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特許7165473硬化性樹脂組成物、これを用いたドライフィルムおよび硬化物、並びにこれを有する電子部品
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  • 特許-硬化性樹脂組成物、これを用いたドライフィルムおよび硬化物、並びにこれを有する電子部品 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-26
(45)【発行日】2022-11-04
(54)【発明の名称】硬化性樹脂組成物、これを用いたドライフィルムおよび硬化物、並びにこれを有する電子部品
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/004 20060101AFI20221027BHJP
   G03F 7/029 20060101ALI20221027BHJP
   G03F 7/027 20060101ALI20221027BHJP
   G03F 7/038 20060101ALI20221027BHJP
   H05K 3/28 20060101ALI20221027BHJP
   C08F 2/50 20060101ALI20221027BHJP
   C08F 2/44 20060101ALI20221027BHJP
【FI】
G03F7/004 502
G03F7/029
G03F7/004 501
G03F7/027 515
G03F7/038 501
G03F7/004 512
H05K3/28 F
H05K3/28 D
C08F2/50
C08F2/44 C
C08F2/44 B
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018245018
(22)【出願日】2018-12-27
(65)【公開番号】P2020106658
(43)【公開日】2020-07-09
【審査請求日】2021-10-13
(73)【特許権者】
【識別番号】310024066
【氏名又は名称】太陽インキ製造株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【弁理士】
【氏名又は名称】江藤 聡明
(74)【代理人】
【識別番号】100167106
【弁理士】
【氏名又は名称】倉脇 明子
(72)【発明者】
【氏名】中島 孝典
(72)【発明者】
【氏名】椎名 桃子
【審査官】倉本 勝利
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-170050(JP,A)
【文献】国際公開第2012/141124(WO,A1)
【文献】特開2012-212039(JP,A)
【文献】特開2018-173470(JP,A)
【文献】国際公開第2016/092598(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0269477(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 7/004
G03F 7/029
G03F 7/027
G03F 7/038
H05K 3/28
C08F 2/50
C08F 2/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)カルボキシル基含有樹脂、
(B)硫黄原子を含有するヒンダードフェノール系の酸化防止剤、
(C-1)ビスアシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤、および(C-2)モノアシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤、および
(D)酸化チタン、
を含み、
前記(B)硫黄原子を含有するヒンダードフェノール系の酸化防止剤が、下式(I)
【化1】
で表される化合物であり、上記式中、R1、R2は相互に同一または異なるC1-C6アルキレンであり、前記(B)硫黄原子を含有するヒンダードフェノール系の酸化防止剤の配合量が(A)カルボキシル基含有樹脂100質量部に対して1質量部から10質量部の範囲にあることを特徴とする、硬化性樹脂組成物
【請求項2】
記(A)カルボキシル基含有樹脂が、芳香環を有さないカルボキシル基含有樹脂である請求項1に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項3】
請求項1または2に記載の硬化性樹脂組成物から得られたドライフィルム。
【請求項4】
請求項1または2に記載の硬化性樹脂組成物の硬化物。
【請求項5】
請求項に記載の硬化物を有することを特徴とする電子部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬化性樹脂組成物、これを用いたドライフィルムおよび硬化物、並びにこれを有する電子部品に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電化製品の省エネルギー化への要請から、低消費電力、長寿命の光源として発光ダイオード(LED)が急速に普及している。LEDは、携帯端末、パソコン、テレビ等の液晶ディスプレイのバックライトや照明器具の光源などとして使用されるが、その際、ソルダーレジスト膜が被覆形成されたプリント配線板に直接実装するタイプのLED、いわゆる表面実装型LEDが用いられることが増えてきている。
【0003】
表面実装型LEDにおいて、LEDの光を効率よく利用するために、高反射率のソルダーレジスト膜を有するプリント配線板が求められている。このような要求を満たすため、ソルダーレジスト膜を構成する樹脂組成物に反射率の高い酸化チタン等の顔料を配合することにより白色の明るい照明を得る提案がなされている。
【0004】
一方、上記のような反射率の高い顔料を含む光硬化性の樹脂組成物では、樹脂組成物に光照射する際に、組成物表面で光が反射、散乱してしまうため、樹脂組成物の深部には照射光が到達しにくく、現像した際に、いわゆるアンダーカット(硬化樹脂組成物の膜厚方向の上部はパターン状に硬化するものの、底部が十分に硬化せずに、樹脂組成物の硬化部分の断面が、表面(光照射側)から底部(基板側)に向かって細くなるテーパー形状を呈する状態)が発生することになる。このようなアンダーカットの生じたレジストパターン(硬化塗膜)は、硬化塗膜上部の断面が鋭角状になることから物理的に脆弱となり、衝撃が加われば硬化塗膜が欠損する可能性もある。また、アンダーカットを有するレジストパターンにおけるライン間のスペースは、上述の硬化部分のテーパーとは逆に、底部に向かって幅広の空間として形成されるため基板上にはめっき液等の薬剤が滞留しやすく、めっき液が基板と樹脂組成物硬化物の界面に染み込み、基板と樹脂組成物の硬化物の密着性を低下させる要因となる。
【0005】
この不具合を解消するため、特許文献1では、酸化チタンと、アルミニウム又はマグネシウムを含む含水ケイ酸塩鉱物とを含む含水ケイ酸塩鉱物を焼成したフィラーとを硬化性樹脂組成物配合することにより、白色硬化性樹脂組成物の反射性と解像性とを向上させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特許第号WO2016/092717
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1の樹脂組成物は、各製品や部材における近年の小型化の傾向に対応できるほどの解像性を保証するものではなく、白色度においても未だ改良の余地がある。
上記事情に鑑み、本発明の目的は、解像性、保存安定性および反射特性の全てにおいて優れ、アンダーカットの発生が少ない硬化皮膜を形成することが可能な硬化性樹脂組成物、これを用いたドライフィルムおよび硬化物、並びにこれを有する電子部品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、鋭意研究の結果、本発明の上記目的が、
(A)カルボキシル基含有樹脂、
(B)硫黄原子を含有するヒンダードフェノール系の酸化防止剤、
(C-1)ビスアシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤、および(C-2)モノアシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤、および
(D)酸化チタン、
を含み、
前記(B)硫黄原子を含有するヒンダードフェノール系の酸化防止剤が、(A)カルボキシル基含有樹脂100質量部に対して1質量部から10質量部の範囲にあることを特徴とする、硬化性樹脂組成物により達成されることを見出した。
【0009】
上記(B)硫黄原子を含有するヒンダードフェノール系の酸化防止剤は、下式(I)
【化1】
で表される化合物であり、式(I)中、R1、R2は相互に同一または異なるC1-C6アルキレンから選択されることが好ましい。
【0010】
また、(A)カルボキシル基含有樹脂が、芳香環を有さないことが好ましい。
【0011】
本発明の上記目的は、硬化性樹脂組成物から得られたドライフィルム、硬化性樹脂組成物の硬化物およびこれを含む電子部品によりそれぞれ達成される。
【発明の効果】
【0012】
本発明の硬化性樹脂組成物は、(A)カルボキシル基含有樹脂、(B)硫黄原子を含有するヒンダードフェノール系の酸化防止剤、(C-1)ビスアシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤および(C-2)モノアシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤、および(D)酸化チタン、を含み、(B)硫黄原子を含有するヒンダードフェノール系の酸化防止剤が、(A)カルボキシル基含有樹脂100質量部に対して1質量部から10質量部の範囲にあることにより、当該硬化性樹脂組成物の硬化物の反射特性を向上させ、さらにパターン状の硬化物においてその解像性が極めて良好とされる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】実施例および比較例の硬化性樹脂組成物の硬化物をリフロー処理に付した際のリフロー温度チャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を詳細に説明する。
【0015】
本発明の硬化性樹脂組成物は、上述のとおり、(A)カルボキシル基含有樹脂、(B)硫黄原子を含有するヒンダードフェノール系の酸化防止剤、(C-1)ビスアシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤および(C-2)モノアシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤、および(D)酸化チタンを含み、(B)硫黄原子を含有するヒンダードフェノール系の酸化防止剤が、(A)カルボキシル基含有樹脂100質量部に対して1質量部から10質量部の範囲にある。本発明の硬化性樹脂組成物は、基板上に全面塗布し、乾燥した後、部分的に選択的に紫外線等の活性エネルギー線を照射することで硬化させ、未硬化部分のみを現像により除去してパターン形成を行うフォトリソグラフィー法に用いられる。
【0016】
以下、本発明の硬化性樹脂組成物の成分を説明する。
【0017】
[(A)カルボキシル基含有樹脂]
本発明の硬化性樹脂組成物は(A)カルボキシル基含有樹脂を含有する。
(A)カルボキシル基含有樹脂は、光重合性不飽和二重結合を有するカルボキシル基含有樹脂であるか、または、後述する光重合性モノマーをさらに含有することにより、光硬化性とすることができる。このうち、エチレン性不飽和二重結合を有するカルボキシル基含有感光性樹脂およびエチレン性不飽和二重結合を有さないカルボキシル基含有樹脂のいずれも使用可能である。このうち、特に、分子中にエチレン性不飽和二重結合を有するカルボキシル基含有感光性樹脂が、アルカリ現像を行う感光性の組成物として、更にはエッチング耐性、感度、解像性の面からより好ましい。そして、その不飽和二重結合は、アクリル酸もしくはメタアクリル酸、または、それらの誘導体由来のものが好ましい。
【0018】
(A)カルボキシル基含有樹脂の具体例としては、以下に列挙するような化合物(オリゴマーおよびポリマーのいずれでもよい)が好ましい。
【0019】
(1)(メタ)アクリル酸等の不飽和カルボン酸と、スチレン、α-メチルスチレン、低級アルキル(メタ)アクリレート、イソブチレン等の不飽和基含有化合物との共重合により得られるカルボキシル基含有樹脂。
【0020】
(2)脂肪族ジイソシアネート、分岐脂肪族ジイソシアネート、脂環式ジイソシアネート、芳香族ジイソシアネート等のジイソシアネートと、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロールブタン酸等のカルボキシル基含有ジアルコール化合物およびポリカーボネート系ポリオール、ポリエーテル系ポリオール、ポリエステル系ポリオール、ポリオレフィン系ポリオール、アクリル系ポリオール、ビスフェノールA系アルキレンオキシド付加体ジオール、フェノール性ヒドロキシル基およびアルコール性ヒドロキシル基を有する化合物等のジオール化合物および必要に応じて1つのアルコール性ヒドロキシル基を有する化合物との重付加反応によるカルボキシル基含有ウレタン樹脂。
【0021】
(3)ジイソシアネートと、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビキシレノール型エポキシ樹脂、ビフェノール型エポキシ樹脂等の2官能エポキシ樹脂の(メタ)アクリレート若しくはその部分酸無水物変性物、カルボキシル基含有ジアルコール化合物およびジオール化合物の重付加反応によるカルボキシル基含有感光性ウレタン樹脂。
【0022】
(4)前記(2)または(3)の樹脂の合成中に、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート等の分子中に1つの水酸基と1つ以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物を加え、末端(メタ)アクリル化したカルボキシル基含有感光性ウレタン樹脂。
【0023】
(5)前記(2)または(3)の樹脂の合成中に、イソホロンジイソシアネートとペンタエリスリトールトリアクリレートの等モル反応物等、分子中に1つのイソシアネート基と1つ以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物を加え末端(メタ)アクリル化したカルボキシル基含有感光性ウレタン樹脂。
【0024】
(6)2官能またはそれ以上の多官能エポキシ樹脂に(メタ)アクリル酸を反応させ、側鎖に存在する水酸基に2塩基酸無水物を付加させたカルボキシル基含有感光性樹脂。ここで、エポキシ樹脂が固形であることが好ましい。
【0025】
(7)2官能エポキシ樹脂の水酸基をさらにエピクロロヒドリンでエポキシ化した多官能エポキシ樹脂に(メタ)アクリル酸を反応させ、生じた水酸基に2塩基酸無水物を付加させたカルボキシル基含有感光性樹脂。
【0026】
(8)2官能オキセタン樹脂にアジピン酸、フタル酸、ヘキサヒドロフタル酸等のジカルボン酸を反応させ、生じた1級の水酸基に無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸等の2塩基酸無水物を付加させたカルボキシル基含有ポリエステル樹脂。
【0027】
(9)ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、ノボラック型フェノール樹脂、ポリ-p-ヒドロキシスチレン、ナフトールとアルデヒド類の縮合物、ジヒドロキシナフタレンとアルデヒド類との縮合物等の1分子中に複数のフェノール性水酸基を有する化合物と、エチレンオキシド、プロピレンオキシド等のアルキレンオキシドとを反応させて得られる反応生成物に不飽和基含有モノカルボン酸を反応させ、得られる反応生成物に多塩基酸無水物を反応させて得られるカルボキシル基含有感光性樹脂。
【0028】
(10)1分子中に複数のフェノール性水酸基を有する化合物とエチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等の環状カーボネート化合物とを反応させて得られる反応生成物に不飽和基含有モノカルボン酸を反応させ、得られる反応生成物に多塩基酸無水物を反応させて得られるカルボキシル基含有感光性樹脂。
【0029】
(11)1分子中に複数のエポキシ基を有するエポキシ化合物に、p-ヒドロキシフェネチルアルコール等の1分子中に少なくとも1個のアルコール性水酸基と1個のフェノール性水酸基を有する化合物と、(メタ)アクリル酸等の不飽和基含有モノカルボン酸とを反応させ、得られた反応生成物のアルコール性水酸基に対して、無水マレイン酸、テトラヒドロ無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、無水アジピン酸等の多塩基酸無水物を反応させて得られるカルボキシル基含有感光性樹脂。
【0030】
(12)上記(1)~(11)の樹脂に、さらにグリシジル(メタ)アクリレート、α-メチルグリシジル(メタ)アクリレート等の1分子中に1つのエポキシ基と1つ以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物を付加してなるカルボキシル基含有感光性樹脂。
【0031】
本発明で用いられる(A)カルボキシル基含有樹脂は、(A)芳香環を有さないカルボキシル基含有樹脂であることが好ましい。
【0032】
本発明の硬化性樹脂組成物において、(A)カルボキシル基含有樹脂は、現像性、感度、解像性をより良好とする役割を果たす。また、(A)カルボキシル基含有樹脂は、バックボーン・ポリマーの側鎖に多数のカルボキシル基を有するため、これを用いることによりアルカリ水溶液による現像が可能になる。
【0033】
上記(A)カルボキシル基含有樹脂の酸価は、20~200mgKOH/gの範囲が好ましく、より好ましくは40~150mgKOH/gの範囲である。カルボキシル基含有樹脂の酸価が20mgKOH/g以上の場合、塗膜の密着性が良好となり、アルカリ現像性が良好となる。一方、酸価が200mgKOH/g以下の場合には、現像液による露光部の溶解を良好に抑制できるために、必要以上にラインが痩せたり、場合によっては、露光部と未露光部の区別なく現像液で溶解剥離したりすることを抑制して、良好にパターン状のレジストを描画することができる。
【0034】
また、(A)カルボキシル基含有樹脂の重量平均分子量は、樹脂骨格により異なるが、2,000~150,000、さらには5,000~100,000の範囲が好ましい。重量平均分子量が2,000以上の場合、タックフリー性能が良好であり、露光後の塗膜の耐湿性が良好で、現像時に膜減りを抑制し、解像度の低下を抑制できる。一方、重量平均分子量が150,000以下の場合、現像性が良好で、貯蔵安定性にも優れる。
【0035】
(A)カルボキシル基含有樹脂は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いてよい。本発明の硬化性樹脂組成物が2種以上のカルボキシル基含有樹脂を含有する場合、例えば、上述したカルボキシル基含有感光性樹脂を1種類以上含有することが好ましい。
【0036】
(A)カルボキシル基含有樹脂の配合量は、硬化性樹脂組成物の固形分量に対して総質量のうち、13質量%~50質量%が好ましく、より好ましくは19質量%~50質量%の範囲とされる。(A)カルボキシル基含有樹脂の配合量が硬化性樹脂組成物中、上記の割合にあるとき、解像性が良好となる。さらに、(A)カルボキシル基含有樹脂の配合量が上記範囲を下回る場合には、硬化性樹脂組成物を乾燥して得られるレジスト強度が十分に得られず、配合量が上記範囲を超過する場合には、組成物の粘度が上がり、塗布性、製膜性が低下することがある。
【0037】
[(B)硫黄原子を含有するヒンダードフェノール系の酸化防止剤]
(B)硫黄原子を含有するヒンダードフェノール系の酸化防止剤は、1個以上の硫黄原子と、1個以上のヒンダードフェノールを含むであり、その具体例としては、
(B)硫黄原子を含有するヒンダードフェノール系の酸化防止剤は、硫黄原子を含有するフェノール系の酸化防止剤である。(B)硫黄原子を含有するヒンダードフェノール系の酸化防止剤の具体例としては、4,4’-チオビス(6-tert-ブチル-3-メチルフェノール)4-[[4,6-ビス(オクチルチオ)-1,3,5-トリアジン-2-イル]アミノ]-2,6-ジ-tert-ブチルフェノール、2,4-ビス(オクチルチオ)-6-(4-ヒドロキシ-3,5-ジ-tert-ブチルアニリノ)-1,3,5-トリアジン、4,6-ビス(ドデシルチオメチル)-o-クレゾール、
2,2’-チオジエチルビス[3-(3,5-ジ‐tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]等を挙げることができる。なお、これらの市販品としては、Irganox1520L、Irganox565(いずれもBASFジャパン株式会社製)、K-NOX565、K-NOX1520、K-NOX1726(いずれも三洋貿易株式会社製)を挙げることができる。
【0038】
(B)硫黄原子を含有するヒンダードフェノール系の酸化防止剤は、下式(I)
【化2】
で表される化合物(R1、R2は相互に同一または異なるC1-C6アルキレンである)であることが好ましい。式(I)の化合物を含むレジスト硬化物樹脂組成物は、解像性が良好とされ、更に加熱環境下においても耐変色性(耐黄変性)が良好とされる。
(B)硫黄原子を含有するヒンダードフェノール系の酸化防止剤は、それぞれ単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。
(B)硫黄原子を含有するヒンダードフェノール系の酸化防止剤の配合量(総量)は、(A)カルボキシル基含有樹脂100質量部に対して、1~10質量部、好ましくは4~8質量部であることが好ましい。このような配合量とすることにより、硬化性樹脂組成物の保存安定性と、耐変色性を確保することができ、かつ、アンダーカットの発生が減少し、解像性が向上する。
【0039】
[(C)2種類のアシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤]
光重合開始剤として、2種類のアシルフォスフィンオキサイド、すなわち(C-1)ビスアシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤および(C-2)モノアシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤を使用する。
【0040】
[(C-1)ビスアシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤]
本発明に用いられる(C-1)ビスアシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤としては、ビス-(2,6-ジクロロベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド、ビス-(2,6-ジクロロベンゾイル)-2,5-ジメチルフェニルフォスフィンオキサイド、ビス-(2,6-ジクロロベンゾイル)-4-プロピルフェニルフォスフィンオキサイド、ビス-(2,6-ジクロロベンゾイル)-1-ナフチルフォスフィンオキサイド、ビス-(2,6-ジメトキシベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド、ビス-(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチルペンチルフォスフィンオキサイド、ビス-(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,5-ジメチルフェニルフォスフィンオキサイド、ビス-(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド、(2,5,6-トリメチルベンゾイル)-2,4,4-トリメチルペンチルフォスフィンオキサイド等が挙げられる。中でもビス-(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド(IGM Resins B.V.社製、商品名;Omnirad819)が入手しやすく実用的である。
【0041】
[(C-2)モノアシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤]
本発明に用いられる(C-2)モノアシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤としては、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、2,6-ジメトキシベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、2,6-ジクロロベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、2,4,6-トリメチルベンゾイルフェニルフォスフィン酸メチルエステル、2-メチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、ピバロイルフェニルフォスフィン酸イソプロピルエステル等が挙げられる。中でも2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド(IGM Resins B.V.社製、Omnirad TPO H)が入手しやすく実用的である。
【0042】
上記2種類のアシルフォスフィンオキサイドを組み合わせて用いると、酸化チタンを配合した高反射率の塗膜であっても、当該塗膜を透過する少量の光によりこれを硬化させることができるため、当該塗膜を用いて、高反射率かつ高精細なパターンを形成することでできる。
【0043】
(C)2種類のアシルフォスフィンオキサイドの配合量(合計量)は、硬化性樹脂組成物中の(A)カルボキシル基含有樹脂100質量部に対して0.5~35質量部、より好ましくは0.5~20質量部、さらに好ましくは1~10質量部である。
光重合開始剤の配合量が0.5質量部以上とすることにより、光硬化性が十分とされるため、硬化性樹脂組成物の基板に対する密着性が向上する。一方、35質量部以下とすることにより硬化性樹脂組成物表面での光吸収が過度に激しくなる傾向を抑制し、深部硬化性を確保することができる。2種類のアシルフォスフィンオキサイドの配合比率は、1対9~9対1が好ましい。この配合比率の範囲内であれば、併用による効果を得ることできる。
【0044】
[(D)酸化チタン]
本発明で用いる(D)酸化チタンとしては、ルチル型酸化チタンでもアナターゼ型酸化チタンでもよいが、ルチル型チタンを用いることが好ましい。同じ酸化チタンであるアナターゼ型酸化チタンは、ルチル型酸化チタンと比較して白色度が高く、白色顔料としてよく使用されるが、アナターゼ型酸化チタンは、光触媒活性を有するために、特にLEDから照射される光により、絶縁性樹脂組成物中の樹脂の変色を引き起こすことがある。これに対し、ルチル型酸化チタンは、白色度はアナターゼ型と比較して若干劣るものの、光活性を殆ど有さないために、酸化チタンの光活性に起因する光による樹脂の劣化(黄変)が顕著に抑制され、また熱に対しても安定である。このため、LEDが実装されたプリント配線板の絶縁層において白色顔料として用いられた場合に、高反射率を長期にわたり維持することができる。
【0045】
ルチル型酸化チタンとしては、公知のものを使用することができる。ルチル型酸化チタンの製造法には、硫酸法と塩素法の2種類あり、本発明では、いずれの製造法により製造されたものも好適に使用することができる。ここで、硫酸法は、イルメナイト鉱石やチタンスラグを原料とし、これを濃硫酸に溶解して鉄分を硫酸鉄として分離し、溶液を加水分解することにより水酸化物の沈殿物を得、これを高温で焼成してルチル型酸化チタンを取り出す製法をいう。一方、塩素法は、合成ルチルや天然ルチルを原料とし、これを約1000℃の高温で塩素ガスとカーボンに反応させて四塩化チタンを合成し、これを酸化してルチル型酸化チタンを取り出す製法をいう。その中で、塩素法により製造されたルチル型
酸化チタンは、特に熱による樹脂の劣化(黄変)の抑制効果が顕著であり、本発明においてより好適に用いられる。
【0046】
市販されているルチル型酸化チタンとしては、例えば、タイペークR-820、タイペークR-830、タイペークR-930、タイペークR-550、タイペークR-630、タイペークR-680、タイペークR-670、タイペークR-680、タイペークR-670、タイペークR-780、タイペークR-850、タイペークCR-50、タイペークCR-57、タイペークCR-80、タイペークCR-90、タイペークCR-93、タイペークCR-95、タイペークCR-97、タイペークCR-60、タイペークCR-63、タイペークCR-67、タイペークCR-58、タイペークCR-85、タイペークUT771(石原産業株式会社製)、タイピュアR-100、タイピュアR-101、タイピュアR-102、タイピュアR-103、タイピュアR-104、タイピュアR-105、タイピュアR-108、タイピュアR-900、タイピュアR-902、タイピュアR-960、タイピュアR-706、タイピュアR-931(デュポン株式会社製)、TITONE R-25、R-21、R-32、R-7E、R-5N、R-61N、R-62N、R-42、R-45M、R-44、R-49S、GTR-100、GTR-300、D-918、TCR-29、TCR-52、FTR-700(堺化学工業株式会社製)等を使用することができる。
【0047】
また、アナターゼ型酸化チタンとしては、公知のものを使用することができる。市販されているアナターゼ型酸化チタンとしては、TITONA-110、TITON TCA-123E、TITON A-190、TITON A-197、TITON SA-1、TITONSA-1L(堺化学工業株式会社製)、TA-100、TA-200、TA-300、TA-400、TA-500、TP-2(富士チタン工業株式会社製)、TITANIXJA-1、TITANIX JA-3、TITANIX JA-4、TITANIX JA-5、TITANIX JA-C(テイカ株式会社製)、KA-10、KA-15、KA-20、KA-30(チタン工業株式会社製)、タイペークA-100、タイペークA-220、タイペークW-10(石原産業株式会社製)等を使用することができる。
【0048】
これらの酸化チタンの中でも、ルチル型の酸化チタンであって、表面が含水アルミナ、水酸化アルミニウム、および/または二酸化ケイ素で処理された酸化チタンを用いることが、組成物中での分散性、保存安定性、難燃性の観点から特に好ましく、特に(B)硫黄原子を含有するヒンダードフェノール系の酸化防止剤、および(C)2種類のアシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤との併用時に、熱劣化による変色を抑えることができる。
【0049】
これら酸化チタンの配合量は、前記カルボキシル基含有樹脂(A)100質量部に対して、0.1~500質量部の範囲が望ましく、好ましくは1~300質量部である。
【0050】
[その他の成分]
この他、本発明の硬化性樹脂組成物には、更に必要に応じて、熱硬化性樹脂、光反応性モノマー、増粘剤、触媒、流動性改質剤、表面張力調整剤、密着性付与剤またはカプリング剤、界面活性剤、着色剤、紫外線吸収剤、シリコーン系、フッ素系、高分子系等の消泡剤およびレベリング剤、マット剤、膜物性を調整するためのポリエステル系樹脂、ビニル系樹脂、アクリル系樹脂、ゴム系樹脂、ワックス類の少なくとも1種を、さらに配合することができる。さらに、上記(D)成分の他の無機フィラーを配合することもできる。これらの成分は、各成分(A)~(D)により得られる性能を損なわず、添加による所望の効果が得られる範囲で、適宜使用量を調節して使用される。
本発明の硬化性樹脂組成物は、上記各成分の他に、さらに光反応性モノマーを含むことができる。光反応性モノマーとしては、特に、(メタ)アクリレート((メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリレートモノマー)を用いることができる。「(メタ)アクリレート」とは、アクリレート、メタクリレートおよびそれらの混合物を総称する用語で、他の類似の表現についても同様である。
(メタ)アクリレート化合物は、単官能、多官能のいずれであってもよいが、活性エネルギー線照射、特に紫外線照射により光硬化して、樹脂成分を、アルカリ水溶液に不溶化し、または、不溶化を助けるものである。このような化合物としては、慣用公知のポリエステル(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、カーボネート(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレートなどが使用できる。
単官能(メタ)アクリレートモノマーの例としては、2-ヒドロキシエチルアクリレート、2-ヒドロキシプロピルアクリレートなどのヒドロキシアルキルアクリレート類;N,N-ジメチルアクリルアミド、N-メチロールアクリルアミド、N,N-ジメチルアミノプロピルアクリルアミドなどのアクリルアミド類;N,N-ジメチルアミノエチルアクリレート、N,N-ジメチルアミノプロピルアクリレートなどのアミノアルキルアクリレート類;フェノキシアクリレートを含む単官能アクリレート等を、多官能(メタ)アクリレートモノマーの例としては、慣用公知のポリエステル(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、カーボネート(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。具体的には、エチレングリコール、メトキシテトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコールなどのグリコールのジアクリレート類;ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリス-ヒドロキシエチルイソシアヌレートなどの多価アルコール又はこれらのエチレオキサイド付加物、プロピレンオキサイド付加物、もしくはε-カプロラクトン付加物などの、多価アクリレート類;ビスフェノールAジアクリレート、及びこれらのフェノール類のエチレンオキサイド付加物もしくはプロピレンオキサイド付加物などの多価アクリレート類;グリセリンジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、トリグリシジルイソシアヌレートなどのグリシジルエーテルの多価アクリレート類;ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートジオール、水酸基末端ポリブタジエン、ポリエステルポリオールなどのポリオールを直接アクリレート化、もしくは、ジイソシアネートを介してウレタンアクリレート化したアクリレート類及びメラミンアクリレート、及び前記アクリレートに対応する各メタアクリレート類の1種、又は複数以上を組み合わせて用いることができる。
本発明の硬化性樹脂組成物は、(D)酸化チタン以外のフィラーとしては、公知の無機又は有機充填剤が使用できる。具体例としては、金属酸化物、水酸化アルミニウムなどの金属水酸化物、ベーマイト、タルク等を、酸化チタンの反射率を損なわない範囲の量及び種類により配合することができる
【0051】
使用可能な消泡剤の例としては、シリコーン系消泡剤、フッ素系消泡剤、アクリル系消泡剤が挙げられる。シリコーン系の消泡剤としてはビックケミー・ジャパン株式会社製のBYK(登録商標)-063、-065、-066N、-081、-141、-323、および信越化学株式会社製のKS-66、KS-69、X-50-1105G等、フッ素系消泡剤としてはDIC株式会社製のメガファックRS、F-554、F-557等、アクリル系消泡剤としては楠本化成株式会社製のディスパロンOX-880EF、OX-70などが挙げられる。
【0052】
着色剤としては、フタロシアニン・ブルー、フタロシアニン・グリーン、アイオジン・グリーン、ジスアゾイエロー、クリスタルバイオレット、酸化チタン、カーボンブラック、ナフタレンブラックを、
増粘剤としては、ベントナイト、微紛シリカを含む公知慣用の増粘剤を、
シランカップリング剤としては、γ-クロロプロピルメトキシシラン等のハロゲン含有シランカップリング剤、ビニルエトキシシラン、ビニルメトキシシラン、ビニルトリス(β-メトキシエトキシ)シラン、ビニルトリアセトキシシラン、ビニルトリクロロシラン等のビニル基含有シランカップリング剤、(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン等の(メタ)アクリロイルイ含有シランカップリング剤、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等のグリシジル基含有シランカップリング剤、γ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン等のメルカプト含有シランカプリング剤、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-β-(アミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン等のアミノ基含有シランカップリング剤を挙げることができる。
【0053】
本発明の硬化性樹脂組成物の25℃における粘度は、1から1500dPa・sの範囲、特に10から1000dPa・sの範囲にあると好ましい
【0054】
本発明の硬化性樹脂組成物は、例えば前記有機溶剤で塗布方法に適した粘度に調整し、基材上に、ディップコート法、フローコート法、ロールコート法、バーコーター法、スクリーン印刷法、カーテンコート法等の方法により塗布し、約60~100℃の温度で組成物中に含まれる有機溶剤を揮発乾燥(仮乾燥)させることにより、タックフリーの塗膜を形成できる。
【0055】
光硬化性樹脂組成物の場合は、その後、接触式(又は非接触方式)により、パターンを形成したフォトマスクを通して選択的に活性エネルギー線により露光もしくはレーザーダイレクト露光機により直接パターン露光し、未露光部を希アルカリ水溶液(例えば0.3~3質量%炭酸ソーダ水溶液)により現像してレジストパターンが形成される。さらに熱硬化性成分を含有している組成物の場合、例えば約140~180℃の温度に加熱して熱 硬化させることにより、前記(A)カルボキシル基含有樹脂のカルボキシル基と、熱硬化性成分が反応し、耐熱性、耐薬品性、耐吸湿性、密着性、電気特性などの諸特性に優れた硬化塗膜を形成することができる。尚、熱硬化性成分を含有していない場合でも、熱処理することにより、露光時に未反応の状態で残ったエチレン性不飽和結合が熱ラジカル重合し、塗膜特性が向上するため、目的・用途により、熱処理(熱硬化)してもよい。
【0056】
上記基材としては、予め回路形成されたプリント配線板やフレキシブルプリント配線板の他、紙フェノール、紙エポキシ、ガラス布エポキシ、ガラスポリイミド、ガラス布/不繊布エポキシ、ガラス布/紙エポキシ、合成繊維エポキシ、フッ素・ポリエチレン・PPE・シアネートエステル等を用いた高周波回路用銅張積層版等の材質を用いたもので全てのグレード(FR-4等)の銅張積層版、その他ポリイミドフィルム、PETフィルム、ガラス基板、セラミック基板、ウエハ板等を挙げることができる。
【0057】
本発明の硬化性樹脂組成物を塗布した後に行う揮発乾燥は、熱風循環式乾燥炉、IR炉、ホットプレート、コンベクションオーブンなど(蒸気による空気加熱方式の熱源を備えたものを用い乾燥機内の熱風を向流接触せしめる方法及びノズルより支持体に吹き付ける方式)を用いて行うことができる。
光硬化性樹脂組成物の場合、塗布し、溶剤を揮発乾燥した後に得られた塗膜に対し、露光(活性エネルギー線の照射)を行うことにより、露光部(活性エネルギー線により照射された部分)が硬化する。
【0058】
上記活性エネルギー線照射に用いられる露光機としては、高圧水銀灯ランプ、超高圧水銀灯ランプ、メタルハライドランプ、水銀ショートアークランプ等を搭載し、350~450nmの範囲で紫外線を照射する装置であればよく、さらに、直接描画装置(例えばコンピューターからのCADデータにより直接レーザーで画像を描くレーザーダイレクトイメージング装置)も用いることができる。直描機のレーザー光源としては、最大波長が350~410nmの範囲にあるレーザー光を用いていればガスレーザー、固体レーザーどちらでもよい。画像形成のための露光量は膜厚等によって異なるが、一般には20~800mJ/cm、好ましくは20~600mJ/cmの範囲内とすることができる。
【0059】
前記現像方法としては、ディッピング法、シャワー法、スプレー法、ブラシ法等によることができ、現像液としては、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、リン酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、アンモニア、アミン類などのアルカリ水溶液が使用できる。
【0060】
なお、本発明の硬化性樹脂組成物は、ドライフィルムの形態を採らずに、写真現像法、スクリーン印刷法等の従来より公知の方法によっても適用可能であることは言うまでもない。
【0061】
硬化性樹脂組成物に熱硬化成分を配合する場合には、公知の加熱手段、例えば、熱風炉、電気炉、赤外線誘導加熱炉等の加熱炉を用いることにより熱硬化することができる。本発明の硬化性組成物により得られた硬化物が一般的な諸特性の要求を満たすには、120℃~170℃にて5分~60分加熱することにより硬化することが好ましい。また、本発明の硬化性樹脂組成物を、電子部品等に用いると、その製造および使用において上記の優れた物理的特性が得られるために有益である。
【0062】
なお、本発明において電子部品とは、電子回路に使用する部品を意味し、プリント配線板、トランジスタ、発光ダイオード、レーザーダイオード等の能動部品の他、抵抗、コンデンサ、インダクタ、コネクタ等の受動部品も含まれ、本発明の硬化性組成物がこれらの絶縁性硬化塗膜として、本発明の効果を奏するものである。
【0063】
本発明の硬化性組成物は、密着性、耐薬品性、及び組成物の保存安定性にも優れることから種々の用途に適用可能であり、適用対象に特に制限はない。例えばプリント配線板用のソルダーレジスト、およびマーキング等に用いられることが好ましい。
【実施例
【0064】
以下、本発明を、実施例により詳細に説明する。本発明は、下記実施例に限定されるものではなく、以下に記載の「部」及び「%」とは、特に断りのない限り全て質量基準とする。
【0065】
[実施例1~9、比較例1~4]
I-I.評価ペーストの調製
後述の表2に示す割合(単位:質量部)で各成分を配合、撹拌して3本ロールミルにて分散させて、それぞれ本発明の組成物(実施例1~9)および比較組成物(比較例1~4)(いずれもペースト状態(以下評価ペーストともいう))を得た。実施例1~9、比較例1~4共に、下記の保存安定性試験評価の判定値が30μm以下になるようにペーストを撹拌・調整した。得られた評価ペーストについて、以下の評価試験を行った。
【0066】
I-II.保存安定性評価
エリクセン社製グラインドメーター(最大目盛り:50μm、最小目盛り:0μm、区間:5μm刻み)とスクレーパーを用い、各評価ペーストの分散度を下記の方法にて確認した。すなわち、
まず試験者に対して最小メモリが手前になるように、グラインドゲージを置き、メモリの最大値より少し上のところに評価ペーストを置いた。
次に最大メモリより少し上に、溝に対して垂直になる様にスクレーパーを置き、その角度を維持したまま、手前にスクレーパーを一定の速度で引き動かした。
次に、グラインドゲージの各区間に発生した粒の個数をカウントし、5個以上確認された範囲の最大値の読み値を分散度(初期値)とした。
下表1に、判定例を示して判定方法を説明する。
【0067】
【表1】
【0068】
例えば、表1の例1ではゲージ区間20-25に粒が5個確認され、これより大きな目盛り区間はいずれも粒が5個未満であるため、ゲージ区間20-25の最大値である25を分散度としている。また、例2では、ゲージ区間30-35に粒が10個のため、分散度35、例3ではゲージ区間25-30に粒が10個のため、分散度30と評価した。
これらは、測定法を示す例であり、必ずしも下記の実施例、比較例のいずれかと対応するものではないが、本発明の各実施例および比較例についても同様の試験を行い初期値を定めた。
さらに、各評価ペーストを遮光可能なプラスチック容器に入れ、25℃の環境下に90日間保管し、90日経過後の評価ペーストの分散度を上記のグラインドメーターにて測定した。初期値と、90日経過後の測定値を、下記の基準にて比較した。
なお、この評価では、90日間経過後に、組成物の粒子が5粒以上発生している最大粒径区間(どの区間にも5粒以上の粒子の発生が確認できない場合は、最小区間)を認定し、下記のように初期値との比較に用いた。初期値からの変化した区間数が小さいほど、粒子の凝集が抑制されていること、すなわち保存安定性が高いことを示す。
【0069】
<保存安定性評価基準>
◎:90日経過後のペーストの分散度(区間)が初期値から不変
〇:90日経過後のペーストの分散度(区間)が初期値から1区間(初期値との差:5μm)変化
△:90日経過後のペーストの分散度(区間)が初期値から2区間(初期値との差:10μm)変化
×:90日経過後のペーストの分散度(区間)が初期値から3区間以上(初期値との差:15μm以上) 変化
【0070】
II-I.評価基板A作製(解像性試験用)
バフ研磨により前処理した銅張積層板基板に対し、実施例1~9および比較例1~4の各組成物を、スクリーン印刷により、膜厚30μmにて施した。このように組成物を塗布した各基板を、80℃に調整された熱風循環式乾燥炉に30分間載置し、組成物を乾燥させた。乾燥後の各組成物の膜厚は20μmであった。
乾燥後の上記組成物の上面(露出面)を、ライン/スペースが30μm/30μm 、40μm/40μm、50μm/50μm、60μm/60μm、70μm/70μm、80μm/80μm、90μm/90μm、100μm/100μmのパターンが形成されたネガフィルムで被覆し、メタルハライドランプ光源の露光機(オーク製作所製HMW-680GW)を用いて600mJ/cmにて露光した。
露光後の組成物を液温30℃、圧力0.2MPaにて1質量%の炭酸ナトリウムにて60秒間現像した。
【0071】
II-II.解像性評価
上記処理後の評価基板Aについて、基板に残存している最小設計ライン幅を目視確認し、これにより以下の基準にて解像性の評価を行った。
【0072】
<解像性評価基準>
◎:最小設計ライン幅70μm以下までラインが残っている
〇:最小設計ライン70μm超、80μmまでラインが残っている
△:最小設計ライン幅80μm超、90μmまでラインが残っている
×:設計ライン幅90μm超の場合でも、ラインが全く残っていない
【0073】
III-I.評価基板B作製(加熱変色(黄変)耐性試験用)
バフ研磨により前処理した銅張積層板基板に対し、実施例1~9および比較例1~4の各組成物を、スクリーン印刷により、膜厚30μmにて施した。このように組成物を塗布した各基板を、80℃に調整された熱風循環式乾燥炉に30分間載置し、組成物を乾燥させた。乾燥後の各組成物の膜厚は20μmであった。
乾燥後の上記組成物に対し、上面からメタルハライドランプ光源の露光機(オーク製作所製、HMW-680GW)を用いて600mJ/cmにて全面露光した。
露光後の組成物を液温30℃、圧力0.2MPaにて1質量%の炭酸ナトリウムにて60秒現像した。その後、150℃に調整された熱風循環式乾燥炉にて組成物を60分間乾燥させ(ポストキュア)、評価基板Bを得た。
【0074】
III-II.加熱変色(黄変)耐性評価
上記評価基板Bを、最高温度270℃のはんだリフロー装置(ETC社製NIS-20シリーズ)に5回通し、コニカミノルタ社製分光測色計 CM-2600dを用いて、処理前後のL*a*b*を測定し、下記の式によりΔE*abを算出した。の基板の変化率ΔEを求めた。
【0075】
ΔE*ab=((L*2-L*1)2+(a*2-a*1)2+(b*2-b*1)2)0.5
(式中、L*1、a*1、b*1は、各々L*、a*、b*の初期値を表し、L*2、a*2、b*2は、各々リフロー処理後のL*、a*、b*の値を表す。)
すなわち、ΔE*abは、L*a*b*表色系において初期値と加速劣化後の差を算出したもので、数値が大きいほど、変色が大きいことを示す。下記基準による評価結果を表2に記載した なお、リフロー処理時のリフロー温度チャートを、図1に示す。
【0076】
<加熱変色耐性評価基準>
◎:ΔE*abが2未満
〇:ΔE*abが2以上3未満
△:ΔE*abが3以上4未満
×:ΔE*abが4以上
【0077】
IV-I.評価基板C作製(反射率試験用)
バフ研磨により前処理した銅張積層板基板に対し、実施例1~9および比較例1~4の各組成物を、スクリーン印刷により、膜厚30μmにて施した。このように組成物を塗布した各基板を、80℃に調整された熱風循環式乾燥炉に30分間載置し、組成物を乾燥させた。乾燥後の各組成物の膜厚は20μmであった。
乾燥後の上記組成物に対し、上面からメタルハライドランプ光源の露光機(オーク製作所製、HMW-680GW)を用いて600mJ/cmにて全面露光した。
露光後の組成物を液温30℃、圧力0.2MPaにて1質量%の炭酸ナトリウムに60秒浸漬現像した。その後、150℃に調整された熱風循環式乾燥炉にて組成物を60分間乾燥させ(ポストキュア)、評価基板Cを得た。
【0078】
IV-II.反射率評価
上記にて作製した基板上に形成した塗膜の反射率をコニカミノルタ社製色差計CM-2600dにて測定し、XYZ標識系のY値を反射率とした。
【0079】
<反射率評価基準>
◎:Y値が85%以上
〇:Y値が83%以上85%未満
△:Y値が81%以上83%未満
×:Y値が81%未満
【0080】
V-I.評価基板D作製(アンダーカット率測定試験用)
バフ研磨により前処理した銅張積層板基板(銅厚35μm) のCu側に、実施例1~9および比較例1~4の各組成物を、スクリーン印刷により、膜厚30μmにて施した。このように組成物を塗布した各基板を、80℃に調整された熱風循環式乾燥炉に30分間載置し、組成物を乾燥させた。乾燥後の各組成物の膜厚は20μmであった。
乾燥後の上記組成物の上面(露出面)を、ライン/スペースが100μm/300μm の パターンが形成されたネガフィルムで被覆し、メタルハライドランプ光源の露光機(オーク製作所製、HMW-680GW)を用いて600mJ/cmにて露光した。
露光後の組成物を液温30℃、圧力0.2MPaにて1質量%の炭酸ナトリウムにて60秒現像した。その後、150℃に調整された熱風循環式乾燥炉にて組成物を60分間乾燥させ(ポストキュア)た。このように、銅張積層板のCuライン間にSRダムが形成された評価基板Dを得た。
【0081】
V-II.アンダーカット率測定試験
上記のように得られた評価基板Dを、丸本ストルアス社製 冷間埋込樹脂No.105/冷間埋込樹脂No.105用硬化剤で封止し、150℃にて30分間加熱して熱硬化させ、評価基板DのCu側をエポキシ樹脂により封止した。
このように封止された評価基板Dを、基板の水平面と直行する方向に切断し、塗膜断面を、倍率500倍のマイクロコープ(VHX-600)により観察し、以下の式に準じてアンダーカット率を算出し、以下の評価基準によりこれを評価した。
アンダーカット率(%)=(Bottom ÷ Top) ×100
(上記式中、Top(頂部)とは、塗膜断面の基材と接触していない部分の最大幅、Bottom(底部)とは塗膜断面の基材と接触している部分の最大幅を意味する)
【0082】
<アンダーカット率評価基準>
◎:70%以上
〇:65%以上70%未満
△:60%以上65%未満
×:60%未満
アンダーカット率の数値が大きいほどアンダーカットの発生が少なく、組成物が深部まで均一に硬化していることを意味する。
評価ペーストの組成および各評価試験の結果を表2に示す。
【0083】
【表2】
【0084】
*1 芳香環を有さないカルボキシル基含有共重合樹脂、サイクロマーP(ACA)Z250(ダイセル・オルネクス社製、固形分45%、酸価70mgKOH/g(表中の数値は固形分量を示す)、上記(12)のカルボキシル基含有樹脂に該当。
*2 ビスフェノールF構造を有するカルボキシル基含有樹脂、Kayarad ZFR-1401H、(日本化薬株式会社製)、固形分62%、(酸価=100mgKOH/g)(表中の数値は固形分量を示す)、上記(7)のカルボキシル基含有樹脂に該当。
*3 IRGANOX 1035、BASFジャパン株式会社製、酸化防止剤、2,2’-チオジエチルビス[3-(3,5-ジ‐tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネーート]
*4 IRGANOX 1010、BASFジャパン株式会社製、酸化防止剤、ペンタエリスリトールテトラキス(3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート)
*5 Omnirad 819、IGM Resins B.V社製、アシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤
*6 Omnirad TPO H、IGM Resins B.V社製、アシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤
*7 Omnirad 907、IGM Resins B.V社製、α-アミノアルキルフェノン系光重合開始剤
*8 Omnirad 184、IGM Resins B.V社製、α-ヒドロキシアルキルフェノン系光重合開始剤
*9 TITONE R-62、堺化学工業株式会社製、SiO2・Al2O3処理二酸化チタン
社製)
*10 LMP-100、富士タルク工業株式会社製、タルク
*11 EPICLON(登録商標)850-s、DIC Corporation社製、ビスフェノールA型エポキシ樹脂
*12 DPHA、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート
*13 ラロマー(登録商標)LR8863、BASF SE社製,EO変性トリメチロールプロパンテトラアクリレート
*14 DICY(粉砕品)、ジシアンジアミド、硬化剤
*15 メラミン(粉砕品)、触媒
*16 シリコン KS-66、信越化学工業株式会社製、オイルコンパウンド型消泡剤
*17 BYK(登録商標)-1791、ビックケミー・ジャパン製、非芳香族系消泡剤
*18 Disperbyk-111、ビックケミー・ジャパン製、無溶剤型湿潤分散剤
*19 カーボンブラック、MA-100、三菱ケミカル株式会社製
【0085】
実施例の結果より、本発明の硬化性組成物又はこれから得られた硬化塗膜は、保存安定性、解像性、加熱変色(黄変)耐性、反射率、およびアンダーカット率の全てにおいて、優れていることがわかる。
【0086】
本発明は上記の実施の形態の構成及び実施例に限定されるものではなく、発明の要旨の範囲内で種々変形が可能である。
図1