(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-26
(45)【発行日】2022-11-04
(54)【発明の名称】搬送車及びこの搬送車を制御する制御方法及び制御プログラム
(51)【国際特許分類】
G05D 1/02 20200101AFI20221027BHJP
【FI】
G05D1/02 L
(21)【出願番号】P 2018114833
(22)【出願日】2018-06-15
【審査請求日】2021-05-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000143639
【氏名又は名称】株式会社今仙電機製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100129676
【氏名又は名称】▲高▼荒 新一
(74)【代理人】
【識別番号】100158067
【氏名又は名称】江口 基
(72)【発明者】
【氏名】小森 勇司
【審査官】藤崎 詔夫
(56)【参考文献】
【文献】特開昭63-286912(JP,A)
【文献】特開2005-324297(JP,A)
【文献】特開平10-222792(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0339959(US,A1)
【文献】特開2007-318460(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0118890(US,A1)
【文献】特開2004-037274(JP,A)
【文献】特開2018-088092(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05D 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動走行が可能な搬送車であって、
走行面に所定のパターンを投射する投射手段と、
前記投射手段が投射した前記パターンを含む前記走行面を撮影して撮影情報を取得する撮影手段と、
前記パターンと前記撮影手段に含まれるパターンとを比較し、比較結果に基づいて障害物の有無及び大きさを判定する判定手段と、
を備え搬送車
の制御方法において、
走行面に所定のパターンを投射する投射手段と、前記投射手段が投射した前記パターンを含む前記走行面を撮影して撮影情報を取得する撮影手段と、前記パターンと前記撮影手段に含まれるパターンとを比較し、比較結果に基づいて障害物の有無及び大きさを判定する判定手段と、を備え、自動走行が可能な搬送車を制御する制御方法であって、
前記パターンと前記撮影情報に含まれるパターンとを比較し、比較結果に基づいて障害物の有無及び横幅を判定する判定ステップを備え、
前記判定ステップにおいて、パターンが予め定められた基準値以上に変化していると判定した場合には、パターンの変化が認められる箇所が正面中心付近となる位置に搬送車を移動させ、パターンが照射された走行面を撮影手段で撮影し、走行面に投射されたパターンを含む第二撮影情報を取得するステップ、
を含むことを特徴とする、
搬送車の制御方法。
【請求項2】
請求項1に記載の搬送車の制御方法を1又は2以上のコンピュータで実行するためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、搬送車及びこの搬送車を制御する制御方法及び制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、予め定められた走路を自動走行する自動走行車両が知られている。例えば、特許文献1では、規定走路を自動走行可能に構成された自動走行車両であって、前記規定走路上の起点から現在地点までの走行距離を計測する走行距離計測部と、前記規定走路を走行する自動走行車両の操舵に関する操舵情報を取得する操舵情報取得部と、事前に前記規定走路を走行した自動走行車両の走行距離と操舵情報とを関連付けた操舵関連データを記憶する記憶部と、前記操舵情報取得部によって取得された現在走行中の自動走行車両の操舵情報を前記走行距離計測部によって計測された現在走行中の自動走行車両の走行距離を前記操舵関連データの走行距離に補正する走行距離補正部とを備えた自動走行車両が記載されている。この自動走行車両は、高精度に走行距離を特定することができるため、正確な位置情報に基づいて自動走行車両を操舵することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の自動走行車両では、自動走行の走路上に予期しない障害物が存在した場合には、障害物と衝突してしまったり、自動走行が停止してしまったりするという課題がある。
【0005】
本発明は、このような課題に鑑みなされたものであり、走路上に予期しない障害物が存在する場合であっても、障害物を検知することで、障害物との衝突を未然に防止することができる搬送車を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述の目的の少なくとも一つを達成するために以下の手段を採った。
【0007】
本発明の搬送車は、
自動走行が可能な搬送車であって、
走行面に所定のパターンを投射する投射手段と、
前記投射手段が投射した前記パターンを含む前記走行面を撮影して撮影情報を取得する撮影手段と、
前記パターンと前記撮影手段に含まれるパターンとを比較し、比較結果に基づいて障害物の有無及び大きさを判定する判定手段と、
を備えたことを特徴とする、
ものである。
【0008】
この搬送車は、前方の走行面に所定のパターンを投射する投射手段と、投射手段で走行面に投射されたパターンを含む前方の走行面を撮影して撮影情報を取得する撮影手段と、パターンと撮影情報に含まれるパターンとを比較し、比較結果に基づいて障害物の有無及び大きさを判定する判定手段と、を有している。パターンが投射された走行面に障害物が存在する場合には、走行面に投射されたパターンが障害物の大きさに基づいて変化することになるため、このパターンの変化に基づいて、障害物の有無及び大きさを判定することができる。
【0009】
本発明の搬送車において、前記判定手段は、前記パターンと前記撮影情報に含まれるパターンとを比較し、比較結果に基づいて前記障害物の横幅及び高さを判定するものであり、前記判定手段が前記障害物の横幅及び高さが予め定められた通行範囲内であると判定した場合には、前記障害物の上部を自動走行することを特徴としてもよい。こうすることにより、障害物の横幅及び高さが搬送車の自動走行に影響の無い大きさ及び高さである場合に、障害物の上を通過して自動走行することができる。
【0010】
本発明の搬送車において、前記判定手段は、前記パターンと前記撮影情報に含まれるパターンとを比較し、比較結果に基づいて前記障害物の横幅及び高さを判定するものであり、前記判定手段が前記障害物の高さが予め定められた通行範囲内でないと判定し、かつ、前記判定手段が前記障害物の横幅が予め定められた通行範囲内であると判定した場合には、前記障害物の横側を自動走行することを特徴としてもよい。このような場合には、横幅が小さく、かつ、高い障害物が前方に存在することになるため、障害物の上を通過すると、搬送車の前面又は底面に障害物が衝突し、搬送車が破損する可能性がある。一方で、障害物の横幅が短いため、障害物の横側を自動走行することで、走行経路を大きく変更することなく、自動走行を続けることができる。
【0011】
本発明の搬送車において、前記判定手段は、前記障害物の高さが予め記憶された最低地上高の高さより低い場合に、前記通行範囲内であると判定し、前記障害物の高さが前記最低地上高の高さ以上の場合に、前記通行範囲内でないと判定することを特徴としてもよい。このように、障害物の高さが最低地上高の高さより低い場合を通行範囲内とすることで、障害物の上部を通過する際、搬送車と障害物とが接触する可能性がない。なお、ここで「最低地上高」とは、搬送車の接地部分を除く場所であって、搬送車と走行面との距離が最も近い位置と地面との距離をいう。
【0012】
本発明の搬送車において、前記判定手段は、前記障害物の横幅が予め記憶された基準幅よりも短い場合に、前記通行範囲内であると判定し、前記障害物の横幅が前記基準幅以上の場合に、前記通行範囲内でないと判定することを特徴としてもよい。このように、障害物の横幅が基準幅よりも短い場合に通行可能範囲内とすることで、障害物の上部を通過する際、障害物の側面が搬送車の車輪等に接触する可能性を低減する事ができる。
【0013】
本発明の搬送車において、前記パターンは、格子状であることを特徴としてもよい。このようにパターンを格子状にすることにより、パターンと撮影手段で撮影したパターンとを比較した際、障害物の有無や大きさ、高さを正確に検出しやすい。
【0014】
本発明の搬送車の制御方法は、
走行面に所定のパターンを投射する投射手段と、前記投射手段が投射した前記パターンを含む前記走行面を撮影して撮影情報を取得する撮影手段と、前記パターンと前記撮影手段に含まれるパターンとを比較し、比較結果に基づいて障害物の有無及び大きさを判定する判定手段と、を備え、自動走行が可能な搬送車を制御する制御方法であって、
前記パターンと前記撮影情報に含まれるパターンとを比較し、比較結果に基づいて障害物の有無及び横幅を判定する判定ステップと、
を含むことを特徴とする、
ものである。
【0015】
この搬送車の制御方法は、投射手段が前方の走行面に所定のパターンを投射し、投射手段で走行面に投射されたパターンを含む前方の走行面を撮影手段が撮影した際、パターンと撮影手段で撮影したパターンとを比較し、比較結果に基づいて障害物の有無及び大きさを判定手段が判定する。このとき、投射手段で走行面にパターンを投射した際、走行面に障害物が存在する場合には、障害物の大きさに応じてパターンが変化するため、パターンと撮影手段で撮影した走行面に投射されたパターンとを比較することにより、走行面の障害物の有無及び大きさを判定することができる。
【0016】
本発明のプログラムは、搬送車の制御方法の各ステップを1又は2以上のコンピュータに実行させるためのプログラムである。このプログラムは、コンピュータが読み取り可能な記憶媒体(例えば、ハードディスク、ROM、CD、DVD、フラッシュメモリなど)に記録されていても良いし、伝送媒体(インターネットや有線/無線LANなどの通信網)を介してあるコンピュータから別のコンピュータへ送信されても良いし、その他どのような形で授受されても良い。また、制御方法の各ステップを実行する装置で実行されるものであっても、プログラムが実行される装置と処理が行われる装置とが異なっていてもよい。いずれの場合であっても、このプログラムを1つのコンピュータに実行させるか又は複数のコンピュータに各ステップを分担して実行させれば、上述した制御方法と同様の効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】
図1は、搬送車20の構成の概略を示す側面図である。
【
図2】
図2は、搬送車20の構成の概略を示す背面図である。
【
図3】
図3は、搬送車20の電気的接続を説明するためのブロック図である。
【
図4】
図4は、パターン32の一例を説明するための説明図である。
【
図5】
図5は、障害物判定処理ルーチンの一例を示すフローチャートである。
【
図6】
図6は、撮影手段40で撮影した走行面の一例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
次に、本発明の実施の形態の一例として、搬送車20について詳しく説明する。以下に説明する実施の形態及び図面は、本発明の実施形態の一部を例示するものであり、これらの構成に限定する目的に使用されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において適宜変更することができる。なお、各図において対応する構成要素には同一又は類似の符号を付す。また、搬送車20の制御方法の一例を示すことで、本発明の搬送車の制御方法及び制御プログラムの一例も明らかにする。
【0019】
本発明の実施の形態の一例である搬送車20は、
図1及び
図2に示すように、電力駆動により無人で予め定められた経路を自走可能な無人搬送車であり、無線通信又は予め定められた搬送ルートに従って所定の経路を自走する。この搬送車20は、パターン32を走行面に投射する投射手段30と、走行面に投射されたパターン32を含む走行面を撮影する撮影手段40と、投射手段30及び撮影手段40や搬送車20の自走を制御する制御手段50(
図3参照)と、を備えており、投射手段30、撮影手段40及び制御手段50は、
図3に示すように、それぞれ電気的に接続されている。この搬送車20は、投射手段30から投射されたパターン32を含む走行面を撮影情報として撮影手段40が撮影し、パターン32の形状と撮影情報に含まれるパターンの形状とを制御手段50で比較することにより、走行面に障害物が存在するか否か、走行面に障害物が存在する場合、障害物の高さや横幅等がどの程度であるのか、を制御手段50で判定する。こうすることにより、障害物の有無や大きさの判定結果に基づいて、搬送車20の自動走行を制御することができる。
【0020】
投射手段30は、
図1に示すように、搬送車20が走行する搬送車20の前方側の走行面にパターン32を投射する公知の投射装置であり、後述するROM52に記憶されたパターン32を読み出し、搬送車20の前方側の走行面に投射する。
【0021】
パターン32は、
図4に示すように、縦枠32a及び横枠32bからなる正方形形状の格子状のパターン情報であり、水平な走行面に投射された際、例えば、一辺が100ミリメートルの正方形が縦方向及び横方向にそれぞれ10個ずつ配置された格子状の模様となるようなパターンである。このパターン32は後述するROM52に記憶されており、所定のタイミングでROM52から読み出され、投射手段30によって、搬送車20の前方側の走行面に投射される。また、このパターン32は、パターン32が投射手段30によって走行面に投射された際、パターン32の投射像の横幅と搬送車20の横幅とが略同一となる大きさである。このためパターン32が走行面に投射されることで、周囲に搬送車20の走行路であることを報知することができる。
【0022】
撮影手段40は、
図1に示すように、搬送車20が走行する搬送車20の前方側の走行面を撮影する公知の撮影装置であり、投射手段30によってパターン32が投射された走行面を撮影し、撮影情報を後述するRAM53に送信する。パターン32が投射された走行面に障害物が存在する場合には、走行面に投射されたパターン32が変化することになるため、走行面の障害物の有無や大きさ等をパターン32の変化に基づいて制御手段50で判定することができる。
【0023】
制御手段50は、
図3に示すように、CPU51を中心とするマイクロプロセッサとして構成されており、投射手段30や撮影手段40を制御する各種制御プログラムやパターン32に関する情報等が記憶されたROM52と、撮影手段40によって撮影された撮影情報等を一時的に記憶するRAM53と、投射手段30や撮影手段40等との間の各種信号の送受信を行うインタフェース54(以下、「I/F54」と言う。)がそれぞれバス55を介して電気的に接続されている。この制御手段50は、撮影手段40が撮影した撮影情報に基づいて、走行面の障害物を判定し、搬送車20の動きを制御する。
【0024】
次に、走行面に障害物10が存在するか否か、障害物10が存在する場合に、障害物10の形状や高さを判定する障害物判定方法について、制御手段50によって実行される障害物判定処理ルーチンを一例に説明する。この障害物判定処理ルーチンは、搬送車20が走行する際に開始され、走行中は繰り返し実行される。なお、ここで
図5は、障害物判定処理ルーチンの一例を示すフローチャートである。
【0025】
CPU51によってROM52に記憶された障害物判定処理ルーチンが実行されると、CPU51は、ROM52よりパターン32を含む投射情報を読み出し(ステップS110)、投射手段30から走行面にパターン32を照射する(ステップS120,
図6A参照)。なお、ここで、
図6は、撮影手段40で撮影した走行面の一例を示す説明図であり、
図6Aは、障害物が存在しない状態を、
図6Bは、大きな障害物が存在する状態を、
図6Cは、低く広い障害物が存在する状態を、
図6Dは、高い障害物が存在する状態を、
図6Eは、上部を通過可能な障害物が存在する状態を、それぞれ示している。
【0026】
次に、パターン32が照射された走行面を撮影手段40で撮影し、走行面に投射されたパターン32を含む撮影情報を取得し、RAM53に一時的に記憶する(ステップS130)。続いて、RAM53に一時的に記憶された撮影情報に含まれるパターンとROM52に記憶されたパターン32とを比較し、パターンが予め定められた基準値以上に変化しているか否かを判定し(ステップS140)、パターンの変化が基準値未満の場合には、本ルーチンを終了する。ここで、「基準値」とは、搬送車20の走行に影響がある障害物10が存在するか否かを判定するための基準となる値であり、撮影情報に含まれるパターンのそれぞれの格子線とROM52に記憶されたパターン32のそれぞれの格子線との変化量に基づいて、障害物10の存在の有無を判断する。例えば、パターンの格子の一部が走行面に投射された際に100ミリメートルに相当するズレ量が存在する場合に、基準値以上に変化していると判定する。パターンの変化が基準値未満の場合には、障害物が存在しないか、又は、障害物が存在したとしても、搬送車20の走行に影響しない程度の小さな障害物であるため、搬送車20はそのままのルートを走行することができる。なお、基準値に相当するズレ量については、走行面への投射時の大きさを推定して予め値を記憶してもよいし、走行前に校正(キャリブレーション)を行ってもよい。
【0027】
一方、ステップS140において、CPU51が、パターンが予め定められた基準値以上に変化していると判定した場合には、パターンの変化が認められ箇所が正面中心付近となる位置に搬送車20を移動させ(ステップS150)、パターン32が照射された走行面を撮影手段40で撮影し、走行面に投射されたパターンを含む第二撮影情報を取得し、RAM53に一時的に記憶する(ステップS160)。このような場合は、搬送車20の正面中心付近に障害物10が位置する場合であるため、撮影手段40では、障害物10が中央付近に位置する第二撮影情報を取得することができ、障害物10の形状に関する情報を正確に取得することができる。
【0028】
続いて、CPU51は、障害物10の横幅が通行限界以上であるか否かを判定し(ステップS170)、通行限界以上であると判定した場合には、停止信号を発信して(ステップS180)、本ルーチンを終了する。ここで、「通行限界」とは、搬送車20の横幅に基づいて定められた値であり、障害物10の横幅が通行限界以上である場合とは、搬送車20の横幅よりも広い横幅を有する障害物10が正面に存在する場合(
図6B参照)を意味する。このような場合には、搬送車20を大きく迂回させないと障害物10の位置を通過することができないため、停止信号を発信することで、搬送車20の移動を停止する。また、障害物10の横幅は、例えば、ROM52に記憶されたパターン32と第二撮影情報に含まれるパターンとを比較し、格子にズレのある格子の数に基づいて横幅を定めてもよいし、障害物10の輪郭を検出し、この輪郭に基づいて横幅を定めてもよい。
【0029】
一方、ステップS170において、CPU51が障害物10の横幅が走行限界より小さいと判定した場合には、障害物10の横幅が基準幅以上であるか否かを判定し(ステップS190)、障害物10の横幅が基準幅以上であると判定した場合には、回避信号を発信して(ステップS200)、本ルーチンを終了する。ここで、「基準幅」とは、搬送車20の車輪の内側間の距離に基づいて予め定められた値であり、
図2中のAの距離を意味する。障害物10の横幅が基準幅以上である場合(
図6C参照)には、搬送車20の車輪と車輪との間に障害物10が位置することができない。すなわち、障害物10が中央に位置する状態で搬送車20が障害物10の上側を通行した際、障害物10と搬送車20の車輪とが衝突することになる。このような場合には、回避信号を発信することで、障害物10を回避して障害物10の横側を搬送車20が通過し、障害物10と車輪とが衝突して破損する可能性を未然に防止することができる。
【0030】
一方、ステップS190において、CPU51が障害物10の横幅が基準幅より小さいと判定した場合には、障害物10の高さが最低地上高以上であるか否かを判定し(ステップS210)、障害物10の高さが最低地上高以上であると判定した場合には、回避信号を発信して(ステップS200)、本ルーチンを終了する。ここで、「最低地上高」とは、搬送車20の最も低い部位と走行面との間の距離(最低地上高)に基づいて予め定められた値であり、
図2中のBの距離を意味する。障害物10の高さが最低地上高以上である場合(
図6D参照)には、搬送車20が障害物10の上側を移動する(障害物10をまたいで移動する)際、障害物10が搬送車20と衝突することを意味する。このような場合には、回避信号を発信することで、障害物10を回避して障害物10の横側を搬送車20が通過し、障害物10と搬送車20とが衝突して破損する可能性を未然に防止することができる。なお、最低地上高以上であるか否かの判定については、撮影情報に含まれる格子状のパターンの中で、各格子のズレ量に基づいて判定してもよいし、基準幅以上であるか否かの判定と同様の方法で判定してもよい。
【0031】
一方、ステップS210において、障害物10の高さが最低地上高未満であると判定した場合には、本ルーチンを終了する。この場合(
図6E参照)には、障害物10の横幅が搬送車20の車輪の内側間の距離よりも短く、障害物10の高さが最低値上高より短いため、回避行動を行うことなく前進し、障害物10の上側を通過する(障害物10をまたぐ)ことができ、何ら特別な制御を行う必要が無い。
【0032】
このように、障害物10の横幅及び高さが通行可能範囲内であるか、すなわち、搬送車20の横幅より大きいか否か、搬送車20の両輪の間の距離よりも大きいか否か、搬送車20の最低地上高の高さより小さいか否かを判定することにより、障害物10に接触することなく、最低限のルート変更で搬送車20を走行させることができる。特に、搬送車20が予め定められたルートを自動的に走行する自動搬送車である場合には、障害物10の有無、横幅及び高さを判定することにより、搬送車20の走行ルートを大きく変更することなく、目的地に到達することができる。
【0033】
以上詳述した実施の形態の搬送車20によれば、投射手段30が走行面に投射したパターン32を撮影手段40が撮影し、ROM52に記憶されたパターン32と撮影手段40が撮影した撮影情報に含まれるパターンとを比較する。走行面に障害物10が存在する場合には、撮影情報に含まれるパターンが障害物10の大きさに応じて変化し、ROM52に記憶されたパターン32と一致しなくなる。このため、ROM52に記憶されたパターン32と撮影情報に含まれるパターンとを比較することで、比較結果に基づいて障害物10の有無及び障害物10の大きさを制御手段50が判定することができる。こうすることにより、搬送車20が走行する走行面に障害物10が存在するか否かや、障害物10が存在する場合の障害物10の形状や大きさに関する情報を搬送車20の走行に利用することができる。
【0034】
また、制御手段50が判定する際、障害物10の大きさが予め定められた通行可能範囲内であると判定した場合には、障害物10の上部を搬送車20が通過するように搬送車20の走行を制御することで、障害物10が存在する場合であっても、搬送車20が走行可能な横幅の障害物10の場合には、搬送車20の走行ルートを大きく変更することなく、走行することができる。
【0035】
更に、制御手段50が判定する際、障害物10の高さが最低地上高より低いと判定した場合に通行可能範囲内であると判定することにより、障害物10の高さが最低地上高以上である場合に、障害物10の上部を通過した場合に障害物10と搬送車20とが接触し、搬送車20が損傷する可能性を未然に防止することができる。
【0036】
更にまた、制御手段50が判定する際、障害物10の横幅が搬送車20の両輪の内側間の距離より小さいと判定した場合に通行可能範囲内であると判定することにより、障害物10の位置が搬送車20の中心となる位置を通過することで、障害物10が存在する場合であっても、走行ルートを外れることなく、障害物10を通過することができる。
【0037】
そして、制御手段50が判定する際、障害物10の高さが最低地上高より高く、かつ、障害物10の横幅が搬送車20の両輪の内側間の距離より小さいと判定した場合には、回避信号を発信し、障害物10の上部を通過することなく、障害物10の横を通過することで、障害物10の上部を通過した際、障害物10の一部が搬送車20の下面又は搬送車20の車輪と接触し、搬送車20が損傷する可能性を未然に低減することができる。
【0038】
そしてまた、パターン32は格子状であるため、パターン32と撮影手段40で撮影した走行面に含まれるパターン情報とを比較した際、障害物10の大きさ及び高さによる変化を容易に判定することができる。
【0039】
なお、本発明は上述した実施形態に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の態様で実施し得ることはいうまでもない。
【0040】
例えば、上述した実施の形態では、ステップS170及びステップS180において、搬送車20の両輪の内側間の距離及び最低地上高に基づいて通行可能範囲内であるかを判定するものとしたが、両輪の内側間の距離又は最低地上高の値から所定の値を減算した値に基づいて通行可能範囲内であるかを判定してもよい。こうすることにより、走行面に凹凸や傾き等がある場合であっても、上述した実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【0041】
上述した実施の形態では、パターン32は、格子の一辺の長さが100ミリメートルの格子を横方向及び縦方向にそれぞれ10個ずつ組み合わせたものとしたが、パターン32はこの形状に限定されるものではなく、格子の一辺の長さが100ミリメートル以下であってもよい。こうすることにより、障害物10の大きさや高さをより正確に判定することができる。また、パターン32は、格子形状に限定されるものではなく、例えば、長方形等の矩形や平行線等であってもよい。いずれの場合であっても、上述した実施の形態と同様の効果が得られる。
【0042】
上述した実施の形態では、投射手段40は、パターン32を投射するものとしたが、パターン32と同時に、文字又は図形を投射してもよい。例えば、進行方向や右左折方向を示す矢印をパターン32と重ねて投射することにより、搬送車20の進行方向を報知することができるため、周囲の人に搬送車20の進行方向を報知することができる。また、例えば、「侵入禁止」や「走行注意」の文字をパターン32と同時に投射することにより、搬送車20の接近を報知することができるため、周囲の人に搬送車20の接近を報知することができる。
【0043】
上述した実施の形態では、障害物判定処理ルーチンは、搬送車20が走行する前に開始され、走行中は繰り返し実行されるものとしたが、例えば、1秒間や0.5秒間等の所定の時間毎に繰り返し実行されるものとしてもよいし、1メートルや50センチメートル等の所定の距離移動する毎に繰り返し実行されるものとしてもよい。こうすることにより、走行中常時繰り返し実行される場合と比較して、制御手段50での処理量を低減することができる。
【0044】
上述した実施の形態では、撮影手段40で撮影した撮影情報をRAM53に一時的に記憶するものとしたが、撮影情報として蓄積し続けてもよい。こうすれば、走行後に撮影情報を確認することで、走行路上の障害物情報を蓄積することができるため、次回の走行までに障害物を除去したり、予め障害物を回避した走行ルートを設定したりすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0045】
上述した実施の形態で示すように、自動走行分野、特に自動走行時の障害物回避手段として利用することができる。
【符号の説明】
【0046】
10…障害物、20…搬送車、30…投射手段、32…パターン、32a…縦枠、32b…横枠、40…撮影手段、50…制御手段、51…CPU、52…ROM、53…RAM、54…インタフェース、55…バス。