(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-26
(45)【発行日】2022-11-04
(54)【発明の名称】外科用ガイダンスのために磁性マーカを検出するためのシステムおよび方法
(51)【国際特許分類】
A61B 5/06 20060101AFI20221027BHJP
【FI】
A61B5/06
(21)【出願番号】P 2021135360
(22)【出願日】2021-08-23
(62)【分割の表示】P 2019010758の分割
【原出願日】2019-01-25
【審査請求日】2021-12-13
(32)【優先日】2018-01-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】517421390
【氏名又は名称】エンドマグネティクス リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100139723
【氏名又は名称】樋口 洋
(72)【発明者】
【氏名】ティツィアーノ アゴスティネリ
(72)【発明者】
【氏名】ケヴィン ロリマー
(72)【発明者】
【氏名】クエンティン ジョン ハーマー
【審査官】門田 宏
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第6337627(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
移植可能マーカのセットであって、各移植可能マーカが、閾値スイッチングフィールドで磁性曲線において大きいバルクハウゼンジャンプ(LBJ)を示す少なくとも一片の磁性物質を含み、駆動周波数において交番磁界により前記移植可能マーカを励磁することによりかつ前記移植可能マーカから受け取られる信号中の駆動周波数の1つ以上の高調波を検出することにより体内で検出可能であり、
前記交番磁界に対する各移植可能マーカの前記高調波応答が、前記移植可能マーカのセットの他の移植可能マーカの前記交番磁界に対する高調波応答と区別できることを特徴とする、
移植可能マーカのセット。
【請求項2】
前記移植可能マーカのセットの各移植可能マーカが、前記移植可能マーカのセットの他の移植可能マーカと異なる長さおよび/または形状を有することを特徴とする、請求項1に記載の移植可能マーカのセット。
【請求項3】
前記閾値スイッチングフィールドで磁性曲線において大きいバルクハウゼンジャンプ(LBJ)を示す磁性物質が、それを超えると該磁性物質が双安定スイッチング行動を示す臨界長さを有し、前記一片の磁性物質が、前記臨界長さよりも短い長さを有することを特徴とする、請求項1または2に記載の移植可能マーカのセット。
【請求項4】
前記移植可能マーカのセットの各マーカが、<10mmの長さであることを特徴とする、請求項1~3のいずれか1項に記載の移植可能マーカのセット。
【請求項5】
前記移植可能マーカのセットの各移植可能マーカが、移植されると、前記交番磁界によりインテロゲートされる際の前記移植可能マーカからの調波応答の強度が、前記移植可能マーカに関して任意の方向から測定される際と実質的に同じであり、最大:最小比率が≦4であるように、構成される少なくとも一片の非晶質LBJ物質またはLBJワイヤを含むことを特徴とする、請求項1~4のいずれか1項に記載の移植可能マーカのセット。
【請求項6】
前記移植可能マーカのセットの各移植可能マーカが、少なくとも直交軸x、yおよびzに沿って伸長する前記非晶質LBJ物質またはLBJワイヤの長さを有することを特徴とする、請求項5に記載の移植可能マーカのセット。
【請求項7】
前記磁性物質が、コーティングされるまたは中空管内で提供されることを特徴とする、請求項1~6のいずれか1項に記載の移植可能マーカのセット。
【請求項8】
前記移植可能マーカのセットの各移植可能マーカが、最初のコンパクトな構成から拡張され展開された構成へ展開可能であることを特徴とする、請求項1~7のいずれか1項に記載の移植可能マーカのセット。
【請求項9】
体内のマーカを位置決定するための検出システムであって、
複数の移植可能マーカであって、各移植可能マーカが、閾値スイッチングフィールドで磁性曲線において大きいバルクハウゼンジャンプ(LBJ)を示す少なくとも一片の磁性物質を含む移植可能マーカ;
交番磁界により前記移植可能マーカを励磁するよう配置される少なくとも1つの駆動コイルおよび前記励磁された移植可能マーカから受け取られる信号を検出するよう配置される少なくとも1つの感知コイル;
前記少なくとも1つの駆動コイルを介して交番磁界を駆動するよう配置された磁界ジェネレータ;および
前記感知コイルからの信号を受け取り、受け取られた信号中の駆動周波数の1つ以上の高調波を検出するよう配置された少なくとも1つの検出器
を含み、
前記少なくとも1つの駆動コイルが、前記移植可能マーカのLBJ物質の双安定スイッチング行動の開始に必要なスイッチングフィールド以下に前記移植可能マーカを励磁するよう動作可能であり、
前記複数の移植可能マーカの各移植可能マーカが、前記交番磁界に対する高調波応答によって区別できる
ことを特徴とする、検出システム。
【請求項10】
前記システムが、手術部位の周または縁を画定する前記複数の移植可能マーカの検出によって、前記手術部位の周または縁を検出するよう構成されることを特徴とする、請求項9に記載の検出システム。
【請求項11】
前記システムが、任意の方向からの前記高調波応答の強度を測定し、前記複数の移植可能マーカの向きを特定するよう構成されることを特徴とする、請求項9または10に記載の検出システム。
【請求項12】
前記複数の移植可能マーカの各移植可能マーカが、移植されると、交番磁界によりインテロゲートされる際の前記移植可能マーカからの調波応答の強度が、前記移植可能マーカに関して任意の方向から測定される際と実質的に同じであり、最大:最小比率が≦4であるように、構成される少なくとも一片の非晶質LBJ物質またはLBJワイヤを含むことを特徴とする、請求項9~11のいずれか1項に記載の検出システム。
【請求項13】
前記複数の移植可能マーカの各移植可能マーカが、少なくとも直交軸x、yおよびzに実質的に沿って伸長するLBJ物質の長さを有することを特徴とする、請求項12に記載の検出システム。
【請求項14】
前記LBJ物質が、コーティングされるまたは中空管内で提供されることを特徴とする、請求項9~13のいずれか1項に記載の検出システム。
【請求項15】
前記複数の移植可能マーカの各移植可能マーカが、最初のコンパクトな構成から拡張され展開された構成へ展開可能であることを特徴とする、請求項9~14のいずれか1項に記載の検出システム。
【請求項16】
前記駆動および感知コイルの少なくとも1つが、手持ち式プローブで提供されることを特徴とする、請求項9~15のいずれか1項に記載の検出システム。
【請求項17】
前記受け取った信号を処理し、前記感知コイルに関連して前記複数の移植可能マーカの各移植可能マーカの位置を表す少なくとも1つの標識を前記ユーザに提供するための出力モジュールをさらに含むことを特徴とする、請求項9~16のいずれか1項に記載の検出システム。
【請求項18】
前記システムが、前記複数の移植可能マーカの各移植可能マーカの高調波応答の1つ以上の態様を処理し;前記複数の移植可能マーカの各移植可能マーカの高調波応答の1つ以上の態様が、1つ以上の奇数次高調波、偶数次高調波、または奇数次および偶数次高調波の組合せの大きさ、あるいはこれらの高調波の互いにまたは基本周波数に対する比率から選択されることを特徴とする、請求項9~17のいずれか1項に記載の検出システム。
【請求項19】
前記複数の移植可能マーカの各々が、前記複数の移植可能マーカの他の移植可能マーカと異なる長さおよび/または形状を有することを特徴とする、請求項9~18のいずれか1項に記載の検出システム。
【請求項20】
請求項9~19のいずれか1項に記載のシステムに使用するための複数の移植可能マーカ。
【請求項21】
体内の複数の移植可能マーカを検出するシステムの作動方法であって、
複数の移植可能マーカに交番磁界を与える工程であって、各移植可能マーカが、磁性曲線において大きいバルクハウゼンジャンプ(LBJ)を示す少なくとも一片の磁性物質を含み、各移植可能マーカが、前記移植可能マーカのLBJ物質の双安定スイッチング行動の開始に必要なスイッチングフィールド(H
SW)以下に励磁される、工程;
前記スイッチングフィールド以下の前記移植可能マーカの強度の変化により生じる前記励磁された移植可能マーカの各々から受け取られる信号の駆動周波数の1つ以上の高調波を検出する工程;
前記検出された高調波に基づいて前記複数のマーカの各移植可能マーカを区別する工程;および
各移植可能マーカの前記高調波応答の態様を測定し、各マーカの位置付けに関する出力を提供する工程、
を含む方法。
【請求項22】
前記駆動周波数が1kHz超であることを特徴とする、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記駆動周波数が1-100kHzの範囲内であることを特徴とする、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
各移植可能マーカが、前記複数の移植可能マーカの他の移植可能マーカと異なる長さまたは形状を有することを特徴とする、請求項21~23のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、外科用ガイダンスに関し、より詳細には、体内の部位、例えば外科切除のための損傷の位置付けに役立つマーカを検出するためのシステムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば切除が必要な小さい腫瘍のように、所定の領域が物理的に目に見えないまたは触知できない場合に、外科手術中に外科医を当該所定の領域にガイドするためにマーカが使用される。理想的には、そのようなマーカは、患者への傷を低減するために、例えば18g~14gのナローゲージ針を介して展開可能であろう。通常、目立たず傷を最小限にするように、そのようなマーカは5mm未満の長さである。マーカは、体内の所定の部位、例えば腫瘍病変において、生体検査または他の外科的処置中に配置されてもよい。マーカは、超音波またはX線/マンモグラフィのような結像ガイダンスの下で配置される。その後の外科手術中に、外科手術をガイドするために外科医に聴覚、視覚または他のフィードバックを提供する手持ち式プローブを用いて、マーカが検出および位置決定される。通常、マーカは周囲の組織と共に切除される。
【0003】
そのようなアプローチの1つは、手持ち式ガンマ検出プローブを用いて検出できるヨウ素90のようなラジオアイソトープを含有するマーカを使用することである。しかしながら、ラジオアイソトープ物質の使用は厳密に規制されており、最大規模の大学診療センターを除き、放射性シードプログラムをセットアップすることは困難となっている。
【0004】
Cianna Medicalの特許文献1には、移植可能なレーダーアンテナの形態のマーカを検出するために、ラジオ周波数(RF)および赤外(IR)線の組合せを用いる位置決定システムが開示される。しかしながら、このシステムは、IR線の低い組織透過深さ、良好なIR伝搬のための緊密な組織接触の必要性、および、アンテナおよび電子回路を含む移植可能装置としばしば関連する頑丈さの不足によって制限される。
【0005】
Health Beaconsの特許文献2には、ペットおよび家畜のための身元マーカとして使用されてきたラジオ周波数同定(RFID)タグに基づくさらなるシステムが開示される。このアプローチによる欠点は、小さいRFIDタグは、ダイポール軸と垂直にアプローチされると「デッドスポット(deadspots)」を有するダイポールアンテナを構成することである。これにより、病変を位置決定するためにシステムを使用する外科医に混乱が生じうる。使い勝手の良い臨床移植に十分にRFIDタグを小型化することもまた困難である。
【0006】
さらなるアプローチが、本出願人の以前に発行された特許出願(例えば、特許文献3、特許文献4および特許文献5)に論じられ、高い磁化率を有する磁界および磁性マーカが用いられる。手持ち式プローブによって、磁気感応性マーカを励磁する交番磁界が生じ、対応する磁界が検出される。このアプローチは、より深い感知に有効であり、RFアプローチの欠点を回避する。しかしながら、これらのシステムは、強磁性外科ツールまたは他の金属性移植装置のようなプローブの近傍の任意の磁気感応性物質を検出するであろう。このことは、効果的な動作のためには、非強磁性の外科手術用器具と共に使用し、他の金属性の移植可能異物から遠ざける必要があることを意味する。さらに、そのようなプローブは、乳癌におけるセンチネルノード検出に使用される鉄酸化物ナノ粒子懸濁液に反応しうる。
【0007】
したがって、病変マーカを他の磁気感応性物質と区別できる検出システムと共に、病変を位置決定するのに必要な以下の全ての特性を有するマーカおよび検出システムを提供することが課題であることが示されてきた:小さいサイズ(<10mm長)のマーカ;小さい針(例えば16g~18g)を介してマーカを供給できること;手持ち式プローブを用いてマーカを検出できること;および、移植および外科的除去のための頑丈さ。
【0008】
電子商品監視(EAS)のリモートフィールドにおいて、磁性検出の信号対雑音比(SNR)を改良し、他の物質の存在下で検出の特異性を改良する技術が知られている。例えば特許文献6には、共鳴周波数において応答を生じる磁気ひずみ強磁性物質のストリップを用いたタグが記載される。他のタグは、磁気音響共鳴または磁性物質の他の線形特性を用いる。しかしながら、これらのマーカは通常、移植可能マーカについて許容できる長さを十分に超えて、少なくとも30~40mmの最小長さを必要とし、低~中インタロゲーションフィールド(interrogation fields)において測定可能な反応を生じる。
【0009】
Humphreyの特許文献7には、電子商品監視システムの一部として磁性曲線において大きいバルクハウゼン不連続性を有する非晶質ワイヤの使用が開示される。これらの「大きいバルクハウゼンジャンプ」(LBJ)物質は、ワイヤの瞬間磁気分極に対向する磁界強さが所定の閾値を超える外部磁界によって励磁される場合に、磁気分極の急速反転を受ける。したがって、この物質は、2つの磁気分極状態の間で反転する、双安定行動を示す。磁化のそれぞれの反転によって、高調波成分を有する磁気パルスが生じる。高調波の特性および数が測定されて、他の物質からマーカを同定する(数十の高調波まで)。マーカの最適な長さは、2.5~10cmの長さとして記載され、ここでも移植可能マーカに必要な長さから実質的に外れる。このアプローチは、強い磁気応答を生じる単一片の物質を含むという利点を有する。
【0010】
非特許文献1には、ここでも大きいバルクハウゼンジャンプタイプの双安定行動を利用して、特に外部場を与えることにより磁気的に検出できるインプラントとして、医療用のガラスコーティングされた非晶質マイクロワイヤが記載される。機能的感知のために40mm長さのワイヤ片が必要であると結論付けられる。
【0011】
しかしながら、この双安定行動が見られるためには、2つの基準が満たされる必要がある:ワイヤの長さは、「基準長さ」の値を超えなければならず、これは多くのマイクロワイヤについて、通常>25mmである;磁場は、閾値「スイッチングフィールド」HSWを超えなければならない。さらに、双安定行動は、3kHz未満の周波数で良好に作用する。
【0012】
Von Gutfeldの特許文献8には、放射線療法をガイドするために腫瘍をマークするための非線形応答による磁気ワイヤの使用が記載される。マーカは、磁性曲線の非線形領域中に追い込まれる鉄物質、または、双安定行動を示すように動かされる双安定LBJワイヤのいずれかを含む。このアプローチは、マーカを非線形行動に追い込むのに十分高い磁場を生成するための大きいコイルを有する、患者の周りの大きい外部装置を必要とする。そのような装置は、癌の外科手術中に手術部位を分かりにくくするであろう。
【0013】
これらの条件によって、従来技術に記載されるこの大きいバルクハウゼンジャンプ行動は、以下の理由により病変位置決定マーカとしての使用に不適切なものとなる:
・ほとんどのそのような物質の大きいバルクハウゼンジャンプに必要な臨界長さは、5~10mm超であり、これは、わずかに数ミリメートルの大きさである小さい病変を便宜にマークするには大きすぎる。
・スイッチングフィールドは、双安定行動を推進するために閾値を超えなければならない。商品監視用途において、大面積の励磁および感知コイルを、小さいワイヤの存在を1メートル以上の範囲から検出できるようにする大きい磁場を生じる数十センチメートル範囲の直径で使用してもよい。しかしながら、外科用ガイダンスのためには、手持ち式またはロボットによりガイドされる検出プローブを介してマーカのずっと正確な位置決定が必要である。これによって、検出コイルのサイズは通常、20mm直径未満に制限され、したがって、マーカを検出できる距離が制限される。検出の感度はさらに、コイルからの距離の二次(近距離場)または三次(遠距離場)に従って減少する。駆動フィールドもプローブ中に生じる場合、検出能力は、プローブからの距離により四次または六次ごとに減少する。したがって、特許文献7は0.6-4.5Oe(0.06~0.45mT)のスイッチングフィールドで励磁可能なEASマーカを開示し、特許文献8は少なくとも1Oeのスイッチングフィールドによるものを開示するのに対し、手持ち式プローブから約40mmで生成可能な磁場は、電流、電圧、電力および温度範囲の制限が考慮される、すなわち強度が1~2段階低い場合、0.5×10-3~0.05Oe(0.05~5μT)の範囲である。
・いくつかのLBJ物質について、LBJ応答が開始する磁場は、周波数と共に増加する、すなわち、より高い周波数でワイヤがより励磁し難くなる。この理由のため、従来技術は、周波数を3kHzより低く、好ましくは1kHzよりずっと低く指定する。このことは、検出される非常に小さい磁場から信号対雑音比を最大化するために多くのサイクルに亘ってシグナルを平均化することが所望である外科用ガイダンスには所望でない。より高い周波数によって、ラグまたは遅れを有するように見えるユーザへの平均化フィードバック応答なく、より多くの平均化が可能となる。
【0014】
EASシステムのさらなる欠点は、マーカワイヤからの応答の異方性が大きいことであり、これは、軸方向における応答が横断方向における応答よりもはるかに大きいことを意味する。EAS用途において、このことは問題を提起するものではない、なぜならば、システムは検出器からの距離ではなくマーカの存在を感知する必要があるのみであり、したがって、そのように大きいコイルおよび高い磁場強度によって十分なEAS検出が可能となるからである。しかしながら、手持ち式プローブを用いた外科用ガイダンスにおいて、アプローチの方向に依存して変化する応答は、ユーザにとって紛らわしい、なぜならば、マーカは、アプローチの位置付けに依存してプローブから異なる距離となるように見えるからである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【文献】米国特許出願公開第2017/252124号明細書
【文献】米国特許出願公開第2015/264891号明細書
【文献】国際公開第2011/067576号
【文献】国際公開第2014/032235号
【文献】国際公開第2014/140567号
【文献】米国特許第4510489号明細書
【文献】米国特許第4660025号明細書
【文献】米国特許第6230038号明細書
【非特許文献】
【0016】
【文献】Utilizing Magnetic Microwires For Sensing In Biological Applications, Jnl. of Elec. Eng.,VOL66.NO7/s,2015,161-163
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
したがって、病変マーカを他の磁気応答性物質と区別できるシステムと共に、病変を位置決定するためのマーカの以下を含む全ての要求を満たす移植可能マーカを提供することが依然として必要とされる:小さいサイズ(<10mm長);小さい針(例えば16g~18g)を介して供給できること;比較的高い周波数(>1kHz)を使用する手持ち式プローブを用いて検出できること;任意の検出方向から実質的に均一な応答を提供できること;および、移植および外科的除去のために頑丈であること。本発明は、この必要性に対応することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明の第1の態様に従えば、以下を含む、マーカを位置決定するための検出システムが提供される:
少なくとも1つの移植可能マーカであって、磁性曲線において大きいバルクハウゼンジャンプ(LBJ)を示す少なくとも一片の磁性物質を含む移植可能マーカ;
交番磁界によりマーカを励磁するよう配置される少なくとも1つの駆動コイルおよび励磁されたマーカから受け取られる信号を検出するよう配置される少なくとも1つの感知コイル;
少なくとも1つの駆動コイルを介して交番磁界を駆動するよう配置された磁界ジェネレータ;および
感知コイルからの信号を受け取り、受け取られた信号中の駆動周波数の1つ以上の高調波を検出するよう配置された少なくとも1つの検出器であって、少なくとも1つの駆動コイルが、マーカのLBJ物質の双安定スイッチング行動の開始に必要なスイッチングフィールド以下にマーカを励磁する、検出器。
【0019】
LBJ物質としても知られる大きいバルクハウゼンジャンプ物質、双安定スイッチング物質または磁性曲線において大きい不連続変化を有する物質は、当該物質の瞬間分極に対向する磁界強度が所定の閾値、スイッチングフィールドHSWを超える外部磁界により励磁されると、磁気分極の急速反転を受ける(「双安定スイッチング」行動)。本発明において、マーカは、励磁界が「スイッチングフィールド」のものより低い場合でも測定可能調波応答を感知させるLBJ物質のための励磁の「サブ-双安定」モードを利用する。
【0020】
概して、この双安定スイッチング行動はまた、臨界長さの物質長さを必要とする。検出システムの移植可能マーカは、好ましくは、この急速反転に必要とされる臨界長さ以下、概して<25mm、好ましくは<10mm、特に<5mmで提供され、これは、使いやすい移植およびより小さい病変のマーキングのためのマーカのサイズを低減するために好ましい。マーカは、LBJ物質の長さが双安定モードに達するための「臨界長さ」以下である場合でも測定可能調波応答を感知させるLBJ物質のための「サブ-双安定」モードを利用する。
【0021】
好ましくは、マーカは、体内に移植される物質の量が最小限になるように5mg未満のLBJ物質を含む。この物質は、ワイヤの形態で提供されてもよい。そのような物質の例には、鉄分-、コバルト分-およびニッケル分-の多いガラスコーティング非晶質マイクロワイヤ、鉄-シリコン-ホウ素を主成分とする非晶質マイクロワイヤ、および/またはバルク金属ガラスワイヤが含まれるがこれらに限定されず、内部でLBJ応答が励磁できる任意の物質が適切でありうる。ワイヤは、コーティングされてもよい、および/または中空管内で提供されてもよい、および/または最初のコンパクトな構成から拡張され展開された構成へ展開可能でもよい。好ましくは、マーカは、マーカの移植に関連する傷と痛みを最小限にするために、2mm未満の内径を有する針から展開可能である。
【0022】
本発明で使用するためのマーカは、好ましくは、体内に移植されると、交番磁界によりインテロゲートされる際のマーカからの調波応答の強度が、マーカに関して任意の方向から測定される際と実質的に同じであるように構成される、すなわち、マーカは、均一の磁性応答を提供し、プローブとマーカとの間の距離の測定を可能とするように、感知の任意の方向において同様の磁気双極子を提供する。好ましくは、マーカは、展開されるマーカの最大寸法の少なくとも50%の磁気双極子長さを有するワイヤフォーム形状を有する。
【0023】
マーカの任意の方向からの均一な調波応答は、いくつかのマーカの異なる構成により達成されうる。例えば、マーカは、3つの直交軸x、yおよびzに沿って提供されるLBJ磁性物質の長さを有してもよい。マーカは、各方向において物質の長さを提供するように異なる構成に曲げられてもよい、または、別々の長さをつなげて有してもよい。好ましくは、異なる長さの間の角度は、60°~120°、より好ましくは90~110°である。マーカが最初のコンパクトな構成から拡張され展開された構成へ展開可能である実施形態において、任意の方向からの均一な調波応答を提供するのは後者の構成である。
【0024】
検出システムは好ましくは、受け取った調波信号を処理し、感知コイルと相対的なマーカの位置決定に関してユーザに少なくとも1つの標識を提供するための出力モジュールを有し、指標は例えば、感知コイルに関してマーカの近傍、距離、方向または位置を示す。
【0025】
より好ましくは、システムは、例えば1つ以上の奇数次高調波(例えば、第3および第5)、偶数次高調波(例えば、第2、第4および第6)または両方の組合せの大きさ、あるいはこれらの高調波の互いにまたは基本周波数に対する比率のような、マーカの高調波応答の1つ以上の態様を処理する。感知された信号を強調するために適切なフィルタを提供してもよい。
【0026】
出力モジュールは、画像表示または音源を備えてもよい。
【0027】
本発明のこの態様の好ましい実施形態において、ユーザのためのシステムのセットアップを単純化するために、駆動コイルおよび感知コイルの両方が手持ち式プローブ中に提供される。
【0028】
あるいは、感知コイルのみが手持ち式プローブ中に提供されてもよい。この実施形態において、増加した磁界がマーカ部位において生成されるように、より大きい駆動コイルをプローブの外部に提供してもよい。例えば、駆動コイルは、患者の近くまたは下に配置するためのパッド内に提供されてもよい。
【0029】
本発明の第2の態様によれば、移植可能マーカを検出する方法が提供され、移植可能マーカは、磁性曲線において大きいバルクハウゼンジャンプ(LBJ)を示す少なくとも一片の磁性物質を含み、この方法は、以下の工程を含む:マーカのLBJ物質の双安定スイッチング行動を開始するのに必要なスイッチングフィールド以下の大きさの磁場である、マーカを励磁するためにマーカに交番磁場を適用する工程;および、スイッチングフィールド以下のマーカの磁性の変化により生じる、励磁されたマーカから受け取る信号の駆動周波数の1つ以上の高調波を検出する工程。
【0030】
スイッチングフィールド以下にマーカを励磁するための交番磁界の適用によって、マーカについて検出されるサブ-双安定応答が生じる。
【0031】
好ましくは、駆動周波数は1kHzより上であり、好ましくは1~100kHzであり、特に10~40kHzである。
【0032】
本発明の方法は好ましくは、マーカの位置に関して出力を提供するための、マーカの高調波応答の態様を測定する工程を含む。例えば、これは、1つ以上の奇数次高調波、偶数次高調波または両方の組合せの振幅、これらの高調波の互いにまたは基本周波数に対する比率であってもよい。この方法により提供される出力を強調するために、適切な信号のフィルタリングまたは処理を提供してもよい。
【0033】
各マーカの高調波応答が他と区別できるように、いくつかの異なる長さおよび/または構成のマーカが本発明の方法において使用されうる。
【0034】
本発明をよりよく理解するために、および本発明がどのように実行に移されるかをより明確に示すために、ほんの一例として、添付の図面が参照される。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【
図1A】従来技術に従った、LBJワイヤについての磁性曲線
【
図1B】正弦場により励磁された際の
図1AのLBJワイヤのタイムドメイン応答
【
図2】異なる大きさの励磁場によってLBJワイヤについてサブ-双安定および双安定行動を調べるために使用される構成要素
【
図3A】両対数および対数線形スケールで示される、100Hz励磁場の大きさが増加した際のLBJワイヤからの第3の高調波(H3)応答(任意単位)
【
図3B】正弦波により駆動された際の、
図3Aの上のグラフ中の点Aにおけるサブ-双安定領域中のタイムドメイン応答
【
図3C】正弦波により駆動された際の、
図3Aのグラフ中の点Bにおける双安定領域中のタイムドメイン応答
【
図3D】100Hz励磁周波数におけるサブ-双安定および双安定スイッチングモード中のLBJワイヤからの周波数領域応答
【
図4】10kHz励磁周波数におけるサブ-双安定および双安定スイッチングモード中の代替的なLBJワイヤからの周波数領域応答、および、周波数領域曲線中の点Aにおける同じワイヤについてのタイムドメイン応答
【
図5】励磁場の周波数が増加するにしたがって応答が増加することを示す、物質の臨界長さが約40mmであり、マーカの長さが3mmである場合の、コバルト-鉄非晶質LBJマイクロワイヤからの第3の高調波応答
【
図6A】励磁場が100Hzで強調される際の、LBJワイヤと比較した通常の非晶質金属ワイヤからの第3の高調波(H3)応答
【
図6B】
図6Aのグラフ中の点Cにおける非LBJの通常の非晶質金属ワイヤからのタイムドメイン応答
【
図7】本発明に従った検出システムのある実施形態の説明図
【
図8】本発明のある実施形態に従った磁性検出システムのブロック図
【
図9A】本発明と共に使用するマーカのためのさまざまの構成
【
図9B】本発明と共に使用するマーカのためのさまざまの構成
【
図9C】本発明と共に使用するマーカのためのさまざまの構成
【
図9D】本発明と共に使用するマーカのためのさまざまの構成
【
図9E】本発明と共に使用するマーカのためのさまざまの構成
【
図9F】本発明と共に使用するマーカのためのさまざまの構成
【
図9G】本発明と共に使用するマーカのためのさまざまの構成
【
図9H】本発明と共に使用するマーカのためのさまざまの構成
【
図9I】本発明と共に使用するマーカのためのさまざまの構成
【
図10】
図9Hのマーカについての三脚の脚の角度による最大から最小への磁性マーカ応答の比率の変化
【
図11】主要な寸法が感知の方向でワイヤの最長の限界であることを特定するために調べられた、本発明と共に使用するためのマーカの3つの形状の説明図
【
図12F】本発明と共に使用するための、プラスチック製の変形可能なマーカ
【
図13A】検出プローブに関して異なる位置付けの範囲における
図9Gのマーカからカーブした多くの第3の高調波応答
【
図13B】
図13Aのグラフを生成するためにテストされた検出プローブに関するマーカの位置
【
図14】本発明に従った検出システムの別の実施形態の説明図
【発明を実施するための形態】
【0036】
本発明は、体内の標的部位をマーキングするために移植でき、その後手持ち式プローブを用いて位置決定できる磁性マーカに関する。本発明は、体内の移植されたマーカの位置を位置決定するための検出システムおよび方法を提供する。
【0037】
マーカは、体内のマーキングを必要とする部位に移植されうる。これは、例えば、腫瘍または他の病変あるいは軟組織中の所望の部位でもよい。良性の病変、癌性の病変およびリンパ節が例として挙げられるがこれらに限定されない。マーカは病変の内部または近くに配置されてもよく、あるいは、複数のマーカが、例えば軟組織肉腫の縁のような、手術部位の縁または周をマーキングするように配置されてもよい。
【0038】
本発明の検出システムおよび方法は、従来認識されてこなかった、LBJ物質のための異なるモードの励磁を利用する。本発明者は、驚くべきことに、ワイヤの長さが「臨界長さ」以下であり励磁界が「スイッチングフィールド」以下である場合でも、マーカ中に組み込まれたLBJ物質について異なるモードの励磁によって測定可能な高調波応答が生じることを発見した。LBJワイヤについて「臨界長さ」および「スイッチングフィールド」の概念は、例えばVazques(A soft magnetic wire for sensor appliations.,J.Phys.D:Appl.Phys.29(1996)939-949)から既知である。さらに、本発明において測定される効果は、より高い励磁周波数において大きさが増加し、3kHzよりずっと高い周波数において作用しうる。この実現によって、病変の部位をマーキングするための移植可能磁性マーカを使用した従来のシステムより優れた特性を有する、新しいタイプの検出システムが提供される。
【0039】
本発明は、LBJ物質の既知の双安定行動に加えて、従来未確認であった「サブ-双安定」行動の本発明者の認識および利用に基づく。
【0040】
図1Aにおける磁性曲線は、従来技術のLBJワイヤ(特許文献7)についてのものである。これは、「25」により示されるスイッチングフィールドを超えた際に大きさの特性反転を示す。十分に高い場により励磁されると、特性パルスがタイムドメインに見られる(
図1B参照)。パルスはときに、正弦波上に重ねられることが報告され、これは、駆動信号が完全にノイズ除去されていない場合に見られる。磁性曲線に従って、スイッチングフィールド25よりも低い励磁場、Hが、「24」から「25」まで移動する効果を除いて、大きさBにほとんどまたは全く変化を生じず、大きさにおいて小さい変化であるがBの極性において全く変化がない。
【0041】
本発明者は、この曲線が、交番磁界に配置される際にLBJ物質の行動を完全には示さないことを発見した。例えば、臨界長さを超える一片のコバルト-鉄非晶質LBJマイクロワイヤが、
図1Aにおける配置に従って100Hzで交番磁界により励磁されると、第3の高調波(H3)応答が
図3Aに示される。ここでH3は、マーカ応答の調和性を表すものと取られる。H3応答がノイズと区別可能であると、励磁界との概して線形の関係において増加する。このことは、スイッチングフィールドに達するまで続き、この点においては双安定スイッチングが開始すると応答が強度において大きく増加する。臨界長さを超える長さのLBJワイヤが正常に特定可能であるのはこの点である。対数線形および両対数スケールによって、モード中の変化が明確に示される。しかしながら、
図3Aは、「サブ-双安定」モードを用いることにより、双安定行動に必要なスイッチングフィールドよりも磁場が約2桁低い場合でもマーカが検出できる。これは、所定の駆動磁場について、マーカがプローブからはるかに離れた距離で検出できることを意味する。z
【0042】
図2は、異なる大きさの励磁場を用いたLBJについてのサブ-双安定および双安定行動の調査に使用される構成要素を示す。
図3Aは、両対数および対数線形スケールの両方で示される、100Hzの励磁場の大きさが増加する際のLBJからの第3の高調波(H3)応答(任意単位)を示す。
【0043】
図3Bは、正弦波により駆動される際のサブ-双安定領域におけるタイムドメイン応答を示す。磁性が反転する際に典型的な短いパルスを示す双安定タイムドメイン応答と対照的に、変形した正弦波として見られる(
図3C参照)。周波数領域において、従来技術において見られる双安定モードの豊富な高調波は、サブ-双安定モードのより少ない高調波と対照的である(
図3D参照)。しかしながら、そのような高調波応答は、非-双安定非晶質ワイヤからの応答よりも依然として豊富であり、本発明者は驚くべきことに、ワイヤの長さが「臨界長さ」以下であり励磁場が「スイッチングフィールド」以下である場合でもこの応答を用いてマーカを正確に同定できることを発見した。
【0044】
同様の行動はまた、数マイクロメートルの臨界長さを有するガラスコーティングマイクロワイヤを含む、他のLBJワイヤについても観察された。
図4は、10kHzの励磁周波数において「サブ-双安定」および双安定スイッチングモードにおける別のLBJワイヤからの周波数ドメイン応答、および周波数ドメイン曲線中の位置Aにおける同じワイヤについてのタイムドメイン応答を示す。ワイヤは、
図2の同じ実験配置を用いて10kHzにおいて励磁される3mm長さのガラスコーティングマイクロワイヤ(内径15μm、外径32μm)である。
【0045】
同様の「サブ-双安定」応答はまた、臨界長さより短いワイヤを用いても見られる。例えば、
図5は、物質の臨界長さが約40mmであり、マーカ中のマイクロワイヤの長さが3mmである、一片のコバルト-鉄非晶質LBJマイクロワイヤからの応答を示す。したがってマーカは、双安定行動を示すには小さすぎる。しかしながら、サブ-双安定高調波応答は示され、H3応答の大きさは少なくとも10kHzまでの周波数の増加と共に増加する。
【0046】
当該技術において、LBJ磁性曲線を有しない多くの鉄および非晶質磁性物質が、十分に高い場で励磁されると高調波応答を生じうる。しかしながら、ここで同定されるサブ-双安定効果は、「非-LBJ」物質では見られない。したがって、マーカが少なくともある程度のLBJ物質を含むことが本発明の要件である。
図6Aは、
図3Aに示されるLBJワイヤを、磁性曲線においてLBJを有しない同様の形状の非晶質金属と比較する。ここで、低い磁場における応答は、LBJワイヤからのサブ-双安定応答よりも1~2桁小さい。さらに、スイッチングフィールドにおける行動の急な変化は、非-LBJワイヤでは見られず、より低い駆動フィールドでは、ノイズと区別されるには応答が小さすぎる。これによって、プローブから少し離れてマーカが検出されることが制限される。
【0047】
図6A中の点Cにおいて見られるタイムドメイン応答は、
図6Bに示される。双安定行動は明らかになく、
図3Cの特性パルスも見られない。
【0048】
したがって、本発明は、その後の手術のために体内の組織部位をマーキングするよう配置される大きいバルクハウゼンジャンプ物質(LBJ)の少なくとも一片を含む移植可能磁性マーカ、およびマーカを励磁するための駆動コイルを含む磁性検出システムを必要とする。システムは、マーカの双安定スイッチングのためにスイッチングフィールド以下の交番磁界を用いて駆動コイルがマーカを励磁する際に、マーカが検出および位置決定されるのを可能にする高調波応答が生じる点を特徴とする。
【0049】
添付図面の
図7は、本発明に従った検出システムおよびマーカの実施形態の説明図を示す。検出システム1は、親機4に連結されたプローブ2を有する。プローブは、交番磁界を生じて磁性マーカ6を励磁する1つ以上の駆動コイルを有する。マーカは、大きいバルクハウゼンジャンプ物質、LBJ物質、双安定スイッチング物質または磁性曲線において大きい不連続変化を有する物質としても知られる、磁性曲線において大きいバルクハウゼン不連続性を有する少なくとも一片の磁性マーカ物質を含む。所定の長さの瞬間磁気分極に対向するフィールド強度が所定の閾値、スイッチングフィールドH
SWを超える外部磁界にLBJ物質が暴露されると磁気極性は急速反転を受ける。磁性のこの反転によって、高調波成分の多い磁気パルスが生じる。従来、マーカは、磁化が有意な高調波応答を受けるのに必要な完全な双安定転移または「フリッピング(flipping)」行動を受けうる、いわゆる「臨界長さ」を超える寸法とされている。しかしながら、本発明者は、高調波応答が、臨界長さより著しく低いおよび/またはスイッチングフィールドH
SWより低いマーカから得ることができ、このことは移植可能マーカの位置決定に使用するために有利であることを発見した。
【0050】
高調波アプローチによって、浮遊磁場、組織からの反磁性応答、および渦電流のような基本周波数においてノイズの供給源に比較的影響を受けずにマーカの検出が可能となる。
【0051】
検出システムのプローブ2はさらに、マーカの磁性の変化により生じる磁場中の変化を検出するように配置される1つ以上の感知コイルを含む。
【0052】
任意の典型的な病変または所定の部位におけるマーカを検出するために、プローブは、少なくとも30mm、好ましくは40mm超およびより好ましくは50mm超の検出深さを有しなければならない。理想的には、プローブは、マーカに接近する方向に関わらず同じ大きさの応答を与える。これは、プローブに関するマーカの位置で外科医に一貫したフィードバックを提供するためである。
【0053】
添付図面の
図8は、本発明の実施形態に従った磁性検出システム10のブロック図を示す。例えばオシレータまたは波形ジェネレータ(f
Dは0.5~30kHZ)のような周波数ジェネレータ100は、好ましくは、1つ以上の駆動コイル102を励磁する正弦交番信号を生じる。正弦信号は、感知コイルが偽の高調波信号を検出しないように、駆動フィールド中の高調波成分を最小化する。1つ以上の駆動コイルは、少なくとも一片の大きいバルクハウゼンジャンプ物質(LBJ)を有する磁性マーカ6を含む組織中に交番磁界を生成する。
【0054】
交番磁界によりマーカ6を励磁し、マーカの磁性により、磁場中に高調波要素が生成される。マーカの配置に依存して、高調波は、奇数次高調波(第3、第5、第7など)または偶数次高調波(第2、第4、ダイ6など)または偶数次および奇数次高調波の両方の組合せでもよい。マーカは、1つ以上の高調波周波数の大きさを直接測定することにより、または1つ以上の高調波の他に対するまたは基礎周波数の大きさに対する比率を測定することにより、検出される。
【0055】
マーカからの応答は、感知電圧または電流を生成するための1つ以上の感知コイル104により検出される。好ましくは、感知コイルは手持ち式またはロボットプローブである。広域またはノッチフィルタ106を配置し、駆動周波数において感知信号の少なくとも構成要素をノイズ除去または軽減してもよく、それによって、生じた信号は、駆動周波数において最小のコンテントを有し、かつ、信号のより高次の高調波構成要素、例えば、2次、3次、4次、5次または7次高調波またはこれらの組合せを有する。フィルタは、例えばキャパシタ、誘導原およびレジスタのような既知の配置を有するパッシブLCRタイプフィルタ、あるいは、例えば1つ以上のオペアンプ(op-amp)に基づく既知の配置を有するアクティブフィルタの形態を取ってもよい。
【0056】
フィルタ処理した信号を、信号の1つ以上の高調波成分を増幅し信号110をプローブからマーカまでの距離の単位に換算する、高調波検出回路108に供給してもよい。ユーザディスプレイおよび音源112は、例えばマーカの近さまたは磁性信号の強さを示す視覚および聴覚出力をユーザに提供する。システムは、マーカの近さ、サイズ、マーカまでの距離、方向または位置、あるいはこれらの組合せを示しうる。
【0057】
駆動コイル102からの駆動信号を、フィルタ101により電気的にフィルタ処理し、交番磁界が所望の励磁または駆動周波数において一次的であるように、駆動信号の任意の高調波部分を軽減してもよい。このことは、高調波応答と誤って解釈されうる、より高い周波数での偽応答を避けるのに役立つ。所望であれば、100以上の駆動周波数を加えて、異なる時間に異なる周波数が生じるように、重ね合わせ/変調によりまたは信号の多重化により、より複雑な磁性信号を生成してもよい。
【0058】
駆動周波数は、100Hz~100kHzの範囲内でもよい。100kHzに向かうより高い周波数は、感知された信号を最大化するのに有利である(
図1g参照)。より高い周波数によってまた、ユーザに「リアルタイム」の出力を供給する、すなわち10秒ごとに少なくとも10回出力信号をアップデートしながら、1秒ごとにより多くのサイクルが検出中にノイズ抑圧の改良に有利となる。したがって、ノイズ抑圧のために、少なくとも1000Hzおよび好ましくは少なくとも10kHzの周波数が所望である。ユーザに明らかな「リアルタイム」応答を与えるために、出力は、少なくとも0.1秒ごとにアップデートされる必要がある。1kHzの周波数によって、ユーザへの各アップデート間に平均して100サイクルが可能となり、10kHzによって、ユーザへの各アップデート間に平均して1000サイクルが可能となる。
【0059】
より低い駆動周波数からも利点が得られ、これには、マーカ中(例えば高い伝導率を有する場合に渦電流になる傾向がある場合)および周囲組織からの渦電流損失の低減が含まれる。渦電流損失の低減のために、30kHz未満の周波数が有利である。また、手術室環境において、電磁妨害信号が100kHz長の周波数においてより頻繁に見られ、したがって、所望の高調波が100kHz未満になるように駆動周波数を選択することが有利でありうる。
【0060】
上述のように、本発明の第1の態様に従った検出システムのマーカはそれぞれ、磁性曲線中の大きいバルクハウゼン不連続により生じる交番磁界への高調波または非線形応答を生じる1つ以上の長さの物質(「磁性マーカ物質」)を含む。そのような物質の例には、鉄分-、コバルト分-およびニッケル分-の多いガラスコーティング非晶質マイクロワイヤ、鉄-シリコン-ホウ素を主成分とする非晶質マイクロワイヤ、鉄-コバルトを主成分とする非晶質マイクロワイヤ、およびバルク金属ガラスワイヤが含まれる。
【0061】
図9A~9Hに図示されるマーカの例は、交番磁界への高調波応答が、例えば単一のストレート長さのマーカ物質のものよりも任意の所定の方向からより均一であり、したがって、プローブを用いる外科医によってより容易に位置決定できるマーカを提供するように、配置される。
【0062】
図9Aにおいて、マーカ6は、テトラへドロンの3つまたは4つの縁部6a、6b、6cを描くように曲げられた所定の長さの磁性マーカ物質を含む。そのようにすることにより、マーカの高調波信号応答は、感知の任意の所定の方向からより均一である。さらなる態様において、曲がり6dの半径は、展開前にマーカがより容易に外管にパックできるようにより大きくてもよい。
【0063】
図9Bにおいて、マーカは、円6eの一部に曲げられる所定長さの磁性マーカ物質を含み、6fの一端が中心に向かって半径方向に曲げられ、その後90°で実質的に曲げられて円の軸に沿って部分6gを形成する。
【0064】
図9Cにおいて、マーカ6は、3つの直交軸x、yおよびzに沿って配置される所定長さの磁性マーカ物質を含み、「ジャック」の形状を形成する。
【0065】
図9Dにおいて、マーカは、直線の中央部分6h、および、それぞれ各端部で互いにかつ中央部分から直行して曲がった2つのさらなる部分6i、6jを有する所定長さの磁性マーカ物質を含む。さらなる態様において、曲がり6kの半径は、外管中により容易にマーカが挿入されるようにより大きくてもよい。
【0066】
図9Eにおいて、マーカ6は、円形の定常波の形状で所定長さの磁性マーカ物質を含む、すなわち、均一の波形状に形成され、次いで端部を連結するように丸くされて平面図において円を形成する。
【0067】
図9Fにおいて、マーカは、連結されたまたは互いに近接するが連結されない、ワイヤ端部6оを有する楕円形または長円形の長さの磁性マーカ物質6nを含む。長軸の端部において楕円または長円の2つの部分が、楕円の平面の約90°に曲げられる。曲げられた部分は、楕円または長円の面積の約四分の一~約三分の一を有する。
【0068】
図9Gにおいて、マーカは、互いに直交して配置されて実質的に直交三脚または立方形の頂点を形成する、磁性マーカ物質の3つの長さ6t、6u、6vを有する。3つの長さは、連結部6wによって連結され、これによって、展開前に長さが互いに平行に位置し、次いで再配置されて直交三脚を形成することが可能となる。
【0069】
図9Hにおいて、マーカは、三脚の脚の間に非直交角度を有する三脚を形成するように配置される3つの長さの磁性マーカ物質6x、6y、6zを有する。3つの長さは、連結部6wによって連結され、これによって、展開前に長さが互いに平行に位置し、次いで再配置されて三脚を形成することが可能となる。
【0070】
図9Iにおいて、マーカは、自身の生物適合性バリア7内に、3つの長さの磁性物質6x’、6y’、6z’を有する。三脚は、管から構築され、頂部において完結し、3つの部分的な骨組み脚が三脚を形成し、その内部で3つの脚が保持される。
【0071】
好ましくは、脚の間の角度は、高調波磁性応答が任意の方向からできる限り均一となるように選択される。例えば、3つの5mm長さのコバルト-鉄非晶質LBJマイクロワイヤから形成される三脚が以下の表に示される。三脚は、3つの等しい間隔の脚で均一であるが、脚の間の角度は変動し、
図2の配置を用いてテストされる。
【0072】
以下の表1および
図10は、
図9Hのマーカからの磁性高調波応答の最大対最小の比率が、脚の間に含まれる角度φと共に変動する。完全に均一な応答が、比率が1の場合に示されるであろう。表および図は、
図9Hのマーカについての三脚の間の角度による、磁性マーカ応答の最大対最小の比率の変動を示す。図は、角度が60°~110°の範囲内、およびより好ましくは角度が90°~120°である場合に、応答の均一性が最適であることを示す。
【0073】
【0074】
本明細書に記載される実施例における磁性マーカ物質(磁性曲線中で大きいバルクハウゼン不連続性を有する物質から形成される)の長さは、任意の以下の形態を含んでもよい:
a)固体ワイヤの長さ;
b)5~100マイクロメートルのコア直径および0.5~40マイクロメートルのコーティング厚さを有するガラス-コーティングマイクロワイヤ;
c)固体ワイヤまたはガラス-コーティングマイクロワイヤの長さの束;または
d)中空管。
【0075】
図9A~9Iの任意のマーカは、1片以上の磁性マーカ物質、ならびに、磁性マーカ物質の断片を連結または封入してマーカの最終形状を形成する追加物質を有してもよい。マーカは、1つまたは複数の管、あるいは、内部でマーカの磁性物質の長さが保持される別の物質の完全なまたは部分的な骨組みを有してもよい。磁性物質はまた、コーティングされていても、さらなる生物適合性物質内に封入されてもよい。
【0076】
骨組みはまた、展開装置内にある際の初期形状および構成から、マーカが展開装置を離れ組織中にある最終位置への、マーカの展開を助ける作用をしうる。例えば、磁性マーカ物質を含む1つまたは複数の管または骨組みは、ニチノール合金のような生物適合性形状記憶合金を含んでもよく、展開装置を離れ体温に曝されると、物質が形状移行を行い、狭いゲージ針、例えば14g~18g内に適合する展開前形状から、例えば
図9A~9Iのいずれかに記載される最終展開形状へ再構成するように、合金が製造される。
【0077】
さらなる実施例において、磁性マーカ物質を含む1つまたは複数の管は、超塑性ニチノール合金またはばね物質のような生物適合性の弾性的に変形可能な物質を含み、体内で展開されると、例えば物質の弾性によって、狭いゲージ針、例えば14g~18g内に適合する展開前形状から、例えば
図9A~9Iのいずれかに記載される最終展開形状へ弾性的に再構成する。
【0078】
さらなる実施例において、磁性マーカ物質を含む管または骨組みは、hステンレス鋼、チタン、チタン合金または同様のもののような生物適合性の可塑的に変形可能な物質を含み、体内で展開されると、狭いゲージ針、例えば14g~18g内に適合する展開前形状から、例えば
図12Fに記載される最終展開形状へ熱可塑的に変形する。
【0079】
さらに、骨組みは、超音波またはX線またはマンモグラフィ結像の下で視認性を増強する作用をしうる。例えば、骨組みの密度および骨組み内の空間の差は、エコー発生性を増強し、骨組み物質は、内部のマーカ物質よりも大きい物質質量を有する場合、X線視認性を増強する。これは特に、磁性物質が細いワイヤ、例えば、結像で見られる非常に小さい質量またはサイズを有するガラスコーティングマイクロワイヤである場合に、有利である。
【0080】
有利には、マーカはMRIの下で可視であるが、10mm超のマーカを超えて伸長する感受性人工物を形成せず、好ましくは5mm未満でありより好ましくは2mm未満である。マーカの周囲の領域の画像を湾曲し周囲組織を見ることを困難にするので、感受性人工物は所望でない。例えば、マーカから5mm伸長する人工物によって、MRIの下で約10mmの直径の胸の組織の領域は見えづらくなりうる。手術前に腫瘍を縮小するためのネオ-アジュバント(neo-adjuvant)化学療法の工程中、臨床医は、MRIを使用する時間に亘って腫瘍のサイズを観察し、後の外科的切除のために腫瘍をマーキングしたいかもしれない。したがって、人工物によって見えづらくなる腫瘍の容積が最小となるように、人工物の範囲を最小限にすることが重要である。
【0081】
したがってさらなる態様において、検出システムおよび方法は、低質量の磁性合金(10ミリグラム未満、好ましくは5ミリグラム未満およびより好ましくは2ミリグラム未満)および低飽和磁性の合金を組み合わせる磁性マーカ物質から形成されるマーカを用いうる。低質量および低飽和磁性の組合せは、マーカの周りに通常は数mmのオーダーの小さい人工物がMRI上にマーカによって生じることを意味する。
【0082】
以下の表2は、
図11に示される3つのマーカワイヤ形状(直線、湾曲およびU字形)の応答を示し、主要な寸法が感知の方向におけるワイヤの最長範囲であることを示す。方向Aにおいて(
図11参照)、直線のおよび湾曲したサンプルは、湾曲したマーカ中のワイヤの長さがより大きい場合でも、同じ感知距離を有する、なぜならば、各場合において生成される最大磁気双極子は同じでありうるからである。同様に、U字形のサンプルは、方向Aにおいて同じ双極子長さを有するものと同じ距離から検出可能である。
【0083】
方向Bにおいて、この方向における双極子長さは最小であり、感知距離は、3つの全てのサンプルについて概して低減される。しかしながら、湾曲したおよびU字形サンプルについて双極子長さはわずかに増加し、検出能がわずかに改良される。
【0084】
直線のワイヤについて、応答は、双極子からのものと同様に広く形成され、軸の上又は近傍においてより大きい応答を有し(かつより大きい感知距離)、軸を横切る応答はずっと小さい。応答の大きさは、検出フィールドの方向における磁性双極子の長さに関する。ワイヤの軸上において、双極子長さはワイヤ長さと等しく、横方向に、双極子長さは、ずっと小さい、通常10~200マイクロメートルであるワイヤの直径とほぼ等しい。
【0085】
【0086】
さらに、磁性物質の高調波応答は、封入物質中で生成される対向渦電流によって低減されうる。高調波応答の低減は今度は、より大きい距離から検出されるマーカの性能に影響しうる。対向渦電流は、周囲物質の抵抗の増加、例えば、物質の固有抵抗の増加(以下の表3参照)、より薄い壁で囲まれた物質、部分的骨組み、などによって低減される。
【0087】
【0088】
国際公開第2016/193753号(Endomagnetics Limited)には、感知の方向における物質の量が重要な因子であるマーカが開示され、したがって、均一な応答を得るために、任意の方向における物質の量は同様でなければならない、すなわち球形が望ましいことが提案される。これは、検出される特性が物質の堆積磁化率である場合に正しい。しかしながら、本発明において、感知の方向における物質の量は、応答のサイズを予測するものではない。例えば、湾曲したマーカは、直線のマーカよりも方向Aにおいてより多くの物質を有するが、応答は大きくない。本発明において、応答の大きさは、感知の方向において提供されうる最大の磁性双極子長さによって特定される。したがって、本発明のある態様において、方法およびシステムは、均一な磁性応答を提供するように感知の任意の方向において同様の磁性双極子長さを提供する展開されたマーカを用いる。
【0089】
図12A~Fは、展開システム200と共に
図9Aに示される実施例に従ったマーカ6のさらなる詳細を示す。マーカは、外側の管状骨組み8および内側の磁性マーカ物質6を含む。外側の骨組みは、生物適合性を維持するために磁性マーカ物質と体内組織との間にバリアを提供する作用をしうる。したがって、管状の骨組みは通常、生物適合性物質、例えば、ニチノール、チタンまたはポリマーから形成される。生物適合性を維持するために有利には、管状の骨組みの端部は閉鎖される。
【0090】
図12Aは、磁性マーカ物質6の単一の連続断片から形成される磁性マーカを示し、
図12Bは、例えばマーカの組み立てを容易にするために、磁性マーカ物質6の2つ以上の別個の断片から形成される磁性マーカを示す。
【0091】
図12Cは、針202およびプランジャ204を有する展開装置200を示す。使用時、針は、結像ガイダンスの下で標的組織中に挿入される。展開装置は、プランジャが下降すると磁性物質が針の端部から標的組織中へ展開されるように配置される。
【0092】
図12Dは、プランジャ204と共に針202中に
図12Bの磁性マーカ6を含有する展開装置200の遠位端の詳細を示す。磁性マーカは、細長い真っ直ぐな構成であるが、展開時には、骨組み8の弾性または骨組み物質8の形状変化特性、例えばニチノール物質により達成可能な形状記憶のいずれかにより、
図12Bに示される形状に再構成される。
【0093】
図12Eは、展開前にマーカがつぶれた「Z」形状に折り畳まれる、
図12Bのマーカの別の構成を示す。展開時には、
図12Bの構成に再構成される。
【0094】
図12Fは、それぞれが生物適合性バリア内に位置する、磁性物質の2つ以上別個の断片を保持する、可塑的に変形可能な磁性マーカを示す。これらの別個の生物適合性断片を保持する外側の骨組みは、展開時に可塑的に変形されて展開形状を形成することができる。
【0095】
形状変化を有する同様のタイプの骨組みを使用することにより、
図9A~9Iの任意の実施例は、針内に適合するように同様に構成されて、形状変化によって再構成されて
図9A~9Iに示されるように最終マーカ形状を形成することができたことが明らかである。
【0096】
図13Aは、検出プローブに関して異なる位置の範囲において
図9G(直交三脚)のマーカから湾曲した多くの第3の高調波応答を示す。
図13Bは、
図13Aのグラフを生じるためにテストされた検出プローブに関するマーカの位置を示す。異なる位置における応答は、実質的に同様であり、マーカの位置に関係なくプローブからマーカまでの距離を計算することが可能となる。これによってまた、信号レベルが位置または方向によって変化しないので、ユーザにとって混乱する信号が少なくなる。
【0097】
図14は、駆動コイルがプローブ中に位置しないが他の場所、例えば外科手術中に患者の下または近くのパッド300中に別個に配置される、本発明に従った検出システムのさらなる実施形態を示す。コイルは、患者の下または近くに配置されるコイルを含有するパッドの形態でもよい。このように、コイルのサイズは手持ち式プローブのサイズにより制限されず、より大きい直径、例えば100mm~500mmを有して、マーカ部位においてより高い磁場を生成しうる。
【0098】
駆動コイルは、例えば検出器の親機中で、駆動ジェネレータに別個に連結される。
【0099】
本発明は、移植可能マーカのための新規な検出システムおよび方法を提供し、マーカは、双安定スイッチングフィールドよりも低い磁場で励磁されるLBJ磁性物質の少なくとも1つの断片を含有し、任意の方向から測定される生成された高調波によってマーカの位置および方向を特定する。マーカはまた、双安定スイッチング行動を可能とするのに必要なLBJ物質の臨界長さ未満で提供されてもよい。