IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社バイオリンク販売の特許一覧 ▶ 株式会社ロジカルラボの特許一覧 ▶ 株式会社サンシャインコーポレーションの特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-26
(45)【発行日】2022-11-04
(54)【発明の名称】日焼け止め化粧料
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/29 20060101AFI20221027BHJP
   A61Q 17/04 20060101ALI20221027BHJP
   A61K 8/73 20060101ALI20221027BHJP
   A61K 8/34 20060101ALI20221027BHJP
   A61K 8/9789 20170101ALI20221027BHJP
   A61K 8/362 20060101ALI20221027BHJP
【FI】
A61K8/29
A61Q17/04
A61K8/73
A61K8/34
A61K8/9789
A61K8/362
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018009139
(22)【出願日】2018-01-23
(65)【公開番号】P2019127448
(43)【公開日】2019-08-01
【審査請求日】2020-12-22
(73)【特許権者】
【識別番号】504030912
【氏名又は名称】株式会社バイオリンク販売
(73)【特許権者】
【識別番号】518026280
【氏名又は名称】株式会社ロジカルラボ
(73)【特許権者】
【識別番号】512298351
【氏名又は名称】株式会社サンシャインコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100125184
【弁理士】
【氏名又は名称】二口 治
(74)【代理人】
【識別番号】100188488
【弁理士】
【氏名又は名称】原谷 英之
(72)【発明者】
【氏名】辻 大作
(72)【発明者】
【氏名】堀 剛志
(72)【発明者】
【氏名】モハマッド ラメザニ
【審査官】山中 隆幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-339326(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00-90/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記成分を含有する日焼け止め化粧料であって、
(a)天然物由来のシリカで表面処理された金属酸化物
(b)クインスシードエキス
(c)天然物由来の1,3-プロパンジオール
グリセリン、
グリセリルグルコシド、
クエン酸、
クエン酸ナトリウム、
日焼け止め化粧料に占める(a)天然物由来のシリカで表面処理された金属酸化物の含有率が、10質量%~20質量%、(b)クインスシードエキスの含有率が、0.2質量%~0.6質量%、(c)天然物由来の1,3-プロパンジオールの含有率が、25質量%~50質量%であり、日焼け止め化粧料を構成するすべての成分は、天然物由来であることを特徴とする日焼け止め化粧料。
【請求項2】
前記金属酸化物は、酸化チタンである請求項1に記載の日焼け止め化粧料。
【請求項3】
前記金属酸化物の平均一次粒子径が、10nm~100nmである粒子状の金属酸化物である請求項1または2に記載の日焼け止め化粧料。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか一項に記載の日焼け止め化粧料の製造方法であって、
(a)天然物由来のシリカで表面処理された金属酸化物を(c)天然物由来の1,3-プロパンジオールに分散することによって分散物を得る工程、および、
前記分散物を、(b)クインスシードエキスを溶解させた水溶液にさらに分散させる工程を有することを特徴とする日焼け止め化粧料の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、日焼け止め化粧料に関するものであり、より詳細には、すべての成分が、天然物由来の原料を用いた日焼け止め化粧料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、日焼け止め化粧料として、金属酸化物を用いたものが提案されている。例えば、特許文献1には、シリコーン化合物の第一被覆および第二被覆を含む疎水性金属酸化物を含んでなる組成物であって、油溶性日焼け止めまたは水溶性日焼け止めに混合されるものが記載されている(特許文献1、請求項1および請求項3)。特許文献2には、(a)揮発性オルガノポリシロキサン、(b)シリコーン系分散剤、(c)シリコーン表面処理金属酸化物微粒子及び(d)有機系紫外線吸収剤を含有する日焼け止め化粧料が記載されている(特許文献2、請求項1および段落0012)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2007-314533号公報
【文献】特開2009-84171号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
皮膚刺激性がより低く、安全な化粧品を提供するという観点から、化学合成物質を可能な限り含有しない化粧品が望まれている。また、金属酸化物が日焼け止め化粧料中で凝集したり、経時的に沈降してしまうと、日焼け止め化粧料の使用感が悪くなることがある。特許文献1、2では、金属酸化物にシリコーンが被覆されている。しかし、日焼け止め化粧料が水系の場合、シリコーン被覆金属酸化物は日焼け止め化粧料中で安定に分散しない。シリコーン被覆金属酸化物を日焼け止め化粧料中で安定に分散させるためには、界面活性剤(乳化剤)を配合する必要がある。しかし、界面活性剤(乳化剤)は皮膚刺激性が強い。本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、皮膚刺激性が低く、かつ、金属酸化物の分散性が良く使用感に優れる日焼け止め化粧料を提供することを目的とする。
また、本発明は、前記日焼け止め化粧料の経時安定性を向上させるための、日焼け止め化粧料の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決することができた本発明の日焼け止め化粧料は、下記の成分(a)~(c)を含有することを特徴とする。
(a)天然物由来のシリカで表面処理された金属酸化物
(b)クインスシードエキス
(c)天然物由来の1,3-プロパンジオール
【0006】
本発明の日焼け止め化粧料は、(a)天然物由来のシリカで表面処理された金属酸化物を含有する。本発明では、金属酸化物をシリコーン化合物ではなくシリカで表面処理する。シリカで表面処理された金属酸化物は、水への分散性や安定性が良好である。よって、日焼け止め化粧料における界面活性剤(乳化剤)の配合量を低減できるか、あるいは、配合する必要がない。したがって、本発明の日焼け止め化粧料は使用感が良好であり、かつ皮膚刺激性が低くなる。そして、本発明の日焼け止め化粧料は、さらに(b)クインスシードエキスおよび(c)天然物由来の1,3-プロパンジオールを含有する。天然物由来の(b)クインスシードエキスと(c)天然物由来の1,3-プロパンジオールとを用いることで、化学合成成分の含有量を低く抑えられる。そして、抗菌作用を有する(c)天然物由来の1,3-プロパンジオールを使用することで、本発明の日焼け止め化粧料は、パラベン等の皮膚刺激性の高い防腐剤の含有量を低く抑えることができるか、あるいは、皮膚刺激性の高い防腐剤を含有する必要がない。よって、(b)クインスシードエキスおよび(c)天然物由来の1,3-プロパンジオールを含有する本発明の日焼け止め化粧料は皮膚刺激性が低いものとなる。また、(b)クインスシードエキスと(c)天然物由来の1,3-プロパンジオールを含有することで、本発明の日焼け止め化粧料における前記(a)成分の分散性がさらに向上する。(a)成分の分散性の向上により、本発明の日焼け止め化粧料は肌に塗布した後に「ヨレ」が発生せず、使用感が良好となる。
【0007】
なお、本発明において、「天然物」とは、化学合成によって生産された合成物質でなければよく、人為によらず自然に存在する植物や動物の他、人為的に栽培された植物や養殖された動物なども含むものとする。また、「天然物由来」の物質とは、天然物そのものの他、天然物から産出された物質、天然物を構成する一部の成分を抽出などの方法により取り出した物質を意味する。
【0008】
また、本発明には、前記日焼け止め化粧料の製造方法が含まれる。本発明の日焼け止め化粧料の製造方法は、(a)天然物由来のシリカで表面処理された金属酸化物を(c)天然物由来の1,3-プロパンジオールに分散することによって分散物を得る工程、および、前記分散物を、(b)クインスシードエキスを溶解させた水溶液にさらに分散させる工程を有することを特徴とする。前記製造方法により、得られる日焼け止め化粧料に含まれる各原料成分が分離しにくくなり、得られる日焼け止め化粧料の経時安定性が向上する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、皮膚刺激性がより低く、かつ、金属酸化物の分散性が良く使用感に優れる日焼け止め化粧料を提供できる。また、本発明によれば、前記日焼け止め化粧料の経時安定性を向上させるための、日焼け止め化粧料の製造方法を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の日焼け止め化粧料は、下記の成分(a)~(c)を含有することを特徴とする。
(a)天然物由来のシリカで表面処理された金属酸化物
(b)クインスシードエキス
(c)天然物由来の1,3-プロパンジオール
【0011】
本発明の日焼け止め化粧料は、(a)天然物由来のシリカで表面処理された金属酸化物を含有する。本発明で使用する(a)天然物由来のシリカで表面処理された金属酸化物は、表面処理されていない金属酸化物よりも、日焼け止め化粧料における分散性が高い。また、金属酸化物をシリカで表面処理することで金属酸化物の表面活性を低減できるので、本発明の日焼け止め化粧料は皮膚刺激性が低く安全となる。(a)天然物由来のシリカで表面された金属酸化物とは、その表面の少なくとも一部がシリカによって被覆されていればよく、金属酸化物の表面全体がシリカで被覆されていることが好ましい。
【0012】
前記(a)天然物由来のシリカで表面処理された金属酸化物における、金属酸化物について説明する。本発明において、金属酸化物は、反射・散乱により紫外線を物理的に遮蔽する紫外線散乱剤として用いられる。本発明で用いられる金属酸化物としては、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化鉄、酸化クロム、および、酸化セリウムよりなる群から選択される1種又は2種以上が挙げられる。このなかでも、前記金属酸化物は、酸化チタンおよび/または酸化亜鉛であることが光学的特性から好ましい。
【0013】
前記金属酸化物が酸化チタンである場合、前記酸化チタンの結晶構造としては、ルチル型、アナターゼ型、ブルカイト型が挙げられる。前記酸化チタンの結晶構造は、屈折率の高いルチル型であることが好ましい。前記酸化チタンとしては、天然物由来のものが好ましく、例えば、イルメナイト鉱石に由来するものを挙げることができる。
【0014】
前記(a)天然物由来のシリカで表面処理された金属酸化物における、シリカについて説明する。本発明におけるシリカとは、二酸化ケイ素のことである。前記シリカとしては、結晶質シリカと非晶質シリカが挙げられるが、非晶質シリカであることが好ましい。また、前記シリカは、シリカ水和物(含水シリカ)として、金属酸化物に表面処理されていてもよい。シリカで金属酸化物を表面処理することにより、水などの分散媒中に分散質として存在する金属酸化物の分散性が向上する。
【0015】
シリカによる表面処理の方法は特に限定されないが、湿式法などが挙げられる。湿式法とは、金属酸化物のスラリーにケイ酸ナトリウムなどの水溶性化合物を添加した後、さらに酸または塩基を加える方法である。この方法では、金属酸化物の表面にシリカ水和物が析出することで、金属酸化物がシリカ水和物で被覆される。なお、本発明においてシリカによる表面処理を湿式法で行う場合は、ケイ酸ナトリウムなどの水溶性化合物に含まれるシリカが天然物由来のものを用いる。
【0016】
前記天然物由来のシリカは、鉱物由来のシリカであることが好ましく、珪砂由来のシリカであることがより好ましい。
【0017】
前記(a)天然物由来のシリカで表面処理された金属酸化物は、粒子状であることが好ましい。前記金属酸化物が粒子状である場合、前記(a)天然物由来のシリカで表面処理された金属酸化物の平均一次粒子径は、特に限定されないが、100nm以下であることが好ましく、より好ましくは80nm以下、さらに好ましくは50nm以下であり、好ましくは10nm以上である。平均一次粒子径が100nm以下であれば、日焼け止め化粧料を皮膚に塗布したときに、白浮きや白残りが生じにくくなるからである。なお、本発明における(a)天然物由来のシリカで表面処理された金属酸化物の平均一次粒子径の値は、透過型電子顕微鏡を用いて金属酸化物を撮影して得た画像から、1000個以上の金属酸化物の一次粒子の定方向径(粒子の面積を2分する水平線の長さ)をプロットし、それらを平均することによって求めたものである。
【0018】
前記(a)天然物由来のシリカで表面処理された金属酸化物が粒子状である場合、前記金属酸化物の形状としては、球状、紡錘状、棒状、ヒトデ状、板状、不定形状等が挙げられるが、特に限定されない。紫外線遮蔽性に優れる点から、球状、紡錘状、または板状が好ましく、球状または紡錘状がより好ましい。
【0019】
前記(a)天然物由来のシリカで表面処理された金属酸化物において、金属酸化物に対するシリカの質量比(シリカ/金属酸化物)は、0.15以上が好ましく、より好ましくは0.20以上、さらに好ましくは0.30以上、最も好ましくは0.43以上である。前記比が0.15以上であれば、前記(a)成分の分散性がより良好となるからである。なお、前記比の上限は特に限定されないが、前記比は1.00以下であることが好ましく、より好ましくは0.80以下である。
【0020】
前記(a)天然物由来のシリカで表面処理された金属酸化物としては、例えば、テイカ(株)から商品名「MT-100WP」で市販されているシリカで表面処理された酸化チタン、商品名「MZ-500HP」で市販されているシリカで表面処理された酸化亜鉛を用いることができる。
【0021】
本発明の日焼け止め化粧料に占める前記(a)成分の含有率は、5質量%以上が好ましく、7.5質量%以上がより好ましく、10質量%以上であることがさらに好ましい。(a)成分の含有率が高くなれば、日常生活における十分な紫外線防御効果が発現するからである。なお、前記(a)成分の含有率の上限は特に限定されないが、使用感の観点から、前記(a)成分の含有率は、20質量%以下であることが好ましい。
【0022】
本発明の日焼け止め化粧料は、(b)クインスシードエキスを含有する。(b)クインスシードエキスは、天然物由来の物質である。(b)クインスシードエキスは、バラ科のマルメロの種子に精製水とグリセリンとを加えることで得られる。前記(b)クインスシードエキスは、多糖類を含有する。(b)クインスシードエキスに含まれる多糖類としては、例えば、セルロース類、キシラン類等が挙げられる。
【0023】
(b)クインスシードエキスは、(c)天然物由来の1,3-プロパンジオールとともに本発明の日焼け止め化粧料に配合されることで、前記(a)成分の分散性を向上させる。また、前記(b)クインスシードエキスは、粘着質の液体であり、独特のさっぱりとした使用感を有する。この使用感は、合成高分子や他の天然の粘着液の使用感とは異なる独特のものである。(b)クインスシードエキスは、(c)天然物由来の1,3-プロパンジオールによるべとつきを低減させる。よって、本発明の日焼け止め化粧料は、使用感が向上する。
【0024】
本発明の日焼け止め化粧料は、前記したとおり(b)成分によって使用感が向上する。そして、(b)成分は天然物由来の物質である。よって、本発明の日焼け止め化粧料は、使用感向上のための化学合成物質の含有率を低く抑えられる。したがって、(b)成分を含有する本発明の日焼け止め化粧料は、皮膚刺激性が低いものとなる。
【0025】
本発明の日焼け止め化粧料に占める前記(b)成分の含有率は、0.1質量%以上、より好ましくは0.2質量%以上、さらに好ましくは0.3質量%以上であり、0.6質量%以下が好ましく、より好ましくは0.55質量%以下、さらに好ましくは0.5質量%以下である。(b)成分の含有率が上記範囲内であれば、前記(a)成分の分散安定性がより向上するからである。なお、(b)成分としてクインスシードエキスを溶媒で希釈したもの(クインスシードエキス希釈物)を使用する場合、前記(b)成分の含有率は、本発明の日焼け止め化粧料に占めるクインスシードエキス純分の含有率である。
【0026】
本発明の日焼け止め化粧料は、(c)天然物由来の1,3-プロパンジオールを含有する。(c)天然物由来の1,3-プロパンジオールは、高い保湿効果を有する。また、(c)天然物由来の1,3-プロパンジオールは高い抗菌作用も有しており、かつ、エチルアルコールやパラベン等の従来使用されていた防腐剤よりも皮膚刺激性が低い。したがって、(c)天然物由来の1,3-プロパンジオールを含有する本発明の日焼け止め化粧料は、従来の日焼け止め化粧料と比較して皮膚刺激性が低い。
【0027】
また、(c)天然物由来の1,3-プロパンジオールは(b)クインスシードエキスとともに日焼け止め化粧料に配合されることで、前記(a)成分の分散性を向上させる。よって、本発明の日焼け止め化粧料の使用感は良好となる。
【0028】
前記(c)天然物由来の1,3-プロパンジオールは、植物由来であることが好ましく、とうもろこし由来であることがさらに好ましい。なお、前記(c)天然物由来の1,3-プロパンジオールは、天然物から抽出などの方法によって得られる1,3-プロパンジオール単体、あるいは、プロパンジオールを含有する組成物である。
【0029】
本発明の日焼け止め化粧料に占める前記(c)成分の含有率は、10質量%以上が好ましく、より好ましくは20質量%以上、さらに好ましくは25質量%以上、もっとも好ましくは30質量%以上である。(c)成分の含有率が10質量%以上であれば、前記(a)成分を前記(c)成分に分散する際に、(a)成分の分散が容易となるからである。なお、(c)成分の含有率の上限は特に限定されないが、(c)成分の含有率は50質量%以下であることが好ましい。
【0030】
本発明の日焼け止め化粧料は、さらにグリセリンを含有することが好ましい。グリセリンを含有すれば、前記(c)1,3-プロパンジオールとの相乗効果によって日焼け止め化粧料の保湿効果がより向上するからである。また、皮膚刺激性低減の観点から、前記グリセリンは天然物由来であることが好ましい。
【0031】
日焼け止め化粧料全体に占める前記グリセリンの含有率は、2.5質量%以上が好ましく、さらに好ましくは4質量%以上、さらに好ましくは6質量%以上である。グリセリンの含有率が高くなれば、日焼け止め化粧料の保湿効果が高くなるからである。前記含有率の上限は特に限定されないが、日焼け止め化粧料全体に占める前記グリセリンの含有率は、50質量%以下であることが好ましい。
【0032】
本発明の日焼け止め化粧料は、さらにpH調整剤を含有することが好ましい。pH調整剤としては、例えば、乳酸-乳酸ナトリウム、クエン酸-クエン酸ナトリウム、コハク酸-コハク酸ナトリウム等の緩衝剤等が挙げられる。本発明の日焼け止め化粧料は、前記pH調製剤として、クエン酸-クエン酸ナトリウムを含有することが好ましい。なお、前記pH調製剤は、皮膚刺激性低減の観点から、天然物由来であることが好ましい。
【0033】
本発明の日焼け止め化粧料は、さらに以下の成分を含有してもよい。なお、以下の各成分は皮膚刺激性低下の観点から、天然物由来であることが好ましい。
マンニトール:保湿剤
ヒトオリゴペプチド-1:細胞増殖作用、創傷治癒
グリセリルグルコシド:エモリエント剤
【0034】
本発明の日焼け止め化粧料は、さらに、通常化粧料に用いられる任意成分を適宜含有することができるが、皮膚刺激性低減の観点から、任意成分は天然物由来の成分であることが好ましい。
【0035】
本発明の日焼け止め化粧料は、皮膚刺激性低減の観点から、紫外線吸収剤を含有しないことが好ましい。前記紫外線吸収剤としては、例えば、メトキシケイヒ酸オクチル、ジメトキシベンジリデンジオキソイミダゾリジンプロピオン酸オクチル、ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル、t-ブチルメトキシジベンゾイルメタン、オクチルトリアゾン、パラメトキシケイ皮酸2-エチルヘキシル等が挙げられる。
【0036】
本発明の日焼け止め化粧料は、皮膚刺激性低減の観点から、一価の低級アルコールを含有しないことが好ましい。一価の低級アルコールとは、水酸基を1つ有し、かつ、炭素原子数を5つ以下で有するものである。一価の低級アルコールとしては、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、イソブチルアルコール、t-ブチルアルコール等が挙げられる。
【0037】
本発明の日焼け止め化粧料の剤型は、特に限定されないが、液状、乳液状、クリーム状、ジェル状、ペースト状等種々の形態を挙げることができる。本発明の日焼け止め化粧料は、ジェル状であることが好ましい。ジェル状の日焼け止め化粧料は、油剤や界面活性剤(キャリーオーバー成分を除く)を含有していなくてもよい。よって、ジェル状の日焼け止め化粧料は、皮膚刺激性が低くなる。
【0038】
本発明の日焼け止め化粧料を構成する各成分は、天然物由来であることが好ましく、キャリーオーバーによる化学合成物質を含まないことがより好ましい。
【0039】
本発明の日焼け止め化粧料の製造方法は、(a)天然物由来のシリカで表面処理された金属酸化物を(c)天然物由来の1,3-プロパンジオールに分散することによって分散物を得る工程、および、前記分散物を、(b)クインスシードエキスを溶解させた水溶液にさらに分散させる工程を有することを特徴とする。以下、本発明の日焼け止め化粧料の製造方法の詳細について説明する。
【0040】
まず、(a)天然物由来のシリカで表面処理された金属酸化物を、(c)天然物由来の1,3-プロパンジオールに分散して、分散物を得る工程について説明する。前記(a)天然物由来のシリカで表面処理された金属酸化物を、前記(c)天然物由来の1,3-プロパンジオールにあらかじめ分散しておくことによって、得られる日焼け止め化粧料の各原料成分が分離しにくくなる。その結果、得られる日焼け止め化粧料は、保存時においても安定な形状が維持されるようになる。本発明の製造方法では、ロールミル、ボールミル、ディスパー等の公知の分散機を用いて、前記(a)成分を前記(c)成分に分散することが好ましく、ロールミルを用いて前記(a)成分を前記(c)成分に分散することがより好ましい。
【0041】
前記ロールミルは、ペースト状の材料を混練することができる装置である。本発明の製造方法においては、(a)成分と(c)成分とをロールミルで混練することが好ましい。当該混練によって、(c)成分に(a)成分を均一に混合・分散させることができる。前記ロールミルは、2本以上のローラーを有するものであることが好ましく、3本以上のローラーを有するものであることがより好ましく、3本のローラーを有する3本ロールミルであることがさらに好ましい。
【0042】
上述の3本ロールミルについて説明する。3本ロールミルでは、3本のロールのロール軸が、水平面と平行になるように配置される。また、各ロール軸は、互いに平行となるように配置される。3本の各ロールは、後ロール、中ロール、前ロールからなる。3本ロールミルは、後中ロール間隙と、前中ロール間隙とを有する。後中ロール間隙は、後ロールと中ロールとの間隙である。前中ロール間隙は、前ロールと中ロールとの間隙である。これらの間隙は数μm~数百μmであり、材料に応じて適宜変更される。
【0043】
3本ロールミルは、各ロールの周速度が相違するように設定して用いられる。例えば、各ロールの周速度の比が、[後ロール周速度]:[中ロール周速度]:[前ロール周速度]=[1]:[1~4]:[4~12]となるように設定される。また、各ロールの周速度は材料に応じて適宜変更される。3本ロールミルで混練を行うペースト状の材料は、後中ロール間隙の上方から供給される。後ロール上にある材料は、後中ロール間隙を通過する際に後ロールから中ロールに転写さる。そして、中ロールに転写された材料は、前中ロール間隙を通過する際に中ロールから前ロールに転写される。当該材料がこれらの間隙を通過する際、圧縮力とせん断力が当該材料に加わる。結果として、材料は均一に混合・分散される。前ロールに転写された混練後の材料は、ブレードでかき取られて回収される。材料が供給され、ブレードでかき取られて回収するまでのステップを、3本ロールミルによる1回の混練という。
【0044】
本発明の日焼け止め化粧料の製造方法における、前記(a)天然物由来のシリカで表面処理された金属酸化物と前記(c)天然物由来1,3-プロパンジオールとをロールミルで混練する工程において、3本ロールミルを使用する場合、混練回数は3回以上であることが好ましい。混練回数が3回以上であれば、(a)成分が(c)成分中に良好に混合・分散されるからである。混練回数の上限は特に限定されないが、5回以下であることが好ましい。
【0045】
前記(a)成分と前記(c)成分とをロールミルで混練する工程では、(a)成分と(c)成分との混練物(分散物)中に占める(c)成分の質量が(a)成分の質量の1.5倍~2倍となるように混練することが好ましい。(c)成分の質量が上記範囲内であれば、(c)成分がロール間から液だれすることを防止できるからである。なお、当該混練工程で使用した(c)成分に加え、さらに(c)天然物由来の1,3-プロパンジオールを日焼け止め化粧料に配合してもよい。追加の(c)天然物由来の1,3-プロパンジオールは、(a)成分と混練せずに、後述の(b)クインスシードエキスを溶解させた水溶液に分散させることが好ましい。
【0046】
なお、前記混練の前に、(a)天然物由来のシリカで表面処理された金属酸化物と(c)天然物由来の1,3-プロパンジオールとを予備混合することが好ましい。当該予備混合では、公知の混合機を用いることができる。当該予備混合によって、(a)天然物由来のシリカで表面処理された金属酸化物と(c)天然物由来の1,3-プロパンジオールとを含有する混合物が得られる。(a)成分と(c)成分とを混練する工程において、当該混合物を混練すれば、(a)成分が(c)成分中に良好に混合・分散される。
【0047】
次に、(a)天然物由来のシリカで表面処理された金属酸化物を(c)天然物由来の1,3-プロパンジオールに分散して得られた分散物を(b)クインスシードエキスを溶解させた水溶液にさらに分散させる工程について説明する。前記分散物を、(b)クインスシードエキスを溶解させた水溶液に、さらに分散させる際には、公知の分散機を用いることができる。
【0048】
前記水溶液は、(b)成分と前記pH調整剤を溶解させたものであることが好ましい。また、前記水溶液は、前記pH調製剤を溶解させた後に、(b)クインスシードエキスをさらに溶解させたものであることが好ましい。また、(b)クインスシートエキスは、室温で精製水に添加し80℃まで加温して溶解しておくことが好ましい。
【0049】
前記分散物を(b)クインスシードエキスを溶解させた水溶液にさらに分散させる工程における材料温度は、特に限定されないが、室温~80℃以下に調整することが好ましい。本発明の日焼け止め化粧料に、他の任意成分を配合する場合、特に限定されないが殺菌工程の前に配合することが好ましい。
【実施例
【0050】
以下、本発明を実施例によって詳細に説明するが、本発明は、下記実施例によって限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲の変更、実施の態様は、いずれも本発明の範囲内に含まれる。
【0051】
下記に示す組成の日焼け止めジェルを下記の製造方法により調製した。なお、配合成分の括弧内に記載したのは、その成分の由来となった天然物である。
〔実施例〕日焼け止めジェル
配合成分 配合量(質量%)
1 酸化チタン(*1)(イルメナイト鉱石) 10
2 シリカ(*1)(珪砂) 4.3
3 1,3-プロパンジオール(とうもろこし) 30
4 グリセリン(パーム等) 6.24
5 ヒトオリゴペプチド-1(発酵) 0.01以下
6 マンニトール(トウモロコシ澱粉等) 0.01以下
7 クインスシードエキス(*2)(マルメロ種子) 0.42
8 グリセリルグルコシド(とうもろこし) 0.72
9 クエン酸(甘藷澱粉粕等) 0.01
10 クエン酸Na(クエン酸等) 0.15
11 精製水 残量
【0052】
*1 テイカ社製「MT-100WP」(湿式法によってシリカで表面処理された微粒子酸化チタン、前記微粒子酸化チタンの平均一次粒子径は15nm、前記平均一次粒子径は、透過型電子顕微鏡を用いて金属酸化物を撮影して得た画像から、1000個以上の金属酸化物の一次粒子の定方向径(粒子の面積を2分する水平線の長さ)をプロットし、それらを平均することによって求めたものである)
*2 大日本化成社製クインスシードエキス希釈物「クインスシードG」(クインスシードエキス純分:6質量%、グリセリン:88質量%、精製水:6質量%)に含まれるクインスシードエキス純分
【0053】
(実施例の日焼け止めジェルの製造方法)
A:成分2で表面処理された成分1と、成分3の一部を室温にて混合を行った。なお、成分1に対する成分3の一部の質量比が1.5~2となるように混合した。
B:Aを3本ロールミルで3回混練を行った。3本ロールミルとして、小平製作所製のRIII-1R-2型を使用した。
C:成分11に、成分3の残り、4、7、8、9および10を加え、攪拌しながら80℃まで加温して、これらを溶解させた。なお、当該Cで得られる水溶液に占めるクインスシードエキス純分の比率が0.2質量%~0.6質量%となるように溶解させた。
D:Cが80℃になり、成分7が溶解したことを目視にて確認した後、Cの殺菌を行った。E:Dを冷却しながら、B、成分5および成分6をDに加えて均一に混合した。
F:Eを35℃に調整し、容器に充填後、日焼け止め化粧料を得た。
【0054】
〔比較例1〕
クインスシードエキスをキサンタンガムに変更したこと以外は、実施例の日焼け止めジェルと同じ組成かつ製造方法で、日焼け止めジェルを製造した。
【0055】
〔比較例2〕
クインスシードエキスをローカストビーンガムに変更したこと以外は、実施例の日焼け止めジェルと同じ組成かつ製造方法で、日焼け止めジェルを製造した。
【0056】
〔比較例3〕
クインスシードエキスをトレハロースに変更したこと以外は、実施例の日焼け止めジェルと同じ組成かつ製造方法で、日焼け止めジェルを製造した。
【0057】
(評価方法および評価結果)
実施例の日焼け止めジェルは、容器に充填してから45℃で1か月経過した後も原料成分の分離が見られず、かつ、肌への塗布の際の伸びがよく使用感がよいものであった。また、実施例の日焼け止めジェルを、SPFをISO24444、UVA防止効果をISO24442として発行された測定法により測定したところ、SPF=17、PA++であった。この日焼け止めジェルは、十分な紫外線防御効果を有するものであった。
【0058】
比較例1の日焼け止めジェルは、原料成分が均一に混ざり、容器に充填してから45℃で1か月経過した後も原料成分の分離もみられなかった。しかしながら、肌へ塗布すると伸びが悪く使用感がよくないものであった。比較例2および比較例3の日焼け止めジェルは、容器に充填してから45℃で1か月経過前に原料成分の分離がみられた。よって、比較例1~3の日焼け止めジェルは、商品としては成立しないものであった。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明は、日焼け止め化粧料として有用である。本発明の日焼け止め化粧料は、すべての成分が、天然物由来の原料からなる化粧料として有用である。