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特許7165514教示データ作成システムおよび教示データ作成方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-26
(45)【発行日】2022-11-04
(54)【発明の名称】教示データ作成システムおよび教示データ作成方法
(51)【国際特許分類】
   B25J 9/22 20060101AFI20221027BHJP
   G05B 19/42 20060101ALI20221027BHJP
   H01L 21/677 20060101ALI20221027BHJP
【FI】
B25J9/22 Z
G05B19/42 D
H01L21/68 A
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018113346
(22)【出願日】2018-06-14
(65)【公開番号】P2019214107
(43)【公開日】2019-12-19
【審査請求日】2021-05-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000002233
【氏名又は名称】日本電産サンキョー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100125690
【弁理士】
【氏名又は名称】小平 晋
(74)【代理人】
【識別番号】100142619
【弁理士】
【氏名又は名称】河合 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100153316
【弁理士】
【氏名又は名称】河口 伸子
(72)【発明者】
【氏名】田中 宏治
(72)【発明者】
【氏名】矢澤 隆之
(72)【発明者】
【氏名】瀧澤 典彦
【審査官】神山 貴行
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-123157(JP,A)
【文献】特開2004-241730(JP,A)
【文献】特開2007-088110(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2017-0087548(KR,A)
【文献】特開2015-032617(JP,A)
【文献】特開平10-006262(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 1/00-21/02
G05B 19/18-19/416
G05B 19/42-19/46
H01L 21/677
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下方向に間隔をあけた状態で配置される複数枚のガラス基板を収容可能な同形状の複数のカセットに対する前記ガラス基板の搬送を行う水平多関節ロボットの教示データを作成するための教示データ作成システムであって、
前記ガラス基板が載置される複数の基板載置部を有し前記カセットと同形状に形成されるとともに前記水平多関節ロボットの教示作業で使用されるダミーカセットと、前記水平多関節ロボットの教示データを作成する教示データ作成部とを備え、
前記ダミーカセットは、前記水平多関節ロボットのハンドによって前記ダミーカセットに搬入されるとともに前記基板載置部に載置される前に前記基板載置部の上側に配置される前記ガラス基板、および、前記基板載置部から前記ハンドによって持ち上げられて前記基板載置部の上側に配置される前記ガラス基板の少なくともいずれか一方の前記ガラス基板の水平方向の位置および高さを測定するための検知機構を備え、
前記検知機構は、前記ダミーカセットの上端側と下端側との2箇所に設置され、
前記教示データ作成部には、前記ダミーカセットに対する複数の前記カセットのそれぞれの相対位置のデータである位置データが記憶され、
前記教示データ作成部は、前記検知機構の測定結果に基づいて、前記ダミーカセットに対する前記水平多関節ロボットの教示データである基準教示データを作成するとともに、前記基準教示データと前記位置データとに基づいて、複数の前記カセットのそれぞれに対する前記水平多関節ロボットの教示データを作成することを特徴とする教示データ作成システム。
【請求項2】
前記検知機構は、前記ガラス基板の水平方向の位置を測定するための第1検知機構を備え、
前記ダミーカセットに対する前記ガラス基板の搬入搬出方向を前後方向とし、上下方向と前後方向とに直交する方向を左右方向とすると、
前記第1検知機構は、前記ガラス基板の左右方向の位置を測定する第1センサと、前記ガラス基板の前後方向の位置を測定する第2センサとを備えることを特徴とする請求項1記載の教示データ作成システム。
【請求項3】
前記第1検知機構は、前後方向に間隔をあけた状態で配置される2個の前記第1センサを備えることを特徴とする請求項2記載の教示データ作成システム。
【請求項4】
前記検知機構は、前記ガラス基板の高さを測定するための第2検知機構を備え、
前記第2検知機構は、長方形状に形成される前記ガラス基板の四隅のそれぞれに対応する位置に配置される4個の第3センサを備えることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の教示データ作成システム。
【請求項5】
上下方向に間隔をあけた状態で配置される複数枚のガラス基板を収容可能な同形状の複数のカセットに対する前記ガラス基板の搬送を行う水平多関節ロボットの教示データを作成するための教示データ作成方法であって、
前記ガラス基板が載置される複数の基板載置部を有し前記カセットと同形状に形成されるダミーカセットであって、前記水平多関節ロボットのハンドによって前記ダミーカセットに搬入されるとともに前記基板載置部に載置される前に前記基板載置部の上側に配置される前記ガラス基板、および、前記基板載置部から前記ハンドによって持ち上げられて前記基板載置部の上側に配置される前記ガラス基板の少なくともいずれか一方の前記ガラス基板の水平方向の位置および高さを測定するための検知機構を備えるダミーカセットを使用し、
前記検知機構は、前記ダミーカセットの上端側と下端側との2箇所に設置され、
前記検知機構の測定結果に基づいて、前記ダミーカセットに対する前記水平多関節ロボットの教示データである基準教示データを作成するとともに、前記ダミーカセットに対する複数の前記カセットのそれぞれの相対位置のデータである位置データと前記基準教示データとに基づいて、複数の前記カセットのそれぞれに対する前記水平多関節ロボットの教示データを作成することを特徴とする教示データ作成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水平多関節ロボットの教示データを作成するための教示データ作成システムおよび教示データ作成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数枚のガラス基板を収容可能なカセットに対してガラス基板を搬送するロボットと、ロボットを制御するロボットコントローラと、ロボットコントローラに接続される情報処理端末および教示操作端末とを備えるロボット教示システムが知られている(たとえば、特許文献1参照)。特許文献1に記載のロボット教示システムでは、ロボットは、たとえば、2段重ねで2列に配置されている同形状の4個のカセットに対してガラス基板を搬送する。4個のカセットのうちの1個のカセットを基準カセットとし、残りの3個のカセットを展開カセットとすると、このロボット教示システムでは、基準カセットを用いてロボットの教示作業が行われる。
【0003】
特許文献1に記載のロボット教示システムでは、基準カセットに対するロボットの教示作業を行う際に、オペレータは、教示操作端末によって基準カセットに対する所定の位置までロボットを順次動作させて、各教示位置を特定し、各教示位置のデータを取得する。具体的には、このロボット教示システムでは、ガラス基板が搭載されたロボットのハンドが基準カセットの中に移動する前の収容前準備位置と、ハンドが基準カセットの中に入り込んで基準カセットの内部の縦はりにガラス基板を載置する体勢に入る収容準備位置と、ハンドが下降して縦はりにガラス基板を載置し終わる収容下降位置と、ハンドが基準カセットの外に引き戻された引戻位置とに、オペレータが教示操作端末によってロボットを順次動作させて、各教示位置を特定し、各教示位置のデータを取得する。このときには、オペレータが目視でロボットを確認しながら所定の位置までロボットを順次動作させる。
【0004】
特許文献1に記載のロボット教示システムでは、取得された各教示位置のデータから基準カセットに対するロボットの教示データである基準教示データが作成される。また、このロボット教示システムでは、基準カセットに対する3個の展開カセットのそれぞれの相対位置のデータと基準教示データとに基づいて、3個の展開カセットのそれぞれに対するロボットの教示データである展開教示データが自動で作成される。すなわち、このロボット教示システムでは、展開カセットを用いてロボットの教示作業を行わなくても、3個の展開カセットのそれぞれに対する展開教示データが自動で作成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2006-123157号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載のロボット教示システムでは、たとえば、ハンドがカセットの中に入り込む際に、ハンドに搭載されたガラス基板とカセット内部の縦はり等の構造物との干渉を防止するため、最適な収容準備位置を教示位置とした基準教示データを作成することが好ましい。
【0007】
一方で、特許文献1に記載のロボット教示システムでは、オペレータが目視でロボットを確認しながら収容準備位置までロボットを動作させているため、最適な収容準備位置を教示位置とした基準教示データを作成するためには、目視でロボットを確認しながらロボットの位置を微調整して、最適な収容準備位置までロボットを動作させなければならない。したがって、このロボット教示システムの場合、ハンドに搭載されたガラス基板がカセット内で移動するときにハンド上のガラス基板とカセット内部の構造物との干渉を防止するためには、ロボットの教示作業が煩雑になるおそれがある。
【0008】
そこで、本発明の課題は、カセットに対するガラス基板の搬送を行う水平多関節ロボットの教示作業を簡素化しても、水平多関節ロボットのハンドに搭載されたガラス基板がカセット内で移動するときにハンド上のガラス基板とカセット内部の構造物との干渉を防止することが可能となる教示データ作成システムおよび教示データ作成方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するため、本発明の教示データ作成システムは、上下方向に間隔をあけた状態で配置される複数枚のガラス基板を収容可能な同形状の複数のカセットに対するガラス基板の搬送を行う水平多関節ロボットの教示データを作成するための教示データ作成システムであって、ガラス基板が載置される複数の基板載置部を有しカセットと同形状に形成されるとともに水平多関節ロボットの教示作業で使用されるダミーカセットと、水平多関節ロボットの教示データを作成する教示データ作成部とを備え、ダミーカセットは、水平多関節ロボットのハンドによってダミーカセットに搬入されるとともに基板載置部に載置される前に基板載置部の上側に配置されるガラス基板、および、基板載置部からハンドによって持ち上げられて基板載置部の上側に配置されるガラス基板の少なくともいずれか一方のガラス基板の水平方向の位置および高さを測定するための検知機構を備え、検知機構は、ダミーカセットの上端側と下端側との2箇所に設置され、教示データ作成部には、ダミーカセットに対する複数のカセットのそれぞれの相対位置のデータである位置データが記憶され、教示データ作成部は、検知機構の測定結果に基づいて、ダミーカセットに対する水平多関節ロボットの教示データである基準教示データを作成するとともに、基準教示データと位置データとに基づいて、複数のカセットのそれぞれに対する水平多関節ロボットの教示データを作成することを特徴とする。
【0010】
また、上記の課題を解決するため、本発明の教示データ作成方法は、上下方向に間隔をあけた状態で配置される複数枚のガラス基板を収容可能な同形状の複数のカセットに対するガラス基板の搬送を行う水平多関節ロボットの教示データを作成するための教示データ作成方法であって、ガラス基板が載置される複数の基板載置部を有しカセットと同形状に形成されるダミーカセットであって、水平多関節ロボットのハンドによってダミーカセットに搬入されるとともに基板載置部に載置される前に基板載置部の上側に配置されるガラス基板、および、基板載置部からハンドによって持ち上げられて基板載置部の上側に配置されるガラス基板の少なくともいずれか一方のガラス基板の水平方向の位置および高さを測定するための検知機構を備えるダミーカセットを使用し、検知機構は、ダミーカセットの上端側と下端側との2箇所に設置され、検知機構の測定結果に基づいて、ダミーカセットに対する水平多関節ロボットの教示データである基準教示データを作成するとともに、ダミーカセットに対する複数のカセットのそれぞれの相対位置のデータである位置データと基準教示データとに基づいて、複数のカセットのそれぞれに対する水平多関節ロボットの教示データを作成することを特徴とする。
【0011】
本発明では、カセットと同形状に形成されるとともに水平多関節ロボットの教示作業で使用されるダミーカセットは、水平多関節ロボットのハンドによってダミーカセットに搬入されるとともに基板載置部に載置される前に基板載置部の上側に配置されるガラス基板、および、基板載置部からハンドによって持ち上げられて基板載置部の上側に配置されるガラス基板の少なくともいずれか一方のガラス基板の水平方向の位置および高さを測定するための検知機構を備えている。また、本発明では、検知機構の測定結果に基づいて、ダミーカセットに対する水平多関節ロボットの教示データである基準教示データを作成している。
【0012】
そのため、本発明では、ダミーカセットに対して水平多関節ロボットの教示作業を行う際にロボットの位置を微調整しなくても、検知機構の検知結果に基づいて、ガラス基板が搭載されたハンドが基板載置部の上側に配置される位置の中の最適な位置を教示位置とする基準教示データを作成することが可能になる。すなわち、本発明では、水平多関節ロボットの教示作業を行う際にロボットの位置を微調整しなくても、水平多関節ロボットのハンドに搭載されたガラス基板がカセット内で移動するときにハンド上のガラス基板とカセット内部の構造物とが干渉しない最適な位置を教示位置とする基準教示データを作成することが可能になる。
【0013】
また、本発明では、ダミーカセットに対する複数のカセットのそれぞれの相対位置のデータである位置データと基準教示データとに基づいて、複数のカセットのそれぞれに対する水平多関節ロボットの教示データを作成しているため、水平多関節ロボットの教示作業を行う際にロボットの位置を微調整しなくても、ハンドに搭載されたガラス基板がカセット内で移動するときにハンド上のガラス基板とカセット内部の構造物とが干渉しない最適な位置を教示位置とする基準教示データに基づいて、教示データを作成することが可能になる。したがって、本発明では、水平多関節ロボットの教示作業を簡素化しても、水平多関節ロボットのハンドに搭載されたガラス基板がカセット内で移動するときにハンド上のガラス基板とカセット内部の構造物との干渉を防止することが可能になる。
【0014】
また、本発明では、検知機構は、ダミーカセットの上端側と下端側との2箇所に設置されているため、ダミーカセットの上端側と下端側との2箇所で、ダミーカセットに対する水平多関節ロボットの教示作業が行われる。なお、本発明では、ダミーカセットに対する複数のカセットのそれぞれの相対位置のデータである位置データと基準教示データとに基づいて、複数のカセットのそれぞれに対する水平多関節ロボットの教示データを作成しているため、複数のカセットのそれぞれに対する水平多関節ロボットの教示作業を行わなくても、複数のカセットのそれぞれに対する水平多関節ロボットの教示データが作成される。したがって、本発明では、水平多関節ロボットの教示作業をより簡素化することが可能になる。
【0015】
本発明において、たとえば、検知機構は、ガラス基板の水平方向の位置を測定するための第1検知機構を備え、ダミーカセットに対するガラス基板の搬入搬出方向を前後方向とし、上下方向と前後方向とに直交する方向を左右方向とすると、第1検知機構は、ガラス基板の左右方向の位置を測定する第1センサと、ガラス基板の前後方向の位置を測定する第2センサとを備えている。
【0016】
この場合には、第1検知機構は、前後方向に間隔をあけた状態で配置される2個の第1センサを備えることが好ましい。このように構成すると、2個の第1センサを用いて前後方向に対するガラス基板の傾きを測定することが可能になる。したがって、検知機構の検知結果に基づいて、ハンドに搭載されたガラス基板がカセット内で移動するときにハンド上のガラス基板とカセット内部の構造物とが干渉しないより最適な位置を教示位置とする基準教示データを作成することが可能になる。
【0017】
本発明において、検知機構は、ガラス基板の高さを測定するための第2検知機構を備え、第2検知機構は、長方形状に形成されるガラス基板の四隅のそれぞれに対応する位置に配置される4個の第3センサを備えることが好ましい。このように構成すると、たとえば、ガラス基板が大型化して、ハンドに搭載されるガラス基板に撓みやねじれが生じたり、ハンドに撓みが生じたりして、その結果、ハンド上のガラス基板の一端側の高さとガラス基板の他端側の高さとに差異が生じても、4個の第3センサによって、ガラス基板の高さを精度良く測定することが可能になる。したがって、検知機構の検知結果に基づいて、ハンドに搭載されたガラス基板がカセット内で移動するときにハンド上のガラス基板とカセット内部の構造物とが干渉しないより最適な位置を教示位置とする基準教示データを作成することが可能になる。
【発明の効果】
【0019】
以上のように、本発明では、カセットに対するガラス基板の搬送を行う水平多関節ロボットの教示作業を簡素化しても、水平多関節ロボットのハンドに搭載されたガラス基板がカセット内で移動するときにハンド上のガラス基板とカセット内部の構造物との干渉を防止することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の実施の形態にかかる教示データ作成システムを含むロボットシステムの構成を説明するためのブロック図である。
図2図1に示す水平多関節ロボット、カセットおよびダミーカセットを示す平面図である。
図3図2に示すダミーカセットの平面図である。
図4図3に示すダミーカセットの正面図である。
図5】(A)は、図3に示す第1センサの構成および配置を説明するための図であり、(B)は、図3に示す第2センサの構成および配置を説明するための図である。
図6図3に示す第3センサの構成を説明するための図である。
図7図3に示す検知機構によって水平方向の位置および高さが測定されるときのガラス基板の状態を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態を説明する。
【0022】
(ロボットシステムの構成)
図1は、本発明の実施の形態にかかる教示データ作成システム23を含むロボットシステム1の構成を説明するためのブロック図である。図2は、図1に示す水平多関節ロボット3、カセット6およびダミーカセット7を示す平面図である。
【0023】
本形態のロボットシステム1は、液晶ディスプレイのガラス基板2(以下、「基板2」とする。)を搬送する水平多関節ロボット3(以下、「ロボット3」とする。)と、ロボット3を制御するロボット制御部4と、ロボット制御部4に電気的に接続される教示操作端末(ティーチングペンダント)5と、上下方向に間隔をあけた状態で配置される複数枚の基板2を収容可能な同形状の複数のカセット6と、ロボット3の教示作業で使用されるダミーカセット7とを備えている。
【0024】
基板2は、長方形状に形成されている。本形態の基板2は、比較的大型の基板であり、たとえば、基板2の横幅は、2900(mm)程度となっており、基板2の縦幅は、3300(mm)程度となっている。また、たとえば、基板2の厚さは、0.4(mm)~0.7(mm)程度となっている。
【0025】
ロボット3は、複数のカセット6に対する基板2の搬送を行う。図2に示すように、ロボット3は、基板2が搭載される2個のハンド11と、2個のハンド11のそれぞれが先端側に連結される2本のアーム12と、2本のアーム12を支持する本体部13と、本体部13を水平方向に移動可能に支持するベース部材14とを備えている。以下の説明では、ベース部材14に対する本体部13の移動方向(図2等のX方向)を左右方向とし、上下方向と左右方向とに直交する図2等のY方向を前後方向とする。
【0026】
本体部13は、アーム12の基端側を支持するとともに昇降可能なアームサポート15と、アームサポート15を昇降可能に支持する支持フレーム16と、本体部13の下端部分を構成するとともにベース部材14に対して水平移動可能な基台17と、支持フレーム16の下端が固定されるとともに基台17に対して回動可能な旋回フレーム18とを備えている。
【0027】
アーム12は、第1アーム部と第2アーム部との2個のアーム部によって構成されている。アーム12の基端側は、本体部13に回動可能に連結されている。アーム12の先端側には、ハンド11が回動可能に連結されている。アーム12は、ハンド11が一定方向を向いた状態で略直線的に移動するように水平方向へ伸縮可能となっている。具体的には、アーム12は、ハンド11が一定方向を向いた状態で、かつ、ハンド11とアーム12との連結部分が略直線的に移動するように水平方向へ伸縮可能となっている。
【0028】
支持フレーム16は、アームサポート15を昇降可能に保持する柱状の第1支持フレーム20と、第1支持フレーム20を昇降可能に保持する柱状の第2支持フレーム21とを備えている。旋回フレーム18の先端側には、第2支持フレーム21の下端部が固定されている。旋回フレーム18の基端側は、上下方向を回動の軸方向とする回動が可能となるように基台17に支持されている。ロボット3は、アーム12の伸縮動作と、アーム12等の昇降動作、回動動作および水平移動動作との組合せによって基板2を搬送する。
【0029】
ロボット制御部4は、たとえば、ロボットコントローラと、パーソナルコンピュータ等の情報処理装置とから構成されている。ロボットコントローラは、ロボット1の各種のモータを制御するサーボ制御部を備えている。また、ロボット制御部4は、CPU等の演算手段と、ROMおよびRAM等の記憶手段と、データの入出力が行われる入出力手段とを備えている。ロボット制御部4は、後述のように、ロボット3の教示データを作成する。本形態のロボット制御部4は、ロボット3の教示データを作成する教示データ作成部である。また、本形態では、ロボット制御部4およびダミーカセット7等によってロボット3の教示データを作成するための教示データ作成システム23が構成されている。
【0030】
カセット6は、前後方向の一端側が開口する直方体の箱状に形成されている。複数のカセット6は、左右方向で隣り合うように配置されている。また、複数のカセット6は、前後方向においてロボット3の一方側に配置されている。カセット6の開口部は、ロボット3側を向いている。基板2は、上述のように長方形状に形成されている。カセット6に収容される基板2の長辺方向は前後方向と一致し、カセット6に収容される基板2の短辺方向は左右方向と一致している。
【0031】
カセット6に基板2を搬入するとき、および、カセット6に収容される基板2を搬出するときには、ハンド11が前後方向に直線的に移動して、カセット6の中に入り込む。以下の説明では、前後方向のうちのロボット3が配置されている側(図2等のY1方向側)を「前」側とし、カセット6が配置されている側(図2等のY2方向側)を「後ろ」側とする。
【0032】
上述のように、カセット6には、上下方向に間隔をあけた状態で配置される複数枚の基板2が収容可能となっている。カセット6は、基板2が載置される複数の基板載置部24を備えている。複数の基板載置部24は、上下方向に一定のピッチで配列されている。基板載置部24は、基板2の左右の両端部を下側から支持する複数の支持部材25と、左右方向における所定の位置で基板2を下側から支持する複数の支持部材26とを備えている。
【0033】
支持部材25は、左右方向を長手方向とする棒状に形成されている。支持部材25は、カセット6の枠体の左右の両端部から左右方向の内側に向かって伸びている。また、複数の支持部材25は、前後方向に一定の間隔をあけた状態で配列されている。支持部材26は、前後方向を長手方向とする棒状に形成されている。支持部材26は、カセット6の枠体の後端部から前側に向かって伸びている。また、複数の支持部材25は、左右方向に一定の間隔をあけた状態で配列されている。なお、カセット6は、後述の検知機構28を備えていない。
【0034】
ダミーカセット7は、カセット6と同形状に形成されている。以下、ダミーカセット7の構成を説明する。なお、上述のように、ダミーカセット7は、ロボット3の教示作業で使用される。ロボット3の教示作業が行われるときには、複数のカセット6のうちの1個のカセット6がダミーカセット7に置き換えられる。ダミーカセット7は、置き換えられる1個のカセット6が設置されていた位置と同じ位置に設置される。図2には、ロボット3の教示作業が行われるときの状態が図示されている。
【0035】
(ダミーカセットの構成)
図3は、図2に示すダミーカセット7の平面図である。図4は、図3に示すダミーカセット7の正面図である。図5(A)は、図3に示すセンサ31の構成および配置を説明するための図であり、図5(B)は、図3に示すセンサ32の構成および配置を説明するための図である。図6は、図3に示すセンサ33の構成を説明するための図である。図7は、図3に示す検知機構28によって水平方向の位置および高さが測定されるときの基板2の状態を説明するための図である。
【0036】
ダミーカセット7は、上述のように、カセット6と同形状に形成されており、上下方向に間隔をあけた状態で配置される複数枚の基板2が収容可能となっている。また、ダミーカセット7は、基板2が載置される複数の基板載置部24を備えている。基板載置部24は、支持部材25、26を備えている。また、上述のように、ロボット3の教示作業が行われるときに、ダミーカセット7は、置き換えられる1個のカセット6が設置されていた位置と同じ位置に設置される。
【0037】
ロボット3の教示作業が行われるときには、ハンド11がダミーカセット7の中に入り込んで、ダミーカセット7への基板2の搬入動作およびダミーカセット7からの基板2の搬出動作の少なくともいずれか一方の動作を行う。基板2の搬入動作および搬出動作が行われるときには、ハンド11は前後方向に直線的に移動する。すなわち、前後方向(Y方向)は、ダミーカセット7に対する基板2の搬入搬出方向である。
【0038】
ダミーカセット7は、ハンド11によってダミーカセット7に搬入されるとともに基板載置部24に載置される前に基板載置部24の上側に配置される基板2、および、基板載置部24からハンド11によって持ち上げられて基板載置部24の上側に配置される基板2の少なくともいずれか一方の基板2(図7参照)の水平方向の位置および高さを測定するための検知機構28を備えている。検知機構28は、基板2の水平方向の位置を測定するための第1検知機構29と、基板2の高さを測定するための第2検知機構30とから構成されている。
【0039】
また、検知機構28は、ダミーカセット7の上端側と下端側との2箇所に設置されている。すなわち、ダミーカセット7は、2個の検知機構28を備えている。ダミーカセット7の上端側に配置される検知機構28は、最上段の基板載置部24の上側に配置される基板2の水平方向の位置および高さを測定する。ダミーカセット7の下端側に配置される検知機構28は、最下段の基板載置部24の上側に配置される基板2の水平方向の位置および高さを測定する。
【0040】
第1検知機構29は、基板2の左右方向の位置を測定するセンサ31と、基板2の前後方向の位置を測定するセンサ32とを備えている。センサ31、32は、発光素子と受光素子とを有する透過型の光学式センサである。センサ31、32の発光素子と受光素子とは、所定の間隔をあけた状態で上下方向で対向配置されている。また、センサ31、32は、直線状に配列される複数の受光素子を備えるラインセンサである。本形態の第1検知機構29は、2個のセンサ31と1個のセンサ32とを備えている。センサ31、32は、ロボット制御部4に電気的に接続されている。本形態のセンサ31は第1センサであり、センサ32は第2センサである。
【0041】
2個のセンサ31は、ダミーカセット7の左右方向の一端部に配置されている。また、2個のセンサ31は、前後方向に間隔をあけた状態で配置されている。具体的には、2個のセンサ31は、ダミーカセット7の前後方向の両端部に配置されている。ラインセンサであるセンサ31は、図5(A)に示すように、センサ31の長手方向(受光素子の配列方向)と左右方向とが一致するように配置されている。センサ31は、基板2の左右方向の一端面の位置を受光素子によって検知することで基板2の左右方向の位置を測定する。
【0042】
センサ32は、ダミーカセット7の後端部に配置されている。また、センサ32は、左右方向におけるダミーカセット7の略中心位置に配置されている。ラインセンサであるセンサ32は、図5(B)に示すように、センサ32の長手方向と前後方向とが一致するように配置されている。センサ32は、基板2の後端面の位置を受光素子によって検知することで基板2の前後方向の位置を測定する。
【0043】
第2検知機構30は、4個のセンサ33を備えている。4個のセンサ33は、ロボット制御部4に電気的に接続されている。4個のセンサ33のそれぞれは、長方形状に形成される基板2の四隅のそれぞれに対応する位置に配置されている。すなわち、4個のセンサ33のそれぞれは、ダミーカセット7の四隅のそれぞれに配置されている。本形態のセンサ33は、第3センサである。
【0044】
センサ33は、発光素子と受光素子とを有する反射型の光学式センサである。また、センサ33は、いわゆる距離センサ(変位センサ)である。センサ33の発光素子は、基板2の下面または上面に向かって光を射出する。たとえば、センサ33の発光素子は、レーザ光を射出する。センサ33は、たとえば、基板2の下面または上面で反射された光がセンサ33の受光素子に入射する位置によって基板2の高さを測定する。
【0045】
(ロボットの教示作業および教示データの作成方法)
ロボット3の教示作業を行ってロボット3の教示データを作成するときには、ダミーカセット7を使用する。すなわち、ロボット3の教示作業を行ってロボット3の教示データを作成するときには、上述のように、1個のカセット6をダミーカセット7に置き換える。ダミーカセット7は、置き換えられる1個のカセット6が設置されていた位置と同じ位置に設置される。
【0046】
ロボット3の教示作業が行われるときには、ロボット3のオペレータは、目視でロボット3を確認しながら、教示操作端末5によってロボット3を操作する。また、ロボット3の教示作業が行われるときには、オペレータは、ダミーカセット7に対する所定の教示位置を特定するために、ダミーカセット7に対して所定の位置までロボット3を順次動作させる。本形態では、ダミーカセット7の上端側と下端側の2箇所でロボット3の教示作業が行われる。
【0047】
また、本形態では、ハンド11によってダミーカセット7に搬入されるとともに基板載置部24に載置される前の基板2が基板載置部24の上側に配置されている位置、および、基板載置部24からハンド11によって持ち上げられた基板2が基板載置部24の上側に配置されている位置(図7参照)の少なくともいずれか一方(すなわち、ハンド11に搭載された基板2が基板載置部24の上側に配置されている位置)も、ロボット3の教示位置となっている。
【0048】
具体的には、ハンド11に搭載された基板2が最上段の基板載置部24の上側に配置されている位置、および、ハンド11に搭載された基板2が最下段の基板載置部24の上側に配置されている位置も、ロボット3の教示位置となっている。この教示位置を特定するため、オペレータは、目視でロボット3を確認しながら教示操作端末5によってこの位置までロボット3を動作させる。この位置までロボット3が動作して、ハンド11に搭載された基板2が基板載置部24の上側に配置されると、検知機構28によって、基板2の水平方向の位置および高さが測定される。
【0049】
検知機構28の測定結果は、ロボット制御部4に入力される。ロボット制御部4は、検知機構28の測定結果に基づいて、教示位置を特定する。また、ロボット制御部4には、オペレータが目視で基板2およびロボット3の位置を確認して特定したその他の教示位置のデータが入力される。ロボット制御部4は、検知機構28の測定結果に基づいて特定された教示位置と、ロボット制御部4に入力されたその他の教示位置のデータとに基づいて、ダミーカセット7に対するロボット3の教示データである基準教示データを作成する。すなわち、ロボット制御部4は、検知機構28の測定結果に基づいて基準教示データを作成する。
【0050】
本形態では、ロボット制御部4に、ダミーカセット7に対する複数のカセット6のそれぞれの相対位置のデータである位置データが記憶されている。すなわち、ロボット制御部4には、ロボット3の教示作業時に置き換えられる1個のカセット6に対する残りの複数のカセット6のそれぞれの相対位置のデータである位置データが記憶されている。ロボット制御部4は、基準教示データを作成した後、基準教示データと位置データとに基づいて、複数のカセット6のそれぞれに対するロボット3の教示データを作成する。
【0051】
すなわち、本形態では、複数のカセット6のそれぞれに対するロボット3の教示データは自動で作成されており、カセット6を用いたロボット3の教示作業は行われない。なお、基準教示データは、そのまま、ロボット3の教示作業時に置き換えられる1個のカセット6に対するロボット3の教示データとなる。
【0052】
(本形態の主な効果)
以上説明したように、本形態では、ダミーカセット7は、ハンド11に搭載されて基板載置部24の上側に配置される基板2の水平方向の位置および高さを測定するための検知機構28を備えている。また、本形態では、ロボット制御部4は、検知機構28の測定結果に基づいて、ダミーカセット7に対するロボット3の教示データである基準教示データを作成している。
【0053】
そのため、本形態では、ダミーカセット7に対してロボット3の教示作業を行う際にオペレータがロボット3の位置を微調整しなくても、検知機構28の検知結果に基づいて、基板2が搭載されたハンド11が基板載置部24の上側に配置される位置の中の最適な位置を教示位置とする基準教示データを作成することが可能になる。すなわち、本形態では、ロボット3の教示作業を行う際にロボット3の位置を微調整しなくても、ハンド11に搭載された基板2がカセット6の中で移動するときにハンド11上の基板2とカセット6の内部の構造物とが干渉しない最適な位置を教示位置とする基準教示データを作成することが可能になる。
【0054】
また、本形態では、ダミーカセット7に対する複数のカセット6のそれぞれの相対位置のデータである位置データと基準教示データとに基づいて、複数のカセット6のそれぞれに対するロボット3の教示データを作成している。そのため、本形態では、ロボット3の教示作業を行う際にロボット3の位置を微調整しなくても、ハンド11に搭載された基板2がカセット6の中で移動するときにハンド11上の基板2とカセット6の内部の構造物とが干渉しない最適な位置を教示位置とする基準教示データに基づいて、教示データを作成することが可能になる。したがって、本形態では、ロボット3の教示作業を簡素化しても、ハンド11に搭載された基板2がカセット6の中で移動するときにハンド11上の基板2とカセット6の内部の構造物との干渉を防止することが可能になる。
【0055】
本形態では、第1検知機構29は、前後方向に間隔をあけた状態で配置される2個のセンサ31を備えている。そのため、本形態では、2個のセンサ31を用いて前後方向に対する基板2の傾きを測定することが可能になる。したがって、本形態では、検知機構28の検知結果に基づいて、ハンド11に搭載された基板2がカセット6の中で移動するときにハンド11上の基板2とカセット6の内部の構造物とが干渉しないより最適な位置を教示位置とする基準教示データを作成することが可能になる。
【0056】
本形態では、4個のセンサ33のそれぞれは、長方形状に形成される基板2の四隅のそれぞれに対応する位置に配置されている。そのため、本形態では、基板2が大型化して、ハンド11に搭載される基板2に撓みやねじれが生じたり、ハンド11に撓みが生じたりして、その結果、ハンド11上の基板2の前端側の高さと後端側の高さとに差異が生じたり、ハンド11上の基板2の左右の一端側の高さと他端側の高さとに差異が生じたりしても、4個のセンサ33によって、基板2の高さを精度良く測定することが可能になる。したがって、本形態では、検知機構28の検知結果に基づいて、ハンド11に搭載された基板2がカセット6の中で移動するときにハンド11上の基板2とカセット6の内部の構造物とが干渉しないより最適な位置を教示位置とする基準教示データを作成することが可能になる。
【0057】
(他の実施の形態)
上述した形態は、本発明の好適な形態の一例ではあるが、これに限定されるものではなく本発明の要旨を変更しない範囲において種々変形実施が可能である。
【0058】
上述した形態において、第1検知機構29が備えるセンサ31の数は1個であっても良い。この場合には、たとえば、1個のセンサ31は、前後方向におけるダミーカセット7の略中心位置に配置されている。また、第1検知機構29が備えるセンサ31の数が1個である場合には、第1検知機構29は、左右方向に間隔をあけた状態で配置される2個のセンサ32を備えていても良い。この場合には、2個のセンサ32を用いて左右方向に対する基板2の傾きを測定することが可能になる。すなわち、この場合でも、2個のセンサ32を用いて前後方向に対する基板2の傾きを測定することが可能になる。
【0059】
上述した形態において、第2検知機構30が備えるセンサ33の数は3個以下であっても良い。また、上述した形態において、検知機構28は、ダミーカセット7の上端側のみに設置されていても良いし、ダミーカセット7の下端側のみに設置されていても良い。また、検知機構28は、ダミーカセット7の上端側および下端側以外の1箇所または複数箇所に設置されていても良い。
【0060】
上述した形態において、ロボット3の教示作業を行うときに、ダミーカセット7は、置き換えられる1個のカセット6が設置されていた位置と異なる位置に設置されても良い。また、上述した形態において、2個以上のカセット6が上下方向で重なるように配置されていても良い。また、上述した形態において、ロボット3は、液晶ディスプレイ以外の用途で使用されるガラス基板2を搬送するロボットであっても良い。
【符号の説明】
【0061】
2 基板(ガラス基板)
3 ロボット(水平多関節ロボット)
4 ロボット制御部(教示データ作成部)
6 カセット
7 ダミーカセット
11 ハンド
23 教示データ作成システム
24 基板載置部
28 検知機構
29 第1検知機構
30 第2検知機構
31 センサ(第1センサ)
32 センサ(第2センサ)
33 センサ(第3センサ)
X 左右方向
Y 前後方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7