(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-26
(45)【発行日】2022-11-04
(54)【発明の名称】シールド掘進機のカッタ盤およびそれを備えるシールド掘進機
(51)【国際特許分類】
E21D 9/087 20060101AFI20221027BHJP
【FI】
E21D9/087 A
E21D9/087 C
(21)【出願番号】P 2022039724
(22)【出願日】2022-03-14
【審査請求日】2022-05-13
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000140292
【氏名又は名称】株式会社奥村組
(74)【代理人】
【識別番号】100101971
【氏名又は名称】大畑 敏朗
(72)【発明者】
【氏名】村中 浩昭
(72)【発明者】
【氏名】山本 祐司
(72)【発明者】
【氏名】森 竜生
【審査官】亀谷 英樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-101910(JP,A)
【文献】特開2015-021342(JP,A)
【文献】特開2006-070598(JP,A)
【文献】実開昭57-123894(JP,U)
【文献】特開2017-040050(JP,A)
【文献】特開2002-322647(JP,A)
【文献】特開2021-014751(JP,A)
【文献】特開2021-067059(JP,A)
【文献】特開平07-062982(JP,A)
【文献】特開平10-169374(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第00735237(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E21D 1/00-9/14
E21D 11/00-19/06
E21D 23/00-23/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転中心に位置するハブ部と、
前記ハブ部から放射状に延在する複数のスポーク部と、
それぞれの前記スポーク部の間に形成され、掘削土砂を取り込むための貫通孔と、
前記複数のスポーク部の延在方向の外周端部を連結する外周リング部と、
前記複数のスポーク部の前面に設けられた複数の先行ビットと、
前記複数のスポーク部の延在方向
におけるカッタ盤の正面視での回転中心から前記スポーク部の外端部までの距離の中央位置から内側のみに設けられ、前記スポーク部の延在方向の
前記中央位置から内側を保護する保護部材と、
前記複数のスポーク部の延在方向の
前記中央位置から外側のみの幅方向の両外縁部に設けられた第1のスクレーパツースと、
前記複数のスポーク部の延在方向の外周端部における幅方向の両外縁部に設けられた第2のスクレーパツースと、
を有
し、
前記複数のスポーク部は、延在方向の前記中央位置から内側では、カッタ盤の正面視における幅方向の寸法が前記ハブ部に近づくにつれて細くなるように形成され、延在方向の前記中央位置から外側では、カッタ盤の正面視における幅方向の寸法が同一になるように形成され、
前記複数のスポーク部の前記中央位置から内側に配置された前記先行ビットの前記スポーク部の延在方向に対するピッチは、前記中央位置から外側に配置された前記先行ビットの前記スポーク部の延在方向に対するピッチよりも狭くなっている、
ことを特徴とするシールド掘進機のカッタ盤。
【請求項2】
前記保護部材は、前記スポーク部の延在方向の前記中央位置から内側におけるカッタ盤の正面視での幅方向の両側の縁部および前記先行ビットの間に設けられている、
ことを特徴とする請求項1記載のシールド掘進機のカッタ盤。
【請求項3】
前記保護部材は耐摩耗鋼板である、
ことを特徴とする請求項1または2記載のシールド掘進機のカッタ盤。
【請求項4】
請求項1~3の何れか一項に記載のカッタ盤を機器本体の前面に回転自在の状態で備える、
ことを特徴とするシールド掘進機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シールド掘進機およびそれを備えるシールド掘進機に関する技術である。
【背景技術】
【0002】
シールド掘進機は、機器本体の前面に設けられたカッタ盤を地山の切羽に押し当て回転させながら前進することで地山に掘削坑を形成する機器である。
【0003】
シールド掘進機には、泥土圧シールド掘進機と泥水式シールド掘進機とがある。前者のシールド掘進機は、添加材をチャンバ内に注入して掘削土を泥土化(流動化)して所定の圧力を与えることにより切羽を安定させる構造となっており、より詳しくは、掘削土砂を切羽と隔壁間に充満させ、これに添加材を注入・混練することにより、土砂を流動性と止水性の高い泥土(礫と添加材の混合物)とし、その土圧により切羽の安定を図りながら掘進するシールド機である。なお、チャンバ内で添加材と混合された土砂は、スクリュコンベアに取り込まれて機器本体の後方から排出される。また、後者のシールド掘進機は、チャンバ内の泥水に所定の圧力を加えることにより切羽を安定させ、泥水を循環させることで掘削土を流体輸送する構造となっている。
【0004】
ここで、泥土圧シールド掘進機のカッタ盤は、回転中心に位置するハブ部と、そのハブ部から放射状に延在する複数のスポーク部と、複数のスポーク部の延在方向の外周端部を連結する外周リング部とを備えている。また、カッタ盤で掘削された土砂等をカッタ盤の背後に形成されたチャンバに取り込むための貫通孔がスポーク部の間に形成されている。
【0005】
各スポーク部には、ローラカッタ、先行ビットおよびスクレーパツース等のような各種の掘削手段が配置されている。ローラカッタは、各スポーク部の前面に配置されており、主に玉石や巨礫等(以下、単に「玉石」ということもある。)を破砕する。先行ビットは、各スポーク部の前面に複数配置されており、先行掘削を行うとともにスクレーパツースを保護する。さらに、スクレーパツースは、各スポーク部の幅方向の両外縁部、すなわち、掘削土砂の取り込み口の外周角部において各スポーク部の延在方向に沿って複数配置されており、地山を掘削するとともに掘削した土砂をチャンバ内に取り込む(例えば特許文献1~5参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2012-122257号公報
【文献】特開2012-122258号公報
【文献】特開2012-122259号公報
【文献】特開2012-122260号公報
【文献】特開平10-140984号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、泥土圧シールド掘進機においては、カッタ盤に形成された貫通孔から取り込むことのできる最大径以上の玉石が存在した場合には、ビットにより玉石を破砕してから取り込むようにしている。これは、スクリュコンベアで搬送できない玉石が取り込まれてしまった場合には、チャンバ内では破砕することはできないので、チャンバ内で撹拌されながらスクリュコンベアで搬送できる径まで摩耗されるまで残ることとなるために、撹拌棒やトルクアームなどの損傷につながるからである。よって、カッタ盤から取り込む玉石の最大径は、スクリュコンベアで搬送できる径以下にしておく必要がある。
【0008】
ここで、泥土圧シールド掘進機では、礫率が非常に高く且つ巨礫を含む礫層を掘進する際において大径の玉石がカッタ盤の内周側(スポーク部の延在方向の中央部から内側)の地盤にあった場合、その玉石は切羽地盤から外れた後に、玉石が取り込める大きさの貫通孔があるスポーク部の外周側(スポーク部の延在方向の中央部から外側)に向けて、転がるように移動する。そして、玉石が外周側の貫通孔から取り込まれるまでに何度もスポーク部やスポーク部に取り付けられたビットに衝突し、ビットやスポーク部の摩耗、破損を促進してしまう原因となる。
【0009】
そして、このような傾向は、シールド径が6000mm以上の比較的大径のシールド掘進機よりも、シールド径が2000mm~4500mm程度の比較的小径のシールド掘進機において特に大きくなる。
【0010】
本発明は、上述の技術的背景からなされたものであって、シールド掘進機のカッタ盤において、貫通孔から取り込み可能な玉石の最大径が内周側と外周側とで相違することのない技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するため、請求項1に記載の本発明のシールド掘進機のカッタ盤は、回転中心に位置するハブ部と、前記ハブ部から放射状に延在する複数のスポーク部と、それぞれの前記スポーク部の間に形成され、掘削土砂を取り込むための貫通孔と、前記複数のスポーク部の延在方向の外周端部を連結する外周リング部と、前記複数のスポーク部の前面に設けられた複数の先行ビットと、前記複数のスポーク部の延在方向におけるカッタ盤の正面視での回転中心から前記スポーク部の外端部までの距離の中央位置から内側のみに設けられ、前記スポーク部の延在方向の前記中央位置から内側を保護する保護部材と、前記複数のスポーク部の延在方向の前記中央位置から外側のみの幅方向の両外縁部に設けられた第1のスクレーパツースと、前記複数のスポーク部の延在方向の外周端部における幅方向の両外縁部に設けられた第2のスクレーパツースと、を有し、前記複数のスポーク部は、延在方向の前記中央位置から内側では、カッタ盤の正面視における幅方向の寸法が前記ハブ部に近づくにつれて細くなるように形成され、延在方向の前記中央位置から外側では、カッタ盤の正面視における幅方向の寸法が同一になるように形成され、前記複数のスポーク部の前記中央位置から内側に配置された前記先行ビットの前記スポーク部の延在方向に対するピッチは、前記中央位置から外側に配置された前記先行ビットの前記スポーク部の延在方向に対するピッチよりも狭くなっている、ことを特徴とする。
【0012】
請求項2に記載の本発明のシールド掘進機のカッタ盤は、上記請求項1記載の発明において、前記保護部材は、前記スポーク部の延在方向の前記中央位置から内側におけるカッタ盤の正面視での幅方向の両側の縁部および前記先行ビットの間に設けられている、ことを特徴とする。
【0013】
請求項3に記載の本発明のシールド掘進機のカッタ盤は、上記請求項1または2記載の発明において、前記保護部材は耐摩耗鋼板である、ことを特徴とする。
【0015】
請求項4に記載の本発明のシールド掘進機は、請求項1~3の何れか一項に記載のカッタ盤を機器本体の前面に回転自在の状態で備える、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、各スポーク部の延在方向の中央位置から内側には、スポーク部の側面から突出したスクレーパツースではなく保護部材が装着されている。したがって、貫通孔で取り込み可能な玉石の最大径はカッタ盤の内周側と外周側とで相違しなくなる。
【0017】
これにより、貫通孔から取り込み可能な大径の玉石がカッタ盤の内周側の地盤にあった場合、その玉石は切羽地盤から外れた後に、そのまま内周側の貫通孔から取り込まれるので、ビットやスポーク部の摩耗、破損が発生しにくくなる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の一実施の形態に係る泥土圧シールド掘進機の内部を側面から透かして見せた構成図である。
【
図2】
図1の泥土圧シールド掘進機のカッタヘッドの正面図である。
【
図3】
図2のカッタヘッドを矢印A1の方向から見た側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の一例としての実施の形態について、図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施の形態を説明するための図面において、同一の構成要素には原則として同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
【0020】
図1は本実施の形態の泥土圧シールド掘進機の内部を側面から透かして見せた構成図、
図2は
図1の泥土圧シールド掘進機のカッタヘッドの正面図、
図3は
図2のカッタヘッドを矢印A1の方向から見た側面図である。
【0021】
本実施の形態の泥土圧シールド掘進機(シールド掘進機)1は、カッタヘッド(カッタ盤)2により掘削された土砂に添加材を注入して練り混ぜることで生成された不透水性と塑性流動性(自由に変形および移動できる性質)とを持つ泥土をカッタヘッド2と機器本体3との間の室内に充満した状態で掘進することで泥土圧を発生させ、その泥土圧を切羽の土圧に対抗させた状態で掘削坑を構築する機器である。
【0022】
この泥土圧シールド掘進機1は、特に、巨礫が混在する玉石混じり砂礫層や玉石層を含む地山を掘削する場合に好適であるが、巨礫が混在しない玉石混じり砂礫層や玉石層あるいは通常の砂礫層に適用してもよい。
【0023】
なお、泥土圧シールド掘進機1の掘削外径は、例えば4500mm程度である。また、泥土圧シールド掘進機1の機長は、例えば6400mm程度である。また、泥土圧シールド掘進機1の運転は、その後方に配置された後続台車(図示せず)内の運転室内でオペレータにより制御される。
【0024】
カッタヘッド2は、地山の切羽を掘削する部材であり、機器本体3の前面に機器本体3の周方向に沿って回転自在の状態で設置されている。このカッタヘッド2には、例えば、円盤状のスポークタイプが採用されている。すなわち、
図2に示すように、カッタヘッド2は、回転中心に位置するハブ部2aと、ハブ部2aから外周に向かって放射状に延びる6本のスポーク部2bと、各スポーク部2bの延在方向の中途部同士を結ぶ中間リング部2cと、各スポーク部2bの先端部同士を結ぶ外周リング部2dと、各スポーク部2bの間に形成されて掘削土砂をチャンバ6内に取り込むための貫通孔2eとを備えている。
【0025】
カッタヘッド2のハブ部2aには、センタービット(ビット)4aが装着されている。なお、ハブ部2aには、コーンヘッド型のローラビット等のような他の掘削部材が装着される場合もある。
【0026】
図示するように、各スポーク部2bは、その幅方向(カッタヘッド2の回転方向)の寸法が、スポーク部2bの延在方向におけるカッタヘッド2の正面視での回転中心からスポーク部2bの外端部までの距離の中央位置(ここでは、中間リング部2cの取付位置よりもややハブ部2a寄り)から内側(以下、「内周側」という。)ではハブ部2aに近づくにつれて細くなるように形成され、スポーク部2bの延在方向の中央位置から外側(以下、「外周側」という。)では幅方向の寸法が同一になるように形成されている。
【0027】
これは、スポーク部2bの内周側では、スポーク部2bがハブ部2aから徐々に広くなるように形成することで、貫通孔2eの開口面積をできるだけ確保しつつスポーク部2bの強度的安定性を図ることができるからである。つまり、スポーク部2bの内周側の幅方向の寸法を細くすると、貫通孔2eの開口面積を広くとることはできるが強度が低下するためであり、逆に広くすると、強度は向上するが貫通孔2eの開口面積が大きく減少してしまうからである。
【0028】
また、スポーク部2bの外周側では、幅方向の寸法が同一になるように形成することで、貫通孔2eの開口面積、換言すれば開口率を大きくすることができるからである。
【0029】
なお、本実施の形態では、スポーク部2bの延在方向の中央位置は、中間リング部2cの取付位置よりもややハブ部2a寄りとなっているが、中間リング部2cの取付位置と同じ位置、あるいは中間リング部2cの取付位置よりも外周リング部2d寄りであってもよい。
【0031】
各スポーク部2bには、先行ビット(ビット)4b、スクレーパツース4sおよび耐摩耗鋼板(保護部材)4tが装着されている。本実施の形態において、先行ビット4bの高さ(スポーク部2bの表面からの高さ)は150mm、スクレーパツース4sの高さは100mmで突出量(スポーク部2bの側面からの突出量)は100mmとなっている。なお、スポーク部2bの前面には、先行ビット4bの他に、ローラビット等のような他の掘削部材が装着される場合もある。
【0032】
先行ビット4bは、玉石等の破砕や地山の掘削を先行して行う他、スクレーパツース4sを保護する役割を有しており、
図2に示すように、各スポーク部2bの前面(切羽に対向する面)に複数規則的に並んで設置されている。各先行ビット4bは、その平面形状が、例えば略長方形状に形成されており、その長辺をスポーク部2bの幅方向に沿わせた状態で配置されている。
【0033】
なお、本実施の形態では、カッタヘッド2の回転方向に隣接する先行ビット4bの位置が異なる回転軌跡上に配置されているが、これに限定されるものではなく、同一の回転軌跡上に配置してもよい。
【0034】
スクレーパツース4sは、地山を掘削するとともに掘削した土砂をチャンバ6(
図1)内に取り込む役割を有しており、各スポーク部2bの外周側のみの幅方向の両外縁部に設けられた第1のスクレーパツース4saと、各スポーク部2bの延在方向の外周端部における幅方向の両外縁部に設けられた第2のスクレーパツース4sbとからなる。なお、後述するように、第1のスクレーパツース4saの取付位置はスポーク部2bによって異なっているが、最もハブ部2a寄りに取り付けられた第1のスクレーパツース4sa(
図2において、時計の盤面で12時と6時に相当する位置のスポーク部2bに取り付けられた第1のスクレーパツース4sa)から径方向外側が、スポーク部2bの外周側となる。
【0035】
本実施の形態においては、隣り合うスポーク部2bの第1のスクレーパツース4saの取付位置がカッタヘッド2の径方向に対して互いにずれている。具体的には、カッタヘッド2が回転した際の第1のスクレーパツース4saの軌跡が相互に異なって全体として地山の掘削残し領域が発生しないように、
図2において時計の盤面で12時と6時に相当する位置に設置された第1のスクレーパツース4saと、2時と8時に相当する位置に設置された第1のスクレーパツース4saと、4時と10時に相当する位置に設置された第1のスクレーパツース4saとが互い違いに配置されている。
【0036】
また、本実施の形態においては、長さの異なる2種類の第2のスクレーパツース4sbが設けられており、
図2において、時計の盤面で2時と8時に相当する位置に設置された第2のスクレーパツース4sbは、それ以外の位置に設置された第2のスクレーパツース4sbよりも長くなって、カッタヘッド2が回転した際の軌跡が時計の盤面で4時と10時に相当する位置に設置された外周側の第1のスクレーパツース4saの軌跡と僅かにオーバーラップしている。
【0037】
このような第1のスクレーパツース4saと第2のスクレーパツース4sbとの配置により、カッタヘッド2の外周側に位置する地山が満遍なく掘削されるようになっている。
【0038】
そして、各スポーク部2bの内周側(詳しくは、内周側の両外縁部)における幅方向の両外縁部、および各スポーク部2bの内周側の前面には、スクレーパツース4sではなく、耐摩耗鋼板4tが装着されている。このような耐摩耗鋼板4tを設けたことにより、各スポーク部2bの内周側の幅方向の両外縁部および表面を保護することができる。
【0039】
これにより、各スポーク部2bの内周側には、当該スポーク部2bの側面から突出したスクレーパツース4sが存在しないので、貫通孔2eで取り込み可能な玉石の最大径(
図2の符号Rで表す円)がカッタヘッド2の内周側と外周側とで相違することがないようになっている。
【0040】
なお、本実施の形態では、各スポーク部2bの内周側における幅方向の両外縁部および前面に耐摩耗鋼板4tが装着されているが、幅方向の両外縁部または前面の何れかに装着されていてもよい。
【0041】
ここで、貫通孔2eにおける玉石取り込みの最大径は、スクリュコンベア10の大きさ(径)で決まるが、本実施の形態の泥土圧シールド掘進機1では、径が700mm×600mm程度の径の玉石を搬送できるスクリュコンベア10となっており、カッタヘッド2に形成された貫通孔2eでは、それに合わせて最大径700mmの玉石が取り込める大きさになっている。
【0042】
これは、スクリュコンベア10で搬送できない大きさの玉石が貫通孔2eから取り込まれてしまった場合には、チャンバ6内では破砕することはできないので、チャンバ6内で撹拌されながらスクリュコンベア10で搬送できる径まで摩耗されるまで残ることとなる。その場合、練混ぜ翼15,16(後述する)などの損傷につながるため、チャンバ6内に取り込まれる玉石の最大径は、スクリュコンベア10で搬送できる径以下にしておく必要があるからである。
【0043】
ハブ部2aおよびスポーク部2bには、添加材注入口5aが設けられている。この添加材注入口5aは、例えばベントナイト系の添加材のような作泥土材をカッタヘッド2の前面の切羽に向けて注入する構成部である。なお、添加材注入口5aの各々から注入される添加材には、ベントナイト系の添加材に代えて気泡材を用いてもよいし、ベントナイト系の添加材と気泡材との両方を用いてもよい。
【0044】
カッタヘッド2で掘削された土砂は貫通孔2eを通じて後述するチャンバ6(
図1参照)内に取り込まれるが、各スポーク部2bの延在方向の中途部同士を結ぶ中間リング部2cで貫通孔2eの開口面積を規制することで、貫通孔2eから取り込まれる玉石の大きさが規制される。なお、泥土圧シールド掘進機1の掘削外径が小さい(例えば2000mm)場合には、中間リング部2cは設置を省略することができる。
【0045】
外周リング部2dにおいて切羽側の前面には、複数の外周ビット(ビット)4cが並んで装着されている。この外周ビット4cについても、高さが150mmになっている。なお、カッタヘッド2の回転方向に隣接する外周ビット4cの高さが、カッタヘッド2の回転方向に沿って高低を繰り返すように異なるようにすることができる。このようにすれば、外周ビット4cにかかる衝撃や負荷を分散することができて外周ビット4cの耐久性を向上し、カッタヘッド2の外周ビット4cの交換時期を延長させることができる。また、同一回転軌跡上の外周ビット4cの高さを変えることで、切羽の玉石等を良好に切り崩すことができる。
【0046】
また、外周リング部2dの外周面には、例えば2個のコピービット4dが対極する位置に設けられている。このコピービット4dは、急曲線施工時の余掘りや泥土圧シールド掘進機1の姿勢制御等を行う役割を備えている。
【0047】
さて、
図1に示すように、機器本体3は、ガーダ部の前胴プレート3aと、その後方のテール部の後胴プレート3bとを備えている。前胴プレート3aおよび後胴プレート3bは、例えば円筒状の鋼製板により形成されており、機器本体3の外形を形成するとともに、機器本体3の内部に中空空間を形成する部材である。前胴プレート3aと後胴プレート3bとは、前胴プレート3aの後端側において後胴プレート3bの先端の球面軸受部が前胴プレート3aの内周面に接した状態で入り込むことで係合されている。
【0048】
前胴プレート3aの前面側において、その前面から機器本体3の内方に後退した位置には、機器本体3内の中空空間を切羽側と機内側とに分ける隔壁7が設けられている。この隔壁7の切羽側(すなわちカッタヘッド2と隔壁7との間)にはチャンバ6が設けられ、隔壁7の機内側には、添加材注入部5bと、カッタ駆動体8と、中折れジャッキ9aと、シールドジャッキ9bと、スクリュコンベア10と、土圧検出部(図示せず)とが設けられている。
【0049】
添加材注入部5bは、機器本体3の外回りやチャンバ6内に向けて添加材を注入する機器であり、添加材注入部5bの注入口を機器本体3の外部に表出させた状態で隔壁7の外周近傍に設けられている。添加材注入部5bから注入される添加材には、例えばベントナイト系の添加材のような作泥土材が使用される。なお、添加材注入部5bから注入される添加材には、ベントナイト系の添加材に代えて気泡材を用いてもよいし、ベントナイト系の添加材と気泡材との両方を用いてもよい。
【0050】
チャンバ6は、カッタヘッド2により掘削された土砂等が取り込まれる空間である。このチャンバ6内において、隔壁7の前面にはチャンバ6内に突出する円柱状等の練混ぜ翼15が設けられている一方、カッタヘッド2の背面にはチャンバ6内に突出する円柱状等の練混ぜ翼16が設けられている。これらの練混ぜ翼15,16は、カッタヘッド2の径方向の位置が互いにずれており、カッタヘッド2が回転するとチャンバ6内に入り込んだ土砂とチャンバ6内に注入された添加材とを撹拌混合する役割を備えている。
【0051】
カッタ駆動体8は、カッタヘッド2を回転させる駆動源である。ここでは、カッタ駆動方式として中間支持駆動方式が例示されており、カッタ駆動体8は、
図1に示すように、カッタヘッド2の正面内の中央と外周とのほぼ中央の位置に、カッタヘッド2の周方向に沿って複数個並んで配置されている。
【0052】
中折れジャッキ9aは、前胴プレート3aと後胴プレート3bとを連結するとともに、泥土圧シールド掘進機1の推進方向を修正する機器であり、
図1に示すように、機器本体3内において前胴プレート3aと後胴プレート3bとの境界を跨ぐ位置に、泥土圧シールド掘進機1の周方向に沿って複数個並んで配置されている。この中折れジャッキ9aに圧油を供給し前胴プレート3aと後胴プレート3bとを予め決められた方向および角度に屈折させた状態で泥土圧シールド掘進機1を推進することにより、泥土圧シールド掘進機1の推進方向を制御することが可能になっている。
【0053】
シールドジャッキ9bは、機器本体3の後方に設置されたセグメントSGに反力をとって泥土圧シールド掘進機1を前進させるための推進力を発生させる機器であり、
図1に示すように、機器本体3内において前胴プレート3aと後胴プレート3bとの境界を跨ぐ位置
に、泥土圧シールド掘進機1の周方向に沿って複数個並んで配置されている。
【0054】
スクリュコンベア10は、チャンバ6内に取り込まれた土砂を機外に排出するための機器であり、
図1に示すように、機器本体3の底部において隔壁7を貫通しチャンバ6内に配置された土砂取込端部10aから機器本体3の後方において機器本体3の高さ方向中央より若干高い位置に配置された排出端部10bに向かって斜め上向きに連続的に延在した状態で設けられている。
【0055】
このスクリュコンベア10には、例えば、回転軸を持たない螺旋状のブレード10cを管内に備えるリボン式のスクリュコンベアが使用されている。回転軸を持つスクリュコンベアの場合は玉石により閉塞し易いのに対して、リボン式のスクリュコンベア10の場合は搬送可能な玉石の最大径を搬送路の半径以上とすることができ、回転軸を持つスクリュコンベアでは搬送し得ないような大きさの玉石をも搬送することができる。これにより、本実施の形態の泥土圧シールド掘進機1においては、スクリュコンベア10で排出可能な大きさの玉石等を破砕せずにチャンバ6内に取り込むことが可能な構成となっている。
【0056】
なお、スクリュコンベア10の排出端部10bには排土管(図示せず)が連結されており、スクリュコンベア10の排出端部10bに搬送された土砂は、排土管を通じて台車等に搬送されるようになっている。
【0057】
土圧検出部は、チャンバ6内の泥土による圧力を歪ゲージを介して電気信号に変換するセンサ部分であり、その土圧検出面をチャンバ6内に向けた状態で設けられている。泥土圧シールド掘進機1は、土圧検出部で検出されたチャンバ6内の泥土圧が予め決められた値の範囲になるように管理することで切羽の安定性を維持しながら掘削処理を進めるようになっている。
【0058】
次に、
図1の泥土圧シールド掘進機1による泥土圧シールド工法について説明する。なお、ここでは、礫率が非常に高く且つ巨礫を含む礫層からなる地山が掘削対象とされている。
【0059】
このような地山の掘削に際し、本実施の形態の泥土圧シールド掘進機1においては、カッタヘッド2を切羽に押し付け回転させながら機器本体3を推し進めることで地中に掘削抗を構築する。
【0060】
この掘削作業に際して、カッタヘッド2で掘削した土砂に添加材を添加するとともに、その土砂と添加材とをカッタヘッド2の回転やその回転に追従する練混ぜ翼16等の動作により撹拌混合して掘削土砂を塑性流動性と不透水性を持つ泥土に変換する。そして、その泥土をチャンバ6内およびスクリュコンベア10内に充満させ、その充満した泥土をシールドジャッキ9bの推進力により加圧して泥土圧を発生させ、この泥土圧を切羽の土圧に対抗させることで切羽の安定性を維持する。また、例えば、カッタヘッド2の回転速度を一定にし、シールドジャッキ9bの伸長速度やスクリュコンベア10の回転速度を調整し、チャンバ6内の泥土圧を上記土圧検出部により測定しこれが一定になるようにすることで切羽の安定性を維持する。
【0061】
添加材として加えるベントナイト系の添加材(作泥土材)は、土砂の塑性流動性や不透水性を高める作用を有する上、巨礫を破砕した礫や玉石等の礫分を掘削土砂とともに包み込んで当該礫分が掘削土砂から分離しないように掘削土砂と礫分との一体性を向上させる作用を有している。
【0062】
ここで、カッタヘッド2の内周側の貫通孔2eよりも外周側の貫通孔2eの方が取り込み可能な玉石の最大径が大きくい場合には、内周側の貫通孔2eで取り込まれなかった玉石はスポーク部2bの外周側へと移動し、外周側の貫通孔2eから取り込まれる。その間、玉石は何度もスポーク部2bやスポーク部2bに取り付けられた先行ビット4bに衝突して、先行ビット4bやスポーク部2bの摩耗、破損を促進してしまう。
【0063】
これに対して、本実施の形態の泥土圧シールド掘進機1では、前述のように、各スポーク部2bの内周側には、スポーク部2bの側面から突出したスクレーパツース4sではなく、幅方向の両外縁部および前面に耐摩耗鋼板4tが装着されている。これにより、貫通孔2eで取り込み可能な玉石の最大径はカッタヘッド2の内周側と外周側とで相違しないので、貫通孔2eから取り込み可能な大径の玉石がカッタヘッド2の内周側の地盤にあった場合、その玉石は切羽地盤から外れた後に、そのまま内周側の貫通孔2eから取り込まれてチャンバ6内に送り込まれる。
【0064】
よって、上述のような玉石による先行ビット4bやスポーク部2bの摩耗、破損が発生しにくくなり、安定した泥土圧シールド掘進機1の稼働を実現することができる。
【0065】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本明細書で開示された実施の形態はすべての点で例示であって、開示された技術に限定されるものではないと考えるべきである。すなわち、本発明の技術的な範囲は、前記の実施の形態における説明に基づいて制限的に解釈されるものでなく、あくまでも特許請求の範囲の記載に従って解釈されるべきであり、特許請求の範囲の記載技術と均等な技術および特許請求の範囲の要旨を逸脱しない限りにおけるすべての変更が含まれる。
【0066】
例えば前記実施の形態においては、リボンスクリュ型のスクリュコンベアを用いた場合について説明したが、これに限定されるものではなく種々変更可能であり、例えばリボン型と軸付き型とを組み合わせたスクリュコンベアを用いてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0067】
以上の説明では、本発明を中間支持駆動方式の泥土圧シールド掘進機に適用した場合について説明したが、これに限定されるものではなく、例えばセンターシャフト駆動方式や外周支持駆動方式の泥土圧シールド掘進機等、他のシールド掘進機にも適用される。
【符号の説明】
【0068】
1 泥土圧シールド掘進機(シールド掘進機)
2 カッタヘッド(カッタ盤)
2a ハブ部
2b スポーク部
2c 中間リング部
2d 外周リング部
2e 貫通孔
4a センタービット(ビット)
4b 先行ビット(ビット)
4c 外周ビット(ビット)
4s スクレーパツース
4sa 第1のスクレーパツース
4sb 第2のスクレーパツース
4t 耐摩耗鋼板(保護部材)
6 チャンバ
7 隔壁
10 スクリュコンベア
【要約】
【課題】貫通孔から取り込み可能な玉石の最大径が内周側と外周側とで相違することのないシールド掘進機のカッタヘッドを得る。
【解決手段】回転中心に位置するハブ部2aと、ハブ部2aから放射状に延在する複数のスポーク部2bと、複数のスポーク部2bの間に形成され、掘削土砂を取り込むための貫通孔2eと、複数のスポーク部2bの延在方向の外周端部を連結する外周リング部2dと、複数のスポーク部2bの前面に設けられた複数の先行ビット4bと、複数のスポーク部2bの延在方向の中央部から内側のみに設けられ、スポーク部2bの延在方向の中央部から内側を保護する耐摩耗鋼板4tと、複数のスポーク部2bの延在方向の中央部から外側のみの幅方向の両外縁部に設けられた第1のスクレーパツース4saと、複数のスポーク部2bの延在方向の外周端部における幅方向の両外縁部に設けられた第2のスクレーパツース4sbとを有する。
【選択図】
図2