を治療するための方法及び組成物
(51)【国際特許分類】
C12N 15/25 20060101AFI20221027BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20221027BHJP
C12N 15/864 20060101ALI20221027BHJP
C12N 7/01 20060101ALI20221027BHJP
A61K 38/20 20060101ALI20221027BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20221027BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20221027BHJP
A61P 19/02 20060101ALI20221027BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20221027BHJP
【FI】
C12N15/25 ZNA
C12N15/63 Z
C12N15/864 100Z
C12N7/01
A61K38/20
A61K48/00
A61P29/00 101
A61P19/02
A61P43/00 121
(21)【出願番号】P 2019530369
(86)(22)【出願日】2017-08-18
(86)【国際出願番号】 US2017047589
(87)【国際公開番号】W WO2018035451
(87)【国際公開日】2018-02-22
【審査請求日】2020-08-17
(32)【優先日】2016-08-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】500360769
【氏名又は名称】ユニバーシティ オブ フロリダ リサーチ ファウンデーション,インコーポレイティド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(72)【発明者】
【氏名】バートレット、ジェフリー、エス.
(72)【発明者】
【氏名】ギヴィッツァーニ, スティーブン シー.
【審査官】池上 京子
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2013/0217864(US,A1)
【文献】J Gene Med,2009年,vol.11, no.7,p.605-614
【文献】Molecular Therapy-Nucleic Acids,2013年,vol.2, e70,p.1-10
【文献】Gene Therapy,2004年,vol.11,p.581-590
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00-15/90
A61K 38/00-38/58
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号2の核酸配列と少なくとも
95%同一である核酸配列を含むコドン修飾IL-1Ra遺伝子。
【請求項2】
配列番号2の核酸配列
と少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%同一である核酸配列を含む、請求項1に記載のコドン修飾IL-1Ra遺伝子。
【請求項3】
配列番号2の核酸配列を含む、請求項1または2に記載のコドン修飾IL-1Ra遺伝子。
【請求項4】
配列番号5の核酸配列を含む、請求項2に記載のコドン修飾IL-1Ra遺伝子。
【請求項5】
配列番号3の核酸配列を含む、請求項2に記載のコドン修飾IL-1Ra遺伝子。
【請求項6】
配列番号4の核酸配列を含む、請求項2に記載のコドン修飾IL-1Ra遺伝子。
【請求項7】
前記コドン修飾IL-1Ra遺伝子が、配列番号6のアミノ酸配列を含むIL-1Raペプチドをコードする、請求項1~6のいずれか一項に記載のコドン修飾IL-1Ra遺伝子。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか一項に記載のコドン修飾IL-1Ra遺伝子を含む核酸ベクター。
【請求項9】
前記コドン修飾IL-1Ra遺伝子に作動可能に連結されたプロモータをさらに含む、請求項8に記載の核酸ベクター。
【請求項10】
前記プロモータが、サイトメガロウイルス(CMV)プロモータ、CAGプロモータ、ヒトβアクチンプロモータ、ハイブリッドβアクチンプロモータ、EF1プロモータ、U1aプロモータ、U1bプロモータ、Tet誘導性プロモータ、VP16-LexAプロモータ、ニワトリβアクチン(CBA)プロモータ、ヒト伸長因子1αプロモータ、シミアンウイルス40(SV40)プロモータ、及び単純ヘルペスウイルスチミジンキナーゼプロモータ、およびIL-1β/IL-6ハイブリッドプロモータからなる群から選択される、請求項9に記載の核酸ベクター。
【請求項11】
前記IL-1β/IL-6ハイブリッドプロモータが、配列番号7の核酸配列を含む、請求項10に記載の核酸ベクター。
【請求項12】
逆方向末端反復配列をさらに含む、請求項8~11のいずれか一項に記載の核酸ベクター。
【請求項13】
SV40およびウシ成長ホルモン(bGH)ポリアデニル化配列をさらに含む、請求項8~12のいずれか一項に記載の核酸ベクター。
【請求項14】
SV40スプライスドナー(SD)およびスプライスアクセプター(SA)部位をさらに含む、請求項8~13のいずれか一項に記載の核酸ベクター。
【請求項15】
前記ベクターのコード領域が、二重鎖である、請求項8~14のいずれか一項に記載の核酸ベクター。
【請求項16】
前記ベクターが、sc-rAAV2.5Hu-IL-1Raを含む、請求項8~15のいずれか一項に記載の核酸ベクター。
【請求項17】
前記ベクターが、配列番号1の核酸配列を含む、請求項16に記載の核酸ベクター。
【請求項18】
請求項8~17のいずれか一項に記載の核酸ベクターを含む組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)。
【請求項19】
前記核酸ベクターをカプシド形成するカプシドをさらに含む、請求項18に記載のrAAV。
【請求項20】
前記rAAVが、自己相補的rAAVである、請求項18または19に記載のrAAV。
【請求項21】
前記カプシドが、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、もしくはAAV11、またはその組み合わせの少なくとも一部を含む、請求項18~20のいずれか一項に記載のrAAV。
【請求項22】
前記カプシドが、血清型AAV2の少なくとも一部および血清型AAV6の少なくとも一部を含む、請求項21に記載のrAAV。
【請求項23】
前記rAAVが血清型2.5のrAAVである、請求項21または22に記載のrAAV。
【請求項24】
請求項18~23のいずれか一項に記載のrAAVおよび薬学的に許容される担体を含む組成物。
【請求項25】
軟骨細胞または滑膜細胞へとIL-1Raペプチドを送達するための、請求項18~23のいずれか一項に記載のrAAVを含む組成物または請求項24に記載の組成物であって、該組成物が、該軟骨細胞または滑膜細胞と接触させられることを特徴とする、組成物。
【請求項26】
軟骨細胞または滑膜細胞へとIL-1Raペプチドを送達するための医薬の製造における、請求項18~23のいずれか一項に記載のrAAVまたは請求項24に記載の組成物の使用であって、該送達が、該軟骨細胞または滑膜細胞を、請求項18~23のいずれか一項に記載のrAAVまたは請求項24または25に記載の組成物と接触させることを含む、使用。
【請求項27】
前記軟骨細胞または滑膜細胞が、ヒト被験体における標的とした部位において見出される、請求項26に記載の使用。
【請求項28】
インターロイキン1受容体アゴニスト(IL-1Ra)ペプチドをそれを必要とするヒトに提供するための、請求項24に記載の組成物であって、該組成物が、標的とする部位に導入されることを特徴とする、組成物。
【請求項29】
ヒトにおける変形性関節症または関節リウマチの症状を改善するための、請求項24に記載の組成物であって、該組成物が、標的とする部位に導入されることを特徴とする、組成物。
【請求項30】
軟骨の修復を必要とするヒトにおいて軟骨を修復するための、請求項24に記載の組成物であって、該組成物が、標的とする部位に導入されることを特徴とする、組成物。
【請求項31】
インターロイキン1受容体アゴニスト(IL-1Ra)ペプチドを炎症領域に提供するための、請求項24に記載の組成物であって、該組成物が、標的とする部位に導入されることを特徴とする、請求項24に記載の組成物。
【請求項32】
前記ヒトが、変形性関節症または関節リウマチと診断されているか、または変形性関節症または関節リウマチを発症する危険性がある、請求項27~31のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項33】
前記標的とする部位が、ヒトの関節、滑膜、滑膜下膜、関節包、腱、靭帯、軟骨、または関節周囲の筋肉である、請求項27~31のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項34】
前記組成物が、直接関節内注射によって前記標的とする部位に導入されることを特徴とする、請求項27~31のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項35】
前記組成物が最初に導入された時より後の時点で2回目に前記組成物が導入されることを特徴とする、請求項27~31のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項36】
前記時点が少なくとも3ヶ月である、請求項35に記載の組成物。
【請求項37】
前記組成物が、前記標的とする部位への二次療法と組み合わせて投与されることを特徴とする、請求項27~31のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項38】
前記二次療法が、グルココルチコイド、ヒアルロナン、多血小板血漿、組換えヒトIL-1Ra、またはそれらの組み合わせを含む、請求項37に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
相互参照
本出願は、2016年8月19日に出願された米国仮特許出願第62/377,297号の優先権を主張するものであり、その明細書はその全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
配列表の参照
出願人は、CALIM_16_02_PCT_Sequence_Listing_ST25.txtと題された、規則13ter.1(a)の下で提出されたAnnex C/ST.25テキストファイルの形式で記録されている情報が、提出された国際出願の一部を形成するものと同一であると主張する。配列表の内容は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0003】
本発明は、遺伝子治療及び遺伝子治療のための組成物、より具体的には組換え自己相補的アデノ随伴ウイルス(sc-rAAV)、及びsc-rAAVを使用して疾患又は疾患の症状を治療する方法に関する。
【背景技術】
【0004】
変形性関節症(OA)は、2,700万人を超えるアメリカ人が罹患しており、高齢者における身体障害の主要な原因である。OAを有する患者は死亡のリスクもより高い。我々の医療システムに対するOAのコストは、年間1,000億ドルを超えると推定される。このような統計は、OAが不治であり、治療に対して著しく抵抗性であるという事実を反映する。
【0005】
OAの最も早期で支配的な症状は痛みである。これは通常、疾患過程の後期に起こり、その頃までに関節軟骨の喪失、肋軟骨下骨の硬化症、骨棘の形成、及び滑膜炎症を含む、罹患関節のかなりの構造的変化がしばしば存在する。膝関節では、半月板損傷も存在する。疾患の進行を停止又は逆転させる疾患修飾性変形性関節症薬(DMOAD)が存在しないため、現在の治療法は緩和的である。現在のところ、疾患の過程に介入する有効な方法はないので、多くの患者は全関節置換術を必要とする段階まで進行する。これは、成功を収めている処置ではあるが、多大のリハビリテーションを伴う重大で費用のかかる手術を含む。多くの場合、機能不全になった人工関節を交換する再置換手術が必要である。
【0006】
DMOADがないため、現在の標準治療は緩和的である。2012年に米国リウマチ学会(ACR)及び2013年に米国整形外科学会(AAOS)によって発行された膝(このINDの対象関節)のOAを治療するための最新のガイドラインに反映されているように、治療への現在のアプローチは3つの漸進的カテゴリに分類される。非薬理学的療法には、患者教育及び自助、運動プログラム及び体重減少などの一連の戦略が含まれる。薬理学的療法には、アセトアミノフェン、非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)、アヘン剤及びグルココルチコイド又はヒアルロン酸の関節内注射の使用が含まれる。NSAIDは、多くの患者に部分的な軽減をもたらすが、OAを有する多くの個人が高齢であるので、現在の状況で特に懸念される上部消化管出血及び腎不全に関連する。グルココルチコイドの関節内注射は多くの場合速やかな緩和をもたらすが、その効果は通常数週間しか持続しない。グルココルチコイドの反復注射は、感染についての懸念及び持続的な高用量のグルココルチコイドが関節軟骨を損傷するという証拠のために、非現実的であり、禁忌である。ヒアルロン酸の関節内注射(粘性補給)の利益については議論がある;ACRはこの点に関して推奨しておらず、一方AAOSはもはやこれを推奨していない。間葉系幹細胞(MSC)及び多血小板血漿などの自己血製剤の関節内注射はますます普及しているが、OAに関してはFDAによって承認されていない。膝のOAの治療に関する変形性膝関節症研究会議の国際及び欧州リウマチ学会からの最新の勧告は、ACR及びAAOSのものと大きくは異ならない。様々な機関の勧告は、OAに対する治療選択肢の少なさと信頼性の高い有効な薬理学的介入の完全な欠如を強調している。治療法に何らかの応答がある場合でも、それは、疾患の進行ではなく、徴候と症状だけに対処するものである。治療がOAの症状及び進行を制御できない場合、外科的介入が適応され得る。
【0007】
関節鏡視下洗浄及び壊死組織切除は症状の軽減をもたらすために広く使用されてきたが、その効果はプラセボと同程度であるという証拠を受けて、その使用が減少している。膝関節の力を再調整するために時として骨切り術が行われ、その結果無傷の軟骨の領域によって負荷が生じる。この手段は、新たに体重を支える関節軟骨が侵食され、症状が再発するまで、数年間軽減をもたらすことができる。一般に、骨切り術は、人工膝関節の外科的移植までの時間を稼ぐ遅延策と見なされている。多くの患者が関節全置換術を必要とする段階まで進行し、米国では昨年70万を超える人工膝関節が外科的に埋め込まれた。
【0008】
IL-1は、軟骨細胞軟骨溶解及び軟骨細胞によるマトリックス合成の抑制の両方の強力なメディエータである。同時に、これら2つの過程は軟骨に対して高度に破壊的である。IL-1はまた、軟骨形成を阻害するが、同時に骨棘の形成及び肋軟骨下骨の硬化症を説明する助けとなり得る骨形成分化のある種の局面を促進することも示されている。逆説的に、IL-1は破骨細胞活性も促進する。骨形成及び骨溶解の両方を刺激することによって、IL-1は、OAの間に肋軟骨下骨に見られるように、骨代謝回転を増強する。最後に、IL-1は、OAに見られる炎症性変化を引き起こすのに適した状況にある。その発熱活性は公知であり、ウサギの膝関節におけるほとんどないに等しいほど少量のIL-1の発現が、顕著な滑膜炎を誘発するのに十分である。
【0009】
OAを有するヒト関節から回収された軟骨を検討した際に、軟骨細胞によるIL-1の産生が非常に上昇しており、自己分泌様式で持続することが見出された。さらに、細胞はIL-1Raを産生しなかった。これは、OAにおけるその主要な生理学的阻害剤の不在下でのIL-1による軟骨細胞の自己分泌及びパラ分泌活性化の増強を示唆する。OAにおけるIL-1に対する軟骨細胞の増強された応答性はまた、シグナル伝達受容体であるI型IL-1受容体のOA軟骨細胞上での発現増加によっても示された。軟骨細胞によるIL-1の局所産生及び消費は、なぜ滑液中のIL-1の濃度がOAにおいてさえも低くなる傾向があるのかを説明するのに役立ち得る。また、遺伝子解析は、IL-1Ra(IL1RN)をコードするヒト遺伝子中の一塩基多型(SNP)及びある種のOAの発生率及び重症度と相関する調節エレメントを同定した。
【0010】
標的薬物送達は、関節疾患の関節内治療にとって重要な問題である。すべてのサイズの分子ならびに粒子は、リンパ管、滑膜下毛細血管、又はその両方を介して関節から速やかに除去される。これは、関節内で抗OA薬の持続的な治療用量を達成することを困難にする。これに対処するために、小分子を全身的に送達することはできるが、滑膜毛細血管の有窓内皮を横切る際のサイズ依存性制約のために、タンパク質をこの様式で送達することは困難である。さらに、全身送達は、非標的部位を高用量の治療薬にさらし、望ましくない副作用をもたらす。典型的には数時間の半減期を有する、関節からのタンパク質の急速な排出は、関節内送達を潜在的に無効にする。一例として、RAの症状を治療するために組換えIL-1Ra(Kineret,Amgen Biologicals)を毎日の皮下注射によって送達する。しかしながら、毎日の送達は、注射と注射の間、IL-1Raの治療血清レベルを維持することができない(Evans et al.,1996,Human Gene Therapy,7:1261-1290;Evans et al.,2005,PNAS 102(24):8698-8703)。いくつかの研究は、OAを治療するのにIL-1Raを導入するためにエクスビボ遺伝子導入を使用した。しかしながら、これらのアプローチは多くの時間と労力を要し、長期の遺伝子発現を提供するとは思われなかった(Frisbie et al.,2002,Gene Therapy 9(1):12-20)。また、いくつかの研究は、変形性関節症を治療するためのIL-1α及びIL-1β(例えばABT-981)を標的とする二重可変ドメイン免疫グロブリン(DVD-Ig)の使用を記載している(Kamath et al.,2011,Osteoarthritis and Cartilage 19S1:S64;Wang et al.,2015,Osteoarthritis and Cartilage 23:A398-399;Wang et al.,2014,Osteoarthritis and cartilage 22:S462-S463;Lacy et al.,2015,mAbs 7(3):605-619;Wu et al.,2009,mAbs 1(4):339-347;Wang et al.,2014,Scientific Abstracts SAT0448 pg.756;Goss et al.,2014,Scientific Abstracts SAT0447 pg.755-756;米国特許出願公開第2015/0050238号;Wang et al.,2014 ACR/ARHP Annual Meeting Abstract Number 2237;Wang et al.,2015 ACR/ARHP Annual Meeting Abstract Number 318)。しかしながら、これらのペプチドは、比較的短い半減期のために、反復全身導入(例えば2週間ごとに4回の投与又は4週間ごとに3回の投与、例えば皮下注射又は静脈内注入による)を必要とする(Wang et al.,2015,Osteoarthritis and Cartilage 23:A398-399;Wang et al.,2014,Osteoarthritis and cartilage 22:S462-S463;Evans et al.,2005,PNAS 102(24):8698-8703)。
【0011】
本発明は、治療用遺伝子産物(例えばIL-1Ra)を標的とした部位(a location of interest)、例えば関節に持続的に送達するための方法及び組成物を特徴とする。本発明はまた、変形性関節症及び関節リウマチなどの、しかしこれらに限定されない疾患の症状を治療するための方法及び組成物を特徴とする。本発明はまた、個体(例えばヒト)に治療有効量の治療用遺伝子産物(例えばIL-1Ra)を提供するための方法及び組成物を特徴とする。方法及び組成物は、組換え自己相補的アデノ随伴ウイルス(sc-rAAV)を特徴とし得、ここでsc-rAAVは、遺伝子操作されたキャプシド及びキャプシド内にパッケージングされたベクター(例えばsc-rAAVベクター)を含む。ベクターは、プロモータ(例えば構成的プロモータ)に作動可能に連結された導入遺伝子(例えば標的とした部位のタンパク質、例えば治療用遺伝子産物、例えばIL-1Ra又はそのコドン改変型をコードするヌクレオチド配列)を含み得る。治療用遺伝子産物は、標的とした部位の位置、例えば関節に送達し得る。例えば、変形性関節症を治療するために、sc-rAAVを直接関節内注射によって関節内の細胞(例えば軟骨細胞、滑膜細胞等)に導入し得る。本発明は、前述の疾患又は標的とした部位の位置(例えば関節)のいずれにも限定されない。
【0012】
Goodrich et al.(Molecular Therapy-Nucleic Acids,2013,2:e70)が、scAAV送達IL-1Raを用いて変形性関節症を治療する方法を一般的に開示していることが注目される。しかしながら、Goodrich et al.は、特定のIL-1Ra配列、例えば本発明によるIL-1Ra配列を具体的に同定又は可能にしていない。特に、遺伝子治療の分野は、標的とした部位のタンパク質についての特定の遺伝子配列が効率的に発現されると想定することができない予測不可能な領域である。さらに、遺伝子治療はまた、ヒトと比較した動物モデルにおける有効性に関しても予測不可能であり、例えば特定の方法が動物モデルにおいて有効である場合に、それがヒトにおいて有効であると仮定することはできない。
【発明の概要】
【0013】
本発明は、組換え自己相補的アデノ随伴ウイルス(sc-rAAV)を特徴とする。いくつかの実施形態では、sc-rAAVは、遺伝子操作されたAAVキャプシド及びキャプシド内にパッケージングされたベクターを含み、ここでベクターは、プロモータに作動可能に連結された修飾IL-1Ra遺伝子を含み、修飾IL-1Ra遺伝子は、配列番号2と少なくとも95%同一である。いくつかの実施形態では、プロモータはCMVプロモータを含む。いくつかの実施形態では、遺伝子操作されたキャプシドは、血清型AAV2の少なくとも一部及び血清型AAV6の少なくとも一部を含む。いくつかの実施形態では、遺伝子操作されたキャプシドは、血清型AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV11、又はそれらの組み合わせの少なくとも一部を含む。いくつかの実施形態では、ベクターは、SV40及びウシ成長ホルモン(bGH)ポリアデニル化配列をさらに含む。いくつかの実施形態では、ベクターは、SV40スプライスドナー(SD)及びスプライスアクセプター(SA)部位をさらに含む。いくつかの実施形態では、ベクターはsc-rAAV2.5Hu-IL-1Raを含む。いくつかの実施形態では、sc-rAAVは組成物の一部である。
【0014】
いくつかの実施形態では、sc-rAAVは、遺伝子操作されたAAVキャプシド及びキャプシド内にパッケージングされたベクターを含み、ここでベクターは、プロモータに作動可能に連結された修飾IL-1Ra遺伝子を含み、修飾IL-1Ra遺伝子は、配列番号6に従うIL-1Raタンパク質をコードする。
【0015】
本発明は、治療有効量のインターロイキン1受容体アゴニスト(IL-1Ra)ペプチドを、それを必要とするヒト(例えば変形性関節症又は関節リウマチと診断されたか又はその危険性があるヒト)に提供する方法を特徴とする。いくつかの実施形態では、この方法は、本発明による組換え自己相補的アデノ随伴ウイルス(sc-rAAV)を含む組成物を標的とした部位の位置に導入する(例えば関節内注射によって)ことを含む。sc-rAAVはベクターを標的とした部位の位置の細胞に形質導入し、ここで修飾IL-1Ra遺伝子は、ヒトに治療有効量の前記IL-1Raペプチドを提供するように発現される。
【0016】
本発明はまた、ヒトにおける変形性関節症又は関節リウマチの症状を改善する方法を特徴とする。いくつかの実施形態では、この方法は、本発明による組換え自己相補的アデノ随伴ウイルス(sc-rAAV)を含む組成物を標的とした部位の位置に導入する(例えば直接関節内注射によって)ことを含む。sc-rAAVはベクターを標的とした部位の位置の細胞に形質導入し、ここで修飾IL-1Ra遺伝子は、変形性関節症又は関節リウマチに関連する症状を改善するのに有効な量のIL-1Raペプチドをヒトに提供するように発現される。
【0017】
本発明はまた、軟骨の修復を必要とするヒト(例えば変形性関節症又は関節リウマチと診断されたか又は発症する危険性があるヒト)において軟骨を修復する方法を特徴とする。いくつかの実施形態では、この方法は、本発明による組換え自己相補的アデノ随伴ウイルス(sc-rAAV)を含む組成物を軟骨の位置に導入する(例えば直接関節内注射によって)ことを含む。sc-rAAVは軟骨の位置の細胞にベクターを形質導入し、ここで修飾IL-1Ra遺伝子は、軟骨を修復するのに有効なIL-1Raペプチドをヒトに提供するように発現される。
【0018】
本発明はまた、インターロイキン1受容体アゴニスト(IL-1Ra)ペプチドを炎症領域に提供する方法を特徴とする。いくつかの実施形態では、この方法は、本発明による組換え自己相補的アデノ随伴ウイルス(sc-rAAV)を含む組成物を炎症部位に導入する(例えば関節内注射によって)ことを含む。sc-rAAVはベクターを炎症部位の細胞に形質導入し、ここで修飾IL-1Ra遺伝子は、炎症を軽減するのに有効な治療有効量のIL-1Raペプチドを炎症部位の細胞に提供するように発現される。
【0019】
いくつかの実施形態では、標的とした部位の位置は、ヒトの関節、滑膜、滑膜下膜、関節包、腱、靭帯、軟骨、又は関節周囲の筋肉である。いくつかの実施形態では、細胞は、軟骨細胞、滑膜細胞、又はそれらの組み合わせである。
【0020】
いくつかの実施形態では、方法は、この方法が最初に行われた時点より後の時点で2回目に実施される。いくつかの実施形態では、その時点は少なくとも3ヶ月である。いくつかの実施形態では、この方法は、組成物と組み合わせて標的とした部位の位置に二次療法(例えばグルココルチコイド、ヒアルロナン、多血小板血漿、組換えヒトIL-1Ra、又はそれらの組み合わせ)を同時導入することをさらに含む。
【0021】
本発明はまた、軟骨細胞又は滑膜細胞にIL-1Raペプチドを送達する方法を特徴とする。いくつかの実施形態では、この方法は、軟骨細胞又は滑膜細胞を、本発明による組換え自己相補的アデノ随伴ウイルス(sc-rAAV)、例えば血清型2の少なくとも一部及び血清型6の少なくとも一部を含む遺伝子操作されたアデノ随伴ウイルス(AAV)キャプシドならびにキャプシド内にパッケージングされたベクターと接触させることを含み、ここでベクターは、CMVプロモータに作動可能に連結された修飾IL-1Ra遺伝子を含み、修飾IL-1Ra遺伝子は配列番号2と少なくとも95%同一である。sc-rAAVはベクターを軟骨細胞又は滑膜細胞に形質導入し、修飾IL-1Ra遺伝子は軟骨細胞又は滑膜細胞にIL-1Raペプチドを提供するように発現される。
【0022】
前述の方法及び組成物(例えば、治療有効量のインターロイキン1受容体アゴニスト(IL-1Ra)ペプチドをそれを必要とするヒトに提供する方法、ヒトにおける変形性関節症又は関節リウマチの症状を改善する方法、IL-1Raペプチドを軟骨細胞又は滑膜細胞に送達する方法、組換え自己相補的アデノ随伴ウイルス(sc-rAAV)を含む組成物、CMVプロモータに作動可能に連結された修飾IL-1Ra遺伝子を含む組換え自己相補的アデノ随伴ウイルス(sc-rAAV)ベクター、軟骨の修復を必要とするイヌにおいて軟骨を修復する方法、炎症領域にインターロイキン1受容体アゴニスト(IL-1Ra)ペプチドを提供する方法等)に関して、修飾IL-1Ra遺伝子は、配列番号2と少なくとも95%同一であり得、配列番号6に従うIL-1Raをコードし得る。
本発明は、例えば、以下の項目を提供する。
(項目1)
治療有効量のインターロイキン1受容体アゴニスト(IL-1Ra)ペプチドを、それを必要とするヒトに提供する方法であって、組換え自己相補的アデノ随伴ウイルス(sc-rAAV)を含む組成物を標的とした部位の位置に導入することを含み、ここで前記sc-rAAVが、
a.遺伝子操作されたAAVキャプシド;及び
b.前記キャプシド内にパッケージングされたベクターであって、プロモータに作動可能に連結された修飾IL-1Ra遺伝子を含み、前記修飾IL-1Ra遺伝子が配列番号2と少なくとも95%同一である、ベクター
を含み、
ここで前記sc-rAAVが前記ベクターを前記標的とした部位の位置の細胞に形質導入し、前記修飾IL-1Ra遺伝子が前記治療有効量の前記IL-1Raペプチドを前記ヒトに提供するように発現される、
方法。
(項目2)
ヒトが、変形性関節症もしくは関節リウマチと診断されているか又は変形性関節症もしくは関節リウマチを発症する危険性がある、項目1に記載の方法。
(項目3)
標的とした部位の位置が、ヒトの関節、滑膜、滑膜下膜、関節包、腱、靭帯、軟骨、又は関節周囲の筋肉である、項目1に記載の方法。
(項目4)
組成物が直接関節内注射によって標的とした部位の位置に導入される、項目1に記載の方法。
(項目5)
細胞が軟骨細胞、滑膜細胞、又はそれらの組み合わせである、項目1に記載の方法。
(項目6)
方法が、前記方法が最初に行われた時点より後の時点で2回目に実施される、項目1に記載の方法。
(項目7)
時点が少なくとも3ヶ月である、項目1に記載の方法。
(項目8)
方法が、組成物と組み合わせて標的とした部位の位置に二次療法を同時導入することをさらに含む、項目1に記載の方法。
(項目9)
二次療法が、グルココルチコイド、ヒアルロナン、多血小板血漿、組換えヒトIL-1Ra、又はそれらの組み合わせを含む、項目8に記載の方法。
(項目10)
プロモータがCMVプロモータを含む、項目1に記載の方法。
(項目11)
遺伝子操作されたキャプシドが、血清型AAV2の少なくとも一部及び血清型AAV6の少なくとも一部を含む、項目1に記載の方法。
(項目12)
遺伝子操作されたキャプシドが、血清型AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV11、又はそれらの組み合わせの少なくとも一部を含む、項目1に記載の方法。
(項目13)
ベクターがSV40及びウシ成長ホルモン(bGH)ポリアデニル化配列をさらに含む、項目1に記載の方法。
(項目14)
ベクターがSV40スプライスドナー(SD)及びスプライスアクセプター(SA)部位をさらに含む、項目13に記載の方法。
(項目15)
ベクターがsc-rAAV2.5Hu-IL-1Raを含む、項目1に記載の方法。
(項目16)
ヒトにおける変形性関節症又は関節リウマチの症状を改善する方法であって、組換え自己相補的アデノ随伴ウイルス(sc-rAAV)を含む組成物を標的とした部位の位置に導入することを含み、ここで前記sc-rAAVが、
a.遺伝子操作されたAAVキャプシド;及び
b.前記キャプシド内にパッケージングされたベクターであって、プロモータに作動可能に連結された修飾IL-1Ra遺伝子を含み、前記修飾IL-1Ra遺伝子が配列番号2と少なくとも95%同一である、ベクター
を含み、
ここで前記sc-rAAVが前記ベクターを前記標的とした部位の位置の細胞に形質導入し、前記修飾IL-1Ra遺伝子が、変形性関節症又は関節リウマチに関連する症状を改善するのに有効な量のIL-1Raペプチドをヒトに提供するように発現される、
方法。
(項目17)
標的とした部位の位置が、ヒトの関節、滑膜、滑膜下膜、関節包、腱、靭帯、軟骨、又は関節周囲の筋肉である、項目16に記載の方法。
(項目18)
組成物が直接関節内注射によって標的とした部位の位置に導入される、項目16に記載の方法。
(項目19)
細胞が軟骨細胞、滑膜細胞、又はそれらの組み合わせである、項目16に記載の方法。
(項目20)
方法が、前記方法が最初に行われた時点より後の時点で2回目に実施される、項目16に記載の方法。
(項目21)
時点が少なくとも3ヶ月である、項目16に記載の方法。
(項目22)
方法が、組成物と組み合わせて標的とした部位の位置に二次療法を同時導入することをさらに含む、項目16に記載の方法。
(項目23)
二次療法が、グルココルチコイド、ヒアルロナン、多血小板血漿、組換えヒトIL-1Ra、又はそれらの組み合わせを含む、項目22に記載の方法。
(項目24)
プロモータがCMVプロモータを含む、項目16に記載の方法。
(項目25)
遺伝子操作されたキャプシドが、血清型AAV2の少なくとも一部及び血清型AAV6の少なくとも一部を含む、項目16に記載の方法。
(項目26)
遺伝子操作されたキャプシドが、血清型AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV11、又はそれらの組み合わせの少なくとも一部を含む、項目16に記載の方法。
(項目27)
ベクターがSV40及びウシ成長ホルモン(bGH)ポリアデニル化配列をさらに含む、項目16に記載の方法。
(項目28)
ベクターがSV40スプライスドナー(SD)及びスプライスアクセプター(SA)部位をさらに含む、項目27に記載の方法。
(項目29)
ベクターがsc-rAAV2.5Hu-IL-1Raを含む、項目16に記載の方法。
(項目30)
軟骨細胞又は滑膜細胞にIL-1Raペプチドを送達する方法であって、前記軟骨細胞又は滑膜細胞を、
a.血清型2の少なくとも一部及び血清型6の少なくとも一部を含む遺伝子操作されたアデノ随伴ウイルス(AAV)キャプシド;ならびに
b.前記キャプシド内にパッケージングされたベクターであって、CMVプロモータに作動可能に連結された修飾IL-1Ra遺伝子を含み、前記修飾IL-1Ra遺伝子が配列番号2と少なくとも95%同一である、ベクター;
を含む組換え自己相補的アデノ随伴ウイルス(sc-rAAV)と接触させることを含み、
ここで前記sc-rAAVが前記ベクターを前記軟骨細胞又は滑膜細胞に形質導入し、及び前記修飾IL-1Ra遺伝子が前記軟骨細胞又は滑膜細胞にIL-1Raペプチドを提供するように発現される、
方法。
(項目31)
ベクターがsc-rAAV2.5Hu-IL-1Raを含む、項目30に記載の方法。
(項目32)
ベクターがSV40及びウシ成長ホルモン(bGH)ポリアデニル化配列をさらに含む、項目30に記載の方法。
(項目33)
ベクターがSV40スプライスドナー(SD)及びスプライスアクセプター(SA)部位をさらに含む、項目30に記載の方法。
(項目34)
組換え自己相補的アデノ随伴ウイルス(sc-rAAV)を含む組成物であって、ここで前記sc-rAAVが、
a.血清型2の少なくとも一部及び血清型6の少なくとも一部を含む遺伝子操作されたキャプシド;ならびに
b.前記キャプシド内にパッケージングされたベクターであって、CMVプロモータに作動可能に連結された修飾IL-1Raペプチドをコードする核酸配列を含み、前記修飾IL-1Raペプチドをコードする前記核酸配列が配列番号2と少なくとも90%同一である、ベクター
を含む、組成物。
(項目35)
ベクターがSV40及びウシ成長ホルモン(bGH)ポリアデニル化配列をさらに含む、項目34記載の組成物。
(項目36)
ベクターがSV40スプライスドナー(SD)及びスプライスアクセプター(SA)部位をさらに含む、項目35に記載の組成物。
(項目37)
ベクターがsc-rAAV2.5Hu-IL-1Raを含む、項目34に記載の組成物。
(項目38)
CMVプロモータに作動可能に連結された修飾IL-1Ra遺伝子を含み、前記修飾IL-1Ra遺伝子が配列番号2と少なくとも95%同一である、組換え自己相補的アデノ随伴ウイルス(sc-rAAV)ベクター。
(項目39)
SV40及びウシ成長ホルモン(bGH)ポリアデニル化配列をさらに含む、項目38に記載のベクター。
(項目40)
SV40スプライスドナー(SD)及びスプライスアクセプター(SA)部位をさらに含む、項目39に記載のベクター。
(項目41)
sc-rAAV2.5Hu-IL-1Raを含む、項目38に記載のベクター。
(項目42)
軟骨の修復を必要とするヒトにおいて軟骨を修復する方法であって、組換え自己相補的アデノ随伴ウイルス(sc-rAAV)を含む組成物を軟骨の位置に導入することを含み、ここで前記sc-rAAVが、
a.遺伝子操作されたAAVキャプシド;及び
b.前記キャプシド内にパッケージングされたベクターであって、プロモータに作動可能に連結された修飾IL-1Ra遺伝子を含み、前記修飾IL-1Ra遺伝子が配列番号2と少なくとも95%同一である、ベクター
を含み、
ここで前記sc-rAAVが前記ベクターを前記軟骨の位置の細胞に形質導入し、前記修飾IL-1Ra遺伝子が軟骨を修復するのに有効なIL-1Raペプチドをヒトに提供するように発現される、
方法。
(項目43)
ヒトが、変形性関節症もしくは関節リウマチと診断されているか又は変形性関節症もしくは関節リウマチを発症する危険性がある、項目42に記載の方法。
(項目44)
組成物が直接関節内注射によって軟骨の位置に導入される、項目42に記載の方法。
(項目45)
細胞が軟骨細胞、滑膜細胞、又はそれらの組み合わせである、項目42に記載の方法。
(項目46)
方法が、前記方法が最初に行われた時点より後の時点で2回目に実施される、項目42に記載の方法。
(項目47)
時点が少なくとも3ヶ月である、項目42に記載の方法。
(項目48)
方法が、組成物と組み合わせて軟骨の位置に二次療法を同時導入することをさらに含む、項目42に記載の方法。
(項目49)
二次療法が、グルココルチコイド、ヒアルロナン、多血小板血漿、組換えヒトIL-1Ra、又はそれらの組み合わせを含む、項目48に記載の方法。
(項目50)
プロモータがCMVプロモータを含む、項目42に記載の方法。
(項目51)
遺伝子操作されたキャプシドが、血清型AAV2の少なくとも一部及び血清型AAV6の少なくとも一部を含む、項目42に記載の方法。
(項目52)
遺伝子操作されたキャプシドが、血清型AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV11、又はそれらの組み合わせの少なくとも一部を含む、項目42に記載の方法。
(項目53)
ベクターがsc-rAAV2.5Hu-IL-1Raを含む、項目42に記載の方法。
(項目54)
炎症領域にインターロイキン1受容体アゴニスト(IL-1Ra)ペプチドを提供する方法であって、組換え自己相補的アデノ随伴ウイルス(sc-rAAV)を含む組成物を炎症部位に導入することを含み、ここで前記sc-rAAVが、
a.遺伝子操作されたAAVキャプシド;及び
b.前記キャプシド内にパッケージングされたベクターであって、プロモータに作動可能に連結された修飾IL-1Ra遺伝子を含み、前記修飾IL-1Ra遺伝子が配列番号2と少なくとも95%同一である、ベクター
を含み、
ここで前記sc-rAAVが前記ベクターを前記炎症部位の細胞に形質導入し、前記修飾IL-1Ra遺伝子が炎症を軽減するのに有効な治療有効量のIL-1Raペプチドを前記炎症部位の前記細胞に提供するように発現される、
方法。
(項目55)
炎症部位がヒトの関節、滑膜、滑膜下膜、関節包、腱、靭帯、軟骨、又は関節周囲の筋肉である、項目54に記載の方法。
(項目56)
組成物が直接関節内注射によって炎症部位に導入される、項目54に記載の方法。
(項目57)
細胞が軟骨細胞、滑膜細胞、又はそれらの組み合わせである、項目54に記載の方法。
(項目58)
プロモータがCMVプロモータを含む、項目54に記載の方法。
(項目59)
遺伝子操作されたキャプシドが、血清型AAV2の少なくとも一部及び血清型AAV6の少なくとも一部を含む、項目54に記載の方法。
(項目60)
遺伝子操作されたキャプシドが、血清型AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV11、又はそれらの組み合わせの少なくとも一部を含む、項目54に記載の方法。
(項目61)
ベクターがsc-rAAV2.5Hu-IL-1Raを含む、項目54に記載の方法。
(項目62)
治療有効量のインターロイキン1受容体アゴニスト(IL-1Ra)を、それを必要とするヒトに提供する方法であって、組換え自己相補的アデノ随伴ウイルス(sc-rAAV)を含む組成物を標的とした部位の位置に導入することを含み、ここで前記sc-rAAVが、
a.遺伝子操作されたAAVキャプシド;及び
b.前記キャプシド内にパッケージングされたベクターであって、プロモータに作動可能に連結された修飾IL-1Ra遺伝子を含み、前記修飾IL-1Ra遺伝子が配列番号6に従うIL-1Raをコードする、ベクター
を含み、
ここで前記sc-rAAVが前記ベクターを前記標的とした部位の位置の細胞に形質導入し、IL-1Raが前記治療有効量の前記IL-1Raを前記ヒトに提供するように発現される、
方法。
(項目63)
ヒトにおける変形性関節症又は関節リウマチの症状を改善する方法であって、組換え自己相補的アデノ随伴ウイルス(sc-rAAV)を含む組成物を標的とした部位の位置に導入することを含み、ここで前記sc-rAAVが、
a.遺伝子操作されたAAVキャプシド;及び
b.前記キャプシド内にパッケージングされたベクターであって、プロモータに作動可能に連結された修飾IL-1Ra遺伝子を含み、前記修飾IL-1Ra遺伝子が配列番号6に従うIL-1Raをコードする、ベクター
を含み、
ここで前記sc-rAAVが前記ベクターを前記標的とした部位の位置の細胞に形質導入し、IL-1Raが、変形性関節症又は関節リウマチに関連する症状を改善するのに有効な量のIL-1Raを前記ヒトに提供するように発現される、
方法。
(項目64)
軟骨細胞又は滑膜細胞にIL-1Raペプチドを送達する方法であって、前記軟骨細胞又は滑膜細胞を、
a.血清型2の少なくとも一部及び血清型6の少なくとも一部を含む遺伝子操作されたアデノ随伴ウイルス(AAV)キャプシド;ならびに
b.前記キャプシド内にパッケージングされたベクターであって、CMVプロモータに作動可能に連結された修飾IL-1Ra遺伝子を含み、前記修飾IL-1Raが配列番号6に従うIL-1Raをコードする、ベクター
を含む組換え自己相補的アデノ随伴ウイルス(sc-rAAV)と接触させることを含み、
ここで前記sc-rAAVが前記ベクターを前記軟骨細胞又は滑膜細胞に形質導入し、及びIL-1Raが前記軟骨細胞又は滑膜細胞にIL-1Raを提供するように発現される、
方法。
(項目65)
組換え自己相補的アデノ随伴ウイルス(sc-rAAV)を含む組成物であって、ここで前記sc-rAAVが、
a.血清型2の少なくとも一部及び血清型6の少なくとも一部を含む遺伝子操作されたキャプシド;ならびに
b.前記キャプシド内にパッケージングされたベクターであって、CMVプロモータに作動可能に連結された修飾IL-1Raペプチドをコードする核酸配列を含み、前記核酸配列が配列番号6に従うIL-1Raをコードする、ベクター
を含む、組成物。
(項目66)
軟骨の修復を必要とするヒトにおいて軟骨を修復する方法であって、組換え自己相補的アデノ随伴ウイルス(sc-rAAV)を含む組成物を軟骨の位置に導入することを含み、ここで前記sc-rAAVが、
a.遺伝子操作されたAAVキャプシド;及び
b.前記キャプシド内にパッケージングされたベクターであって、プロモータに作動可能に連結された修飾IL-1Ra遺伝子を含み、前記修飾IL-1Ra遺伝子が配列番号6に従うIL-1Raをコードする、ベクター
を含み、
ここで前記sc-rAAVが前記ベクターを前記軟骨の位置の細胞に形質導入し、IL-1Raが軟骨を修復するのに有効なIL-1Raを前記ヒトに提供するように発現される、
方法。
(項目67)
炎症領域にインターロイキン1受容体アゴニスト(IL-1Ra)ペプチドを提供する方法であって、組換え自己相補的アデノ随伴ウイルス(sc-rAAV)を含む組成物を炎症部位に導入することを含み、ここで前記sc-rAAVが、
a.遺伝子操作されたAAVキャプシド;及び
b.前記キャプシド内にパッケージングされたベクターであって、プロモータに作動可能に連結された修飾IL-1Ra遺伝子を含み、前記修飾IL-1Ra遺伝子が配列番号6に従うIL-1Raをコードする、ベクター
を含み、
ここで前記sc-rAAVが前記ベクターを前記炎症部位の細胞に形質導入し、IL-1Raが、炎症を軽減するのに有効な治療有効量のIL-1Raを前記炎症部位の前記細胞に提供するように発現される、
方法。
【0023】
文脈、本明細書、及び当業者の知識から明らかであるように、本明細書に記載される任意の特徴又は特徴の組み合わせは、そのような組み合わせに含まれる特徴が互いに矛盾しない限り、本発明の範囲内に含まれる。本発明のさらなる利点及び態様は、以下の詳細な説明及び特許請求の範囲において明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】
図1は、CMVプロモータの制御下にあるヒトIL-1Raタンパク質をコードする修飾cDNAを含むプラスミドsc-rAAV2.5Hu-IL-1Raを示す。遺伝子挿入物はまた、SV40及びウシ成長ホルモン(bGH)ポリアデニル化配列、ならびにSV40スプライスドナー(SD)及びスプライスアクセプター(SA)部位も含む。逆方向末端反復配列(TR)の間の領域は、配列決定によって確認されている。
【発明を実施するための形態】
【0025】
用語
他に説明がない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語及び科学用語は、開示されている発明が属する技術分野の当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。単数形の用語「1つの」、及び「その」は、文脈上明らかに異なる指示がない限り、複数の指示対象を含む。同様に、文脈上明らかに異なる指示がない限り、「又は」という語は「及び」を含むことが意図されている。「含む」は、「包含する」を意味する。したがって、「A又はBを含む」は、「Aを含む」又は「Bを含む」又は「A及びBを含む」を意味する。
【0026】
本開示の実施形態の実施及び/又は試験に適した方法及び材料を以下に記載する。そのような方法及び材料は例示にすぎず、限定することを意図するものではない。本明細書に記載のものと類似又は等価の他の方法及び材料を使用することができる。例えば、本開示が関連する技術分野において周知の従来の方法は、例えば、その開示全体が参照により本明細書に組み込まれる、Sambrook et al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,2d ed.,Cold Spring Harbor Laboratory Press,1989;Sambrook et al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,3d ed.,Cold Spring Harbor Press,2001;Ausubel et al.,Current Protocols in Molecular Biology,Greene Publishing Associates,1992(and Supplements to 2000);Ausubel et al.,Short Protocols in Molecular Biology:A Compendium of Methods from Current Protocols in Molecular Biology,4th ed.,Wiley&Sons,1999;Harlow and Lane,Antibodies:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory Press,1990;及びHarlow and Lane,Using Antibodies:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory Press,1999を含む、様々な一般的及びより特定の参考文献に記載されている。
【0027】
本明細書中で言及されるすべての刊行物、特許出願、特許、及び他の参考文献は、その全体が参照により組み込まれる。
【0028】
開示されている技術を実施又は試験するために、本明細書に記載されているものと類似又は等価の方法及び材料を使用することができるが、適切な方法及び材料を以下に記載する。材料、方法、及び例は例示にすぎず、限定することを意図するものではない。
【0029】
本開示の様々な実施形態の検討を容易にするために、以下の特定の用語の説明を提供する:
【0030】
アデノ随伴ウイルス(AAV)、組換えAAV(rAAV)、及び組換え自己相補的AAV(sc-rAAV):AAVはパルボウイルス科(Parvoviridae)の小型ウイルス(20nm)である。AAVが疾患を引き起こすことは知られていない。AAVは、低い免疫原性、非分裂細胞を有効に形質導入する能力、ならびに種々の細胞及び組織型を感染させる能力を有することが示されていることを含む様々な理由で、最近遺伝子治療に使用されている。組換えAAV(rAAV)は天然のウイルスコード配列を含まない。組換えAAV DNAは、約4600ヌクレオチド長の一本鎖分子としてウイルスキャプシド中にパッケージングされている。ウイルスによる細胞の感染に続いて、細胞の分子機構は一本鎖DNAを二本鎖形態に変換する。二本鎖DNA型のみが、含まれる1つ又は複数の遺伝子をRNAに転写する細胞のタンパク質に対して有用である。自己相補的AAV(sc-rAAV)は、分子内二本鎖DNA鋳型を形成することができる、rAAVの遺伝子操作形態である。したがって、感染すると、sc-rAAVの2つの相補的な半分が会合して、即時の複製及び合成の準備ができている1つの二本鎖DNA単位を形成する。
【0031】
発現:核酸配列のタンパク質への翻訳。タンパク質は、発現されて細胞内に留まり、細胞表面膜の成分となり得るか、又は細胞外マトリックスもしくは培地に分泌され得る。
【0032】
作動可能に連結された:第一の核酸配列が第二の核酸配列と機能的な関係に置かれている場合、第一の核酸配列は第二の核酸配列と作動可能に連結されている。例えば、プロモータがコード配列の転写又は発現に影響を及ぼす場合、そのプロモータはコード配列に作動可能に連結されている。
【0033】
薬学的に許容されるビヒクル:薬学的に許容される担体(ビヒクル)、例えば溶液は、従来のものであり得るが、従来のビヒクルに限定されない。例えば、E.W.Martin,Remington’s Pharmaceutical Sciences,Mack Publishing Co.,Easton,PA,15th Edition(1975)及びD.B.Troy,ed.Remington:The Science and Practice of Pharmacy,Lippincott Williams&Wilkins,Baltimore MD and Philadelphia,PA,21st Edition(2006)は、1つ以上の治療用化合物又は分子の薬学的送達に適した組成物及び製剤を記載する。一般に、担体の性質は、使用されている特定の投与様式に依存する。生物学的に中性の担体に加えて、投与される医薬組成物は、湿潤剤又は乳化剤、防腐剤及びpH緩衝剤等のような少量の非毒性補助物質、例えば酢酸ナトリウム又はソルビタンモノラウラートを含み得る。
【0034】
疾患を予防する、治療する、管理する、又は改善する:疾患を「予防する」とは、疾患の完全な発症を抑制することを意味し得る。「治療する」とは、疾患又は病理学的状態の徴候又は症状が発現し始めた後にそれを改善する治療的介入を意味し得る。「管理する」とは、疾患又は状態の徴候又は症状を悪化させない治療的介入を意味し得る。「改善する」とは、疾患又は状態の徴候又は症状の数又は重症度の減少を意味し得る。
【0035】
配列同一性:2つ以上の核酸配列間の同一性(又は類似性)は、配列間の同一性又は類似性によって表される。配列同一性は、同一性パーセントに関して測定することができる;パーセンテージが高いほど、配列はより同一である。配列類似性は、類似性パーセント(これは保存的アミノ酸置換を考慮に入れる)に関して測定することができる;パーセンテージが高いほど、配列はより類似している。比較のための配列のアラインメントの方法は当技術分野において周知である。様々なプログラム及びアラインメントアルゴリズムが、Smith&Waterman,Adv.Appl.Math.2:482,1981;Needleman&Wunsch,J.Mol.Biol.48:443,1970;Pearson&Lipman,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85:2444,1988;Higgins&Sharp,Gene,73:237-44,1988;Higgins&Sharp,CABIOS 5:151-3,1989;Corpet et al.,Nuc.Acids Res.16:10881-90,1988;Huang et al.Computer Appls.in the Biosciences 8,155-65,1992;及びPearson et al.,Meth.Mol.Bio.24:307-31,1994に記載されている。Altschul et al.,J.Mol.Biol.215:403-10,1990は、配列アラインメント方法及び相同性計算の詳細な考察を提示している。NCBIの基本的局所アラインメント検索ツール(BLAST)(Altschul et al.,J.Mol.Biol.215:403-10,1990)は、配列解析プログラムblastp、blastn、blastx、tblastn及びtblastxと関連して使用するために、国立バイオテクノロジーセンター(NCBI、国立医学図書館、Building 38A,Room 8N805,Bethesda,MD 20894)を含むいくつかの情報源から、及びインターネット上で入手可能である。さらなる情報はNCBIウェブサイトで見出すことができる。BLASTNは核酸配列を比較するために使用でき、一方BLASTPはアミノ酸配列を比較するために使用し得る。2つの比較した配列が相同性を共有する場合、指定された出力ファイルは、それらの相同性の領域を整列された配列として提示する。2つの比較した配列が相同性を共有しない場合、指定された出力ファイルは整列された配列を提示しない。BLAST様アラインメントツール(BLAT)も、核酸配列を比較するために使用し得る(Kent,Genome Res.12:656-664,2002)。BLATは、Kent Informatics(Santa Cruz,CA)含むいくつかの情報源から、及びインターネット上で(genome.ucsc.edu)入手可能である。一旦整列されると、同一のヌクレオチド又はアミノ酸残基が両方の配列中に存在する位置の数を数えることによってマッチの数が決定される。配列同一性パーセントは、同定された配列に示された配列の長さ、又は連結された長さ(例えば同定された配列に示された配列からの100個の連続するヌクレオチド又はアミノ酸残基)によってマッチの数を除し、続いて得られた値に100を乗じることによって決定される。例えば、1554個のヌクレオチドを有する試験配列と整列させたとき、1166個のマッチを有する核酸配列は、試験配列と75.0パーセント同一である(1166÷1554×100=75.0)。配列同一性パーセントの値は、最も近い小数点第1位に丸められる。
【0036】
治療有効量:特定の薬剤で治療される被験体において所望の効果を達成するのに十分なその薬剤の量。そのような薬剤はIL-1Raを含み得る。例えば、IL-1Raの治療有効量は、変形性関節症又は関節リウマチの症状を予防、治療、又は改善するのに十分な量であり得る。被験体を予防、改善、及び/又は治療するために有用な薬剤の治療有効量は、治療される被験体、疾病の種類及び重症度、ならびに治療用組成物の投与方法に依存する。
【0037】
形質導入:形質導入細胞は、分子生物学的技術によって核酸分子が導入されている細胞である。本明細書で使用される場合、形質導入という用語は、ウイルス又はウイルスベクターによるトランスフェクション、プラスミドベクターによる形質転換、ならびにエレクトロポレーション、リポフェクション、及び粒子銃加速による裸のDNAの導入を含む、核酸分子をそのような細胞に導入し得るすべての技術を包含する。そのような細胞はしばしば形質転換細胞と呼ばれる。
【0038】
ベクター:宿主細胞に導入され、それによって形質転換された宿主細胞を産生する核酸分子。ベクターは、複製起点などの、宿主細胞内で複製することを可能にする核酸配列を含み得る。ベクターは、宿主細胞内で複製することを可能にする核酸配列を欠いていてもよい。ベクターはまた、標的とした部位の遺伝子、1つ以上の選択可能なマーカー遺伝子、当技術分野で公知の他の遺伝要素、又は任意の他の適切な挿入物を含み得る。
【0039】
本発明は、治療用遺伝子産物(例えばIL-1Ra)を標的とした部位の位置、例えば関節に持続的に送達するための方法及び組成物を特徴とする。本発明はまた、変形性関節症又は関節リウマチなどの、しかしこれらに限定されない疾患の症状を治療するための方法及び組成物を特徴とする。本発明はまた、個体(例えばヒト)に治療有効量の治療用遺伝子産物(例えばIL-1Ra)を提供するための方法及び組成物を特徴とする。方法及び組成物は、組換え自己相補的アデノ随伴ウイルス(sc-rAAV)を特徴とし得、ここでsc-rAAVは、遺伝子操作されたキャプシド及びキャプシド内にパッケージングされたベクター(sc-rAAVベクター)を含む。ベクターは、プロモータ(例えば構成的プロモータ)に作動可能に連結された導入遺伝子(例えば標的とした部位のタンパク質、例えば治療用遺伝子産物、例えばIL-1Ra又はその改変型をコードするヌクレオチド配列、)を含み得る。
【0040】
前述のように、本発明は、組換え自己相補的アデノ随伴ウイルス(sc-rAAV)ベクターを含む組成物を特徴とする。sc-rAAVベクターの非限定的な例は、以下の表1の配列番号1に示されている。配列番号1のsc-rAAVベクターは修飾IL-1Ra遺伝子を含む。いくつかの実施形態では、ベクターはSV40ポリアデニル化配列を含む。いくつかの実施形態では、ベクターはウシ成長ホルモン(bGH)ポリアデニル化配列を含む。いくつかの実施形態では、ベクターはSV40スプライスドナー(SD)及びスプライスアクセプター(SA)部位を含む。sc-rAAVベクターは配列番号1に限定されない。
【0041】
sc-rAAVベクターは、標的とした部位のペプチドをコードする核酸を含む。いくつかの実施形態では、核酸は、配列番号2と少なくとも90%同一である。いくつかの実施形態では、核酸は、配列番号2と少なくとも92%同一である。いくつかの実施形態では、核酸は、配列番号2と少なくとも94%同一である。いくつかの実施形態では、核酸は配列番号2と少なくとも95%同一である。いくつかの実施形態では、核酸は、配列番号2と少なくとも96%同一である。いくつかの実施形態では、核酸は配列番号2と少なくとも97%同一である。いくつかの実施形態では、核酸は、配列番号2と少なくとも98%同一である。いくつかの実施形態では、核酸は配列番号2と少なくとも99%同一である。そのような核酸配列の非限定的な例は、以下の表1に見出すことができる。例えば、配列番号3は、配列番号2と約98%同一である修飾ヒトIL-1Raの配列である;配列番号4は、配列番号2と約99%同一である修飾ヒトIL-1Raの配列である;及び(表1中の太字は、配列番号2と比較したヌクレオチド置換であり、コドンに下線を付していることに留意されたい)。
【表1-1】
【表1-2】
【表1-3】
【表1-4】
【0042】
いくつかの実施形態では、IL-1Ra挿入物によってコードされるIL-1Raペプチドは、IL-1Raを含む(以下の表2の配列番号6参照)。
【表2】
【0043】
導入遺伝子(例えば標的とした部位のタンパク質をコードするヌクレオチド配列)は、プロモータに作動可能に連結されている。いくつかの実施形態では、プロモータはサイトメガロウイルス(CMV)プロモータを含む。本発明はCMVプロモータに限定されず、任意の適切なプロモータ又は種々のプロモータの一部を特徴とし得る。プロモータの例には、CMVプロモータ、ハイブリッドCMVプロモータ、CAGプロモータ、ヒトβアクチンプロモータ、ハイブリッドβアクチンプロモータ、EF1プロモータ、U1aプロモータ、U1bプロモータ、Tet誘導性プロモータ、VP16-LexAプロモータ、ニワトリβアクチン(CBA)プロモータ、ヒト伸長因子1αプロモータ、シミアンウイルス40(SV40)プロモータ、及び単純ヘルペスウイルスチミジンキナーゼプロモータが含まれる。
【0044】
いくつかの実施形態では、プロモータはハイブリッドプロモータを含む。一例として、表3は、IL-1β/IL-6ハイブリッドプロモータを示す(van de Loo et al.,2004,Gene Therapy 11:581-590も参照のこと)。本発明はまた、表3に示すハイブリッドプロモータに限定されない。
【表3】
【0045】
いくつかの実施形態では、sc-rAAVベクターはキャプシド内にパッケージングされている。いくつかの実施形態では、キャプシドは、AAV血清型1(AAV1)、AAV血清型2(AAV2)、AAV血清型3(AAV3)、AAV血清型4(AAV4)、AAV血清型5(AAV5)、AAV血清型6(AAV6)、それらの誘導体、又はそれらの組み合わせの少なくとも一部を含む。例えば、いくつかの実施形態では、キャプシドは、AAV血清型2の少なくとも一部及びAAV血清型6の少なくとも一部、例えばAAV2.5を含む。
【0046】
組成物、例えばsc-rAAVを含む組成物は、標的とした部位の位置(例えばヒトの体内)の細胞に導入し得る。例えば、いくつかの実施形態では、変形性関節症の症状を治療する場合、直接関節内注射によって関節内の細胞(例えば軟骨細胞、滑膜細胞、例えばA型、B型等)に組成物を導入し得る。いくつかの実施形態では、組成物は、ヒトの関節、滑膜、滑膜下膜、関節包、腱、靭帯、軟骨、又は関節周囲の筋肉に投与される。本発明は、前述の疾患(例えば変形性関節症)、投与手段(例えば関節内注射)、標的とした部位の位置(例えば関節)、又は細胞型(例えば軟骨細胞、滑膜細胞)に限定されない。例えば、いくつかの実施形態では、形質導入し得る他の細胞型は、間葉系幹細胞を含み得る。
【0047】
sc-rAAVはベクターを細胞に形質導入し、修飾IL-1Raペプチドが発現される。いくつかの実施形態では、IL-1Raペプチドは、変形性関節症又は関節リウマチなどの様々な疾患に関連する症状を改善するのに有効な治療有効量の前記修飾IL-1Raペプチドをヒトに提供するように発現される。
【0048】
いくつかの実施形態では、組成物(例えばsc-rAAV)の導入は1回行われる。いくつかの実施形態では、組成物(例えばsc-rAAV)の導入は、2回、例えば1回目と1回目に続く2回目に行われる。いくつかの実施形態では、組成物の導入は2回より多く、例えば3回、4回、5回等で行われる。組成物の2回目の導入は、方法が最初に行われた時点より後の時点、例えば3ヶ月、4ヶ月後、5ヶ月後、6ヶ月後、7ヶ月後、8ヶ月後、9ヶ月後、10ヶ月後、11ヶ月後、1年後、1年よりさらに後等に行われ得る。
【0049】
組成物は任意の適切な医薬組成物を含み得る。いくつかの実施形態では、組成物は緩衝液を含む。いくつかの実施形態では、緩衝液はリン酸緩衝生理食塩水(PBS)を含む。いくつかの実施形態では、組成物はソルビトール、例えば5%ソルビトールをさらに含む。いくつかの実施形態では、組成物は塩、例えばNaClをさらに含む。塩の濃度は、任意の適切な濃度、例えば350mMのNaCl、350mMを超えるNaCl、350mM未満等であり得る。
【0050】
いくつかの実施形態では、組成物(例えばsc-rAAV)は二次療法と同時投与される。いくつかの実施形態では、二次療法は、OAもしくはRAの治療薬、又は疾患の症状を治療するための他の任意の適切な療法を含む。OAに対する二次療法の非限定的な例には、グルココルチコイド、ヒアルロナン(粘性補給)、多血小板血漿、及び組換えヒトIL-1Ra(Anakinra;Kineret(登録商標))が含まれる。例えば、いくつかの実施形態では、sc-rAAVはグルココルチコイド又は多血小板血漿と同時投与される。
【0051】
以下の米国特許の開示は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる:米国特許出願公開第2008/0187576号、米国特許出願公開第2009/0104155号、韓国特許出願公開第2012041139号、日本特許出願公開第2015518816号、国際公開第2013151672号、国際公開第2008088895号、米国特許第8529885号、米国特許第7037492号、米国特許出願公開第20070128177号、米国特許第6491907号、米国特許第8999948号、米国特許出願公開第20150218586号、米国特許第7892824号、米国特許出願公開第20130295614号、日本特許出願公開第2002538770号、日本特許出願公開第2010516252号、韓国特許出願公開第2002027450号、韓国特許出願公開第2003028080号、米国特許第6482634号、米国特許出願公開第20090105148号、米国特許出願公開第20120232130号、米国特許出願公開第20140234255号、米国特許第5756283号、米国特許第6083716号、国際公開第2002038782号、国際公開第2007039699号、国際公開第2012047093号、国際公開第2014170470号、国際公開第2015018860号、国際公開第2015044292号、国際公開第2015158749号、米国特許第7452696号、米国特許第6943153号、米国特許第6429001号、国際公開第2015031392号、国際公開第2004092211号。
【0052】
例1
例1は、本発明のsc-rAAV(IL-1Raをコードする)の投与を記載する。本発明は例1の開示に限定されない。5人の患者が、本発明のsc-rAAVの投与を検討する臨床試験に参加する。患者は以下の通りである:(1)右膝に変形性関節症を有する65歳の男性;(2)左膝に変形性関節症を有する59歳の男性;(3)左膝に変形性関節症を有する58歳の女性;(4)右膝に変形性関節症を有する51歳の男性;及び(5)右膝に変形性関節症を有する48歳の男性。それぞれの患者に、各膝あたり1×1012個のウイルス遺伝子の関節内注射によってsc-rAAVを投与する。IL-1Raは軟骨細胞及び滑膜細胞において発現される。患者1は、2週間以内にOAに関連する症状の改善を述べている。患者2は、1週間以内にOAに関連する症状の改善を述べている。患者3は、5週間以内にOAに関連する症状の改善を述べている。患者4は、1週間以内にOAに関連する症状の改善を述べている。6週の時点で、患者5はOAに関連する症状の改善を述べていない。
【0053】
例2
例2は、本発明のsc-rAAV(IL-1Raをコードする)の1回目の投与及び一定期間後の本発明の同じsc-rAAVの2回目の投与を記載する。本発明は例2の開示に限定されない。55歳の男性は右膝に変形性関節症を呈する。前記男性の医師は、本発明のsc-rAAVベクター(IL-1Raをコードする)の単回関節内注射を行う。患者の症状は2ヶ月以内に解消される。6ヶ月後、医師は、本発明の同じsc-rAAVベクター(IL-1Raをコードする)の2回目の(単回)関節内注射を行う。患者の症状は、2回目の注射から6ヶ月後もまだ存在しない。
【0054】
例3
例3は、本発明のsc-rAAV(IL-1Raをコードする)の1回目の投与及び一定期間後の1回目のsc-rAAVとは異なる本発明のsc-rAAV(IL-1Raをコードする)の2回目の投与を記載する。本発明は例3の開示に限定されない。49歳の女性は右足首に変形性関節症を呈する。前記女性の医師は、本発明のsc-rAAVベクター(IL-1Raをコードする)の単回関節内注射を行う。患者の症状は5ヶ月以内に改善したが、解消されてはいない。6ヶ月後、医師は、本発明の異なるsc-rAAVベクター(IL-1Raをコードする)の2回目の(単回)関節内注射を行う。2回目の注射から6ヶ月後に、患者の症状は解消される。
【0055】
例4
例4は、本発明のsc-rAAV(IL-1Raをコードする)と二次療法との同時投与を記載する。本発明は例4の開示に限定されない。68歳の男性は、左膝に変形性関節症を呈する。前記男性の医師は、本発明のsc-rAAVベクター(IL-1Raをコードする)及び多血小板血漿の両方の単回関節内注射を行う。患者の症状は2ヶ月以内に解消される。
【0056】
本明細書に記載されたものに加えて、本発明の様々な変更が前述の記載から当業者に明らかであろう。そのような変更もまた、添付の特許請求の範囲の範囲内に含まれることが意図されている。本出願において引用される各参考文献は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0057】
本発明の実施形態を示し、説明してきたが、添付の特許請求の範囲を超えない変更を加え得ることは当業者には容易に明らかであろう。特許請求の範囲に記載された参照番号は例示的であり、特許庁による検討を容易にするためだけのものであって、いかなる意味においても限定ではない。いくつかの実施形態では、本特許出願に提示されている図面は、角度、寸法比等を含めて一定の縮尺で描かれている。いくつかの実施形態では、図面は代表的なものにすぎず、特許請求の範囲は図面の寸法によって限定されない。いくつかの実施形態では、「含む」という語句を使用して本明細書に記載される本発明の説明は、「からなる」と説明され得る実施形態を含み、したがって、「からなる」という語句を使用して本発明の1つ以上の実施形態を特許請求するための書面による説明要件を満たす。
【0058】
以下の特許請求の範囲に列挙されるいずれの参照番号も、単に本特許出願の検討を容易にするためのものであり、例示であって、いかなる意味においても特許請求の範囲を図面中の対応する参照番号を有する特定の特徴に限定することを意図しない。
【配列表フリーテキスト】
【0059】
配列表1 <223>修飾ヒトIL1Ra挿入物及びSacII/NotI制限部位を有するウイルス配列全体を含むHu-IL-1Raプラスミドの配列
配列表2 <223>修飾ヒトIL-1Ra挿入物
配列表3 <223>修飾ヒトIL-1Ra挿入物(配列番号2と98%同一;
配列表4 <223>修飾ヒトIL-1Ra挿入物(配列番号2と99%同一;
配列表5 <223>修飾ヒトIL-1Ra挿入物(配列番号2と95%同一;
配列表7 <223>IL-1β/IL-6ハイブリッドプロモータ
【配列表】