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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-26
(45)【発行日】2022-11-04
(54)【発明の名称】プログラム
(51)【国際特許分類】
   H04L 67/1396 20220101AFI20221027BHJP
   H04L 67/025 20220101ALI20221027BHJP
   G06F 3/0481 20220101ALI20221027BHJP
   G06F 3/0485 20220101ALI20221027BHJP
   G06F 3/0488 20220101ALI20221027BHJP
【FI】
H04L67/1396
H04L67/025
G06F3/0481
G06F3/0485
G06F3/0488
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2019543525
(86)(22)【出願日】2018-09-03
(86)【国際出願番号】 JP2018032584
(87)【国際公開番号】W WO2019058943
(87)【国際公開日】2019-03-28
【審査請求日】2021-08-19
(31)【優先権主張番号】P 2017178531
(32)【優先日】2017-09-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】517327667
【氏名又は名称】Lupine Software合同会社
(74)【代理人】
【識別番号】100166545
【弁理士】
【氏名又は名称】折坂 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】浅香 靖浩
【審査官】佐々木 洋
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2013/018388(WO,A1)
【文献】特開2017-129999(JP,A)
【文献】国際公開第2016/075832(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04L 67/1396
H04L 67/025
G06F 3/0481
G06F 3/0485
G06F 3/0488
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンピュータに、当該コンピュータまたは外部コンピュータが表示する複数のコンテンツのそれぞれに対応付けて可読時間を積算して可読時間情報を記録する機能を実現させるためのプログラムであって、
第1のタイミングでの表示範囲を特定する第1測定ステップと、
前記第1のタイミングよりも後の第2のタイミングでの表示範囲を特定する第2測定ステップと、
前記第1のタイミングで特定した表示範囲及び前記第2のタイミングで特定した表示範囲に基づいて、スクロール速度を求める速度算出ステップと、
スクロール速度と所定の閾値とを比較する速度比較ステップと、
表示範囲における可読領域を特定する可読領域特定ステップと、
前記スクロール速度が前記閾値よりも小さい場合には、スクロールしている間の可読時間を増加させ、前記スクロール速度が前記閾値以上である場合には、スクロールしている間の可読時間を増加させない積算ステップと
を実行させ、
前記コンピュータまたは前記外部コンピュータはタッチパネルディスプレイを備え、当該タッチパネルディスプレイに対する接触位置のスライド操作によって表示画面をスクロールするインタフェースを備え、
前記可読領域特定ステップにおいて、接触位置の軌跡が描く円弧が時計回りか反時計回りかに基づきユーザがどちらの手で画面に接触しているかを判定し、判定結果に基づいて表示範囲における非可読領域を特定し、当該表示範囲から前記非可読領域を除外することにより可読領域を特定し、
前記積算ステップにおいて、前記スクロール速度が前記閾値よりも小さい場合に、スクロールしている間の表示範囲のうち前記可読領域に含まれるコンテンツに対応する可読時間を増加させることを特徴とするプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンテンツが閲覧者によって読まれた程度を示す読了指数を算出するためのプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
ウェブサイトの最適化を図るために、ウェブサイトのアクセス解析が行われている。一般的なアクセス解析サービスでは、ウェブサイトに含まれる各ウェブページの閲覧回数をカウントしたページビュー数(PV数)、などのデータを、ウェブサイトの管理者に提供する。ウェブサイトの管理者は、提供されるデータに基づいて、ウェブサイトの構成やウェブページに含まれるコンテンツ、広告内容の質を評価し、改善することができる。
【0003】
従来の一般的なアクセス解析サービスでは、PV数をウェブページの主な評価指標としている。しかしながら、PV数は、ウェブページの内容を閲覧者が読んだか否かに関わらず1回のアクセスを1回のページビューとしてカウントするため、PV数が多いウェブページほどしっかりと読まれている、とは必ずしも言えない。そこで、ページビュー読了指数を用いて、コンテンツの質を評価することが、提唱されている。
【0004】
特許文献1では、タイムスタンプを用いて、読了指数を算出している。より詳細には、ウェブページを開いたとき、及び閉じたとき等の各種イベント発生時にタイムスタンプを取得しその時間間隔に基づいて、ユーザがコンテンツを読んでいた時間を推定し、それがコンテンツ毎の読了目安時間の範囲内であるか否かに基づいて、読了指数を算出する。
【0005】
コンテンツを読んでいたと推定される時間が読了目安時間の範囲外である場合には、コンテンツは読まれたと判定されない。例えば、ユーザが誤って開いたウェブページをすぐに閉じる場合のようにコンテンツを読んでいたと推定される時間が極めて短い場合には、読了目安時間の範囲の下限より小さくなり、コンテンツは読まれたと判定されない。また、ウェブページが開かれたまま放置される場合のようにコンテンツを読んでいたと推定される時間が極めて長い場合には、読了目安時間の範囲の上限より大きくなり、コンテンツは読まれたと判定されない。特許文献1では、ウェブページ全体の読了指数を算出するだけでなく、コンテンツの段落ごと、行ごとといったように、コンテンツを細かな単位に分解してそれぞれの読了指数を算出することも開示されている。
【0006】
このように、PV数による評価の弱点を補う手法が提案されつつあるものの、未だ正確な読了指数を算出できない場合がある。例えば、ウェブページに含まれるコンテンツを、ユーザが読めない程の速度でウェブページをスクロールする場合は、特許文献1のようなタイムスタンプを用いる手法では正確な読了指数を算出できない。
【0007】
また、例えば、スマートフォンやタブレットPCなどのタッチインタフェースを備える端末装置でウェブページを閲覧する場合、画面をスクロールする際に画面にタッチする指やスタイラスなどによって画面の一部が隠れることにより当該部分に表示されているコンテンツが読めなくなることがある。また、タッチインタフェースで画面を縦方向にスクロールする場合、タッチしている位置よりも下側についてはユーザに見える状態にあっても読まれず、スクロールしてタッチ位置よりも上側に表示させた状態になってから初めて読まれるという傾向もある。これらのような画面に表示されていても読めない、あるいは読まれない部分について特に考慮することなく読了指数を算出した場合、算出される読了指数は実際に読まれた程度を正確に反映したものとはならない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2015-215923号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
このような問題に鑑みて、本発明は、精度の高い読了指数を算出することができるプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決すべく、本発明のプログラムは、コンピュータに、当該コンピュータまたは外部コンピュータが表示する複数のコンテンツのそれぞれに対応付けて可読時間を積算して可読時間情報を記録する機能を実現させる。このプログラムは、第1のタイミングでの表示範囲を特定する第1測定ステップと、第1のタイミングよりも後の第2のタイミングでの表示範囲を特定する第2測定ステップと、第1のタイミングで特定した表示範囲及び第2のタイミングで特定した表示範囲に基づいて、スクロール速度を求める速度算出ステップと、スクロール速度と所定の閾値とを比較する速度比較ステップと、スクロール速度が閾値よりも小さい場合には、スクロールしている間の可読時間を増加させ、スクロール速度が閾値以上である場合には、スクロールしている間の可読時間を増加させない積算ステップと、を実行させることを特徴とする。
【0011】
本発明では、表示範囲における可読領域を特定する可読領域特定ステップをさらに備え、積算ステップにおいて、スクロール速度が閾値よりも小さい場合に、スクロールしている間の表示範囲のうち可読領域に含まれるコンテンツに対応する可読時間を増加させるとよい。
【0012】
コンピュータがタッチパネルディスプレイを備え、該タッチパネルディスプレイに対する接触位置のスライド操作によって表示画面をスクロールするインタフェースを備える物であり、可読領域特定ステップにおいて、接触位置に応じて、表示範囲における非可読領域を特定し、当該表示範囲から非可読領域を除外することにより可読領域を特定するとよい。また、可読領域特定ステップにおいて、接触位置の移動する軌跡に基づいて、表示範囲における非可読領域を特定し、当該表示範囲から非可読領域を除外することにより可読領域を特定してもよい。
【0013】
本発明に係る他のプログラムは、コンピュータに、ネットワークを介して接続される1又は複数の外部コンピュータから、各外部コンピュータが自ら表示したコンテンツに対応付けて可読時間を積算して記録した可読時間情報を収集する収集ステップと、収集ステップにて収集した可読時間情報を統計的に処理して、各コンテンツが読まれた程度を示す読了指数を算出する算出ステップと、算出ステップにおいて算出した読了指数に基づいて、各コンテンツの読了指数を提示する提示ステップと、を備えることを特徴とする。
【0014】
本発明に係る他のプログラムは、複数のコンテンツを表示画面に表示させる表示ステップと、表示画面のスクロールが停止された場合に、スクロールが停止した時刻である停止タイミング取得する停止タイミング取得ステップと、停止時刻取得ステップの後にスクロールが開始された場合に、スクロールが停止されてからスクロールが開始されるまでの経過時間である停止期間を取得する停止期間取得ステップと、スクロールが停止されたときに表示される範囲、停止タイミング、及び停止期間を対応付けて記録する、記録ステップと、を備えることを特徴とする。
【0015】
本発明に係るさらに他のプログラムは、コンピュータに、当該コンピュータまたは外部コンピュータが表示する複数のコンテンツのそれぞれに対応付けて可読時間を積算して可読時間情報を記録する機能を実現させる。当該プログラムは、コンピュータに、第1の表示範囲変更イベントが生じた第1のタイミングにおける表示範囲を特定する第1測定ステップと、第2の表示範囲変更イベントが生じた第2のタイミングにおける表示範囲を特定する第2測定ステップと、第1のタイミングにおける表示範囲に含まれるコンテンツについて、第1のタイミングから第2のタイミングまでの期間を可読時間として積算する積算ステップとを実行させることを特徴とする。
【0016】
本発明では、第1の表示範囲変更イベントは表示範囲のスクロールを開始するスクロール開始イベントを含み、第2の表示範囲変更イベントは表示範囲のスクロールを停止するスクロール停止イベントを含むとよい。そして、第1の表示範囲変更イベントがスクロール開始イベントであり、第2の表示範囲変更イベントがスクロール停止イベントである場合に、第1のタイミングで特定した表示範囲及び第2のタイミングで特定した表示範囲に基づいて、スクロール速度を求める速度算出ステップと、スクロール速度と所定の閾値とを比較する速度比較ステップと、をさらに実行し、積算ステップにおいて、スクロール速度が閾値よりも小さい場合には、スクロールしている間の可読時間を増加させ、スクロール速度が閾値以上である場合には、スクロールしている間の可読時間を増加させないようにするとよい。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】実施形態における読了指数算出システムの構成を示すブロック図である。
図2】実施形態における端末装置20の構成を示すブロック図である。
図3】実施形態における読了指数算出装置40の構成を示すブロック図である。
図4】可読時間情報取得処理の手順を示すフローチャートである。
図5】非可読領域R1及び可読領域R2を模式的に示す。
図6】タッチインタフェースでのスクロール操作における接触位置の軌跡を模式的に示す。
図7】可読時間情報取得処理によって可読時間情報が積算される流れを示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
〔第1実施形態〕
以下、本発明の第1実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以下の説明では、同一の部材には同一の符号を付し、一度説明した部材については適宜その説明を省略する。
【0019】
図1は、第1実施形態における読了指数算出システムの構成を示すブロック図である。読了指数算出システムは、端末装置20と、読了指数算出装置40とを備える。端末装置20、および読了指数算出装置40は、通信ネットワーク10を介して互いに接続されるとともに、ウェブサーバ30とも接続されている。
【0020】
端末装置20は、ウェブサーバ30が記憶しているウェブページ、電子書籍等のコンテンツを表示することができるハードウェアである。例えば、端末装置20は、パーソナルコンピュータ、スマートフォン、タブレットPC、電子書籍リーダ等である。本実施形態では、端末装置20がスマートフォンである場合を例に説明する。
【0021】
図2は、本実施形態における端末装置20の構成を示すブロック図である。端末装置20は、制御部201、通信部202、操作部203、記憶部204、表示部205を備える。
【0022】
制御部201は、CPU(Central Processing Unit)などのプロセッサであり、ユーザから入力される指示信号に応じて端末装置20の各部を制御する。例えば、制御部201は、ユーザが操作部203を用いてウェブページを閲覧するための操作を行うと、その操作に応じてブラウザプログラムを実行し、ウェブサーバ30からウェブページのデータを受け取って記憶部204に記憶するとともに、表示部205に表示する。
【0023】
通信部202は、ウェブサーバ30と通信ネットワーク10を介して通信可能な装置との間のデータ通信をつかさどる。なお、通信部202の通信方法は、無線通信及び有線通信のいずれであってもよい。
【0024】
操作部203は、ユーザによる外部からの入力操作を受け付ける装置である。例えば、タッチパネルや物理的なボタン(スマートフォンのホームボタンなど)が挙げられる。
【0025】
記憶部204は、例えば、SSD(Solid State Drive)、HDD(Hard Disk Drive)、RAM(Random Access Memory)など、書き換え可能な記憶装置である。記憶部204は、制御部201からの指示に応じて、データの記憶や読み込み、書き出しを実行する。例えば、記憶部204は、通信部202を介してウェブサーバ30から受信したウェブページのデータを格納する。このウェブページのデータは、後述する可読時間情報取得処理を実現するためのスクリプトプログラム(例えば、JavaScript(登録商標)等による)を含んでおり、当該スクリプトプログラムはブラウザ上で実行される。また、記憶部204には、ブラウザのプログラムなどの各種プログラムが格納されている。また、記憶部204は、可読時間情報取得処理によって取得される可読時間情報を、少なくとも処理が終了するまでの間、一時的に格納する。本実施形態では、可読時間情報は、端末装置20で閲覧するウェブページに含まれるコンテンツに、各コンテンツの可読時間(すなわち、後述する可読領域と判断された時間)を対応付けた情報とする。
【0026】
表示部205は、制御部201による制御の下で、ユーザに対して文字や画像情報を、例えば、CRT(Cathode Ray Tube)やLCD(Liquid Crystal Display)、OELD(有機ELディスプレイ、Organic Electro-Luminescent Display)などに表示する。このように、端末装置20は、操作部203のタッチパネルと表示部205とにより構成されるタッチパネルディスプレイを備えることとなる。
【0027】
読了指数算出装置40は、通信ネットワーク10に接続している各端末装置20から送信される可読時間情報を収集して、各ウェブページに含まれるコンテンツ(構成要素)ごとに読了指数を統計的に算出する。なお、ウェブページ全体を対象としてもよいが、ウェブページを細分化した単位(例えば段落、文、文字、画像等)を対象とすることが好ましく、以下の説明においてもウェブページが当該ウェブページを細分化した複数の要素により構成されているものとする。読了指数算出装置40は、一般的なコンピュータと同様に構成され、図3に示すように、RAM、ROMなどの記憶部401、CPUなどの制御部402、および通信部403を備える。
【0028】
本実施形態の読了指数算出装置40は、ウェブページに含まれる各コンテンツの可読時間情報を複数の端末装置20から収集し、収集した可読時間情報に基づき統計的な処理を行ってウェブページに含まれる各コンテンツについての読了指数を算出する。読了指数算出装置40が算出する読了指数により、ウェブページに含まれる各コンテンツ、例えば、コンテンツ本文の各段落、静止画、動画がどの程度ユーザにしっかり読まれたかを把握することができる。
【0029】
以上のように構成される読了指数算出システムでは、端末装置20が可読時間情報を取得し、読了指数算出装置40が可読時間情報を収集して統計的に処理することにより読了指数を算出する。
【0030】
〔可読時間情報取得処理〕
続いて、端末装置20においてブラウザ上で実行されるスクリプトプログラムにより実現される可読時間情報取得処理について説明する。図4は、可読時間情報取得処理の手順を示すフローチャートである。可読時間情報取得処理は、端末装置20にてウェブページにアクセスし、ウェブページのコンテンツがブラウザに表示されることに応じて、当該ウェブページのレスポンスに含まれるスクリプトプログラムが実行されることにより開始される。なお、処理が開始される際、可読時間情報は、ウェブページに含まれる全てのコンテンツについて可読時間が0として初期化される。
【0031】
はじめに、端末装置20は、ブラウザによる表示範囲を特定する(ステップS100;測定タイミングT1)。続いて、端末装置20は、所定の待機時間だけ待機して(ステップS110)、処理をステップS120に進める。ステップS110における待機時間は、ブラウザによる表示範囲を特定する時間間隔(この時間間隔を以下では「測定間隔」という)を規定する。待機時間が短ければ表示範囲を特定する頻度が高まり、可読時間情報の精度が高まるが、処理の負荷が増大する。反対に待機時間が長ければ処理の負荷は低減されるが、可読時間情報の精度が低下する。待機時間はこのようなトレードオフの関係を踏まえて決定するとよく、例えば1秒程度とするとよい。ステップS120において、端末装置20は、再びブラウザによる表示範囲を特定する(ステップS120;測定タイミングT2)。そして、端末装置20は、単位時間あたりのスクロール速度が閾値以上か否かを判定する(ステップS130)。
【0032】
スクロール速度は、単位時間当たりのスクロールされたコンテンツ量として計算により求めるとよい。コンテンツ量は、例えば、ピクセル数、コンテンツ本文の文字数、コンテンツの情報量等とするとよく、2つの時刻におけるブラウザによる表示範囲の差からスクロールされたコンテンツ量を求めるとよい。スクロールされたコンテンツ量を2つの時刻の差で割ることにより、スクロール速度を求めることができる。スクロール速度を求めるための2つの時刻は、処理開始直後においては測定タイミングT1及びT2とするとよい。その後は、処理のループにより繰り返し実行されるステップS120について、前回のステップS120実行時(測定タイミングTn-1)及び今回のステップS120実行時(測定タイミングTn)とするとよい(ただしnは3以上の整数)。ステップS130において判断の基準とされるスクロール速度の閾値は、ユーザがコンテンツを読めない程度のスクロール速度とするとよい。スクロール速度をピクセル数により求める場合には、通常の動体視力で視認できる限界程度の速度を閾値とするとよい。また、スクロール速度を文字数や情報量により求める場合には、通常の利用者が2つの時刻の間に読み取ることのできる文字数や情報量の限界程度の速度を閾値とするとよい。なお、この閾値は予め設定されたものであってもよいが、自動的に算出され、統計処理や機械学習等により改善され続けるようにすることが好ましい。
【0033】
スクロール速度が閾値以上である場合(ステップS130;Yes)、端末装置20は、処理をステップS170に移す。一方、スクロール速度が閾値よりも小さい値である場合(ステップS130;No)、処理をステップS140に進める。そして、非可読領域R1を特定する(ステップS140)。非可読領域R1は、ユーザが端末装置を操作するために行う画面への接触の位置に基づいて特定するとよい。本例の非可読領域R1は、図5に示すように、接触位置よりも下側、且つ、画面に接触している手(本例では右手)側の表示範囲とする。
【0034】
ここで、図5に示すような非可読領域R1を特定するには、ユーザがどちらの手で画面に接触しているかを判定する必要がある。端末装置20は、画面への接触位置を連続的に取得し、接触位置の軌跡を統計的に解析することにより、どちらの手で画面に接触しているかを判定するとよい。具体的には、端末装置20は、スクロール方向、および接触位置の軌跡が時計回りの弧を描くか反時計回りの弧を描くかに基づいて、どちらの手で画面に接触しているかを判定することができる。例えば、ユーザが右手で画面を上方向へスクロールする場合、右手の指、手首、肘等の関節を中心とした上肢の回転運動に伴い、図6に示したように、接触位置の軌跡は時計回りに円弧を描く傾向がある。反対に、左手で画面を上方向へスクロールする場合には反時計回りに円弧を描く。スクロール方向が反対になれば、軌跡の回転方向も反対になる。このような傾向を利用し、端末装置20は、スクロール方向、および接触位置の軌跡が時計回りの弧を描くか反時計回りの弧を描くかに基づいて、ユーザがどちらの手で画面に接触しているかを判定することができる。どちらの手で画面に接触しているのかを判定すると、接触位置よりも下側、且つ、画面に接触している手側の表示範囲を非可読領域R1として特定する。
【0035】
続いて、端末装置20は、画面に表示されている範囲から非可読領域R1を除外することにより、可読領域R2を特定する(ステップS150)。そして、端末装置20は、可読時間情報において、上記方法で特定した可読領域R2に含まれているコンテンツの可読時間を測定間隔(すなわち、処理開始直後においては測定タイミングT1とT2との間隔、その後は、nを3以上の整数として測定タイミングTn-1とTnとの間隔)分だけ増加させる(ステップS160)。このとき、可読時間の増加量(つまり測定間隔)は、各測定タイミングの時刻をタイムスタンプ等により取得して算出した測定間隔としてもよいし、測定間隔を一定時間とみなして所定の一定値を増加させるようにしてもよい。
【0036】
続いて、端末装置20は、ブラウザによるウェブページへのアクセスが終了したか否かを判定する(ステップS170)。アクセスが終了していない場合(ステップS170;No)、処理をステップS110に戻す。したがって、ブラウザによるウェブページへのアクセスが終了するまでの間、ステップS110からステップS170までの一連の処理は、ステップS110における待機時間(および各ステップの実行時間)に依存した周期で、繰り返し実行される。そして、繰り返し実行されるステップS120(測定タイミングTn)における可読領域に含まれていたコンテンツについて、可読時間が積算される。
【0037】
ステップS170において、ウェブページへのアクセスが終了した場合(ステップS170;Yes)、端末装置20は、可読時間情報を読了指数算出装置40へ送信して(ステップS180)、可読時間情報取得処理を終了する。
【0038】
図7は、以上のような可読時間情報取得処理によって可読時間情報が積算される流れを模式的に示している説明する。はじめにユーザがウェブページにアクセスしたとき(測定タイミングT1)には、図7(a)に示すように、端末装置20は、ウェブページ全体Cのうち、所定範囲のコンテンツC1を表示している。次の測定タイミングT2において、ユーザは画面をスクロールしておらず、図7(b)に示すように可読領域R2-2が特定されたとすると、端末装置20は、可読領域R2-2に含まれるコンテンツに対応する可読時間を測定タイミングT1とT2の時間間隔(ここでは測定間隔をいずれも1ミリ秒とする)分だけ増加させる。続いて、次の測定タイミングT3までにユーザが画面をさらにスクロールし、図7(c)に示すように測定タイミングT3における可読領域R2-3が特定されたとすると、端末装置20は、可読領域R2-3に含まれるコンテンツに対応する可読時間を測定タイミングT2とT3の時間間隔分(1秒)だけ増加させる。その結果、可読領域R2-2にのみ含まれていた範囲のコンテンツについてはT1とT2の時間間隔(つまり1秒)が可読時間となる。また、可読領域R2-2とR2-3の重複する範囲のコンテンツについては、T1からT3までの時間(つまり2秒)が可読時間となる。また、可読領域R2-3にのみ含まれていた範囲のコンテンツについてはT2とT3の時間間隔(つまり1秒)が可読時間となる。このようにしてユーザがコンテンツを読み進めていく操作に追随してコンテンツ毎に可読時間を積算し続けることができる。
【0039】
読了指数算出装置40は、通信ネットワーク10を介して接続された多数の端末装置20から可読時間情報を収取し、収集した可読時間情報に基づいて統計的な処理を行いウェブページのコンテンツ毎に読了指数を算出する。読了指数算出装置40が行う統計的な処理は任意であるが、例えば、各コンテンツについて、文章の総可読時間、あるいは、単位情報量(例えば文字数)当たりの可読時間毎に、その分布について、分散・信頼区間等を求め、これらの値に基づいてコンテンツ毎に読了指数を算出するとよい。あるいはこれらの値同士の相関を求めてもよい。
【0040】
また、読了指数算出装置40は、ウェブページの管理者等からの要求に応じて、ウェブページのコンテンツ毎に読了指数を提示する。例えば、読了指数算出装置40は、数値データやグラフとしてコンテンツ毎の読了指数を提示するとよい。あるいは、読了指数に応じて色彩を変化させるヒートマップを、ウェブページに重畳して(例えば、半透過状態で)表示することにより、コンテンツ毎の読了指数を視覚化して提示してもよい。
【0041】
以上で説明したように、本実施形態の読了指数算出システムによれば、各コンテンツがどの程度しっかり読まれたかを高い精度で反映した読了指数を算出し、提示することができる。
【0042】
〔第2実施形態〕
続いて、本発明の第2実施形態に係る読了指数算出システムについて説明する。第2実施形態の読了指数算出システムのハードウェア構成は、図1に示した第1実施形態と共通である。第2実施形態の読了指数算出システムは、端末装置20と読了指数算出装置40とによる処理の分担が第1実施形態とは異なっており、この際に伴い、端末装置20が蓄積するデータ、スクロール速度の取得方法等も第1実施形態と異なっている。以下では、これらの差異点について詳述し、第1実施形態との共通分については説明を省略する。
【0043】
第2実施形態において、端末装置20は、ブラウザ上で実行されるスクリプトプログラムにより、ウェブページをブラウザが表示しはじめたタイミングからの通算表示時間と、スクロールの開始や停止のようにブラウザによる表示範囲を変更するイベント(以下、表示範囲変更イベントと総称する)をトリガとして、表示範囲に含まれるコンテンツについて、その状態で可読範囲として表示されている時間(すなわち、次の表示範囲変更イベントが生じるまでの時間。例えば、スクロール停止されてから次にスクロールが開始されるまでの時間)とを計測する。表示範囲変更イベントは、例えば、スクロールの開始及び停止、表示倍率(拡大率)の変更、ウィンドウサイズの変更、フルスクリーン表示の開始及び終了、フォントサイズの変更、タブの切り替え、可視/不可視の切り替え等を含むが、これらに限定されない。制御部201は、通算表示時間を計時する第1タイマと、直前の表示範囲変更イベントが生じてから経過した時間(例えば、スクロール停止されてから経過した時間)を計時する第2タイマを実現する。そして、端末装置20は、次の表示変更イベント(例えばスクロールの開始)が生じたタイミングにおける通算表示時間と、直前の表示変更イベントが生じてからの経過時間(例えばスクロール停止時間)とを対応付けて記録する。これに加え、表示するウェブページの全体のサイズ、ブラウザの表示範囲(ビューポート)のサイズ等の情報も直前の表示変更イベントが生じてからの経過時間に対応付けて記録する。これらの情報は、端末装置20の記憶部204内に確保されたキューと呼ばれる記憶領域に記録される。キューはブラウザによる管理下でデータを一時的に記録しておくための記憶領域である。
【0044】
端末装置20は、キューに蓄積したデータを定期的に及びユーザの操作イベントをトリガに読了指数算出装置40に送信する。読了指数算出装置40は、各端末装置20から受け取ったデータを解析して、読了指数を算出する。
【0045】
以下、ウェブページ閲覧時の具体的な処理を説明する。端末装置20は、ウェブサーバ30からウェブページのデータをダウンロードし、表示する画面の生成(いわゆるレンダリング)が完了すると、当該ウェブページの通算表示時間を掲示すべく第1タイマによる計時を開始する。このウェブページの表示開始が当該ウェブページの表示における最初の表示範囲変更イベントとなる。また、端末装置20は、ブラウザによる初期の表示範囲を示す表示範囲情報を特定するとともに、当該表示範囲を維持したままその位置で停止している時間をカウントすべく第2タイマによる計時を開始する。表示範囲情報は、ブラウザに表示されている最初の段落と、表示されている段落数との組み合わせによるデータとして表現する。例えば、初期の表示範囲に第1段落から第7段落までが表示されている場合には、表示範囲情報は[1,7]と表現される。このような表現により、表示範囲情報のデータ量を抑制することができる。なお、ブラウザに表示されている段落は、ウェブページを記述したHTML(Hypertext Markup Language)ファイルにおいて段落を示すタグ(いわゆるpタグ)について、ブラウザの表示範囲内に含まれるものとして特定するとよい。
【0046】
初期の表示範囲から表示範囲を変更する表示範囲変更イベント(例えば、スクロールの開始)を検知すると、端末装置20は、第2タイマによる計時を停止し、第1タイマで計時した停止開示時刻(初期の表示範囲についてはゼロ)、第2タイマで計時した最初の表示範囲変更イベントからの経過時間(つまり、停止時間)、最初の表示範囲変更イベントにより生じた表示範囲(つまり、停止時の表示範囲)、ウェブページの全体のサイズ、及びブラウザの表示範囲(ビューポート)のサイズを対応付けて、キューに格納する。
【0047】
次に新たな表示範囲変更イベント(例えばスクロールの停止)が生じると、表示範囲変更イベントの発生時刻として、第1タイマによる計時時刻を取得する。また、端末装置20は、当該新たな表示範囲変更イベントにより生じた表示範囲情報(例えば、スクロール停止位置における表示範囲情報)を特定するとともに、当該表示範囲が維持されている時間をカウントすべく第2タイマによる計時を開始する。
【0048】
その後、さらに次の表示範囲変更イベントを検知すると、端末装置20は、第2タイマによる計時を停止し、第1タイマから取得した1つ前の表示範囲変更イベントが発生した時刻、第2タイマで計時した1つ前の表示範囲変更イベントからの経過時間、1つ前の表示範囲変更イベントで生じた表示範囲、ウェブページの全体のサイズ、及びブラウザの表示範囲(ビューポート)のサイズを対応付けて、キューに格納する。
【0049】
このような処理を繰り返すことにより、キューにはスクロールが停止していた各期間について、停止開始時刻、停止時間、表示範囲等のデータが蓄積される。
【0050】
端末装置20は、上記の処理に加えて、第1実施形態と同様に、スクロール停止状態での表示範囲に含まれるが読まれていないものとして扱う非可読領域を特定し、併せてキューに格納してもよい。
【0051】
端末装置20は、キューに蓄積されたデータを、定期的に(例えば5分に1回等の頻度で)読了指数算出装置40に送信する。また、端末装置20は、定期的なタイミングの他、例えばウェブページが非表示になったとき(ウィンドウが閉じた、最小化された、タブが変わった、等)等の所定のイベントが発生したときにもキューに蓄積されたデータを読了指数算出装置40に送信する。なお、端末装置20は、ウェブページが非表示になったときには、第1タイマ及び第2タイマのカウントを停止するようにするとよい。
【0052】
読了指数算出装置40は、端末装置20から送信されてくるデータを受け取ると、当該受け取ったデータに基づいて読了指数を算出する。読了指数の算出に当たっては、不要なデータを取り除いたり統計処理をしやすい形式に整えたりする、いわゆるクレンジング処理を行う。そして、クレンジング処理を経たデータに基づいて、スクロールが停止していた各期間については、可読であった表示範囲について、スクロール停止時間分だけ読まれたものとして読了指数を算出する。また、スクロールが停止していた各期間の間は、スクロールしていた期間となるが、読了指数算出装置40は、このスクロールしていた期間におけるスクロール速度を求める。具体的には、このスクロールしていた期間におけるスクロール量を、前後のスクロール停止期間の表示範囲から求め、スクロールしていた期間の時間で除算することにより、スクロール速度を求めるとよい。そして、読了指数算出装置40は、スクロール速度が閾値以上である場合には、スクロール中の表示範囲(すなわち、前後の停止期間における表示範囲の間の部分)については非可読であったものとして読了指数を算出する。一方、スクロール速度が閾値よりも小さい場合には、スクロール中の表示範囲については可読であったものとして読了指数を算出する。なお、読了指数算出装置40は、スクロール速度と比較する閾値を、過去に各端末装置20から収集したデータを統計処理等することにより、自動的に算出するように構成するとよい。
【0053】
このようにして、読了指数算出装置40は、端末装置20から受け取るデータに基づいて、読了指数を算出する。読了指数算出装置40は、収集した全データに基づく再計算を行わずに、最新のデータを過去分に反映した読了指数を算出すべく、いわゆるオンラインアルゴリズムにより、読了指数を算出するとよい。このようにすれば、最新のデータに基づき、閾値等を最適化しつつ、より精度の高い読了指数を算出することができる。なお、スクロール速度の閾値についてもオンラインアルゴリズムにて算出して随時更新するようにするとよい。
【0054】
上述のような読了指数の算出に加え、読了指数算出装置40は、ウェブページ閲覧時に、当該ウェブページの文章が全体を通して読まれたかどうか(例えば前述のスクロールスピードなどの記録を用いて, 読み飛ばされたり、可読状態とならなかったりした部分があるか)を導き出すとよい。そして、端末装置20にて計測され、読了指数算出装置40に送信される一連のデータに対し、読者の匿名性を保った上で一意となるキーを付与し、これを毎回の送信に含めることにより、収集したデータに対応する読者を識別できるようにするとよい。このようにすれば、例えば、小説のように先頭から末尾まで読み切るような類いの文章については、文章全てをじっくり読んだ読者のデータのみを抽出することなどが可能になる。また, 全体を読んだ読者の記録のみを対象として、文章量に比して読まれるのに時間がかかりすぎた部分などを把握することもでき、文章の質の評価に利用することができる。
【0055】
なお、上記に本発明の各実施形態を説明したが、本発明はこの例に限定されるものではない。例えば、上記の各実施形態では端末装置20がスマートフォンである場合を例に説明したが、端末装置20は、タブレットPC、電子書籍リーダ、デスクトップPC等であってもよい。端末装置がタッチインタフェースを備えない場合やマウスとタッチインタフェースを併用する場合等には、マウスカーソル位置の軌跡を補助的に用いて読了位置を推定し、可読領域を特定する補助として用いてもよい。あるいは、非可読領域を除外して可読領域を特定するプロセスは省略してよい。
【0056】
また、端末装置20にユーザの視線の方向を検知するためのカメラを設け、当該カメラを用いて検知した視線の方向に基づき、可読領域R2を特定するようにしてもよい。
【0057】
また、上記の各実施形態では、非可読領域を特定する際に、接触位置よりも下側、且つ、画面に接触している手側の表示範囲を非可読領域としたが、非可読領域をこれとは異なるようにしてもよい。例えば、画面に接触している手を判別することなく、接触位置よりも下側、又は上側の表示範囲を全て非可読領域としてもよい。また、接触位置が画面の上半分の領域にある場合には接触位置よりも上側を非可読領域とし、接触位置が画面の下半分の領域にある場合には接触位置よりも下側を非可読領域としてもよい。
【0058】
また、前述の各実施形態に対して、当業者が適宜、構成要素の追加、削除、設計変更を行ったものや、各実施形態の特徴を適宜組み合わせたものも、本発明の要旨を備えている限り、本発明の範囲に含有される。
【符号の説明】
【0059】
10…通信ネットワーク
20…端末装置
30…ウェブサーバ
40…読了指数算出装置
図1
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図7