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特許7165449ワイヤ接合状態判定方法及びワイヤ接合状態判定装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-26
(45)【発行日】2022-11-04
(54)【発明の名称】ワイヤ接合状態判定方法及びワイヤ接合状態判定装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/60 20060101AFI20221027BHJP
【FI】
H01L21/60 321Y
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2021578030
(86)(22)【出願日】2020-08-04
(86)【国際出願番号】 JP2020029772
(87)【国際公開番号】W WO2022029870
(87)【国際公開日】2022-02-10
【審査請求日】2021-12-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000146722
【氏名又は名称】ヤマハロボティクスホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宗像 広志
(72)【発明者】
【氏名】中野 晶太
(72)【発明者】
【氏名】足立 卓也
(72)【発明者】
【氏名】マヘディ シュワヤク
(72)【発明者】
【氏名】イスマルド ランダエズ
【審査官】小池 英敏
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-332850(JP,A)
【文献】特開2017-5228(JP,A)
【文献】国際公開第2010/113250(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/60
H01L 21/607
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電極にワイヤを接合した後に前記電極と前記ワイヤとの接合状態を判定するワイヤ接合状態判定方法であって、
前記ワイヤに所定の電力波形を入射し、前記ワイヤの伝送波形と、前記電極と前記ワイヤとの接合面からの反射波形と、を検出する波形検出工程と、
前記波形検出工程で検出した前記伝送波形と前記反射波形とを比較することにより前記電極と前記ワイヤとの接合状態を判定する接合判定工程と、を含むこと、
を特徴とするワイヤ接合状態判定方法。
【請求項2】
請求項1に記載のワイヤ接合状態判定方法であって、
前記接合判定工程は、前記波形検出工程で検出した前記伝送波形と前記反射波形とを比較することにより前記接合面の接合面積の大きさを判定すること、
を特徴とするワイヤ接合状態判定方法。
【請求項3】
請求項2に記載のワイヤ接合状態判定方法であって、
前記接合判定工程は、前記波形検出工程で検出した前記反射波形の大きさが前記伝送波形の大きさよりも大きい場合に前記接合面の接合面積は所定の面積よりも小さいと判定し、前記反射波形の大きさが前記伝送波形の大きさよりも小さいか同一の場合に前記接合面の接合面積は前記所定の面積よりも大きいか同一と判定すること、
を特徴とするワイヤ接合状態判定方法。
【請求項4】
請求項1に記載のワイヤ接合状態判定方法であって、
前記接合判定工程は、前記波形検出工程で検出した前記反射波形の大きさが前記伝送波形の大きさよりも大きい場合に接合不良と判定し、前記波形検出工程で検出した前記反射波形の大きさが前記伝送波形の大きさよりも小さいか同一の場合に接合良好と判定すること、
を特徴とするワイヤ接合状態判定方法。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載のワイヤ接合状態判定方法であって、
前記電極への前記ワイヤの接合は、前記ワイヤの先端に形成されたフリーエアボールを前記電極に圧着接合して圧着ボールを形成するボールボンディングによって行われ、
前記接合面は、前記圧着ボールと前記電極との第1接合面であること、
を特徴とするワイヤ接合状態判定方法。
【請求項7】
電極にワイヤを接合した後に前記電極と前記ワイヤとの接合状態を判定するワイヤ接合状態判定装置であって、
前記ワイヤに所定の電力波形を入射し、前記ワイヤの伝送波形と、前記電極と前記ワイヤとの接合面からの反射波形と、を検出する波形検出器と、
前記波形検出器で検出した前記伝送波形と前記反射波形とを比較することにより前記電極と前記ワイヤとの接合状態を判定する接合判定器と、を含むこと、
を特徴とするワイヤ接合状態判定装置。
【請求項8】
請求項7に記載のワイヤ接合状態判定装置であって、
前記接合判定器は、前記波形検出器で検出した前記伝送波形と前記反射波形とを比較することにより前記接合面の接合面積の大きさを判定すること、
を特徴とするワイヤ接合状態判定装置。
【請求項9】
請求項8に記載のワイヤ接合状態判定装置であって、
前記接合判定器は、前記波形検出器で検出した前記反射波形の大きさが前記伝送波形の大きさよりも大きい場合に前記接合面の接合面積は所定の面積よりも小さいと判定し、前記反射波形の大きさが前記伝送波形よりも小さいか同一の場合に前記接合面の接合面積は前記所定の面積よりも大きいか同一と判定すること、
を特徴とするワイヤ接合状態判定装置。
【請求項10】
請求項7に記載のワイヤ接合状態判定装置であって、
前記接合判定器は、
前記波形検出器で検出した前記反射波形の大きさが前記伝送波形の大きさよりも大きい場合に接合不良と判定し、前記波形検出器で検出した前記反射波形の大きさが前記伝送波形の大きさよりも小さいか同一の場合に接合良好と判定すること、
を特徴とするワイヤ接合状態判定装置。
【請求項14】
請求項12に記載のワイヤ接合状態判定装置であって、
各前記時間は、ワイヤへの電力波形の入射位置と各接合面との前記ワイヤに沿った距離の2倍を電力波形の伝播速度で除した値であること、
を特徴とするワイヤ接合状態判定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電極にワイヤを接合した後に電極とワイヤとの接合状態を判定するワイヤ接合状態判定方法及びワイヤ接合状態判定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子部品の組立工程に用いられるワイヤボンディング装置では、例えば半導体チップの電極に細い金線等のワイヤがボンディングされる。ボンディングされたワイヤは延ばされて、回路基板等の電極においてボンディングされ、半導体チップの電極と回路基板の電極との間の接続が行われる。電極間のボンディングがうまくいかないと、いわゆる接続不良が起こる。目視では判別できない接続不良を検出するために、ワイヤから半導体チップに対し適当な電流を入射し、流れる電流値を測定して電気的に接続不良を判定することが提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、ワイヤを介して高周波信号を印加し、ワイヤを通して流れる電流に対応する出力レベルにより、ボンディングの不着検出を行うことが開示されている。また、特許文献2には、ワイヤに矩形波を印加し、ワイヤを通して流入する電流の微分出力を積分して得られる出力レベルにより、ワイヤの不着検出を行うことが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平9-64116号公報
【文献】特開平8-236587号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、近年、より正確に不着検出を行うことが要求されている。しかし、特許文献1,2に記載された従来技術では信号に含まれるノイズにより検出精度が悪くなる場合があった。
【0006】
そこで、本発明は、電極とワイヤとの接合状態を精度よく検出することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のワイヤ接合状態判定方法は、電極にワイヤを接合した後に電極とワイヤとの接合状態を判定するワイヤ接合状態判定方法であって、ワイヤに所定の電力波形を入射し、ワイヤの伝送波形と電極と、ワイヤとの接合面からの反射波形と、を検出する波形検出工程と、波形検出工程で検出した伝送波形と反射波形とに基づいて電極とワイヤとの接合状態を判定する接合判定工程と、を含むこと、を特徴とする。
【0008】
これにより、電極とワイヤとの接合状態を精度よく検出することができる。
【0009】
本発明のワイヤ接合状態判定方法において、接合判定工程は、波形検出工程で検出した伝送波形と反射波形とに基づいて接合面の接合面積の大きさを判定してもよい。
【0010】
これにより、接合不良のみでなく、接合面積の良否を判定することができる。
【0011】
本発明のワイヤ接合状態判定方法において、接合判定工程は、波形検出工程で検出した反射波形の大きさが伝送波形の大きさよりも大きい場合に接合面の接合面積は所定の面積よりも小さいと判定し、反射波形の大きさが伝送波形の大きさよりも小さいか同一の場合に接合面の接合面積は所定の面積よりも大きいか同一と判定してもよい。
【0012】
これにより、簡便な方法で接合面積がワイヤの断面積よりも大きいかどうかを判定することができる。
【0013】
本発明のワイヤ接続状態判定方法において、電極との接合状態が良好なワイヤに所定の電力波形を入射し、ワイヤの伝送波形と接合面からの反射波形とを基準波形として検出する基準波形検出工程を含み、接合判定工程は、波形検出工程で検出した反射波形の大きさが基準波形に含まれる反射波形の大きさよりも大きい場合に接合不良と判定し、波形検出工程で検出した反射波形の大きさが基準波形に含まれる反射波形の大きさよりも小さいか同一の場合に接合良好と判定してもよい。
【0014】
これにより、簡便な方法で電極とワイヤとの接合面積が基準面積よりも大きいかどうかを検出することができる。
【0015】
本発明のワイヤ接合状態判定方法において、電極へのワイヤの接合は、ワイヤの先端に形成されたフリーエアボールを電極に圧着接合して圧着ボールを形成するボールボンディングによって行われ、接合面は、圧着ボールと電極との第1接合面としてもよい。
【0016】
これにより、圧着ボールと電極との第1接合面の接合面積の大きさを検出するとともに接合状態を判定することができる。
【0017】
本発明のワイヤ接続状態判定方法において、電極へのワイヤの接合は、ワイヤの先端に形成されたフリーエアボールを電極に圧着接合するボールボンディングと、ボールボンディングの後にワイヤの側面を他の電極に圧着接合するステッチボンディングとを含み、接合面は、ステッチボンディングによるワイヤの側面と他の電極との第2接合面としてもよい。
【0018】
これにより、ボールボンディングの後にステッチボンディングを行う際のステッチボンディング箇所の接合状態の検出を行うことができる。
【0019】
本発明のワイヤ接続状態判定装置は、電極にワイヤを接合した後に電極とワイヤとの接合状態を判定するワイヤ接合状態判定装置であって、ワイヤに所定の電力波形を入射し、ワイヤの伝送波形と、電極とワイヤとの接合面からの反射波形と、を検出する波形検出器と、波形検出器で検出した伝送波形と反射波形とに基づいて電極とワイヤとの接合状態を判定する接合判定器と、を含むこと、を特徴とする。
【0020】
本発明のワイヤ接合状態判定装置において、接合判定器は、波形検出器で検出した伝送波形と反射波形とに基づいて接合面の接合面積の大きさを判定してもよい。
【0021】
本発明のワイヤ接合状態判定装置において、接合判定器は、波形検出器で検出した反射波形の大きさが伝送波形の大きさよりも大きい場合に接合面の接合面積は所定の面積よりも小さいと判定し、反射波形の大きさが伝送波形よりも小さいか同一の場合に接合面の接合面積は所定の面積よりも大きいか同一と判定してもよい。
【0022】
本発明のワイヤ接合状態判定装置において、接合判定器は、電極との接合状態が良好なワイヤに波形検出器から所定の電力波形を入射した際のワイヤの伝送波形と接合面からの反射波形とを基準波形として格納した基準波形データベースを含み、基準波形データベースを参照して、波形検出器で検出した反射波形の大きさが基準波形に含まれる反射波形の大きさよりも大きい場合に接合不良と判定し、波形検出器で検出した反射波形の大きさが基準波形に含まれる反射波形の大きさよりも小さいか同一の場合に接合良好と判定してもよい。
【発明の効果】
【0023】
本発明は、電極とワイヤとの接合状態を精度よく検出できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】実施形態のワイヤ接合状態判定装置が取付けられたワイヤボンディング装置の構成図である。
図2図1に示すワイヤボンディング装置によって半導体チップの電極と基板の電極との間をワイヤで接続した半導体装置を示す立面図である。
図3A図1に示すワイヤボンディング装置によるワイヤボンディング工程を示す立面図であり、フリーエアボールを形成した状態を示す図である。
図3B図1に示すワイヤボンディング装置によるワイヤボンディング工程を示す立面図であり、フリーエアボールを電極に圧着させて圧着ボールを形成した状態を示す図である。
図3C図1に示すワイヤボンディング装置によるワイヤボンディング工程を示す立面図であり、キャピラリの先端からワイヤテールを延出させた状態を示す図である。
図3D図1に示すワイヤボンディング装置によるワイヤボンディング工程を示す立面図であり、キャピラリの先端をルーピングさせて基板の電極にステッチボンディングを行った状態を示す図である。
図4】実施形態のワイヤ接合状態判定装置における波形検出工程を示す説明図である。
図5】圧着ボールと電極との接合面積に対する反射波の電圧の変化を示すグラフである。
図6】圧着ボールと電極との接合面積がワイヤの断面積よりも大きい場合の波形検出器で検出した波形を示す図である。
図7】圧着ボールと電極との接合面積がワイヤの断面積よりも小さい場合の波形検出器で検出した波形を示す図である。
図8】圧着ボールと電極との接合状態が良好な場合に、所定の電力波形をワイヤに入射させて波形検出器で検出した基準波形を示す図である。
図9】ステッチボンディングよってボンディングされた第2ボンディング部の接合状態が良好な場合に、所定の電力波形をワイヤに入射させて波形検出器で検出した基準波形を示す図である。
図10】チェインボンディングによって形成したワイヤループを示す図である。
図11図10に示すワイヤループを形成した後、ワイヤに所定の電力波形を入射させて波形検出器で検出した基準波形を実線で示し、第2ボンド部の接合が不良の場合に検出される伝送波形と反射波形を破線で示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面を参照しながら実施形態のワイヤ接合状態判定装置60について説明する。最初に、実施形態のワイヤ接合状態判定装置60が取付けられるワイヤボンディング装置100について説明する。図1に示す様に、ワイヤボンディング装置100は、ベース10と、XYテーブル11と、ボンディングヘッド12と、Z方向モータ13と、ボンディングアーム14と、超音波ホーン15と、キャピラリ20と、クランパ17と、放電電極18と、ボンディングステージ19と、制御部50とを備えている。尚、以下の説明では、ボンディングアーム14又は超音波ホーン15の延びる方向をX方向、水平面でX方向と直角方向をY方向、上下方向をZ方向として説明する。
【0026】
XYテーブル11は、ベース10の上に取付けられて上側に搭載されるものをXY方向に移動させる。
【0027】
ボンディングヘッド12は、XYテーブル11の上に取付けられてXYテーブル11によってXY方向に移動する。ボンディングヘッド12の中には、Z方向モータ13とZ方向モータ13によって駆動されるボンディングアーム14とが格納されている。Z方向モータ13は、固定子13bを備えている。ボンディングアーム14は、根元部14aがZ方向モータ13の固定子13bに対向し、Z方向モータ13のシャフト13aの周りに回転自在に取付けられる回転子となっている。
【0028】
ボンディングアーム14のX方向の先端には超音波ホーン15が取付けられており、超音波ホーン15の先端にはキャピラリ20が取付けられている。超音波ホーン15は、図示しない超音波振動子の振動により先端に取付けられたキャピラリ20を超音波加振する。キャピラリ20は後で説明するように内部に上下方向に貫通する貫通孔21が設けられており、貫通孔21にはワイヤ16が挿通されている。
【0029】
また、超音波ホーン15の先端の上側には、クランパ17が設けられている。クランパ17は開閉してワイヤ16の把持、開放を行う。
【0030】
ボンディングステージ19の上側には放電電極18が設けられている。放電電極18は、キャピラリ20に挿通してキャピラリ20の先端から延出したワイヤ16との間で放電を行い、ワイヤ16を溶融させてフリーエアボール22を形成する。
【0031】
ボンディングステージ19は、上面に半導体チップ34が実装された基板30を吸着固定するとともに、図示しないヒータによって基板30と半導体チップ34とを加熱する。
【0032】
ボンディングヘッド12のZ方向モータ13の固定子13bの電磁力によって回転子を構成するボンディングアーム14の根元部14aが図1中の矢印91に示す様に回転すると、超音波ホーン15の先端に取付けられたキャピラリ20は矢印91aに示す様にZ方向に移動する。また、ボンディングステージ19はXYテーブル11によってXY方向に移動する。従って、キャピラリ20は、XYテーブル11とZ方向モータ13によってXYZ方向に移動する。
【0033】
XYテーブル11と、Z方向モータ13と、クランパ17と、放電電極18と、ボンディングステージ19とは制御部50に接続されており、制御部50の指令に基づいて駆動される。制御部50は、XYテーブル11とZ方向モータ13とによりキャピラリ20のXYZ方向の位置を調整するとともに、クランパ17の開閉、放電電極18の駆動、ボンディングステージ19の加熱制御を行う。
【0034】
制御部50は、内部に情報処理を行うプロセッサであるCPU51と、動作プログラムや動作データ等を格納するメモリ52とを含むコンピュータである。
【0035】
図2に示す様に、ワイヤボンディング装置100は、半導体チップ34の電極であるパッド36と基板30の他の電極であるリード32との間をループワイヤ26で接続して半導体装置の製造を行う装置である。
【0036】
以下、図3Aから図3Dを参照してワイヤボンディング装置100によるワイヤボンディングの各工程について簡単に説明する。
【0037】
図3Aに示す様に、キャピラリ20の貫通孔21にはワイヤ16が挿通されている。ワイヤボンディング装置100の制御部50は、図1に示す放電電極18とキャピラリ20の先端から延出したワイヤ16との間に放電を発生させてワイヤ16を球状のフリーエアボール22に成形する。
【0038】
次に、制御部50は、図3Bの矢印92に示す様に、キャピラリ20を下降させてキャピラリ20の先端で半導体チップ34のパッド36の上にフリーエアボール22を荷重F1で押圧するボールボンディングを行う。すると、フリーエアボール22はパッド36に圧着されて円板状の圧着ボール23に成形される。圧着ボール23の下面とパッド36の上面との間には、圧着ボール23を形成する金属とパッド36の金属とが接合する第1接合面23aが形成される。第1接合面23aは、圧着ボール23とパッド36との圧着面であり、第1ボンド点P1を構成する。
【0039】
次に、制御部50は、図3Cの矢印93に示す様に、キャピラリ20を上昇させてキャピラリ20の先端からワイヤテール24を延出させる。
【0040】
その後、制御部50は、図3Dの矢印94に示す様に、キャピラリ20の先端を半導体チップ34のパッド36から基板30のリード32に向かってルーピングさせ、キャピラリ20の先端で基板30のリード32の上にワイヤ16の側面を荷重F2で押圧してステッチボンディングを行い、ワイヤ16の側面をリード32の上に圧着する。ワイヤ16の側面は圧着されると第2ボンディング部25となる。第2ボンディング部25の下面はリード32に接合しており、第2接合面25aが形成される。第2接合面25aは、ワイヤ16の側面とリード32との圧着面であり、第2ボンド点P2を構成する。
【0041】
この後、制御部50は、クランパ17を閉としてキャピラリ20を上昇させて第2ボンディング部25でワイヤ16を切断する。これにより、図2に示す様に第1ボンド点P1と第2ボンド点P2とをループワイヤ26で接続した半導体装置が構成される。
【0042】
次に、図1図4を参照しながら、実施形態のワイヤ接合状態判定装置60について説明する。
【0043】
図1に示す様に、実施形態のワイヤ接合状態判定装置60は、波形検出器61と、接合判定器62とで構成されている。波形検出器61は、第1端子66と第2端子67とを備えている。第1端子66は、クランパ17に接続されている。また、第2端子67は、ボンディングステージ19に接続されるとともに接地されている。
【0044】
図4に示す様に、波形検出器61は、第1端子66からワイヤ16に所定の電力波形の入射波71を入射させるとともに、ワイヤ16の伝送波形73aとパッド36とワイヤ16との第1接合面23aからの反射波形73bとを含む検出波形73を検出し、接合判定器62に出力する。尚、波形検出器61は、市販のネットワークアナライザを用いて構成してもよい。
【0045】
接合判定器62は、波形検出器61から入力されたワイヤ16の伝送波形73aと、第1接合面23aからの反射波形73bと、を含む検出波形73に基づいてワイヤ16とパッド36との接合状態を判定する。
【0046】
図1に示す様に、接合判定器62は、内部に情報処理を行うプロセッサであるCPU63と、動作プログラムやデータが格納されているメモリ64とを含むコンピュータである。メモリ64の中には、後で説明する基準波形データベース65が格納されている。
【0047】
図1に示す様に、ワイヤ接合状態判定装置60は、ワイヤボンディング装置100の制御部50と接続されており、制御部50との間で情報の授受を行う。
【0048】
次に、図4図8を参照しながら、実施形態のワイヤ接合状態判定装置60の動作について説明する。以下の説明では、図4に示す様に時刻t0に電圧がゼロからEinにステップ変化する電圧波形を所定の電力波形としてワイヤ16に入射させる場合について説明する。所定の電力波形としてこれ以外の形状の電力波形を入射させてもよい。
【0049】
先に、図3A図3Bを参照して説明したように、制御部50はキャピラリ20を下降させてフリーエアボール22をパッド36の上に圧着して圧着ボール23を形成し、圧着ボール23とパッド36とを接合する。これにより、圧着ボール23とパッド36との間には、圧着ボール23を形成する金属とパッド36の金属とが接合する第1接合面23aが形成される。
【0050】
制御部50は、圧着ボール23を成形する際に印加した荷重F1を開放し、キャピラリ20の先端を圧着ボール23の上面からわずかに上昇させる。また、制御部50は、クランパ17を閉とする指令を出力する。この指令によってクランパ17が閉となり、クランパ17とワイヤ16とが電気的に接続され、ワイヤ16と波形検出器61の第1端子66とが接続される。
【0051】
図4に示す様に、波形検出器61は、時刻t0に電圧がゼロからEinにステップ変化する入射波71を第1端子66から出力する。第1端子66から出力された入射波71は、図4中の矢印97aに示す様にクランパ17に入り、クランパ17からワイヤ16に伝送していく。そして、図4中の矢印97bに示す様に、入射波71は、ワイヤ16を圧着ボール23に向かって伝播していく。そして、入射波71は、図4中の矢印97cに示す様に第1接合面23aに達すると、第1接合面23aで反射して反射波72となって図4中の矢印98aに示す様に第1接合面23aからワイヤ16に向かって伝播し、図4中の矢印98bに示す様に、ワイヤ16の中をクランパ17に向かって伝播する。そして、反射波72は、クランパ17から波形検出器61の第1端子66に向かって伝播する。図4に示す様に、反射波72は、電圧がゼロからEoutにステップ変化する波形を有している。反射波72は、入射波71を出力した時刻t0から時間Δtだけ後の時刻t1に波形検出器61に戻ってくる。時刻t1に波形検出器61に戻って来る反射波72は、電圧が時刻t1にゼロからEoutにステップ的に変化する電圧波形である。
【0052】
波形検出器61は、図4に示す様に、入射波71を出力した時刻t0から反射波72が戻ってくる時刻t1までの間は、ワイヤによって伝送される入射波71と同様、電圧がゼロからEinにステップ変化する伝送波形73aを検出する(波形検出工程)。そして、反射波72が戻って来る時刻t1以降は、電圧がEoutの反射波形73bを検出する。ここで、入射波71を出力した時刻t0から反射波72が波形検出器61に戻って来る時刻t1までの時間Δtは、クランパ17と圧着ボール23の第1接合面23aとの距離をLとして、
Δt=2*L/(ワイヤ中での電力波形の伝播速度) ---- (式1)
となる。ワイヤ16の中での電力波形の伝播速度は、光速に近い速度であるから、時間Δtは、非常に短く、数psec程度となる。尚、式1では波形検出器61の第1端子66とクランパ17との間の接続線の長さを無視しているが、この接続線の長さを考慮して時間Δtを算出するようにしてもよい。後で説明する時間Δt2、Δt83、Δt82、Δt81の場合も同様である。
【0053】
図4に示す反射波72或いは反射波形73bの電圧Eoutは、圧着ボール23とパッド36との第1接合面23aの接合面積Abによって変化する。図5に示す様に、第1接合面23aの接合面積Abが所定の面積であるワイヤ16の断面積Awと同一の場合、第1接合面23aのインピーダンスは、ワイヤ16のインピーダンスと同一となるので、反射波72、或いは反射波形73bの電圧Eoutは、ワイヤ16の中を伝送される入射波71の電圧Einと同一となる。
【0054】
第1接合面23aの接合面積Abが所定の面積であるワイヤ16の断面積Awよりも大きくなると、第1接合面23aのインピーダンスが小さくなることから、反射波72或いは反射波形73bの電圧EoutはEinよりも小さくなる。逆に、第1接合面23aの接合面積Abが所定の面積であるワイヤ16の断面積Awよりも小さくなると、第1接合面23aのインピーダンスがワイヤ16のインピーダンスよりも大きくなることから、反射波72或いは反射波形73bの電圧EoutはEinよりも大きくなる。
【0055】
従って、図6に示す様に、第1接合面23aの接合面積Abが所定の面積であるワイヤ16の断面積Awよりも大きい場合には、検出波形73に含まれる反射波形73bの電圧Eoutは、検出波形73に含まれる伝送波形73aの電圧Einよりも小さくなる。
【0056】
逆に、図7に示す様に、第1接合面23aの接合面積Abがワイヤ16の断面積Awより小さい場合には、検出波形73に含まれる反射波形73bの電圧Eoutは、検出波形73に含まれる伝送波形73aの電圧Einよりも大きくなる。
【0057】
そこで、接合判定器62のCPU63は、入射波71の出力を開始する時刻t0の直後における伝送波形73aの電圧値を伝送波形73aの電圧Einとして取得し、時刻t1の直後の反射波形73bの電圧値を反射波形73bの電圧Eoutとして取得する。そして、接合判定器62のCPU63は、取得した伝送波形73aの電圧Einと、反射波形73bの電圧Eoutとを比較することにより、第1接合面23aの接合面積Abがワイヤ16の断面積Awよりも大きいか小さいかを判定する(接合判定工程)。
【0058】
すなわち、接合判定器62のCPU63は、取得した反射波形73bの電圧Eoutの大きさが取得した伝送波形73aの電圧Einよりも大きい場合に第1接合面23aの接合面積Abはワイヤ16の断面積Awよりも小さいと判定し、取得した反射波形73bの電圧Eoutの大きさが伝送波形73aの電圧Einよりも小さいか同一の場合に第1接合面23aの接合面積Abはワイヤ16の断面積Awよりも大きいか同一と判定する。
【0059】
以上、説明したように、ワイヤ接合状態判定装置60は、入射波71をワイヤ16に入射させ、ワイヤ16中の伝送波形73aの電圧Einと圧着ボール23とパッド36との第1接合面23aからの反射波形73bの電圧Eoutとを検出し、電圧Einと電圧Eoutとを比較するという簡便な方法により、第1接合面23aの接合面積Abがワイヤ16の断面積Awよりも大きいかどうかを判定することができる。
【0060】
また、接合判定器62のCPU63は、取得した反射波形73bの電圧Eoutの大きさが伝送波形73aの電圧Einよりも小さいか同一の場合に第1接合面23aの接合状態は良好と判定し、取得した反射波形73bの電圧Eoutの大きさが取得した伝送波形73aの電圧Einよりも大きい場合に第1接合面23aの接合状態は不良であると判定してもよい。なお、接合判定工程では、ワイヤの断面積を基準に接合状態を判定すると説明したが、これに限らず例えば圧着ボール23の下面に対する接合面積の比率、第2ボンディング部25または後述するステッチボンディング部のワイヤ側面に対する接合面積の比率等により接合状態を判断してもよい。
【0061】
次に、図8を参照しながら、実施形態のワイヤ接合状態判定装置60の他の動作について説明する。図8に示す様に、パッド36とワイヤ16との接合状態が良好で、パッド36との第1接合面23aの接合面積Abが基準接合面積Asとなっている基準第1ボンド部P1sを含む半導体装置を準備する。そして、波形検出器61から入射波71をワイヤ16に入射させた際のワイヤ16の伝送波形74aと第1接合面23aからの反射波形74bとを含む電圧波形を基準波形74として取得する。そして、取得した基準波形74を接合判定器62のメモリ64の中の基準波形データベース65に格納しておく(基準波形検出工程)。
【0062】
図8に示す様に、第1接合面23aの基準接合面積Asの大きさがワイヤ16の断面積Awよりも大きい場合、基準波形74に含まれる反射波形74bの電圧Eoutは、基準波形74に含まれる伝送波形74aの電圧Einよりも小さいEsとなっている。
【0063】
先に図5を参照して説明したと同様、第1接合面23aの接合面積Abが所定の面積である基準接合面積Asよりも大きいか同一の場合は、電圧Eoutは電圧Esよりも低くなる。逆に、第1接合面23aの接合面積Abが所定の面積である基準接合面積Asよりも小さい場合は、電圧Eoutは電圧Esよりも高くなる。
【0064】
第1接合面23aの接合面積の判定を行う場合、ワイヤ接合状態判定装置60は、図4を参照して説明したと同様、時刻t0に電圧が0からEinまでステップ変化する入射波71を波形検出器61からクランパ17に入射させ、波形検出器61で伝送波形73aと反射波形73bとを含む検出波形73を検出する。接合判定器62のCPU63は、時刻t1の直後の反射波形73bの電圧値を電圧Eoutとして取得する。そして、接合判定器62のCPU63は、基準波形データベース65に格納している基準波形74に含まれる反射波形74bの電圧Esと、反射波形73bの電圧Eoutとを比較し、第1接合面23aの接合面積Abが基準接合面積Asよりも大きいか小さいかを判定する(接合判定工程)。
【0065】
すなわち、接合判定器62のCPU63は、取得した反射波形73bの電圧Eoutの大きさが基準波形74に含まれる反射波形74bの電圧Esよりも大きい場合には、第1接合面23aの接合面積Abは基準接合面積Asよりも小さいと判定し、取得した反射波形73bの電圧Eoutの大きさが基準波形74に含まれる反射波形74bの電圧Esよりも小さいか同一の場合に第1接合面23aの接合面積Abは基準接合面積Asよりも大きいか同一と判定する。
【0066】
これにより、簡便な方法でパッド36とワイヤ16との接合面積Abが基準接合面積Asよりも大きいかどうかを検出することができる。また、接合判定器62は、反射波形73bの電圧Eoutの大きさが基準波形74に含まれる反射波形74bの電圧Esよりも大きい場合には、第1接合面23aの接合状態は不良と判断し、反射波形73bの電圧Eoutの大きさが基準波形74に含まれる反射波形74bの電圧Esよりも小さいか同一の場合に第1接合面23aの接合状態は良好と判断してもよい。
【0067】
以上の説明では、第1接合面23aは、ボールボンディングによって行われ、圧着ボール23とパッド36との第1接合面23aの接合面積Abの大きさを判定することとして説明したが、これに限らず、ステッチボンディングよってボンディングされた第2ボンディング部25のワイヤ16の側面とリード32との第2接合面25aにも適用することができる。
【0068】
先に、図8を参照して説明したと同様、図9に示す様に、リード32とワイヤ16の側面との接合状態が良好で、リード32との第2接合面25aの接合面積Abが基準接合面積Asとなっている基準第2ボンド部P2sを準備する。そして、時刻t0に波形検出器61から入射波71をワイヤ16に入射させる。時刻t0に波形検出器61からワイヤ16に入射波71を入射させると、第2接合面25aからの反射波72は、t0から時Δt2後の時刻t2に波形検出器61に戻ってくる。
【0069】
ここで、Δt2は、クランパ17とリード32の第2接合面25aとの距離をL2として、
Δt2=2*L2/(ワイヤ中での電力波形の伝播速度) --- (式2)
である。
【0070】
従って、波形検出器61は、時刻t0から反射波72が戻ってくる時刻t2までの間は、電圧がゼロからEinにステップ変化する伝送波形75aを検出し、反射波72が戻って来る時刻t2以降は、電圧がEoutの反射波形75bを検出する。波形検出器61は、ワイヤ16の伝送波形75aと第2接合面25aからの反射波形75bとを含む電圧波形を基準波形75として取得する。そして、取得した基準波形75を接合判定器62のメモリ64の中の基準波形データベース65に格納しておく(基準波形検出工程)。
【0071】
図9に示す様に、第2接合面25aの基準接合面積Asの大きさがワイヤ16の断面積Awよりも大きい場合、基準波形75に含まれる反射波形75bの電圧Eoutは、基準波形75に含まれる伝送波形75aの電圧Einよりも小さいEs2となっている。
【0072】
先に図8を参照して説明したと同様、第2接合面25aの接合面積Abが所定の面積である基準接合面積Asよりも大きいか同一の場合は、電圧Eoutは電圧Es2よりも低くなる。逆に、第2接合面25aの接合面積Abが所定の面積である基準接合面積Asよりも小さい場合は、電圧Eoutは電圧Es2よりも高くなる。
【0073】
先に図8を参照して説明したと同様、第2接合面25aの接合面積の判定を行う場合、ワイヤ接合状態判定装置60は入射波71を波形検出器61からクランパ17に入射させる。接合判定器62のCPU63は、反射波形73bの電圧Eoutの大きさが電圧Es2よりも大きい場合には、第2接合面25aの接合面積Abは基準接合面積Asよりも小さいと判定し、反射波形73bの電圧Eoutの大きさが電圧Es2よりも小さいか同一の場合に第2接合面25aの接合面積Abは基準接合面積Asよりも大きいか同一と判定する。
【0074】
尚、図8を参照して説明したと同様、反射波形73bの電圧Eoutの大きさに基づいて第2接合面25aの接合の良否を判定してもよい。
【0075】
次に、図10図11を参照してワイヤ接合状態判定装置60の他の動作について説明する。ワイヤ接合状態判定装置60は、ボールボンディングの後、ステッチボンディングを複数回実行して基板30の上に複数層に積層実装された複数層の半導体チップ34の各層のパッド36と基板30のリード32とを連続してワイヤ16で接続するチェインボンディングにおける中間のステッチボンディング部の接合面の接合状態の判定にも適用することができる。
【0076】
図10を参照しながら、チェインボンディングの例について説明する。図10に示す例は、基板30のリード32から積層した半導体チップ134,234の各パッド136,236に向かって連続的にボンディングを行う逆ボンディングである。
【0077】
図10に示すチェインボンディングでは、ワイヤボンディング装置100の制御部50は、最初に基板30のリード32の上にボールボンディングを行って圧着ボール80を形成する。圧着ボール80とリード32との圧着面は第1接合面81aであり、第1ボンド部81を構成する。次に、制御部50は、キャピラリ20を一層目の半導体チップ134のパッド136に向かってルーピングし、ワイヤ16の側面をパッド136の上に押圧してステッチボンディングを行う。パッド136とワイヤ16の側面との圧着面は第2接合面82aであり、第2ボンド部82を構成する。同様に、制御部50は、キャピラリ20を二層目の半導体チップ234のパッド236に向かってルーピングし、ワイヤ16の側面をパッド236の上に押圧してステッチボンディングを行う。パッド236とワイヤ16の側面との圧着面は第3接合面83aであり、第3ボンド部83を構成する。第1ボンド部81と第2ボンド部82との間は、ループワイヤ85で接続され、第2ボンド部82と第3ボンド部83との間は、ループワイヤ86で接続されている。
【0078】
次に、チェインボンディングにおける中間のステッチボンディング部である第2ボンド部82の第2接合面82aの接合の良否の判断について説明する。
【0079】
第2接合面82aの良否の判断を行う前に、ワイヤ接合状態判定装置60は、先に、図8,9を参照して説明したと同様、第1接合面81a、第2接合面82a、第3接合面83aの各接合面の接合状態が良好な基準ループに入射波71を入射させた際の電圧波形を基準波形76として基準波形データベース65に格納する基準波検出工程を行う。
【0080】
図11に示す様に、波形検出器61は、時刻t0に電圧がゼロからEinにステップ変化する入射波71をクランパ17に入力する。クランパ17に入射した入射波71は、クランパ17からワイヤ16に伝送される。そして、図10に示す第3接合面83aで反射すると電圧Eout3の反射波72が波形検出器61に戻ってくる。また、第3接合面83aからループワイヤ86に伝搬した入射波71は、第2接合面82aで反射して電圧Eout2の反射波72が波形検出器61に戻ってくる。更に、第2接合面82aからループワイヤ85に入射した入射波71は、第1接合面81aで反射して電圧Eout1の反射波72が波形検出器61に戻ってくる。
【0081】
第1接合面81a、第2接合面82a、第3接合面83aからの反射波72がもどってくる時間は、それぞれ時刻t0の時間Δt83,Δt82,Δt81後である。ここで、時間Δt83,Δt82,Δt81は、次のように計算される。
Δt83=2*L83/(電力波形の伝播速度) ---- (式3)
Δt82=2*L82/(電力波形の伝播速度) ---- (式3)
Δt81=2*L81/(電力波形の伝播速度) ---- (式3)
ここで、L83は、クランパ17から第3接合面83aまで距離であり、L82は、L83にループワイヤ86に沿った第3接合面83aから第2接合面82aまでの距離を加えた距離であり、L81は、L82にループワイヤ85に沿った第2接合面82aから第1接合面81aまでの距離を加えた距離である。
【0082】
図11に示す様に、波形検出器61は、時刻t0から時刻t83までの間は、電圧Einの伝送波形76aを検出し、時刻t83から時刻t82までの間は、第3接合面83aからの電圧Eout3の反射波形76bを検出し、時刻t82から時刻t81までの間は、第2接合面82aからの電圧Eout2の反射波形76cを検出し、時刻t81以降は、第1接合面81aからの電圧Eout1の反射波形76dを検出する。
【0083】
接合判定器62は、第1接合面81a、第2接合面82a、第3接合面83aの各接合面の接合状態が良好な基準ループに入射波71を入射させた際に波形検出器61が検出した伝送波形76aと反射波形76b,76c,76dとを含む電圧波形を基準波形76として基準波形データベース65に格納する。また、検出した各反射波形76b,76c,76dの各電圧Eout3、電圧Eout2、電圧Eout1をそれぞれ基準電圧Es83,Es82,Es81として基準波形データベース65に格納する。
【0084】
ワイヤ接合状態判定装置60は、第2接合面82aの接合状態が良好かどうかを判定する場合には、第3ボンド部83へのステッチボンディングが終了した後、図10に示す様に波形検出器61からクランパ17に入射波71を入射させる。そして、波形検出器61で図11に破線で示すように、伝送波形77aと反射波形77b,77c,77dを含む検出波形77を検出する。
【0085】
そして、接合判定器62は、検出波形77に含まれる第2接合面82aからの反射波形77cと基準波形76に含まれる第2接合面82aからの反射波形76cとを比較する。第2接合面82aの接合が不良の場合、反射波形77cの電圧は、基準電圧Es82よりも高くなる。このため、接合判定器62は、反射波形77cの電圧が基準電圧Es82よりも高い場合に、第2接合面82aの接合は不良であると判定する。一方、反射波形77cの電圧が基準電圧Es82と同一或いは低い場合には、第2接合面82aの接合は良好であると判定する。
【0086】
以上、説明したように、実施形態のワイヤ接合状態判定装置60は、チェインボンディングにおける中間のステッチボンディング部の接合の良否を判定することができる。
【0087】
尚、以上の説明では、基板30のリード32から積層した半導体チップ134,234の各パッド136,236に向かって連続的にボンディングを行う逆ボンディングを例として説明したが、上記の方法は、二層目の半導体チップ234のパッド236にボールボンディングを行い、一層目の半導体チップ134のパッド136と基板30のリード32とにステッチボンディングを行うチェインボンディングの第2ボンド部82の接合の良否の判断にも適用することができる。
【0088】
以上、説明したように、実施形態のワイヤ接合状態判定装置60は、パッド36とワイヤ16との接合状態、或いは、リード32とワイヤ16との接合状態を精度よく検出することができる。
【符号の説明】
【0089】
10 ベース、11 XYテーブル、12 ボンディングヘッド、13 Z方向モータ、13a シャフト、13b 固定子、14 ボンディングアーム、14a 根元部、15 超音波ホーン、16 ワイヤ、17 クランパ、18 放電電極、19 ボンディングステージ、20 キャピラリ、21 貫通孔、22 フリーエアボール、23,80 圧着ボール、23a,81a 第1接合面、24 ワイヤテール、25 第2ボンディング部、25a,82a 第2接合面、26,85,86 ループワイヤ、30 基板、32 リード、34,134,234 半導体チップ、36,136,236 パッド、50 制御部、51,63 CPU、52,64 メモリ、60 ワイヤ接合状態判定装置、61 波形検出器、62 接合判定器、65 基準波形データベース、71 入射波、72 反射波、73,77 検出波形、73a、74a,75a,76a,77a 伝送波形、73b、74b,75b,76b,77b 反射波形、74,75,76 基準波形、81 第1ボンド部、82 第2ボンド部、83 第3ボンド部、83a 第3接合面、100 ワイヤボンディング装置。
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図3D
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11