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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-26
(45)【発行日】2022-11-04
(54)【発明の名称】かくはん用回転体およびかくはん装置
(51)【国際特許分類】
   B01F 27/118 20220101AFI20221027BHJP
   B01F 27/054 20220101ALI20221027BHJP
   B01F 27/072 20220101ALI20221027BHJP
   B01F 27/80 20220101ALI20221027BHJP
【FI】
B01F27/118
B01F27/054
B01F27/072
B01F27/80
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021181864
(22)【出願日】2021-11-08
【審査請求日】2022-04-04
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】521418698
【氏名又は名称】小林 強志
(74)【代理人】
【識別番号】110001184
【氏名又は名称】特許業務法人むつきパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】小林 強志
【審査官】寺▲崎▼ 遥
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3104881(JP,U)
【文献】中国実用新案第210477379(CN,U)
【文献】仏国特許出願公開第01145914(FR,A1)
【文献】英国特許出願公開第00150369(GB,A)
【文献】実開昭48-100476(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01F 27/00-27/96
B28C 5/00-5/48
B28C 7/00-7/16
B44D 3/06
C09D 1/00-201/10
B08B 1/00-17/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
平板状であり、シャフトと接続可能に構成された少なくとも1つの本体部と、
複数の鎖素子を含んで閉ループ状に構成されており、形状の可撓性を有し、前記本体部の外縁側に沿って配置されて当該本体部と連結された少なくとも1つのリンクチェーンと、
を備え、
前記リンクチェーンは、前記本体部の旋回直径に対して4倍以上10倍以下の長さを有しており、前記本体部を回転させた際に遠心力により当該リンクチェーンが前記旋回直径よりも外側に離間して回転するものであって、前記本体部を回転させていない状態では自重により垂れ下がる、
かくはん用回転体。
【請求項2】
平板状であり、シャフトと接続可能に構成されており、前記シャフトの長手方向において離間配置される第1本体部及び第2本体部と、
複数の鎖素子を含んで閉ループ状に構成されており、形状の可撓性を有し、前記第1本体部及び前記第2本体部の外縁側に沿って配置されて当該第1本体部及び前記第2本体部と連結された少なくとも1つのリンクチェーンと、
を備え、
前記リンクチェーンは、前記第1本体部と前記第2本体部との間で交互に折り返すようにして複数の連結箇所で連結されており、当該連結箇所が前記シャフトの軸回りの方向において互い違いの位置であり、
前記リンクチェーンは、前記第1本体部及び前記第2本体部の旋回直径に対して10倍以上20倍以下の長さを有しており、前記第1本体部及び前記第2本体部を回転させた際に遠心力により当該リンクチェーンが前記旋回直径よりも外側に離間して回転するものであって、前記本体部を回転させていない状態では自重により垂れ下がる、
かくはん用回転体。
【請求項3】
前記リンクチェーンは、前記複数の鎖素子を一列に連結し、当該連結された前記複数の鎖素子のうちの一端側の1つの鎖素子と他端側の1つの鎖素子とをチェーン連結環によって連結することで構成されている、
請求項1又は2に記載のかくはん用回転体。
【請求項4】
前記リンクチェーンは、前記本体部の外周側に略等間隔に設けられた複数の穴の各々で連結環を用いて前記本体部と連結されている、
請求項1に記載のかくはん用回転体。
【請求項5】
前記シャフトの長手方向において離間配置される2つの前記本体部を備え、
2つの前記本体部の各々に対して1つずつ前記リンクチェーンが連結された、
請求項1に記載のかくはん用回転体。
【請求項6】
前記リンクチェーンの前記複数の鎖素子の各々は、突起した部分が存在しない曲面状の表面形状を有する、
請求項1~5の何れか1項に記載のかくはん用回転体。
【請求項7】
請求項1~6の何れか1項に記載のかくはん用回転体と、
前記かくはん用回転体を回転させる駆動手段と、
を備えるかくはん装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粉体や流体を撹拌し、混合、分散、溶解の促進等を行うためのかくはん用回転体およびかくはん装置に関し、特に沈澱スラリーの解砕に関する。
【背景技術】
【0002】
特開2017-176902号公報(特許文献1)には、主軸と、主軸に設けられる接続端と、接続端と接続される接続部に設けられるチェーン部材と、を有し、チェーン部材は、主軸の軸方向と交差する方向に関して主軸の一方に配置される第1リンクチェーンと、主軸の他方の側に配置される第2リンクチェーンとを含み、第1リンクチェーン又は第2リンクチェーンの一方が他方の側への傾倒の抑制と缶底からの接触距離を確保するための変位抑制部を有するチェーンミキサーが記載されている。
【0003】
上記のチェーンミキサーは、缶底に滞留する高粘度の沈殿物の撹拌に適したものであるが、旋回直径に対する撹拌能力が比較的小さいと思われる。これに対して、撹拌能力を向上させようとして2本のリンクチェーンをより長くすると、使用時に一方のリンクチェーンが他方のリンクチェーン側へと傾倒して軸振れを生じる可能性がある。また、底面や壁面へ接触する際の打撃力が大きいと考えられる点や、比重の大きい流体や高粘度流体中ではリンクチェーンが十分に開かずに撹拌能力が低下する可能性がある点についても改良の余地がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017-176902号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明に係る具体的態様は、チェーンを用いるかくはん用回転体ないしこれを用いるかくはん装置において、撹拌能力を向上させるとともに接触時の打撃力を低減することを目的の1つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
[1]本発明に係る一態様のかくはん用回転体は、(a)シャフトと、(b)平板状であり、前記シャフトと接続された少なくとも1つの本体部と、(c)複数の鎖素子を含んで閉ループ状に構成されており、形状の可撓性を有し、前記本体部の外縁側に沿って配置されて当該本体部と連結された少なくとも1つのリンクチェーンと、を備え、前記リンクチェーンは、前記本体部の旋回直径に対して4倍以上10倍以下の長さを有しており、前記本体部を回転させた際に遠心力により当該リンクチェーンが前記旋回直径よりも外側に離間して回転するものであって、前記本体部を回転させていない状態では自重により垂れ下がる、かくはん用回転体である。
[2]本発明に係る一態様のかくはん装置は、前記[1]のかくはん用回転体と、当該かくはん用回転体を回転させる駆動手段と、を備えるかくはん装置である。
【0007】
上記構成によれば、チェーンを用いるかくはん用回転体ないしこれを用いるかくはん装置において、撹拌能力を向上させるとともに接触時の打撃力を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第1実施形態のかくはん用回転体の構造を示す説明図であり、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は底面図、(d)は斜め上側からの斜視図である。
図2】かくはん装置の使用状態を示す図であり、容量300リットルの矩形樹脂製容器の底面をさらっている一実施例を示す説明図である。
図3】かくはん装置の使用状態を示す図であり、容量1000リットルのIBC中規模液体輸送コンテナの底辺を、口栓穴からさらっている一実施例を示す説明図である。
図4】かくはん用回転体のリンクチェーンの取り付け直しについて説明するための図である。
図5】実施例のかくはん用回転体の運動状態を示す図であり、(a)は、かくはん部を1段とした実施例1のかくはん用回転体の停止状態図、(b)は、かくはん部を1段とした実施例1のかくはん用回転体の回転状態図、(c)は、かくはん部を2段とした実施例2のかくはん用回転体の停止状態図、(d)は、かくはん部を2段とした実施例2のかくはん用回転体の回転状態図である。
図6】第2実施形態のかくはん用回転体の構造を示す説明図であり、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は底面図、(d)は斜め上側からの斜視図である。
図7】本体部の各穴の位置について説明するための図である。
図8】実施例のかくはん用回転体の運動状態を示す図であり、(a)は、かくはん用回転体の停止状態図、(b)は、かくはん用回転体の回転状態図である。
図9】かくはん用回転体の変形実施例を説明するための図である。
図10】かくはん用回転体の変形実施例を説明するための図である。
図11】かくはん用回転体の変形実施例を説明するための図である。
図12】かくはん用回転体の変形実施例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<第1実施形態>
図1は、本発明を適用した一実施形態のかくはん用回転体の構造を示す説明図であり、詳細には、図1(a)は平面図、図1(b)は正面図、図1(c)は底面図、図1(d)は斜め上側からの斜視図である。
【0010】
各図に示すように、かくはん用回転体は、一方向(図1(b)において上下方向)に延在するシャフト11を中心に、リンクチェーン14が環状に配設されている。シャフト11は、その一端側に雌ネジが加工されており、球面六角ボルト16により本体部12と固定されている。シャフト11は、その長手方向が本体部12の一面に対して略直交するように固定されている。
【0011】
このシャフト11の他端側をモータの出力軸に取り付けることで、図2に示すようなかくはん装置2、あるいは図3に示すようなかくはん装置3を構成することができる。撹拌の際には、撹拌容器に入った被撹拌流体中にかくはん用回転体の全体が浸漬される。モータ等の駆動装置(駆動手段)によってシャフト11に回転力を与えながら撹拌容器の中の粉体や流体中にかくはん用回転体を配置することで、リンクチェーン14のたるみが遠心力により本体部12の周囲に広がり、リンクチェーン14を構成する複数の鎖素子の各々が近傍の粉体や流体を接線方向に射出して、当該射出に伴い旋回するリンクチェーン14の上下方向から粉体や流体が吸入されることで、容器内に沈殿物を吸い上げ、浮遊物を吸い込む効果が得られる。また、かくはん用回転体は、シャフト11へ回転力を与えていない静止状態ではリンクチェーン14が自重により垂れ下がるので、シャフト11へ回転力を与えている旋回時の直径よりも小さな直径の口栓から撹拌容器内にかくはん用回転体の全体を挿入することができる。
【0012】
以下、かくはん用回転体の構成について詳細に説明する。
かくはん部1は、本体部12と、複数の連結環13と、リンクチェーン14を含んで構成されている。リンクチェーン14は、複数の鎖素子を連結してそれらの両端部の各鎖素子をチェーン連結環15によって連結することにより全体として閉ループ状に構成されている。チェーン連結環15は、その一部が開閉可能に構成されている。図示の例では、それぞれが環状に形成された17個の鎖素子が一列に連結され、その一端側の1つの鎖素子と他端側の1つの鎖素子とがチェーン連結環15によって連結されることで、全体として閉ループのリンクチェーン14が構成されている。
【0013】
本実施形態のチェーン連結環15は、各鎖素子と同様な大きさ、形状の環状体であり、その一部が開閉自在に構成されている。なお、チェーン連結環15を用いずに、リンクチェーン14の両端の鎖素子同士が直接的に連結されていてもよいが、チェーン連結環15を用いることで、鎖素子の破損時等における修理や交換が容易になる。
【0014】
かくはん部1を構成する本体部12、連結環13、リンクチェーン14(各鎖素子、チェーン連結環15)は、すべてステンレス材料などの金属を用いて形成されていることが望ましい。廃棄処分する際には分解による分別を必要とせずに、リサイクル材料として売却できるからである。なお、ステンレス以外の材料(非金属材料を含む)が用いられていてもよい。
【0015】
本体部12は、中心にシャフト11を取り付けるための穴(貫通穴)を有する平板状の部材であり、平面視において略円形状に構成されている。なお、本体部12の平面視形状は、略円形状に限られず、矩形状、正多角形状(例えば六角形状)などの形状であってもよい。また、本体部12は、中心から略等距離の各位置に設けられた複数の穴を有する。これらの穴は、各連結環13を通すための穴である。これらの穴は、図示の例のように平面視形状が略円形状であることが望ましいがこれに限定されない。なお、「略等距離」とは製造上の誤差を許容してほぼ等しいという意味であり、具体的には、中心から各穴までの距離が±5%程度の誤差内に収まるという意味である。
【0016】
本体部12の厚さは、シャフト11の直径の6分の1以上~3分の1未満とすることが望ましい。連結環13を本体部12の穴に通しやすくしつつも、変形や摩耗、破断に対する十分な強度を確保し、シャフト11の直径とのバランスも確保できるからである。また、平面視において略円形状とすることで、撹拌時にこの本体部12の外周部が撹拌容器に接触した際の撹拌容器へのダメージをより軽減することができる。
【0017】
また、本体部12に設けられた穴の数と連結環13の数は、例えば図2図3に示したような手持ち式のかくはん装置2、3の場合には、3個~8個に設定することが望ましい。3個以上とすることで本体部12の周囲に沿ってリンクチェーン14を配置しやすくなる。また、8個以下とすることで、各連結環13の間に連結される鎖素子の数を必要十分に確保し、リンクチェーン14全体の可撓性(フレキシブル性)を損ないにくくすることができる。
【0018】
また、これらの穴は、シャフト11の設けられる位置である本体部12の中心から等距離の各位置に均等(対称)に配置されることが望ましい。これにより、撹拌時の軸振れをより軽減することができる。図1に示す実施形態のかくはん用回転体では、本体部12の穴の数及び連結環の数をそれぞれ6個としており、各穴は、シャフト11の位置を中心点として円周方向に略60°ずつの略等間隔で設けられている。そして、各穴に各連結環13が1つずつ設置されている。なお、「略等間隔」とは製造上の誤差を許容してほぼ等しいという意味であり、具体的には、シャフト11の位置を中心点として規定した各穴の位置に対応する角度が60°±5°の誤差内に収まるという意味である。
【0019】
リンクチェーン14は、例えばJIS規格製品のステンレス製の鎖素子を複数連結することで構成することができる。リンクチェーン14を構成する鎖素子の各々としては、例えば線径3mm~5mm程度のものを用いることが望ましい。本実施形態の各鎖素子は、断面形状が略円形状であり、平面視で一方向に長い略O字状の環状体である。なお、各鎖素子の断面形状はこれに限定されないし、環状体としての平面視形状も一方向に長いものでなく、例えば略円形状の環状体であってもよい。各鎖素子は、その表面形状が曲面状であり、突起した部分が存在しないような形状であることが望ましい。
【0020】
また、リンクチェーン14は、本体部12の旋回直径よりも4倍以上10倍以下の全長を有するように構成することが望ましい。ここでいうリンクチェーン14の全長とは、チェーン連結環15を用いる場合であれば、このチェーン連結環15並びに複数の鎖素子を一列に延ばした状態での全長に対応する。また、本体部12の旋回直径とは、本体部12の外縁部が回転時に描く平面視における軌跡の直径に等しい。リンクチェーン14の全長を本体部12の旋回直径よりも少なくとも4倍以上とすることで、リンクチェーン14が本体部12の旋回直径の範囲よりも外側に広がって旋回するので、撹拌能力を高めることができる。また、リンクチェーン14の全長を旋回直径の10倍以下とすることで、リンクチェーン14が旋回時に金属板本体12の内側へと移動してしまうことによる軸振れを防ぎやすくなる。
【0021】
以下に、リンクチェーン14の全長についてさらに詳細に説明する。
リンクチェーン14の全長は、隣り合う連結環13の間を繋ぐ鎖素子の数Mと連結環13の数Nに基づいて決まるものであり、以下の計算式で表すことができる。
鎖素子の合計数=(M-1)×N-1
【0022】
例えば、図1に示す実施形態の場合であれば下記の通りである。
(4個-1個)×6個-1個=17個
【0023】
例えば、線径4mm、ピッチ26mmの鎖素子を17個用い、それらの両端を1つのチェーン連結環15によって連結したリンクチェーン14の場合、その全長は474mm(=26mm×17+4mm+28mm)となる。なお、28mmというのはチェーン連結環15の長さである。本体部12の旋回直径が約100mmであるとすると、リンクチェーン14の全長は本体部12の旋回直径に対して4.74倍となり、上記した好適条件を満たす。
【0024】
比較例として、同条件の鎖素子を前提とし、隣り合う連結環13の間に設けられる鎖素子の数を3個とした場合には、鎖素子の数が11個となり、リンクチェーン14の全長が318mmとなる。本体部12の旋回直径が約100mmであるとすると、リンクチェーン14の全長は本体部12の旋回直径に対して3.18倍となり、上記した好適条件を満たさない。この場合、リンクチェーン14の全長が本体部12の周長(円周)よりも短くなるため、シャフト11を回転させた際に、リンクチェーン14が遠心力で十分に広がることができない。
【0025】
上記のような考察に基づくと、隣り合う連結環13の間に設けられる鎖素子の数は、例えば手持ち式のかくはん装置2、3の場合には、4個~6個とすることが望ましい。一般的な電動工具を用いて構成される手持ち式のかくはん装置2、3は、メーカや機種によって、許容トルクや最高回転速度が異なり、作業者の体格や好みも異なるが、本実施形態のかくはん用回転体は、鎖素子の太さやリンクチェーン14の長さの変更や調達が容易で安価であるため、これらに応じた対応がエンドユーザで可能である。
【0026】
次に、本実施形態のかくはん用回転体による撹拌原理について説明する。
シャフト11に回転力を与えることによりリンクチェーン14のたるみが遠心力によって水平方向に広がり、リンクチェーン14を構成する鎖素子の各々がその凹凸に接触する粉体や流体に遠心力を伝播して放射状に外辺部へ移動する。このとき、旋回運動するリンクチェーン14の最外周部から旋回円の接線方向に射出された流体は、撹拌容器の壁面に達し、壁面が回転軸に平行な場合には、流体は上下方向に分かれ、下方向へ流れた流体は螺旋状の竜巻流とつながり、吸い上げの循環流を形成する。リンクチェーン14により吸い上げられた流体の流れは、螺旋状の上向きの流れとなり、細長く成長して竜巻流を形成し、槽底まで達して、比重の大きい被撹拌流体の沈殿物が連続的に吸い上げられ、効果的な撹拌が実現する。また、リンクチェーン14の最外周部から接線方向に射出された流体は、周囲に比較して流速が速いために、ベルヌーイの定理により、リンクチェーン14の上側で中心近傍の水面から下方向に向かって吸い込み流が連続的に発生する。また、壁面で発生した上方向へ流れた流体は、水面から下方向への吸い込み流とつながり、比重の軽い浮遊物なども沈める吸い込みの循環流を形成する。
【0027】
つまり、本実施形態のかくはん用回転体を用いた撹拌では、沈殿物に対する吸い上げの循環流と、浮遊物に対する吸い込みの循環流という二つの循環流が形成され、二つの流れがかくはん用回転体近傍で出会うことにより、上下に分離している比重の異なる性質の被撹拌流体を、寄せて離す、という理想的な撹拌が可能となる。すなわち、吸い上げの循環流と、吸い込みの循環流のいずれもが外周から中心部に向かって寄せられ、リンクチェーン14の最外周部では射出流により離されるために、水平面で観察した場合にも、寄せて離す、という理想的なかくはん流が可能となる。
【0028】
これに対して、例えば従来の羽根車式かくはん装置では、一方向の軸流のため、例えば手持ち式のかくはん装置では、水流に引き込まれたり引き上げられたりする反動や、回転方向とは逆方向の反動トルクにより、作業者への負荷が大きい。また、容器の底面や壁面に干渉しやすくなることから、容器や羽根車の削りカスによる異物混入などの可能性が考えられる。
【0029】
また、本実施形態のかくはん用回転体は、リンクチェーン14の可撓性(形状のフレキシブル性)により、例えば手持ち式のかくはん装置に適用した場合には、作業者の操作により容器の底面や壁面に積極的にリンクチェーン14を接触させて、沈澱しているペースト状のスラリーを解砕し、あるいは壁面に付着している固形物を剥離するといった使い方が可能となる。リンクチェーン14を構成する鎖素子の各々が全体的に丸みを帯びているため、容器を傷つける心配や削りカスを出してしまう心配が少ないことも利点である。
【0030】
沈殿物を吸い上げると同時に、浮遊物も吸い込み、寄せて離す、という理想的な撹拌流を実現するかくはん用回転体は、容器へ積極的に接触させ得る特性との相乗効果により、とくに手持ち式のかくはん装置の安全性と作業性を大幅に向上させ、多くの産業において応用され、作業時間の短縮や被撹拌流体の品質向上、装置の簡素化に大きく貢献することが期待される。
【0031】
また、本実施形態のかくはん用回転体は、かくはん部1を容器の底に積極的に接触させることが可能なため、従来のかくはん用回転体ではできない使い方として、高粘度のスラリー塊を本体部12で潰すような使い方もできる。
【0032】
また、本実施形態のかくはん用回転体は、例えば固定式のかくはん装置に適用した場合には、リンクチェーン14の長さを変更できる範囲がより広がることから、モータの許容トルクや最高回転速度、被撹拌物の粘度や比重、流動性や撹拌目的に合わせてリンクチェーン14の長さを調節すれば、かくはん用回転体の所要トルクを調節することが可能となる。
【0033】
また、本実施形態のかくはん用回転体は、従来のプロペラ式かくはん体と異なり、吸い上げる上向きの水流と、吸い込む下向きの水流の強さの差が小さいため、例えば手持ち式のかくはん装置に適用した場合でも、作業者の腕には水流に引き込む力や押し上げる力はほとんど作用せず、作業者への負荷が小さいという特徴がある。
【0034】
例えば手持ち式のかくはん装置では、シャフト11に回転力を与えながらリンクチェーン14のたるみを遠心力によって水平方向に広げ、鎖素子を容器の底面や壁面に積極的に接触させることで、容器の底面に沈澱しているペースト状のスラリーを解砕したり、壁面に付着した固形物を剥離したりできるが、リンクチェーン14の自由なたわみ、可撓性と、曲面で構成された鎖素子により、容器を傷めにくいという特徴がある。
【0035】
また、本実施形態のかくはん用回転体は、リンクチェーン14が自重により垂れ下がった停止状態の直径と比較して、シャフト11の回転による遠心力で広がった際のリンクチェーン14の旋回直径が大きくなり、例えば密閉容器の口栓の内径に合わせた直径の場合にも、回転時のかくはん能力は、これまでのかくはん用回転体に比較して大きく向上するという特徴がある。
【0036】
また、本実施形態のかくはん用回転体は、例えば特許文献1のチェーンミキサーに比べ、同じ旋回径で比較した場合に、撹拌力を生み出すリンクチェーン14の鎖素子の数が多く、しかもリンクチェーン14が本体部12の外縁部の外側に配されるため、撹拌能力が高い上に、回り続けようとする慣性モーメントが大きくなり、高比重の砂や、高粘度の糊などの粉体や流体中でも十分に広がるという特徴がある。
【0037】
また、本実施形態のかくはん用回転体は、鋭利なブレードや、手指が入ってしまうような穴や溝を有せず、取り扱い時にもケガをしにくい安全な形状である。
【0038】
また、本実施形態のかくはん用回転体は、リンクチェーン14の可撓性により、収納時や運搬時、洗浄液などに浸漬する際にはコンパクトになる。
【0039】
また、本実施形態のかくはん用回転体は、一連に繋がった鎖素子の両端をチェーン連結環15で連結してリンクチェーン14を構成としているので、リンクチェーン14を作製するために所望数の鎖素子を切り出す際に切断される鎖素子は1つのみであり、鎖の切断時には特有の鎖素子の廃棄物が極めて少ない。
【0040】
また、本実施形態のかくはん用回転体は、図4(a)に一例として着色して示した部分のように旋回時に最外周に晒される鎖素子が摩耗した場合には、図4(b)に一例として示すように本体部12とリンクチェーン14との相対的位置をずらしてリンクチェーン14を取り付け直すことで、最外周に晒されていた鎖素子が相対的に内側に配置されるようになるので摩耗が抑えられる。従って、リンクチェーン14の寿命をより長く利用することができる。
【0041】
また、本実施形態のかくはん用回転体は、例えば手持ち式のかくはん装置に適用する場合などで容器の底面や壁面に積極的に接触させて使用する場合にも、容器と干渉するのは鎖素子の曲面だけであり、さらには、被撹拌物の粉体や流体が油膜のような緩衝材となり、摩耗や、摩擦による発熱が少なく、長寿命である。
【0042】
また、本実施形態のかくはん用回転体は、鎖素子が著しく摩耗した場合にも、一般的なホームセンターなどで比較的簡単かつ安価に入手可能なJIS規格品のチェーンを用いてリンクチェーン14を構成することができるので、製造が容易であり、かつエンドユーザでの補修や改造も簡単に行えるという特徴がある。具体的には、例えばプロペラ式のように、板金を三次元形状にプレス成形して羽根の形状を作る必要や、アルミダイカスト成型の必要がないために、高価な金型の製作が不要となり、パドル式などのように、溶接する羽根を位置決め固定するための治具や、検査や調整のためのゲージ類が必要なく、複雑な機械加工や製造工程を必要とせず、製作数が少量の場合にも、製作が容易な単純な構造であるため、低コストで製作が可能であり、設計の自由度が高くなる効果がある。
【0043】
また、本実施形態のかくはん用回転体は、使っているリンクチェーン14を延長する必要が生じた場合には、必要な数の鎖素子とチェーン連結環15を1個加えて、容易にリンクチェーン14を延長することが可能である。この場合には、チェーン連結環15は容器に容易に接触しない位置に配することが望ましい。
【0044】
また、本実施形態のかくはん用回転体は、鎖素子などの凹凸を有する部材が外周部にのみ配されていることから、撹拌後の洗浄前に容器内の上方で空転させることにより、リンクチェーン14に付着した被撹拌物を容易に容器に戻し、洗浄も簡単に行うことができる。
【0045】
また、本実施形態のかくはん用回転体は、水中かくはん装置に代表される底面型かくはん装置や側面型かくはん装置など、シャフト11を鉛直方向以外に傾斜させての応用が可能である。また、例えば手持ち式のかくはん装置では、壁面や天井の苔の除去など、乾式で撹拌目的以外でも応用出来る。
【0046】
また、本実施形態のかくはん用回転体は、粉体や流体の撹拌目的以外でも、例えばパイプ管の内側の付着物を、素地を傷めずに除去することや、床や地面を平らにならすような、乾式での使い方にも応用できる。
【0047】
(実施例)
次に、図5を参照しながらいくつかの実施例を説明する。
図5(a)は、かくはん部を1段とした実施例1のかくはん用回転体の停止状態図であり、図5(b)は、かくはん部を1段とした実施例1のかくはん用回転体の回転状態図である。この実施例1は、高粘度向けには容量20リットルの開放ペール缶、低粘度向けには容量1000リットルのIBC中規模液体輸送コンテナの口栓から入るサイズを例としたものである。具体的には、回転軸であるシャフト11の直径が15mm、リンクチェーン14が自重により垂れ下がった状態でのかくはん用回転体の旋回直径が約100mm、本体部12の板厚が3mm、リンクチェーン14を構成する鎖素子の線径が4mm、隣り合う連結環13の間を繋ぐ鎖素子数が4個である。図5(b)に示すように、回転時にはリンクチェーン14が本体部12の外縁部よりも外側まで十分に広がった状態となる。
【0048】
図5(c)は、かくはん部を2段とした実施例2のかくはん用回転体の停止状態図であり、図5(d)は、かくはん部を2段とした実施例2のかくはん用回転体の回転状態図である。2つのかくはん部の諸条件は上記した実施例1の場合と同様である。また、図中の上側のかくはん部1と下側のかくはん部1との間隔(各々の本体部12同士の相互間距離)は、上側のかくはん部1のリンクチェーン14が停止状態においても下側のかくはん部1に接しない程度に確保することが望ましく、図示の例では100mmである。図5(d)に示すように、回転時には各かくはん部1のリンクチェーン14が本体部12の外縁部よりも外側まで十分に広がった状態となる。かくはん部1を2段とすることで、かくはん能力を倍増させることができる。また、例えば駆動モータの最高回転速度が撹拌の目的や目標に対して低い場合にも、同じ回転速度で撹拌能力を向上させることが可能となる。
【0049】
<第2実施形態>
図6は、第2実施形態のかくはん用回転体の構造を示す模式的な説明図であり、詳細には、図6(a)は平面図、図6(b)は正面図、図6(c)は底面図、図6(d)は斜め上側からの斜視図である。第2実施形態のかくはん用回転体は、シャフト11の長手方向において離間配置された2つの本体部12と、複数の連結環13と、リンクチェーン14を含んで構成されている。リンクチェーン14は、複数の鎖素子を連結し、これらの両端部の鎖素子をチェーン連結環15によって連結することにより全体として閉ループ状に構成されている。チェーン連結環15は、その一部が開閉可能に構成されている。図示の例では、それぞれが環状に形成された47個の鎖素子が一列に連結され、その一端側の1つの鎖素子と他端側の1つの鎖素子とがチェーン連結環15によって連結されることで、全体として閉ループのリンクチェーン14が構成されている。
【0050】
第2実施形態におけるリンクチェーン14は、2つの本体部12のうちの一方である図中上側の本体部(第1本体部)12と、図中下側の本体部(第2本体部)12との間に配置されており、全体として、各本体部12の外縁側に沿って各本体部12と連結されている。リンクチェーン14は、各本体部12を回転させた際に遠心力によりリンクチェーン14が各本体部12の旋回直径よりも外側に離間して回転するように長さが設定されている。
【0051】
第2実施形態では、リンクチェーン14は、連結環13を用いて図中上側の本体部12と図中下側の本体部12との間で交互に各本体部12に連結されている。各本体部12は、各連結環13を通すための穴を有する。各本体部12の各穴は、それぞれシャフト11の中心から略等距離の各位置に設けられている。これらの穴は、図示の例のように平面視形状が略円形状であることが望ましいがこれに限定されない。なお、「略等距離」とは製造上の誤差を許容してほぼ等しいという意味であり、具体的には、中心から各穴までの距離が±5%程度の誤差内に収まるという意味である。
【0052】
また、図7に配置図を示すように、これらの穴は、シャフト11の設けられる位置である本体部12の中心Pから略等距離の各位置に、均等な角度に配置されることが望ましい。これにより、撹拌時の軸振れをより軽減することができる。第2実施形態のかくはん用回転体では、各本体部12の穴の数及び連結環の数をそれぞれ6個としており、各穴は、シャフト11の位置を中心点として円周方向に一定の角度θ1で略等間隔に設けられている。具体的には、略60°ずつの略等間隔で設けられている。そして、各穴に各連結環13が1つずつ設置されている。なお、「略等間隔」とは製造上の誤差を許容してほぼ等しいという意味であり、具体的には、シャフト11の位置を中心点として規定した各穴の位置同士の間隔に対応する角度θ1が60°±5°の誤差内に収まるという意味である。
【0053】
また、図7に示すように、各連結環13を通すための各穴は、上側の本体部12の各穴12aと、下側の本体部12の各穴12b(図中点線で示す)がシャフト11の軸回り方向(図中の時計回り方向ないし反時計回り方向)において互い違いの位置となるように配置されている。図示の例では、上側の本体部12の各穴12aと下側の本体部12の各穴12bは、各々の位置同士の間隔が角度θ1より小さい角度θ2で略等間隔に設けられている。具体的には、平面視で略30°ずつの略等間隔で設けられている。なお、略30°とは、30°±5°の誤差内に収まるという意味である。
【0054】
図示の例では、リンクチェーン14は、上側の本体部12と下側の本体部12との間で一定数の鎖素子ごとに折り返すように各本体部12に連結されている。図示の例では、リンクチェーン14は、上側の本体部12の1つの連結環13から下側の本体部の1つの連結環13までの間に鎖素子が5個ずつ配置されるように連結されている。
【0055】
リンクチェーン14が各本体部12に対して連結環13を用いて交互に接続される場合には、本体部12の旋回直径に対するリンクチェーン14の全長を10倍以上20倍以下と長くすることが望ましい。リンクチェーン14の全長を本体部12の旋回直径の10倍以下とすると、本体部12の相互間距離が短くなり、撹拌能力が相対的に低下する。他方で、リンクチェーン14の全長が本体部12の旋回直径の20倍を超える場合には、リンクチェーン14の慣性モーメントが大きくなり、容器への干渉やモータ軸受への負担が大きくなるため望ましくない。
【0056】
以下に、リンクチェーン14の全長についてさらに詳細に説明する。
リンクチェーン14の全長は、平面視において隣り合う連結環13の間を繋ぐ鎖素子の数Mと連結環13の数Nに基づいて決まるものであり、以下の計算式で表すことができる。
鎖素子の合計数=(M-1)×N-1
【0057】
例えば、第2実施形態の場合であれば下記の通りである。
(5個-1個)×12-1=47個
【0058】
各本体部12の旋回直径が約100mmの場合、線径4mmの鎖素子を用いたリンクチェーン14の全長は1254mmとなり、旋回直径の12.54倍となる。比較例として、同条件の鎖素子を前提とし、隣り合う連結環13の間に設けられる鎖素子の数を4個とした場合には、鎖素子の数が35個となり、リンクチェーン14の全長が942mmとなる。本体部12の旋回直径が約100mmであるとすると、リンクチェーン14の全長は本体部12の旋回直径に対して9.42倍となり、上記した好適条件を満たさない。この場合、シャフト11の長手方向に隣り合う本体部12の間隔が接近してしまうことから、撹拌能力が相対的に低くなる。
【0059】
(実施例)
図8(a)は、リンクチェーン14が各本体部12に対して連結環13を用いて交互に接続された実施例3のかくはん用回転体の停止状態図であり、図8(b)は、実施例3のかくはん用回転体の回転状態図である。図8(b)に示すように、回転時にはリンクチェーン14が各本体部12の外縁部よりも外側まで十分に広がった状態となる。かくはん部を2連とすることで、さらに撹拌能力を高めることができるほか、容器の壁面やパイプ管の内壁などの固形物を効果的に除去することができる。また、軸方向に隣り合う本体部12の間隔を調節することで、撹拌能力や所要トルクを駆動モータの最高回転速度や許容トルクにも合わせて調節することが可能となる。
【0060】
以上のような各実施形態並びに各実施例によれば、チェーンを用いるかくはん用回転体ないしこれを用いるかくはん装置において、撹拌能力を向上させるとともに接触時の打撃力を低減することが可能となる。
【0061】
なお、本発明は上記した各実施形態等の内容に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内において種々に変形して実施をすることが可能である。例えば、本発明に係るかくはん用回転体は、上記した実施形態等で説明したようなポータブル型のかくはん装置に適用できるほか、容器に対してかくはん用回転体の位置が固定された据え置き型のかくはん装置に適用することもできる。
【0062】
また、上記した説明では2つの本体部12を有する場合においてはそれらの大きさが略同一であり旋回直径も略同一となることを前提としていたが、双方の大きさ(旋回直径)が異なっていてもよい。例えば、シャフト11の一端側に相対的に近いほうの本体部12の旋回直径が相対的に小さくなるように両者の大きさ(旋回直径)を設定してもよいし、逆に、シャフト11の一端側に相対的に近いほうの本体部12の旋回直径が相対的に大きくなるように両者の大きさ(旋回直径)を設定してもよい。
【0063】
また、第2実施形態では上側の本体部12と下側の本体部12のそれぞれに設ける連結環13の平面視における設置位置を略等間隔(一例として略30°均等)にしていたが、これを不均等な間隔にしてもよい。例えば、上側の本体部12のある連結環13からシャフト11の軸回り方向において近接する下側の本体部12の連結環13までの角度を10°とし、この下側の本体部12の連結環13から次の上側の本体部12の連結環13までの角度を50°とする、というように非等間隔に各連結環13の位置を設定してもよい。これにより、リンクチェーン14は、かくはん用回転体の回転時に一方の回転方向へ寄っていくので、その配置によって、吸い上げの水流をより強くしたり、逆に吸い込みの水流をより強くしたりすることができる。
【0064】
また、上記した各実施形態では本体部12の平面視形状が円形状である場合について説明していたが、他の平面視形状であってもよい。また、上記した各実施形態では各連結環13を本体部12に取り付けるための穴がシャフト11の中心から略等距離の位置に配置されていたが、全ての穴が略等距離ではなくてもよい。図9に変形実施例の本体部を示す。この変形実施例の本体部12は平面視形状が略三角形状(角の取れた三角形状)となっている。また、各連結環13を取り付けるための穴は、6個のうち、3個が中心からの距離R1で略等距離であり、他の3個が中心からの距離R2(<R1)で略等距離となっている。この場合、距離R1の3個の穴は互いに略120°の略等間隔で配置され、距離R2の3個の穴も互いに略120°の略等間隔で配置されている。全体としては、各穴は略60°の略等間隔で配置されている。このような変形実施例の本体部12に対してリンクチェーン14を取り付けることによってもかくはん用回転体を得ることができる。
【0065】
また、上記した各実施形態では、リンクチェーン14は各鎖素子同士が一列に連結され、それらの両端をチェーン連結環15で連結することによって構成されていたが、図10に示す変形実施例のように、本体部12に設けられる各連結環13を介してリンクチェーン14の各鎖素子が閉ループ状に連結されるようにしてもよい。図示の例では、隣り合う2つの連結環13のそれぞれの間に予め連結された3つの鎖素子が配置されており、全体としては18個の鎖素子からなるリンクチェーン14が本体部12の周囲に閉ループ状に連結された状態となっている。なお、ここでは第1実施形態に対する変形実施例を図示したが、同様にして第2実施形態に対する変形実施を行うこともできる。この場合、平面視において隣り合う上下の連結環13の間に、予め連結されている所定数の鎖素子を配置すればよい。
【0066】
また、上記した各実施形態では、本体部12の周囲に1つのリンクチェーン14を配置していたが、複数のリンクチェーンを配置してもよい。例えば、図11に示す変形実施例のように、本体部12に連結されたリンクチェーン14に対して、更に均等に配置されてリンクチェーン14に取り付けられた各連結環16を用いてリンクチェーン14の外側にリンクチェーン17を連結するようにしてかくはん用回転体を構成することができる。この例では、リンクチェーン14よりもリンクチェーン17のほうがその全長が長いので、旋回時に各リンクチェーン14、17が同心円状に広がるようになる。また、図12に示す変形実施例のように、リンクチェーン14とリンクチェーン17の全長(鎖素子の数)を同じにしてもよい。この場合には、旋回時において各リンクチェーン14、17が上下方向で略同位置に配置されるようになる。なお、図11図12の各変形実施例では2つのリンクチェーンを配置する場合を例示していたが、同様にして3つ又はそれ以上のリンクチェーンを配置してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明のかくはん用回転体並びにかくはん装置は、各種粉体や流体の撹拌分野において、撹拌作業の効率化と高品質なかくはんをもたらす技術として、産業上の利用可能性がある。
【符号の説明】
【0068】
1・・・・・かくはん部
2・・・・・かくはん装置
3・・・・・かくはん装置
11・・・・シャフト
12・・・・本体部
13・・・・連結環
14・・・・リンクチェーン
15・・・・チェーン連結環
16・・・・球面六角ボルト
17・・・・リンクチェーン
【要約】      (修正有)
【課題】撹拌能力を向上させるとともに接触時の打撃力を低減する、チェーンを用いるかくはん用回転体ないしこれを用いるかくはん装置を提供する。
【解決手段】本体部12と、複数の連結環13と、リンクチェーン14を含んでかくはん部1を構成し、リンクチェーン14は、複数の鎖素子を連結してそれらの両端部の各鎖素子をチェーン連結環15によって連結することにより全体として閉ループ状に構成され、チェーン連結環15は、その一部が開閉可能に構成され、それぞれが環状に形成された17個の鎖素子が一列に連結され、その一端側の1つの鎖素子と他端側の1つの鎖素子とがチェーン連結環15によって連結されることで、全体として閉ループのリンクチェーン14が構成されている平板状であり、シャフトと接続可能に構成された少なくとも1つの本体部12と、複数の鎖素子を含んで閉ループ状に構成されたかくはん用回転体とする。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
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図10
図11
図12