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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-26
(45)【発行日】2022-11-04
(54)【発明の名称】紙葉類取扱装置及び紙葉類取扱方法
(51)【国際特許分類】
   B65H 3/08 20060101AFI20221027BHJP
【FI】
B65H3/08 320
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018202917
(22)【出願日】2018-10-29
(65)【公開番号】P2020070116
(43)【公開日】2020-05-07
【審査請求日】2021-09-24
(73)【特許権者】
【識別番号】504373093
【氏名又は名称】日立チャネルソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001689
【氏名又は名称】青稜弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】柴田 亨
(72)【発明者】
【氏名】宮坂 徹
(72)【発明者】
【氏名】堀 盛豊
(72)【発明者】
【氏名】玉本 淳一
【審査官】大山 広人
(56)【参考文献】
【文献】特開昭61-136839(JP,A)
【文献】特開平01-181635(JP,A)
【文献】特開2017-218260(JP,A)
【文献】特開平07-267409(JP,A)
【文献】特開昭61-081339(JP,A)
【文献】特開平04-313546(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 1/00-3/68
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙葉類を取り扱う紙葉類取扱装置であって、
紙葉類の剛性を検知する剛性検知部と、
取り扱う紙葉類に対する少なくとも3つの接触部を有し、
前記接触部のうち少なくとも1つに吸着部を有し、
前記吸着部により紙葉類を保持した際、前記3つの接触部の少なくとも一つが他の接触部に対して相対的に位置もしくは角度を変更させる可動部と、
前記3つの接触部のうちの中央の接触部以外の両側の2つの接触部の接触箇所が、中央の接触部の接触箇所よりも高い位置となるように前記可動部を可動させることにより、前記取り扱う紙葉類を、当該紙葉類の下側に凸形状を与えながら保持させる制御部と、を有し、
前記制御部は、前記剛性検知部が検知した前記紙葉類の剛性に応じて前記可動部の回転角度を変更し、前記下側の凸形状を与えながら保持させる、
ことを特徴とする紙葉類取扱装置。
【請求項2】
請求項1記載の紙葉類取扱装置であって、
前記3つの接触部のうち、前記2つの接触部が負圧吸着により吸着を行う前記吸着部を備え、前記中央の接触部が前記吸着部に挟まれるように配置され、
前記制御部は、前記3つの接触部のそれぞれが前記取り扱う紙葉類の表面から接触するように、前記可動部を制御する、
ことを特徴とする紙葉類取扱装置。
【請求項3】
請求項2記載の紙葉類取扱装置であって、
前記可動部は、前記吸着部を備えた前記2つの接触部の前記中央の接触部に対する相対距離を変更することなく回転動作する回転機構を備える、
ことを特徴とする紙葉類取扱装置。
【請求項4】
請求項1記載の紙葉類取扱装置であって、
前記3つの接触部のうち、中央の接触部が負圧吸着により吸着を行う前記吸着部を備え、前記吸着部が前記2つの接触部に挟まれるように配置され、
前記制御部は、前記吸着部により吸着された紙葉類に対して、前記2つの接触部が前記紙葉類の裏面から接触するように、前記可動部を制御する、
ことを特徴とする紙葉類取扱装置。
【請求項5】
紙葉類を取り扱う紙葉類取扱装置で行われる紙葉類取扱方法であって、
剛性検知部が紙葉類の剛性を検知し、
取り扱う紙葉類に対する少なくとも3つの接触部のうち少なくとも1つに設けられた吸着部により紙葉類を保持し、
前記3つの接触部の少なくとも一つが他の接触部に対して相対的に位置もしくは角度を変更し、
前記3つの接触部のうちの中央の接触部以外の両側の2つの接触部の接触箇所が、中央の接触部の接触箇所よりも高い位置とすることにより、前記取り扱う紙葉類を、当該紙葉類の下側に凸形状を与えながら保持する場合において、前記剛性検知部が検知した前記紙葉類の剛性に応じて可動部の回転角度を変更し、前記下側の凸形状を与えながら保持する、
ことを特徴とする紙葉類取扱方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙葉類取扱装置及び紙葉類取扱方法に係り、特に、紙葉類を適切に持ち上げ、保持する紙葉類取扱装置及び紙葉類取扱方法に関する。
【背景技術】
【0002】
紙葉類取扱装置には、収納庫内に整列した状態で重ねられた紙葉類の束から、一枚を取出し、分離するものがある。このような紙葉類取扱装置として、銀行等の金融機関で使用されている自動取引装置やプリンタなどが知られており、繰り出しローラ等の摩擦分離によって一枚を取出す装置が多い。これらの装置では、重ねられた紙束から、搬送ガイドに沿って面内方向に水平に引出す機構が一般的である。
【0003】
一方、生活空間内においては、資料やパンフレットなどの紙葉類は、搬送ガイドや収納庫といった機構がなく机上や床などに重ねられた状態で置かれる場合がある。こうした状態では、自動取引装置やプリンタなどに用いられている従来の紙葉類取扱方法をそのまま適用することはできない。
【0004】
従来とは異なる方法で紙葉類を取り扱う装置としては、特許文献1に示すように、積み重ねて収納されている紙葉類の束から、3つの吸着パッドをもちいて、紙葉類に凹凸変形を与えながら、1枚ずつ取り出し、別の収納庫へ移動させる装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2010-275063号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述のような紙葉類が積み重ねられた状態では、紙葉類を3次元に取り扱う必要があるが、特許文献1の装置では、紙葉類に凹凸変形のような複雑な変形を与えてしまう。このため、紙葉類にしわができ、紙葉類と吸着パッドの間に隙間ができてしまい、持ち上げようとする紙葉類を落としてしまう可能性がある。
【0007】
本発明は、積み重ねられた紙葉類の中から、安定して紙葉類を取り出すことが可能な紙葉類取扱装置及び紙葉類取扱方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様にかかる紙葉類取扱装置は、紙葉類を取り扱う紙葉類取扱装置であって、取り扱う紙葉類に対する少なくとも3つの接触部を有し、前記接触部のうち少なくとも1つに吸着部を有し、前記吸着部により紙葉類を保持した際、前記3つの接触部の少なくとも一つが他の接触部に対して相対的に位置もしくは角度を変更させる可動部と、前記3つの接触部のうちの中央の接触部以外の両側の2つの接触部の接触箇所が、中央の接触部の接触箇所よりも高い位置となるように前記可動部を可動させることにより、前記取り扱う紙葉類を、当該紙葉類の下側に凸形状を与えながら保持させる制御部と、を備えることを特徴とする紙葉類取扱装置として構成される。
【0009】
また、本発明の一態様は、上記紙葉類取扱装置により行われる紙葉類取扱方法としても把握される。
【発明の効果】
【0010】
本発明の一態様によれば、積み重ねられた紙葉類の中から、安定して紙葉類を取り出すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1A】重ねられた紙葉類から1枚目を取り出す一連動作図(実施例1)
図1B】重ねられた紙葉類から1枚目を取り出す一連動作図(実施例1)
図1C】重ねられた紙葉類から1枚目を取り出す一連動作図(実施例1)
図1D】重ねられた紙葉類から1枚目を取り出す一連動作図(実施例1)
図2】取り出し機構を備えた紙葉類取扱装置の一例(実施例1)
図3】重ねられた紙葉類から1枚目を取り出す動作のフローチャート
図4A】紙葉類を保持している状態の斜視図
図4B】紙葉類を保持している状態の斜視図
図4C】紙葉類を保持している状態の斜視図
図5】取り出し機構を備えた紙葉類取扱装置の一例(実施例2)
図6A】重ねられた紙葉類から1枚目を取り出す一連動作図(実施例2)
図6B】重ねられた紙葉類から1枚目を取り出す一連動作図(実施例2)
図6C】重ねられた紙葉類から1枚目を取り出す一連動作図(実施例2)
図6D】重ねられた紙葉類から1枚目を取り出す一連動作図(実施例2)
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。ただし、本発明は以下に示す実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。本発明の思想ないし趣旨から逸脱しない範囲で、その具体的構成を変更し得ることは当業者であれば容易に理解される。
【0013】
以下に説明する発明の構成において、同一部分又は同様な機能を有する部分には同一の符号を異なる図面間で共通して用い、重複する説明は省略することがある。
【0014】
本明細書等における「第1」、「第2」、「第3」などの表記は、構成要素を識別するために付するものであり、必ずしも、数または順序を限定するものではない。また、構成要素の識別のための番号は文脈毎に用いられ、一つの文脈で用いた番号が、他の文脈で必ずしも同一の構成を示すとは限らない。また、ある番号で識別された構成要素が、他の番号で識別された構成要素の機能を兼ねることを妨げるものではない。
【0015】
図面等において示す各構成の位置、大きさ、形状、範囲などは、発明の理解を容易にするため、実際の位置、大きさ、形状、範囲などを表していない場合がある。このため、本発明は、必ずしも、図面等に開示された位置、大きさ、形状、範囲などに限定されない。
【0016】
本明細書において単数形で表される構成要素は、特段文脈で明らかに示されない限り、複数形を含むものとする。
【0017】
(実施例1)
まず、図1A~1Dにより、紙葉類取扱装置の基本的構造・動作として、重ねられた紙葉類から1枚目を取り出す一連動作図を用いて説明する。
【0018】
図1A~1Dに示すように、本実施例は、紙葉類取扱装置に設けられた紙葉類の取り出し機構の最小構成であり、紙葉類に対する3つの接触点である接触部を有する場合を記載している。これらの接触部は、中央の接触部に対して当該中央の接触部を含む延長線上の両方向の等距離に設けられた左右の外側接触部101、102と、当該中央の接触部である中央接触部103とを含む。図1A~1Dでは、外側接触部101、102は、中央接触部103の左右に設けられている。
【0019】
また、外側接触部101、102には、それぞれ、紙葉類を持ち上げるために、紙葉類の紙面側で負圧吸着により吸着を行う吸着部である吸着手段1011、1021が設けられ、中央接触部103が吸着手段101、102に挟まれる中央部に配置されている。吸着手段1011、1021は、これらの吸着手段が取り付けられ、吸着手段1011、1021を、中央接触部103を中心として回動させるためのアーム1012、1022を備える。
【0020】
そして、中央接触部103は、可動部である可動手段として取り出し機構の節部を構成し、当該可動手段により、中央接触部103を中心として外側接触部101と外側接触部102とがアーム1012、1022により互いに開閉するように回動できるようになっている。つまり、他の2点の接触点である外側接触部101と外側接触部102とは、アーム1012、1022を介して、上記可動手段により互いに相対的に位置や角度を変更することが可能となっている。言い換えると、可動手段は、吸着手段を備えた2つの接触部の中央の接触部に対する相対距離を変更することなく回転動作する回転機構である節部を備えているといえる。
【0021】
また、本取り出し機構は、図示しない移動手段に接続されており、紙葉類に対して接離方向(図1A~1Dでは上下方向)に移動することができる。可動手段や移動手段としては、例えば、従来から知られている各種モータを用いることができる。
【0022】
本実施例にて、1枚目の紙葉類104を取り出す際は、まず図1Aに示すように、本取り出し機構を紙葉類に対して、図示しない移動手段により、3点の接触点である外側接触部101および102、中央接触部103が、1枚目の紙葉類104の紙面に接触するまで矢印105方向へ下降させる。なお、紙面に3点の上記接触点が接触するタイミングは、あらかじめ積み重ねられた紙葉類の高さが既知の状態(例えば、カメラやレーザ等の検知手段により検知済み)であり、既定の高さまで本取り出し機構を下降させるか、または、吸着手段1011、1021の吸着力を発生させるタイミング検知手段(例えば、流量計や圧力計)を備えており、吸着手段1011、1021をON状態としながら下降させ、上記タイミング検知手段にて検知されたタイミングにより検知することができる。
【0023】
前記の動作を行った後の状態を、図1Bに示す。前記した停止タイミングにより本実施例の取り出し機構を停止することで、3点の接触点である外側接触部101および102、中央接触部103により、1枚目の紙葉類104と本取り出し機構とが接触した状態となる。
【0024】
次に、図1Cに示すように、前記の可動手段により、吸着手段1011、1021にて1枚目の紙葉類104を吸着しながら、中央部に配置される中央接触部103を中心として、外側接触部101と外側接触部102とが互いに開状態から閉状態となるように回動させることで、1枚目の紙葉類104に対して、下側に凸形状を与える。このとき、外側接触部101と外側接触部102とは、中央接触部103よりも高い位置となっている。図1Cでは、1枚目の紙葉類104の中央部の接触点Pを中心として凹んだ状態となっていることがわかる。後述する制御部205は、1枚目の紙葉類104に対して、表面側から中央接触部103が接触し、さらに表面側から外側接触部101、102の吸着手段1011、1021が接触して上記回動することにより、表面側から3箇所の計3点の接触点で1枚目の紙葉類104を保持する。
【0025】
言い換えると、3つの接触部のうち、2つの接触部が負圧吸着により吸着を行う吸着部である吸着手段1011、1021を備え、中央の接触部が吸着部に挟まれるように配置され、制御部205は、3つの接触部のそれぞれが取り扱う紙葉類(例えば、1枚目の紙葉類104)の表面から接触するように、可動手段を制御する。このため、中央接触部103が接触した箇所を中心として、当該紙葉類104に対して、上記下側に凸形状を与えることができる。
【0026】
本取り出し機構の構成によれば、この際、中央接触部103に対する左右の吸着手段1011、1021の距離は変わらないため、紙葉類に接触している吸着手段1011、1021の下側の紙葉類の部分にしわなどが生じることがなく、安定して1枚目の紙葉類104を保持したまま、下側に凸形状に変形させることができる。このように紙葉類に下側に凸形状の変形を与えることで、重力方向に対する剛性を向上させることができる。
【0027】
これにより、1枚目の紙葉類104を持ち上げた際に、重力に負けて垂れ下がることがなく、まっすぐな姿勢を保ったまま持ち上げることができる。本実施例のように姿勢を保つことで、紙葉類の取り扱いが容易になる。例えば、収納庫への格納や人への配布といった動作の際に、紙葉類の垂れ下がりがないため、好ましい姿勢を紙葉類に与えたままハンドリングすることが可能となる。
【0028】
また、このときの1枚目の紙葉類104に与える変形量は、図1Cの実線および点線で示すように、紙葉類の剛性により変更することが望ましい。図1Cの実線で示す外側接触部101および外側接触部102では、取り出す紙葉類の剛性が大きい場合の動作状態を示している。また、同図の点線で示す外側接触部101および外側接触部102では、取り出す紙葉類の剛性が小さい場合の動作状態を示している。このように、紙葉類の剛性が小さい場合は、実線で示すように変形量を小さくし、剛性が大きい場合は、点線で示すように変形量を大きくする。このようにすることで、持ち上げた際に安定して紙葉類の姿勢を保つことができ、且つ、紙葉類に対して無理なく変形を与えるために、紙葉類に対するダメージも少なく、紙葉類の反発力も小さくできるため、吸着手段がより安定して保持することが可能となる。紙葉類の剛性については、あらかじめ既知の紙葉類を用いるか、中央接触部103を構成する可動手段に設けられたセンサが検出する電流値および回転角度より、紙葉類の剛性を算出する等といった方法を用いることができる。すなわち、紙葉類の剛性を検知する剛性検知部を有し、制御部205は、剛性検知部が検知した紙葉類の剛性に応じて可動手段を可動し、下側の凸形状を与えながら保持させる。これにより、上述のように安定した紙葉類の保持が可能となる。
【0029】
最後に、図1Dに示すように、移動手段により、本装置を矢印方向107へ持ち上げて、基本動作を完了する。
【0030】
図2は、本実施例の取り出し機構を備えた紙葉類取扱装置の一例を示す図である。本取り出し機構201では、制御部205にて、中央接触部103に設けられた可動手段を駆動することにより、2つの吸着手段1011、1021に対する中央接触部103の可動手段の角度を可変とする。また、本取り出し機構201を移動機構202に取り付け、制御部205にて、本取り出し機構201の上下移動および取り出した紙葉類を保持した後の移動を行う。
【0031】
また、本実施例では、吸引源の一例として真空ポンプ204を用いており、そのON/OFFを制御部205にて制御することにより、吸着の制御を行う。また、吸着手段1011,1021と真空ポンプ204の間には、吸着力発生タイミング検知手段として圧力計203が配管されており、その値を制御部205に送信することで、1枚目の紙葉類104を正しく吸着しているのかを検知することができる。
【0032】
以上の構成により、安価で小型な構成で積み重ねられた紙葉類から1枚目の紙葉類104を持ち上げることが可能となる。
【0033】
図3を用いて、図1A~1Dの基本的動作をフローチャートで説明する。フローチャートでは、あらかじめ紙葉類の吸着点上に、本実施例の取り出し機構を移動させた後の動作であることに注意されたい。本実施例において、2つの吸着手段1011、1021は、吸引源である真空ポンプ204につながれており、例えば、制御部205による真空ポンプ204のON/OFF制御(或いは吸引源までの配管途中に電磁弁)を設け、当該ON/OFF制御することで、吸着のON/OFFを制御することができる。このように、吸着手段1011、1021の吸着ON動作は、真空ポンプ204の動作によって実行される。すなわち、真空ポンプ204のON動作によって、吸着手段1011、1021から真空ポンプ204に空気が吸引される。また、真空ポンプ204と吸着手段1011、1021との間に、1枚目の紙葉類104を吸着したタイミングを検知することのできる吸着タイミング検知手段(例えば、流量計や圧力計など)を設けている。
【0034】
まず実際の制御では、制御部205は、吸着手段1011、1021の吸着をONにする(S301)。そして、積み重ねられた紙葉類に対してアプローチするために、本取り出し機構を下降させる(S302)。なお、本実施例では、下降時には、紙葉類の高さ検知を行うために、制御部205は、吸着手段1011、1021の吸着ON状態を維持したまま下降させているが、あらかじめ紙葉類の高さが既知であれば吸着OFF状態で下降させて、所定の位置にて吸着をONとしてもよい。S301およびS302の実行中の様子が、図1Aに示した状態である。
【0035】
制御部205が移動機構202を制御して取り出し機構201をさらに下降させ、吸着手段1011、1021が1枚目の紙葉類104に接触すると、圧力計203が計測する負圧値が大きくなる。積み重ねられた紙葉類への下降は、吸着タイミング検知手段として構成される圧力計203により、吸着手段1011、1021と1枚目の紙葉類104との接触が検知されるまで行い、制御部205は、当該接触が検知されたか否かを判定する(S303)。
【0036】
制御部205は、当該接触が検知されたと判定すると(S303;Yes)、その状態で、吸着手段1011、1021の吸引および下降を停止させる(S304)。
【0037】
なお、本実施形態では、吸着力発生タイミング検知手段により、吸着手段1011、1021の下降停止タイミングを決定するが、重ねられた紙葉類の正確な高さを別の手段(例えば、カメラやレーザなどの検知手段)により検知できる場合は、その高さに合わせた下降距離をあらかじめ決めておき、S303、S304の工程を省いてもよい。S304実行後の状態は、図1Bに示した状態である。
【0038】
S304までの工程を終えると、図1Bに示す状態となっているため、制御部205は、次に可動手段を用いて、中央接触部103に対する2つの吸着手段1011、1021の位置や角度を変更することにより、1枚目の紙葉類104に対して変形を与える(S305)。S305実行後の状態は、図1Cに示した状態である。
【0039】
なおこのとき、1枚目の紙葉類104に変形を与えても、正しく吸着できているのかを、制御部205が、吸着力発生タイミング検知手段として構成される圧力計203の値を読み取ることにより確認を行ってもよい。もし、制御部205が読み取った上記値が所定の閾値に満たない値であり、吸着が正しく行えていないと確認された場合、S301に戻って動作をやり直すことで、1枚目の紙葉類104を落とすことなく変形を与えることができる。
【0040】
その後、本取り出し機構を移動機構202にて紙面の垂直方向へ持ち上げることで(S306)、その姿勢を維持したまま持ち上げ動作を完了する。S306実行後の状態は、図1Dに示した状態である。
【0041】
図4A~4Cは、本実施例の取り出し機構により紙葉類を保持している状態の斜視図である。本実施例では、図4A~Cに示す通り、紙葉類の様々な場所を保持することができる。
【0042】
図4Aは、取り出し機構が紙葉類の中心部を保持している状態を表している。取り出し機構201が、1枚目の紙葉類104の中心部を持つことにより、保持された紙葉類の前後左右のモーメントが等しくなるため、最も安定した保持が可能となる。したがって、持ち運びの際や移動させた後の作業の妨げにならない限り、本図の持ち方を行うことが好ましい。
【0043】
図4Bは、取り出し機構が紙葉類の長手方向の辺の端部で短手方向の中心を保持している状態を示している。図4Aのように中心部を保持すると、1枚目の紙葉類104の上面を覆ってしまうため、たとえば、人との受け渡しやファイルに挿入するといった作業を行う場合は邪魔になってしまう可能性がある。そうした場合は、本図に示すように1辺の端部を保持し、ハンドリングすることが好ましい。
【0044】
図4Cは、取り出し機構が長手短手の両方の辺に対する端部を保持している状態を示している。本図のように、本実施では必ずしも先に述べたような辺中心を保持する必要はなく、持ち運び後の用途に合わせた持ち方が可能である。
【0045】
(実施例2)
図5は、実施例2の取り出し機構を備えた紙葉類取扱装置構造の斜視図である。図5に示すように、実施例2では、取り出し機構501は、紙葉類に対する接触部を3点有しているが、実施例1とは異なり、中央の1点の接触点である中央接触部601が負圧吸着により吸着を行う吸着部である吸着手段6011を有し、当該中央接触部601を含む延長線上の両方向の等距離に設けられた左右の外側接触部602、603とを有している。左右の2点の接触点である外側接触部602、603は、紙面と平行な回転軸A(図6A~6D)を中心として、可動部である可動手段により、回動できるようになっており、中央接触部601に設けられた吸着手段6011と相対的に位置・角度を変更することが可能となっている。外側接触部602、603の位置や角度については図6を用いて後述する。また、本取り出し機構は、移動手段202に接続されており、紙葉類に対して接離方向(図6A~6Dでは上下方向)に移動することができる。可動手段や移動手段としては、実施例1と同様、従来から知られている各種モータを用いることができる。
【0046】
本取り出し機構501では、制御部205にて、可動手段を駆動することにより、左右の外側接触部602、603の先端部602T、603Tが中央接触部601に設けられた吸着手段6011と相対的に位置・角度を変更する。また、実施例1と同様に、本取り出し機構501を移動機構202に取り付け、制御部205にて、本取り出し機構501の上下移動および保持した後の移動を行う。
【0047】
また、実施例1と同様に、吸引源として真空ポンプ204を用いており、そのON/OFFを制御部205にて制御することにより、吸着の制御を行う。また、吸着手段6011と真空ポンプ204との間には、吸着力発生タイミング検知手段として圧力計203が配管されており、その値を制御部205に送信することで、吸着手段6011が紙葉類を正しく吸着しているのかを検知することができる。
【0048】
図6を用いて、実施例2において、重ねられた紙葉類から1枚目を取り出す一連動作図を用いて説明する。
【0049】
本実施例にて、1枚目の紙葉類104を取り出す際は、まず図6Aに示すように、制御部205は、本取り出し機構を紙葉類に対して、図示しない移動手段202により、中央接触部601に設けられた吸着手段6011が、1枚目の紙葉類104の紙面に接触するまで矢印604方向へ下降させる。なお、図に示すように、実施例1とは異なり、下降の際は、左右の2点の接触点である外側接触部602、603は、可動手段により、軸Aを中心として紙葉類を保持する場合とは逆方向に回動させ、先端部602T、603Tを退避させておく。
【0050】
吸着手段6011が接触するタイミングは、実施例1と同様に、あらかじめ積み重ねられた紙葉類の高さが既知の状態(例えば、カメラやレーザ等の検知手段により検知済み)であり既定の高さまで本取り出し機構を下降させるか、または、吸着手段6011の吸着力発生タイミング検知手段(例えば、流量計や圧力計)を備えており、吸着手段6011をON状態としながら下降させ、吸着力発生タイミング検知手段にて検知されたタイミングにより検知することができる。
【0051】
前記の動作を行った後の状態を、図6Bに示す。制御部205は、前記した停止タイミングにより本実施例の取り出し機構601を停止することで、中央の接触点である吸着手段6011のみが1枚目の紙葉類104に接触した状態となる。
【0052】
次に、図6Cに示すように、制御部205は、図示しない移動手段202により、吸着手段6011により1枚目の紙葉類104を保持した状態にて、上昇させる。この動作により、吸着手段6011により吸着された1枚目の紙葉類104と、残された紙葉類の束との間に隙間Xを生じさせる。なお、図中では1枚目の紙葉類104の紙面手前側の垂れ下がり部分は記載していないが、実際は1枚目の紙葉類104が紙面手前側に垂れ下がっており、1枚目の紙葉類104と残された紙葉類の束とが完全には分離していない状態となっている。
【0053】
そして、図6Dに示すように、前記の可動手段により、左右の外側接触部602、603を矢印方向606に動作させて、吸着手段6011に対して、相対的に位置・角度を変更させる。具体的には、制御部205は、可動手段を制御して、外側接触部602、603を、持ち上げられた状態における1枚目の紙葉類104(図6C)の紙面と平行な回転軸Aを中心として回転させることにより、回転軸Aに固定された外側接触部602、603の先端部602T、603Tが、1枚目の紙葉類104の表面から裏面に回転して移動する。そして、上記先端部602T、603Tが、1枚目の紙葉類104の裏面と残された紙葉類の束の表面との間の上記隙間Xに潜り込み、1枚目の紙葉類104を下側から支える。なお、図5、6では、外側接触部602、603がL字型(逆L字型)の形状であり、L字(逆L字)の書き出し側の辺の先端部602T、603Tが、矢印方向606に回転することで、当該先端部602T、603Tが1枚目の紙葉類104の裏面にまわりこみ、当該紙葉類を下側から支える攻勢とした。しかし、外側接触部602、603の形状は、これに限らず、軸Aを中心として回転したときに1枚目の紙葉類104の裏面側に回り込む形状であればよい。
【0054】
これにより、図に示すように、1枚目の紙葉類104を、3点の接触点にて挟み込むように保持し、且つ、1枚目104に下側に凸形状を与えることができる。このとき、外側接触部602と外部接触部603とは、中央接触部601よりも高い位置となるまで外側接触部602、603を回転させる。すなわち、制御部205は、1枚目の紙葉類104に対して、表面側から中央接触部601の吸着手段6011が接触し、裏面側から外側接触部602、603の先端部602T、603Tが接触することにより、表面側から1箇所、裏面側から2箇所の計3点の接触点で1枚目の紙葉類104を保持する。
【0055】
言い換えると、3つの接触部のうち、中央の接触部が負圧吸着により吸着を行う吸着手段6011を備え、吸着手段6011が2つの接触部に挟まれるように配置され、制御部205は、吸着手段6011により吸着された紙葉類に対して、2つの接触部が紙葉類の裏面から接触するように、可動手段を制御するため、吸着手段6011が接触した箇所を中心として、当該紙葉類104に対して、上記下側に凸形状を与えることができる。
【0056】
このとき、制御部205は、左右の外側接触部602、603を、1枚目の紙葉類104の紙面手前の垂れ下がり部分までしっかりと下側の凸形状となり、残りの紙葉類の束と分離することができるまで可動させることが望ましい。
【0057】
本実施例の構成によれば、中央接触部601の吸着手段6011に対する左右の外側接触部602、603の距離は変わらず、表側と裏側とから挟み込むように1枚目の紙葉類104を保持しているため、実施例1よりも安定した保持が可能となる。また、中央接触部601の吸着手段6011の下にしわなどが生じて吸着力が低下してしまったとしても、上記のように挟み込んでいるため、1枚目の紙葉類104を落とすことはない。
【0058】
また、実施例1で説明したように、紙葉類に下側の凸変形を与えることで、重力方向に対する剛性を向上させることができるため、まっすぐな姿勢を保ったまま持ち上げることができる。本実施例のように姿勢を保つことで、紙葉類の取り扱いが容易になる。例えば、収納庫への格納や人への配布といった動作の際に、紙葉類の垂れ下がりがないため、好ましい姿勢を紙葉類に与えたままハンドリングすることが可能となる。
【0059】
また、このときの1枚目の紙葉類104に与える変形量は、実施例1と同様に、紙葉類の剛性が小さい場合は、変形量を小さくし、剛性が大きい場合は、変形量を大きくすることが望ましい。
【0060】
以上の動作により、実施例2において、重ねられた紙葉類から1枚目の紙葉類を取り出す一連動作が完了する。
【0061】
このように、実施例1、実施例2に示した構成、すなわち、紙葉類を取り扱う紙葉類取扱装置において、取り扱う紙葉類(例えば、1枚目の紙葉類104)に対する少なくとも3つの接触部(例えば、1つの中央接触部、2つの外側接触部)を有し、接触部のうち少なくとも1つに吸着部(例えば、吸着手段1011、1021、6011)を有し、吸着部により紙葉類を保持した際、3つの接触部の少なくとも一つが他の接触部に対して相対的に位置もしくは角度を変更させる可動部である可動手段(例えば、モータ)と、3つの接触部のうちの中央の接触部以外の両側の2つの接触部の接触箇所が、中央の接触部の接触箇所よりも高い位置となるように可動部を可動させることにより、取り扱う紙葉類を、当該紙葉類の下側に凸形状を与えながら保持させる制御部(例えば、制御部205)と、を有することにより、資料やパンフレットなどの机上や床などに重ねられた状態で置かれた紙葉類に対して、落とすことなく安定して1枚目を持ち上げ、持ち上げた後に安定して紙葉類の姿勢を維持したままハンドリングすることができる。
【符号の説明】
【0062】
101、102 外側接触部
1011、1021 吸着手段
1012、1022 アーム
103 中央接触部
104 重ねられた紙葉類の1枚目
105 下降方向
106 可動手段による回転方向
107 上昇方向
201 実施例1における取出し機構を備えた紙葉類取扱装置
202 移動手段
203 圧力計
204 真空ポンプ
205 制御部
501 実施例2における取出し機構を備えた紙葉類取扱装置
601 中央接触部
6011 吸着手段
602、603 外側接触部
604 下降方向
605 上昇方向
606 可動手段による回転方向
図1A
図1B
図1C
図1D
図2
図3
図4A
図4B
図4C
図5
図6A
図6B
図6C
図6D