(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-26
(45)【発行日】2022-11-04
(54)【発明の名称】変成器、コイルボビン、及び変成器の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01F 30/10 20060101AFI20221027BHJP
H01F 27/32 20060101ALI20221027BHJP
H01F 41/02 20060101ALI20221027BHJP
H01F 5/02 20060101ALI20221027BHJP
【FI】
H01F30/10 E
H01F30/10 A
H01F27/32 150
H01F41/02 A
H01F5/02 H
(21)【出願番号】P 2018175287
(22)【出願日】2018-09-19
【審査請求日】2021-04-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000000262
【氏名又は名称】株式会社ダイヘン
(74)【代理人】
【識別番号】100114557
【氏名又は名称】河野 英仁
(74)【代理人】
【識別番号】100078868
【氏名又は名称】河野 登夫
(72)【発明者】
【氏名】田中 剛
(72)【発明者】
【氏名】大野 裕之
【審査官】井上 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-082080(JP,A)
【文献】特開2018-082081(JP,A)
【文献】特開平02-165610(JP,A)
【文献】実開昭55-152029(JP,U)
【文献】実開昭55-152030(JP,U)
【文献】特開平08-051034(JP,A)
【文献】米国特許第06046663(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 30/10
H01F 27/32
H01F 5/02
H01F 41/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外周に沿ってコイルが巻回されている矩形状の外枠と、
外周に沿ってコイルが巻回されており、4辺部が前記外枠の4辺部に隣り合うようにして前記外枠の内側に嵌め込まれている内枠と、
前記外枠及び前記内枠夫々の互いに隣り合う一辺部を囲む円筒状の巻鉄心と、
軸長方向が前記外枠の前記一辺部の長さ方向に沿うようにして該一辺部を覆い、外周面が前記巻鉄心の内周面に接触している半円筒状のカバーと、
夫々の先端部が前記巻鉄心の前記内周面に接触しており、前記内枠の前記一辺部に、該一辺部の長さ方向に並設されている複数のリブと
を備えることを特徴とする変成器。
【請求項2】
前記カバーは、前記カバーの周方向の両端部夫々と前記内枠との係合によって、前記内枠に取り付けられていることを特徴とする請求項1に記載の変成器。
【請求項3】
前記カバーの内周面から、前記外枠を押さえる外枠押さえが突出しており、
該外枠押さえが前記外枠を前記内枠に押し付けるようにして、前記両端部夫々が前記内枠に係合していることを特徴とする請求項2に記載の変成器。
【請求項4】
前記カバーに開口が設けられており、
該開口は前記巻鉄心によって覆われていることを特徴とする請求項1から3の何れか一項に記載の変成器。
【請求項5】
前記カバーの軸長方向の長さは、前記巻鉄心の軸長方向の長さ以上であることを特徴とする請求項1から4の何れか一項に記載の変成器。
【請求項6】
外周に沿ってコイルが巻回される矩形状の外枠と、
外周に沿ってコイルが巻回され、4辺部が前記外枠の4辺部に隣り合うようにして前記外枠の内側に嵌め込まれる内枠と、
軸長方向が前記外枠の一辺部の長さ方向に沿うようにして該一辺部を覆う半円筒状のカバーと、
前記内枠の前記一辺部に、該一辺部の長さ方向に並設されている複数のリブと
を備え
、
前記カバーは、前記カバーの周方向の両端部夫々と前記内枠との係合によって、前記内枠に取り付けられていることを特徴とするコイルボビン。
【請求項7】
外周に沿ってコイルが巻回されている矩形状の外枠と、外周に沿ってコイルが巻回されている矩形状の内枠とを準備し、
該内枠の一辺部に、複数のリブが、前記一辺部の長さ方向に並設されており、
前記外枠の内側に、夫々の4辺部が互いに隣り合うようにして前記内枠を嵌め込み、
半円筒状のカバーの軸長方向が前記内枠の前記一辺部に隣り合う前記外枠の一辺部の長さ方向に沿うようにして、前記カバーで前記外枠の前記一辺部を覆い、
前記カバーの外周面と各リブの先端部とが内周面に接触するようにして、巻鉄心を形成することを特徴とする変成器の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のコイルと巻鉄心とを備える変成器、コイルボビン、及び変成器の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、変圧又は変流を目的として、変成器が用いられている。
特許文献1に記載の変成器は各矩形状の外枠及び内枠を備える。外枠の外周には全周に亘る溝が設けられている。溝の内部には、導線が外枠の周方向に複数回巻き付けられることによって、コイルが巻回されている。外枠と同様に、内枠にもコイルが巻回されている。内枠は、内枠の4辺部が外枠の4辺部に隣り合うようにして、外枠の内側に嵌め込まれている。
【0003】
特許文献1に記載の変成器は円筒状の巻鉄心を更に備える。巻鉄心は、帯状の鋼板が外枠及び内枠夫々の互いに隣り合う一辺部に複数回巻き付けられることによって、形成されている。巻鉄心の軸長方向は、鋼板が巻き付けられている一辺部の長さ方向に沿う。巻鉄心は、一方のコイルに交流電圧を印加することによって生じた磁束を、他方のコイルに効率よく伝える。他方のコイルに磁束が伝わることによって、他方のコイルに交流電圧が生じる。
【0004】
特許文献2に記載の変成器は、コイルが巻回されている矩形状の枠体を2つ備える。2つの枠体夫々の一辺部は、互いに平行に隣り合う。隣り合う2つの一辺部を、円筒状のマンドレルが囲んでいる。マンドレルの外周面に鋼板が巻き付けられることによって、巻鉄心が形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平8-51034号公報
【文献】国際公開第2011/060547号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の変成器の場合、巻鉄心を構成している鋼板は、外枠及び内枠に直接的に巻き付けられている。外枠の外周に溝が設けられているので、巻鉄心の内周面の周方向の一部は外枠にも内枠にも接触していない。巻鉄心の内周面における外枠にも内枠にも接触していない範囲が広ければ広いほど、巻鉄心が変形する虞がある。巻鉄心の変形は、鉄損を増大させるので、変成器の性能が低下する。
【0007】
また、特許文献1に記載の変成器の場合、外枠及び内枠を巻鉄心の内周面に直接的に接触させるために、外枠及び内枠は部分的に肉厚にされている。外枠及び内枠夫々は合成樹脂製の成型品なので、これらの成型時に、肉厚の部分に空洞が生じる虞がある。空洞を含む外枠又は内枠は絶縁性能が低下するので、変成器の寿命が縮む。
【0008】
特許文献1に記載の変成器に、特許文献2に記載のマンドレルを適用した場合、マンドレルは外枠及び内枠夫々の互いに隣り合う一辺部を囲む。マンドレルの外周面が巻鉄心の内周面に周方向に亘って接触するので、巻鉄心を円筒状に保形することができる。また、外枠及び内枠に巻鉄心を接触させる必要がないので、外枠及び内枠夫々の薄肉化を図ることができる。
【0009】
しかしながら、マンドレルは、外枠及び内枠と同様に、合成樹脂を用いて形成することが考えられる。故に、円筒状のマンドレルの追加は、合成樹脂の使用量の増加を招く。
また、円筒状のマンドレルを枠体に取り付けるためには、マンドレルを複数の部材(例えば2つの半円筒)で構成する必要がある。故に、マンドレルを1つ追加する都度、部品点数が複数増加する。
【0010】
本発明は斯かる事情に鑑みてなされたものであり、その主たる目的は、性能の向上と長寿命化とを実現することができる変成器、コイルボビン、及び変成器の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本実施の形態に係る変成器は、外周に沿ってコイルが巻回されている矩形状の外枠と、外周に沿ってコイルが巻回されており、4辺部が前記外枠の4辺部に隣り合うようにして前記外枠の内側に嵌め込まれている内枠と、前記外枠及び前記内枠夫々の互いに隣り合う一辺部を囲む円筒状の巻鉄心と、軸長方向が前記外枠の前記一辺部の長さ方向に沿うようにして該一辺部を覆い、外周面が前記巻鉄心の内周面に接触している半円筒状のカバーと、夫々の先端部が前記巻鉄心の前記内周面に接触しており、前記内枠の前記一辺部に、該一辺部の長さ方向に並設されている複数のリブとを備えることを特徴とする。
【0012】
本実施の形態にあっては、カバーが外枠の一辺部を覆う。内枠には複数のリブが並設されている。カバーの外周面及び各リブの先端部は巻鉄心の内周面に接触する。以上の結果、巻鉄心を円筒状に保形することができるので、変成器の性能を向上させることができる。
【0013】
巻鉄心の保形のために、外枠及び内枠に巻鉄心の内周面を直接的に接触させる必要はない。故に、外枠及び内枠夫々の薄肉化を図ることができる。従って、外枠(内枠)の成型時に、外枠(内枠)に空洞が生じる虞がない。更に、内枠はリブによって補強されている。以上の結果、外枠及び内枠を長寿命化させることができるので、変成器を長寿命化させることができる。
【0014】
半円筒状のカバー及び内枠の複数のリブは、円筒状のマンドレルよりも少ない合成樹脂量で形成することが可能である。また、円筒状のマンドレルは複数の部材で構成する必要があるが、半円筒状のカバーは複数の部材で構成する必要がない。即ち、変成器の性能の向上と変成器の長寿命化とを実現しつつ、合成樹脂の使用量を低減し、部品点数を削減することができる。
【0015】
本実施の形態に係る変成器は、前記カバーは、前記カバーの周方向の両端部夫々と前記内枠との係合によって、前記内枠に取り付けられていることを特徴とする。
【0016】
本実施の形態にあっては、カバーの周方向の両端部夫々を内枠に係合させることによって、カバーを内枠に容易に取り付けることができる。
【0017】
本実施の形態に係る変成器は、前記カバーの内周面から、前記外枠を押さえる外枠押さえが突出しており、該外枠押さえが前記外枠を前記内枠に押し付けるようにして、前記両端部夫々が前記内枠に係合していることを特徴とする。
【0018】
本実施の形態にあっては、カバーの内周面から突出している外枠押さえが外枠を内枠に押し付けるようにして、カバーの周方向の両端部夫々が内枠に係合する。故に、カバーを内枠に取り付けることによって外枠のガタツキを抑制することができる。
【0019】
本実施の形態に係る変成器は、前記カバーに開口が設けられており、該開口は前記巻鉄心によって覆われていることを特徴とする。
【0020】
本実施の形態にあっては、カバーに開口を設けることによって、カバーを構成する材料の量の低減を図ることができる。
変成器が冷却用の流体に曝された場合、冷却用の流体がカバーの開口を通して巻鉄心の内周面に接触する。故に、巻鉄心から冷却用の流体への放熱を促進することができる。
【0021】
本実施の形態に係る変成器は、前記カバーの軸長方向の長さは、前記巻鉄心の軸長方向の長さ以上であることを特徴とする。
【0022】
本実施の形態にあっては、カバーの軸長方向の長さが巻鉄心の軸長方向の長さ以上なので、巻鉄心の内周面は軸長方向の全長に亘ってカバーの外周面に接触する。故に、巻鉄心の変形を更に確実に防止することができる。
【0023】
本実施の形態に係るコイルボビンは、外周に沿ってコイルが巻回される矩形状の外枠と、外周に沿ってコイルが巻回され、4辺部が前記外枠の4辺部に隣り合うようにして前記外枠の内側に嵌め込まれる内枠と、軸長方向が前記外枠の前記一辺部の長さ方向に沿うようにして該一辺部を覆う半円筒状のカバーと、前記内枠の前記一辺部に、該一辺部の長さ方向に並設されている複数のリブとを備えることを特徴とする。
本実施の形態に係るコイルボビンは、外周に沿ってコイルが巻回される矩形状の外枠と、外周に沿ってコイルが巻回され、4辺部が前記外枠の4辺部に隣り合うようにして前記外枠の内側に嵌め込まれる内枠と、軸長方向が前記外枠の一辺部の長さ方向に沿うようにして該一辺部を覆う半円筒状のカバーと、前記内枠の前記一辺部に、該一辺部の長さ方向に並設されている複数のリブとを備え、前記カバーは、前記カバーの周方向の両端部夫々と前記内枠との係合によって、前記内枠に取り付けられていることを特徴とする。
【0024】
本実施の形態にあっては、本実施の形態に係る変成器を構成することができる。
【0025】
本実施の形態に係る変成器の製造方法は、外周に沿ってコイルが巻回されている矩形状の外枠と、外周に沿ってコイルが巻回されている矩形状の内枠とを準備し、該内枠の一辺部に、複数のリブが、前記一辺部の長さ方向に並設されており、前記外枠の内側に、夫々の4辺部が互いに隣り合うようにして前記内枠を嵌め込み、半円筒状のカバーの軸長方向が前記内枠の前記一辺部に隣り合う前記外枠の一辺部の長さ方向に沿うようにして、前記カバーで前記外枠の前記一辺部を覆い、前記カバーの外周面と各リブの先端部とが内周面に接触するようにして、巻鉄心を形成することを特徴とする。
【0026】
本実施の形態にあっては、本実施の形態に係る変成器を製造することができる。
【発明の効果】
【0027】
本実施の形態の変成器、コイルボビン、及び変成器の製造方法によれば、変成器の性能を向上させることができる。また、変成器を長寿命化させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】実施の形態に係る変成器を示す斜視図である。
【
図8】
図7におけるVIII-VIII線によるカバーの断面図である。
【
図9】外枠への内枠の嵌め込みを説明するための模式図である。
【
図10】カバーの取り付けを説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明を、その実施の形態を示す図面に基づいて詳述する。
図1は、実施の形態に係る変成器を示す斜視図である。
図中1は変成器であり、変成器1は外枠2及び内枠3を備える。外枠2及び内枠3夫々は、一方向に長い矩形状をなす。外枠2にはコイル41が巻回されている。内枠3にはコイル42が巻回されている。内枠3は、内枠3の2つの長辺部が外枠2の2つの長辺部に隣り合い、内枠3の2つの短辺部が外枠2の2つの短辺部に隣り合うようにして、外枠2の内側に嵌め込まれている。
【0030】
変成器1は2つの巻鉄心5,5を更に備える。
図2は、変成器1を示す正面図である。ただし、
図2には一方の巻鉄心5の断面図を示している。また、他方の巻鉄心5の図示は省略されている。
巻鉄心5,5は、外枠2(又は内枠3)の短辺部の長さ方向に沿って並んでいる(
図1参照)。各巻鉄心5は、外枠2及び内枠3夫々の互いに隣り合う長辺部を囲んでいる。巻鉄心5の軸長方向は、外枠2(又は内枠3)の長辺部の長さ方向に沿う。
巻鉄心5は、例えばコイル42に交流電圧を印加することによって生じた磁束を、コイル41に効率よく伝える。コイル41に磁束が伝わることによって、コイル41に交流電圧が生じる。
【0031】
図3は、外枠2を示す正面図である。
図4は、外枠2を示す側面図である。
外枠2は合成樹脂製の成型品である。外枠2の外周面には、外枠2の全周に亘る溝21が設けられている。溝21の内部には、導線411が外枠2の周方向に複数回巻き付けられることによって、コイル41が巻回されている。コイル41は溝21の外部に突出していない。
【0032】
外枠2の一の短辺部における溝21の両側壁には2つの切り欠き22,22が設けられている(
図1参照)。各切り欠き22は、溝21の側壁を、側壁の頂部から溝21の底面まで矩形状に切り欠いたような形状をなす。導線411の両端部は、例えば一方の切り欠き22を通って溝21の外部に引き出される。
外枠2を補強するために、外枠2の4辺部夫々に複数のリブが設けられている。
【0033】
図5は、内枠3を示す正面図である。
図6は、内枠3を示す側面図である。
内枠3は合成樹脂製の成型品である。内枠3は、外枠2の内側に嵌め込み可能な寸法を有する。
内枠3の外周面には、内枠3の全周に亘る溝31が設けられている。溝31の内部には、導線421が内枠3の周方向に複数回巻き付けられることによって、コイル42が巻回されている。コイル42は溝31の外部に突出していない。
【0034】
内枠3の一の短辺部における溝31の一の側壁には切り欠き32が設けられている。切り欠き32は、溝31の側壁を、側壁の頂部から溝31の底面まで矩形状に切り欠いたような形状をなす。図示はしないが、内枠3の一の短辺部における溝31の他の側壁にも切り欠き32が設けられている。導線421の両端部は、例えば切り欠き32,32を通って溝31の外部に引き出される。
内枠3の他の短辺部における溝31の両側壁にも2つの切り欠き32,32が設けられている。
内枠3を補強するために、内枠3の4辺部夫々に複数のリブが設けられている。
【0035】
図1及び
図2に示すように、内枠3は、外枠2によって内枠3の溝31が覆われるようにして、外枠2の内側に嵌め込まれている。
【0036】
変成器1は、例えば変圧器として用いられる。
コイル42を構成している導線421の両端部を通してコイル42に交流電圧が入力された場合、相互誘導によってコイル41に交流電圧が生じる。コイル41に生じた交流電圧は、コイル41を構成している導線411の両端部を通してコイル41から出力される。コイル41から出力される交流電圧は、コイル42に入力された交流電圧が、コイル42の巻き数とコイル41の巻き数との比に比例して変圧された交流電圧である。
【0037】
図1、
図2、
図5、及び
図6に示すように、内枠3の各長辺部には5つのリブ33,33,…が設けられている。各リブ33は半円の鍔状をなし、内枠3の長手方向に直交するようにして、内枠3の長辺部の外面から突出している。リブ33,33,…は互いに平行であり、内枠3の長手方向に等間隔に並ぶ。リブ33,33,…夫々の先端部は、仮想的な同一の半円筒面上に位置している。
【0038】
内枠3の各長辺部には複数の突起34,34,…が突設されている。各突起34は直方体状をなし、内枠3の長辺部の正面又は背面に配されている。5つのリブ33,33,…の内、中央のリブ33を除く4つのリブ33,33,…について、各リブ33の周方向の両端部の同一面に2つの突起34,34が位置している。
各突起34には係合凹部35が設けられている。係合凹部35は矩形状をなし、内枠3の内周側に向けて開口している。
【0039】
図1及び
図2に示すように、外枠2の2つの長辺部を2つのカバー6,6が覆っている。各カバー6は半円筒状をなす。カバー6の軸長方向は外枠2の長手方向に沿う。カバー6の半円筒の曲率は、内枠3のリブ33の半円の曲率と同じである。カバー6の外周面と、内枠3の各リブ33の先端部とは、仮想的な同一の円筒面上に位置している。
【0040】
図7は、カバー6の内周面を示す図である。
図8は、
図7におけるVIII-VIII線によるカバー6の断面図である。
カバー6には2つの開口61,61が設けられている。開口61,61はカバー6の軸長方向に並んでいる。各開口61は矩形状をなす。開口61はカバー6の周方向の端部及び軸長方向の端部には設けられていない。
カバー6に開口61,61を設けることによって、カバー6を構成する材料の量の低減を図ることができる。
【0041】
カバー6の周方向の両端部夫々には4つの外枠押さえ62,62,…が設けられている。4つの外枠押さえ62,62,…はカバー6の軸長方向に並んでいる。各外枠押さえ62は、本体部621と支持部622とを有する。本体部621は矩形断面を有する直棒状をなす。本体部621の長さ方向は、カバー6の周方向の端部におけるカバー6の接線に沿う。支持部622はカバー6の内周面から突出している突条であり、支持部622の先端に本体部621が設けられている。
【0042】
各外枠押さえ62の本体部621から係合凸部63が延設されている。係合凸部63はカバー6から外向きに突出している。係合凸部63の寸法は内枠3の係合凹部35に嵌め込み可能な寸法である。係合凸部63,63,…の配置は、内枠3の係合凹部35,35,…の配置に対応している。
【0043】
係合凸部63,63,…は、内枠3の係合凹部35,35,…に嵌め込まれている(
図2参照)。係合凸部63と係合凹部35との嵌め合いは締まり嵌めである。係合凸部63,63,…の係合凹部35,35,…への嵌め込み(即ち、カバー6の周方向の両端部夫々と内枠3との係合)によって、カバー6は内枠3に取り付けられている。
なお、カバー6と内枠3との係合は、係合凸部63と係合凹部35との嵌め合いによるものに限定されない。例えば、カバー6に設けられた爪が、内枠3に設けられた段部に掛止することによって、カバー6と内枠3との係合が実現されてもよい。また、嵌め合いと掛止とが混在していてもよい。
【0044】
外枠2の長辺部は、カバー6の周方向の一端部に設けられている外枠押さえ62,62,…とカバー6の周方向の他端部に設けられている外枠押さえ62,62,…との間に挟まれる。
【0045】
カバー6を補強するために、カバー6の内周面に3つのリブ64,64,64が設けられている。リブ64,64,64はカバー6の軸長方向に並んでいる。各リブ64は弓形をなし、弓形の弧状の部分がカバー6の内周面に接している(
図1参照)。なお、リブ64,64,…の個数は3つに限定されない。例えば、2つのリブ64,64がカバー6の軸長方向の両端部に配され、更に2つのリブ64,64がカバー6の軸長方向の中央部(開口61,61間)に配されてもよい。
リブ33,33,…が設けられている内枠3が外枠2の内側に嵌め込まれ、外枠2の2つの長辺部を覆うようにしてカバー6が内枠3に取り付けられることによって、コイルボビン10が形成される(
図2参照)。
【0046】
図2に示すように、巻鉄心5は鋼板51によって形成されている。鋼板51は帯状をなす。鋼板51は、カバー6の外周面及び内枠3のリブ33,33,…夫々の先端部に沿って、カバー6及びリブ33,33,…に複数回巻き付けられている。
巻鉄心5の軸長方向はカバー6の軸長方向に沿う。巻鉄心5の軸長方向に関し、巻鉄心5の軸長方向の両端部の位置は、カバー6の軸長方向の位置に等しい。即ち、巻鉄心5の軸長方向の長さはカバー6の軸長方向の長さに等しい。
巻鉄心5は、カバー6の開口61,61を全体的に覆う。
【0047】
巻鉄心5の内周面の半周は、カバー6の外周面に接触する。
巻鉄心5の内周面の開口61に対向する部分はカバー6の外周面に接触していないが、このことが巻鉄心5の変形の原因になる虞はない。何故ならば、巻鉄心5の内周面の半周において、軸長方向の両端部及び中央部夫々が、周方向の全長に亘ってカバー6の外周面に接触するからである。また、巻鉄心5の内周面の半周において、周方向の両端部夫々が、軸長方向の全長に亘ってカバー6の外周面に接触するからである。
【0048】
巻鉄心5の内周面の残り半周は内枠3のリブ33,33,…夫々の先端部に接触する。巻鉄心5の内周面の残り半周において、各リブ33の先端部は、巻鉄心5の周方向の全長に亘って巻鉄心5の内周面に接触する。また、5つのリブ33,33,…の内、中央のリブ33は巻鉄心5の軸長方向の中心に接触する。リブ33,33,…は巻鉄心5の軸長方向に等配されている。
【0049】
以上の結果、巻鉄心5を円筒状に保形することができるので、変成器1の性能を向上させることができる。
また、巻鉄心5の保形のために、外枠2及び内枠3に巻鉄心5の内周面を直接的に接触させる必要はない。故に、外枠2及び内枠3夫々の薄肉化を図ることができる。従って、外枠2(内枠3)の成型時に、外枠2(内枠3)に空洞が生じる虞がない。更に、外枠2及び内枠3夫々はリブによって補強されている。以上の結果、外枠2及び内枠3を長寿命化させることができるので、変成器1を長寿命化させることができる。
【0050】
内枠3のリブ33,33,…及びカバー6は、円筒状のマンドレルよりも少ない合成樹脂量で形成される。また、円筒状のマンドレルは複数の部材で構成する必要があるが、カバー6は1部材である。即ち、変成器1の性能の向上と変成器1の長寿命化とを実現しつつ、合成樹脂の使用量を低減し、部品点数を削減することができる。
【0051】
次に、変成器1の製造手順について説明する。
図9は、外枠2への内枠3の嵌め込みを説明するための模式図ための模式図である。
まず、外枠2の外周に沿ってコイル41が巻回され、内枠3の外周に沿ってコイル42が巻回される。外枠2に導線411を巻き付ける手順、及び内枠3に導線421を巻き付ける手順は、公知の手順でよい。
次に、外枠2の内側に内枠3が嵌め込まれる。外枠2に内枠3が嵌め込まれるときに、外枠2の2つの長辺部と内枠3の2つの長辺部とが隣り合い、外枠2の2つの短辺部と内枠3の2つの短辺部とが隣り合う。また、外枠2が内枠3の溝31を覆う。
【0052】
図10は、カバー6,6の取り付けを説明するための模式図である。
まず、カバー6の8つの係合凸部63,63,…と内枠3の8つの係合凹部35,35,…とが位置合わせされる。このとき、カバー6の軸長方向が外枠2の長辺部の長さ方向に沿う。
次に、係合凸部63,63,…が係合凹部35,35,…に嵌め込まれる。カバー6の内枠3への取り付けは、係合凸部63,63,…の係合凹部35,35,…への嵌め込みによって実現されるので、簡易である。
【0053】
係合凸部63,63,…の係合凹部35,35,…への嵌め込みによって、外枠押さえ62,62,…(
図2参照)は外枠2を内枠3に押し付ける。故に、カバー6を内枠3に取り付けることによって、外枠2のガタツキを抑制することができる。
以上の結果、コイルボビン10が形成される。
【0054】
次に、巻鉄心5の内周面の周方向の半分にカバー6の外周面が接触し、巻鉄心5の内周面の周方向の残り半分に各リブ33の先端部が接触するようにして、巻鉄心5が形成される(
図1及び
図2参照)。巻鉄心5を形成する手順は限定されない。例えば、カバー6及びリブ33,33,…を中心として、鋼板51が渦巻状に緩く巻かれるようにし、巻かれた鋼板51がカバー6及びリブ33,33,…に締め付けられることによって、巻鉄心5が形成されてもよい。
【0055】
鋼板51の締め付け時に巻鉄心5が空回りすることを防止するために、鋼板51とカバー6又はリブ33,33,…とが係合することが望ましい。例えば、カバー6の軸長方向の一端部(又は中央部)に、外向きに突出する突出部が設けられる。この場合、鋼板51のカバー6に接触すべき部分に、カバー6の突出部が挿入される貫通孔が設けられる。
【0056】
以上のようにして製造された変成器1は、冷却用の流体(例えば油)に曝される。
例えばコイル41に電流が生じることによってコイル41は発熱する。コイル41の一部はカバー6,6に覆われているが、コイル41の残部は冷却用の流体に接触する。また、冷却用の流体はカバー6の内部を通流してコイル41のカバー6に覆われている部分に接触する。故に、コイル41の放熱を促進することができる。
【0057】
例えばコイル42に電流が流れることによってコイル42は発熱する。冷却用の流体は、内枠3の切り欠き32,32,…を通してコイル42に接触する。故に、コイル42の放熱を促進することができる。
巻鉄心5の内部で磁束が変化することによって巻鉄心5に渦電流が生じるので、巻鉄心5は発熱する。冷却用の流体は巻鉄心5の外周面に接触する。また、冷却用の流体は、カバー6の開口61,61を通して、巻鉄心5の内周面に接触する。故に、巻鉄心5の放熱を促進することができる。
【0058】
カバー6,6がコイル41を部分的に覆うので、コイル41への異物の接触を抑制することができる。
コイル41,42夫々への異物の接触を抑制することによって、コイル41,42の損傷、及びコイル41,42と巻鉄心5の短絡等を抑制することができる。
【0059】
なお、変成器1は変流器として用いられてもよい。
内枠3の各長辺部におけるリブ33,33,…の個数は5つに限定されない。
本実施の形態においては、内枠3に係合凹部35があり、カバー6に係合凸部63があるが、内枠3に係合凸部63があり、カバー6に係合凹部35があってもよい。
巻鉄心5の軸長方向の長さはカバー6の軸長方向の長さ未満でもよい。
変成器1が備える巻鉄心5の個数は1つでもよい。
【0060】
今回開示された実施の形態は、全ての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上述した意味ではなく、特許請求の範囲と均等の意味及び特許請求の範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0061】
1 変成器
10 コイルボビン
2 外枠
3 内枠
33 リブ
41 コイル
42 コイル
5 巻鉄心
6 カバー
61 開口
62 外枠押さえ
64 リブ