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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-26
(45)【発行日】2022-11-04
(54)【発明の名称】画像検査装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/952 20060101AFI20221027BHJP
   G01N 21/88 20060101ALI20221027BHJP
【FI】
G01N21/952
G01N21/88 J
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2018213334
(22)【出願日】2018-11-13
(65)【公開番号】P2020079755
(43)【公開日】2020-05-28
【審査請求日】2021-08-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000006932
【氏名又は名称】リコーエレメックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】尾宮 匠人
【審査官】越柴 洋哉
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-062835(JP,A)
【文献】特開2015-210151(JP,A)
【文献】特開2014-010138(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0103079(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/84 - G01N 21/958
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外周に螺旋状の凹部または凸部を有した長尺状の検査対象物であって第一画像と第二画像とで明るい領域と暗い領域とが長手方向と交叉する方向に逆転する前記検査対象物の表面である検査対象面に前記検査対象物の長手方向に沿う第一方向の後側から光が照射された状態で撮影された前記第一画像と、前記検査対象面に前記第一方向の前側から光が照射された状態で撮影された前記第二画像を取得する画像取得部と、
前記第一画像からシェーディング補正された第一シェーディング画像を取得するとともに、前記第二画像からシェーディング補正された第二シェーディング画像を取得するシェーディング補正部と、
前記第一シェーディング画像と前記第二シェーディング画像との差分画像から異常を検出する異常検出部と、
前記差分画像から異常候補領域を検出する異常候補領域検出部と、
前記第一シェーディング画像の前記異常候補領域における輝度値の第一代表値および前記第二シェーディング画像の前記異常候補領域における輝度値の第二代表値のうち低い値を、前記異常候補領域の第一指標として算出する第一指標算出部と、
前記第一シェーディング画像の前記異常候補領域における輝度値と前記第二シェーディング画像の前記異常候補領域における輝度値との画素毎の差分値の絶対値に対する第三代表値を、前記異常候補領域の第二指標として算出する第二指標算出部と、
を備え、
前記異常検出部は、前記第一指標および前記第二指標が所定条件を満たす前記異常候補領域を、異常領域として検出する、
画像検査装置。
【請求項2】
前記異常検出部は、前記第一指標が第一閾値よりも小さいかあるいは前記第二指標が第二閾値よりも大きい前記異常候補領域を、前記異常領域として検出する、請求項に記載の画像検査装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、画像検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、長尺状の検査対象物を撮像した画像から当該検査対象物の異常を検出する検査装置が知られている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2011-011496号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
画像から異常を検出する検査装置では、例えば、画像に明るさのむらが生じるなどすると、異常が検出されにくくなる。
【0005】
そこで、本開示は、例えば、より異常を検出しやすい画像検査装置を得ることを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の画像検査装置にあっては、長尺状の検査対象物の表面である検査対象面に上記検査対象物の長手方向に沿う第一方向の後側から光が照射された状態で撮影された第一画像と、上記検査対象面に上記第一方向の前側から光が照射された状態で撮影された第二画像を取得する画像取得部と、上記第一画像からシェーディング補正された第一シェーディング画像を取得するとともに、上記第二画像からシェーディング補正された第二シェーディング画像を取得するシェーディング補正部と、上記第一シェーディング画像と上記第二シェーディング画像との差分画像から異常を検出する異常検出部と、を備えている。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、例えば、より異常を検出しやすい画像検査装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、実施形態の検査装置の例示的かつ模式的な斜視図である。
図2図2は、実施形態の検査装置の一部を検査対象物の長手方向から見た例示的な模式図である。
図3図3は、実施形態の検査装置で取得される第一画像および第二画像の説明図である。
図4図4は、実施形態の検査装置で取得された第一画像の例示的な模式図である。
図5図5は、実施形態の検査装置の例示的なブロック図である。
図6図6は、実施形態の検査装置の制御部の例示的なブロック図である。
図7図7は、実施形態の検査装置の画像処理部の例示的なブロック図である。
図8図8は、実施形態の検査装置による異常の検出手順の例示的なフローチャートである。
図9図9は、実施形態の検査装置で取得された第一画像の一部の例示的な模式図である。
図10図10は、実施形態の検査装置で取得された第二画像の一部の例示的な模式図である。
図11図11は、実施形態の検査装置における第一シェーディング画像の例示的な模式図である。
図12図12は、実施形態の検査装置における第二シェーディング画像の例示的な模式図である。
図13図13は、実施形態の検査装置における図11の第一シェーディング画像と図12の第二シェーディング画像との差分画像の例示的な模式図である。
図14図14は、実施形態の検査装置における図11とは別の第一シェーディング画像の例示的な模式図である。
図15図15は、実施形態の検査装置における図12とは別の第二シェーディング画像の例示的な模式図である。
図16図16は、実施形態の検査装置における図14の第一シェーディング画像と図15の第二シェーディング画像との差分画像の例示的な模式図である。
図17図17は、実施形態の検査装置における複数の異常候補領域の第一指標および第二指標の分布を示す例示的なプロット図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の例示的な実施形態が開示される。以下に示される実施形態の構成、ならびに当該構成によってもたらされる作用および結果(効果)は、一例である。本発明は、以下の実施形態に開示される構成以外によっても実現可能である。また、本発明によれば、開示される構成および類似の構成によって得られる種々の効果(派生的な効果も含む)のうち少なくとも一つを得ることが可能である。また、本明細書において、序数は、部品や部位等を区別するために便宜上付与されており、優先順位や順番を示すものではない。
【0010】
図1は、検査装置1の斜視図である。図1に示される検査装置1は、検査対象物100を撮像した画像に基づいて検査対象物100の表面100aを検査する。検査対象物100は、例えば、ホースや、チューブ、棒のような長尺状かつ円管状または円柱状の部品である。表面100aは、検査対象面の一例である。
【0011】
図1に示されるように、検査装置1は、複数の光源2U,2Dを備えている。具体的に、光源2Uおよび光源2Dは、検査対象物100の長手方向に離間して配置されている。光源2Uおよび光源2Dは、環状、例えば円環状に、構成されている。光源2Uおよび光源2Dは、環状に配置された複数のlight emitted diode(LED)を有している。長尺状の検査対象物100は、光源2Uおよび光源2Dの環内を貫通し、環状部分の軸方向に沿って延びている。また、光源2Uおよび光源2Dは、検査対象物100の長手方向と直交する面について面対称に配置されている。検査対象物100の長手方向は、軸方向とも称されうる。
【0012】
検査対象物100の撮像領域Aは、光源2Uと光源2Dとの間、例えば光源2Uと光源2Dとの中間位置に、設定されている。光源2Uからの光は、検査対象物100の長手方向の一方側、図1では左側から、撮像領域Aに照射され、光源2Dからの光は、長手方向の他方側、図1では右側から、撮像領域Aに照射される。
【0013】
検査対象物100は、検査中、搬送装置30(図5参照)によって、長手方向(軸方向)に搬送されている。すなわち、検査装置1は、搬送装置30によって搬送されて移動している検査対象物100を、検査する。したがって、撮像領域Aは、検査対象物100の移動に伴って、検査対象物100の長手方向に沿って移動する。なお、検査対象物100は、光源2U側から光源2D側へ移動する。すなわち、光源2Uは、撮像領域Aに対して搬送方向の後方に位置され、光源2Dは、撮像領域Aに対して搬送方向の前方に位置されている。
【0014】
撮像部3(3U,3D)は、検査対象物100の径方向外側に位置され、検査対象物100の表面100a(外面、周面、側面)の画像を取得する。すなわち、撮像領域Aは、検査対象物100の表面100aの一部である。
【0015】
図2は、検査装置1の一部を検査対象物100の長手方向から見た図である。撮像部3は、光学部品4を介して、撮像領域Aの画像を取得する。光学部品4は、複数のミラー4L,4Rである。図2に示されるように、ミラー4L,4Rは、検査対象物100の撮像部3とは反対側で、軸方向からの視線でV字状に配置されている。ミラー4L,4Rは互いに120°の角度、言い換えると撮像部3と検査対象物100とを結ぶ線Lに対して互いに反対側に60°となる角度、となる姿勢で、配置されている。ミラー4L,4Rは、いずれも、検査対象物100の表面100aに面した平面状の反射面4aを有している。反射面4aは、検査対象物100の径方向と略直交する面に沿って拡がっている。また、ミラー4L,4Rは、検査対象物100の長手方向と直交する面に沿って帯状に延びている。このような構成では、撮像領域Aは、検査対象物100の表面100aの、ミラー4L,4Rに面した略半周分の領域である。なお、隣接するミラー4L,4Rは一体化されているが、分離されていてもよい。
【0016】
光源2U,2D、撮像部3、および光学部品4を含む検査部10(10U,10D)が、検査対象物100の長手方向(軸方向、搬送方向)に間隔をあけて複数箇所(一例として二箇所)に設けられている。これら検査部10では、撮像部3および光学部品4の配置が異なっている。搬送方向の後側(図1の左側)に位置された検査部10Uでは、図1の上側に撮像部3U(3)が位置し、下側に光学部品4が位置する。よって、検査部10Uの撮像部3Uは、検査対象物100の図1の下側の領域(撮像領域A)の画像を取得する。一方、前側(図1の右側)に位置された検査部10Dでは、図1の下側に撮像部3D(3)が位置し、上側に光学部品4が位置する。よって、検査部10Dの撮像部3Dは、検査対象物100の図1の上側の領域(撮像領域A)の画像を取得する。すなわち、複数の撮像部3は、それぞれ、検査対象物100の表面100aの相異なる領域(部位、位置)を撮像する。搬送方向または搬送方向の反対方向は、第一方向の一例である。
【0017】
撮像部3は、ラインセンサである。撮像部3は、検査対象物100の幅方向に沿って一列に配置された複数の光電変換素子(不図示)を有している。すなわち、撮像部3は、検査対象物100の幅方向に沿った線状の画像を取得する。ここで、画像は、画像データ、各光電変換素子に対応した画素毎の輝度値のデータ、輝度値のデータ列とも称されうる。各撮像素子では、例えば256階調で輝度値のデータが取得される。撮像部3は、撮像される各時刻で、1次元の画像を取得する。モノクロ(白黒)の撮像部3の場合、各撮像素子について一つの画像データが取得され、カラーの撮像部3の場合、各撮像素子について複数(例えば、R(赤)、G(緑)、B(青)の三つ)の画像データが取得される。
【0018】
図3は、検査装置1で取得される画像IA1および画像IA2の説明図である。光源2U,2Dによる検査対象物100への光の照射は、交互に実行される。そして、撮像部3による撮像と、光源2U,2Dによる検査対象物100への光の照射、すなわち光源2U,2Dの発光の切り替えとが、同期されている。図3に示されるように、撮像部3は、光源2Uからの光で搬送方向に対する斜め後方(後側)から照らされている際の検査対象物100の1次元の画像IL1と、光源2Dからの光で搬送方向に対する斜め前方(前側)から照らされている際の検査対象物100の1次元の画像IL2とを、交互に取得する。画像IL1は、第一画像の一例であり、第一ライン画像と称され、図3中では「1」と表記される。画像IL2は、第二画像の一例であり、第二ライン画像と称され、図3中では「2」と表記される。画像処理部204(図6,7参照)は、光源2Uからの光で照らされている際の検査対象物100の画像IL1を取得順に並べて2次元の画像IA1を得ることができるとともに、光源2Dからの光で照らされている際の検査対象物100の画像IL2を取得順に並べて2次元の画像IA2を得ることができる。画像IA1は、第一画像の一例であり、第一エリア画像とも称されうる。画像IA2は、第二画像の一例であり、第二エリア画像とも称されうる。
【0019】
光源2U,2Dからの光の切り替えの周波数、すなわち撮像部3によるライン毎の撮像の周波数は、比較的高い値(例えば6kHz等)に設定される。よって、画像IA1,IA2を、検査対象物100の表面100a(ただし半分)を静止状態でエリアセンサ(2次元の領域を撮像する撮像部)によって撮像した画像に類似させることができる。ラインセンサは、エリアセンサより分解能が比較的高く、また応答性も比較的高い。よって、ラインセンサを用いることで、より精度の高い異常検出(検査)が可能となる場合がある。
【0020】
図4は、検査装置1で取得された画像IA1、すなわち図3の処理によって得られた画像IA1の例示的な模式図である。撮像部3Uは、複数のミラー4L,4Rを介して検査対象物100の画像を取得するため、図4に示されるように、一つの撮像部3Uによって撮影された複数のライン画像IL1から得られたエリア画像IA1には、検査対象物100の複数の画像Ia,Ibが含まれる。図2を参照すれば、これら画像Ia,Ibが、検査対象物100の撮像部3Uとは反対側を、撮像部3Uと検査対象物100とを結ぶ線L(図2参照)から両側に外れた位置より見た画像と等価であり、画像Iaおよび画像Ibが、検査対象物100の表面100aのそれぞれ別の場所の画像であることがわかる。なお、エリア画像IA1には、画像Iaと画像Ibとの間に、検査対象物100のミラー4L,4Rを介さない画像Inが含まれている。しかしながら、撮像部3Uの焦点は、画像Ia,Ibに対応して設定されるため、画像Inはぼけている。よって、画像Inは、異常検出には用いられない。また、これら画像Ia,Ib,Inの背景は、暗く設定されている。画像処理部204は、エリア画像IA1,IA2中の画像Iaについて画像処理を実行することにより、検査部10Uにおいて表面100aの画像Iaが撮影された場所について異常を検出するとともに、エリア画像IA1,IA2中の画像Ibについて画像処理を実行することにより、検査部10Uにおいて表面100aの画像Ibが撮影された場所について異常を検出する。そして、画像処理部204は、もう一つの撮像部3Dによって撮影されたライン画像から得られたエリア画像IA1,IA2にも、同様の画像処理を実行することにより、検査部10Dにおいて表面100aの画像Iaが撮影された場所および検査部10Dにおいて表面100aの画像Ibが撮影された場所についても、異常を検出する。上述したように、検査部10Uと検査部10Dとで、撮像部3および光学部品4の配置が逆である。よって、画像処理部204は、表面100aの周方向に異なる4箇所について、異常を検出することができる。
【0021】
図5は、検査装置1のブロック図である。図5に示されるように、検査装置1は、例えば、central processing unit(CPU)のような制御部20や、read only memory(ROM21)、random access memory(RAM22)、solid state drive(SSD23)、光照射コントローラ24、撮像コントローラ25、搬送コントローラ26、表示コントローラ27等を備えている。なお、検査装置1は、SSD23に替えて、hard disk drive(HDD)を備えてもよい。
【0022】
光照射コントローラ24は、制御部20からの制御信号に基づいて、光源2U,2Dの発光および消光(発光停止)を制御する。なお、開閉を切り替えて光の透過と遮断とを切り替えるシャッター等の可変装置が設けられた場合には、光照射コントローラ24は、当該可変装置の動作を制御する。撮像コントローラ25は、制御部20からの制御信号に基づいて、撮像部3による撮像を制御する。搬送コントローラ26は、制御部20から受けた制御信号に基づいて、搬送装置30を制御し、検査対象物100の搬送、例えば、搬送の開始や、停止、速度等を、制御する。表示コントローラ27は、制御部20からの制御信号に基づいて、表示装置40を制御する。また、制御部20は、不揮発性の記憶部としてのROM21やSSD23等にインストールされたプログラム(アプリケーション)を読み出して実行する。RAM22は、制御部20がプログラムを実行して種々の演算処理を実行する際に用いられる各種データを一時的に記憶する。なお、図5に示されるハードウエアの構成はあくまで一例であって、例えばチップやパッケージにする等、種々に変形して実施することが可能である。また、各種演算処理は、並列処理することが可能であり、制御部20等は、並列処理が可能なハードウエア構成とすることが可能である。
【0023】
図6は、制御部20のブロック図であり、図7は、画像処理部204のブロック図である。制御部20および画像処理部204は、ハードウエアとソフトウエア(プログラム)との協働によって、検査装置1の少なくとも一部として機能(動作)する。
【0024】
図6に示されるように、制御部20は、光照射制御部201や、撮像制御部202、搬送制御部203、画像処理部204、表示制御部205等として機能する。光照射制御部201は、光照射コントローラ24を制御する。撮像制御部202は、撮像コントローラ25を制御する。搬送制御部203は、搬送コントローラ26を制御する。画像処理部204は、撮像部3が取得した画像データを画像処理する。この画像処理部204による画像処理によって、検査対象物100の異常が検出される。よって、画像処理部204は、異常検出部の一例である。表示制御部205は、表示装置40を制御する。表示装置40は、例えば、liquid crystal display(LCD)や、organic electroluminescent display(OELD)等である。
【0025】
図7に示されるように、画像処理部204は、画像取得部204a、シェーディング補正部204b、差分画像取得部204c、異常候補領域検出部204d、指標算出部204e、および異常検出部204fを有している。
【0026】
ここで、検査装置1が、外周に螺旋状の凹部または凸部を有した検査対象物100の表面100aの検査を実行する手順について説明する。図8は、検査装置1による異常の検出手順のフローチャートである。螺旋状の凹部または凸部は、例えば、溝や、突起、段差等であり、これらは、例えば、テープや、リボン、ワイヤのような螺旋状の巻回物を有している場合に、形成されやすい。巻回物は、例えば、長手方向に一定のピッチで巻かれる。巻回物には、外周に露出するものと、露出しないものとがある。巻回物が外周に露出せず、外壁(壁部)の内部に巻回物が設けられた場合にあっては、当該巻回物を覆う部分が螺旋状に突出する。
【0027】
画像処理部204は、まず、画像取得部204aとして機能し、画像IA1,IA2を取得する(図8のS10)。
【0028】
図9は、画像IA1中の画像Iaを示し、図10は、画像IA2中の画像Iaを示している。図9の画像IA1では、画像Iaの幅方向の一方(図9における右側)が明るく、図10の画像IA2では、画像Iaの幅方向の他方(図9における左側)が明るい。このように、外周に螺旋状の凹部または凸部を有した検査対象物100の画像IA1,IA2内では、当該螺旋形状に起因した場所による輝度の変化(輝度のむら)が生じ、さらに、長手方向における光の照射方向の逆転により、画像IA1,IA2内における明るい場所が短手方向に逆転する、という現象が生じる。
【0029】
発明者らの鋭意研究により、表面100aに生じた凹凸不良には、画像IA1と画像IA2とで明るさに差が生じるため、画像IA1と画像IA2との差分画像において輝度差が比較的大きい領域として検出できるものがあることが、判明した。しかしながら、画像IA1,画像IA2において、上述したような表面100aの螺旋形状に伴う輝度のむらが生じている場合、差分画像において、当該螺旋形状に起因する輝度差が生じるため、輝度差が比較的大きい領域が、凹凸不良に起因するものなのか、螺旋形状に起因するものなのか、を判別することができず、異常検出の精度が低下してしまう虞がある。
【0030】
そこで、発明者らは鋭意研究を重ねた結果、画像IA1,IA2にそれぞれシェーディング補正を施すことにより、画像IA1,IA2における螺旋形状に伴う輝度のむらを減らすことができ、シェーディング補正された画像IA1’,IA2’(図11,12)およびそれらの差分画像IS(図13)においては、螺旋形状に起因した輝度差の影響を低減できるという知見を得た。なお、以下では、シェーディング補正された画像IA1’をシェーディング画像IA1’と称し、シェーディング補正された画像IA2’をシェーディング画像IA2’と称する。シェーディング画像IA1’は、第一シェーディング画像の一例であり、シェーディング画像IA2’は、第二シェーディング画像の一例である。
【0031】
よって、画像処理部204は、図8のS10の後、シェーディング補正部204bとして機能し、画像IA1,IA2に、それぞれ、シェーディング補正を施す(図8のS11)。S11におけるシェーディングのパラメータは適宜に調整されうる。
【0032】
図11は、シェーディング画像IA1’中の画像Iaであり、図12は、シェーディング画像IA2’中の画像Iaである。図11図9と比較し、図12図10と比較し、かつ図11図12とを比較することにより、画像IA1,IA2のそれぞれにシェーディング補正を施すことによって、螺旋形状に伴う輝度のむらを低減できることがわかる。
【0033】
次に、画像処理部204は、図8のS11の後、差分画像取得部204cとして機能し、シェーディング画像IA1’とシェーディング画像IA2’との差分画像ISを取得する(図8のS12)。シェーディング画像IA1’とシェーディング画像IA2’との差分画像は、差分の絶対値の画像であり、以下ではこれをシェーディング差分画像ISと称する。シェーディング差分画像ISは、差分画像の一例である。
【0034】
図13は、シェーディング差分画像ISにおける画像Iaである。図13から、シェーディング差分画像IS中には、破線で囲まれた領域D1内に、凹凸不良に対応した他の部位よりも差分の絶対値が大きい部位Id1があり、当該部位Idを凹凸不良として検出できることがわかる。
【0035】
このような異常を検出するため、画像処理部204は、図8のS12の後、異常候補領域検出部21dとして機能し、例えば、シェーディング差分画像ISに対して、二値化、グルーピング、およびラベリングを実行し、差分絶対値が差分閾値(二値化閾値)以上である互いに隣接した複数の画素で構成された領域であって、当該領域の面積(画素数)が面積閾値(画素数閾値)以上であるラベリングされた領域を、異常候補領域として検出する(図8のS13)。
【0036】
ところで、図14は、シェーディング画像IA1’中の画像Ibであり、図15は、シェーディング画像IA2’中の画像Ibであり、図16は、図14のシェーディング画像IA1’と、図15のシェーディング画像IA2’とから得られたシェーディング差分画像IS中の画像Ibである。図14~16中には、それぞれ、破線で囲まれた領域D2内に、マーキング(レーザーマーキング)に対応した他の部位よりも差分の絶対値が大きい部位Id2があり、当該部位Id2をマーキングとして検出できることがわかる。しかしながら、マーキングは、異常では無いため、凹凸不良とは区別して検出されるのが便利である。また、汚れも、マーキングと同様に検出されるが、汚れは凹凸不良とは対応が異なるため、凹凸不良とは区別して検出されるのが便利である。
【0037】
そこで、発明者らは鋭意研究を重ねた結果、レーザーマーキングや汚れに基づく異常候補領域と凹凸不良に基づく異常候補領域とを、二つの特徴によって区別可能であるという知見を得た。
【0038】
図17は、異常候補領域毎の二つの特徴を示すプロット図である。図17において、横軸は、S13で検出された異常候補領域におけるシェーディング画像IA1’中の輝度値の平均値、およびS13で検出された異常候補領域におけるシェーディング画像IA2’中の輝度値の平均値のうち、低い方の値Xである。ここに、異常候補領域におけるシェーディング画像IA1’中の輝度値の平均値は、第一代表値の一例であり、異常候補領域におけるシェーディング画像IA2’中の輝度値の平均値は、第二代表値の一例である。なお、第一代表値および第二代表値は、平均値には限定されない。値Xは、第一指標の一例である。
【0039】
また、図17において、縦軸は、S13で検出された異常候補領域におけるシェーディング差分画像IS中の各画素の輝度値(差分絶対値)の平均値(代表値)Yである。シェーディング差分画像IS中の各画素の輝度値の平均値Yは、第三代表値および第二指標の一例である。第三代表値は、平均値には限定されない。例えば、第一代表値、第二代表値、および第三代表値は、いずれも中央値のような平均値とは異なる代表値であってもよい。
【0040】
発明者らは、多数のサンプルを解析することにより、マーキングまたは汚れとしての異常候補領域(図17中の黒丸)は、X>Th1かつY<Th2となり、凹凸不良としての異常候補領域(図17中の白丸)は、X≦Th1またはY≧Th1となることを、見出した。閾値Th1は、第一閾値の一例であり、閾値Th2は、第二閾値の一例である。
【0041】
このような区別を実行するため、画像処理部204は、図8のS13の後、指標算出部204eとして機能し、上述した値Xおよび平均値Yを算出する(図8のS14)。そして、画像処理部204は、異常検出部204fとして機能し、値Xと閾値Th1との比較、および平均値Yと閾値Th2との比較に基づいて、マーキングまたは汚れとしての異常候補領域とは区別して、凹凸不良としての異常候補領域を、異常として検出する(図8のS15)。指標算出部204eは、第一指標算出部の一例であり、第二指標算出部の一例でもある。
【0042】
なお、S15においては、X>Th1かつY<Th2となるマーキングまたは汚れとしての異常候補領域と、X≦Th1またはY≧Th2となる凹凸不良としての異常候補領域とが区別されたが、これには限定されない。例えば、図17中に示す判別関数F(X)=a・X+bに対するYの大小によって、区別されてもよい。この場合、F(X)<Yとなる異常候補領域は、マーキングまたは汚れとしての異常候補領域であり、F(X)≧Yとなる異常候補領域は、凹凸不良としての異常候補領域であると、区別されうる。また、例えば、値Xおよび平均値Yが図17中の楕円のような破線の閉ループLc内となる異常候補領域がマーキングまたは汚れとしての異常候補領域であり、値Xおよび平均値Yが閉ループLc上または閉ループLc外となる異常候補領域が凹凸不良としての異常候補領域であると区別されてもよい。すなわち、S15においては、異常検出部204fは、第一指標および第二指標が所定条件を満たす異常候補領域を、異常領域として検出する。
【0043】
以上、説明したように、本実施形態では、異常検出部204fは、シェーディング画像IA1’(第一シェーディング画像)とシェーディング画像IA2’(第二シェーディング画像)とのシェーディング差分画像IS(差分画像)から異常を検出する。これにより、例えば、画像中の場所による輝度のむらを低減あるいは排除することができるので、より精度良く不良(異常)を検出することができる。
【0044】
また、検査対象物100は、外周に螺旋状の凹部または凸部を有した長尺状の検査対象物100であって画像IA1(第一画像)と画像IA2(第二画像)とで明るい領域と暗い領域とが長手方向と交叉する方向(短手方向)に逆転する検査対象物100である。上述したように、異常検出部204fがシェーディング差分画像ISから異常を検出することにより、画像IA1および画像IA2に生じる螺旋形状に伴う輝度のむらに基づく誤検出を、抑制することができる。
【0045】
また、異常検出部204fは、値X(第一指標)および平均値Y(第二指標)が所定条件を満たす異常候補領域を、異常領域として検出する。また、異常検出部204fは、検出された異常候補領域のうち、値Xが閾値Th1(第一閾値)よりも小さいかあるいは平均値Yが閾値Th2(第二閾値)よりも大きい異常候補領域を、異常領域として検出する。これにより、マーキングまたは汚れと区別して、凹凸異常を検出することができる。
【0046】
以上、本発明の実施形態を例示したが、上記実施形態はあくまで一例である。実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、組み合わせ、変更を行うことができる。また、実施形態の構成や形状は、部分的に他の構成や形状と入れ替えて実施することも可能である。また、各構成や形状等のスペック(構造や、種類、方向、角度、形状、大きさ、長さ、幅、厚さ、高さ、数、配置、位置、材質等)は、適宜に変更して実施することができる。例えば、検査対象物は、長尺状部品以外であってもよい。また、検査装置は、上述した異常以外の異常を画像処理で検出することができる。また、検査装置は、静止状態で取得された画像に対して検査を実行してもよい。また、光学部品はミラー以外(例えば、レンズ、プリズム等)であってもよい。また、画像中に検査対象物の三つ以上の部位が含まれてもよい。また、撮像部は、幅方向と交叉する方向(斜め方向)に延びた線状の画像を取得してもよい。また、撮像部は、三つ以上設けられてもよい。また、判別関数は1次関数には限定されない。
【符号の説明】
【0047】
1…検査装置(画像検査装置)、204a…画像取得部、204b…シェーディング補正部、204d…異常候補領域検出部、204e…指標算出部(第一指標算出部、第二指標算出部)、204f…異常検出部、100…検査対象物、100a…表面(検査対象面)、IA1…画像(第一画像)、IA2…画像(第二画像)、IA1’…シェーディング画像(第一シェーディング画像)、IA2’…シェーディング画像(第二シェーディング画像)、IS…シェーディング差分画像(差分画像)、Th1…閾値(第一閾値)、Th2…閾値(第二閾値)。
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