(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-26
(45)【発行日】2022-11-04
(54)【発明の名称】防火スクリーン
(51)【国際特許分類】
A62C 2/06 20060101AFI20221027BHJP
A62C 4/00 20060101ALI20221027BHJP
【FI】
A62C2/06 502
A62C4/00
(21)【出願番号】P 2021133129
(22)【出願日】2021-08-18
【審査請求日】2022-07-12
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】592001230
【氏名又は名称】新倉工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100137338
【氏名又は名称】辻田 朋子
(72)【発明者】
【氏名】新倉 太
【審査官】瀬戸 康平
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-160573(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第108379760(CN,A)
【文献】登録実用新案第3199443(JP,U)
【文献】特開2012-066714(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A62C 4/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
火炎の伝播を防止する防火スクリーンであって、
スクリーン部を備え、
前記スクリーン部は、複数の金網が積層された多層金網を有し、
前記金網のうち少なくとも一つは、単位面積当たりの網目の数が他の金網と異な
り、
前記多層金網は、単位面積当たりの網目の数が多い金網の間に、単位面積当たりの網目の数が少ない金網を挟む構成となっている、防火スクリーン。
【請求項2】
火炎の伝播を防止する防火スクリーンであって、
スクリーン部
と、保持部と、挟持枠体と、を備え、
前記スクリーン部は、複数の金網が積層された多層金網を有し、
前記金網のうち少なくとも一つは、単位面積当たりの網目の数が他の金網と異な
り、
前記保持部は、細長形状の部材で形成された枠体を有し、前記多層金網を所定の形状に保持するように構成され、
前記枠体は、前記多層金網の端部に固定され、
前記挟持枠体は、前記枠体とで、前記多層金網を挟持可能に構成されている、防火スクリーン。
【請求項3】
火炎の伝播を防止する防火スクリーンであって、
スクリーン部
と、保持部と、挟持補助部材と、を備え、
前記スクリーン部は、複数の金網が積層された多層金網を有し、
前記金網のうち少なくとも一つは、単位面積当たりの網目の数が他の金網と異な
り、
前記保持部は、細長形状の部材で形成された一対の枠体と、細長形状の補助部材と、を有し、前記多層金網を所定の形状に保持するように構成され、
前記一対の枠体は、前記多層金網の一端と他端に固定され、且つ、前記補助部材で連結され、
前記挟持補助部材は、前記多層金網の両側辺を、前記補助部材と共に挟持可能に構成されている、防火スクリーン。
【請求項4】
前記多層金網を所定の形状に保持するための保持部を備える、
請求項1に記載の防火スクリーン。
【請求項5】
前記保持部は、細長形状の部材で形成された枠体を有し、
前記枠体は、前記多層金網の端部に固定される、
請求項4に記載の防火スクリーン。
【請求項6】
前記枠体は一対設けられ、前記多層金網の一端と他端に固定される、
請求項2又は5に記載の防火スクリーン。
【請求項7】
前記保持部は、細長形状の補助部材を有し、
前記一対の枠体は、前記補助部材で連結されている、
請求項6に記載の防火スクリーン。
【請求項8】
前記多層金網は、三層の金網から形成されている、
請求項1~7の何れかに記載の防火スクリーン。
【請求項9】
前記多層金網は、薄い面状に形成されている、
請求項1~8の何れかに記載の防火スクリーン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、火炎の伝播を防止するための金網スクリーンに係るものである。
【背景技術】
【0002】
可燃性流体を輸送、貯蔵する場面において、これらの発火や引火、またはそれに続く2次的被害の防止のために、従来から、金網スクリーンが用いられてきた。
【0003】
金網スクリーンは、想定される火炎の伝播経路上に設置され、火炎が内部を通過する際に、その熱を吸収、分散させることで、通過する火炎を消滅させる。
【0004】
これに関して、本発明者等は、船舶に設けられた各種タンクに併設されるエアーベント管内部に、火炎防止のための金網スクリーンを設けた、特許文献1に記載のフロート弁を提案した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明者等による、前述の提案によって、タンク内外への火炎伝播リスク低減が実現された。
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載の考案では、金網が単層構造であり、防火性能にやや不安が残る。
【0008】
対して、単純に金網の積層枚数を増加させるだけでは、防火性能は向上するものの、通気性が低下し、エアーベント管の働きを妨げてしまう。
【0009】
本発明は上記のような問題に鑑みてなされたものであり、複数の金網を重ねても、通気性を維持しつつ、防火性能を向上させた、使い勝手の良い防火スクリーンを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明は、火炎の伝播を防止する防火スクリーンであって、
スクリーン部を備え、
前記スクリーン部は、複数の金網が積層された多層金網を有し、
前記金網のうち少なくとも一つは、単位面積当たりの網目の数が他の金網と異なる。
【0011】
本発明によれば、単位面積当たりの網目の数が異なる金網どうしを積層することで、金網の積層数に比較して、防火性能が大きく向上する。
即ち、所定の防火性能を得るために必要な金網の積層数を減少させることができ、通気性を維持しつつ防火性能を向上させることができる。
【0012】
本発明の好ましい形態では、前記多層金網は、単位面積当たりの網目の数が多い金網の間に、単位面積当たりの網目の数が少ない金網を挟む構成となっている。
【0013】
このような構成とすることで、網目の数が多い金網で防火性能を高めつつ、網目の数が少ない金網で通気性を維持することができる。
【0014】
本発明の好ましい形態では、前記多層金網は、三層の金網から形成されている。
【0015】
このような構成とすることで、通気性の低下を抑えた範囲で、防火性能を向上させることができる。
【0016】
本発明の好ましい形態では、前記多層金網は、薄い面状に形成されている。
【0017】
このような構成とすることで、多層金網は容易に変形させることができ、様々な場所に合わせた防火スクリーンを設計、製造することが可能となる。
【0018】
本発明の好ましい形態では、前記多層金網を所定の形状に保持するための保持部を備える。
【0019】
このような構成とすることで、多層金網を保持部に沿った形状に保持することが可能となる。
【0020】
本発明の好ましい形態では、前記保持部は、細長形状の部材で形成された枠体を有し、
前記枠体は、前記多層金網の端部に固定される。
【0021】
このような構成とすることで、通気面の減少を最小限に抑えつつ、多層金網の形状を保持することができる。
【0022】
本発明の好ましい形態では、前記枠体は一対設けられ、前記多層金網の一端と他端に固定される。
【0023】
このような構成とすることで、通気面の減少を最小限に抑えつつ、多層金網の形状をより強固に保持することができる。
【0024】
本発明の好ましい形態では、前記保持部は、細長形状の補助部材を有し、前記一対の枠体は、前記補助部材で連結されている。
【0025】
このような構成とすることで、通気面の減少を最小限に抑えつつ、保持部の強度を増し、ひいては防火スクリーン全体の強度を増すことができる。
【0026】
本発明の好ましい形態では、挟持枠体を備え、前記挟持枠体は、前記枠体とで、前記多層金網を挟持可能に構成されている。
【0027】
このような構成とすることで、簡易な構成で多層金網が枠体に固定される。
【0028】
本発明の好ましい形態では、挟持補助部材を備え、前記挟持補助部材は、前記多層金網の両側辺を、前記補助部材と共に挟持可能に構成されている。
【0029】
このような構成とすることで、多層金網の両側辺を挟持、連結することができる。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、複数の金網を重ねても、通気性を維持しつつ、防火性能を向上させた、使い勝手の良い防火スクリーンを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】本発明の実施形態に係る防火スクリーンの概略図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る防火スクリーンの、(A)概略図、(B)拡大図、(C)P-P´断面図である。
【
図3】本発明の実施形態に係る防火スクリーンの分解図であって、保持部を示す概略図である。
【
図4】本発明の実施形態に係る防火スクリーンの分解図であって、挟持枠体、挟持補助部材を示す概略図である。
【
図5】本発明の実施形態に係る防火スクリーンの、(A)概略図、(B)拡大図、(C)Q-Q´断面図である。
【
図6】本発明の実施形態に係る防火スクリーンの、(A)概略図、(B)拡大図、(C)R-R´断面図である。
【
図7】本発明の実施形態に係る防火スクリーンの使用方法を説明するための、フロート弁の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、
図1~
図6を用いて、本発明の実施形態に係る防火スクリーンについて説明する。
なお、以下に示す実施形態は本発明の一例であり、本発明を以下の実施形態に限定するものではない。また、これらの図において、符号Xは、本実施形態に係る防火スクリーンを示す。
【0033】
図1に示すように、防火スクリーンXは、スクリーン部1と、保持部2と、挟持枠体3と、挟持補助部材4と、を備えている。
【0034】
スクリーン部1は、多層金網11を有している。
なお、本防火スクリーンXにおいては、スクリーン部1は、略円筒形状となるように湾曲させた一つの多層金網11から構成されているが、スクリーン部1は、略円筒形状となるように配置した複数の多層金網11から構成されていてもよい。
【0035】
図2には、本防火スクリーンXの、(A)概略図、(B)拡大図、(C)P-P´断面図を示した。
なお、(A)内の網掛け部分は、(B)で拡大された部分を示している。
【0036】
図2に示すように、多層金網11は、三つの金網11a、11b、11cが薄く積層された構造となっている。
【0037】
また、金網11aと11cは、金網11bと比較して、単位面積当たりの網目の数が多い。即ち、多層金網11は、単位面積当たりの網目の数が多い金網11aと11cで、単位面積当たりの網目の数が少ない金網11bを挟む構造となっている。
【0038】
図3に示すように、保持部2は、一対の枠体21と、補助部材22と、を有し、
一対の枠体21は、補助部材22によって連結されている。
【0039】
なお、本防火スクリーンXにおいて、保持部2は、略円形の枠体21と、細長形状の補助部材22から、略円筒形状に形成されているが、保持部2の形状は、設置箇所に合わせて適宜変更してもよい。
【0040】
図4には、一対の挟持枠体3と、挟持補助部材4と、を示した。
【0041】
一対の挟持枠体3は、枠体21と略同一かつ一回り大きな形状に形成されている。即ち、一対の挟持枠体3は、一対の枠体21との間に多層金網11を挟持可能となっている。
【0042】
また、挟持補助部材4は、補助部材22と略同一の形状に形成されており、補助部材22との間に、多層金網11の両側辺を挟持可能である。
【0043】
図5には、本防火スクリーンXの、(A)概略図、(B)拡大図、(C)Q-Q´断面図を示した。
なお、(A)内の網掛け部分は、(B)で拡大された部分を示している。
【0044】
図5(C)に示すように、多層金網11は、一対の枠体21に沿って、一端と他端が固定されており、各端部は、一対の枠体21と、一対の挟持枠体3と、が挟持する構成となっている。
【0045】
図6には、本防火スクリーンXの、(A)概略図、(B)拡大図、(C)R-R´断面図を示した。
なお、(A)内の網掛け部分は、(B)で拡大された部分を示している。
【0046】
図6(C)に示すように、R-R´断面において、一対の枠体21と、一対の挟持枠体3とで、多層金網11の一端と他端が挟持される点は、Q-Q´断面と同様である。
一方、R-R´断面付近には、略円筒形状となるように湾曲されている多層金網11の両側辺、即ち、つなぎ目部分が位置し、このつなぎ目部分を被覆するように、挟持補助部材4が設けられている。
そして、挟持補助部材4と、補助部材22とで、多層金網11の両側辺を挟持する構成となっている。
【0047】
以下、
図7を用いて、防火スクリーンXの使用方法について説明する。
【0048】
防火スクリーンXは、特許文献1に記載のフロート弁に設けられたスクリーンの改良品である。よって、防火スクリーンXの使用方法の一例を説明するために、
図7には、特許文献1に記載のフロート弁Fの断面図を示した。
【0049】
図7に示すように、防火スクリーンXは、着脱可能な蓋体Lが装着されたフロート弁F内に、通気経路apを遮るように設けられる。
このような構成とすることによって、通気経路apを通って火炎が伝播するリスクを下げることができる。
【0050】
そして、防火スクリーンXは、特許文献1に記載のフロート弁に設けられたスクリーンと比較して、防火性能が高いため、前述の火炎伝播リスクはさらに低減される。
【0051】
また、防火スクリーンXは、通気性も高く維持されているため、エアーベント管Pの働きを妨げない。
【0052】
まとめると、特許文献1に記載のフロート弁F内に設けられるスクリーンを、防火スクリーンXとすることで、エアーベント管Pの働きを妨げることなく、通気経路apを通って火炎が伝播するリスクをさらに低減することができる。
【0053】
本実施形態によれば、多層金網11に、単位面積当たりの網目の数が他の金網11a及び11cと異なる、金網11bが含まれることで、通気性を維持しつつ、本防火スクリーンXの防火性能を高めることができる。
【0054】
また、単位面積当たりの網目の数が多い金網11a及び11cの間に、単位面積当たりの網目の数が少ない金網11bが挟まれていることで、通気性を維持しつつ、本防火スクリーンXの防火性能を高めることができる。
【0055】
また、多層金網11が、金網11a、11b、11cの三層から構成されていることで、本防火スクリーンXの通気性の低下を抑えた範囲で、防火性能を向上させることができる。
【0056】
また、多層金網11が、薄い面状に形成されていることで、多層金網11は容易に変形でき、設置箇所に合わせた防火スクリーンXの設計、製造が可能になる。
【0057】
また、保持部2を備えることで、多層金網11をこの保持部2に固定し、多層金網11を保持部2に沿う形状に保持することが可能となる。
【0058】
また、保持部2が、細長形状の部材で形成された枠体21を有し、この枠体21が多層金網11の端部に固定されることで、通気面の減少を最小限に抑えつつ、多層金網11を枠体21に沿う形状に保持することが可能となる。
【0059】
また、一対の枠体21が、多層金網11の一端と他端に固定されることで、通気面の減少を最小限に抑えつつ、多層金網11の形状をより強固に保持することが可能となる。
【0060】
また、一対の枠体21が細長形状の補助部材22で連結されていることで、通気面の減少を最小限に抑えつつ、保持部2の強度を増し、ひいては防火スクリーンX全体の強度を増すことができる。
【0061】
また、多層金網11を、枠体21とで挟持可能に構成された、挟持枠体3を備えることで、簡易な構成で、多層金網11が枠体21に固定可能となる。
【0062】
また、多層金網11の両側辺を、補助部材22とで挟持可能に構成された、挟持補助部材4を備えることで、多層金網11の両側辺を挟持、連結することが可能となる。
【0063】
なお、上述の実施形態において示した各構成部材の諸形状や寸法等は一例であって、設計要求等に基づき種々変更可能である。
【符号の説明】
【0064】
X 防火スクリーン
1 スクリーン部
11 多層金網
11a 金網
11b 金網
11c 金網
2 保持部
21 枠体
22 補助部材
3 挟持枠体
4 挟持補助部材
F フロート弁
L 蓋体
P エアーベント管
ap 通気経路
【要約】
【課題】複数の金網を重ねても、通気性を維持しつつ、防火性能を向上させた、使い勝手の良い防火スクリーンを提供する。
【解決手段】火炎の伝播を防止する防火スクリーンXであって、スクリーン部1を備え、スクリーン部1は、複数の金網が積層された多層金網11を有し、複数の金網のうち少なくとも一つは、単位面積当たりの網目の数が他の金網と異なる。
【選択図】
図1