(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-26
(45)【発行日】2022-11-04
(54)【発明の名称】リムーバブル封止プラグを備えた原子炉用の緩和アセンブリ
(51)【国際特許分類】
G21C 5/00 20060101AFI20221027BHJP
G21F 1/08 20060101ALI20221027BHJP
G21F 3/00 20060101ALI20221027BHJP
G21C 7/24 20060101ALI20221027BHJP
G21C 11/06 20060101ALI20221027BHJP
G21C 9/00 20060101ALI20221027BHJP
【FI】
G21C5/00 A
G21F1/08
G21F3/00 N
G21C7/24
G21C11/06
G21C5/00 C
G21C9/00
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2018130506
(22)【出願日】2018-07-10
【審査請求日】2021-06-25
(32)【優先日】2017-07-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】502124444
【氏名又は名称】コミッサリア ア レネルジー アトミーク エ オ ゼネルジ ザルタナテイヴ
(74)【代理人】
【識別番号】110001416
【氏名又は名称】特許業務法人 信栄特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ベック ティエリー
(72)【発明者】
【氏名】ガルニエ ジャン-クロード
(72)【発明者】
【氏名】ロレンゾ ドニ
【審査官】松平 佳巳
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-500463(JP,A)
【文献】特表2013-536426(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0216016(US,A1)
【文献】特開2017-116499(JP,A)
【文献】特開昭58-068694(JP,A)
【文献】特開平02-001588(JP,A)
【文献】国際公開第2016/097277(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G21C 5/00
G21F 1/08
G21F 3/00
G21C 7/24
G21C 11/06
G21C 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
原子炉用の緩和アセンブリ(40)であって、
前記原子炉のダイアグリッド(30)へ垂直に挿入されるように構成されており、
長手軸(X)と、
コリウムが循環する中央部(43)と、
中性子吸収材を支持しているアッパーニュートロンシールディング(UNS)ヘッド(105)を備えたUNS装置を収容するアセンブリヘッドを形成している上部(42)と、
を備えているボックス(41)と、
リムーバブルなロック手段(100)と、
前記UNSヘッド(105)の一部を形成しており、当該UNSヘッド(105)の残りの部分に対して所定距離だけ平行移動自在であるスラグ(101)と、
を備えており、
前記ロック手段(100)は、前記スラグ(101)に装着された前記UNS装置を抽出するためのグラブ(102)の複数の爪(103)を用いて前記スラグ(101)を前記長手軸に沿って変位させることによって、前記UNSヘッド(105)と前記ボックス(41)のロックとロック解除がなされうるように構成されており、
前記上部(42)は、円錐形の遮蔽ブロック(107)を備えており、
前記遮蔽ブロック(107)の先端は、前記ボックス(41)の底部を向いており、
前記遮蔽ブロック(107)は、前記ボックス(41)の円錐形の内面(108)と協働し、
前記遮蔽ブロック(107)と前記内面(108)の間に封止装置(109)が形成されており、
前記UNSヘッド(105)と前記遮蔽ブロック(107)は、リムーバブル封止プラグ(110)を形成している、
緩和アセンブリ。
【請求項2】
前記上部(42)は、前記UNSヘッド(105)と前記遮蔽ブロック(107)の間に配置された円筒形状の中間封止ブロック(106)を備えている、
請求項1に記載の緩和アセンブリ。
【請求項3】
前記遮蔽ブロック(107
)は、金属製であるか、あるいは中性子吸収材を含有しており、
前記金属は、ステンレス鋼であり、
前記中性子吸収材は、炭化ホウ素(B
4C)、ハフニウム(Hf)、二ホウ化ハフニウ
ム(HfB2)、二ホウ化チタン(TiB2)、ホウ化鉄(FeB)、二酸化ウラン(UO
2)、
およびレアアース
から選択された少なくとも一つである、
請求項
1に記載の緩和アセンブリ。
【請求項4】
前記中間封止ブロック(106)は、金属製であるか、あるいは中性子吸収材を含有しており、
前記金属は、ステンレス鋼であり、
前記中性子吸収材は、炭化ホウ素(B
4
C)、ハフニウム(Hf)、二ホウ化ハフニウ
ム(HfB2)、二ホウ化チタン(TiB2)、ホウ化鉄(FeB)、二酸化ウラン(UO
2
)、およびレアアースから選択された少なくとも一つである、
請求項2に記載の緩和アセンブリ。
【請求項5】
前記封止装置(109)は、前記遮蔽ブロック(107)の外錐面に配置されたラビリンスシールを備えている、
請求項1から
4のいずれか一項に記載の緩和アセンブリ。
【請求項6】
前記封止装置(109)は、金属スクレーパセグメントによって形成されて前記遮蔽ブロック(107)の外錐面に配置されたシールを備えている、
請求項1から
4のいずれか一項に記載の緩和アセンブリ。
【請求項7】
前記遮蔽ブロック(107)と前記内面(108)の間の
隙間(J)は
、ゼロであ
る、
請求項1から
6のいずれか一項に記載の緩和アセンブリ。
【請求項8】
前記遮蔽ブロック(107)は、湾曲形状のノーズ(111)を形成する頂点を備えている、
請求項1から
7のいずれか一項に記載の緩和アセンブリ。
【請求項9】
前記ノーズ(111)の周囲を延びる前記ボックス(41)の内面(112)もまた円錐形状である、
請求項
8に記載の緩和アセンブリ。
【請求項10】
前記UNSヘッド(105)は、前記UNS装置において中性子吸収プラグ(121)を形成するとともに前記ロック手段(100)を支持している部分を備えている、
請求項1から
9のいずれか一項に記載の緩和アセンブリ。
【請求項11】
前記ロック手段(100)は、垂直面内で回動自在に搭載された複数の爪からなる、
請求項1から
10のいずれか一項に記載の緩和アセンブリ。
【請求項12】
前記スラグ(101)は、前記グラブの前記爪(103)が装着されうる内溝(226)を備えている、
請求項1から
11のいずれか一項に記載の緩和アセンブリ。
【請求項13】
前記ボックス(41)は、前記UNS装置に対する上部ストッパを形成するために前記ロック手段(100)の前記爪が挿入されうる内溝(230)を備えている、
請求項1から
12のいずれか一項に記載の緩和アセンブリ。
【請求項14】
前記UNS装置は、中性子吸収プラグ(121)を形成する部分に固定されて前記スラグ(101)を貫通している少なくとも一つの中空の柱(231)を備えており、
前記柱(231)は、平行移動自在である前記グラブ(102)の可動部分(233)と接触することにより、ロック解除の間、前記スラグ(101)と前記UNS装置の残りの部分との間に上方への相対変位をもたらすように構成されている、
請求項1から
13のいずれか一項に記載の緩和アセンブリ。
【請求項15】
請求項1から
14のいずれか一項に記載の緩和アセンブリ(40)を少なくとも一つ備えて
いる高速増殖炉(R)である、
原子炉。
【請求項16】
請求項1から
14のいずれか一項に記載の緩和アセンブリ(40)が炉心内のナトリウムに浸漬されている際の操作方法であって、
前記リムーバブル封止プラグ(110)を除去してから前記ボックス(41)内にブリードする工程と、
前記リムーバブル封止プラグ(110)を除去してから前記ボックス(41)を通じて特殊な測定を行なう工程と、
の少なくとも一方を含んでおり、
前記測定は、前記ボックス(41)の検査測定と前記炉心の物理的測定の少なくとも一方である、
操作方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原子炉の分野に関連しており、特に一体型あるいはループ型の高速増殖炉(FBR)に関連している。このような炉は、伝熱流体によって冷却されうる。伝熱流体は、液体金属(特にナトリウム)の形態であることが一般的である。ナトリウム冷却高速炉あるいはナトリウム高速炉(SFR)という語も用いられる。この種のナトリウム冷却高速炉は、いわゆる第四世代の原子炉ファミリに属する。
【0002】
より詳しくは、本発明は、緩和アセンブリのアッパーニュートロンシールディング(UNS)の構成に関連する。
【0003】
よって、本発明は、リムーバブル封止プラグを備えた原子炉用の緩和アセンブリ、当該緩和アセンブリを備えた原子炉、およびこれらに関連する操作方法を開示する。
【背景技術】
【0004】
高速増殖炉の動作原理は、周知となっている。したがって、高速増殖炉は、熱中性子(0.025MeVを下回る運動エネルギーを有するもの)ではなく、高速中性子(0.907MeVを上回る運動エネルギーを有するもの)を用いる原子炉である。また、従来の第二世代および第三世代の原子炉とは異なり、高速増殖炉の炉心は減速されない(中性子の減速や熱化がない)。
【0005】
他の技術が研究されているものの、高速増殖炉の大多数は、冷却流体として液体ナトリウムを使用している。沸点が高いことがその理由である。
【0006】
ナトリウム冷却原子炉は、炉心が配置された格納容器をコア制御プラグとともに備えていることが普通である。炉心は、燃料親アセンブリに包囲された多数の燃料アセンブリ、リフレクタ・中性子保護アセンブリ、場合によっては重大事故緩和アセンブリからなることが一般的である。ポンプシステムを用いて熱が抽出され、炉心内のナトリウムが循環する。この熱は、少なくとも一つの中間交換器(IE)を通じて中間回路へ伝達され、後に蒸気発生器(SG)内に蒸気を生成するために使用される。この蒸気は、タービンへ送られて機械エネルギーに変換される。当該機械エネルギーは、続いて電気エネルギーに変換される。
【0007】
中間回路は、ナトリウムを収容している。ナトリウムと水蒸気の間で生じうる激しい反応が、蒸気発生管の破損時に起こりうる。この回路の目的は、格納容器内の一次ナトリウムを蒸気発生器内の水蒸気から隔離することにある。この構造物は、ナトリウムを収容する二つの回路を備えている。一方は、炉心と中間熱交換器の間で熱を伝達するように構成されている。他方は二次回路と称され、中間熱交換器と蒸気発生器の間で熱を伝達するように構成されている。
【0008】
全てのナトリウム炉は、共通の技術的特徴を有している。格納容器は、閉塞スラブによって閉塞されることにより、一次ナトリウムが外気と接触しない。当該スラブを垂直方向に通過する全てのコンポーネント(交換器、ポンプ、パイプなど)は、リフト装置を用いて垂直方向に持ち上げられることにより、取り外し可能である。当該スラブを貫通する穴の寸法は、当該コンポーネントの大きさと数に依存する。格納容器の直径は、穴が大きくなったり増えたりすることによって増す。
【0009】
一次回路は、二つの大きな分類のいずれかに基づいて構成されうる。高速増殖炉は、「一体型」の原子炉と「ループ型」の原子炉に区別される。本発明は、一体型の高速増殖炉により好適に関連するが、ループ型の高速増殖炉にも等しく適用可能である。
【0010】
ループ型原子炉は、中間交換器と一次ナトリウムポンプ装置が炉格納容器の外側に配置されているという事実により特徴づけられる。
図1は、ループ型原子炉と称されるナトリウム冷却高速増殖炉の構成原理を例示する軸方向断面図である。
【0011】
図1のループ型原子炉Rにおいて、ナトリウムは、炉心1を上方に通過して生成された熱を運び去る。炉心1の出口において、熱は原子炉Rの格納容器3における領域2へ送り出される。この領域は、「ホットコレクタ」と称されている。各ループにおいて、パイプ4は、ホットコレクタ2に漬けられており、一次ナトリウムを吸い上げて中間交換器(本図では不図示)へ輸送して二次ナトリウムへ熱を伝達する。中間交換器の出口において、一次ナトリウムはポンプによって回収され、パイプ5を通じて炉心入口へ直接送られる。
【0012】
ループ方式の主な利点は、一体型原子炉と比較して所定の電力を得るための炉心格納容器の直径を小さくできる点にある。構成要素が少なくて済むからである。よって、炉心格納容器がより容易に製造され、コストが低い。他方、ループ方式は、一次ナトリウムが格納容器外に取り出されるという点において不利である。一次回路の構造がより複雑になり、安全上の問題が大きくなる。よって、格納容器の小型化と製造容易性に係る利益は、ループの設計に係る装置の追加と一次ナトリウム漏れを管理する特殊手段によって必要とされるコスト増によって解消されてしまう。
【0013】
一体型原子炉は、中間交換器と一次ナトリウムのポンプ装置が格納容器内に配置されているという事実により特徴づけられる。すなわち、一次回路を格納容器の外側へ延ばす必要がない。よって、ループ型と比較して重要な安全上の利が得られる。
図2は、一体型原子炉と称されるナトリウム冷却高速増殖炉の構成原理を例示する軸方向断面図である。
【0014】
図2の一体型原子炉Rにおいて、ナトリウムは、炉心11を上方に通過して生成された熱を運び去る。炉心11の出口において、熱は格納容器13の領域12へ送り出される。領域12は、閉塞スラブ24によって閉塞されている。この領域12は、「ホットコレクタ」と称されている。ホットコレクタ12は、「レダン」と称される略円錐形状の壁15によって「コールドコレクタ」と称される別領域14と分離されている。中間交換器16は、レダン15を貫通する管束(本図では不図示)からなる。一次ナトリウムは、ホットコレクタ12に配置された入口窓17を通じて中間交換器16へ進入する。一次ナトリウムが管束を通過すると、その熱が二次ナトリウムに伝達される。一次ナトリウムは、窓18を通じて中間交換器16から出る。窓18は、コールドコレクタ14内に位置する中間交換器16の下部に設けられている。二次ナトリウムは、パイプ28を通じて中間交換器16に入り、パイプ29を通じて中間交換器16から出る。コールドコレクタ14内のナトリウムは、ポンプ装置19によって回収され、アセンブリを供給するダイアグリッド30を通じて炉心11の入口へ直接送られる。ダイアグリッド30は、圧力を受ける箱であり、燃料、燃料親物質、原子炉、中性子保護または緩和アセンブリが上下方向に係合している。ダイアグリッド30は、プレーティング31と称される機械的支持構造によって支持されている。
【0015】
ナトリウムは、中間交換器16内で重力によりホットコレクタとコールドコレクタの間を循環する。このナトリウムの二つのマニホルド間における駆動力は、ホットコレクタ12の液面20とコールドコレクタ14の液面21の差に対応する約2mに固定される。これは、中間交換器16の構成とジオメトリックフットプリントに係る理由に基づく。効率を最大にするために、レダン15、中間交換器16、およびポンプ手段を貫通する部品は、クロッシング22、23において最大限の漏れ防止性を有する。これにより、一次ナトリウムが中間交換器16をバイパスすることを防止する。
【0016】
さらに、その手法自体は前述の通り周知であるが、高速増殖炉は、DCS-M-TT(Complementary Mitigation type Safety Device with Through Tubes)と称される緩和アセンブリを一体化できる。その機能は、炉心からリキュペレータに至るコリウム排出経路を形成することにより、炉心内における全体溶融事故を緩和することにある。リキュペレータは、格納容器の底部におけるプレーティング30の下方に配置されている。例えば、ASTRIDと称される第四世代の原子炉は、21個の緩和アセンブリを備えている。当該アセンブリは、6個の燃料アセンブリ(炉心内に配置される)または3個のリフレクタ(炉心の第一リング内に配置される)によって包囲される。当該アセンブリの上部は、通常は「アッパーニュートロンシールディング」(UNS)と称される中性子遮蔽装置を備えている。
【0017】
図3は、高速増殖炉で使用される緩和アセンブリ40の一例を模式的に示す断面図である。緩和アセンブリ40は、長手軸Xに沿って延びる形状を有している。緩和アセンブリ40は、六角形状の断面を有するチューブあるいはボックス41を備えている。当該部材の上部42は、通常はUNSを包囲するアセンブリのヘッドを形成している。チューブ41は、中央部43を備えている。すなわち、上部42と中央部43は、単一の管状筐体41または全長にわたって同一の六角形状断面を有する箱体を形成する。アセンブリのヘッド42は、チューブ41の内部に開口する中央開口45を備えている。また、アセンブリ1は、その脚部を形成する下部44を備えている。下部44は、チューブ41に沿って延長している。アセンブリの底部44は、先端47を備えている。先端47は、炉心のダイアグリッドへ垂直に挿入される。
【0018】
図3に示されるように、アセンブリ40の脚部44の断面は、チューブ41の六角形状断面よりも小さい。二つの部分41、44の接続部47は、幾らか湾曲されるか、錐状の肩部として形成され、炉心のダイアグリッドの上面に対して非封止の球体/錐体軸受型接続を可能にしている。
【0019】
中央部43は、アセンブリ40のほぼ中程の高さにあり、炉心における核分裂領域Zと称される高さに位置する。緩和アセンブリ40が装填された状態、すなわち炉心内に導入された状態において、雄型の脚部44は、原子炉のダイアグリッド内の開口に挿入され、長手軸Xが垂直方向を向くダイアグリッド内の定位置にアセンブリ40を保持する。
【0020】
上述のように、緩和アセンブリ40の機能は、炉心全体が溶融する事故を緩和することにある。よって、チューブ41は、リローカライゼーションチャネルを形成し、炉心の底部に配置されたリキュペレータへのコリウム流路を形成する。アセンブリ40の脚部44は、重力によりコリウムを流す。より詳しくは、燃料の溶融により生成されたコリウムは、緩和アセンブリ40に到達するまで炉心内部を径方向に伝播する。アセンブリ40の六角形状チューブが溶けることにより、コリウム排出路が開口する。
【0021】
しかしながら、原子炉ボイラの熱水力特性に関して生じる問題が、コリウム流路の形成という緩和アセンブリの主要機能に適合可能なUNSの新たな構成を必要としている。
【0022】
図4は、
図3の緩和アセンブリを備えた高速増殖炉Rを例示する軸断面図である。
図4における破線Nは、ナトリウムの自由液面を表している。
【0023】
全ての炉心アセンブリ(本例においては燃料アセンブリ50と緩和アセンブリ40)は、それらの脚部がダイアグリッド30におけるスタンドあるいはチューブ51、48へそれぞれ垂直に挿入される。ダイアグリッド30の機能は、良好な冷却を要するアセンブリに冷えたナトリウムを高圧で供給することにある。燃料アセンブリのスタンドは、冷えたナトリウムの供給を可能にすべく穿孔されている。緩和アセンブリのスタンドは、穿孔されていない。このアセンブリは強制対流による冷却を必要としないからである。ダイアグリッド30の温度は約400℃であり、圧力は約4バールである。
【0024】
緩和アセンブリ40についてより詳細に述べる。スタンド48は、漏れ防止対策がなされつつプレーティング31(温度:約400℃、圧力:約130ミリバール)を貫通して延伸し、炉心とダイアグリッドを支持する機能を有する。スタンド48は、プレーティング31の下方で低圧(温度:約400℃、圧力:約0バール)のコールドコレクタ14へ開口する。スタンド48の底部には、コリウムリキュペレータ60が横たわっている。冷えたナトリウムが供給されるアセンブリの脚部の上部は、スタンドに対するラビリンスシールを備えている。当該ラビリンスシールは、高圧のダイアグリッド30をホットコレクタ12から隔離する。脚部の底部もまた、スタンドに対するラビリンスシールを備えている。当該ラビリンスシールは、高圧のダイアグリッド30をプレーティング31から隔離する。
【0025】
この構成においては、アセンブリの頭部と脚部の間でヘッドロスが増加しない。アセンブリ40の機能は、温度と圧力がそれぞれ約550℃と約130ミリバールであるホットコレクタ12がコールドコレクタ14に接触することを要する。両者の間の130ミリバールの圧力差は、コールドコレクタ14内に位置するチューブ41内の熱いナトリウムに下方向への流れを生じる。
【0026】
しかしながら、約400℃に冷えたナトリウム内に位置する構造(ダイアグリッド、プレーティングなど)への約550℃の熱いナトリウムの放出は、温度勾配に起因する熱機械的ストレスによる経年劣化や機械的強度の観点から望ましくない。特に、これらの構造の寿命は、原子炉を収容する発電所の寿命(例えば約60年)に等しくされることを要する。さらに、ホットコレクタ12内のナトリウムの自由液面は、ホットコレクタ12からのガスの主な発生源の一つである。高圧効果によってホットコレクタ12内のナトリウムに溶解した泡は、ガスリジャーミング(核生成現象)に直面するリスクや、コールドコレクタ14内に進入して泡が再形成されるリスクを伴う。しかしながら、コールドコレクタ14内におけるガスの存在は、ガスがアセンブリ内に侵入するリスクを防止するために制限されねばならない。当該現象は、燃料棒の冷却不良を引き起こしうる。
【0027】
したがって、ホットコレクタ12とコールドコレクタ14の間に良好な封止を提供する一方、動作や設置に係る(特にアセンブリの洗浄や炉心への搭載に係る)他の制約に対応する必要がある。例えば吸収棒あるいはスリーブ(中央チャネルを備えたリング)からなる固定されたUNSが燃料アセンブリやリフレクタに用いられる既知のUNS方式では、この漏れ防止要求に応えられない。吸収エレメントを良好に冷却するために必要なナトリウム通過断面積は非常に大きいからである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0028】
本発明の目的は、上述した要求の少なくとも一部に応え、先行技術に係る実施形態の短所の少なくとも一部を克服することにある。
【課題を解決するための手段】
【0029】
本発明の一態様によれば、原子炉用の緩和アセンブリが提供される。当該緩和アセンブリは、
前記原子炉のダイアグリッドへ垂直に挿入されるように構成されており、
長手軸と、
コリウムが循環する中央部と、
中性子吸収材を支持しているアッパーニュートロンシールディング(UNS)ヘッドを備えたUNS装置を収容するアセンブリヘッドを形成している上部と、
を備えているボックスと、
リムーバブルなロック手段と、
前記UNSヘッドの一部を形成しており、当該UNSヘッドの残りの部分に対して所定距離だけ平行移動自在であるスラグと、
を備えており、
前記ロック手段は、前記スラグに装着された前記UNS装置を抽出するためのグラブの複数の爪を用いて前記スラグを前記長手軸に沿って変位させることによって、前記UNSヘッドと前記ボックスのロックとロック解除がなされうるように構成されており、
前記上部は、円錐形の遮蔽ブロックを備えており、
前記遮蔽ブロックの先端は、前記ボックスの底部を向いており、
前記遮蔽ブロックは、前記ボックスの円錐形の内面と協働し、
前記遮蔽ブロックと前記内面の間に封止装置が形成されており、
前記UNSヘッドと前記遮蔽ブロックは、リムーバブル封止プラグを形成している。
【0030】
好ましくは、前記緩和アセンブリは、高速増殖炉(特にナトリウム冷却高速炉;SFR)に使用されるように構成される。しかしながら、前記緩和アセンブリは、封止機能を要するあらゆる原子炉(ガス冷却あるいは液体金属冷却原子炉;液体金属は鉛および鉛-ビスマスから選ばれる)に使用されうる。
【0031】
さらに、本発明に係る緩和アセンブリは、一体型の高速増殖炉またはループ型の高速増殖炉に等しく使用されうる。
【0032】
前記封止ブロックの円錐形状は、前記緩和アセンブリにおける前記プラグの位置決めを容易にしつつ、封止箇所における隙間を非常に小さくすることを保証しうるので有利である。これにより、良好な封止が得られる。また、先細り形状は、円筒形状を用いたセンタリングの場合と比較して、抽出中に前記プラグが引っ掛かるリスクを抑制しうる。
【0033】
前記緩和アセンブリのUNSは、後述するように幾つかの機能を発揮する。主要な機能のうち、アセンブリヘッドにおけるホットコレクタとコールドコレクタの間に良好な封止を提供することは必須である。構造に対する機械的な損傷を抑制するために、かつコールドコレクタにおけるガス発生を抑制するために、漏れ流が最小化されねばならない。アセンブリヘッドを通じてのコリウムの噴出を抑制し、ダイアグリッドのスタンドおよびプレーティングにおいてコリウムを下方へ流すことを容易にするために、十分に大きなヘッドロスを発生させることもまた必要である。なお、この第二の機能の発揮は、第一の機能が発揮された場合に必要となる。
【0034】
二次的な機能のうち、UNSの提供(すなわちアセンブリの頂部を通じての中性子漏れの抑制)が必要である。放射性廃棄物の量を低減するという観点に従うならば、UNSは再使用可能であることを要する。
【0035】
インコアハンドリング(炉心または外部ストレージへのアセンブリの搭載)に適合可能であることが必要との制約がある。アセンブリ洗浄処理に適合可能であることも必要である。
【0036】
本発明によれば、これらの機能を発揮するために、準リークタイトなリムーバブルプラグ型の緩和アセンブリ用UNSが構成されうる。封止機能が発揮されることにより、高いヘッドロスを達成することを狙いとした機能が自動的に実現される。UNS機能は、硬い鋼ブロックを使用することにより、限られた数の緩和アセンブリにおいて発揮されうる。当該鋼ブロックは、洗浄処理に適合可能であるという機能を満足しつつ、コストを最小化する。
【0037】
前記プラグが前記緩和アセンブリから取り外されうるように構成することにより、炉心ハンドリングへの適合機能が発揮されうる。前記プラグが完全に封止され、かつ取り外し不能である場合、前記アセンブリのナトリウムへの浸漬は、前記プラグの下方におけるエアポケットの形成をもたらしうる(ベル効果)。本発明によれば、前記アセンブリがナトリウムに浸漬されると、前記プラグが定位置に着き、前記アセンブリ内にガスポケットが生じることを防ぐ。
【0038】
前記プラグが確実にリムーバブルとされることにより、洗浄処理に対する適合機能もまた満足されうる。標準的な洗浄処理は、ヘッドの脚側から前記アセンブリを通じてウェットガスを循環させる工程と、続いて前記アセンブリを完全に水に浸漬させる工程とからなる。よって、洗浄前に前記を取り外すことが、この要求を満足しうる。
【0039】
前記プラグが前記緩和アセンブリから取り外されうるように構成することにより、再使用機能も実現される。この部品の放射性の程度に応じて、新たなアセンブリ内での複数回の使用が考慮されうる。これにより、廃棄物量の低減とコストの最小化が可能とされる。
【0040】
本発明に係る緩和アセンブリは、以下の特徴の少なくとも一つを、独立的に、あるいは技術的に可能であれば組み合わせて備えうる。
【0041】
前記上部は、前記UNSヘッドと前記遮蔽ブロックの間に配置された円筒形状の中間封止ブロックを備えうる。
【0042】
前記遮蔽ブロックと前記中間封止ブロックの少なくとも一方は、金属製であるか、あるいは中性子吸収材を含有しうる。前記金属は、ステンレス鋼でありうる。前記中性子吸収材は、炭化ホウ素(B4C)、ハフニウム(Hf)、二ホウ化ハフニウム(HfB2)、二ホウ化チタン(TiB2)、ホウ化鉄(FeB)、二酸化ウラン(UO2)、レアアースなどでありうる。
【0043】
好ましくは、前記封止装置は、前記遮蔽ブロックの外錐面に配置されたラビリンスシールを備えうる。
【0044】
あるいは、前記封止装置は、金属スクレーパセグメントによって形成されて前記遮蔽ブロックの外錐面に配置されたシールを備えうる。
【0045】
前記遮蔽ブロックと前記内面の間の空間は、実質的にゼロである隙間を区画していると有利である。
【0046】
前記遮蔽ブロックは、湾曲形状のノーズを形成する頂点を備えうる。
【0047】
頂点の湾曲形状は、アセンブリヘッドの封止面を損傷することなく遮蔽ブロックを定位置へ下降させることを容易にするので有利である。
【0048】
前記ノーズの周囲を延びる前記ボックスの内面もまた円錐形状でありうる。
【0049】
円錐形状は、ナトリウムへの浸漬中や洗浄中におけるガスの滞留を防止できるので有利である。
【0050】
前記UNS装置、特に前記UNSヘッドは、仏国特許出願公開第3030860号明細書に記載されたものでありうる。よって、後述する特徴の少なくとも一つが得られうる。
【0051】
前記アセンブリヘッドは、緩和アセンブリをハンドリングするためのハンドリンググラブの複数の爪と協働する溝または複数の穴を備えうる。当該ハンドリンググラブは、UNS抽出グラブと同じ動作シーケンスを有する。
【0052】
前記UNSヘッドは、前記UNS装置において中性子吸収プラグを形成するとともに前記ロック手段を支持している部分を備えうる。
【0053】
前記ロック手段は、垂直面内で回動自在に搭載された複数の爪からなりうる。
【0054】
前記複数の爪の各々は、プラグを形成する部分に固定されたピンを中心として回動自在に搭載されうる。
【0055】
前記スラグは、複数の固定ピンを備えうる。当該複数の固定ピンの各々は、回動爪に形成された溝内を摺動するように構成される。当該スラグの垂直平行移動は、当該ピンに当該溝内を摺動させ、当該爪を回動させる。
【0056】
前記スラグは、前記UNS装置を抽出するための前記グラブの前記爪が装着されうる溝を備えうる。
【0057】
前記ボックスは、前記UNS装置に対する上部ストッパを形成するために前記ロック手段の前記爪が挿入されうる内溝を備えうる。
【0058】
前記UNS装置は、プラグを形成する部分に固定されて前記スラグを貫通している少なくとも一つの中空の柱を備えうる。当該柱は、平行移動自在である前記グラブの可動部分と接触することにより、ロック解除の間、前記スラグと前記UNS装置の残りの部分との間に上方への相対変位をもたらすように構成される。
【0059】
前記緩和アセンブリ用の前記UNS装置に使用される材料は、ステンレス鋼から選択されることが好ましいが、炭化ホウ素(B4C)、ハフニウム(Hf)、二ホウ化ハフニウム(HfB2)、二ホウ化チタン(TiB2)、ホウ化鉄(FeB)、二酸化ウラン(UO2)、レアアースなどの中性子吸収材料から選択されてもよい。
【0060】
本発明の別態様によれば、上述の緩和アセンブリを少なくとも一つ備えている原子炉(具体的には高速増殖炉)が提供される。
【0061】
本発明の別態様によれば、上述の緩和アセンブリが炉心内のナトリウムに浸漬されている際の操作方法であって、
前記リムーバブル封止プラグを除去してから前記ボックス内にブリードする工程と、
前記リムーバブル封止プラグを除去してから前記ボックスを通じて特殊な測定を行なう工程と、
の少なくとも一方を含んでおり、
前記測定は、前記ボックスの検査測定と前記炉心の物理的測定の少なくとも一方であるものが提供される。
【0062】
例えば、放射中に前記ボックス内にガスが蓄積したことが疑われると、前記緩和アセンブリは、定期的に(ハンドリング作業中など)ブリードされうる。ブリードは、例えば一次原子炉格納容器内で特殊なグラブを使用し、前記リムーバブル封止プラグを持ち上げることによって行なわれる。
【0063】
また、必要に応じて、前記ボックスの内部で特殊な測定(具体的には、プレーティング検査測定と炉心の物理的測定の少なくとも一方)が行なわれうる。当該測定は、例えば計測装置を備えたロッドを挿入することによって行なわれる。
【0064】
本発明に係る前記緩和アセンブリ、前記原子炉、および前記操作方法は、前述した特徴のいずれかを、独立的に、あるいは技術的に可能な他の特徴と組み合わせて備えうる。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【
図1】ループ型と称されるナトリウム冷却高速増殖炉の構成原理を例示する軸断面図である。
【
図2】一体型と称されるナトリウム冷却高速増殖炉の構成原理を例示する軸断面図である。
【
図3】高速増殖炉に用いられる緩和アセンブリを例示する軸断面図である。
【
図4】
図3の緩和アセンブリを備えた高速増殖炉を例示する軸断面図である。
【
図5】本発明に係る高速増殖炉用の緩和アセンブリの上部を例示する軸断面図である。
【
図6】
図5の緩和アセンブリにおけるUNSヘッドの部分縦断面図である。
【
図7A】
図5の緩和アセンブリにおけるUNS装置のハンドリング工程、挿入工程、およびロック工程を例示する部分縦断面図である(封止ブロックは不図示)。
【
図7B】
図5の緩和アセンブリにおけるUNS装置のハンドリング工程、挿入工程、およびロック工程を例示する部分縦断面図である(封止ブロックは不図示)。
【
図7C】
図5の緩和アセンブリにおけるUNS装置のハンドリング工程、挿入工程、およびロック工程を例示する部分縦断面図である(封止ブロックは不図示)。
【
図7D】
図5の緩和アセンブリにおけるUNS装置のハンドリング工程、挿入工程、およびロック工程を例示する部分縦断面図である(封止ブロックは不図示)。
【
図7E】
図5の緩和アセンブリにおけるUNS装置のハンドリング工程、挿入工程、およびロック工程を例示する部分縦断面図である(封止ブロックは不図示)。
【発明を実施するための形態】
【0066】
本発明は、非限定的な実施形態例に係る以降の詳細な説明を読むことにより、添付の図面に示された模式的かつ部分的な図を参照することにより、よりよく理解される。
【0067】
これらの図において、同一の参照符号は、同一または同様の要素を指示しうる。
【0068】
また、図示されている複数の部品は、図を容易に理解できるようにするために、必ずしも同一の縮尺で示されることを要しない。
【0069】
図1から
図4については、先行技術および本発明の背景を説明するものとして参照済みである。
【0070】
図5は、本発明に係るナトリウム冷却高速増殖炉Rに用いられる緩和アセンブリ40の一例を示す軸断面図である。
図1から
図4、および
図5に共通する要素については再度の説明を行なわない。本例における原子炉Rの液体金属冷却剤はナトリウムであるが、これに限定されるものではない。
【0071】
緩和アセンブリ40は、長手軸Xに沿って延びる形状を有しており、ボックス41と上部42を備えている。ボックス41は、六角形状の断面を有する。上部42は、アセンブリヘッドを形成するとともに、UNSと称される中性子遮蔽装置を包囲する。アセンブリ40は、
図3に示されたものと同様であるが、UNSを収容する部分が異なる。
【0072】
ボックス41は、中央部43も備えている。コリウムは、中央部43内を循環する。UNS装置は、アッパーニュートロンシールディング(UNS)ヘッド105、ブロック106、ブロック107、ロック手段100、およびスラグ101を備えている。ブロック106、107の一部は、UNSヘッド105の下方に位置しており、鋼からなるか、中性子吸収材を備えうる。ロック手段100は、ボックス41から取り外し可能である。スラグ101は、UNSヘッド105の上部を形成している。
図6および
図7Aから
図7Eを参照しつつ、より詳細に説明する。
【0073】
後述するように、スラグ101は、UNSヘッド105の他の部分に対して所定の移動経路に沿って平行移動可能に搭載されている。ロック手段100は、スラグ101の長手軸に沿う変位によってUNSヘッド105とボックス41の間のロックとロック解除がなされうるように構成されている。スラグ101の変位は、UNS装置の抽出グラブ102を用いてなされる。抽出グラブ102は、スラグ101内に取り付けられた複数の爪103を備えている。
【0074】
本発明においては、緩和アセンブリ40の上部42は、円錐形の遮蔽ブロック107を備えている。遮蔽ブロック107は、ボックス41の底側を向いており、ボックス41の円錐形内面108と協働する。本発明においては、緩和アセンブリ40の上部42は、中間遮蔽ブロック106も備えている。中間遮蔽ブロック106は、UMSヘッド105と円錐形遮蔽ブロック107の間に配置されている。中間遮蔽ブロック106は、円柱形状である。円錐形遮蔽ブロック107と中間遮蔽ブロック106は、硬い鋼からなることが好ましいが、鋼の筐体内に挿入された中性子吸収材を備えてもよい。
【0075】
封止装置109が遮蔽ブロック107とボックス41の内面108の間に形成されている。封止装置109は、円錐形の遮蔽ブロック107の外面に配置されたラビリンスシールを備えていることが好ましい。あるいは、金属スクレーパセグメントによって形成されて円錐形の遮蔽ブロック107の外面に配置されたシールを備えうる。
【0076】
UNSヘッド105、中間遮蔽ブロック106、および遮蔽ブロック107により構成されるアセンブリは、緩和アセンブリ40用のリムーバブル封止プラグ110を形成している。
【0077】
円錐形の遮蔽ブロック107とボックス41における円錐形の内面108の間の空間により区画されるシール109の隙間Jは、漏れ防止性を最大とするために、実質的にゼロであることが好ましい。
【0078】
円錐形の遮蔽ブロック107は、湾曲形状を有するノーズ111を形成する頂点を備えている。円錐形の遮蔽ブロック107の湾曲形状を有するノーズ111は、アセンブリヘッドの封止面を損傷することなく遮蔽ブロック107を定位置へ下降させることを容易にするので有利である。
【0079】
遮蔽ブロックのノーズ111の周囲を延びるボックス41の内面112もまた、円錐形状である。この形状は、ナトリウムへの浸漬中および洗浄中におけるガスの滞留を防止できるので有利である。
【0080】
図6、および
図7Aから
図7Eを参照しつつ、仏国特許出願公開第3030860号明細書に記載されたものと同様のUNSヘッド105について説明する。
【0081】
アセンブリヘッド42は、ボックス41内に形成された連続的な内溝230を備えている。さらに、
図6から
図7Eに示されるように、アセンブリヘッド42は、等間隔で配列された複数の穴120を備えている。各穴120は、後述するアセンブリハンドリンググラブの爪と協働するように構成されている。UNSヘッド105は、プラグ121も備えている。スラグ101は、プラグ121の上方でUNSヘッドを形成している。スラグ101は、プラグ121に対して平行移動自在に搭載されている。但し、移動距離は所定値に限られている。プラグ121内の複数の内止め部は、当該所定の移動距離に到達すると、肩部240、241からなるスラグ101の内側と協働して互いを堅固に保持し合う。スラグ101は、連続的な内溝226を有している。内溝226は、後述するUNS抽出グラブの爪と協働するように構成されている。スラグ101は、三つの固定ピン224を内蔵している。
【0082】
UNSヘッド105は、複数のロック爪100も備えている。ロック爪100は、ピン223を中心として垂直面内で回動可能に搭載されている。三つのロック爪100が120°の間隔をあけて配列されている。使用されるロック爪の数が変更されてもよいことは勿論である。その場合、ロック爪は、リング101の周囲に沿って等角度間隔に配列されることが好ましい。各爪100は、ロック端250と貫通溝225を備えている。ロック端250は、ボックス41内に形成された連続的な内溝230と協働するように構成されている。例示された貫通溝225は、傾斜するように形成されている。スラグ101がプラグ121に向かって搭載される際の自由平行移動は、各固定ピン224の溝225内における摺動を可能にする。これにより、後述するように、UNSヘッド105の外側へ向かって垂直面内で爪100が回動され、ボックス41の内溝230に爪100が挿入される。このようにしてピン224を介して爪100に支持されたスラグ101は、UNSの内側へ向かう爪100の回動を防止するとともに溝内の定位置に爪100をロックする。
【0083】
これにより、緩和アセンブリ40のUNSヘッド105が
図6、
図7C、
図7D、および
図7Eに例示されるロック位置にあるとき、UNSヘッド105の底部は、封止ブロック106、107によって支持される。こうして側方から保持されたUNSヘッド105は、スラグ101によって下方への平行移動が防止され、上部にロックされる。爪100が溝230に挿入されることにより、上方への平行移動が防止される。
図7Aから
図7Eに示されるように、スラグ101を貫通するように配置された少なくとも一つの中空の柱231が、プラグ121に固定されると有利である。好ましくは、三つの柱231が120°の間隔をあけて配列される。使用される柱231の数が異なってもよいことは勿論であるが、プラグ121の周方向に沿って等間隔に配列されることが好ましい。
図7Aに例示されるようにプラグ121とスラグ101の分離が最大となる位置においては、柱231は突出している。各柱231は、以下の機能を発揮する。
・プラグ121とスラグ101の間の相対平行移動が行なわれている間の堅牢性を最大かするために、両要素間のスライドリンクを形成する。
・コリウムの充填を可能にするベントを形成する。
・UNSのロック解除動作中に、後述する抽出グラブ102のヘッドが爪100を機械的に強制回動させることを可能にする。
本発明に関して「抽出グラブ」という表現は、UNSヘッド105の把持グラブ102を意味する。炉心格納容器内におけるアセンブリの他の部分にUNSヘッド105を挿入する意図はないからである。すなわち、グラブ102は、炉心格納容器への挿入動作を目的とした使用を意図されていない。よって、グラブ102のヘッドは、各柱231に作用してスラグ101とUNSの残り部分の間に上方の相対変位を生じさせ、UNSがアセンブリヘッド42からロック解除されると、ナトリウム内の滞在後に生じうる機械的な焼き付き現象を緩和する。すなわち、これらの柱231により、機械的焼き付きの場合におけるロック解除時の安全が維持される。本明細書に記載された全てのロック/ロック解除手段は、機械的な焼き付きのリスクを最小化するように構成されている。他の手段の動きについて正確な調節は必要なく、全ての部品間に大きな隙間が形成されうる。焼き付きの場合に使用される柱231による強制機能は、ロック解除アセンブリをより堅牢にできる。これにより、UNSのアセンブリからのライン抽出が保証され、本発明に係るアセンブリを備えた原子炉の稼働率が上がる。
【0084】
UNSヘッド105の緩和アセンブリ40への下降工程、挿入工程、およびロック工程を、
図7Aから
図7Eを参照しつつ、時系列で説明する。これらの工程は、抽出グラブ102を用いて行なわれる。抽出グラブ102を用いたアセンブリへのUNSの挿入に係る説明は、ロック/ロック解除手段の動作を説明するためのものである。この挿入動作は、炉心格納容器外(特に外部の保管ドラム内)においても行なわれうる。抽出動作についても同様であるが、順序が逆になる。
【0085】
UNSヘッド105は、スラグ101において抽出グラブ102によって把持される。抽出グラブ102は、複数の把持爪103が垂直面内で回動自在に搭載されたヘッドを備えている。グラブヘッドは、爪103に対して平行移動自在に搭載されている。爪103は、内溝226に挿入されることにより、スラグ101を把持する。グラブ102の残りの部分に対して平行移動自在に搭載されているヘッドは、UNSヘッド105が爪103によって保持されるとき、スラグ101とプラグ121の間に軸方向の相対変位をもたらしうる。第一の工程は、接近および挿入フェーズである。当該フェーズの間、グラブ102は、UNSヘッド105を、中間遮蔽ブロック106に当接するまで長手軸X(
図7A)に沿ってアセンブリ40に挿入する。平行移動自在であるグラブ102のヘッドの垂直下方への平行移動は継続され、スラグ101のプラグ121に対する軸方向の変位をもたらす。これにより、スラグ101の下肩部とプラグ121の上肩部からなるストッパは、互いに離間する。さらに、スラグ101の垂直下方への平行移動は、爪100を外方へ強制回動させる。リング101に固定された複数のピン224の各々が、爪100に対応する溝225内を摺動するからである。外方へ回動された爪100は、ボックス41の内溝230に嵌入する。これにより、アセンブリ40内におけるUNSヘッド105の上方への変位が防止され、UNSヘッド105がロックされる。グラブ102のヘッドの下方への移動は、スラグ101がプラグ121に当接するまで(
図7C)継続される。グラブ102による把持は、爪103が内方へ回動されることにより終了される(
図7D)。その後、グラブ102は、緩和アセンブリ40から離脱される。
【0086】
そしてグラブ102が再び上昇される。UNSヘッド105は、緩和アセンブリ40内に挿入されており、ボックス41の溝230内に挿入および保持された爪100によってロックされている(
図7E)。スラグ101の重量は、ボックスを上方へ動かす垂直地震動やガスバブリングのような例外的状況において生じうる上方へのスラストに依らず、UNSヘッド105がアセンブリヘッド42内にロックされたままであることを保証する。
【0087】
緩和アセンブリ40の外側におけるUNSヘッド105のロック/ロック解除工程について時系列で説明する。
図7Eに例示されたロック位置においては、スラグ101のプラグ121に対する接触が維持されており、柱231は、スラグ101から突出している。突出高さ寸法は、スラグ101とプラグ121間の軸方向の最大相対変位量よりも僅かに小さくなるように選ばれる。
【0088】
グラブ102は、平行移動自在であるヘッドが柱231に接するまで下降される。溝226に挿入されたグラブ102の回動爪103によってスラグ101が把持された後、スラグ101は、プラグ121に対して相対的に上方へ平行移動されうる。これにより、ロック爪100が内方へ回動される。この回動は、溝225内を摺動するピン224によってもたらされる。これによって爪100がボックス41の溝230から引き出され、UNSヘッド105が緩和アセンブリ40の残り部分からロック解除される。柱231の上側水平面がスラグ101の上側水平面に到達すると、平行移動自在であるヘッドは、もはやスラグ101とプラグ121の間に軸方向の相対変位をもたらさない。よって、グラブ102の上方への平行移動のみがスラグ101の抽出を可能にする。抽出は、スラグ101の底部付近に形成された肩部204がプラグ121の上部における肩部241に接触して停止するまで継続する。UNSヘッド105は、グラブ102により持ち上げられて、アセンブリ40の外部へ抽出される。
【0089】
上記の実施形態例に本発明が限定されないことは明白である。当業者は、当該実施形態例に対して様々な改変をなしうる。