(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-26
(45)【発行日】2022-11-04
(54)【発明の名称】カラオケ装置
(51)【国際特許分類】
G10H 1/00 20060101AFI20221027BHJP
G10K 15/04 20060101ALI20221027BHJP
G09B 15/00 20060101ALI20221027BHJP
【FI】
G10H1/00 102B
G10K15/04 302D
G09B15/00 D
(21)【出願番号】P 2018104853
(22)【出願日】2018-05-31
【審査請求日】2021-04-23
(73)【特許権者】
【識別番号】390004710
【氏名又は名称】株式会社第一興商
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】一色国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】岡本 史郎
【審査官】大石 剛
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-008934(JP,A)
【文献】特開平04-242290(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G10H 1/00
G10K 15/04
G09B 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
利用者がある楽曲のカラオケ歌唱を行った際に得られる歌唱音声から、時系列の歌唱ピッチを含む歌唱データを検出する検出部と、
MIDI音源が搭載する複数の音色の中から、一の音色を選択して
、空いているMIDIチャンネルの1つに割り当
て、チャンネル情報を出力する選択部と、
検出された前記歌唱ピッチ、及び前記ある楽曲のリファレンスデータに基づいて、前記時系列の歌唱ピッチと前記リファレンスデータが示すリファレンスピッチとの差分に対応するPitchBend値を算出する算出部と、
検出された前記歌唱ピッチ、前記ある楽曲のリファレンスデータ、及び前記選択部から出力されたチャンネル情報に基づいて、複数のノートオン情報及びノートオフ情報を作成するノート作成部と、
算出された前記PitchBend値と、作成された前記ノートオン情報及び前記ノートオフ情報とを含む歌唱MIDIデータを生成するMIDIデータ生成部と、
前記MIDI音源を含む音響処理部を制御し、前記ある楽曲のカラオケ演奏を行うための楽曲MIDIデータ、及び生成した前記歌唱MIDIデータに基づいて演奏を行わせる演奏制御部と、
を有するカラオケ装置。
【請求項2】
前記算出部は、前記差分を所定倍した値を前記PitchBend値として算出することを特徴とする請求項1記載のカラオケ装置。
【請求項3】
利用者がある楽曲のカラオケ歌唱を行った際に得られる歌唱音声から、時系列の歌唱ピッチを含む歌唱データを検出する検出部と、
MIDI音源が搭載する複数の音色の中から、一の音色を選択して
、空いているMIDIチャンネルの1つに割り当
て、チャンネル情報を出力する選択部と、
検出された前記歌唱ピッチ及びMIDIデータにおけるノートナンバーと周波数との対応を示す対照テーブルとに基づいて、前記時系列の歌唱ピッチと前記ノートナンバーの周波数との差分に対応するPitchBend値を算出する算出部と、
検出された前記歌唱ピッチ、前記対照テーブル、及び前記選択部から出力されたチャンネル情報に基づいて、複数のノートオン情報及びノートオフ情報を作成するノート作成部と、
算出された前記PitchBend値と、作成された前記ノートオン情報及び前記ノートオフ情報とを含む歌唱MIDIデータを生成するMIDIデータ生成部と、
前記MIDI音源を含む音響処理部を制御し、前記ある楽曲のカラオケ演奏を行うための楽曲MIDIデータ、及び生成した前記歌唱MIDIデータに基づいて演奏を行わせる演奏制御部と、
を有するカラオケ装置。
【請求項4】
前記選択部は、前記MIDI音源が搭載する複数の音色の中から、一の音色として純音または純音に近い音色を選択することを特徴とする請求項1~3のいずれか一つに記載のカラオケ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はカラオケ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
カラオケ歌唱を行った利用者が、適切なピッチでカラオケ歌唱できなかった箇所(ピッチのずれが生じた箇所)を後から確認したいと思うことがある。
【0003】
そこで、特許文献1には、楽曲のリファレンスデータのピッチと歌唱時のピッチをフレーム単位で比較し、リファレンスデータのピッチと歌唱時のピッチの差分が閾値を超える時には比較結果の表示色を変えることにより、適切なピッチで歌唱できていない箇所を利用者に報知することができる技術が開示されている。
【0004】
また、別の方法として、録音したカラオケ歌唱を後から聴くことにより、適切なピッチでカラオケ歌唱できなかった箇所を確認することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1の技術を用いたとしても、ピッチのずれを音として直感的に把握することが困難である。なお、視覚に障害を有する利用者は、そもそも特許文献1の技術を利用してもピッチのずれを確認できない。
【0007】
また、実際のカラオケ歌唱を行う際には、楽曲の歌詞に基づいて発声する。従って、カラオケ歌唱の録音には様々な発音が含まれている。そのため、利用者が後から録音を聴いたとしても、ピッチのずれを把握しにくい場合がある。
【0008】
本発明の目的は、カラオケ歌唱を行った利用者が、適切なピッチでカラオケ歌唱できなかった箇所を聴覚的に容易に把握することを可能とするカラオケ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するための主たる発明は、利用者がある楽曲のカラオケ歌唱を行った際に得られる歌唱音声から、時系列の歌唱ピッチを含む歌唱データを検出する検出部と、MIDI音源が搭載する複数の音色の中から、一の音色を選択してMIDIチャンネルの一つに割り当て、当該チャンネル情報を出力する選択部と、検出された前記歌唱ピッチ、及び前記ある楽曲のリファレンスデータに基づいて、前記時系列の歌唱ピッチと前記リファレンスデータが示すリファレンスピッチとの差分に対応するPitchBend値を算出する算出部と、検出された前記歌唱ピッチ、前記ある楽曲のリファレンスデータ、及び前記選択部から出力されたチャンネル情報に基づいて、複数のノートオン情報及びノートオフ情報を作成するノート作成部と、算出された前記PitchBend値と、作成された前記ノートオン情報及び前記ノートオフ情報とを含む歌唱MIDIデータを生成するMIDIデータ生成部と、前記MIDI音源を含む音響処理部を制御し、前記ある楽曲のカラオケ演奏を行うための楽曲MIDIデータ、及び生成した前記歌唱MIDIデータに基づいて演奏を行わせる演奏制御部と、を有するカラオケ装置である。
本発明の他の特徴については、後述する明細書及び図面の記載により明らかにする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、カラオケ歌唱を行った利用者が、適切なピッチでカラオケ歌唱できなかった箇所を聴覚的に容易に把握することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】実施形態に係るカラオケ装置のハードウェア構成例を示す図である。
【
図2】実施形態に係るカラオケ本体のソフトウェア構成例を示す図である。
【
図3A】実施形態に係るチャンネル、音色、プログラム・チェンジデータの例を示す図である。
【
図3B】実施形態に係るチャンネル、音色、プログラム・チェンジデータの例を示す図である。
【
図5】
図4の小節の一部に対応するリファレンスデータを示した図である。
【
図6】
図4の小節の一部をカラオケ歌唱した際に得られた歌唱音声に基づいて検出された歌唱ピッチを示した図である。
【
図7】
図5のリファレンスピッチと
図6の歌唱ピッチとの差分を示した図である。
【
図8】
図5のリファレンスデータの周波数情報をMIDI形式に置き換えたものである。
【
図9】実施形態に係る歌唱MIDIデータの例を示した図である。
【
図10】実施形態に係るカラオケ装置の処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<実施形態>
図1~
図10を参照して、実施形態に係るカラオケ装置1について説明する。
【0013】
==カラオケ装置==
カラオケ装置1は、利用者が選曲した楽曲のカラオケ演奏及び利用者がカラオケ歌唱を行うための装置である。
図1に示すように、カラオケ装置1は、カラオケ本体10、スピーカ20、表示装置30、マイク40、及びリモコン装置50を備える。
【0014】
スピーカ20はカラオケ本体10からの放音信号に基づいてカラオケ演奏音や歌唱音声を放音するための構成である。表示装置30は、カラオケ本体10から出力される映像信号に基づいて所定の映像を表示するための構成である。マイク40は、利用者がカラオケ歌唱を行った際に得られる歌唱音声をアナログの歌唱音声信号に変換してカラオケ本体10に入力するための構成である。
【0015】
(カラオケ本体のハードウェア)
図1に示すように、カラオケ本体10は、制御部11、通信部12、記憶部13、音響処理部14、表示処理部15、及び操作部16を備える。各構成はインターフェース(図示なし)を介してバスBに接続されている。
【0016】
カラオケ本体10は、選曲された楽曲のカラオケ演奏制御、歌詞や背景映像等の表示制御、マイク40を通じて入力された音声の処理といった、カラオケ歌唱に関する各種の制御を行う。
【0017】
制御部11は、CPU11aおよびメモリ11bを備える。CPU11aは、メモリ11bに記憶された動作プログラムを実行することにより各種の制御機能を実現する。メモリ11bは、CPU11aに実行されるプログラムを記憶したり、プログラムの実行時に各種情報を一時的に記憶したりする記憶装置である。
【0018】
通信部12は、ルーター(図示なし)を介してカラオケ本体10を通信回線に接続するためのインターフェースを提供する。カラオケ装置1は、通信部12を介してペアリングされた携帯端末と通信可能となっている。
【0019】
記憶部13は、各種のデータを記憶する大容量の記憶装置であり、たとえばハードディスクドライブなどである。記憶部13は、カラオケ装置1によりカラオケ演奏を行うための複数の楽曲データ等を記憶する。
【0020】
楽曲データは、カラオケ演奏を行うためのデータである。楽曲データは、個々の楽曲を特定するための識別情報(楽曲ID)が付与されている。楽曲データは、伴奏データ、リファレンスデータ等を含む。伴奏データは、楽曲のカラオケ演奏を行うためのMIDI形式のデータ(カラオケ演奏音の元となるデータ)である。伴奏データは「楽曲MIDIデータ」に相当する。リファレンスデータは、利用者によるカラオケ歌唱を採点する際の基準として用いられるデータである。
【0021】
楽曲データは、歌詞データ、映像データ、属性情報等を含んでいてもよい。歌詞データは、カラオケ演奏に合わせて表示装置30等に表示させる歌詞(歌詞テロップ)を示すデータである。映像データは、カラオケ演奏に合わせて表示装置30等に表示させる背景映像を示すデータである。属性情報は、曲名、歌手名、作詞・作曲者名、及びジャンル等の楽曲に関する情報である。
【0022】
音響処理部14は、制御部11の制御に基づき、楽曲に対するカラオケ演奏の制御およびマイク40を通じて入力された歌唱音声の処理を行う。音響処理部14は、MIDI音源14a、ミキサ14b、及びアンプ14cを含む。MIDI音源14aは、MIDI形式のデータに基づいて演奏を行う装置である。MIDI音源14aは、出力可能な音色を複数(たとえば、128種類)備えている。MIDI音源14aは、楽曲に合わせて所定のチャンネルに音色を割り当てることで、同時に複数種類(たとえば、16種類)の音色を出力できる。楽曲毎に使用する音色は、プログラム・チェンジデータとして伴奏データの先頭で設定されている。プログラム・チェンジデータは、2バイトからなり、第1バイトがチャンネルを示す情報、第2バイトが音色を示す情報である。
【0023】
表示処理部15は、制御部11の制御に基づき、表示装置30における各種表示に関する処理を行う。たとえば、表示処理部15は、ある楽曲のカラオケ演奏時における背景映像に歌詞や各種アイコンが重ねられた映像を表示装置30に表示する処理を行う。
【0024】
操作部16は、パネルスイッチおよびリモコン受信回路などからなり、利用者によるカラオケ装置1のパネルスイッチあるいはリモコン装置50の操作に応じて選曲信号、演奏中止信号などの操作信号を制御部11に対して出力する。制御部11は、操作部16からの操作信号を検出し、対応する処理を実行する。
【0025】
リモコン装置50は、カラオケ本体10に対する各種操作をおこなうための装置である。利用者はリモコン装置50を用いて歌唱を希望する楽曲の選曲(予約)等を行うことができる。
【0026】
(カラオケ本体のソフトウェア)
図2はカラオケ本体10のソフトウェア構成例を示す図である。カラオケ本体10は、検出部100、選択部200、算出部300、ノート作成部400、MIDIデータ生成部500、及び演奏制御部600を備える。検出部100、選択部200、算出部300、ノート作成部400、MIDIデータ生成部500、及び演奏制御部600は、CPU11aがメモリ11bに記憶されるプログラムを実行することにより実現される。
【0027】
[検出部]
検出部100は、利用者がある楽曲のカラオケ歌唱を行った際に得られる歌唱音声から、時系列の歌唱ピッチを含む歌唱データを検出する。
【0028】
歌唱データは、歌唱音声から得られる様々な情報である。本実施形態において、歌唱データは、少なくとも歌唱ピッチを含む。歌唱ピッチは、ある楽曲のカラオケ歌唱を行った際の音高である。歌唱ピッチの検出は、公知の手法(たとえば、自己相関による算出、ゼロクロスからの算出)を用いることができる。歌唱ピッチの検出は、所定のタイミング(たとえば、30msec毎)で行われる。所定のタイミングで繰り返し歌唱ピッチの検出を行うことにより、歌唱ピッチを時系列で得ることができる。なお、歌唱データは、音量レベルを含んでいてもよい。音量レベルは、実効値、ピーク値、または平均値として検出することができる。
【0029】
以下、利用者Uが楽曲Xのカラオケ歌唱を行った後、適切なピッチでカラオケ歌唱できなかった箇所を確認する例について述べる。利用者Uは、カラオケ歌唱を行う前に、予めリモコン装置50等を介して確認用のモードを選択する。当該選択に応じて、検出部100は、利用者Uの歌唱音声から歌唱データの検出を行う。検出部100は、検出した歌唱データを、算出部300及びノート作成部400に出力する。
【0030】
[選択部]
選択部200は、MIDI音源14aが搭載する複数の音色の中から、一の音色を選択してMIDIチャンネルの一つに割り当て、当該チャンネル情報を出力する。具体的に、選択部200は、一の音色として純音または純音に近い音色を選択することができる。
【0031】
純音は、正弦波で示される音(たとえば時報の音や、音叉が発する音)である。純音は基音(基本周波数)のみで構成され倍音を持たない音である。また、純音に近い音色とは、基音以外にはごく少数の整数倍音しか持たず、しかも倍音のレベルが基音と比較して極めて小さいような音色をいう。たとえば基音以外には基音の10%ほどのレベルの2倍音と、5%ほどのレベルの4倍音しか持たないような音色である。選択部200は、確認用のモードに対して予め設定されている純音に近い一の音色(たとえば時報の音色)を選択する。或いは、選択部200は、音高を聴きとり易い周波数特性を持つ他の音色を選択してもよい。
【0032】
ここで、楽曲Xの伴奏データの先頭部分は、
図3Aに示すようなプログラム・チェンジデータを含むとする。また、
図3Aの例によれば、チャンネル08hは空きチャンネルとなっている。そこで、選択部200は、MIDI音源14aが搭載する時報の音色を選択し、チャンネル08hに割り当てるように、プログラム・チェンジデータを設定する(
図3B参照)。選択部200は、選択した音色が割り当てられたチャンネル情報をノート作成部400に出力する。なお、本実施形態に係る時報の音は、MIDI音源14aの125番(7Dh)に搭載されている音としている(
図3B参照)。なお、
図3A等の「h」は、16進法表記(0~F)であることを示す。
【0033】
[算出部]
算出部300は、検出された歌唱ピッチ、及びある楽曲のリファレンスデータに基づいて、時系列の歌唱ピッチとリファレンスデータが示すリファレンスピッチとの差分に対応するPitchBend値を算出する。
【0034】
図4は、楽曲Xのある小節を示した図である。
図5は、
図4の小節の一部に対応するリファレンスデータ(リファレンスピッチ)を示した図である。リファレンスピッチは、所定のインターバル(たとえば、30msec)で示される。
図6は、
図4の小節の一部をカラオケ歌唱して得られた歌唱音声から検出された歌唱ピッチを示した図である。以下の説明では、説明を容易にするためにTPQN=480とし、BPM=125とする。BPM=125であるから、四分音符は1分間に125回演奏される。つまり、1拍の長さは480msecである。従って、楽曲Xのある小節は、8拍であるから3840msecの長さを有する。一方、TPQN=480であるから、MIDIデータの時間軸上の分解能は四分音符あたり480である。つまり、本実施例においては1msec単位でMIDI音源14aを制御することが可能である。また、前述のように歌唱ピッチの検出は30msec毎であり、リファレンスピッチも30msec毎に定められている。従って、楽曲Xのある小節は128個の歌唱ピッチ及びリファレンスピッチを有する。
【0035】
算出部300は、
図5に示したリファレンスピッチと
図6に示した歌唱ピッチの差分を求める。
図5及び
図6から明らかなように、利用者Uは、歌詞「きょ」に対応する部分及び歌詞「つ」に対応する部分をリファレンスピッチよりも低く歌唱しており、歌詞「ぜ」に対応する部分をリファレンスピッチよりも高く歌唱している。よって、算出部300は、
図7に示すような差分を、各歌唱ピッチに対するPitchBend値として算出する。なお、
図7では差分をHz及びcentで示している。PitchBend値はcentで与えられる。
【0036】
[ノート作成部]
ノート作成部400は、検出された歌唱ピッチ、ある楽曲のリファレンスデータ、及び選択部200から出力されたチャンネル情報に基づいて、複数のノートオン情報及びノートオフ情報を作成する。
【0037】
ノートオン情報及びノートオフ情報それぞれは、チャンネル情報、音のピッチを表すノートナンバー、及び音の強弱を表すベロシティ情報が含まれる。ノート作成部400は、第1バイトを9Xh(Xはチャンネル)、第2バイトをノートナンバー、第3バイトをノートオンベロシティ情報とするノートオン情報を作成する。また、ノート作成部400は、第1バイトを8Xh(Xはチャンネル)、第2バイトをノートナンバー、第3バイトをノートオフベロシティ情報とするノートオフ情報を作成する。MIDI音源14aは、ノートオン情報を受信すると、当該ノートオン情報に含まれるチャンネル情報、ノートナンバー及びベロシティ情報(ノートオンベロシティ情報)に基づいて楽音を発音し、その後、対応するノートオフ情報の受信により当該楽音を消音する。この際、PitchBend値に基づいて、発音中(発音から消音までの間)に発音ピッチが変化する。すなわち、PitchBend値が正の場合には、ノートナンバーより高いピッチとなり、負の場合にはノートナンバーより低いピッチとなり、0の場合にはノートナンバーと同じピッチとなる。
【0038】
ここで、
図8は、
図5のリファレンスデータの周波数情報をMIDI形式に置き換えたものである。MIDI規格において、中央のA(A4)のノートナンバーは45h(10進法の69に相当)であり、本実施形態では、A4の周波数は標準的な440Hzとなっている。すなわちMIDI音源14aのマスターチューニングはA4=440Hzに設定されている。また、上記例で述べた通り、楽曲Xの伴奏データにおいて、MIDI音源14aのチャンネル08hに一の音色(選択部200により選択された時報の音)が設定されている。
【0039】
この場合、ノート作成部400は、たとえば歌詞「きょ」に対応する部分について、第1バイトを98h、第2バイトを45h、第3バイトを40hとするノートオン情報を作成する。また、ノート作成部400は、歌詞「きょ」に対応する部分について、第1バイトを88h、第2バイトを45h、第3バイトを00hとするノートオフ情報を作成する。
【0040】
なお、本実施形態においては、第3バイトつまり音の強弱を40h(0-127の中間値)一定としたが、歌唱データに音量レベルが含まれる場合、当該音量レベルをベロシティ情報として利用することも可能である。
【0041】
[MIDIデータ生成部]
MIDIデータ生成部500は、算出されたPitchBend値と、作成されたノートオン情報及びノートオフ情報とを含む歌唱MIDIデータを生成する。
【0042】
図9は、上記例において算出されたPitchBend値と、作成されたノートオン情報及びノートオフ情報とを含む歌唱MIDIデータを示す。
図9における「M-B-T」は、「小節-拍-ティック」を示す。すなわち、ノートオン情報、ノートオフ情報、及びPitchBend値を、どの小節(0、1、…)のどの拍(0、1、2、3)のどのティック(0、1、…、479)で送信するかを示している。また、PitchBend値はcentで示している。なお、PitchBend値を歌唱MIDIデータとして送信する際には、MIDI音源14a側のピッチベントセンシティビティの設定に従って調整を行う。
【0043】
MIDIデータ生成部500は、生成した歌唱MIDIデータをMIDI音源14aに送信する。
【0044】
[演奏制御部]
演奏制御部600は、カラオケ装置1におけるカラオケ演奏の制御を行う。
【0045】
たとえば、利用者により楽曲X(ある楽曲)が選曲された場合、演奏制御部600は、記憶部13から楽曲Xの楽曲データを読み出し、楽曲データに含まれる伴奏データをMIDI音源14aに送信する。MIDI音源14aは、当該伴奏データに基づいて楽音信号(カラオケ演奏音の元となる信号)を生成する。ミキサ14bは、当該楽音信号およびマイク40から出力される歌唱音声信号を適当な比率でミキシングしてアンプ14cに出力する。アンプ14cは、ミキサ14bからのミキシング信号を増幅し、放音信号としてスピーカ20へ出力する。これにより、スピーカ20からは放音信号に基づく楽曲Xのカラオケ演奏音(MIDI形式のデータに基づく演奏音)およびマイク40からの歌唱音声が放音される。
【0046】
本実施形態に係る演奏制御部600は、MIDI音源14aを含む音響処理部14を制御し、ある楽曲のカラオケ演奏を行うための楽曲MIDIデータ、及び生成した歌唱MIDIデータに基づいて演奏を行わせる。
【0047】
演奏制御部600は、楽曲Xのカラオケ演奏を行うための楽曲MIDIデータと、生成した歌唱MIDIデータとをマージし、MIDI音源14aに送信する。MIDI音源14aは、マージされたMIDIデータにより楽音信号を生成する。ミキサ14bは、楽音信号を適当なレベルでアンプ14cに出力する。アンプ14cは、ミキサ14bからのミキシング信号を増幅し、放音信号としてスピーカ20へ出力する。これにより、スピーカ20からは放音信号に基づく楽曲Xのカラオケ演奏音、及び利用者Uの歌唱音声に対応する楽音が放音される。
【0048】
==カラオケ装置1の動作について==
次に、
図10を参照して本実施形態におけるカラオケ装置1の動作の具体例について述べる。
図10は、カラオケ装置1の動作例を示すフローチャートである。この例では利用者Uが楽曲Xを選曲してカラオケ歌唱を行った後、適切なピッチでカラオケ歌唱できなかった箇所を確認するとする。
【0049】
検出部100は、利用者Uが楽曲Xのカラオケ歌唱を行った際に得られた歌唱音声から、時系列の歌唱ピッチを検出する(歌唱ピッチの検出。ステップ10)
【0050】
選択部200は、MIDI音源14aが搭載する複数の音色の中から、一の音色を選択する(一の音色を選択。ステップ11)。
【0051】
算出部300は、ステップ10で検出された歌唱ピッチ、及び楽曲Xのリファレンスデータに基づいて、時系列の歌唱ピッチとリファレンスデータが示すリファレンスピッチとの差分に対応するPitchBend値を算出する(PitchBend値を算出。ステップ12)。
【0052】
ノート作成部400は、ステップ10で検出された歌唱ピッチ、楽曲Xのリファレンスデータ、及び選択部200から出力されたチャンネル情報に基づいて、複数のノートオン情報及びノートオフ情報を作成する(ノートオン・オフ情報を作成。ステップ13)。
【0053】
MIDIデータ生成部500は、ステップ12で算出されたPitchBend値と、ステップ13で作成されたノートオン情報及びノートオフ情報とを含む歌唱MIDIデータを生成する(歌唱MIDIデータを生成。ステップ14)。
【0054】
演奏制御部600は、MIDI音源14aを含む音響処理部14を制御し、楽曲Xのカラオケ演奏を行うための楽曲MIDIデータ、及びステップ14で生成した歌唱MIDIデータに基づいて演奏を行わせる(楽曲MIDIデータ及び歌唱MIDIデータに基づく演奏。ステップ15)。
【0055】
以上の通り、本実施形態に係るカラオケ装置1は、利用者がある楽曲のカラオケ歌唱を行った際に得られる歌唱音声から、時系列の歌唱ピッチを含む歌唱データを検出する検出部100と、MIDI音源14aが搭載する複数の音色の中から、一の音色(純音または純音に近い音色)を選択してMIDIチャンネルの一つに割り当て、当該チャンネル情報を出力する選択部200と、検出された歌唱ピッチ、及びある楽曲のリファレンスデータに基づいて、時系列の歌唱ピッチとリファレンスデータが示すリファレンスピッチとの差分に対応するPitchBend値を算出する算出部300と、検出された歌唱ピッチ、ある楽曲のリファレンスデータ、及び選択部200から出力されたチャンネル情報に基づいて、複数のノートオン情報及びノートオフ情報を作成するノート作成部400と、算出されたPitchBend値と、作成されたノートオン情報及びノートオフ情報とを含む歌唱MIDIデータを生成するMIDIデータ生成部500と、MIDI音源14aを含む音響処理部14を制御し、ある楽曲のカラオケ演奏を行うための楽曲MIDIデータ、及び生成した前記歌唱MIDIデータに基づいて演奏を行わせる演奏制御部600と、を有する。
【0056】
歌唱MIDIデータに基づいて演奏を行う際に、PitchBend値を利用することで、利用者がピッチのずれを音として把握することができる。また、MIDI音源14aによる演奏は一の音色(純音または純音に近い音色)で放音されるため、利用者が聞き取り易く、ピッチのずれを把握しやすい。すなわち、本実施形態に係るカラオケ装置1によれば、カラオケ歌唱を行った利用者が、適切なピッチでカラオケ歌唱できなかった箇所を聴覚的に容易に把握することができる。
【0057】
<その他>
なお、算出部300は、差分を所定倍した値をPitchBend値として算出することも可能である。このようなPitchBend値を含む歌唱MIDIデータに基づく演奏は、ピッチのずれが大きい箇所については、そのずれがよりはっきり聴き取れるように放音される。従って、演奏を聴いた利用者は、ピッチのずれをより把握し易くなる。
【0058】
また、上記実施形態の算出部300は、歌唱ピッチとリファレンスピッチとの差分を算出して歌唱MIDIデータのPitchBend値とし、ノート作成部400は、リファレンスピッチに基づいて歌唱MIDIデータのノートナンバーを取得したが、これに限られない。
【0059】
すなわち、算出部300は、検出された歌唱ピッチ及びMIDIデータにおけるノートナンバーと周波数との対応を示す対照テーブルとに基づいて、時系列の歌唱ピッチとノートナンバーの周波数との差分に対応するPitchBend値を算出することが可能である。また、ノート作成部400は、検出された歌唱ピッチ、対照テーブル、及び選択部200から出力されたチャンネル情報に基づいて、複数のノートオン情報及びノートオフ情報を作成することが可能である。
【0060】
具体的に、算出部300は、歌唱ピッチに最も周波数が近いノートナンバーの周波数と歌唱ピッチとの差分を算出して歌唱MIDIデータのPitchBend値とする。ノート作成部400は、対照テーブルを参照し、歌唱ピッチに最も周波数が近いノートナンバーを歌唱MIDIデータのノートナンバーとする。この場合、PitchBend値は必ず50cent以下となるため、MIDI音源14a側のピッチベントセンシティビティ(ベンドレンジ)の設定は±50centでよい。なお、MIDIデータにおけるノートナンバーと周波数との対応は、公知の対照テーブルにより示される。対象テーブルは、たとえば“MIDIのノートナンバーと周波数との対応表”音楽研究所ホームページ( HYPERLINK "http://www.asahi-net.or.jp/~HB9T-KTD/music/Japan/Research/DTM/freq#map.html" http://www.asahi-net.or.jp/~HB9T-KTD/music/Japan/Research/DTM/freq#map.html)などが知られている。
【0061】
また、上記実施形態の選択部200は、選択された一の音色を空きチャンネルに割り当てたが、これに限られない。たとえば、利用者が楽曲MIDIデータ及び歌唱MIDIデータに基づいて演奏を行わせる時にガイドメロディは不要である。そこで、選択部200は、ガイドメロディ用のチャンネルを一の音色に割り当てる。この際、演奏制御部600は、ガイドメロディ用MIDIデータの代わりに歌唱MIDIデータを用いてもよい。あるいは、重要度の低い音色のチャンネル(楽曲MIDIデータの全チャンネルの中で最もデータ量が少ないチャンネルなど)を一の音色に割り当ててもよい。これらの場合、空きチャンネルが無くても一の音色を割り当てることが可能となる。
【0062】
上記実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定するものではない。上記の構成は、適宜組み合わせて実施することが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。上記実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0063】
1 カラオケ装置
100 検出部
200 選択部
300 算出部
400 ノート作成部
500 MIDIデータ生成部
600 演奏制御部