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特許7165452トレーニング器具およびトレーニング器具セット
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-26
(45)【発行日】2022-11-04
(54)【発明の名称】トレーニング器具およびトレーニング器具セット
(51)【国際特許分類】
   A63B 23/02 20060101AFI20221027BHJP
   A63B 23/035 20060101ALI20221027BHJP
   A63B 23/04 20060101ALI20221027BHJP
   A63B 23/12 20060101ALI20221027BHJP
【FI】
A63B23/02 Z
A63B23/035 Z
A63B23/04 Z
A63B23/12
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2022040023
(22)【出願日】2022-03-15
【審査請求日】2022-04-08
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000102348
【氏名又は名称】エイケン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100136674
【弁理士】
【氏名又は名称】居藤 洋之
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 大成
【審査官】槙 俊秋
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2004/0054305(US,A1)
【文献】特開2019-130274(JP,A)
【文献】特開2014-76187(JP,A)
【文献】特開2012-348(JP,A)
【文献】特開2008-220738(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0374813(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0085631(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0378277(US,A1)
【文献】国際公開第2009/075493(WO,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A63B 23/00-23/10
A61H 1/00
A61H 15/00
A61H 39/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
床面に接触する平坦な床接触面を有し、弾性材料によって形成された底部と、
前記底部の上面から隆起するように前記弾性材料によって前記底部と一体に形成され、使用者の足の足裏が接触するように構成された足裏接触面を有する隆起部とを備え、
前記足裏接触面は、前記隆起部の頂上部に前記床接触面に対して平行に形成された平坦な頂上平面を有し、
前記足裏接触面は、前記隆起部の隆起方向に対して直交する方向へ長く形成され、
前記足裏接触面の長さは、前記足の長さよりも短く定められ、
前記足裏接触面の幅は、前記足の幅よりも狭く定められ、
前記底部および前記隆起部の高さおよび硬度は、前記使用者が両足または片足で前記頂上平面に載ったときに、爪先および踵が前記床面から僅かに浮く程度に定められ、
前記床接触面の面積は、前記隆起方向に対して直交する前記隆起部の断面の最大面積よりも大きく定められる、トレーニング器具。
【請求項2】
前記弾性材料は、硬度がショア硬度A20~A40の範囲内にある発泡ウレタンである、請求項1に記載のトレーニング器具。
【請求項3】
前記隆起部の外周面は、前記頂上平面に向かうにつれて内側へ湾曲する滑らかな曲面に形成される、請求項1または2に記載のトレーニング器具。
【請求項4】
平面視で前記頂上平面と重なる位置に重心の位置が定められる、請求項1ないし3のいずれか1項に記載のトレーニング器具。
【請求項5】
前記床接触面は、粘着性を有する、請求項1ないし4のいずれか1項に記載のトレーニング器具。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれか1項に記載のトレーニング器具を複数個備える、トレーニング器具セット。
【請求項7】
複数の前記トレーニング器具のそれぞれは、他と区別するための識別子を有する、請求項6に記載のトレーニング器具セット。
【請求項8】
大きさが異なる少なくとも2種類の前記トレーニング器具を備える、請求項6または7に記載のトレーニング器具セット。
【請求項9】
床面に互いに離隔して配置された3個の前記トレーニング器具を備える、請求項6ないし8のいずれか1項に記載のトレーニング器具セット。
【請求項10】
床面に互いに離隔して配置された4個の前記トレーニング器具を備える、請求項6ないし8のいずれか1項に記載のトレーニング器具セット。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、使用者が両足または片足で載ることで体幹を鍛えることができる、トレーニング器具およびトレーニング器具セットに関する。
【背景技術】
【0002】
体幹を鍛えたり、バランス感覚を養ったりするためのトレーニング器具として、従来から空気が注入されたバランスボールが知られている。しかし、このバランスボールは、使用者の尻を完全に支持できる程度の大きさに形成されているため、大型であり、保管や運搬に不便であるという問題があった。
【0003】
下記特許文献1に記載された脊椎矯正器は、骨と筋肉のバランスを整える点においてトレーニング器具の一種であり、シリコーンゴムなどの軟質材で形成された板状部および饅頭状突状部を有している。したがって、上記のバランスボールと比べて小型に形成でき、保管や運搬が容易である。この脊椎矯正器において、饅頭状突状部は、直径約10cm、高さ約6cmの饅頭状または直径約5cm、高さ約5cmの半球状に形成されている。使用者の脊椎が左右方向へ歪んでいるとき、使用者は、尻の歪んだ側の部分で脊椎矯正器に座ることによって、その歪みを矯正できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2002-191628号
【0005】
しかしながら、特許文献1の脊椎矯正器(トレーニング器具)では、使用者が両足または片足で載ることは想定されておらず、仮に載った場合には、饅頭状突状部の表面で足が滑るおそれがあり、安全性を確保することが困難であった。また、使用者が饅頭状突状部に載る向きにかかわらず、饅頭状突状部の表面と足裏との接触面積は一定であり、バランスをとる難易度が変わらないことから、体幹を効果的に鍛えることができなかった。
【発明の概要】
【0006】
本発明は、上記問題に対処するためになされたものであり、安全性を確保しつつ、使用者が両足または片足で載ることができ、体幹を効果的に鍛えることができる、トレーニング器具およびトレーニング器具セットを提供することを目的とする。
【0007】
上記目的を達成するため、本発明に係るトレーニング器具の特徴は、床面に接触する平坦な床接触面を有し、弾性材料によって形成された底部と、前記底部の上面から隆起するように前記弾性材料によって前記底部と一体に形成され、使用者の足の足裏が接触するように構成された足裏接触面を有する隆起部とを備え、前記足裏接触面は、前記隆起部の頂上部に前記床接触面に対して平行に形成された平坦な頂上平面を有し、前記足裏接触面は、前記隆起部の隆起方向に対して直交する方向へ長く形成され、前記足裏接触面の長さは、前記足の長さよりも短く定められ、前記足裏接触面の幅は、前記足の幅よりも狭く定められ、前記底部および前記隆起部の高さおよび硬度は、前記使用者が両足または片足で前記頂上平面に載ったときに、爪先および踵が前記床面から僅かに浮く程度に定められ、前記床接触面の面積は、前記隆起方向に対して直交する前記隆起部の断面の最大面積よりも大きく定められることにある。
【0008】
この構成によれば、足裏接触面の長さは、足の長さよりも短く定められ、足裏接触面の幅は、足の幅よりも狭く定められるので、使用者は、両足または片足で頂上平面に載ることによって、体幹を鍛える第1トレーニングを行うことができる。頂上平面は、床接触面に対して平行となるように平坦に形成されるので、頂上平面に載せられた使用者の足や手が滑ることを抑制できる。また、使用者の爪先および踵は、床面から僅かに浮く程度の高さに位置するため、使用者がバランスを崩したときには、爪先および踵を直ちに床面に着けることができる。さらに、床接触面の面積は、隆起方向に対して直交する隆起部の断面の最大面積よりも大きく定められるので、トレーニング器具を床面で安定させることができる。したがって、使用者は、安全性を確保しつつ、両足または片足で頂上平面に載ることができる。
【0009】
使用者は、頂上平面に手を載せて、腕立て伏せの動作を行うことによって、体幹を鍛える第2トレーニングを行うことができる。また、使用者は、頂上平面に手を載せて、静止状態を保持することによって、体幹を鍛える第3トレーニングを行うことができる。さらに、使用者は、頂上平面に尻を載せて、足を床面から浮かせた状態を保持することによって、体幹を鍛える第4トレーニングを行うことができる。
【0010】
足裏接触面は、隆起部の隆起方向に対して直交する方向へ長く形成されるので、使用者は、頂上平面に載る向きを変えることによって、或いは、頂上平面に手や尻を載せる向きを変えることによって、バランスをとる難易度を変えることができる。さらに、トレーニング器具の上下を逆にした状態でも、使用者は、底部の床接触面に両足または片足で載ったり、手や尻を載せたりすることによって、体幹を鍛えることができる。なお、トレーニング器具の各部の寸法は、使用者の個々の足の大きさに応じて決められてもよいし、使用者の年齢層または性別などに応じて平均的な足の大きさに応じて決められてもよい。
【0011】
本発明に係るトレーニング器具の他の特徴は、前記弾性材料は、硬度がショア硬度A20~A40の範囲内にある発泡ウレタンであることにある。
【0012】
この構成によれば、大人の使用者が両足または片足で頂上平面に載った場合に、底部および隆起部の全体が押し潰されることを抑制できる。また、隆起部が適度に凹むことによって、使用者の足が痛くなることを抑制できる。また、弾性材料は、発泡ウレタンであるため、材料の調合によって硬度を調整し易い。
【0013】
本発明に係るトレーニング器具の他の特徴は、前記隆起部の外周面は、前記頂上平面に向かうにつれて内側へ湾曲する滑らかな曲面に形成されることにある。
【0014】
この構成によれば、使用者が、両足または片足で頂上平面に載ったとき、使用者の足の足裏には、頂上平面および滑らかな曲面が接触し、段差部や角部は接触しない。したがって、段差部や角部がある場合と比べてバランスをとる難易度が高くなり、使用者の足が痛くなることを抑制しつつ、体幹を効果的に鍛えることができる。また、使用者が頂上平面に手を載せたときには、隆起部の上部の表面に手を沿わせ易く、使用者の手が痛くなることを抑制できる。
【0015】
本発明に係るトレーニング器具の他の特徴は、平面視で前記頂上平面と重なる位置に重心の位置が定められることにある。
【0016】
この構成によれば、トレーニング器具の上下を逆にして、頂上平面を床面に接触させたとき、トレーニング器具を自立させることができ、使用者は、トレーニング器具を扱い易い。
【0017】
本発明に係るトレーニング器具の他の特徴は、前記床接触面は、粘着性を有することにある。
【0018】
この構成によれば、床面に対して床接触面が滑ることを抑制でき、トレーニング時の安定性を高めることができる。また、2つのトレーニング器具の床接触面どうしを突き合わせて、2つのトレーニング器具を互いに重ね合わせて使用するとき、これらの間の位置ずれを抑制できる。
【0019】
上記目的を達成するため、本発明に係るトレーニング器具セットの特徴は、上記のいずれかのトレーニング器具を複数個備えることにある。
【0020】
この構成によれば、使用者は、両足または片足で頂上平面に載って体幹を鍛える上記の第1トレーニングと、頂上平面に手を載せて体幹を鍛える上記の第2トレーニングまたは第3トレーニングとを同時に行うことができる。また、使用者は、頂上平面に尻を載せて体幹を鍛える上記の第4トレーニングを、複数のトレーニング器具を用いて行うことができる。さらに、使用者は、各トレーニングにおいて、トレーニング器具の少なくとも1つを、上下を逆にして使用できる。
【0021】
使用者は、各トレーニングにおいて、2つのトレーニング器具を、床接触面どうしを突き合せた態様、頂上平面どうしを突き合せた態様、床接触面と頂上平面とを突き合せた態様のいずれかの態様で重ね合わせて使用できる。また、使用者は、複数のトレーニング器具を床面上に互いに間隔を隔てて配置し、それらの上を跳び移ることによって、体幹を鍛える第5トレーニングを行うことができる。
【0022】
本発明に係るトレーニング器具セットの他の特徴は、複数の前記トレーニング器具のそれぞれは、他と区別するための識別子を有することにある。
【0023】
この構成によれば、使用者は、複数のトレーニング器具のそれぞれを識別子で識別できる。例えば、上記の第5トレーニングにおいて、跳び移るトレーニング器具の順番を予め定めた場合には、使用者は、次に跳び移るべきトレーニング器具を識別子で確認できる。なお、識別子は、具体的には、色、番号および符号などである。
【0024】
本発明に係るトレーニング器具セットの他の特徴は、大きさが異なる少なくとも2種類の前記トレーニング器具を備えることにある。
【0025】
この構成によれば、大きさが異なるトレーニング器具を用いて、多様なトレーニングを行うことができる。
【0026】
本発明に係るトレーニング器具セットの他の特徴は、床面に互いに離隔して配置された3個の前記トレーニング器具を備えることにある。
【0027】
この構成によれば、使用者は、両手および一方の足を3個のトレーニング器具のそれぞれに載せることによって、或いは、両足および一方の手を3個のトレーニング器具のそれぞれに載せることによって、上記の第1トレーニングと、上記の第2トレーニングまたは第3トレーニングとを同時に行うことができる。
【0028】
本発明に係るトレーニング器具セットの他の特徴は、床面に互いに離隔して配置された4個の前記トレーニング器具を備えることにある。
【0029】
この構成によれば、使用者は、両手および両足を4個のトレーニング器具のそれぞれに載せることによって、上記の第1トレーニングと、上記の第2トレーニングまたは第3トレーニングとを同時に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】実施形態に係るトレーニング器具の構成を示す斜視図である。
図2】実施形態に係るトレーニング器具の構成を示す図であり、(A)は平面図、(B)は正面図である。
図3】実施形態に係るトレーニング器具の構成を示す図であり、(C)は左側面図、(D)は底面図である。
図4】第1トレーニングにおけるトレーニング器具の使用方法を示す図であり、(A)は平面図、(B)は正面図である。
図5】(A)は、第1トレーニングにおけるトレーニング器具の他の使用方法を示す平面図、(B)は、第2トレーニングにおけるトレーニング器具の使用方法を示す平面図である。
図6】トレーニング器具の上下を逆にした使用状態を示す正面図である。
図7】(A)は、第1実施形態に係るトレーニング器具セットの構成を示す正面図、(B)は、第2実施形態に係るトレーニング器具セットの構成を示す正面図、(C)は、第3実施形態に係るトレーニング器具セットの構成を示す正面図である。
図8】第4実施形態に係るトレーニング器具セットの構成を示す平面図である。
図9】第5実施形態に係るトレーニング器具セットの構成を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明に係るトレーニング器具およびトレーニング器具セットの実施形態について図面を参照しながら説明する。
【0032】
(トレーニング器具10の構成)
図1は、実施形態に係るトレーニング器具10の構成を示す斜視図である。図2は、トレーニング器具10の構成を示す図であり、(A)は平面図、(B)は正面図である。図3は、トレーニング器具10の構成を示す図であり、(C)は左側面図、(D)は底面図である。図4は、第1トレーニングにおけるトレーニング器具10の使用方法を示す図であり、(A)は平面図、(B)は正面図である。
【0033】
図1に示すトレーニング器具10は、使用者M(図4(A),(B))が体幹を鍛えたり、バランス感覚を養ったりするために行う様々なトレーニングに使用される器具である。図4(A),(B)に示すように、主なトレーニングとしては、使用者Mが足Nで頂上平面に載って体幹を鍛えるトレーニング(以下、「第1トレーニング」という。)がある。図4(B)に示すように、トレーニング器具10は、トレーニングを行う床面Fに置かれて使用される。
【0034】
図1に示すように、トレーニング器具10は、弾性材料によって板状に形成された底部12と、底部12の上面12aから隆起するように、弾性材料によって底部12と一体に形成された隆起部14とを備えている。本実施形態の弾性材料は、発泡ウレタンである。
【0035】
弾性材料の硬度が低過ぎる場合には、大人の使用者Mの体重によってトレーニング器具10の全体が押し潰されるおそれがあり、弾性材料の硬度が高過ぎる場合には、隆起部14が足Nの形状に沿って変形し難いため、使用者Mにおける使用感が損なわれるおそれがある。これらの問題を抑制するために、弾性材料の硬度は、ショア硬度A20~A40の範囲内にあることが望ましく、特に、A30程度であることが望ましい。
【0036】
図2(A)に示すように、底部12は、隆起部14の隆起方向に対して直交する方向へ延びる平面視で長円形の板状に形成されている。図3(D)に示すように、底部12の下面、すなわち、床面F(図4(B))に接触する床接触面12bは、自己粘着性を有する状態で平坦に形成されている。
【0037】
図2(B)および図3(C)に示すように、底部12の外周面12cは、上面12aに向かうにつれて内側(中央側)へ湾曲する滑らかな曲面に形成されている。したがって、底部12の上部の外周部に角は無く、使用者Mは、トレーニング器具10を安全に使用できる。
【0038】
なお、本実施形態では、底部12のサイズが、長さ約19cm、幅約12cm、高さ約1cmに定められている。
【0039】
図2(A)に示すように、隆起部14は、隆起方向に対して直交する方向であって、底部12の長さ方向と同じ方向へ長い平面視で長円形のブロック状に形成されている。隆起部14の頂上部14aには、平面視で長円形の平坦な頂上平面16が、隆起部14の長さ方向と同じ方向へ延びて、床接触面12bに対して平行に形成されている。隆起部14の外周面14bは、頂上平面16に向かうにつれて内側(中央側)へ湾曲する滑らかな曲面に形成されている。
【0040】
なお、本実施形態では、隆起部14のサイズが、長さ約17cm、幅約10cm、高さ約4cmに定められており、頂上平面16のサイズが、長さ約9cm、幅約2cmに定められている。
【0041】
図4(A),(B)に示すように、使用者Mが足Nで頂上平面16に載って体幹を鍛える上記の第1トレーニングでは、足Nが隆起部14の頂上平面16およびその周辺部の表面に接触する。言い換えると、隆起部14は、使用者Mの足Nの足裏が接触するように構成された足裏接触面18を有しており、足裏接触面18は、上記の頂上平面16を有している。
【0042】
図4(A),(B)中の斜線(ハッチング)で示すように、本実施形態の足裏接触面18は、隆起部14の隆起方向に対して直交する方向であって、隆起部14の長さ方向と同じ方向に長い平面視で長円形に形成されている。足裏接触面18の長さL1は、足Nの足長L2よりも短く定められており、足裏接触面18の幅W1は、足Nの足幅W2よりも狭く定められている。そして、足裏接触面18の中央部に頂上平面16が配置されている。
【0043】
使用者Mが隆起部14の頂上平面16に載ると、使用者Mの体重でトレーニング器具10が圧縮されて変形されるので、足裏接触面18の長さL1および幅W1は、使用者Mの体重に応じて変化する。また、図4(B)に示す床面Fから爪先および踵までの距離Q1,Q2は、使用者Mの体重に応じて変化する。
【0044】
そこで、上記の第1トレーニングを使用者Mが効果的に行うために、また、使用者Mがバランスを崩したときの安全を確保するために、底部12および隆起部14の高さおよび硬度は、想定される使用者Mの爪先および踵が、床面Fから僅かに浮く程度に定められる。具体的には、底部12および隆起部14の全体の高さは、4cm~10cmの範囲内に定められ、これらの硬度は、ショア硬度A20~A40の範囲内に定められる。
【0045】
底部12における床接触面12bの面積は、隆起方向に対して直交する隆起部14の断面の最大面積よりも大きく定められている。本実施形態では、隆起部14の基端部(下端部)の断面が最大面積を有しており、床接触面12bの面積は、それよりも大きく定められている。したがって、使用者Mが頂上平面16に載ったときの安定性が高く、トレーニング器具10は倒れ難い。
【0046】
図6に示すように、本実施形態では、トレーニング器具10を、上下を逆にして使用することが想定されており、トレーニング器具10は、頂上平面16を床面Fに接触させたときに自立するように構成されている。つまり、図2(A)に示すように、トレーニング器具10の重心Gの位置は、平面視で頂上平面16と重なる位置に定められている。
【0047】
(トレーニング器具の使用方法)
図4(A),(B)に示すように、使用者Mが足Nで頂上平面16に載って体幹を鍛える第1トレーニングを行うとき、使用者Mは、床接触面12bを下にしてトレーニング器具10を床面Fに置く。そして、使用者Mは、足Nの長さ方向を足裏接触面18の長さ方向と一致させた状態で、片足Nで頂上平面16に載ってバランスをとる。このとき、使用者Mは、前後方向に比べて左右方向のバランスをとることが困難なため、左右方向のバランス感覚を養うことができるとともに、左右方向のバランスをとるように体幹を鍛えることができる。
【0048】
図5(A)は、第1トレーニングにおけるトレーニング器具10の他の使用方法を示す平面図、図5(B)は、第2トレーニングにおけるトレーニング器具10の使用方法を示す平面図である。図6は、トレーニング器具10の上下を逆にした使用状態を示す正面図である。
【0049】
図4(A),(B)に示す第1トレーニングの使用方法では、使用者Mは、足Nの長さ方向を足裏接触面18の長さ方向と一致させて、片足Nで頂上平面16に載るが、図5(A)に示すように、使用者Mは、足Nの幅方向を足裏接触面18の長さ方向と一致させて、片足Nで頂上平面16に載ってもよい。この場合には、使用者Mは、左右方向に比べて前後方向のバランスをとることが困難なため、前後方向のバランス感覚を養うことができるとともに、前後方向のバランスをとるように体幹を鍛えることができる。
【0050】
第1トレーニングにおける上記の各使用方法では、使用者Mは、片足Nで頂上平面16に載るが、使用者Mは、両足N,N(図9)で頂上平面16に載ってもよい。この場合には、片足Nで載る場合と比べてバランスをとる難易度を下げることができるので、使用者Mは、片足Nで載る使用方法と併用することによって、バランス感覚を段階的に養うことができる。
【0051】
本実施形態のトレーニング器具10は、上記の第1トレーニングに限らず、他の様々なトレーニングを行うために使用できる。例えば、使用者Mは、頂上平面16に手Hを載せて、腕立て伏せの動作を行うことによって、体幹を鍛える第2トレーニングを行うことができる。また、使用者Mは、頂上平面16に手Hを載せて、静止状態を保持することによって、体幹を鍛える第3トレーニングを行うことができる。なお、図5(B)では、第2トレーニングまたは第3トレーニングで頂上平面16に載せられた手Hを二点鎖線で示している。
【0052】
さらに、図示していないが、使用者Mは、頂上平面16に尻を載せて、足Nを床面Fから浮かせた状態を保持することによって、体幹を鍛える第4トレーニングを行うことができる。図6に示すように、上記の各トレーニングにおいて、トレーニング器具10は、上下を逆にして使用されてもよい。
【0053】
(実施形態の効果)
本実施形態によれば、上記構成により以下の各効果を奏することができる。すなわち、図4(A)に示すように、足裏接触面18の長さL1は、足Nの足長L2よりも短く定められ、足裏接触面18の幅W1は、足Nの足幅W2よりも狭く定められるので、使用者Mは、両足N,Nまたは片足Nで頂上平面16に載ることによって、体幹を鍛える第1トレーニングを行うことができる。
【0054】
頂上平面16は、床接触面12bに対して平行となるように平坦に形成されるので、頂上平面16に載せられた使用者Mの足Nや手Hが滑ることを抑制できる。また、使用者Mの爪先および踵は、床面Fから僅かに浮く程度の高さに位置するため、使用者Mがバランスを崩したときには、爪先および踵を直ちに床面Fに着けることができる。さらに、床接触面12bの面積は、隆起方向に対して直交する隆起部14の断面の最大面積よりも大きく定められるので、トレーニング器具10を床面Fで安定させることができる。したがって、使用者Mは、安全性を確保しつつ、両足N,Nまたは片足Nで頂上平面16に載ることができる。
【0055】
足裏接触面18は、隆起部14の隆起方向に対して直交する方向へ長く形成されるので、使用者Mは、頂上平面16に載る向きを変えることによって、或いは、頂上平面16に手Hや尻(図示省略)を載せる向きを変えることによって、バランスをとる難易度を変えることができる。さらに、トレーニング器具10の上下を逆にした状態でも、使用者Mは、底部12の床接触面12bに両足N,Nまたは片足Nで載ったり、手Hや尻を載せたりすることによって、体幹を鍛えることができる。
【0056】
弾性材料の硬度は、ショア硬度A20~A40の範囲内にあるため、大人の使用者が両足N,Nまたは片足Nで頂上平面16に載った場合に、底部12および隆起部14の全体が押し潰されることを抑制できる。また、隆起部14が適度に凹むことによって、使用者Mの足Nが痛くなることを抑制できる。また、弾性材料は、発泡ウレタンであるため、材料の調合によって硬度を調整し易い。
【0057】
隆起部14の外周面14bは、頂上平面16に向かうにつれて内側(中央側)へ湾曲する滑らかな曲面に形成されるので、使用者Mが、両足N,Nまたは片足Nで頂上平面16に載ったとき、使用者Mの足Nの足裏には、頂上平面16および滑らかな曲面が接触し、段差部や角部は接触しない。したがって、使用者Mの足Nが痛くなることを抑制しつつ、体幹を効果的に鍛えることができる。また、使用者Mが頂上平面16に手Hを載せたときには、隆起部14の上部の表面に手Hを沿わせ易く、使用者Mの手Hが痛くなることを抑制できる。
【0058】
図2(A)に示すように、トレーニング器具10の重心Gの位置は、平面視で頂上平面16と重なる位置に定められるので、トレーニング器具10の上下を逆にして、頂上平面16を床面Fに接触させたとき、トレーニング器具10を自立させることができる。したがって、使用者Mは、トレーニング器具10を扱い易い。
【0059】
図3(D)に示す床接触面12bは、粘着性を有するので、床面Fに対して床接触面12bが滑ることを抑制でき、トレーニング時の安定性を高めることができる。また、2つのトレーニング器具10の床接触面12bどうしを突き合わせて、2つのトレーニング器具10を互いに重ね合わせて使用するとき、これらの間の位置ずれを抑制できる。
【0060】
(変形例)
なお、本発明の実施にあたっては、上記実施形態に限定されず、本発明の目的を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。例えば、上記実施形態では、弾性材料として発泡ウレタンが用いられているが、弾性材料の種類は、特に限定されるものではなく、例えば、天然ゴムを基材とした発泡体(発泡ゴム)が用いられてもよい。また、上記実施形態では、トレーニング器具10が大人用であるため、硬度がショア硬度A20~A40の範囲内にある弾性材料が用いられているが、トレーニング器具10が子供用であれば、より軟質の弾性材料が用いられてもよい。
【0061】
上記実施形態では、床接触面12bの粘着性が、発泡ウレタンの自己粘着性によって得られているが、この粘着性は、例えば、床接触面12bに粘着材(図示省略)を付着させることによって得られてもよい。
【0062】
上記実施形態では、底部12、隆起部14および頂上平面16のそれぞれが、平面視で長円形に形成されているが、これらの形状は、長円形に限定されるものではなく、例えば、楕円形や長方形であってもよく、頂上平面16の形状は、円形や正方形であってもよい。また、底部12の外周面12cおよび隆起部14の外周面14bのそれぞれは、内側(中央側)へ湾曲することなく、上下方向へ真っ直ぐ(ストレート)に形成されてもよい。さらに、トレーニング器具10の各部分のサイズは、想定される使用者Mの体形などに応じて適宜変更されてもよい。
【0063】
(トレーニング器具セットの構成)
図7(A)は、第1実施形態に係るトレーニング器具セット20の構成を示す正面図、図7(B)は、第2実施形態に係るトレーニング器具セット22の構成を示す正面図、図7(C)は、第3実施形態に係るトレーニング器具セット24の構成を示す正面図である。図8は、第4実施形態に係るトレーニング器具セット26の構成を示す平面図である。図9は、第5実施形態に係るトレーニング器具セット28の構成を示す平面図である。
【0064】
以下に示すトレーニング器具セット20~28のそれぞれは、上記のトレーニング器具10を複数個備えている。
【0065】
図7(A)に示す第1実施形態に係るトレーニング器具セット20は、2つのトレーニング器具10を、床接触面12bどうしを突き合わせて互いに重ね合わせたものである。このトレーニング器具セット20によれば、上記の第4トレーニングにおいて、尻を載せる頂上平面16の高さを高くすることができるので、第4トレーニングを行い易い。また、粘着性を有する床接触面12bどうしを突き合わせているので、2つのトレーニング器具10の相互の位置ずれを抑制できる。
【0066】
図7(B)に示す第2実施形態に係るトレーニング器具セット22は、2つのトレーニング器具10を、頂上平面16どうしを突き合わせて互いに重ね合わせたものである。図7(C)に示す第3実施形態に係るトレーニング器具セット24は、2つのトレーニング器具10を、頂上平面16と床接触面12bとを突き合わせて互いに重ね合わせたものである。これらのトレーニング器具セット22,24によれば、上記の第4トレーニングにおいて、尻を載せる床接触面12bの高さを高くすることができるので、第4トレーニングを行い易い。
【0067】
図8に示す第4実施形態に係るトレーニング器具セット26は、床面Fに互いに離隔して配置された4個のトレーニング器具10を備えている。このトレーニング器具セット26によれば、使用者Mは、両手H,Hおよび両足N,Nを4個のトレーニング器具10のそれぞれに載せることによって、上記の第1トレーニングと、上記の第2トレーニングまたは第3トレーニングとを同時に行うことができる。また、使用者Mは、複数のトレーニング器具10の上を跳び移ることによって、体幹を鍛える第5トレーニングを行うこともできる。
【0068】
図9に示す第5実施形態に係るトレーニング器具セット28は、床面Fに互いに離隔して配置された3個のトレーニング器具10を備えている。このトレーニング器具セット28によれば、使用者Mは、両手H,Hを2個のトレーニング器具10に載せるとともに、両足N,Nを1個のトレーニング器具10に載せることによって、上記の第1トレーニングと、上記の第2トレーニングまたは第3トレーニングとを同時に行うことができる。
【0069】
また、図示していないが、使用者Mは、両手H,Hを2個のトレーニング器具10に載せるとともに、片足Nを1個のトレーニング器具10に載せることによって、或いは、両足N,Nを2個のトレーニング器具10に載せるとともに、両手H,Hまたは片手Hを1個のトレーニング器具10に載せることによって、上記の第1トレーニングと、上記の第2トレーニングまたは第3トレーニングとを同時に行うことができる。さらに、使用者Mは、複数のトレーニング器具10の上を跳び移ることによって、体幹を鍛える第5トレーニングを行うこともできる。
【0070】
図9に示す第5実施形態に係るトレーニング器具セット28は、大きさが異なる2種類のトレーニング器具10を備えている。つまり、足Nを載せるトレーニング器具10は、手Hを載せるトレーニング器具10よりも大きく形成されている。このトレーニング器具セット28によれば、大きさが異なるトレーニング器具10を用いることによって、多様なトレーニングを行うことができる。なお、トレーニング器具10の大きさは、2種類に限定されるものではなく、3種類以上であってもよい。
【0071】
上記のトレーニング器具セット20~28において、複数のトレーニング器具10のそれぞれは、他と区別するための識別子を有していてもよい。識別子は、具体的には、色、番号および符号などであり、図8および図9では、識別子として番号「1」、「2」、「3」、「4」を使用した例を示している。この構成によれば、使用者Mは、複数のトレーニング器具10のそれぞれを識別子で識別できるので、例えば、上記の第5トレーニングにおいて、跳び移るトレーニング器具10の順番を予め定めた場合には、使用者Mは、次に跳び移るべきトレーニング器具を識別子で確認できる。
【0072】
上記のトレーニング器具セット26,28において、使用者Mは、トレーニング器具10の少なくとも1つを、上下を逆にして使用してもよい。また、単独で使用されるトレーニング器具10に代えて、図7(A),(B),(C)に示すトレーニング器具セット20,22,24を使用してもよい。
【符号の説明】
【0073】
F…床面、G…重心、H…手、M…使用者、N…足、10…トレーニング器具、12…底部、12a…上面、12b…床接触面、12c…外周面、14…隆起部、14a…頂上部、14b…外周面、16…頂上平面、18…足裏接触面、20~28…トレーニング器具セット。
【要約】
【課題】安全性を確保しつつ、使用者が両足または片足で載ることができ、体幹を効果的に鍛えることができる、トレーニング器具およびトレーニング器具セットを提供する。
【解決手段】トレーニング器具10は、弾性材料によって形成された底部12および隆起部14を備える。隆起部14は、使用者Mの足Nの足裏が接触するように構成された足裏接触面18を有する。足裏接触面18は、平坦な頂上平面16を有し、隆起部14の隆起方向に対して直交する方向へ長く形成される。足裏接触面18の長さL1は、足Nの足長L2よりも短く定められ、足裏接触面18の幅W1は、足Nの足幅W2よりも狭く定められる。底部12および隆起部14の高さおよび硬度は、頂上平面16に載った使用者Mの爪先および踵が床面Fから僅かに浮く程度に定められる。底部12の床接触面12bの面積は、隆起方向に対して直交する隆起部14の断面の最大面積よりも大きく定められる。
【選択図】図4
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9