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特許7165519配管接続用コネクタ、フィルタモジュール及び液体供給回路
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-26
(45)【発行日】2022-11-04
(54)【発明の名称】配管接続用コネクタ、フィルタモジュール及び液体供給回路
(51)【国際特許分類】
   A61M 1/16 20060101AFI20221027BHJP
【FI】
A61M1/16 179
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018129654
(22)【出願日】2018-07-09
(65)【公開番号】P2020005883
(43)【公開日】2020-01-16
【審査請求日】2021-03-18
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000226242
【氏名又は名称】日機装株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西田 孝成
(72)【発明者】
【氏名】杉山 博信
【審査官】土谷 秀人
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-96191(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0110034(US,A1)
【文献】韓国登録実用新案第20-0354188(KR,Y1)
【文献】特開2012-71162(JP,A)
【文献】実開昭51-127655(JP,U)
【文献】特開2017-29480(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 1/16
A61M 1/28
A61M 39/02
A61M 39/10
F16L 37/02
B01D 35/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒形状であって、中心軸方向一端にフィルタモジュールの接続管に挿入される第一先端部が形成されたコネクタ本体を備える、配管接続用コネクタであって、
前記第一先端部は、末端に行くにつれて外周面が縮径され、
前記第一先端部には、当該第一先端部の外周面から前記コネクタ本体の内周面まで貫通される貫通部が形成され、
前記貫通部は前記中心軸方向に沿って形成されるスリットであって、
前記スリットが前記第一先端部の末端から入ることで、当該末端が複数の突起に分離される、
配管接続用コネクタ。
【請求項2】
請求項1に記載の配管接続用コネクタであって、
前記コネクタ本体は、前記第一先端部に対する前記中心軸方向他端に第二先端部が形成され、
前記コネクタ本体の内周面には、前記スリットの終端に接続され、前記スリットの終端から前記第二先端部側に行くにつれて溝底面の前記中心軸との距離が小さくなる、断面傾斜状のスロープ溝が形成される、
配管接続用コネクタ。
【請求項3】
請求項1に記載の配管接続用コネクタであって、
前記第一先端部には、その外周面から前記コネクタ本体の内周面まで貫通される貫通孔が穿孔される
配管接続用コネクタ。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載の配管接続用コネクタ備える、液体供給回路。
【請求項5】
円筒形状であって、中心軸方向一端にフィルタモジュールの接続管に挿入される第一先端部が形成されたコネクタ本体を備える、配管接続用コネクタであって、
前記第一先端部は、末端に行くにつれて外周面が縮径され、
前記第一先端部には、当該第一先端部の外周面から前記コネクタ本体の内周面まで貫通される貫通部が形成され、
前記貫通部は、前記第一先端部の末端から形成されるスリットであって、
前記コネクタ本体は、前記第一先端部に対する前記中心軸方向他端に第二先端部が形成され、
前記コネクタ本体の内周面には、前記スリットの終端に接続され、前記スリットの終端から前記第二先端部側に行くにつれて溝底面の前記中心軸との距離が小さくなる、断面傾斜状のスロープ溝が形成される、
配管接続用コネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配管接続用コネクタ、当該コネクタが挿入されるフィルタモジュール、及びこれらの配管接続用コネクタ及びフィルタモジュールを備える液体供給回路に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば血液透析では、透析液供給回路を経て血液浄化器に透析液が供給される。透析液供給回路には、血液浄化器に供給される透析液を濾過するフィルタモジュールが用いられる。フィルタモジュールは濾過前の透析液が導入される導入管と濾過後の透析液を導出する導出管を備える。導入管と導出管とをまとめて接続管と呼ぶこともできる。
【0003】
例えば特許文献1~4に例示されるように、フィルタモジュールの接続管に、透析液供給回路の配管の末端部であるコネクタが接続される。例えば接続管がメス側となりコネクタがオス側となり、接続管にコネクタが挿入される。
【0004】
接続箇所のシール性を保つために、接続管内周面とコネクタ外周面との間にOリング等のシール部材が設けられる場合がある。例えば図13に示されるように、接続管100の内周面102に形成された収容溝103にOリング104が収容される。このとき、コネクタ106の接続管100への挿入時における、Oリング104の損傷を抑制するために、コネクタ106の先端は先細りのテーパ形状となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2015-188667号公報
【文献】特開2016-049177号公報
【文献】特開2015-181783号公報
【文献】米国特許第5397462号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、図13に例示されるようにコネクタ106の、テーパ形状となっている先端部108の外周面110と接続管100の内周面102の間には間隙112が形成される。この間隙112に透析液等の取扱液が滞留するおそれがあり、当該構造には配管内の清浄性向上の余地がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は配管接続用コネクタに関する。当該コネクタは、円筒形状であって、中心軸方向一端にフィルタモジュールの接続管に挿入される第一先端部が形成されたコネクタ本体を備える。第一先端部は、末端に行くにつれて外周面が縮径される。第一先端部には、当該第一先端部の外周面からコネクタ本体の内周面まで貫通される貫通部が形成される。
【0008】
上記発明によれば、縮径された第一先端部の外周面からコネクタ本体の内周面まで貫通される貫通部を介して、第一先端部の外周面周辺に滞留する液体をコネクタ本体内まで導入可能となる。
【0009】
また上記発明において、貫通部は、第一先端部の末端から形成されるスリットであってよい。
【0010】
貫通部をスリットとすることで、例えば射出成形により配管接続用コネクタを製造する場合、金型にスリットに対応するコア(雄型)を形成しておけばスリットが形成可能となる。このようにコネクタ全体の成形と同時に貫通部の作成が可能となり、貫通部の作成に伴う追加コストを低減可能となる。
【0011】
また上記発明において、コネクタ本体は、第一先端部に対する中心軸方向他端に第二先端部が形成されてよい。この場合、コネクタ本体の内周面には、スリットの終端に接続され、スリットの終端から第二先端部側に行くにつれて溝底面の中心軸との距離が小さくなる、断面傾斜状のスロープ溝が形成されてよい。
【0012】
スリットの終端にスロープ溝が接続されることで、スリット終端に流れる液体を円滑にコネクタ本体内に導入可能となる。
【0013】
また上記発明において、貫通部は、第一先端部の外周面からコネクタ本体の内周面まで貫通される貫通孔であってよい。
【0014】
第一先端部の外周面からコネクタ本体の内周面まで貫通される貫通孔を介して、第一先端部の外周面周辺に滞留する液体をコネクタ本体内まで導入可能となる。
【0015】
また本発明は、上記発明に係る配管接続用コネクタが挿入される接続管を備える、フィルタモジュールに関する。接続管の内周面には、シール部材が収容される収容溝が全周に亘って形成される。
【0016】
一般的にディスポーザル製品であるフィルタモジュールにシール部材を収容させることで、フィルタモジュールの交換と併せてシール部材を交換することが可能となる。これにより長期間使用に伴うシール部材の劣化を抑制可能となる。
【0017】
また上記発明において、シール部材により、収容溝が埋められてよい。
【0018】
シール部材が収容溝をシールすることで、当該収容溝への液体流入が避けられる。
【0019】
また上記発明において、接続管の内周面の、配管接続用コネクタの第一先端部の外周面と対向する領域に、中心軸方向前後の内周面に対して突出または陥没する径変更部が形成されてよい。
【0020】
接続管の内周面に径変更部を設けることで、当該径変更部周辺の流れに渦を形成可能となり、滞留領域の液体が攪拌される。
【0021】
また上記発明において、収容溝の第一先端部側の側面と、シール部材とコネクタ本体の外周面との当接領域との、中心軸方向の区間に、第一先端部の外周面に形成された、貫通部による開口の少なくとも一部が含まれてよい。
【0022】
上記構成のように収容溝の一部に貫通部の開口の少なくとも一部が向けられることで、収容溝内の液体を、貫通部を介してコネクタ本体内に導入可能となる。
【0023】
また本発明は、上記発明に係る配管接続用コネクタ及びフィルタモジュールを備える、液体供給回路に関する。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、接続管の内周面と、テーパ形状となっている第一先端部の外周面との間に形成される間隙における、液体の滞留を従来よりも抑制可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本実施形態に係る配管接続用コネクタ及びフィルタモジュールが用いられる透析液供給回路を例示する図である。
図2】本実施形態に係る配管接続用コネクタ及びフィルタモジュールを例示する断面図である。
図3】本実施形態に係る配管接続用コネクタを例示する斜視図である。
図4】本実施形態に係る配管接続用コネクタ及びフィルタモジュールの接続箇所を例示する断面図である。
図5】接続箇所周辺の液体の流れを説明する図である。
図6】本実施形態の第一別例に係る配管接続用コネクタを例示する斜視図である。
図7】本実施形態の第一別例に係る配管接続用コネクタ及びフィルタモジュールの接続箇所を例示する断面図である。
図8】本実施形態の第一別例に係るフィルタモジュールを例示する断面図である。
図9】本実施形態の第一別例に係るフィルタモジュールの、接続箇所周辺の液体の流れを説明する図である。
図10】本実施形態の第二別例に係るフィルタモジュールを例示する断面図である。
図11】本実施形態に係る配管接続用コネクタ及びフィルタモジュールの相対位置について説明する断面図である。
図12】本実施形態の第二別例に係る配管接続用コネクタを例示する斜視図である。
図13】従来技術に係る配管接続用コネクタ及びフィルタモジュールの接続箇所を例示する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
図1に、本実施形態に係る配管接続用コネクタ10(以下適宜単にコネクタと記載する)及びフィルタモジュール30が接続される透析液供給回路50が例示される。なお、本実施形態に係るコネクタ10及びフィルタモジュール30が搭載される回路は、透析液供給回路に限られない。要するに取り扱い液の濾過を要する液体供給回路であれば、本実施形態に係るコネクタ10及びフィルタモジュール30を接続可能である。例えば水浄化回路等にも、本実施形態に係るコネクタ10及びフィルタモジュール30を接続可能である。
【0027】
透析液供給回路50は、血液浄化器54に透析液を供給するとともに、血液浄化器54から排出される物質交換後の透析液を排出する。透析液供給回路50は、透析液供給ラインL1及び透析液排出ラインL2を主要な流路とし、これに分岐して複数の支流となるラインが形成される。具体的には、透析液供給ラインL1に透析液取出しラインL8が設けられ、透析液排出ラインL2に迂回ラインL5,L6,L7が設けられる。さらに、透析液供給ラインL1と透析液排出ラインL2とを結ぶようにして、バイパスラインL3,L4が設けられる。
【0028】
透析液供給ラインL1は、その上流端に、図示しない透析液タンクが接続され、下流端に血液浄化器54が接続される。透析液供給ラインL1は、上流から下流に向かって、ポンプP1、フィルタモジュール30A、バルブV1、フィルタモジュール30B、透析液取出部C1、圧力センサS1、及びバルブV2が設けられる。なお、フィルタモジュール30Bは、透析液供給回路50に求められる濾過能力等に応じて省略してもよい。
【0029】
ポンプP1はポンプP2とともに複式ポンプを構成する。例えば血液透析中には、ポンプP1により血液浄化器54に供給される透析液の液量とポンプP2により血液浄化器54から排出される液量が等しくなるように、両ポンプの動作が制御される。
【0030】
フィルタモジュール30A,30Bは、ともに血液浄化器54に供給される透析液を濾過する濾過器である。例えば後述するように、フィルタモジュール30A,30Bとして、血液浄化器54と同様の中空糸膜モジュールを用いてもよい。この構成については後述する。また、フィルタモジュール30A,30Bはともに、図2に例示されるフィルタモジュール30と同一のものであってよい。
【0031】
透析液排出ラインL2は、その上流端が血液浄化器54に接続され、下流端が図示しない排液タンクに接続される。透析液排出ラインL2は、上流から下流に向かって、バルブV3、圧力センサS2、加圧ポンプP3、チャンバC2及びポンプP2が設けられる。
【0032】
バイパスラインL3は透析液排出ラインL2のバルブV3及び圧力センサS2の間から分岐され、透析液供給ラインL1のフィルタモジュール30Bに接続される。またバイパスラインL3にはバルブV4が接続される。
【0033】
バイパスラインL4は透析液排出ラインL2の圧力センサS2及び加圧ポンプP3の間から分岐され、透析液供給ラインL1のフィルタモジュール30Aに接続される。またバイパスラインL4にはバルブV5が接続される。
【0034】
迂回ラインL5,L6,L7はいずれも、透析液排出ラインL2の、バイパスラインL4の接続点よりも下流側に設けられる。迂回ラインL5にはバルブV6が設けられる。迂回ラインL6には、リリーフバルブVR及び除水ポンプP4が設けられる。さらに迂回ラインL7が、ポンプP2を迂回するようにして設けられる。
【0035】
また、透析液取出しラインL8は、透析液供給ラインL1の透析液取出部C1から分岐され、動脈側回路51のエアトラップチャンバAT1に接続される。クランプCPを閉止状態から開放状態にすることで、透析液供給ラインL1を流れる透析液の一部が動脈側回路51に供給される。
【0036】
動脈側回路51の下流端、静脈側回路52の上流端、透析液供給ラインL1の下流端、及び、透析液排出ラインL2の上流端が、それぞれ血液浄化器54に接続される。血液浄化器54は動脈側回路51から送られた血液を浄化する。血液浄化器54はいわゆるダイアライザであって、例えば中空糸膜54Aを介して透析液と血液とが物質交換される。血液浄化器54は、複数本の中空糸膜54Aの束(中空糸膜束)がカラム54B内に収容される。
【0037】
カラム54Bは円筒状の収容部材であって、中心軸方向の一端に導入側キャップ54Cが取り付けられ、他端に導出側キャップ54Dが取り付けられる。導入側キャップ54Cには、動脈側回路51の下流末端のチューブ(図示せず)に接続される血液導入ポート54Eが設けられる。導出側キャップ54Dには、静脈側回路52の上流端のコネクタ(図示せず)に接続される血液導出ポート54Fが設けられる。ポンプ53の駆動により動脈側回路51から送られる血液は、エアトラップチャンバAT1を経由して血液導入ポート54Eから中空糸膜54Aの内部に流れ込む。
【0038】
カラム54Bの、導出側キャップ54D寄りの部分には、透析液導入ポート54Gが設けられる。またカラム54Bの、導入側キャップ54C寄りの部分には、透析液導出ポート54Hが設けられる。透析液導入ポート54Gを介して、透析液供給ラインL1からカラム54B内に透析液が送られる。中空糸膜54Aを介して透析液と血液とが物質交換され、その結果血液が浄化される。
【0039】
物質交換後の透析液は排液として透析液導出ポート54Hを介して透析液排出ラインL2に送られる。また浄化後の血液は血液導出ポート54Fを介して静脈側回路52に送られる。静脈側回路52では、エアトラップチャンバAT2を経由して、図示しない静脈側穿刺針から浄化後の血液が患者の体内に返血される。
【0040】
図2には、本実施形態に係るコネクタ10及びフィルタモジュール30の断面図が例示される。図2では、フィルタモジュール30の中心軸A1ならびにケーシング側接続管37A及びコネクタ10の中心軸A2を含む断面が例示される。
【0041】
フィルタモジュール30は、例えば中空糸膜モジュールであって、ケーシング31、中空糸膜32、キャップ33A,33Bを備える。
【0042】
中空糸膜32は、複数本の束(中空糸膜束)の状態でケーシング31内に収容される。中空糸膜32の長手方向一端の開口はキャップ33A,33Bの一方に向けられ、中空糸膜32の他端の開口はキャップ33A,33Bの他方に向けられる。
【0043】
中空糸膜32の長手方向両端部は、複数の中空糸膜32間及びケーシング31の内周面に亘って封止材34が充填される。中空糸膜32の端部開口は封止材34が充填されずに、開放状態が維持される。またケーシング31の長手方向(中心軸A1方向)の一対の封止材34,34によって、ケーシング31の両端が封止される。
【0044】
キャップ33A,33Bはケーシング31の中心軸A1方向両端に取り付けられる。キャップ33A,33Bの少なくとも一方には、外部からチューブ55が接続可能なキャップ側接続管35(ポート)が形成される。例えば図1の例では、キャップ33A,33Bの両者にキャップ側接続管35A,35Bが形成される。
【0045】
ケーシング31は、円筒形状のケーシング本体36と、ケーシング本体36と連通し当該ケーシング本体36から分岐されるケーシング側接続管37を備える。ケーシング側接続管37として、ケーシング31は例えば一対のケーシング側接続管37A,37Bを備える。ケーシング本体36内に中空糸膜32が収容される。ケーシング側接続管37A,37Bは、例えばケーシング本体36から径方向に突設される。
【0046】
このように、フィルタモジュール30には、キャップ側接続管35及びケーシング側接続管37が設けられる。図2の例では、フィルタモジュール30には、キャップ側接続管35A,35B及びケーシング側接続管37A,37Bの4つの接続管が設けられる。透析液の濾過に当たり、透析液供給ラインL1(図1参照)の、相対的に上流側のチューブ55Aが、キャップ側接続管35A,35Bの一方(図2ではキャップ側接続管35B)に接続される。また、透析液供給ラインL1の、相対的に下流側のチューブ55Bが、コネクタ10を介してケーシング側接続管37A,37Bの一方(図2ではケーシング側接続管37A)に接続される。チューブ55A,55Bに接続されないキャップ側接続管35A,35Bの他方、及び、ケーシング側接続管37A,37Bの他方は、封止キャップ38により封止される。または、流出側のチューブ55Bを2本設けて、ケーシング側接続管37A,37Bに接続してもよい。
【0047】
図2を参照し、チューブ55Aからキャップ側接続管35Bを経由して、中空糸膜32内に透析液が流入する。中空糸膜32の空孔から中空糸膜32外に流出した透析液はケーシング側接続管37Aを経由してチューブ55Bに流れ込む。このとき、透析液中の固形物のうち、中空糸膜32の空孔サイズを超過するものが中空糸膜32に捕捉される。
【0048】
図4にはケーシング側接続管37Aの周辺拡大断面図が例示される。なお、ケーシング側接続管37Bもこれと同様の構造を備える。
【0049】
ケーシング側接続管37Aの内周面40にはシール部材であるOリング41を収容する収容溝42が全周に亘って形成される。例えば、ケーシング側接続管37Aの遠位端、つまりケーシング本体36から離間された側の端部が、その近位端、つまりケーシング本体36との接続端よりも段差状に拡径されることで、段差部43が形成される。
【0050】
さらにケーシング側接続管37Aの遠位端にストッパ44が取り付けられる。ストッパ44の内径D1はケーシング側接続管37Aの近位端の内径D2と等しくてよい。また、ストッパ44の近位端と段差部43とが中心軸A2方向に離間されるように、ストッパ44及びケーシング側接続管37Aの形状が定められる。
【0051】
このようにして、ストッパ44の近位端面44Aと段差部43の段差面43Aとが一対の側面となり、またこの一対の側面を繋ぐ底面となる収容溝42が、ケーシング側接続管37Aの内周面40の全周に亘って形成される。さらにこの収容溝42にOリング41が収容される。なお、段差部43とストッパ44とによって収容溝42を構成する代わりに、ケーシング側接続管37Aの内周面の一部を全周に亘って拡径させることにより収容溝42を形成してもよい。
【0052】
このように、フィルタモジュール30にOリング41が設けられることで、フィルタモジュール30の交換と併せてOリング41を交換することが可能となる。これにより長期間使用に伴うOリング41の劣化、及びその劣化に伴うシール性の低下を抑制可能となる。
【0053】
図3には、コネクタ10の斜視図が例示される。なお、図3及び後述する図6において、面と他の面との境界を明確にするために、第一先端部13を角張った部材として描画しているが、当該境界を曲面加工してR部としてもよいし、面取りをしてもよい。
【0054】
コネクタ10はコネクタ本体11及びフランジ12を備える。コネクタ本体11は円筒形状であって、中心軸A2方向一端に第一先端部13が形成され、他端に第二先端部14が形成される。コネクタ本体11の中心軸A2方向略中心に、フランジ12が設けられる。
【0055】
フランジ12はコネクタ本体11の外周面から径方向外側に張り出されるように設けられた円環部材である。例えば図4を参照して、フランジ12は、ケーシング側接続管37A(正確にはケーシング側接続管37Aのストッパ44)及びチューブ55Bをコネクタ10に差し込む際に、ストッパとして機能する。
【0056】
第一先端部13及び第二先端部14はいわゆるオス部材であって、第二先端部14はチューブ55B(図4参照)に挿入接続される。なお、チューブ55Bの他にも、金属配管や樹脂配管への種々の配管継手が第二先端部14に接続されてよい。第一先端部13はフィルタモジュール30の接続管(図4ではケーシング側接続管37A)に挿入される。
【0057】
第一先端部13は、中心軸A2方向に、その末端、つまり、第二先端部14とは対向する端部であり、ケーシング側接続管37Aにコネクタ10を差し込むときの先端に行くにつれて、外周面13Bが縮径される。例えば図4に示す例では、第一先端部13の外周面13Bは、中心軸A2方向末端に向かって直線的に先細りとなるテーパ形状に形成される。第一先端部13のテーパ角、つまり、中心軸A2に対する外周面13Bの角度は15°以上30°以下であってよい。このような先細のテーパ形状とすることで、コネクタ10をケーシング側接続管37Aに挿入する際に、ケーシング側接続管37Aの内周面40に設けられたOリング41の損傷が避けられる。なお、第一先端部13の外周面13Bの、図4に示す断面形状(中心軸A2を含む断面形状)を、直線的に先細りするテーパ形状とする他にも、同断面形状を曲線形状としてもよい。
【0058】
加えて、本実施形態に係るコネクタ10では、第一先端部13には、当該第一先端部13の外周面13Bから、コネクタ本体11の内周面11Aまで貫通される貫通部が設けられる。なお、コネクタ本体11の内周面11Aとは、第一先端部13の内周面13Aも含まれる。
【0059】
図2図11では、上記貫通部として、第一先端部13にスリット15が形成される。スリット15は、第一先端部13の中心軸A2方向末端から当該中心軸A2と平行に直線状に形成される切込みである。このスリット15は第一先端部13の周廻りに、等間隔に複数形成されてよい。またスリット15は第一先端部13の、中心軸A2方向の全長に亘って形成されてよい。
【0060】
図4を参照して、上述したように、第一先端部13の先細テーパ形状の外周面13Bとケーシング側接続管37Aの内周面40との間には、いわゆるデッドスペースである滞留部16が形成される。本実施形態に係るコネクタ10では、第一先端部13に貫通部であるスリット15を形成することで、図5の矢印に例示されるように、滞留部16からコネクタ本体11内までのアクセスが可能となる。
【0061】
例えばスリット15は、コネクタ10の成形と同時に行うことができる。例えば射出成形によりコネクタ10を製造する場合、金型にスリット15に対応するコア(雄型)を形成しておけばスリット15が形成可能となる。このようにコネクタ全体の成形と同時にスリット15の作成が可能となり、スリット15の作成に伴う追加コストを低減可能となる。
【0062】
なお、図3等では、スリット15を第一先端部13の中心軸A2方向末端から当該中心軸A2と平行に直線状に形成したが、この形態に限らない。例えば、中心軸A2に対してスリット15を斜行させてもよいし、中心軸A2廻りにねじ状のスリット15を形成してもよい。このような斜行スリットやねじ形スリットは、当該スリットを流れる液体に回転を加えることができ、渦流を作ることで攪拌効果が得られる。
【0063】
<コネクタの第一別例>
図6図7には、本実施形態の第一別例に係るコネクタ10が例示される。図3図5に例示されたコネクタ10との差異点として、コネクタ本体11の内周面11Aには、スロープ溝17が形成されている。
【0064】
スロープ溝17は、スリット15の終端15Aに接続され、中心軸A2と平行に、スリット15の終端15Aから第二先端部14側に延設される。図7を参照して、スリット15の周方向幅W1とスロープ溝17の周方向幅W2は等しくてよい。
【0065】
またスロープ溝17は、その溝底面17Aと中心軸A2との距離R1,R2が、スリット15の終端15Aから第二先端部14側に行くにつれて小さくなる(R2 < R1)ように形成される。つまりスロープ溝17は、中心軸A2に平行な断面が傾斜状となる。
【0066】
このように、スリット15の終端15Aにスロープ溝17を接続させることで、滞留部16の液体がスロープ溝17にガイドされ円滑にコネクタ本体11内に流入可能となる。
【0067】
なお、コネクタ本体11の内周面11Aにスロープ溝17の中心軸A2方向の延設長さを過度に長く定めると、コネクタ本体11において肉薄部分の割合が増加する。そこでコネクタ10の剛性を保障する上で、例えばスロープ溝17の、中心軸A2方向の延設長さ、言い換えると軸方向長さは、スリット15の軸方向長さと同一であってよい。
【0068】
なお、図6等では、スロープ溝17を、第一先端部13の中心軸A2方向末端から当該中心軸A2と平行に直線状に形成したが、この形態に限らない。例えば、中心軸A2に対してスロープ溝17を斜行させてもよいし、中心軸A2廻りにねじ状のスロープ溝17を形成してもよい。このような斜行スロープ溝やねじ形スロープ溝17は、当該スロープ溝を流れる液体に回転を加えることができ、渦流を作ることで攪拌効果が得られる。
【0069】
<接続管の第一別例>
図8図9には、本実施形態に係るフィルタモジュールの接続管の、第一別例が示される。図3図7との差異点として、ケーシング側接続管37Aの内周面40に、拡径部45が形成される。
【0070】
例えば、拡径部45は、ケーシング側接続管37Aの内周面40の一部が、全周に亘って拡径された凹部である。例えば拡径部45は、中心軸A2を含む断面形状が曲面となるように形成され、その最大内径D3は、ケーシング側接続管37Aの内周面40の内径D2を超過する(D3 > D2)。
【0071】
また拡径部45は、滞留部16に対応して設けられる。すなわち、ケーシング側接続管37Aの内周面40のうち、コネクタ10の第一先端部13の外周面13B(テーパ面)と対向する領域に、拡径部45が形成される。
【0072】
拡径部45が滞留部16に形成されることで、図9に例示されるように、滞留部16に流れ込む液体の少なくとも一部が、拡径部45の形状に沿って渦流となる。渦流が形成されることで、滞留部16における液体交換が促進される。つまり、滞留部16における液体の滞留期間が短縮される。
【0073】
なお、図8図9の例では、ケーシング側接続管37Aの内周面40のうち、コネクタ10の第一先端部13の外周面13B(テーパ面)と対向する領域に、拡径部45を形成していたが、この形態に限らない。要するに滞留部16に渦流を形成させればよいので、ケーシング側接続管37Aの内周面40のうち、コネクタ10の第一先端部13の外周面13B(テーパ面)と対向する領域に、中心軸A2方向前後の内周面40に対して突出または陥没する径変更部を設ければよい。つまり径変更部は拡径部45であってもよく、突起であってもよい。
【0074】
<接続管の第二別例>
図10には、本実施形態に係るフィルタモジュール30の接続管における第二別例が例示される。図3図9に例示されたケーシング側接続管37Aとの差異点として、その内周面40に形成された収容溝42に収容されたシール部材46が設けられる。
【0075】
シール部材46は例えば円環状のガスケットであってよい。シール部材46は、収容溝42に差し込まれた状態で、中心軸A2方向の断面形状が収容溝42の断面形状と実質的に等しくなるように形成される。例えば収容溝42が断面矩形である場合、シール部材46の断面形状もまた矩形となる。
【0076】
このような構成とすることで、収容溝42の空間がシール部材46により埋められる。言い換えると、収容溝42がシール部材46によりシールされる。その結果、収容溝42への液体流入が防止される。
【0077】
<コネクタ及び接続管の相対位置>
図11を用いて、コネクタ10とケーシング側接続管37Aとの相対位置について説明する。上述したように、ケーシング側接続管37Aの内周面40とコネクタ本体11の外周面11Bの間隙はシール部材であるOリング41によってシールされる。ここで、収容溝42について、Oリング41とコネクタ本体11の外周面11Bとの当接領域11Cと、収容溝42の、第一先端部13側の側面である段差面43Aとの間に、つまりOリング41によるシールが及んでいない領域に、液体が入り込んで滞留するおそれがある。
【0078】
そこで図11に例示されるように、第一先端部13の外周面13Bに形成された、貫通部であるスリット15による開口の少なくとも一部が、収容溝42の、第一先端部13側の側面である段差面43Aと、Oリング41とコネクタ本体11の外周面11Bとの当接領域11Cとの間に含まれるようにしてもよい。
【0079】
例えば図11の例では、スリット15の終端15Aが、当接領域11Cと段差面43Aとの、中心軸A2方向の区間に設けられる。このような構成とすることで、収容溝42に入り込んだ液体をコネクタ本体11まで送り込むことが可能となる。
【0080】
<コネクタの貫通部の第二別例>
図3図11に示す例では、コネクタ10の第一先端部13に形成される貫通部としてスリット15を設けたが、この形態に限らない。要するに第一先端部13の外周面13Bから、(第一先端部13を含む)コネクタ本体11の内周面11A(,13A)まで連通する構造があればよいのであるから、例えば図12に例示されるように、第一先端部13の外周面13Bから、(第一先端部13を含む)コネクタ本体11の内周面11A(,13A)まで貫通される貫通孔18を設けてもよい。
【0081】
貫通孔18は、例えば第一先端部13の外周面13Bからコネクタ本体11の内周面11Aまで第二先端部14側に傾斜するようにして穿孔される。このような構成とすることで、滞留部16の液体をコネクタ本体11内に導入することが可能となる。
【0082】
<その他の変形例>
なお、上述した実施形態では、フィルタモジュール30の下流側、つまりフィルタモジュール30の流出側の接続管にコネクタ10を挿入させていたが、この形態に限らない。例えばフィルタモジュール30の上流側、つまりフィルタモジュール30の流入側の接続管にコネクタ10を挿入させてもよい。具体的には、ケーシング側接続管37A,37Bの一方を流入ポートとして使用し、キャップ側接続管35A,35Bの一方を流出ポートとして使用する際に、ケーシング側接続管37A,37Bの一方に本実施形態に係るコネクタ10が挿入される。
【符号の説明】
【0083】
10 配管接続用コネクタ、11 コネクタ本体、11A コネクタの内周面、11B コネクタの外周面、11C コネクタのOリングとの当接領域、13 第一先端部、13B 第一先端部の外周面、14 第二先端部、15 スリット(貫通部)、15A スリットの終端、16 滞留部、17 スロープ溝、17A スロープ溝の底面、18 貫通孔(貫通部)、30 フィルタモジュール、31 ケーシング、32 中空糸膜、33A,33B キャップ、34 封止材、35A,35B キャップ側接続管、36 ケーシング本体、37A,37B ケーシング側接続管、38 封止キャップ、40 ケーシング側接続管の内周面、41 Oリング、42 収容溝、43 段差部、43A 段差面、44 ストッパ、44A 近位端面、45 拡径部、46 シール部材、50 透析液供給回路、51 動脈側回路、52 静脈側回路、53 ポンプ、54 血液浄化器、55A,55B チューブ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13