(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-26
(45)【発行日】2022-11-04
(54)【発明の名称】超音波診断装置及びプローブホルダ
(51)【国際特許分類】
A61B 8/14 20060101AFI20221027BHJP
【FI】
A61B8/14
(21)【出願番号】P 2018138561
(22)【出願日】2018-07-24
【審査請求日】2021-02-08
(73)【特許権者】
【識別番号】320011683
【氏名又は名称】富士フイルムヘルスケア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】笠原 英司
(72)【発明者】
【氏名】江田 雅斗
【審査官】最首 祐樹
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3119917(JP,U)
【文献】特開2009-125322(JP,A)
【文献】特開平10-118064(JP,A)
【文献】特開2000-333949(JP,A)
【文献】特開2005-287915(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 8/00-8/15
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
操作パネルと、
前記操作パネルに設けられたプローブホルダと、
を含み、
前記プローブホルダは、
前記操作パネルの奥行方向に並ぶ複数の縦穴からなる縦穴列と、
前記縦穴列の上部を横切るように設けられ、横姿勢を有するプローブを保持する、前記奥行方向に伸長した窪みと、
を含み、
前記各縦穴は、縦姿勢を有するプローブを保持するためのものであり、
前記窪みは、
前記縦穴列において隣り合う2つの縦穴ごとにそれらの間に設けられた中間窪み部分と、
前記奥行方向において前記縦穴列の前側に設けられた前側窪み部分と、
前記奥行方向において前記縦穴列の後側に設けられた後側窪み部分と、
を含む、ことを特徴とする超音波診断装置。
【請求項2】
請求項1記載の超音波診断装置において、
前記中間窪み部分、前記前側窪み部分及び前記後側窪み部分は、それぞれ、円筒面状に湾曲した底面を有する、
ことを特徴とする超音波診断装置。
【請求項3】
請求項2記載の超音波診断装置において、
前記複数の縦穴には、それぞれ、前記縦姿勢を有するプローブを保持するインナー部材が設けられ、
前記各インナー部材の上部には前記横姿勢を有するプローブを通過させる溝構造が設けられた、
ことを特徴とする超音波診断装置。
【請求項4】
請求項3記載の超音波診断装置において、
前記各インナー部材の溝構造は、前記各インナー部材の上部に設けられた一対の溝を含み、
前記中間窪み部分、前記前側窪み部分及び前記後側窪み部分と前記各インナー部材における前記一対の溝が一列に並んだ状態において前記横姿勢を有するプローブが保持される、
ことを特徴とする超音波診断装置。
【請求項5】
請求項3記載の超音波診断装置において、
前記複数のインナー部材における少なくとも1つのインナー部材が前記横姿勢を有するプローブを狭持する、
ことを特徴とする超音波診断装置。
【請求項6】
請求項4記載の超音波診断装置において、
前記各インナー部材は、
前記各インナー部材の上部であって前記一対の溝の間に設けられた一対の壁と、
前記縦姿勢を有するプローブから伸びるケーブルを通過させるスリットと、
を含み、
前記各インナー部材が有する一対の溝のいずれか一方に前記スリットが連通しており、
前記窪みを構成する複数の窪み部分と前記各インナー部材における前記一対の壁が一列に並んだ状態において前記各インナー部材により前記縦姿勢を有するプローブが保持される、
ことを特徴とする超音波診断装置。
【請求項7】
請求項3記載の超音波診断装置において、
前記複数のインナー部材の回転角度を一括して変更する変更機構が設けられ、
前記変更機構は、前記縦姿勢を有するプローブを保持する場合に前記各インナー部材を第1の回転角度にし、前記横姿勢を有するプローブを保持する場合に前記各インナー部材を第2の回転角度にする機構である、
ことを特徴とする超音波診断装置。
【請求項8】
超音波診断装置の奥行方向に並ぶ複数の縦穴からなる縦穴列と、
前記縦穴列の上部を横切るように設けられ、横姿勢を有するプローブを保持する、前記奥行方向に伸長した窪みと、
を含み、
前記各縦穴は、縦姿勢を有するプローブを保持するためのものであり、
前記窪みは、
前記縦穴列において隣り合う2つの縦穴ごとにそれらの間に設けられた中間窪み部分と、
前記奥行方向において前記縦穴列の前側に設けられた前側窪み部分と、
前記奥行方向において前記縦穴列の後側に設けられた後側窪み部分と、
を含む、
ことを特徴とする超音波診断用プローブホルダ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は超音波診断装置及びプローブホルダに関し、特に、プローブホルダの構造に関する。
【背景技術】
【0002】
超音波診断装置は、装置本体、操作パネル、表示器等を有する。操作パネルには、一般に、プローブホルダが取り付けられている。プローブホルダは、使用していないプローブ(超音波プローブ)を保持するものである。プローブとして、体表当接型プローブ、体腔内挿入型プローブ等が知られている。体腔内挿入型プローブとして、経膣プローブ、経直プローブ等が知られている。
【0003】
特許文献1に開示された超音波診断装置は、複数のプローブを保持する複数の保持部を有する。各保持部は、縦姿勢(上向き姿勢、起立姿勢又は垂直姿勢とも言い得る)を有するプローブを保持するものである。
【0004】
特許文献2に開示された可搬型超音波診断装置は、装置本体に着脱可能で、回転機構を有し、プローブを保持する保持部を備えている。その保持部の回転機構により、プローブを様々な姿勢で保持し得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2005-287915号公報
【文献】特開2016-144588号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
超音波診断装置のプローブホルダにおいては、一般に、プローブがその送受波面を上方に向けた姿勢(縦姿勢)で保持される。その一方、心理的な抵抗感を軽減するために、あるいは、他の理由から、横姿勢(横向き姿勢、横倒れ姿勢又は水平姿勢とも言い得る)でのプローブの保持が求められることもある。例えば、体腔内挿入型のプローブは、その全体又はその挿入部が細長い棒状の形態を有しており、そのプローブを縦姿勢で保持するならば、それを見た被検者に不安感が生じ易い。プローブホルダの交換、プローブホルダへの特殊部材の取り付け等の煩雑な作業を要することなく、縦姿勢を有するプローブ及び横姿勢を有するプローブの保持を行えるようにすることが求められている。なお、特許文献1に開示された構成では、横姿勢を有するプローブの保持は行えない。特許文献1及び特許文献2に開示された構成を組み合わせたとしても、装置本体に着脱可能で、回転機構を有する保持部を備える超音波診断装置という構成しか想起できない。その構成を前提として、プローブを横姿勢で保持するには、装置本体に対して垂直方向(鉛直方向)に保持部それ自体を回転させる必要がある。
【0007】
本発明の目的は、縦姿勢及び横姿勢の内で選択された姿勢でプローブを保持できるプローブホルダを提供することにある。あるいは、本発明の目的は、横姿勢を有するプローブを簡便に保持できるプローブホルダを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る超音波診断装置は、操作パネルと、前記操作パネルに設けられたプローブホルダと、を含み、前記プローブホルダは、縦姿勢を有するプローブを保持する少なくとも1つの縦穴と、前記少なくとも1つの縦穴の上部を横切るように設けられ、横姿勢を有するプローブを保持する窪みと、を含むことを特徴とする。
【0009】
本発明に係るプローブホルダは、縦姿勢を有する複数のプローブを保持する複数の縦穴と、前記複数の縦穴の上部を横切るように設けられ、横姿勢を有するプローブを保持する窪みと、を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、縦姿勢及び横姿勢の中から選択された姿勢でプローブを保持できるプローブホルダを提供できる。あるいは、本発明によれば、横姿勢を有するプローブを簡便に保持できるプローブホルダを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】実施形態に係る超音波診断装置を示す斜視図である。
【
図2】2つのプローブホルダを備える枠体の平面図である。
【
図5】横姿勢を有する経膣プローブの保持状態を示す平面図である。
【
図6】横姿勢を有する経膣プローブの保持状態を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、実施形態を図面に基づいて説明する。
【0013】
(1)実施形態の概要
実施形態に係る超音波診断装置は、操作パネルと、操作パネルに設けられたプローブホルダと、を含む。プローブホルダは、縦姿勢を有するプローブを保持する少なくとも1つの縦穴と、少なくとも1つの縦穴の上部を横切るように設けられ、横姿勢を有するプローブを保持する窪みと、を含む。窪みは少なくとも1つの縦穴の上部を横切っており、そのような窪みに横姿勢を有するプローブの全部又は一部が収容されつつそれが保持される。保持のための窪みがプローブホルダ自身に形成されているので、プローブホルダに対して窪みを有する特別な部材を取り付ける必要はない。すなわち、横姿勢を有するプローブの保持を簡便に行える。実施形態において、縦穴は、通常、上下方向に貫通した穴である。それを非貫通の穴として構成することも考えられる。窪みは、上側が開いたトレイ、凹部又は収容部である。
【0014】
実施形態において、プローブホルダは操作パネルの奥行方向に並ぶ複数の縦穴を有し、窪みは、複数の縦穴の上部を横切りながら奥行方向に伸長した形態を有する。この構成は、プローブホルダの上面側における奥行方向に伸びた空間を利用して、横向き姿勢にあるプローブの保持を行うものである。特に、プローブの全体又はその挿入部が棒状の形態を有する場合において、上記構成が効果的に機能する。奥行方向は、操作パネルの手前側から装置奥側へ向く方向であり、操作パネルの左右方向に対して必ずしも直交していなくてもよい。プローブホルダ又は窪みが奥行方向に傾斜していてもよい。
【0015】
実施形態において、複数の縦穴には、それぞれ、縦姿勢を有するプローブを保持するインナー部材が設けられ、各インナー部材の上部には横姿勢を有するプローブを通過させる溝構造が設けられる。この構成によれば、各インナー部材の上部に溝構造が設けられているので、横姿勢にあるプローブを保持する際に、各インナー部材の上部が邪魔にならなくなる。
【0016】
実施形態において、各インナー部材の溝構造は、各インナー部材の上部に設けられた一対の溝を含み、窪みを構成する複数の窪み部分と各インナー部材における一対の溝が一列に並んだ状態において横姿勢を有するプローブが保持される。この構成によれば、複数の窪み部分及び複数の溝からなる空間に横姿勢を有するプローブの一部又は全部が収容される。
【0017】
実施形態において、複数のインナー部材における少なくとも1つのインナー部材が横姿勢を有するプローブを狭持する。この構成によれば、プローブを拘束して、プローブホルダからのプローブの脱落を防止又は軽減できる。
【0018】
実施形態において、各インナー部材は、各インナー部材の上部であって一対の溝の間に設けられた一対の壁と、縦姿勢を有するプローブから伸びるケーブルを通過させるスリットと、を含み、各インナー部材が有する一対の溝のいずれか一方にスリットが連通しており、窪みを構成する複数の窪み部分と各インナー部材における一対の壁が一列に並んだ状態において各インナー部材により縦姿勢を有するプローブが保持される。
【0019】
上記構成によれば、電子走査方向に肥大した先端部とそれに連なるグリップ部分とを有するプローブを縦姿勢で保持する際に、肥大した先端部の両端部分が各インナー部材の一対の壁によって支持される。
【0020】
実施形態においては、複数のインナー部材の回転角度を一括して変更する変更機構が設けられ、変更機構は、縦姿勢を有するプローブを保持する場合に各インナー部材を第1の回転角度にし、横姿勢を有するプローブを保持する場合に各インナー部材を第2の回転角度にする機構である。この構成によれば、複数のインナー部材の回転角度を一括して設定できる。例えば、各インナー部材を第1の回転角度にした場合、各インナー部材の上部に形成された一対の壁が奥行方向に並び、各インナー部材を第2の回転角度にした場合、各インナー部材の上部に形成された一対の溝が奥行方向に並ぶ。
【0021】
実施形態に係る超音波診断用プローブホルダは、縦姿勢を有する複数のプローブを保持する複数の縦穴と、複数の縦穴の上部を横切るように設けられ、横姿勢を有するプローブを保持する窪みと、を含む。プローブホルダは、可動体としての操作パネルに取り付けられるのが望ましいが、超音波診断装置における他の箇所(例えば装置本体)に取り付けられてもよい。操作パネルの右側及び左側にそれぞれプローブホルダが設けられる構成において、右側及び左側の一方だけに窪み付きプローブホルダを配置してもよい。上記プローブホルダは、特に、細長い棒状の形態を有するプローブの保持において効果的に機能するものである。そのようなプローブとして経膣プローブ、経直プローブ等が知られている。
【0022】
(2)実施形態の詳細
図1の左側には、実施形態に係る超音波診断装置が示されている。図示された超音波診断装置10は、病院等の医療機関に設置され、生体(被検者)に対して超音波を送受波することにより超音波画像を形成する装置である。
図1の右側には、超音波診断装置10の一部分が拡大図として示されている(符号12を参照)。
【0023】
超音波診断装置10はカート式の超音波診断装置であり、箱状の本体14を有している。本体14の下部には4つのキャスタが設けられている。本体14の内部には、複数の電子回路基板や電源部が設けられている。本体14の前面には4つのコネクタが設けられている。それらのコネクタにはそれぞれプローブが接続される。本体14に対して、例えば最大で4つのプローブを同時に接続することが可能である。その中から実際に使用するプローブが選択される。もちろん、本体14に対して1つのプローブが接続されてもよい。
【0024】
操作パネル16は、本体14に設けられた昇降機構(図示せず)により支持されている。操作パネルの奥側にはアーム機構18が設けられ、そのアーム機構18の端部に表示器20が取り付けられている。表示器20は、液晶表示器、有機EL表示器、その他である。操作パネル16は、複数のスイッチ、複数のボタン、トラックボール等を有する入力デバイスである。操作パネル16を利用してユーザー(医師、検査技師等)により動作モードが選択され、また動作条件が設定される。操作パネル16、アーム機構18及び表示器20は可動部を構成する。
【0025】
操作パネル16には枠体24が取り付けられている。操作パネル16と枠体24は一体化されており、操作パネル16の運動に伴って枠体24も運動する。枠体24は、操作パネル16の右側及び左側に設けられた2つのプローブホルダと、操作パネル16の前側に設けられたハンドルと、からなるものである。なお、
図1において、X方向は本体14の左右方向であり、Y方向は本体14の奥行方向であり、Z方向は高さ方向(垂直方向)である。操作パネル16は、本体14に対して旋回可能及び昇降可能に設けられている。なお、操作パネル16を基準として、操作パネル16の左右方向及び操作パネル16の奥行方向が定義される。
【0026】
図1の右側に示されている拡大図は、枠体における右側のプローブホルダ28を示すものである(符号12を参照)。プローブホルダ28は、奥行方向に並んだ3つの保持部34A,34B,34Cを有する。図示されるように、例えば、保持部34Aによって、経膣プローブ38が縦姿勢で保持される。経直プローブその他が同様の態様で保持されてもよい。棒状のプローブを縦姿勢で保持すると、それを見た被検者において不安感又は抵抗感が生じ易い。そこで、プローブホルダ28には、プローブ38を横姿勢で保持するための窪み36も形成されている。
【0027】
図2は、操作パネル16及び枠体24を示す平面図である。操作パネル16は、パネル本体16Aとタッチパネル付き表示器16Bを備えている。操作パネル16を取り囲むように、操作パネル16に対して枠体24が取り付けられている。枠体24の形態はU字状である。枠体24は、フレーム26を有し、それは相互に連結された右側部分26R、中間部分26F及び左側部分26Lからなる。右側部分26Rは、プローブホルダ28の本体29を構成しており、左側部分26Lは、プローブホルダ30の本体31を構成している。中間部分26Fはハンドルとして機能している。フレーム26は、例えば、金属又は樹脂によって構成される。なお、x方向が操作パネル16の左右方向であり、y方向が操作パネル16の奥行方向である。
【0028】
右側のプローブホルダ28と左側のプローブホルダ30は、基本的に互いに同一の形態(正確には互いに対称の形態)を有している。但し、右側のプローブホルダ28は、棒状のプローブを横姿勢で保持する機能を備えているが、左側のプローブホルダ30はそのような機能を備えていない。左側のプローブホルダに当該機能を設けることも可能である。
【0029】
具体的に説明すると、プローブホルダ28は、奥行方向に並んだ3つの保持部34A,34B,34Cを有する。それらにより保持部列が構成される。各保持部34A,34B,34Cは、インナー部材としてのカップ46及びそれを収容し且つ保持する縦穴42を有している。奥行方向に並ぶ複数の縦穴42により縦穴列が構成される。各カップ46は、下方に向かって先細となった円錐状又は円筒状の形態を有している。各カップ46は弾力性又は柔軟性のある材料(エラストマー)によって構成されており、それは上下方向に沿って形成されたスリット48を有している。スリット48の奥端部がケーブル挿通路として機能している。すなわち、各カップ46は底を有するが、その底にはケーブル挿通路が設けられている。
【0030】
各縦穴42は、上下方向に貫通した穴又は開口である。それらはフレーム26における左側部分26Lに形成されている。プローブホルダ28においては、複数の保持部34A,34B,34Cの上部を横切るように、より具体的には、複数の縦穴42の上部を横切るように、窪み36が設けられている。窪み36は、トレイ状又は皿状の形態を有し、その底面は円筒面のように湾曲しているが、その底面が平坦な面であってもよい。但し、窪み36から横姿勢を有するプローブが容易に脱落しないように窪み36にプローブを固定する手段を設けるのが望ましい。窪み36は、3つの縦穴42によって分断されており、具体的には、窪み36は、奥行方向において縦穴列の前側に設けられた前側部分36a、奥行方向において隣り合う2つの縦穴42ごとにそれらの間に設けられた中間部分36b,36c及び奥行方向において縦穴列の後側に設けられた後側部分36dを有する。
【0031】
各縦穴42内において、各カップ46は回転可能であり、
図1においてそれらは第1の回転角度にある。各カップ46の上部には、溝構造としての一対の溝が形成されており、それらの間に一対の壁が構成されている。複数のカップ46が第1の回転角度にある場合、各カップ46のスリット48と縦穴42の縦溝44とが揃っている。その状態では、一対の壁の並び方向が奥行方向(y方向)に一致している。各保持部34A,34B,34Cにおいて、電子走査方向に肥大した先端部を有するプローブが縦姿勢で保持され得る。その場合、各保持部34A,34B,34Cの一対の壁によって先端部が支えられる。その場合、電子走査方向が奥行方向になるようにプローブの向きが調整される。一方、棒状のプローブが窪み36によって保持される場合、各カップ46が90度回転され、それらの回転角度が第2の回転角度とされる。その場合、各カップ46における一対の溝の並び方向が奥行方向に一致する。その状態については後に
図3以降の各図を参照しながら詳述する。プローブホルダ28の奥側端部には縦穴50が設けられている。例えばゼリーフォーマーを設ける場合、それが縦穴50に配置される。
【0032】
左側のプローブホルダ30も、奥行方向に並ぶ3つの保持部40A,40B,40Cを有する。各保持部40A,40B,40Cはカップ及びそれを収容した縦穴を有している。但し、
図2においては、3つの保持部40A,40B,40Cに設けられた3つのカップが図示省略されている。プローブホルダ30には奥行方向に沿った窪みは設けられていないが、それを設けるようにしてもよい。プローブホルダ30は本体31を有し、その本体31はフレーム26の左側部分26Lによって構成されている。プローブホルダ30の奥側端部にも、ゼリーウォーマー等が設置される縦穴が設けられている。
【0033】
図3には、棒状のプローブを横姿勢で保持可能な状態が示されている。既に説明した要素には同一符号を付しその説明を省略する。このことは他の図においても同様である。
【0034】
各カップ46の回転角度は第2の回転角度とされている。具体的には、各カップ46の上部には、既に説明したように、一対の溝52,54が設けられており、それらの間に一対の壁56,58が設けられている。一対の溝52,54の並び方向が奥行方向に一致している。窪み36は、前側部分36a、中間部分36b、中間部分36c及び後側部分36dを有し、それらはいずれも円弧状に湾曲した底面を有している。各保持部34A,34B,34Cが有する縦溝の上部に一対の切欠きが構成されている。それらの切欠きは窪み36を構成する各部分36a,36b,36c,36dに連なっている。それらの各部分36a,36b,36c,36dと複数の溝52,54が奥行方向に整列しており、これによって棒状のプローブを横姿勢で受け入れることが可能な大きな窪み100が構成されている。
図4には正面から見た窪み100が示されている。窪み100の底面100Aは円弧状である。
【0035】
図5及び
図6には、窪み100を利用した経膣プローブ38の保持状態が示されている。
図6において、経膣プローブ38は、送受波部としてのヘッド38a、それに連なる挿入管38b、及び、それに連なるグリップ38cを有している。グリップ38cからケーブルが引き出されている。3つのカップ46A,46B,46Cの回転角度は第2の回転角度であり、それらのカップ46A,46B,46Cにおける一対の溝の並び方向が奥行方向となっている。
【0036】
図5及び
図6において符号62及び符号64で示す位置において、経膣プローブが挟持されている。具体的には、最も手前側のカップ46A(
図6)が有する一対の溝に対して経膣プローブ38のグリップ38cがはめ込まれ、換言すれば、そのカップ46Aによってグリップ38cが弾性的に挟持されている。その状態において、ヘッド38a及び挿入管38bの下側の一部分が窪み100内に収容されているものの、ヘッド38a及び挿入管38bは窪み100には接触していない。
図6において符号66で示すようにヘッド38aが窪み100の底面から一定の間隙をおいて浮いた状態にある。逆に言えば、そのような状態が構成されるように、窪み100の形態及びカップ46A,46B,46Cの形態が定められる。ちなみに、カップ46A,46B,46Cは互いに同一の形態を有している。3つの経膣プローブ38の固定のために他の手段を利用するようにしてもよい。
【0037】
実施形態の構成によれば、経膣プローブの動きを拘束できるのでその脱落を防止又は軽減できる。また、その固定に際して既存の部材を活用できるので、固定のための専用部材を配置する場合に比べて、部品点数を削減できる。更に、ヘッド等が浮上した状態で経膣プローブが保持されるので、その部分が傷付くことを防止でき、衛生面でも有利である。なお、実際の超音波診断時には、一般に、ヘッド及び挿入部がカバーで覆われる。
【0038】
図7には、変更機構68が模式的に示されている。変更機構68は、3つのカップ46A,46B,46Cの向きを一括して設定する機構である。変更機構68は、3つのカップ46A,46B,46Cに取り付けられた3つの環状ピニオン70A,70B,70C、直線運動するスライダ72、及び、スライダ72に設けられたラック(直線歯車)74を有する。ラック74に対して3つの環状ピニオン70A,70B,70Cが噛み合っている。
図7に示した状態において、3つのカップ46A,46B,46Cの回転角度は、第2の回転角度にある。その状態において、スライダ72に設けられた摘み76を操作して、スライダ72を-y方向へ運動させると、3つのカップ46A,46B,46Cが反時計回りに90度回転し、それらの回転角度が第1の回転角度となる。その後、摘み76を操作して、スライダ72を+y方向へ運動させると、3つのカップ46A,46B,46Cが時計回りに90度回転し、それらの回転角度が第2の回転角度となる。
【0039】
このような変更機構68によれば、摘みの操作だけで3つのカップの回転角度を一括して設定することが可能であり、個々のカップの向きを手作業で設定する場合に比べて、ユーザー負担を大幅に軽減できる。
図7に示した機構以外の機構を利用してもよい。また、駆動源を設けてカップを電気的に回転させてもよい。上記プローブホルダを操作パネルに設ければ操作性が良好となる。但し、上記プローブホルダを操作パネル以外の部材(装置本体、スタンド等)に設けることも考えられる。
【符号の説明】
【0040】
10 超音波診断装置、16 操作パネル、24 枠体、28 プローブホルダ、34A,34B,34C 保持部、36,100 窪み、42 縦穴、46 カップ。