(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-26
(45)【発行日】2022-11-04
(54)【発明の名称】折戸
(51)【国際特許分類】
E05D 15/48 20060101AFI20221027BHJP
E05D 15/26 20060101ALI20221027BHJP
【FI】
E05D15/48 Z
E05D15/26
(21)【出願番号】P 2018141285
(22)【出願日】2018-07-27
【審査請求日】2021-04-19
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 コマニー株式会社が平成30年4月1日に発行したカタログ「Dear-d(ディアード)」の第8ページに公開
(73)【特許権者】
【識別番号】000105693
【氏名又は名称】コマニー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100154966
【氏名又は名称】海野 徹
(72)【発明者】
【氏名】太田 幸恵
【審査官】秋山 斉昭
(56)【参考文献】
【文献】欧州特許出願公開第1342442(EP,A1)
【文献】特開平10-140925(JP,A)
【文献】実開昭58-57472(JP,U)
【文献】仏国特許出願公開第2383298(FR,A1)
【文献】実開昭57-68087(JP,U)
【文献】特開平8-165837(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05D 15/48
E05D 15/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
吊元側の軸に回転自在に支持される子ドア、ジョイントを介して子ドアに連結される親ドア、上レールの内部を移動するランナーを備えており、前記ランナーは下方にのびるピンを介して前記親ドアと連結されており、前記親ドアが前記ランナーに案内されながら扉枠の開口に対して直交する方向に回転する折戸において、
前記ランナーを上下動させる上下動機構を備えており、非常時に前記上下動機構を操作して前記ピンを前記親ドアの内部に移動させ、前記ランナーを前記上レールの外部に移動させる
ものであり、
前記上下動機構が、前記ピンの下端に固定されるランナー受けと、前記ランナー受けを前記親ドアの内部に脱着自在に固定するためのねじを備えており、前記ねじの頭部が前記親ドアの表面に露出しており、
非常時に前記ねじを前記親ドアから抜き取ることで前記ランナー受けは前記ピンと共に自重により前記親ドアの内部に落下し、前記ランナーが前記上レールの外部に移動することを特徴とする折戸。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通常時は扉が内開きで、非常時に外開きに変更できる折戸に関する。
【背景技術】
【0002】
複数枚の扉をジョイントを介して折り畳み可能に連結した折戸が知られている。折戸をトイレブース等で使用する際には開動作の際に扉の大部分が使用者の側に移動するいわゆる内開き扉が採用されることが多い。
使用者がブース内で意識不明で倒れている等の非常時には、使用者が邪魔になるためブース外の救助者が扉を内側に開くことが困難になる。そこで、非常時に所定の操作により扉を外開きに変更できる構造が知られている。
【0003】
例えば特許文献1には、吊元側の軸に回転自在に支持された子ドア、ジョイントを介して子ドアに連結された親ドア、上レールの内部を移動する吊車(ランナー)、吊車から下方にのびる吊ボルト、親ドアの側面の上端部にネジピンで固定されたブラケット等から成る折戸装置が開示されている。吊ボルトはブラケットに固定されている。通常時にドアを開くべく親ドアに外力を作用させると、吊車は上レールの内部を移動し、親ドアは吊車に案内されながら扉枠の開口に対して直交する方向に回転し、ジョイントは内側方向に移動していく。親ドアと子ドアがほぼ平行に重なった状態でドアの内開き動作が完了する。
非常時にはブース外の救助者がネジピンを緩めてブラケットを親ドアから取り外す。ブラケットが取り外された親ドアはジョイントを介して子ドアに連結されただけの状態になるので、救助者が親ドアを手前に引くことで親ドアは扉枠の開口に対して直交する方向に回転し、ドアの外開き動作が完了する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記特許文献1に開示された技術では次のような問題がある。
ブラケットを用いるため吊戸の部品点数が増えて施工に時間がかかるという問題、上レールが親ドアの直上からずれた位置にあり折戸の前後方向に厚みが生じたり、ブラケットが露出していたりするため意匠上好ましくないという問題がある。
【0006】
本発明は、このような問題を考慮して、部品点数が少なく意匠性に優れた折戸を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の折戸は、吊元側の軸に回転自在に支持される子ドア、ジョイントを介して子ドアに連結される親ドア、上レールの内部を移動するランナーを備えており、前記ランナーは下方にのびるピンを介して前記親ドアと連結されており、前記親ドアが前記ランナーに案内されながら扉枠の開口に対して直交する方向に回転する折戸において、前記ランナーを上下動させる上下動機構を備えており、非常時に前記上下動機構を操作して前記ピンを前記親ドアの内部に移動させ、前記ランナーを前記上レールの外部に移動させるものであり、前記上下動機構が、前記ピンの下端に固定されるランナー受けと、前記ランナー受けを前記親ドアの内部に脱着自在に固定するためのねじを備えており、前記ねじの頭部が前記親ドアの表面に露出しており、非常時に前記ねじを前記親ドアから抜き取ることで前記ランナー受けは前記ピンと共に自重により前記親ドアの内部に落下し、前記ランナーが前記上レールの外部に移動することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明の折戸は上下動機構を利用してピンを親ドアの内部に移動させてランナーを上レールの外部に移動させる。従来のように親ドアの表面に取り付けたブラケットを介してランナーと親ドアを連結する構成と比較して、ブラケットが不要になるため部品点数を抑えることができ、施工性を向上させることができる。また、ブラケットが不要になるため意匠性を向上させることができる。
また、親ドアの直上に上レールを配置できるため折戸の前後方向の厚みを抑えることができる。
上下動機構としてランナー受けとねじを用いることにすれば、ねじを引き抜くだけでランナーをランナー受けと一体に落下させて上レールの外部に移動させることができるので、部品点数を抑制でき且つ外開きに必要な操作をシンプルで分かりやすくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図3】折戸の外開き動作を示す縦断面図(a)~(c)
【
図6】第2の実施の形態の折戸の正面図(a)及び上下動機構を示す斜視図(b)
【
図7】第3の実施の形態の上下動機構の動作を示す縦断面図(a)及び(b)
【
図8】上下動機構の変形例の動作を示す縦断面図(a)及び(b)
【
図9】第4の実施の形態の上下動機構の動作を示す縦断面図(a)及び(b)
【
図10】上下動機構の変形例の動作を示す正面図(a)及び(b)
【発明を実施するための形態】
【0010】
[第1の実施の形態]
本発明の折戸の第1の実施の形態について説明する。本実施の形態では折戸をトイレブースの扉として使用するが、トイレブース以外に使用してもよい。
図1~
図3に示すように、折戸1は子ドア10、親ドア20、ランナー30、上下動機構40を備える。
子ドア10は扉枠2の吊元側の軸3に回転自在に支持されている。
親ドア20はジョイント4を介して子ドア10に連結されている。
ランナー30は扉枠2に取り付けられた上レール5の内部を移動する。上レール5の下端は内側に屈曲せずに垂直方向にのびている。
ランナー30は下方にのびるピン31を備えており、ピン31を介して親ドア20の上面の戸先側の端部と連結している。なお、「ピン31」は棒状の部材であればよく、ボルトであってもよい。
【0011】
上下動機構40はランナー30を上下動させるための機構であり、ランナー受け41とねじ42を備える。
ランナー受け41は金属等から成る直方体であり、その上面にピン31の下端が固定されている。親ドア20の戸先にはその上面から内部に至る直方体の空間21が形成されており、この空間21の内部にランナー受け41が収容されている。そして、後述するように空間21内をランナー受け41が上下動する仕組みになっている。
ねじ42はランナー受け41を空間21の内部に脱着自在に固定するための部材である。ねじ42は親ドア20の側面のうち外側(通路側)に取り付けられている。
図1に示すように本実施の形態では左右2本のねじ42を使用している。
ねじ42のねじ部42aは親ドア20の側面から水平方向に空間21の内部までのびており、ランナー受け41の側面に形成されたねじ穴41aに螺合している。ねじ42の頭部42bは親ドア20の表面に露出している。
【0012】
以上のとおり、ピン31はランナー受け41の上面に固定されている。また、ランナー受け41はねじ42で親ドア20に固定されている。これによりピン31を介して親ドア20とランナー30とが連結される構造になっている。ランナー30はその側面を上レール5の内面に接触させながら親ドア20と一体となって上レール5の内部を移動する。なお、ランナー30は親ドア20の荷重を支えていない。親ドア20の荷重はジョイント4を介して子ドア10に伝達され、子ドア10の軸3で支えられる。
【0013】
次に、折戸1の動作について説明する。
図4に示すように通常時はトイレブース100の外に居る人が親ドア20を押す又はトイレブース100の内に居る人が親ドア20を引いて外力を作用させるとランナー30は上レール5の内部を吊元側に移動する。親ドア20の戸先はランナー30と一体となって吊元側に移動し、ジョイント4は内側方向に移動する。このように親ドア20はランナー30に案内されながら扉枠の開口6に対して直交する方向に回転していき、親ドア20と子ドア10がほぼ重なった時点でドアの内開き動作が完了する。
【0014】
非常時、例えば使用者がブース内で意識不明になる等の際には使用者が邪魔になってトイレブース100外の救助者が折戸1を内側に開くことが困難になる。
そこで、救助者はドアロックが掛かっている場合には所定の操作によりドアロックを解除する。次に救助者は上下動機構40を操作する。すなわち
図3(b)に示すように親ドア20の表面に露出しているねじ42の頭部42bを回してねじ42を親ドア20から抜き取る。ランナー受け41のねじ穴41aに螺合していたねじ42を抜き取ることでランナー受け41は自重により空間21内を落下する。ランナー受け41と共にピン31及びランナー30も落下し、ピン31は空間21内に移動し、ランナー30は上レール5から外部に出た状態になる。本実施の形態ではランナー30が親ドア20の上面に引っ掛かった状態になるが、空間21の上部をランナー30が収まる程度に拡げておくことでランナー30も空間21内に移動することにしてもよい。
ランナー30が上レール5から外れることで親ドア20の戸先側が自由端になる。
図3(c)及び
図5に示すように救助者が親ドア20を手前に引くと親ドア20はジョイント4を中心としてその戸先側が外側(通路側)に移動する。以上で非常時の折戸の外開き動作が完了する。
【0015】
[第2の実施の形態]
次に、本発明の折戸の第2の実施の形態について説明するが、上記第1の実施の形態と同様の構成となる箇所については同一の符号を付してその説明を省略する。
図6に示すように、本実施の形態では上下動機構がいわゆるねじ歯車やかさ歯車(ベベルギヤ)と呼ばれる2個の歯車50,51を用いて軸角を変えることができる機構を備える点に特徴を有する。
具体的には第1の実施の形態のねじ42の替わりにハンドル52を用いており、手回しハンドルの軸52aの先端に一方の歯車50を取り付けている。また、ピン31の下端に他方の歯車51を取り付けている。これら2個の歯車50,51は噛み合わされており、非常時に救助者がハンドル52を回すことでピン31を下方に移動させ、ランナー30を上レール5から外すことができる。ランナー30が上レール5から外れた後の折戸1の外開き動作は第1の実施の形態と同様であるため説明を省略する。
【0016】
[第3の実施の形態]
次に、本発明の折戸の第3の実施の形態について説明するが、上記各実施の形態と同様の構成となる箇所については同一の符号を付してその説明を省略する。
図7に示すように、本実施の形態では上下動機構がプッシュボルトを備える点に特徴を有する。
具体的には、親ドア20の内部に格納された筐体60の内部に側面視クランク形状のレバー61が格納されている。レバー61の上側の端部はピン31に固定されており、下側の端部は筐体の2つの開口60a,60bのうち下側の開口60bから外部に露出することで操作部62を構成している。また、レバー61の鉛直部分にボタン63が形成されている。ピン31の下端にはバネ64が取り付けられている。
【0017】
図7(a)に示す通常状態から非常時に救助者がバネ64の付勢力に抗して操作部62を押し下げていくと、
図7(b)に示すようにピン31も下方に移動していき、ボタン63が上側の開口60aに嵌まり込むことでレバー61を係止できる。レバー61を下方で係止することでランナー30を上レール5から外すことができる。非常状態から通常状態に戻すにはボタン63を押せばよい。筐体60内の弾性体65が弾性変形してボタン63が上側の開口60aから外れることでレバー61の係止が解除される。そして、バネ64の付勢力によってピン31はレバー61と一体に上方に移動し、ランナー30が上レール5の内部に移動する。
なお、
図8(a)に示すように筐体60内の枠体66の一部に開口67を設けておき、この開口67にボタン68を嵌め込むことでレバー69を係止する構造にしてもよい。この場合、
図8(b)に示すようにレバー69の操作部69aを手前に引くことでレバー69の係止を解除できる。
【0018】
[第4の実施の形態]
次に、本発明の折戸の第4の実施の形態について説明するが、上記各実施の形態と同様の構成となる箇所については同一の符号を付してその説明を省略する。
本実施の形態では上下動機構がフランス落としを備える点に特徴を有する。
図9に示すフランス落とし70は上下2つの凹部71a,71b及び操作部71cを備えるプレート受け71と、1つの凸部72aを備えるプレート72で構成される。プレート受け71の上端にピン31が固定されている。プレート72は筐体(図示略)内に固定されている。
【0019】
図9(a)に示す通常状態から非常時に救助者が操作部71cを押し下げていくと、
図9(b)に示すようにプレート受け71及びピン31も下方に移動していき、上側の凹部71aに凸部72aが嵌まり込むことでプレート受け71を係止できる。プレート受け71を下方で係止することでランナー30を上レール5から外すことができる。非常状態から通常状態に戻すには操作部71cを押し上げればよい。ピン31はプレート受け71と一体に上方に移動し、
図9(a)に示すように下側の凹部71bに凸部72aが嵌まり込むことでプレート受け71が上方で係止され、ランナー30が上レール5の内部に移動する。
また、上下動機構として
図10に示すような上下2箇所の切り欠き部80a,80bのいずれかに落し棒81を引っ掛けることで上下2段階に位置決めできるいわゆる丸落とし82を使用してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0020】
本発明は、部品点数が少なく意匠性に優れた折戸に関するものであり、産業上の利用可能性を有する。
【符号の説明】
【0021】
1 折戸
2 扉枠
3 軸
4 ジョイント
5 上レール
6 扉枠の開口
10 子ドア
20 親ドア
21 空間
30 ランナー
31 ピン
40 上下動機構
41 ランナー受け
41a ねじ穴
42 ねじ
42a ねじ部
42b 頭部
50,51 歯車
52 ハンドル
52a 軸
50 一方の歯車
51 他方の歯車
60 筐体
60a 上側の開口
60b 下側の開口
61 レバー
62 操作部
63 ボタン
64 バネ
65 弾性体
66 枠体
67 開口
68 ボタン
69 レバー
69a 操作部
70 フランス落とし
71 プレート受け
71a,71b 凹部
71c 操作部
72 プレート
72a 凸部
80a,80b 切り欠き部
81 落し棒
82 丸落とし
100 トイレブース