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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-26
(45)【発行日】2022-11-04
(54)【発明の名称】車両用灯具システム
(51)【国際特許分類】
   B60Q 1/24 20060101AFI20221027BHJP
   F21S 41/13 20180101ALI20221027BHJP
   F21S 41/62 20180101ALI20221027BHJP
   F21S 41/65 20180101ALI20221027BHJP
   F21W 102/19 20180101ALN20221027BHJP
   F21W 102/20 20180101ALN20221027BHJP
【FI】
B60Q1/24 Z
F21S41/13
F21S41/62
F21S41/65
F21W102:19
F21W102:20
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2018158494
(22)【出願日】2018-08-27
(65)【公開番号】P2020032760
(43)【公開日】2020-03-05
【審査請求日】2021-07-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000001133
【氏名又は名称】株式会社小糸製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(74)【代理人】
【識別番号】100109047
【弁理士】
【氏名又は名称】村田 雄祐
(74)【代理人】
【識別番号】100109081
【弁理士】
【氏名又は名称】三木 友由
(72)【発明者】
【氏名】北澤 達磨
(72)【発明者】
【氏名】向島 健太
【審査官】山崎 晶
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/110415(WO,A1)
【文献】特開2005-350010(JP,A)
【文献】特開2016-018668(JP,A)
【文献】特開2002-274258(JP,A)
【文献】特開2008-135856(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60Q 1/24
F21S 41/13
F21S 41/62
F21S 41/65
F21W 102/19
F21W 102/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の左側に設けられ、赤外の左プローブ光を照射する左赤外照明と、
前記車両の右側に設けられ、赤外の右プローブ光を照射する右赤外照明と、
を備え、
前記左プローブ光の照射領域と前記右プローブ光の照射領域は異なり、
前記左赤外照明と前記右赤外照明の一方である遠方照明は、主として遠方を照射する配光を有し、
前記左赤外照明と前記右赤外照明の他方である側方照明は、主として側方を幅広く照射する配光を有し、
前記遠方照明が照射するプローブ光の強度は、直線路走行時の方が、曲路走行時よりも高いことを特徴とする車両用灯具システム。
【請求項2】
前記左プローブ光と前記右プローブ光それぞれの強度、および/または前記左赤外照明と前記右赤外照明それぞれの配光は、走行シーンに応じて独立に適応的に制御されることを特徴とする請求項1に記載の車両用灯具システム。
【請求項3】
前記側方照明が照射するプローブ光の強度は、曲路走行時の方が、直線路走行時よりも高いことを特徴とする請求項に記載の車両用灯具システム。
【請求項4】
車両の左側に設けられ、赤外の左プローブ光を照射する左赤外照明と、
前記車両の右側に設けられ、赤外の右プローブ光を照射する右赤外照明と、
を備え、
前記左プローブ光の照射領域と前記右プローブ光の照射領域は異なり、
前記左赤外照明と前記右赤外照明の一方である遠方照明は、主として遠方を照射する配光を有し、
前記左赤外照明と前記右赤外照明の他方である側方照明は、主として側方を幅広く照射する配光を有し、
前記側方照明が照射するプローブ光の強度は、曲路走行時の方が、直線路走行時よりも高いことを特徴とする車両用灯具システム。
【請求項5】
前記遠方照明の配光および/またはそれが生成するプローブ光の強度は、車速に応じていることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の車両用灯具システム。
【請求項6】
前記側方照明の配光および/またはそれが生成するプローブ光の強度は、操舵角に応じていることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の車両用灯具システム。
【請求項7】
前記側方照明の配光は、中央が暗く、左右両側に中央より明るい領域を有することを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の車両用灯具システム。
【請求項8】
前記左赤外照明は、配光可変ランプとともに左ヘッドランプに内蔵され、
前記右赤外照明は、配光可変ランプとともに右ヘッドランプに内蔵されることを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載の車両用灯具システム。
【請求項9】
前記側方照明は、対向車線側のヘッドランプに内蔵され、
前記遠方照明は、それと反対側のヘッドランプに内蔵されることを特徴とする請求項に記載の車両用灯具システム。
【請求項10】
赤外線に感度を有するカメラをさらに備え、
前記配光可変ランプの配光パターンは、前記プローブ光を前記カメラで撮影して得られる画像にもとづいて制御されることを特徴とする請求項8または9に記載の車両用灯具システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用灯具システムに関する。
【背景技術】
【0002】
夜間やトンネル内での安全な走行に車両用灯具が重要な役割を果たす。運転者による視認性を優先させて、車両前方を広範囲に明るく照射すると、自車前方に存在する先行車や対向車の運転者や歩行者にグレアを与えてしまうという問題がある。
【0003】
近年、車両の周囲の状態にもとづいて、ヘッドランプの配光パターンを動的、適応的に制御するADB(Adaptive Driving Beam)技術が提案されている。ADB技術は、前方車や歩行者の有無を検出し、前方車あるいは歩行者に対応する領域を減光あるいは消灯するなどして、前方車の運転者や歩行者に与えるグレアを低減するものである。ADB制御や自動運転では、先行車や対向車、歩行者(以下、物標と総称する)の検出が極めて重要である。
【0004】
図1は、ヘッドランプの配光を模式的に示す図である。配光は、遠方へ伸びた部分Aと、左右方向に広がった部分Bとを含んでいる。左ヘッドランプ110Lと右ヘッドランプ110Rの配光PTN_LとPTN_Rは、基本的には同一であるといえる。
【0005】
図2は、直線路を走行する様子を示す図である。先行車2は部分Aによって照射され、路肩の歩行者4は、部分Bによって照射される。部分Aは遠方を照射するために相対的に照射強度は高く、部分Bは、歩行者へのグレアを抑制するため、相対的に照射強度は低い。カメラで車両前方を撮影し、画像処理を行うことにより、先行車2および歩行者4を検出、識別することが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2014-216087号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明者らは、赤外線のプローブ光を車両前方に照射し、その反射光によって、先行車や対向車、歩行者を検出する方式を検討した結果、いくつかの問題を認識するに至った。
【0008】
図3は、赤外のプローブ光を採用したときの問題のひとつを説明する図である。左右それぞれのヘッドランプ110L,110Rに、赤外プローブ光の光源を内蔵し、左右の光源それぞれによって、図1の配光を形成したとする。図3に示すように曲路を走行する際には、部分Aが路肩の歩行者6に照射されうる。白色光のヘッドライト、歩行者が視認できるため、目を細めたり、目を背けるなどの回避行動を取ることができる。
【0009】
ところが赤外プローブ光は、人間の目では視認できないことから、歩行者が赤外プローブ光に気づくことができず、強い赤外光が歩行者に照射されるおそれがあり好ましくない。
【0010】
また赤外プローブ光の光源をヘッドランプに内蔵する場合、新たな光学系を追加するスペースが余っていない場合がある。したがって、片側の光源のみで、部分Aと部分Bを含むパターンを形成することは難しい場合もある。
【0011】
なおこれらの問題を当業者の一般的な認識と捉えてはならない。
【0012】
本発明はかかる課題に鑑みてなされたものであり、そのある態様の例示的な目的のひとつは、上述の問題の少なくともひとつを解決可能な車両用灯具システムの提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明のある態様は、車両用灯具システムに関する。車両用灯具システムは、車両の左側に設けられ、赤外の左プローブ光を照射する左赤外照明と、車両の右側に設けられ、赤外の右プローブ光を照射する右赤外照明と、を備える。左プローブ光の照射領域と右プローブ光の照射領域は異なっている。
【0014】
なお、以上の構成要素の任意の組合せ、本発明の表現を方法、装置、システム等の間で変換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、上述の課題の少なくともひとつを解決できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】ヘッドランプの配光を模式的に示す図である。
図2】直線路を走行する様子を示す図である。
図3】赤外のプローブ光を採用したときの問題のひとつを説明する図である。
図4】実施の形態に係る車両用灯具システムのブロック図である。
図5】第1実施例に係る自動車が直線路を走行する様子を示す図である。
図6図6(a)、(b)は、第1実施例における照射パターンPTN_F,PTN_Sの動的な制御を説明する図である。
図7図7(a)、(b)は、操舵角にもとづく照射パターンの制御を説明する図である。
図8図8(a)、(b)は、事故が起こりやすい自車両と歩行者の位置関係を示す図である。
図9】第2実施例に係る自動車が直線路を走行する様子を示す図である。
図10図10(a)、(b)は、変形例に係る側方照射パターンを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
(実施の形態の概要)
本明細書に開示される一実施の形態は、車両用灯具システムに関する。車両用灯具システムは、車両の左側に設けられ、赤外の左プローブ光を照射する左赤外照明と、車両の右側に設けられ、赤外の右プローブ光を照射する右赤外照明と、を備える。左プローブ光の照射領域と右プローブ光の照射領域とは異なっている。
【0018】
左右の赤外照明に、異なる照射領域を分担させることで、各赤外照明の構成、構造を簡素化できる。
【0019】
左プローブ光と右プローブ光それぞれの強度、および/または左赤外照明と右赤外照明それぞれの配光は、走行シーンに応じて独立に適応的に制御されてもよい。これにより、歩行者に強い赤外光を照射したりするのを防止でき、あるいは遠方の車両を確実に検出することが可能となる。
【0020】
左赤外照明と右赤外照明の一方である遠方照明は、主として遠方を照射する配光を有し、左赤外照明と右赤外照明の他方である側方照明は、主として側方を幅広く照射する配光を有してもよい。左右の赤外照明に、遠方用の照射領域と側方用の照射領域を振り分けることで、赤外照明の構成、構造を簡素化できる。
【0021】
遠方照明が照射するプローブ光の強度は、直線路走行時の方が、曲路走行時よりも高くてもよい。これにより直線路走行時には、より遠方の車両を検出でき、曲路走行時には、路肩の歩行者に強い赤外光を照射するのを防止できる。
【0022】
側方照明が照射するプローブ光の強度は、曲路走行時の方が、直線路走行時よりも高くてもよい。これにより曲路走行時に、より広範囲を拡散的に照射でき、歩行者や対向車を検知することが可能となる。
【0023】
遠方照明の配光および/またはそれが照射するプローブ光の強度は、車速に応じていてもよい。側方照明の配光および/またはそれが照射するプローブ光の強度は、操舵角に応じていてもよい。
【0024】
側方照明の配光は、中央が暗く、左右両側に中央より明るい領域を有してもよい。可視光の場合、中央が暗いと運転者に違和感を与えるため、中央を明るくする必要があった。これに対して、赤外光を用いる場合、運転者には視認されないため、中央の照度が低くても運転者に違和感を与えない。そこで歩行者の存在確率が高い路肩の部分を相対的に強く照射することで、より歩行者を検知しやすくなる。
【0025】
左赤外照明は、配光可変ランプとともに左ヘッドランプに内蔵され、右赤外照明は、配光可変ランプとともに右ヘッドランプに内蔵されてもよい。
【0026】
側方照明は、対向車線側に設け、遠方照明を、それと反対側に設けるとよい。これにより、死角となりやすい範囲を強く照らすことができ、歩行者や自転車等を検出しやすくなる。
【0027】
車両灯具システムは、赤外線に感度を有するカメラをさらに備えてもよい。配光可変ランプの配光パターンは、プローブ光をカメラで撮影して得られる画像にもとづいて制御されてもよい。
【0028】
(実施の形態)
以上が車両用灯具システムの概要である。以下、本発明を好適な実施の形態をもとに図面を参照しながら説明する。実施の形態は、発明を限定するものではなく例示であって、実施の形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは、必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、各図に示す各部の縮尺や形状は、説明を容易にするために便宜的に設定されており、特に言及がない限り限定的に解釈されるものではない。また、本明細書または請求項中に「第1」、「第2」等の用語が用いられる場合には、この用語はいかなる順序や重要度を表すものでもなく、ある構成と他の構成とを区別するためのものである。
【0029】
図4は、実施の形態に係る車両用灯具システム200のブロック図である。自動車100は、左赤外照明220Lおよび右赤外照明220Rを備える。左赤外照明220Lは、配光可変ランプ210Lとともに左ヘッドランプ110Lに内蔵される。同様に、右赤外照明220Rは、配光可変ランプ210Rとともに右ヘッドランプ110Rに内蔵される。
【0030】
配光可変ランプ210L,210Rは、前照灯であり、白色ビームを車両前方に照射する。赤外照明220L,220Rは、車両前方の物標を検出するためのプローブ光PRB_L,PRB_Rを照射する。赤外のプローブ光PRBは、車両前方の物標により反射される。カメラ230は、赤外領域に感度を有し、物標による赤外プローブ光PRBの反射光を撮影する。カメラ230の画像を処理することにより、物標の形状、ひいては物標の種類を判定できる。こうして得られた物標に関する情報は、自動運転に利用してもよいし、配光可変ランプ210L,210Rの白色ビームの配光パターンの制御に用いてもよい。
【0031】
たとえばプローブ光PRB_L,PRB_Rの照射パターンは、車両側方の歩行者と、車両遠方の車両の両方を検出しやすいように定めることができる。より詳しくは、プローブ光PRBは、車両側方の領域RGN_SIDE(ハッチングを付す)と、車両前方の領域RGN_FRONT(ドットを付す)とに照射するとよい。
【0032】
もし左赤外照明220L(220R)の単体で、領域RGN_SIDE,RGN_FRONTの両方を含むT字型の全領域を照射するように構成しようとすると、光学系が回路が複雑になるという問題がある。特に赤外照明220をヘッドランプ110に組み込む場合、白色ビームを形成するための光学系が既に存在するため、赤外プローブ光のパターニングに関連して、十分なスペースを確保しにくいという問題がある。
【0033】
そこで本実施の形態では、左赤外照明220Lのプローブ光PRB_Lと右赤外照明220Rのプローブ光PRB_Rとで、照射領域を異ならしめている。たとえば、赤外照明220Lと220Rの一方は、遠方を照射する配光を有し、それらの他方は、近い領域を幅広く照射する配光を有することができる。
【0034】
より具体的には、赤外照明220Lと220Rの一方によって、主として側方領域RGN_SIDEを照射することとし、それらの他方によって、前方領域RGN_FRONTを照射することとした。つまり赤外照明220Lと220Rの一方によって、左右の側方領域RGB_SIDEを包含する領域に照射パターンPTN_Sを形成する。また赤外照明220Lと220Rの他方によって、前方領域RGN_FRONTを包含する領域に、プローブ光の照射パターンPTN_Fを照射している。
【0035】
以上が車両用灯具システム200の構成である。続いてその利点を説明する。車両用灯具システム200によれば、赤外プローブ光の生成に関して、左右のヘッドランプ110L,110Rに、異なる照射領域を分担させることで、赤外照明の構成、構造を簡素化できる。図4の例では、赤外照明220Lと220Rの一方は、車両の横方向(y方向)に長いビームを形成し、それらの他方は、車両の縦方向(x方向)に長いビームを形成するように構成されている。これにより、1個の赤外照明220によってT字型の領域を照射する場合に比べて、赤外照明220の構造を格段に簡略化できる。
【0036】
(第1実施例)
第1実施例では、前方照射パターンPTN_Fが左赤外照明220Lに割り当てられ、側方照射パターンPTN_Sが右赤外照明220Rに割り当てられる。
【0037】
図5は、第1実施例に係る自動車1Aが直線路を走行する様子を示す図である。先行車2は、左ヘッドランプ110Lの左赤外照明220Lが生成する前方照射パターンPTN_Fによって照射され、路肩の歩行者4は、右ヘッドランプ110Rの右赤外照明220Rが生成する側方照射パターンPTN_Sによって照射される。
【0038】
左赤外照明220Lと右赤外照明220Rはそれぞれ、プローブ光の強度および/または配光を、走行シーンに応じて独立して適応的に制御可能である。たとえば左赤外照明220Lが生成する前方照射パターンPTN_Fの強度は、直線路において相対的に強く、曲路において相対的に小さくなってもよい。
【0039】
また右赤外照明220Rが生成する側方照射パターンPTN_Sの強度は、直線路において相対的に弱く、曲路において相対的に強くなってもよい。
【0040】
図6(a)、(b)は、第1実施例における照射パターンPTN_F,PTN_Sの適応的な制御を説明する図である。図6(a)は直線路を走行中の、図6(b)は曲路を走行中の照射パターンPTN_F,PTN_Sを示す。
【0041】
なお、図6(a)、(b)において、照射パターンPTN_F,PTN_Sを示す実線は、強度があるしきい値より高い範囲を表している。強度を強くすると、しきい値を超える範囲が広くなり、強度を低くすると、しきい値を超える範囲は狭くなる。図6(a)に示すように直線路を走行中は、前方照射パターンPTN_Fの強度を上げることで、赤外プローブ光が届く範囲が広くなり、より遠方の車両2aを検出することが可能となる。一方、図6(b)に示すように曲路を走行中は、前方照射パターンPTN_Fの強度を下げることで、車両正面の路肩に存在する歩行者4aに、強い赤外光を照射するのを防止できる。また図6(b)に示すように曲路では、側方照射パターンPTN_Sの強度を高めることで、対向車2bを検出しやすくなる。
【0042】
また、照射パターンを動的、適応的に変化させることで、無駄な消費電力を低減できるという利点もある。
【0043】
このように柔軟に、側方照射パターンPTN_Sと前方照射パターンPTN_Fを変化させることができるのは、それらを左赤外照明220L、右赤外照明220Rに割り当てているからに他ならない。もし、赤外照明220Lによって、側方照射パターンPTN_Sと前方照射パターンPTN_Fの両方を含むパターンを生成した場合、2つの部分を独立して制御することは著しく困難であるといえる。
【0044】
照射パターンPTN_F,PTN_Sは、車速や操舵角に応じて変化させてもよい。
【0045】
たとえば高速道路では、車速は80km/hを超えるため、遠方の物標を検出する必要がある一方、路肩に歩行者が存在しない。一方、40km以下で走行する際には、路肩を含む車両の近傍に歩行者が存在する可能性が高い一方、検出すべき物標までの距離は近いと言える。そこで前方照射パターンPTN_Fの強度を、車速に応じて変化させてもよい。
【0046】
図7(a)、(b)は、操舵角にもとづく照射パターンの制御を説明する図である。図7(a)には、交差点を右折するときの様子が、図7(b)には左折するときの様子が示される。(i)は操舵角が小さい状態を、(ii)は操舵角が大きい状態を示す。交差点を右折あるいは左折する際には、操舵角が大きくなる。その場合に側方照射パターンPTN_Sの強度を高めることで、交差点内の歩行者4c,4dや自転車、他の車両を検出しやすくなる。また、操舵角が大きくなるにしたがって、前方照射パターンPTN_Fの強度を低下させてもよい。これにより対向車2cに赤外線プローブを強く照射するのを防止できる。
【0047】
側方照射パターンPTN_Sを生成する赤外照明は、対向車線側に設け、前方照射パターンPTN_Fを生成する赤外照明は、それと反対側に設けるとよい。この観点において、第1実施例は、左側通行の国や地域で有効である。この理由を説明する。
【0048】
対歩行者の事故のうち、対向車線側の歩行者の割合が高いことが知られている。図8(a)、(b)は、事故が起こりやすい自車両と歩行者の位置関係を示す図である。実線は、右赤外照明220Rが生成する側方照射パターンPTN_Sを示す。破線は、同じパターンを、左赤外照明220Lによって生成したときの側方照射パターンPTN_S’を示す。左通行の国や地域において、対向車線側、すなわち右赤外照明220Rに、側方照射パターンPTN_Sを割り当てることにより、歩行者4e,4fが検出しやすくなる。
【0049】
(第2実施例)
図9は、第2実施例に係る自動車1Bが直線路を走行する様子を示す図である。第2実施例では、前方照射パターンPTN_Fが右赤外照明220Rに割り当てられ、側方照射パターンPTN_Sが左赤外照明220Lに割り当てられる。その他は第1実施例と同様である。
【0050】
第2実施例は、右側通行の国や地域で特に有効である。
【0051】
以上、本発明について、実施の形態をもとに説明した。この実施の形態は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組み合わせにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。以下、こうした変形例について説明する。
【0052】
(変形例1)
側方照射パターンPTN_Sの形状は、上述のそれに限定されない。図10(a)、(b)は、変形例に係る側方照射パターンPTN_Sを示す図である。図10(a)では、左側方と右側方が、分離して照射される。図10(b)に示すように、左側方と右側方がスポット的に照射され、それらの間の領域を繋げるように照射パターンが形成される。可視光の場合、中央が暗いと運転者に違和感を与えるため、中央を明るくする必要があった。これに対して、赤外光を用いる場合、運転者には視認されないため、中央の照度が低くても運転者に違和感を与えない。そこで歩行者の存在確率が高い路肩の部分を相対的に強く照射することで、より歩行者を検知しやすくなる。
【0053】
(変形例2)
実施の形態では、左赤外照明220L、右赤外照明220Rを、左ヘッドランプ110L、右ヘッドランプ110Rに内蔵する場合を説明したが、その限りでない。左赤外照明220L、右赤外照明220Rは、左ヘッドランプ110L、右ヘッドランプ110Rとは別のユニットとして設けられてもよい。
【0054】
(変形例3)
実施の形態では、左赤外照明220Lと右赤外照明220Rが生成するプローブ光の強度を、適応的に制御したがその限りでなく、プローブ光が形成するパターンの形状や照射範囲を、動的に制御してもよい。
【0055】
実施の形態にもとづき、具体的な語句を用いて本発明を説明したが、実施の形態は、本発明の原理、応用の一側面を示しているにすぎず、実施の形態には、請求の範囲に規定された本発明の思想を逸脱しない範囲において、多くの変形例や配置の変更が認められる。
【符号の説明】
【0056】
200 車両用灯具システム
210 配光可変ランプ
220 赤外照明
220L 左赤外照明
220R 右赤外照明
230 カメラ
100 自動車
110L 左ヘッドランプ
110R 右ヘッドランプ
110 ヘッドランプ
2 先行車
4,6 歩行者
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10