(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-26
(45)【発行日】2022-11-04
(54)【発明の名称】鼻腔挿入具
(51)【国際特許分類】
A61B 17/24 20060101AFI20221027BHJP
【FI】
A61B17/24
(21)【出願番号】P 2018223355
(22)【出願日】2018-11-29
【審査請求日】2021-11-18
(73)【特許権者】
【識別番号】506377732
【氏名又は名称】株式会社パタカラ
(74)【代理人】
【識別番号】100182028
【氏名又は名称】多原 伸宜
(74)【代理人】
【識別番号】100145023
【氏名又は名称】川本 学
(74)【代理人】
【識別番号】100105887
【氏名又は名称】来山 幹雄
(72)【発明者】
【氏名】秋広 良昭
(72)【発明者】
【氏名】矢崎 和宏
(72)【発明者】
【氏名】小山田 常一
【審査官】石川 薫
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-195604(JP,A)
【文献】特開平11-192251(JP,A)
【文献】特表2006-501889(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2002/0177871(US,A1)
【文献】特表2010-540188(JP,A)
【文献】特開2015-147025(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/24
A61F 5/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鼻腔を介して呼吸する際に使用される鼻腔挿入具であって、
筒状であり、一端側の端部から他端側の端部まで延設される中空部を内部に有すると共に鼻腔に挿入される本体部と、
前記本体部の前記一端側の端部において前記中空部を外部に開放する第1の開口部と、
前記本体部の前記他端側の端部において前記中空部を外部に開放する第2の開口部と、
前記本体部の他端側に設けられ、前記他端側から見て前記本体部よりも側方に突出する突出位置と前記中空部と重なる重なり位置との間で移動可能な押圧部と、
を有することを特徴とする鼻腔挿入具。
【請求項2】
前記本体部は、
第1の壁部と第2の壁部と第3の壁部とによって囲まれる前記中空部を有し、
前記第1の壁部と前記第2の壁部とは、
互いに接続すると共に直交する方向に延設され、
前記第3の壁部は、
前記第1の壁部と前記第2の壁部とを接続すると共に側方に凸となる湾曲形状を有し、
前記押圧部は、
前記他端側から見て前記突出位置において前記第1の壁部及び前記第2の壁部よりも側方に突出する、
ことを特徴とする請求項1記載の鼻腔挿入具。
【請求項3】
前記押圧部は、
前記本体部が鼻腔に挿入された際に前記突出位置において鼻中隔下制筋を押圧する、
ことを特徴とする請求項1又は請求項2記載の鼻腔挿入具。
【請求項4】
一対の前記本体部の各々に設けられた前記押圧部を互いに接続すると共に、前記押圧部を前記突出位置と前記重なり位置との間で移動可能にする連結部を有する、
ことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の鼻腔挿入具。
【請求項5】
前記押圧部は、
前記突出位置から前記重なり位置に移動する際に屈曲し、前記重なり位置から前記突出位置に移動する際に伸張するヒンジ部を備える、
ことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載の鼻腔挿入具。
【請求項6】
前記中空部は、
前記他端側の端部から前記一端側の端部に向けて窄まった形状を有する、
ことを特徴とする請求項1から請求項5のいずれかに記載の鼻腔挿入具。
【請求項7】
前記本体部は、
前記中空部の周囲の内壁を窪ませて形成した複数の内部凹部を備える、
ことを特徴とする請求項1から請求項6のいずれかに記載の鼻腔挿入具。
【請求項8】
前記本体部は、
外壁を窪ませて形成した複数の外部凹部と、一端が前記内部凹部に開口されると共に他端が前記外部凹部に開口されて前記中空部を外部に連通する連通孔と、を備える、
ことを特徴とする請求項7記載の鼻腔挿入具。
【請求項9】
前記本体部は、
前記一端側に設けられると共に前記第1の開口部から外部に突出して互いに離れる方向に延設される複数の板状のガイド片を備える、
ことを特徴とする請求項1から請求項8のいずれかに記載の鼻腔挿入具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鼻腔を介して呼吸する際に使用される鼻腔挿入具に関する。
【背景技術】
【0002】
睡眠時に一時的に呼吸が停止する睡眠時無呼吸症候群(SAS)の症状に悩まされている老若男女が多数存在している。睡眠時無呼吸症候群の症状を生じた際においては、血液中の酸化還元反応が不十分となり、脳に送られる血液が酸欠状態となる。これにより、脳神経組織のみならずホルモン代謝にも悪影響を及ぼし、心疾患、糖尿病又は脳血管疾患と言われる生活習慣病を引き起こす恐れもある。
【0003】
従来、睡眠時において鼻腔に挿入されて鼻腔を拡張することにより、睡眠時無呼吸症候群の症状を緩和する鼻腔拡張器が知られている(例えば、特許文献1)。このような鼻腔拡張器は、鼻腔に挿入された際に鼻腔を拡張した状態で鼻腔の内部に留まって、鼻腔を介して気道に空気を送り込むことを可能にする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の鼻腔挿入具においては、鼻腔を介して気道により多くの空気を送り込むためには、鼻腔をより拡張させる必要があるが、鼻腔を拡張させるために鼻腔挿入具の全体を大きくした場合には鼻腔挿入具の鼻腔への挿入が困難になる。一方、鼻腔挿入具の全体を小さくした場合には、鼻腔挿入具を鼻腔に挿入し易いが、鼻腔を十分に拡張させることができないために鼻腔を介して気道により多くの空気を送り込むことができず、また鼻腔挿入具が鼻腔から脱落し易い。従って、従来の鼻腔挿入具は、鼻腔へ挿入し易くすることと、鼻腔により多くの空気を送り込むこと及び鼻腔からの脱落を防止することと、の両立を図ることができないという課題を有する。
【0006】
本発明の目的は、鼻腔に挿入し易くすることができ、鼻腔に挿入した際には鼻腔を介して十分な量の空気を気道に送り込むことができると共に、鼻腔から脱落することを極力防ぐことができる鼻腔挿入具を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る鼻腔挿入具は、鼻腔を介して呼吸する際に使用される鼻腔挿入具であって、筒状であり、一端側の端部から他端側の端部まで延設される中空部を内部に有すると共に鼻腔に挿入される本体部と、前記本体部の前記一端側の端部において前記中空部を外部に開放する第1の開口部と、前記本体部の前記他端側の端部において前記中空部を外部に開放する第2の開口部と、前記本体部の他端側に設けられ、前記他端側から見て前記本体部よりも側方に突出する突出位置と前記中空部と重なる重なり位置との間で移動可能な押圧部と、を有する。
【0008】
押圧部が重なり位置にある状態で本体部を鼻腔に挿入し、鼻腔に挿入後に押圧部を重なり位置から突出位置に移動させることにより、押圧部によって鼻腔の内壁を押圧すると共に、押圧部による鼻腔の内壁を押圧する反動で、押圧部によって押圧する鼻腔の内壁の反対側の内壁を本体部によって押圧して鼻腔全体を拡張させた状態で、第2の開口部から中空部に取り込んだ空気を第1の開口部から排出して気道に送り込む。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、鼻腔に挿入し易くすることができ、鼻腔に挿入した際には鼻腔を介して十分な量の空気を気道に送り込むことができると共に、鼻腔から脱落することを極力防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の実施形態に係る鼻腔挿入具の上方の斜め前方から見た斜視図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る鼻腔挿入具の押圧部が突出位置に移動した状態の正面図である。
【
図3】本発明の実施形態に係る鼻腔挿入具の平面図である。
【
図4】本発明の実施形態に係る鼻腔挿入具の下方の斜め後方から見た斜視図である。
【
図5】本発明の実施形態に係る鼻腔挿入具の本体部の拡大断面図である。
【
図6】本発明の実施形態に係る鼻腔挿入具の本体部の一端側の拡大断面図である。
【
図7】本発明の実施形態に係る鼻腔挿入具の押圧部が重なり位置に移動した状態の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を適宜参照して、本発明の実施形態に係る鼻腔挿入具につき、詳細に説明する。図中、x軸、y軸及びz軸は、3軸直交座標系を成し、y軸の正方向を前方向、y軸の負方向を後ろ方向、x軸の正方向を右方向、x軸の負方向を左方向、z軸の正方向を上方向、及びz軸の負方向を下方向として説明する。
【0012】
<鼻腔挿入具の構成>
本発明の実施形態に係る鼻腔挿入具1につき、
図1から
図7を参照しながら、以下に詳細に説明する。
【0013】
鼻腔挿入具1は、弾力性のある合成樹脂により一体に形成されており、全体が弾性変形可能になっている。ここで、鼻腔挿入具1を形成する合成樹脂は、例えばスチレン系・エラストマー、ポリエステル・エラストマー、シリコンゴム、ポリエチレン又は塩化ビニルである。
【0014】
鼻腔挿入具1は、左側の鼻腔に挿入される左側本体部2Lと、右側の鼻腔に挿入される右側本体部2Rと、左側本体部2Lと右側本体部2Rとを連結する連結部4と、を有している。左側本体部2Lと右側本体部2Rとは、y軸に対して対称形状になっている。
【0015】
左側本体部2L及び右側本体部2Rの各々は、筒状であると共に、他端側2bの端部2bbから一端側2aの端部2aaに向けて窄まった形状を有しており、一端側2aから鼻腔に挿入される。具体的には、左側本体部2L及び右側本体部2Rの各々は、中空部10と、開口部11と、開口部12と、押圧部13と、ガイド片14と、内部凹部15と、外部凹部16と、連通孔17と、を有している。
【0016】
中空部10は、左側本体部2L及び右側本体部2Rの内部に設けられ、一端側2aの端部2aaから他端側2bの端部2bbまで延設されていると共に、端部2bbから端部2aaに向けて窄まった形状を有している。中空部10は、左右方向に延設されている壁部21と、上下方向に延設されている壁部22と、壁部23と、によって囲まれている。壁部21と壁部22とは、互いの延設方向の端部が接続されていると共に、互いに直交する方向に延設されている。壁部23は、壁部21と壁部22とを接続している。左側本体部2Lの壁部23は、右側方に凸となる湾曲形状を有している。右側本体部2Rの壁部23は、左側方に凸となる湾曲形状を有している。壁部21と壁部22との接続部、壁部21と壁部23との接続部、及び壁部22と壁部23との接続部は、各々湾曲している。
【0017】
開口部11は、一端側2aの端部2aaにおいて、中空部10を外部に開放している。
【0018】
開口部12は、他端側2bの端部2bbにおいて、中空部10を外部に開放している。開口部12の内径は、開口部11の内径よりも大きい。
【0019】
押圧部13は、左側本体部2Lの他端側2b及び右側本体部2Rの他端側2bに各々設けられている。左側本体部2Lに設けられている押圧部13は、他端側2bから見て、左側本体部2Lよりも側方である右方に突出する
図2に示す突出位置と、中空部10と重なる
図7に示す重なり位置と、の間で移動可能であると共に、左側本体部2Lが鼻腔に挿入された際に突出位置において鼻中隔下制筋を押圧する。また、右側本体部2Rに設けられている押圧部13は、他端側2bから見て、右側本体部2Rよりも側方である左方に突出する
図2に示す突出位置と、中空部10と重なる
図7に示す重なり位置と、の間で移動可能であると共に、右側本体部2Rが鼻腔に挿入された際に突出位置において鼻中隔下制筋を押圧する。
【0020】
押圧部13は、中間部131と、突出部132と、ヒンジ部133と、を備えている。
【0021】
中間部131は、一対のヒンジ部133の間に設けられている。
【0022】
突出部132は、中間部131よりも厚みが厚い肉厚になっていると共に前後方向の幅が幅広になっており、押圧部13が突出位置に移動した際に鼻中隔下制筋を押圧する位置に設けられている。
【0023】
ヒンジ部133は、中間部131及び突出部132よりも厚みが薄い肉薄になっていると共に、前後方向の幅が中間部131の前後方向の幅と同一になっている。ヒンジ部133は、中間部131と突出部132との間、及び中間部131と左側本体部2L又は右側本体部2Rとの間に設けられている。
【0024】
ここで、押圧部13は、突出位置において他端側2bから見て、突出部132の一部が左側本体部2L又は右側本体部2Rよりも側方に突出する場合に限らず、突出部132の全体が左側本体部2L又は右側本体部2Rよりも側方に突出するようにしてもよい。また、押圧部13は、重なり位置において他端側2bから見て、突出部132の全体が中空部10と重なる場合に限らず、突出部132の一部が中空部10と重なるようにしてもよい。
【0025】
ガイド片14は、板状であると共に一対設けられている。ガイド片14は、一端側2aの中空部10の周囲の内壁部101に設けられると共に開口部11から外部に突出して互いに離れる方向に延設されている。一対のガイド片14は、
図6に示すように、中空部10の中心軸Pに対して所定角度θの傾きを有している。ここで、所定角度θは、30度であることが好ましい。
【0026】
内部凹部15は、
図5に示すように、中空部10の周囲の内壁101をすり鉢状に窪ませで形成されており、複数設けられている。
【0027】
外部凹部16は、
図5に示すように、左側本体部2Lの外壁102及び右側本体部2Rの外壁102をすり鉢状に窪ませて形成されており、内部凹部15と互いに背中合わせとなる位置に設けられている。
【0028】
連通孔17は、
図6に示すように、一端が内部凹部15の内底面に開口すると共に他端が外部凹部16の内底面に開口しており、中空部10を外部に連通している。
【0029】
連結部4は、左側本体部2Lに設けられている押圧部13と、右側本体部2Rに設けられている押圧部13と、を接続している。連結部4は、当接部42と対向する方向に突出していると共に突出方向の先端面が尖っている規制部41と、規制部41と対向する方向に突出していると共に突出方向の先端面が平坦になっている当接部42と、を備えている。
【0030】
上記の構成を有する鼻腔挿入具1は、使用するユーザに応じて、左側本体部2L及び右側本体部2Rの全体的な大きさを変更する。具体的には、子供向け及び女性向けの鼻腔挿入具1は、成人男性向けの鼻腔挿入具1よりも左側本体部2L及び右側本体部2Rの全体的な大きさを小さくする。
【0031】
<鼻腔挿入具の動作>
本発明の実施形態に係る鼻腔挿入具1の動作につき、
図1から
図7を参照しながら、以下に詳細に説明する。
【0032】
まず、
図1の状態の鼻腔挿入具1において、ヒンジ部133を屈曲させて押圧部13を
図7に示す重なり位置に位置させた状態で、左側本体部2Lを一端側2aから左側の鼻腔に挿入すると共に、右側本体部2Rを一端側2aから右側の鼻腔に挿入する。この際に、押圧部13を重なり位置に位置させておくことにより、鼻腔に対して鼻腔挿入具1を容易に挿入することができる。
【0033】
左側本体部2L及び右側本体部2Rを鼻腔に挿入した後に、連結部4を前方に引っ張ることにより、屈曲しているヒンジ部133が伸張して、押圧部13を重なり位置から突出位置に移動させる。この際に、押圧部13の重なり位置から突出位置への移動は、押圧部13にヒンジ部133を設けることにより一挙動で行うことができる。また、連結部4は、対向している規制部41と当接部42とが互いに当接して移動を規制されることにより、必要以上に操作されることを防ぐことができる。このように、連結部4を操作して押圧部13を重なり位置から突出位置に移動させることができるので、押圧部13を容易に移動させることができる。
【0034】
押圧部13が重なり位置から突出位置に移動することにより、押圧部13、左側本体部2L及び右側本体部2Rが鼻腔の内壁を押圧すると共に、押圧部13が鼻中隔下制筋を押圧する。従って、鼻腔挿入具1によって鼻腔をより拡張することができると共に、鼻腔挿入具1の鼻腔からの脱落を防ぐことができる。また、押圧部13によって鼻中隔下制筋を押圧することにより、鼻腔の容積を下方に拡大することができるため、鼻腔を介してより多くの外気を取り込んだり、鼻腔を介してより多くの呼気を排出することができると共に、舌を口蓋まで上昇させることができるため、口呼吸を防止することができ、鼾の発生を抑制することができる。更に、押圧部13による鼻腔の内壁を押圧する反動で、押圧部13によって押圧する鼻腔の内壁の反対側の内壁を、左側本体部2L及び右側本体部2Rによって押圧することができるので、鼻腔全体を拡張することができると共に、鼻腔挿入具1の鼻腔からの脱落を更に抑制することができる。
【0035】
左側本体部2L及び右側本体部2Rは、側方に凸となる湾曲形状を有する壁部23と、互いに直交する方向に延設されている壁部21及び壁部22と、を備えることにより、鼻腔の形状に合致した形状にすることができるため、鼻腔の内壁の全体を広げることができると共に鼻腔からの脱落を極力防ぐことができる。
【0036】
中空部を他端側2bの端部2bbから一端側2aの端部2aaに向けて窄まった形状にすることにより、鼻腔挿入具1を鼻腔に挿入した状態で鼻腔を介して呼吸をする際に、開口部12から中空部10に取り込んだ外気を、中空部10の他端側2bの端部2bbから一端側2aの端部2aaに向けて流速を速くして開口部11から鼻腔に排出することができ、鼻腔を介して十分な量の空気を気道に送り込むことができる。
【0037】
また、中空部10を流れる空気を内部凹部15により渦状にして乱流とすることにより、中空部10を流れる空気の流速を速くすることができる。
【0038】
また、内部凹部15における空気の流れにより、外部凹部16及び連通孔17の空気が内部凹部15に吸い出されて外部凹部16及び連通孔17が内部凹部15よりも陰圧となることにより、鼻の粘膜から分泌される体液が外部凹部16及び連通孔17に蒸発し易くなる。外部凹部16及び連通孔17に蒸発した体液は、外部凹部16及び連通孔17から内部凹部15に吸引されて中空部10に達すると共に、更に中空部10における空気の流れに乗って鼻腔の奥部又は咽頭部粘膜組織に達する。これにより、鼻腔の奥部又は咽頭部粘膜組織を湿潤に保つことができると共に、鼻腔の奥部又は咽頭部粘膜組織の機能を保護することができる。
【0039】
更に、開口部11から鼻腔に排出される空気の流速をガイド片14によって速くすることができると共に、開口部11から鼻腔に排出される空気をガイド片14にガイドさせて中鼻道に向かって送り出すことができ、喉頭に流れる空気の速度を減速させないようにすることができる。ここで、一対のガイド片14を中空部10の中心軸Pに対して各々30度の傾きを有して延設されるように形成することにより、開口部11から鼻腔に排出される空気の流速を速くできることが実験により確認されている。
【0040】
このように、鼻腔挿入具1を介して鼻腔に取り込む空気の流速を速くすることにより、肺に達する空気の流速を速くして肺胞をより広げることができる。また、肺胞をより広げることにより、その反動で肺胞を効率よく萎めることができるために呼気の流速を速くすることができ、気管支における呼気又は吸気の停滞に伴う呼気と吸気との混濁率を小さくすることができると共に、呼吸量を増加させることができるため、血中酸素飽和度SpO2を上昇させることができる。
【0041】
更に、押圧部13により鼻腔の内壁を外方に押圧することにより、鼻腔の周囲の筋群のストレッチ効果を得ることができる。
【0042】
鼻腔挿入具1を鼻腔から取り外す際には、規制部41と当接部42とが離れる方向に連結部4を操作することにより、押圧部13を突出位置から重なり位置に移動させて、押圧部13による鼻腔の内壁への押圧を解除する。この際に、押圧部13の突出位置から重なり位置への移動は、押圧部13にヒンジ部133を設けることにより一挙動で行うことができる。これにより、鼻腔挿入具1を鼻腔から容易に取り外すことができる。また、連結部4を操作して押圧部13を突出位置から重なり位置に移動させることができるので、押圧部13を容易に移動させることができる。
【0043】
このように、本実施形態によれば、一端側2aの端部2aaから他端側2bの端部2bbまで延設される中空部10を内部に有すると共に鼻腔に挿入される右側本体部2R及び左側本体部2Lの他端側2bに設けられ、他端側2bから見て右側本体部2R又は左側本体部2Lよりも側方に突出する突出位置と中空部10と重なる重なり位置との間で移動可能な押圧部13を設けることにより、鼻腔に挿入し易くすることができ、鼻腔に挿入した際には鼻腔を介して十分な量の空気を気道に送り込むことができると共に、鼻腔から脱落することを極力防ぐことができる。
【0044】
また、本実施形態によれば、左側本体部2Lと右側本体部2Rとを連結部4で連結することにより、左側本体部2L及び右側本体部2Rの何れか一方の紛失又は携行忘れを防ぐことができる。
【0045】
本発明は、部材の種類、配置、個数等は前述の実施形態に限定されるものではなく、その構成要素を同等の作用効果を奏するものに適宜置換する等、発明の要旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能であることはもちろんである。
【0046】
具体的には、上記実施形態において、左側本体部2Lと右側本体部2Rとを連結部4により接続したが、左側本体部と右側本体部とを連結部を用いずに分離してもよい。
【0047】
また、上記実施形態において、押圧部13によって鼻中隔下制筋を押圧したが、押圧部13によって鼻腔の鼻中隔下制筋以外の内壁を押圧するようにしてもよい。
【0048】
また、上記実施形態において、押圧部13におけるヒンジ部133の数を押圧部13と連結部4との接続部を挟んで各々2つ設けたが、押圧部13におけるヒンジ部133の数を押圧部13と連結部4との接続部を挟んで各々1つ又は3つ以上の任意の数だけ設けることができる。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明は、鼻腔を介して呼吸する際に使用される鼻腔挿入具に好適である。
【符号の説明】
【0050】
1 鼻腔挿入具
2a 一端側
2aa 端部
2b 他端側
2bb 端部
2L 左側本体部
2R 右側本体部
4 連結部
10 中空部
11 開口部
12 開口部
13 押圧部
14 ガイド片
15 内部凹部
16 外部凹部
17 連通孔
21 壁部
22 壁部
23 壁部
41 規制部
42 当接部
131 中間部
132 突出部
133 ヒンジ部