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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-26
(45)【発行日】2022-11-04
(54)【発明の名称】新規な甘味組成物
(51)【国際特許分類】
   A23L 27/00 20160101AFI20221027BHJP
   A23G 4/00 20060101ALI20221027BHJP
   A23L 27/20 20160101ALI20221027BHJP
   A61K 9/20 20060101ALI20221027BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20221027BHJP
【FI】
A23L27/00 E
A23G4/00
A23L27/20 D
A61K9/20
A61K47/26
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2016575765
(86)(22)【出願日】2015-07-01
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2017-09-14
(86)【国際出願番号】 FR2015051820
(87)【国際公開番号】W WO2016001589
(87)【国際公開日】2016-01-07
【審査請求日】2018-04-17
【審判番号】
【審判請求日】2020-09-02
(31)【優先権主張番号】1456288
(32)【優先日】2014-07-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】591169401
【氏名又は名称】ロケット フレール
【氏名又は名称原語表記】ROQUETTE FRERES
(74)【代理人】
【識別番号】100090398
【弁理士】
【氏名又は名称】大渕 美千栄
(74)【代理人】
【識別番号】100090387
【弁理士】
【氏名又は名称】布施 行夫
(72)【発明者】
【氏名】ドミニク オルティス ドゥ ザラト
(72)【発明者】
【氏名】シルヴィ ラガシュ
(72)【発明者】
【氏名】アンドレ ビュソラン
(72)【発明者】
【氏名】アントワーヌ バール
【合議体】
【審判長】大島 祥吾
【審判官】奥田 雄介
【審判官】植前 充司
(56)【参考文献】
【文献】特開平3-72438(JP,A)
【文献】特開昭59-118058(JP,A)
【文献】特開2000-175653(JP,A)
【文献】特表2009-544674(JP,A)
【文献】特表2010-530844(JP,A)
【文献】特表2011-512818(JP,A)
【文献】特表2012-501630(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 27/
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
- 乾燥重量を基準にして80%~95%の結晶性粉末状ソルビトール及び5%~20%の全還元糖から構成され、前記全還元糖としてマンニトール及びマルチトールを含有し、
- 最大150J/gのエンタルピー、
- 200~350μmの体積加重平均径D4,3
- BET法により求められる0.6m/g未満の比表面積
を有することを特徴とする甘味組成物。
【請求項2】
88%~94.5%の結晶性粉末状ソルビトールを有することを特徴とする、請求項1に記載の甘味組成物。
【請求項3】
エンタルピーが、試料1g当たり最大146Jであることを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の甘味組成物。
【請求項4】
前記ソルビトールが、少なくとも85重量%のγ形結晶からなることを特徴とする、請求項1ないし請求項のいずれか一項に記載の甘味組成物。
【請求項5】
相対湿度0%~60%のその重量変化によって求められる吸水性の値が、2.5%~3.4%であることを特徴とする、請求項1ないし請求項のいずれか一項に記載の甘味組成物。
【請求項6】
圧縮性が、25%未満であることを特徴とする、請求項1ないし請求項のいずれか一項に記載の甘味組成物。
【請求項7】
チューインガムの生産における、請求項1ないし請求項のいずれか一項に記載の甘味組成物の使用。
【請求項8】
- 10%~28%の少なくとも1種類のガムベースと、
- 20%~70%の請求項1ないし請求項のいずれか一項に記載の甘味組成物と、
- 0.1%~5%の少なくとも1種類のフレーバーと
を含有するチューインガム組成物であって、この割合は前記組成物の総乾燥重量を基準にした乾燥重量によって得られる、組成物。
【請求項9】
医薬品または食品用途の錠剤の生産における、請求項1ないし請求項のいずれか一項に記載の甘味組成物の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、80重量%~95重量%の結晶性ソルビトールを含む粉末状甘味組成物に関する。前記組成物は特に優れた流動性を有する。
【0002】
本発明はまた、この新規な甘味組成物の生産方法に関する。最後に本発明はまた、チューインガムおよび錠剤の調製工程におけるこの甘味組成物の使用に関する。
【背景技術】
【0003】
ソルビトールすなわちグルシトールは、スクロースの半分の甘味力を有する天然の多価アルコール(すなわち糖アルコール)である。単糖とは異なり、その構造はケトンまたはアルデヒド官能基を含有しない。ソルビトールは、スクロースに取って代わるバルク甘味料として主に使用される。それはまた、薬剤、化粧品、および食品において金属イオン封鎖剤、賦形剤、湿潤剤、または安定剤としても使用される。具体的にはそれは大きな保水力を有するので、幾多の食料品の軟稠度(soft consistency)に関与する。吸着水は蒸発させるのが難しい。ソルビトールは、生物体によってゆっくり代謝され、カロリーをほとんど生じない。ヒトではソルビトールはグルコースと同じように代謝され、同一のエネルギーを生ずる。しかしながら、その代謝は非インスリン依存性であるので、血糖を上昇させない。この特性は、糖尿病患者を対象とする製品にとって特に有利である。これに加えてこれは酵母によって発酵しない。
【0004】
より具体的には、キシリトールまたはマンニトールなどのその他の粉末状多価アルコールと同様に粉末状ソルビトールは、医薬品の賦形剤として、甘味料として、また食品産業におけるテクスチャ調整剤として、またあらゆる種類の産業において付加的な脇役として使用される。粉末形態ではソルビトールは、キシリトールおよびマンニトールよりも良好な賦形剤であり、そのきわめて良好な被圧縮能力およびその清涼感のために錠剤において、またチューインガムにおいて広く使用される。
【0005】
本出願人によって第二次世界大戦の終わりに産業レベルで導入されたソルビトールは、現在では純粋なデキストロースの接触水素化によって生産される。デキストロース、すなわちD-グルコース自体は、一般にはグルコースシロップの結晶化によって得られ、これはグルコース貯蔵重合体であり、かつ多くの植物におけるエネルギー貯蔵多糖を代表するデンプンの加水分解の結果をなす。
【0006】
一般には、粉末状製品の形態で提供される多価アルコールは、内部のプラスチック製の袋をクラフト紙の袋または段ボール箱と組み合わせた二重包装材料中に、さもなければ「ビッグバッグ」として知られる可撓性容器中に保管し配送されるか、あるいは最終的にはバルクの状態で保管し配送される。現在販売されているソルビトール粉末の包装は、これらの包装方法の一つまたは他の方法を使用している。
【0007】
これらの予防措置にもかかわらず、市販のソルビトール粉末は、凝塊形成して大きな塊になる傾向を有する可能性がある。このケーキングの傾向は、ソルビトール粉末の粒径が細かければ細かいほど、ますます大きいことになる。
【0008】
一般に、高い圧縮強度を有する結晶性ソルビトールを得るために、ソルビトール(そのγ形態は少なくとも90%である)で過飽和にした溶液を処理することによってγ結晶形のソルビトール(αおよびβ形態は著しく不安定である)の生産を達成しようとする。しかしながら、それがその最も安定なγ形態の結晶質である場合でさえ、その通常得られる
粉末状ソルビトールは、きわめて吸水性であることを含めて幾つかの欠点を有する。
【0009】
この高い吸水性は、水の吸収が起こるや否や粉末状ソルビトールの流動を困難にし、あるいは不可能にさえする。次いで、このために直接圧縮でのその使用は制限され、これは、例えばバーまたは錠剤の生産のための圧入充填に関して重大な障害を克服することを必要とする。
【0010】
粉末状ソルビトールの流動のこの問題を避けるためには、仏国特許第1506334号明細書中に記載のような低密度かつ粗い粒径のソルビトールを準備することが推奨されてきた。
【0011】
しかしながら、粉末状ソルビトールの見掛け密度が小さいほど、それはより脆くなること、すなわち機械的作用によるその粒径の変形に対してより敏感になることが立証されている。これに加えてこの粗い粒径の粉末状製品の溶解時間は一般に長すぎ、したがって好適でない。最後に、その流動性は、そのような粒径の粒子を使用することによって部分的には改善されるが、まだ高すぎるその残存吸水性は、水にきわめて敏感な成分または添加剤と組み合わされる場合、いずれにしてもこの粉末状ソルビトールの使用を全く容認できなくする。
【0012】
大量の添加剤を固定させる能力は、前記粒子の比表面積に直接左右されることもまた立証されている。したがって、粉末状ソルビトールの吸収能力が高いほど、その比表面積は大きい。しかしながら、γ形の市販ソルビトールの稠密な結晶の比表面積は非常に小さいことが知られている。したがって、500~1000μmの間の粒径の場合、比表面積は最大0.7m/gである。
【0013】
より良好な粒径および良好な流動性を有し、かつ望ましい圧縮性および砕けやすさの要件を満たす粉末状ソルビトールの調製を目的として、仏国特許出願第2622190号明細書は、300~500μmの間の平均直径を有する粒子を含有するソルビトール粉末について記述している。しかしながら、こうして得られる粉末状ソルビトールは出発ソルビトール粉末と同じ吸水率および同じ水溶解度を保持しているために、前記粒子の高い見掛け密度および約0.9~1.2m/gという比較的低い比表面積は、実現される生産工程によって事実上顕著には改変されない。
【0014】
本出願人の会社に属する欧州特許第1008602号明細書は、新規な粉末状ソルビトールと、またその調製方法について記述している。この新規な粉末状ソルビトールは、一方で低い吸水性と、他方で高い比表面積、あるいは一方で低い見掛け密度と、他方で低い砕けやすさという通常は両立しない利点を同時に有する(これは比較的小さな粒径に対して云える)。その化学組成の観点からはその特許請求された粉末状ソルビトールは比較的純粋である、すなわち一般には95重量%を超える、より具体的には98重量%を超える高純度のソルビトール濃度、純粋なソルビトール純度、または純粋なソルビトール含量を有する。したがって、このソルビトールの生産は高品位の原料の使用を必要とし、それはこの製品の生産コストにかなりの影響を与える。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
したがって、幾つかの用途については、低生産コストを有するソルビトール組成物を利用できることが有利である。
【0016】
本出願人の会社は、数多くの研究調査を実施して、低生産コストを有し、かつ様々な食品および医薬品用途に特に有利な特性を有する新規な粉末状ソルビトール組成物の開発を
成し遂げた。
【課題を解決するための手段】
【0017】
したがって本発明は、乾燥重量を基準にして80%~95%の結晶性粉末状ソルビトールを含み、かつ
- 最大150J/gのエンタルピー、
- 200~350μmの間の体積平均径、および
- BET法により求められる0.6m/g未満、好ましくは0.15~0.4m/g、さらにより優先的には0.20~0.35m/gの比表面積
を有することを特徴とする甘味組成物に関する。
【0018】
好ましくは本発明による甘味組成物は、結晶性粉末状ソルビトールを、乾燥重量を基準にして85%~95%、優先的には88%~94.5%、さらにより優先的には90%~94%含むことを特徴とする。
【0019】
好ましくはこの甘味組成物は、試料1g当たり最大146Jのエンタルピー、さらにより優先的には試料1g当たり最大142Jのエンタルピーを有することを特徴とする。
【0020】
この甘味組成物はまた、より優先的には250~350μmの、また好ましくは280~330μmの体積平均径(算術平均)D4,3を有することを特徴とする。
【0021】
この組成物は、結晶性粉末状ソルビトールが、少なくとも85重量%、好ましくは少なくとも90重量%、さらにより優先的には少なくとも95重量%のγ形の結晶からなることを特徴とすることができる。
【0022】
この甘味組成物はまた、相対湿度0%~60%のその重量変化によって求められるその吸水性の値が、2.5%~3.4%、好ましくは2.8%~3.2%であることを特徴とすることができる。
【0023】
この甘味組成物は、25%未満、好ましくは7%~22%、またさらにより優先的には10%~20%の圧縮率を有することができる。
【0024】
本発明の課題はまた、前記甘味組成物のチューインガムの生産における使用である。
【0025】
したがって本発明はまた、その割合が前記組成物の総乾燥重量に対する乾燥重量によって表される、
- 10%~28%、優先的には15%~25%、またさらにより優先的には20%の少なくとも1種類のガムベースと、
- 20%~70%、優先的には30%~60%の上記甘味組成物と、
- 0.1%~5%、優先的には0.5%~3%、さらにより優先的には1%~1.8%の少なくとも1種類のフレーバーと
を含有するチューインガム組成物に関する。
【0026】
本発明は、医薬品または食品に使用するための錠剤の生産におけるこの甘味組成物の使用法に関する。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明による粉末状甘味組成物は、まず第一に
- 乾燥重量を基準にして80%~95%の結晶性粉末状ソルビトール
を含み、かつ
- 最大150J/gのエンタルピー、
- 200~350μmの体積平均径、および
- BET法により求められる0.6m/g未満、好ましくは0.15~0.4m/g、さらにより優先的には0.20~0.35m/gの比表面積
を有することを特徴とする。
【0028】
本出願において「乾燥重量を基準にして80%~95%の結晶性粉末状ソルビトールを含む」という表現は、その甘味組成物中の純粋ソルビトールの純度または純粋ソルビトールの含有量が乾燥重量を基準にして80%~95%であり、残部がマンニトール、マルチトール、そしてまたDP3類あるいは実にDP4類などの全還元糖から構成されることを意味する。
【0029】
好ましくは本発明による粉末状甘味組成物は、85%~95%、優先的には88%~94.5%、さらにより優先的には90%~94%のソルビトール含量を有することを特徴とする。
【0030】
本発明の目的の場合、甘味組成物中に含有されるソルビトールは、本質的にγ結晶形の状態である。本発明の目的の場合、「本質的にγ結晶形」という表現は、85重量%を超える、好ましくは90重量%を超える、さらにより優先的には95重量%を超えるγ形ソルビトール結晶の含有量を意味することを意図している。
【0031】
本発明の特に好ましい実施形態において甘味組成物中のγ形ソルビトール結晶の含有量は、98重量%を超える。
【0032】
本発明による甘味組成物は、最大150J/gのエンタルピー、またはより具体的には融解または融解の潜熱のエンタルピーを有する。
【0033】
エンタルピーは、示差走査熱量測定法(すなわちDSC)によって求められる。
【0034】
示差走査熱量測定法(DSC)は、温度勾配に従って動作する。これは、ソルビトール粉末の試料の温度の増加に追随するように与えられるエネルギーを測定する。製品が安定である限り、その温度は温度が従う勾配の関数として直線的に変化する。
【0035】
この製品がその相変化温度に達すると、それは液状になるためにさらなるエネルギーを消費する。勾配に追随するのに必要な追加のエネルギーが、測定装置によって記録される。これがエンタルピーである。
【0036】
融解のエンタルピーは、結晶状態から非晶状態になるために供給しなければならないエネルギーを表すと見られる傾向がある。したがって、支配的な結晶形態がより高いエンタルピーを有するはずであり、したがって前記結晶形態からその非晶形態になるのがより困難になることになる。
【0037】
逆に、結晶形態と非晶形態の両方を含有するあまり純粋でない混合物は、非晶状態になるのがより容易であるため、より低いエンタルピーを有することになる。
【0038】
したがって、無水ベースで96重量%を超えるきわめて高い純度のソルビトールは、ほとんど不純物を含有しない、あるいは実質上まったく不純物を含有しないために高い融解のエンタルピーを有することになる。
【0039】
好ましくは本発明による甘味組成物は、試料1g当たり最大146J、あるいはさらに
より優先的には試料1g当たり最大142Jのエンタルピーを有する。
【0040】
一例としてブランド名Neosorb(登録商標)で本出願人の会社によって販売されているソルビトールは、試料1g当たり約165Jの融解のエンタルピーを有する。
【0041】
本発明による甘味組成物はまた、その特定の粒径によって特徴づけられる。したがって本発明による組成物は、200~350μmの体積加重平均径D4,3を有する。
【0042】
一つの優先的様態においては、その体積平均径(算術平均)D4,3は、250~350μm、またはより優先的には280~330μmである。
【0043】
多価アルコール粉末、具体的にはソルビトール粉末の粒径の選択は、きわめて重要である。ソルビトール粒子は、樹枝状の、すなわちもつれた針に似た微視的構造を有する。この特殊な構造のために錠剤、バー、および/またはチューインガムの生産において200μmを超える平均粒径を有するソルビトール粉末を使用することが前記製品、具体的にはチューインガム(具体的には噛んでいる間の)に「ざらざらした」質感を(texture)与えることに一般に注目されてきた。
【0044】
本発明による甘味組成物は、たとえそれがより大きな粒径(200μmを超える平均粒径)を有するとしてもこのマイナスの効果を有しない。実際に、本明細書中で後に実証するようにこの組成物から生産されたチューインガムは、口中でのこの不快なざらざらした質感を有しない。
【0045】
これらの平均直径または平均体積径の値は、Beckman-Coulter社製の(乾式)粉末分散モジュールを備えたLS 230型レーザー回折粒径分析計を使用し、この製造会社の操作手引書および仕様書に従って求められる。ホッパスクリュー速度および分散シュートの振動強度の操作条件は、光学濃度が4%~12%、理想的には8%になるように決められる。このLS 230型レーザー回折粒径分析計の測定範囲は、0.04μm~2000μmである。結果は、単位μmで表される。
【0046】
本発明による甘味組成物はまた、市販のソルビトールよりも小さい比表面積を有することを特徴とする。
【0047】
実際には、本発明による甘味組成物は、BET法により求められる0.6m/g未満、好ましくは0.15~0.4m/g、より優先的には0.20~0.35m/gの比表面積を特徴とする。
【0048】
本発明による甘味組成物の比表面積は、SA3100型Beckman-Coulter比表面積分析計により、S.Brunauer等による論文「窒素吸収によるBET表面積(BET Surface Area by Nitrogen Absorption)」(Journal of American Chemical Society,60,309,1938)中に記載されている手法に従うことによって、分析にかけられるその製品の表面への窒素の吸収の試験に基づいて求められる。比表面積の計算は、多層吸着理論に基づく。この理論のさらなる詳細については、P.W.Atkinsによる書物(AtkinsおよびMorrow、1986)を参照されたい。
【0049】
BET分析は3点で行われる。
【0050】
定義により比表面積(Ss)(これはまた「比表面」とも呼ばれる)は、質量(M)の
単位当たり全表面積(As)を意味し、一般に単位m/gで表される。
【0051】
比表面積は、見掛けの表面積に対立するものとして、物体の表面の実際の表面積を表す。
【0052】
本発明における比表面積は、250μm~841μmの画分について測定される。
【0053】
この比表面積の分析にかける前に、増量剤は、粒径が250μm~841μmである篩上でのふるい分けを受ける。これは、直径が250μm未満のすべての粒子を、かつまた直径が841μmを超えるすべての粒子を除去することを可能にする。
【0054】
その結果としてこれは、増量剤の粉末の主要な分布域に関係する粒径画分に注意を向けることを可能にし、また分析を歪めることになる微粉および粗すぎる粒子を抜きにすることを可能にする。
【0055】
粉末の場合、実際の表面積は粒の表面積の和である。一般に所与の塊または体積については粒が細かいほど比表面積は大きい。
【0056】
非常に驚くべきことに、本発明による甘味組成物は、200~350μmの体積平均径(算術平均)D4,3の場合、0.20~0.35m/gの小さい比表面積を有する。
【0057】
逆のことが予想されたはずである。このような体積平均径の場合、その比表面積は普通ならより大きく、1m/gに近いはずであった。
【0058】
本出願人の会社の知るところでは、本発明の甘味組成物と一致する似た比表面積および粒径のパラメータを有する市販の甘味組成物は存在しない。本発明による甘味組成物は、粉末の粒径または前記粉末の粒子の直径をその比表面積と関連付ける既存の予想に逆らう。
【0059】
本発明による甘味組成物はまた、相対湿度(RH)0%~60%の間のその重量変化によって求められる、その2.5%~3.4%の、好ましくは2.8%~3.2%の吸水性または吸水性の値によって特徴づけることもできる。
【0060】
本発明において使用される吸水性測定試験は、欧州特許第1008602号明細書に記載のものと同じである。したがってこの試験は、甘味組成物の試料を、Surface Measurement System社(London UK)によって製造され、Dynamic Vapor Sorption Series 1と呼ばれる設備の部品中で、20℃で0%~60%の様々な度合の残留湿気(RH)に曝した場合のその重量の変動を評価することにある。
【0061】
この設備の部品は、試料を様々な度合の湿気に曝した場合に対照標準(この場合、差動型天秤の対照標準のクレードルは空である)を基準にした前記試料の重量変化を定量化することを可能にする差動型微量天秤からなる。
【0062】
ベクトルガスは窒素であり、試料の重量は10~12mgである。そのプログラム化されたRHは、24時間の0%RH(脱水)、次いで10%、20%、30%、35%、40%、45%、50%、52%、54%、56%、58%、および60%RHである。一つのRHから次のRHに自動的に移ることを可能にする安定係数(stability factor)は、dm/dt比であり、これは0.002%/分で20分間に設定される。
【0063】
最後に、各RHについて式[(m-m)/m]×100(式中、「m」は考えられるRHに対する試験の終わりにおける試料の質量であり、「m」は脱水の終わりにおける質量である)に対応する値の表が得られる。
【0064】
結果は、脱水(0%RHにおける)後、次いで60%RHにおいてそれぞれ得られる(上に記載される)重量変化の値の差として表される。
【0065】
またしても本発明による甘味組成物が、0.6m/g未満の比表面積と、2.5%~3.4%の吸水性とを併せて有することができることは特に驚くべきことである。これは、粉末状製品の吸水性がその比表面積、すなわち水蒸気を含有する媒体に曝されたときのその表面積と共に増加することがごく普通に受け入れられているからである。
【0066】
それが起こるにつれて、水素化された本発明による甘味組成物は、結晶性製品に典型的な低い比表面積を、しかしながら粒状製品に典型的な比較的高い吸水性と共に有する。
【0067】
一例としてSorbitol grade Lの名称でMerck社によって販売されているソルビトールは、BETによる1.55m/gの比表面積に対して同じ測定条件下で2.4%の吸水性を有し、またブランド名Neosorb(登録商標)で本出願人の会社によって販売されているソルビトールは、1m/g未満の比表面積に対して1.53%の値の吸水性を有する。
【0068】
驚くべきことにまた予期せざることに、かつ予想に反して本発明による甘味組成物は、市販の粉末状ソルビトール(それらはまた、より高い比表面積を有する)について一般に云われているものよりも著しく高い吸水性を有する。
【0069】
市販のソルビトールと比較して本発明者等の甘味組成物の吸水性がより高いために、ケーキングの問題が予想される。しかしながら、すべての予想に反して本発明による甘味組成物は、そのケーキングがないこと、すなわち、例えばその貯蔵の間の凝集塊形成がないことによって特徴づけられる。
【0070】
ケーキングは、小さな凝集塊(それらは壊れ易いまたは硬い)の形成と、固着、あるいは粉末が固まって完全に固体になることとの両方を含む粉末の流動特性の変化の一般名である。粒子の表面での過飽和溶液の凝固による粒子間の連結の形成が、粉末のケーキングに関与するメカニズムである。小さな寸法の結晶は高い比表面積、したがって高い水分吸着を有し、それによって溶解、続いて結晶化をもたらすので、粉末状態の結晶性化合物のケーキングは、その粉末を構成する粒子の粒径に左右される。これらの小さな結晶の形成は、粉末が固まって固体になるための接合剤として働く。
【0071】
しかしながら、本発明による甘味組成物は固まらず、これはその低い比表面積によってある程度説明することができる。
【0072】
したがって、この組成物は、ビッグバッグに詰めるのに、および/またはバルクの状態であるのに完全に適している。
【0073】
実際に、本発明による甘味組成物は、本出願人によって設定される貯蔵シミュレーション試験に首尾よく合格した。
【0074】
この試験は、ビッグバッグ中での製品の貯蔵をシミュレートすることを可能にする。この試験を行うために、1200g(=m0)の試験製品を、厚さ100μmのポリエチレ
ン製の袋に導入する。
【0075】
空の袋の概寸は、324mm×209mmである。
【0076】
製品を袋に入れる場合、袋は吸蔵された空気の極大量を追い出したままの状態で密閉される。
【0077】
次いでこの袋を、その全表面積にわたって直径8mmの穴を開けられた高さ220mm、直径130mmの金属円筒中に置く。穴は、隣接する穴の中心と中心との間で12mmの距離を有する互い違いの列に配置される。
【0078】
円筒よりもちょっと小さい直径を有する金属円板を袋の上に置く。6.6kgの重り、すなわち約600kg/mの圧力に相当する物をこの円板の上に置く。前記圧力はビッグバッグの底に位置する粉末にかかる圧力に等しい。
【0079】
次いでこの全体を、8時間(15℃の温度および85%RHで3.5時間、過渡期の0.5時間、30℃の温度および85%RHで3.5時間、過渡期の0.5時間)の15サイクルが適用されるように調整された気候室中に置く。
【0080】
これら15サイクルの終わりに6.6kgの重りおよび円板を取り除き、次いで袋を円筒から慎重に取り出し、開封する。
【0081】
次いで粉末の全体を5リットルの樽の中に慎重に導入し、これを、Mixomat A14タンブルミキサー(Fuchs/Switzerland)を使用してその最大速度で1分間回転させる。
【0082】
次いで樽を開封し、その中の粉末を篩上に移す。篩のメッシュは、約8mm×8mmの正方形の開口部を有する。
【0083】
篩上での幾度かの軽い振動は、粒が篩のメッシュのサイズ未満のサイズを有するすべての粉末を排除することを可能にする。
【0084】
こうしてこの篩上に保持される製品の固まりのみが回収され、それら固まりを計量する。次いで、その質量m1が求められる。
【0085】
比(回収された固まりの重量/最初の製品の重量)×100は、固まった製品の度合を表す。
【0086】
上記ケーキング試験によれば、本発明による甘味組成物の固まった製品の比率は約5%である。したがってこれは、ビッグバッグ型の包装の貯蔵をシミュレートする条件下で製品の約5%のみが凝集塊を形成したことを意味し、これはきわめて低い。
【0087】
本発明による甘味組成物が、たとえそれが2.5%~3.4%の間の吸水性の値および95%以下ソルビトール純度または含量を有するとしても、より純粋でかつより低い吸水性を有する市販のソルビトールよりも大きい粘結性(caking capacity)を示さないことは、特に驚くべきことである。実際に、市販のソルビトール組成物は、ずっと低い吸水性の値と、ずっと高い約98重量%(無水ベース)のソルビトール濃度とを別にすれば、一般に本発明者等の組成物で見出される比率と似た固まった製品の比率を有する。
【0088】
製品が純粋であるほど、それはより結晶形態であり、したがって固まる傾向が少ないことが実際によく知られている。
【0089】
本発明による甘味組成物はまた、そのきわめて良好な圧縮性を特徴とすることができる。
【0090】
圧縮性は、圧力が加えられたときに粉末が錠剤を生じさせる能力の尺度として定義される。この圧縮性は、圧縮性試験によって測定される。圧縮性試験は、錠剤の硬さを、その錠剤を得るために加えられる圧縮力の関数として表すことにある。
【0091】
一般に一つの製品が、その製品が同一の圧縮力でより高い硬さを有する錠剤を得ることを可能にするならば、別の製品よりも圧縮性があると言うことになる。
【0092】
圧縮性試験は、凹形(9mmの曲率半径)の円形ポンチ(直径10mm)を備えたFette P1000ロータリープレス上で行われる。
【0093】
圧縮のステップの前に、評価される製品を0.5%のステアリン酸マグネシウムと混ぜ合わせる。これは滑沢剤として働く。
【0094】
様々な圧縮力を得るために錠剤の厚さは一定(5mm)に保たれ、他方で重量は可変である(錠剤重量は各圧縮力に対応する)。
【0095】
錠剤の硬さを評価するために、次いでその形成された錠剤をErweka 425デュロメータ―中に置く。この装置は、その錠剤を破壊/粉砕するのに必要な力(ニュートン)の値を与える。
【0096】
例えば、本出願人の会社によって販売されているNeosorb(登録商標)P60W型のソルビトールと比較した本発明による甘味組成物について得られる圧縮プロフィールは、ほぼ重ねることができる。これは、これら2種類の粉末が同程度の圧縮性を有し、かつ本発明の甘味組成物が従来技術のソルビトール粉末と全く同じ圧縮性であることを意味する。従来技術のソルビトール粉末は、ずっと高いソルビトール含量を有し、かつその生産コストもまたより高い。
【0097】
本発明による甘味組成物はまた、15秒未満のその溶解速度を特徴とすることができる。実際にこの甘味組成物は、またその優れた湿潤性を反映して高い溶解速度を有する。
【0098】
この溶解速度を測定するために250mlの容積を有するビーカー(簡易型)を使用し、前記ビーカーに150gの脱ガスした脱塩水を20℃±2℃で導入する。正確に5gの水素化甘味組成物粉末を検量する。t=0時間においてその5gの試料を迅速に一気に導入し、タイマーを起動させる。試料が完全に溶解する、すなわちそこで懸濁状態の粒子がそれ以上存在しなくなるのに必要な時間を測定する。この試験は、磁気スターラーを使用して200rpmで穏やかに撹拌しながら行う。
【0099】
こうして上記溶解試験の条件下で本発明による甘味組成物は、3~15秒、好ましくは5~14秒、より優先的には7~13秒の溶解速度を有する。
【0100】
この甘味組成物はまた、0.600を超える、好ましくは0.610~0.700、より優先的には0.630~0.660のかさ密度と、0.660~0.850、好ましくは0.700~0.800のタップ密度とを特徴とすることができる。
【0101】
したがって、本発明による甘味組成物は、25%未満、好ましくは7%~22%の、さらにより優先的には10%~20%の圧縮性を有する。
【0102】
このような圧縮性の値は、甘味組成物にその粉末状態のより良好な貯蔵安定性を与える。本発明による甘味組成物について得られる圧縮性の値は、正確に流れる製品の特性を反映している。
【0103】
本発明による水素化甘味組成物のタップ密度、かさ密度、および圧縮性の値は、Hosokawa社によって販売されているPTE Powder Tester装置を、製造業者の仕様書に従って使用して求められる(タップ密度の測定については180回の振動に初期設定)。
【0104】
この装置は、標準化された再現性のある条件下で、具体的にはかさ密度およびタップ密度を測定し、次いでそれらのデータから、次式
【数1】
を使用して圧縮性の値を計算することによって粉末の流動性を測定することを可能にする。
【0105】
したがって、本発明による甘味組成物は、特に高い耐ケーキング性だけでなく、従来技術のソルビトール粉末と比較してきわめて良好な流動(圧縮性)特性および密度特性を有する。
【0106】
ソルビトール粉末では今まで決して兼ね備えることがなかったこれらのきわめて多くの特性のおかげで、本発明の主題である甘味組成物を、有利にチューインガムの生産工程で、かつ錠剤の圧縮にまたは生産のために使用することができる。
【0107】
本発明において用語「チューインガム」は、チューインガムおよびバブルガムを指すために区別なく使用される。さらにこれら2種類の間の違いは、まったく不明瞭である。チューインガムが噛まれるのに対し、バブルガムは膨らますことを意図しており、したがって従来からどちらかといえば若い人達によって消費されている。
【0108】
具体的には上記組成物は、単にこれだけではないが、その良好な流れのために、またその粉塵を作り出す傾向が少ないためにチューインガムの生産工程で使用するのに特に適している。
【0109】
したがって本発明はまた、チューインガムの生産におけるこの甘味組成物の使用法に関する。
【0110】
本出願人の会社は、本発明による甘味組成物が、チューインガムのレシピにおいて配合コストを低減する点で特に有利である。
【0111】
上記組成物は具体的には、最終製品の最終官能特性に影響を与えることなく、従来技術のまたは通常のチューインガム組成物と比較してガムベースを60%、好ましくは50%、より好ましくは40%減らすことを可能にする。
【0112】
したがってその上重要なことは、前記組成物は、使用されるフレーバーの含量の無視で
きない削減を可能にする。これは、レシピにより少ないガムベースを投入することが、加えられるフレーバーの量に直接に影響を与えるためである。
【0113】
したがって前記組成物の使用はまた、従来技術のまたは通常のチューインガム組成物と比較してフレーバーの量を50%、好ましくは40%、より好ましくは25%減らすことを可能にする。
【0114】
実際に本出願人の会社は、チューインガムタイプの配合で本発明の甘味組成物を使用することが、同じレシピによるが従来技術のソルビトールを使用して得られるチューインガムよりもしなやかな最終の質感をチューインガムに与えることを実証することに具体的に成功した。したがって、これが大いにチューインガムに質感を与えることを可能にするガムベースであることを前提として、本出願人の会社は、チューインガムの最終の質感を変えないような方法でガムベースの量を減らすという考えを抱いた。本発明の甘味組成物の使用はまた、通常使用されるフレーバーの量を減らすことを可能にする。これは、フレーバーの一部が、噛んでいる間ずっとガムベース中に捕えられたままであり、したがってそれらフレーバーが決して唾液中に放出されないためである。
【0115】
したがってこの甘味組成物は、ガムベースの量の削減を一方で可能にし、それによって結果として使用されるフレーバーの量を減らすことを他方で可能にするので、この甘味組成物を使用することには二重の利点が存在する。ガムおよびフレーバーの量のこのような減少は、生産コストのレベルのかなりの低減をもたらし、したがって製造業者にとってきわめて有利である。
【0116】
本発明による甘味組成物の特別な特性、より具体的にはBET法による0.6m/g未満というその低い比表面積は、95%以下のソルビトール含量と組み合わさって、また200~350μmの体積平均径と組み合わさって、ガムベース、したがって結局はチューインガムを軟らかくする能力をこの水素化甘味組成物に与える。
【0117】
さらに、たとえレシピ中のフレーバーの量がより少ないとしても、香味の知覚は、強さに関してまた持続性に関しての両方で本発明による甘味組成物を含有するチューインガムにおいて、従来技術によるチューインガムと少なくとも同一である。
【0118】
本出願人の会社は、ガムベースを減らすことによって質感に関して完全に満足できるチューインガムを得ることが完全に可能なことを具体的に実証した。様々な成分間の比率が一般に固定され、製品の最終品質にマイナスの影響を与えることなくそれらを変えることができないので、これは少しも自明のことではなかった。
【0119】
したがって本発明はまた、
- 10%~28%、優先的には15%~25%、さらにより優先的には20%の少なくとも1種類のガムベースと、
- 20%~70%、優先的には30%~60%の上記甘味組成物と、
- 0.1%~5%、優先的には0.5%~3%、さらにより優先的には1%~1.8%の少なくとも1種類のフレーバーと
を含有するチューインガム組成物からなり、この割合は前記組成物の総乾燥重量を基準にした乾燥重量によって表される。
【0120】
本出願人は、45℃~80℃の間の温度で、優先的にはジャケットを備えたZ-アームミキサー中または連続ミキサー中でこの混合を行うことを推奨する。好ましくはガムベースを当業者に知られている任意の手段によって事前に45℃~80℃の間、好ましくは45℃~55℃の間の温度に加熱することを勧める。一例としては、それをマイクロウェー
ブオーブンまたはオーブン中で加熱することができる。
【0121】
上記化合物の混合はまた、甘味剤として別の多価アルコール、例えばマンニトール、マルチトール、キシリトール、エリスリトール、ラクチトール、イソマルト、マルチトールシロップ、ソルビトールシロップ、または水素化グルコースシロップなどを粉末状または液体状で使用することもできる。
【0122】
本発明の一つの有利な実施形態では、その水素化甘味組成物はまた、チューインガム生産用のレシピ中でソルビトールシロップと組み合わせることができる。
【0123】
有利には、本発明の水素化甘味組成物を96%未満の純度を有するソルビトールシロップと組み合わせることがまた、チューインガム中のガムベースの量、したがってフレーバーの量を減らすことを可能にする。
【0124】
上記化合物の混合はまた、着色剤と、強力甘味料、例えばアスパルテーム、アセスルファム-K、アリテーム、ネオテーム、スクラロース、サッカリン、ネオヘスペリジンDC、ステビオシド、ブラゼインと、医薬活性剤と、ミネラルと、植物エキスと、酸化防止剤と、非消化性繊維、例えばオリゴ糖(例えばフルクトオリゴ糖)などと、Matsutani社によって販売されているFibersol(商標)、あるいは本出願人によって販売されているNutriose(登録商標)などの非消化性繊維と、レシチンなどの乳化剤等とから選択される少なくとも1種類の成分を、チューインガムの総重量を基準にして最大5重量%の量で使用することができる。
【0125】
使用されるガムベースは、生産されるチューインガムの種類に適合させることができる。それは、ポリイソプレン、ポリ酢酸ビニル、ポリイソブチレンなどの合成および/または天然エラストマー、ラテックス類、テルペン樹脂などの樹脂、ポリビニルエステル、アルコール、脂肪、またはワックス、例えばラノリン、任意選択で部分水素化される植物性油脂、脂肪酸、グリセロール部分エステル、パラフィン、または微晶質ワックスを含むことができる。
【0126】
チューインガム組成物の生産では、前述の成分を混合するステップの次に、当業者によく知られている任意の手法により行われる押出、圧延、切断、冷却、次いで包装のステップが続く。最後にチューインガムは、当業者によく知られている、例えばスティック、ボール、糖衣錠、キューブ、または他の錠剤の形態の一つで存在する。
【0127】
本発明はまた、医薬品または食品に使用するための錠剤の生産におけるこの甘味組成物の使用法に関する。
【0128】
本発明はまた、チューインガム組成物またはチューインガムに加えて、本発明による甘味組成物から生産される錠剤に関する。錠剤の甘味組成物含量は、前記錠剤の所望の使用法によって決まることになる。一般には錠剤の甘味組成物含量は、乾燥重量で1%~90%であることができる。
【0129】
本発明による甘味組成物は、
- 40%~50%の乾燥物質量を有し、かつ80%~95%のグルコース、3.5%~12%のDP2、および0.5%~8%のDP3を含むグルコースシロップの水素化、
- 続いて前記水素化シロップを、50%を超える、好ましくは70%~80%の乾燥物質含量まで濃縮するステップ、
- 結晶化のステップ、より具体的には造粒のステップ、
- 続いて任意選択で熟成、圧延、および最終ふるい分けのステップ
によって得ることができる。
【0130】
造粒のステップについては、最も好ましくは糖衣装置中においてソルビトール粉末(プライマー)上への水素化されたまたはソルビトールに富むシロップの吹付けが行われることになる。ここで、この造粒のステップについては仏国特許第2202867号明細書の文書を参照されたい。
【0131】
本発明のより良い理解は、下記の例を読むことにより得られ、但しこれらの例は、いかなる形であれ本発明を限定するものではあり得ない。
【実施例
【0132】
実施例1
本発明による甘味組成物を生産する方法
45%の乾燥物質を含有し、かつ乾燥重量で95%のグルコース、4%のDP2、および1%のDP3を含むグルコースシロップを、60バールの水素圧下で水素化する。この水素化の間にpHは約4.5の低い値までゆっくり低下する。次いでpHを、無水ベースで2%以下の還元糖濃度までの水素化を終えるように水酸化ナトリウムを水酸化ナトリウム水溶液の形態で加えることによって8まで上昇させる。
【0133】
水素化のステップには、
- 乾燥物質を、50%を超える、好ましくは70%~80%の乾燥物質含量まで濃縮するステップ、
- 仏国特許第2202862号明細書に記載の条件下で結晶化させるステップ、および
- 最後に圧延
が続く。
【0134】
実施例2:
本発明による粉末状甘味組成物の特徴
実施例1で述べた生産方法の実施により得られる組成物を分析して、そのすべての物理化学的特性を求め、ブランド名Neosorb(登録商標)で本出願人の会社によって販売されている市販のソルビトール粉末と比較する。
【0135】
【表1】
【0136】
これら特性を兼ね備えたこのような甘味組成物が述べられるのは初めてである。したがってこの組成物は今までにない。
【0137】
実施例3
チューインガムの生産における本発明による甘味組成物の使用法
対照は、ブランド名Neosorb(登録商標)で本出願人の会社によって販売されている市販のソルビトール粉末で行われた。
【0138】
表示されるすべての割合は、使用されるチューインガム組成物の総乾燥重量を基準にしてそのように表される。
【0139】
1.チューインガム組成物の調製
【0140】
【表2】
【0141】
ガムベースSolsona Tは、Cafosa社によって販売されている。
【0142】
Neosorb(登録商標)P60Wソルビトールは、本出願人の会社によって販売されている結晶性ソルビトール粉末である。マンニトール 60、キシリトール 90、およびLycasin(登録商標)85/55マルチトールシロップもまた、本出願人の会社によって販売されている。
【0143】
対照のチューインガム組成物および本発明によるチューインガム組成物の調製手順
- 混合(Z-アームミキサー中で45℃で行われる芯(center)の50kgのバッチの生産の分の単位の手順)
0分:溶融したガムベース(50℃で一晩砕いた)とマンニトールとキシリトールを導入する。
3分:Lycasin(登録商標)85/55を加える。
5分:Neosorb(登録商標)ソルビトールまたは水素化した本発明による甘味組成物のいずれかを加える。
9分:グリセロールを加える。
10分:粉末状フレーバーを加える。
12分:液体ミント/バニラフレーバーを加える。
15分:ミキサーから取り出す(生地は約50℃である)。約2kgのブロックを形成し、50%RHおよび20℃で1時間保管する。ブロックは押出のために約48℃であらねばならない。
- 押出(Togum TO-E82装置)。
- ボディの設定温度=36℃。
- ヘッドの設定温度=39℃。
- 圧延(4ステーション:2ステーションでプレカッティング)(Togum TO
-W191装置)。
- マンニトール/タルク(90/10)混合物をチューインガムのストリップに散布する。
- 熟成。
- タブのプレカットシートを約15℃、50%RHで約24時間保管する。
【0144】
2.チューインガムの官能特性の評価
予め得たチューインガムは、チューインガムの試験および等級付けの訓練を受けた15人の審査員によって試験された。
【0145】
審査員は、最初の数秒間噛む間だけでなく、3分間噛んだ後のそのチューインガムのしなやかさを0~4に等級付けすることを求められた。
4は最高にしなやかであり、また0は非常に硬いあるいは砕けやすいチューインガムに対応する。
【0146】
審査員はまた、噛んでいる間の香味の知覚を等級付けすることを求められた。この試験はまた、香味の持続性を評価するために噛んだ最初の数秒間の間、および3分間噛んだ後に行われた。
4は非常に強い香味に与えられる等級であり、また0は香味がもはや全くないチューインガムに対応する。
【0147】
製品はランダムな順序で与えられ、かつ審査員がその製品の知識によって、またはそれらの符号によって影響されないように3桁の数字で暗号化された。試験は官能分析実験室中で行われた。
【0148】
T+0においてチューインガムは口腔中に置かれ、同時にタイマーが起動する。次いで噛み始める。
【0149】
データは、統計処理によって処理された(各時間間隔で得られた平均に対してANOVAおよび平均比較検定が行われた)。
【0150】
【表3】
【0151】
次のことが明らかになる。
【0152】
- これら2種類のチューインガムのしなやかさは同じように変化する。対照のチューインガムよりも10%少ないガムベースを含有するが、鑑定者の審査員団は、これら2種
類の試料間で質感に関して、またより具体的にはしなやかさに関して違いに気付かなかった。
【0153】
- 香味の知覚および持続性に関しては、繰り返して言うがt=10秒において対照のチューインガムと本発明によるチューインガムの間に差がなかった。レシピ中のフレーバーの量はより少ないが本発明による甘味組成物を含有するチューインガムにおける上記香味の知覚は、対照のチューインガムと同一である。より少ないガムベースおよびより少ないフレーバーを含有する本発明による甘味組成物から得られるチューインガムは、それにもかかわらず3分間噛んだ後に対照のチューインガムよりも若干良好であると等級付けされるので、香味の持続性はある期間にわたって改善されるようにさえ思われる。
【0154】
- したがって本発明による甘味組成物を用いて生産され、かつ重量を基準にして10%少ないガムベース、すなわち前記ガムベースを33%減らしたものを含有し、また重量を基準にして0.4%少ないフレーバー、すなわちフレーバーの量を20%減らしたものを含有するチューインガムは、質感に関して同一であり、また香味の持続性に関して若干より良好である。
【0155】
本発明の利点は、この実施例によって完全に実証される。
【0156】
実施例4
チューインガムレシピ中のガムベース含量削減おける本発明による甘味組成物の利点を試験するために、また本発明による前記組成物を他の多価アルコールと比較するために4つの他の試験を行った。これら4つの新しい試験は、ガムベース含量を20%(重量で)に減らして行った。
【0157】
テスト1は、Neosorb(登録商標)P60Wを用いて行うチューインガムレシピに関する。
【0158】
テスト2は、本発明による甘味組成物を使用するチューインガムレシピに関する。
【0159】
テスト3は、ブランド名SweetPearl(登録商標)で本出願人の会社によって販売され、150μmの平均粒径を有するマルチトールを用いて行うチューインガムレシピに関する。
【0160】
テスト4は、ブランド名SweetPearl(登録商標)で本出願人の会社によって販売され、90μmの平均粒径を有するマルチトールを用いて行うチューインガムレシピに関する。
【0161】
表示されるすべての割合は、使用されるチューインガム組成物の総乾燥重量を基準にしてそのように表される。
【0162】
チューインガム組成物の調製
【0163】
【表4】
【0164】
対照のチューインガム組成物および本発明による甘味組成物を調製するための手順は、実施例3で述べたものと正確に同一である。
【0165】
バッチ式調製の間のチューインガムの挙動の評価
対照(実施例3の対照組成物)は、チューインガム調製の間、きわめてうまく振る舞う。このガムは、申し分なく弾力性があり、かつ過度に硬くない。失望させる粘着現象がない。
【0166】
テスト1(Neosorb(登録商標)P60Wおよび20%ガムベース)は、経時的に次第に固くなる極端に硬いガムベースをもたらす。このガムは非常に引き締まって弾力性がない。さらにこのテストは非常にパサパサしている。
【0167】
テスト2(本発明による組成物および20%ガムベース)は、対照、すなわち申し分なく弾力性がありかつ過度に硬くないガムベース、と同一の挙動を示す。失望させる粘着現象がない。
【0168】
テスト3(SweetPearl(登録商標)150および20%ガムベース)は、極端に軟らかい基礎剤を含むガムを有する。これは良好な弾力性を有するが、非常に粘着性であり、形にするのが困難である。
【0169】
テスト4は、テスト3と同一である。
【0170】
チューインガムの官能特性の評価
これら予め得たチューインガムは、チューインガムの試験および等級付けの訓練を受けた15人の審査員によって試験された。
【0171】
審査員は、3分間噛んだ後のそのチューインガムのしなやかさを0~4に等級付けすることを求められた。
4は最高のしなやかさがあり、また0は非常に硬くなった、あるいは砕けやすくなったチューインガムに対応する。
【0172】
硬さはまた、噛み始めたときのチューインガムの抵抗力として等級付けされた。
4は、噛み抵抗を示すチューインガムについての等級であり、また0は、噛み始めてすぐに極端に軟らかくなるチューインガムについての等級である。
【0173】
審査員はまた、噛んでいる間の香味の知覚を等級付けすることを求められた。香味が最も強かった瞬間の時間を記録することが求められた。これは、芳香ピークと呼ばれるものである。このピークは、秒の単位で表される。早期の芳香ピークは、噛んでいる間の香味のより早期の放出を意味し、したがってまたより早期の香調の枯渇を表す。
【0174】
芳香ピークの強度もまた、1~3の尺度で等級付けされた。3は、高い芳香ピークに対して与えられる等級であり、また0は、低い強度の芳香ピークに対応する。
【0175】
これに加えて、評価される最後の判定基準は、噛み終わりにそのチューインガムによって占められるボリュームについてのものである。チューインガムが大きいほど等級は高く、4が最高である。
【0176】
製品はランダムな順序で与えられ、かつ審査員がその製品の知識によって、またはそれらの符号によって影響されないように3桁の数字で暗号化された。試験は官能分析実験室中で行われた。
【0177】
T+0においてチューインガムは口腔中に置かれ、同時にタイマーが起動する。次いで噛み始める。
【0178】
データは、統計処理によって処理された(各時間間隔で得られた平均に対してANOVAおよび平均比較検定が行われた)。
【0179】
次のことが明らかになる。
【0180】
【表5】
【0181】
対照のチューインガムは比較的硬く、噛み終わりに大きなボリュームを有し、かつ遅い芳香ピークを有する。これは、噛んでいる間の香味の持続性もまたより長いことを意味する。
【0182】
2種類の異なる粒径のマンニトールを用いて行った2つの試験は、全く満足できないチューインガムをもたらす。これらは軟らか過ぎ、また噛み始めたときに硬さおよび抵抗がないと判断された。さらに噛み終わりのボリュームがきわめて小さく、したがって噛んでいる間の膨張がないことを意味する。芳香ピークの発生はより早期である。知覚される芳香強度はより大きい。必然的に、これらの2つの試験においてはチューインガムがあまりにも軟らか過ぎるので、ガムベース中に存在する芳香分子へのアクセスがより早期であることが容易に想像される。
【0183】
テスト1は、噛み終わりの硬さおよびボリュームの特性に関しては満足できる。芳香ピークは、比較的早期に起こり、したがって長期にわたる香味の持続性は低い。その上重要なことは芳香ピークの強度が比較的低い。
【0184】
本発明による甘味組成物を含有するテスト2は、最も満足を与える試験である。20%のガムベースを含有するに過ぎないが、噛んでいる間の良好な香味の知覚を反映する遅い芳香ピークを有する。さらにピークの強度もまた高く、すぐれた香味の知覚を証明している。これはすべて、噛み始めたときに良好な硬さを示すチューインガムの場合である。最後に、噛み終わりに得られるそのボリュームもまた、このチューインガムが、それを噛んでいる間に確かに膨張したことを証明している。
【0185】
したがって、本発明による甘味組成物を用いて生産され、重量を基準にして10%少ないガムベース、すなわち前記ガムベースを33%減らしたものを含有し、かつ重量を基準にして0.37%少ないフレーバー、すなわちフレーバーの量を18.5%減らしたものを含有するチューインガムは、従来技術により生産されたチューインガムと比べて質感に関して同一であり、かつ芳香の知覚に関して若干良好である。本発明の利点は、この実施例により完全に実証される。
【0186】
実施例5
チューインガムの生産におけるソルビトールシロップと組み合わせた本発明による甘味組
成物の使用
【0187】
チューインガム組成物の調製
【0188】
【表6】
【0189】
表示されるすべての割合は、使用されるチューインガム組成物の総乾燥重量を基準にしてそのように表される。
【0190】
これらチューインガムは、以前の実施例で述べたものと同じ方法により調製された。
【0191】
チューインガムはまた、訓練を受けた審査員によって上記の実施例3で示した判定基準に従って味見された。
【0192】
次のことが明らかになる。
【0193】
これらの3種類のチューインガムのしなやかさは同じように変化する。対照のチューインガムよりも10%少ないガムベースを含有するが、3種類の試料間で質感に関して、より具体的にはしなやかさに関して差がないことが、味見役の審査員によって指摘された。
【0194】
芳香の知覚に関してはテスト1のチューインガムは、最も卓越した芳香の香調を有し、かつ持続時間に関してもまたより長い持続性を有するものであることが認められた。
【0195】
したがって、本発明による甘味組成物を用いて生産され、重量を基準にして10%少ないガムベース、すなわち前記ガムベースを33%減らしたものを含有するチューインガムは、質感に関して同一であり、かつ香味の持続性に関しては若干良好である。
【0196】
本発明の利点は、またしてもこの実施例によって完全に実証される。
【0197】
実施例6
本発明による比表面積の測定
上記で示したように本発明による比表面積は、250μm~841μmの画分で得られる粉末の試料に対して測定される。
【0198】
試料の調製
試料を調製するために、十分な量の試料を841μmおよび250μmの篩上でふるい分けして、841μm~250μmの間の粒径画分を約3g回収する。
【0199】
次いで、予め乾燥し、0.001g以内まで風袋を計った装置の測定用セルに試料を導入する。試料は、セルのタンクを3/4満たすのに十分なものである。
【0200】
脱ガス
試料を含有するセルをその脱ガス場所に置く。
【0201】
脱ガスは、その装置を使用するための取扱説明書を参照することによって行われる。
【0202】
粉末の分析
脱ガスが行われたらすぐに、セルを0.001g以内まで再び計量し、測定場所に置く。次いで分析を、その装置を使用するための取扱説明書を参照することによって行う。
【0203】
装置は、回収された結果を自動的に処理する。結果はm/gで表される。