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特許7165569リチウムイオン二次電池用正極ペースト及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-26
(45)【発行日】2022-11-04
(54)【発明の名称】リチウムイオン二次電池用正極ペースト及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/1391 20100101AFI20221027BHJP
   H01M 4/525 20100101ALI20221027BHJP
   H01M 4/505 20100101ALI20221027BHJP
   H01M 4/62 20060101ALI20221027BHJP
【FI】
H01M4/1391
H01M4/525
H01M4/505
H01M4/62 Z
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018226272
(22)【出願日】2018-12-03
(65)【公開番号】P2020091938
(43)【公開日】2020-06-11
【審査請求日】2021-11-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000000240
【氏名又は名称】太平洋セメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000084
【氏名又は名称】特許業務法人アルガ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】平山 愉子
(72)【発明者】
【氏名】山下 弘樹
(72)【発明者】
【氏名】大神 剛章
【審査官】宮田 透
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-147054(JP,A)
【文献】国際公開第2016/080145(WO,A1)
【文献】特開2018-154545(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/13- 4/1399
H01M 4/36- 4/62
H01M 10/05-10/0587
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の成分(A)、(B)、並びに(C):
(A)下記式(i)又は(ii)で表される1種又は2種以上のリチウム複合酸化物粒子(a)からなるリチウム複合酸化物二次粒子、
LiNiaCobMnc1 x2・・・(i)
(式(i)中、M1はMg、Ti、Nb、Fe、Cr、Si、Al、Ga、V、Zn、Cu、Sr、Mo、Zr、Sn、Ta、W、La、Ce、Pb、Bi及びGeから選ばれる1種又は2種以上の元素を示す。a、b、c、xは、0.3≦a<1、0<b≦0.7、0<c≦0.7、0≦x≦0.3、かつ3a+3b+3c+(M1の価数)×x=3を満たす数を示す。)
LiNidCoeAlf2 y2・・・(ii)
(式(ii)中、M2はMg、Ti、Nb、Fe、Cr、Si、Ga、V、Zn、Cu、Sr、Mo、Zr、Sn、Ta、W、La、Ce、Pb、Bi及びGeから選ばれる1種又は2種以上の元素を示す。d、e、f、yは、0.4≦d<1、0<e≦0.6、0<f≦0.3、0≦y≦0.3、かつ3d+3e+3f+(M2の価数)×y=3を満たす数を示す。)
(B)SiO 2 、TiO 2 、Al 2 3 、Y 2 3 、ZrO 2 、CeO 2 、Y 3 Al 5 12 、BaTiO 3 、MgO-Al 2 3 -SiO 2 、SiO 2 -Al 2 3 、SiO 2 -TiO 2 、SiO 2 -ZrO 2 、TiO 2 -ZrO 2 、SiO 2 -Al 2 3 -ZrO 2 からなるセラミックスナノ粒子が直線的に多数配列してなるセラミックスナノ粒子集合体、並びに
(C)結着剤
を含有し、かつ
成分(A)の含有量と成分(B)の含有量との質量比((A):(B))が99.9:0.1~95:5であるリチウムイオン二次電池用正極ペースト。
【請求項2】
成分(A)と成分(B)の合計含有量((A)+(B))と、成分(C)の含有量との質量比(((A)+(B)):(C))が、99.5:0.5~87.5:12.5である、請求項1に記載のリチウムイオン二次電池用正極ペースト。
【請求項3】
成分(B)を構成するセラミックスナノ粒子の平均粒径が、0.1nm~30nmである、請求項1又は2に記載のリチウムイオン二次電池用正極ペースト。
【請求項4】
結着剤(C)を含有するペーストに、下記式(i)又は(ii):
LiNiaCobMnc1 x2・・・(i)
(式(i)中、M1はMg、Ti、Nb、Fe、Cr、Si、Al、Ga、V、Zn、Cu、Sr、Mo、Zr、Sn、Ta、W、La、Ce、Pb、Bi及びGeから選ばれる1種又は2種以上の元素を示す。a、b、c、xは、0.3≦a<1、0<b≦0.7、0<c≦0.7、0≦x≦0.3、かつ3a+3b+3c+(M1の価数)×x=3を満たす数を示す。)
LiNidCoeAlf2 y2 ・・・(ii)
(式(ii)中、M2はMg、Ti、Nb、Fe、Cr、Si、Ga、V、Zn、Cu、Sr、Mo、Zr、Sn、Ta、W、La、Ce、Pb、Bi及びGeから選ばれる1種又は2種以上の元素を示す。d、e、f、yは、0.4≦d<1、0<e≦0.6、0<f≦0.3、0≦y≦0.3、かつ3d+3e+3f+(M2の価数)×y=3を満たす数を示す。)
で表される1種又は2種以上のリチウム複合酸化物粒子(a)からなるリチウム複合酸化物二次粒子(A)と、
SiO 2 、TiO 2 、Al 2 3 、Y 2 3 、ZrO 2 、CeO 2 、Y 3 Al 5 12 、BaTiO 3 、MgO-Al 2 3 -SiO 2 、SiO 2 -Al 2 3 、SiO 2 -TiO 2 、SiO 2 -ZrO 2 、TiO 2 -ZrO 2 、SiO 2 -Al 2 3 -ZrO 2 からなるセラミックスナノ粒子が直線的に多数配列してなるセラミックスナノ粒子集合体(B)とを、質量比((a):(B))で99.9:0.1~95:5として添加し、次いで混練する工程
を備える、リチウムイオン二次電池用正極ペーストの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、層状岩塩構造を有するリチウムイオン二次電池用正極を用いた二次電池におけるサイクル特性を有効に高めることのできる、リチウムイオン二次電池用正極ペースト、及びそのリチウムイオン二次電池用正極ペーストの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、リチウム複合酸化物は高出力及び高容量のリチウムイオン二次電池を構成できる正極活物質として使用されている。かかるリチウム複合酸化物は、リチウム原子層と遷移金属原子層とが、酸素原子層を介して交互に積み重なった層状結晶構造を呈し、遷移金属の1原子あたりに1個のリチウム原子が含まれる、いわゆる層状岩塩構造を有することでも知られている。
【0003】
こうしたリチウム複合酸化物を正極活物質として用いたリチウムイオン二次電池では、リチウムイオンがリチウム複合酸化物に脱離・挿入されることによって充電・放電が行われるが、通常、充放電サイクルを重ねるにつれて容量低下が生じ、特に長期間使用すると、電池の容量低下が著しくなるおそれがある。これは、充電時にリチウム複合酸化物の遷移金属成分が電解液へ溶出することにより、かかる結晶構造の崩壊が生じやすくなることが原因であると考えられている。リチウム複合酸化物の結晶構造の崩壊が生じると、リチウム複合酸化物からの酸素の放出や、遷移金属成分の電解液への溶出が起こり、熱的安定性が低下して安全性が損なわれるおそれもある。
【0004】
ところが、例えば車載用電池に使用される電池材料には、1000サイクル以上もの多数回にわたる充放電サイクルを経ても一定以上の電池容量を維持できるような、優れた耐久性能を有することが要求されており、これに応じるべく種々の開発がなされている。例えば、特許文献1には、セラミックス含有層で被覆された正極活物質層を具備する正極を備えたリチウムイオン二次電池が開示されている。ここでは、リチウムイオン二次電池の熱的安定性を高めるべく、正極活物質として層状岩塩構造のリチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物とともに結着剤を用い、平均粒子径が0.1μm~10μmのセラミックスをリチウム複合酸化物の表面に被覆させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2018-41675号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、結着剤によってセラミックスがリチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物の表面に強固に被覆されてなることが起因となり、充放電に伴うリチウム複合酸化物の膨張収縮や結着剤の配合量の変動等によっては、セラミックス被覆層に剥がれが生じたり、リチウム複合酸化物の損傷の進行が加速したりするため、依然としてサイクル特性を充分に高めるには至らず、さらなる改善を要する状況である。
【0007】
したがって、本発明の課題は、リチウムイオン二次電池のサイクル特性を有効に向上させることのできる、リチウム複合酸化物含有の正極を形成するためのリチウムイオン二次電池用正極ペースト、及びその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そこで本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を行った結果、結着剤を含有するとともに、特定のリチウム複合酸化物二次粒子と特異な配列構造を有するセラミックスナノ粒子集合体とを特定の質量比で含有する正極ペーストであれば、これを用いて得られる正極により、サイクル特性に優れたリチウムイオン二次電池が構築できることを見出した。
【0009】
すなわち、本発明は、次の成分(A)、(B)、並びに(C):
(A)下記式(i)又は(ii)で表される1種又は2種以上のリチウム複合酸化物粒子(a)からなるリチウム複合酸化物二次粒子、
LiNiaCobMnc1 x2・・・(i)
(式(i)中、M1はMg、Ti、Nb、Fe、Cr、Si、Al、Ga、V、Zn、Cu、Sr、Mo、Zr、Sn、Ta、W、La、Ce、Pb、Bi及びGeから選ばれる1種又は2種以上の元素を示す。a、b、c、xは、0.3≦a<1、0<b≦0.7、0<c≦0.7、0≦x≦0.3、かつ3a+3b+3c+(M1の価数)×x=3を満たす数を示す。)
LiNidCoeAlf2 y2・・・(ii)
(式(ii)中、M2はMg、Ti、Nb、Fe、Cr、Si、Ga、V、Zn、Cu、Sr、Mo、Zr、Sn、Ta、W、La、Ce、Pb、Bi及びGeから選ばれる1種又は2種以上の元素を示す。d、e、f、yは、0.4≦d<1、0<e≦0.6、0<f≦0.3、0≦y≦0.3、かつ3d+3e+3f+(M2の価数)×y=3を満たす数を示す。)
(B)Li、Co、Ag、Au、Zn、In、Pt、Rh、Pd、Ru、Fe、Ni、Cu、Cd、Al、Ga、Tl、Si、Ge、Sn、Pb、Ti、Zr、Mn、Eu、Y、Nb、Ce及びBaから選ばれる1種又は2種以上の金属元素からなるセラミックスナノ粒子が直線的に多数配列してなるセラミックスナノ粒子集合体、並びに
(C)結着剤
を含有し、かつ
成分(A)の含有量と成分(B)の含有量との質量比((A):(B))が99.9:0.1~95:5であるリチウムイオン二次電池用正極ペーストを提供するものである。
【0010】
また、本発明は、結着剤(C)を含有するペーストに、下記式(i)又は(ii):
LiNiaCobMnc1 x2・・・(i)
(式(i)中、M1はMg、Ti、Nb、Fe、Cr、Si、Al、Ga、V、Zn、Cu、Sr、Mo、Zr、Sn、Ta、W、La、Ce、Pb、Bi及びGeから選ばれる1種又は2種以上の元素を示す。a、b、c、xは、0.3≦a<1、0<b≦0.7、0<c≦0.7、0≦x≦0.3、かつ3a+3b+3c+(M1の価数)×x=3を満たす数を示す。)
LiNidCoeAlf2 y2 ・・・(ii)
(式(ii)中、M2はMg、Ti、Nb、Fe、Cr、Si、Ga、V、Zn、Cu、Sr、Mo、Zr、Sn、Ta、W、La、Ce、Pb、Bi及びGeから選ばれる1種又は2種以上の元素を示す。d、e、f、yは、0.4≦d<1、0<e≦0.6、0<f≦0.3、0≦y≦0.3、かつ3d+3e+3f+(M2の価数)×y=3を満たす数を示す。)
で表される1種又は2種以上のリチウム複合酸化物粒子(a)からなるリチウム複合酸化物二次粒子(A)と、
Li、Co、Ag、Au、Zn、In、Pt、Rh、Pd、Ru、Fe、Ni、Cu、Cd、Al、Ga、Tl、Si、Ge、Sn、Pb、Ti、Zr、Mn、Eu、Y、Nb、Ce及びBaから選ばれる1種又は2種以上の金属元素からなるセラミックスナノ粒子が直線的に多数配列してなるセラミックスナノ粒子集合体(B)とを、質量比((a):(B))で99.9:0.1~95:5として添加し、次いで混練する工程
を備える、リチウムイオン二次電池用正極ペーストの製造方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明のリチウムイオン二次電池用正極ペーストによれば、特定のリチウム複合酸化物二次粒子とともに特定の質量比で含有される特異な配列構造を有するセラミックスナノ粒子集合体を含有するものであるため、かかるペーストによって形成される正極を用いてリチウムイオン二次電池を構築すれば、リチウム複合酸化物二次粒子の充放電に伴う体積変化を過度に拘束することがなく、またリチウム複合酸化物粒子の結晶構造の崩壊を有効に抑制して、非水系電解液への遷移金属溶出も効果的に減じることができ、優れたサイクル特性の付与が可能となる。
したがって、本発明のリチウムイオン二次電池用正極ペーストは、正極と負極と非水系電解液とセパレータを必須構成とする二次電池において、有用性の高い電池材料として活用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明のリチウムイオン二次電池用正極ペーストは、次の成分(A)、(B)、並びに(C):
(A)下記式(i)又は(ii)で表される1種又は2種以上のリチウム複合酸化物粒子(a)からなるリチウム複合酸化物二次粒子、
LiNiaCobMnc1 x2・・・(i)
(式(i)中、M1はMg、Ti、Nb、Fe、Cr、Si、Al、Ga、V、Zn、Cu、Sr、Mo、Zr、Sn、Ta、W、La、Ce、Pb、Bi及びGeから選ばれる1種又は2種以上の元素を示す。a、b、c、xは、0.3≦a<1、0<b≦0.7、0<c≦0.7、0≦x≦0.3、かつ3a+3b+3c+(M1の価数)×x=3を満たす数を示す。)
LiNidCoeAlf2 y2・・・(ii)
(式(ii)中、M2はMg、Ti、Nb、Fe、Cr、Si、Ga、V、Zn、Cu、Sr、Mo、Zr、Sn、Ta、W、La、Ce、Pb、Bi及びGeから選ばれる1種又は2種以上の元素を示す。d、e、f、yは、0.4≦d<1、0<e≦0.6、0<f≦0.3、0≦y≦0.3、かつ3d+3e+3f+(M2の価数)×y=3を満たす数を示す。)
(B)Li、Co、Ag、Au、Zn、In、Pt、Rh、Pd、Ru、Fe、Ni、Cu、Cd、Al、Ga、Tl、Si、Ge、Sn、Pb、Ti、Zr、Mn、Eu、Y、Nb、Ce及びBaから選ばれる1種又は2種以上の金属元素からなるセラミックスナノ粒子が直線的に多数配列してなるセラミックスナノ粒子集合体、並びに
(C)結着剤
を含有し、かつ
成分(A)の含有量と成分(B)の含有量との質量比((A):(B))が99.9:0.1~95:5である
【0013】
本発明のリチウムイオン二次電池用正極ペーストは、成分(A)として、上記式(i)又は(ii)で表される1種又は2種以上のリチウム複合酸化物粒子(a)からなるリチウム複合酸化物二次粒子を含有する。
上記式(i)で表されるリチウム複合酸化物(いわゆるLi-Ni-Co-Mn酸化物であり、以後「NCM系複合酸化物」と称する。)粒子、及び上記式(ii)で表されるリチウムニッケル複合酸化物(いわゆるLi-Ni-Co-Al酸化物であり、以後「NCA系複合酸化物」と称する。)粒子は、いずれも層状岩塩構造を有する粒子(a)である。
これらの粒子(a)は、凝集することによって、リチウム複合酸化物二次粒子(A)を形成する。
【0014】
上記式(i)中のM1は、Mg、Ti、Nb、Fe、Cr、Si、Al、Ga、V、Zn、Cu、Sr、Mo、Zr、Sn、Ta、W、La、Ce、Pb、Bi及びGeから選ばれる1種又は2種以上の元素を示す。また、上記式(i)中のa、b、c、xは、0.3≦a<1、0<b≦0.7、0<c≦0.7、0≦x≦0.3、かつ3a+3b+3c+(M1の価数)×x=3を満たす数である。
【0015】
上記式(i)で表されるNCM系複合酸化物粒子(a)において、Ni、Co及びMnは、電子伝導性に優れ、電池容量及び出力特性に寄与することが知られている。また、サイクル特性の観点からは、かかる遷移元素の一部が他の金属元素M1により置換されていることが好ましい。これら金属元素M1が置換することにより、式(i)で表されるNCM系複合酸化物粒子の結晶構造が安定化されるため、充放電を繰り返しても結晶構造の崩壊が抑制でき、優れたサイクル特性が実現し得ると考えられる。
上記式(i)で表されるNCM系複合酸化物粒子(a)としては、具体的には、例えばLiNi1/3Co1/3Mn1/32、LiNi0.8Co0.1Mn 0.12、LiNi0.6Co0.2Mn 0.22、LiNi0.2Co0.4Mn0.42、LiNi0.33Co0.31Mn0.33Mg0.032、及びLiNi0.33Co0.31Mn0.33Zn0.032等からなる粒子が挙げられる。なかでもLiNi1/3Co1/3Mn1/32、LiNi0.33Co0.31Mn0.33Mg0.032からなる粒子が好ましい。
【0016】
さらに、互いに異なる2種以上の上記式(i)で表されるNCM系複合酸化物粒子(a)は、コア部(内部)とシェル部(表層部)とを有するコア-シェル構造のリチウム複合酸化物二次粒子(A)(NCM系複合酸化物二次粒子(A))を形成してもよい。
このコア-シェル構造を形成してなるNCM系複合酸化物二次粒子(A)とすることによって、非水系電解液に溶出しやすい上に安全性に悪影響を与える酸素を放出しやすいNi濃度の高いNCM系複合酸化物粒子をコア部に配置し、非水系電解液に接するシェル部にはNi濃度の低いNCM系複合酸化物粒子を配置することができるので、サイクル特性の低下の抑制と安全性の確保をより向上させることができる。このとき、コア部は1相であってもよいし、組成の異なる2相以上で構成していてもよい。コア部を2相以上で構成する態様として、同心円状に複数の相が層状となって積層された構造でもよいし、コア部の表面から中心部に向けて遷移的に組成が変化する構造でもよい。
さらに、シェル部は、コア部の外側に形成されてなるものであればよく、コア部同様に1相であってもよいし、組成の異なる2相以上で構成していてもよい。
【0017】
このような組成が異なる2種以上のNCM系複合酸化物粒子(a)によってコア-シェル構造を形成してなるNCM系複合酸化物二次粒子(A)として、具体的には(コア部)-(シェル部)が、例えば(LiNi0.8Co0.1Mn 0.12)-(LiNi0.2Co0.4Mn0.42)、(LiNi0.8Co0.1Mn 0.12)-(LiNi1/3Co1/3Mn1/32)、又は(LiNi0.8Co0.1Mn 0.12)-(LiNi0.33Co0.31Mn0.33Mg0.032)等からなる粒子が挙げられる。
【0018】
上記式(i)で表されるNCM系複合酸化物粒子(a)の一次粒子としての平均粒径は、好ましくは500nm以下であり、より好ましくは300nm以下である。NCM系複合酸化物粒子の一次粒子としての平均粒径を少なくとも500nm以下にすることで、リチウムイオンの挿入及び脱離に伴う上記一次粒子の膨張収縮量を抑制することができ、粒子割れを有効に防止することができる。なお、上記一次粒子の平均粒径の下限値は特に限定されないが、ハンドリングの観点から50nm以上が好ましい。
また、上記一次粒子が凝集して形成するNCM系複合酸化物二次粒子(A)の平均粒径は、好ましくは25μm以下であり、より好ましくは5μm~20μmである。かかる二次粒子の平均粒径が25μm以下であると、サイクル特性に優れた電池を得ることができる。なお、上記二次粒子の平均粒径の下限値は特に限定されないが、ハンドリングの観点から1μm以上が好ましい。
ここで、平均粒径とは、SEM又はTEMの電子顕微鏡による観察において、数十個の粒子の粒径(長軸の長さ)の測定値の平均値を意味する。
なお、本明細書において、NCM系複合酸化物二次粒子(A)は、各々の二次粒子を形成してなるNCM系複合酸化物粒子(a)の一次粒子のみを含む。
【0019】
上記式(i)で表されるNCM系複合酸化物粒子(a)が、NCM系複合酸化物二次粒子(A)においてコア-シェル構造を形成してなる場合、コア部を形成するNCM系複合酸化物粒子(a)の一次粒子としての平均粒径は、好ましくは50nm~500nmであり、より好ましくは50nm~300nmである。そして、上記一次粒子が凝集して形成するコア部の平均粒径は、好ましくは1μm~25μmであり、より好ましくは1μm~20μmである。
また、かかるコア部の表面を被覆するシェル部を構成するNCM系複合酸化物粒子(a)の一次粒子としての平均粒径は、好ましくは50nm~500nmであり、より好ましくは50nm~300nmであって、かかる一次粒子が凝集して形成するシェル部の層厚は、好ましくは0.1μm~5μmであり、より好ましくは0.1μm~2.5μmである。
【0020】
次に、式(ii)で示されるNCA系複合酸化物粒子(a)を説明する。
上記式(ii)中のM2は、Mg、Ti、Nb、Fe、Cr、Si、Ga、V、Zn、Cu、Sr、Mo、Zr、Sn、Ta、W、La、Ce、Pb、Bi及びGeから選ばれる1種又は2種以上の元素を示す。また、上記式(ii)中のd、e、f、yは、0.4≦d<1、0<e≦0.6、0<f≦0.3、0≦y≦0.3、かつ3d+3e+3f+(M2の価数)×y=3を満たす数である。
【0021】
上記式(ii)で表されるNCA系複合酸化物粒子(a)は、式(i)で表されるNCM系複合酸化物粒子(a)よりも、さらに電池容量及び出力特性に優れている。
上記式(ii)で表されるNCA系複合酸化物粒子(a)としては、具体的には、例えばLiNi0.6Co0.2Al0.22、LiNi0.8Co0.1Al0.12、LiNi0.8Co0.15Al0.03Mg0.032、LiNi0.8Co0.15Al0.03Zn0.032等からなる粒子が挙げられる。なかでもLiNi0.8Co0.15Al0.03Mg0.032からなる粒子が好ましい。
【0022】
上記式(ii)で表されるNCA系複合酸化物粒子(a)の一次粒子としての平均粒径、上記一次粒子が凝集して形成するNCA系複合酸化物二次粒子(A)の平均粒径、並びにかかる二次粒子の内部空隙率は、上記のNCM系複合酸化物粒子と同様である。すなわち、上記式(ii)で表されるNCA系複合酸化物粒子(a)の一次粒子としての平均粒径は、好ましくは500nm以下であり、より好ましくは300nm以下であり、上記一次粒子からなるNCA系複合酸化物二次粒子(A)の平均粒径は、25μm以下であり、より好ましくは5μm~20μmである。また、上記式(ii)で表されるNCA系複合酸化物粒子(a)からなるNCA系複合酸化物二次粒子(A)の内部空隙率は、かかる二次粒子の体積100%中、4体積%~12体積%であり、5体積%~10体積%がより好ましい。
【0023】
本発明に用いるリチウム複合酸化物二次粒子(A)は、上記式(i)で表されるNCM系複合酸化物粒子(a)と上記式(ii)で表されるNCA系複合酸化物粒子(a)が混在していてもよい。その混在状態は、上記式(i)で表されるNCM系複合酸化物粒子(a)である一次粒子と上記式(ii)で表されるNCA系複合酸化物粒子(a)である一次粒子が共存してなる二次粒子を形成してもよく、また上記式(i)で表されるNCM系複合酸化物粒子(a)のみからなる二次粒子と上記式(ii)で表されるNCA系複合酸化物粒子(a)のみからなる二次粒子とが混在してもよく、さらには上記式(i)で表されるNCM系複合酸化物粒子(a)である一次粒子と上記式(ii)で表されるNCA系複合酸化物粒子(a)である一次粒子が共存してなる二次粒子、上記式(i)で表されるNCM系複合酸化物粒子(a)のみからなる二次粒子及び上記式(ii)で表されるNCA系複合酸化物粒子(a)のみからなる二次粒子とが混在するものであってもよい。そして、上記式(i)で表されるNCM系複合酸化物粒子(a)のみからなる二次粒子である場合、互いに組成が異なる2種以上のNCM系複合酸化物粒子(a)によって、コア-シェル構造を形成してなるものであってもよい。
【0024】
上記式(i)で表されるNCM系複合酸化物粒子(a)と上記式(ii)で表されるNCA系複合酸化物粒子(a)が混在する場合の、NCM系複合酸化物粒子(a)とNCA系複合酸化物粒子(a)の割合(質量%)は、求める電池特性によって適宜調整すればよい。例えば、レート特性を重視する場合には、上記式(i)で表されるNCM系複合酸化物粒子(a)が占める割合を高くするのが好ましく、具体的には、NCM系複合酸化物粒子(a)の含有量とNCA系複合酸化物粒子(a)の含有量との質量比(NCM系複合酸化物:NCA系複合酸化物)は、99.9:0.1~60:40であるのが好ましい。また、例えば、電池容量を重視する場合には、上記式(ii)で表されるNCA系複合酸化物粒子(a)が占める割合を高くするのが好ましく、具体的には、例えばNCM系複合酸化物粒子(a)の含有量とNCA系複合酸化物粒子(a)の含有量との質量比(NCM系複合酸化物:NCA系複合酸化物)は、40:60~0.1:99.9であるのが好ましい。
【0025】
本発明に用いるリチウム複合酸化物二次粒子(A)は、上記特性を有するものが得られるのであれば、その製造方法は特に限定されず、固相法や共沈法等の既知の製造方法で得られたものを使用することができる。
【0026】
本発明のリチウムイオン二次電池用正極ペーストは、成分(B)として、上記金属元素からなるセラミックスナノ粒子が直線的に多数配列してなるセラミックスナノ粒子集合体を含有する。
セラミックスナノ粒子集合体(B)は、多数のセラミックスナノ粒子が直線的に配列してなる、そろばんの積み上がった珠様又は海ぶどう様の特異な形状を呈しており、リチウム複合酸化物二次粒子(A)の表面に自由度高くランダムに配置されてなる。すなわち、かかるセラミックスナノ粒子集合体(B)は、特異な形状を呈していることにより、リチウム複合酸化物二次粒子(A)の表面に過度に固着することなく適度に密接することができ、リチウム複合酸化物二次粒子(A)に連動した柔軟な動きが可能な粒子集合体である。そのため、充放電に伴うリチウム複合酸化物二次粒子(A)の体積変化によって過度に影響を受けることがなく、またリチウム複合酸化物粒子の結晶構造の崩壊を有効に抑制することも可能となり、得られるリチウムイオン二次電池において、サイクル特性を充分に高めるのに大いに寄与することができる。
【0027】
このように、本発明に用いるセラミックスナノ粒子集合体(B)は、多数のセラミックスナノ粒子が直線的に連続して配列してなるため、セラミックスナノ粒子に凝集抑制のための表面修飾を別途施す必要がなく、さらに適度な分散状態を保持していることから、簡便にリチウムイオン二次電池用正極ペーストを製造することができる。また、後述するように、セラミックスナノ粒子を構成する金属元素を適宜選択すれば、セラミックスナノ粒子集合体(B)に優れた導電性を付与することができるため、導電助剤(D)の使用量を充分に減じつつ、リチウムイオン二次電池用正極ペーストを製造することも可能である。
【0028】
本発明に用いるセラミックスナノ粒子集合体(B)を構成するセラミックスナノ粒子とは、ナノサイズの粒子を形成することが可能な、金属元素からなる粒子であり、かかるセラミックスナノ粒子を構成する金属元素とは、Li、Co、Ag、Au、Zn、In、Pt、Rh、Pd、Ru、Fe、Ni、Cu、Cd、Al、Ga、Tl、Si、Ge、Sn、Pb、Ti、Zr、Mn、Eu、Y、Nb、Ce及びBaから選ばれる1種又は2種以上である。なかでも導電性に優れるという観点から、Li、Co、Ag、Au、Zn、In、Pt、Rh、Pd、及びRuから選ばれる1種又は2種以上の金属元素を含むのが好ましい。
【0029】
かかるセラミックスナノ粒子としては、具体的には、上記金属元素の酸化物又は複合酸化物等の粒子が挙げられ、例えば、SiO2、TiO2、ZnO2、SnO2、Al23、MnO、MnO2、NiO、Eu23、Y23、Nb23、Nb25、InO、ZnO、Fe23、Fe34、Co34、ZrO2、CeO2、VO2、V25、Y3Al512、BaTiO3、In23-SnO2、MgO-Al23-SiO2、SiO2-Al23、SiO2-TiO2、SiO2-ZrO2、TiO2-ZrO2、SiO2-Al23-ZrO2等が挙げられる。
【0030】
本発明に用いるセラミックスナノ粒子集合体(B)を構成するセラミックスナノ粒子は、微結晶粒子からなる。具体的には、かかるナノ粒子の平均粒径は、好ましくは30nm以下であり、より好ましくは25nm以下である。下限値については特に制限はないが、通常0.1nm以上である。
ここで、セラミックスナノ粒子の平均粒径とは、SEM又はTEMの電子顕微鏡による観察において、数十個のセラミックスナノ粒子の粒子径(長軸の長さ)の測定値の平均値を意味する。
【0031】
また、セラミックスナノ粒子の晶癖(形状)としては、板状、針状、六面体、柱状等が挙げられる。なかでも、隣り合うセラミックスナノ粒子同士の接合が強固である観点及び電極内での導電パスを確保する観点から、セラミックスナノ粒子集合体(B)の軸長方向に伸延した六面体粒子が好ましい。
【0032】
なお、本発明に用いるセラミックスナノ粒子集合体(B)は、粒子径や形状が均一なセラミックスナノ粒子の集合体であることが好ましいが、粒子径や形状が異なるセラミックスナノ粒子の集合体であってもよく、また化学組成が異なる2種以上のセラミックスナノ粒子の集合体であってもよい。
【0033】
本発明に用いるセラミックスナノ粒子集合体(B)に関する製造方法としては、既知の方法、例えば、特開2018-154545号公報記載の製造方法を用いればよい。具体的には、上記金属元素を含むセラミックス粒子の原料化合物、並びにセルロースナノファイバー又はリグノセルロースナノファイバーを含有するスラリーを調製した後、得られたスラリーを、温度が100℃以上、圧力が0.3~0.9MPaの水熱反応に付すことによって、セルロースナノファイバーを構成要素とするセラミックスナノアレイを得た後、得られたセラミックスナノアレイを、酸素雰囲気下で200℃~1500℃にて焼成することにより、セラミックスナノ粒子集合体(B)を得ることができる。
【0034】
本発明のリチウムイオン二次電池用正極ペーストにおいて、成分(A)の含有量と成分(B)の含有量との質量比((A):(B))は、リチウム複合酸化物二次粒子の充放電に伴う体積変化への追従性を高めつつ、リチウム複合酸化物粒子の結晶構造の崩壊を有効に抑制する観点から、99.9:0.1~95:5であって、好ましくは99.8:0.2~95.5:4.5であり、より好ましくは99.5:0.5~96:4であり、さらに好ましくは99:1~97:3である。
【0035】
本発明のリチウムイオン二次電池用正極ペーストは、成分(C)として、結着剤を説明する。
結着剤(C)は、上記リチウム複合酸化物二次粒子(A)及び上記セラミックスナノ粒子集合体(B)を適度につなぎ止める役割を果たすもので、本発明に用いる結着剤(C)としては、一般的な非水系電解質二次電池で使用されているものであればよく、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、スチレン-ブタジエンゴム、フッ素ゴム等の含フッ素樹脂、エチレンプロピレンジエンゴム、セルロース系樹脂、ポリエチレン等の熱可塑性樹脂、ポリアクリル酸、ポリプロピレン等の群から選択される1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
これらのうち、電極製造における加工性、接着剤としての接着性・結着性、電気化学的な安定性及びリチウムイオンの透過性に関する総合的な観点から、本発明に用いる結着剤(C)は、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)であることが好ましい。
【0036】
成分(C)の含有量は、後述する溶剤(E)を除く本発明のリチウムイオン二次電池用正極ペースト全量100質量%中に、0.5質量%~10質量%が好ましく、1質量%~7質量%がより好ましく、1.5質量%~6質量%がさらに好ましく、2質量%~5.5質量%が特に好ましい。
成分(C)の含有量が上記下限値未満であると、本発明のリチウムイオン二次電池用正極ペーストと集電体(アルミニウム箔等)との結着性が不十分となり、形成される正極活物質層の集電体からの剥がれや割れが生じ、得られるリチウムイオン二次電池の充放電容量が低下するそれがある。一方、成分(C)の含有量が上記上限値を超えると、形成される正極活物質層内の内部抵抗が増大し、得られるリチウムイオン二次電池のレート特性が低下するおそれがある。
【0037】
本発明のリチウムイオン二次電池用正極ペーストにおいて、成分(A)と成分(B)の合計含有量((A)+(B))と、成分(C)の含有量との質量比(((A)+(B)):(C))は、本発明のリチウムイオン二次電池用正極ペーストと集電体との結着性を良好にし、形成される正極活物質層の集電体からの剥がれや割れを有効に防止する観点から、99.5:0.5~87.5:12.5であって、好ましくは99:1~93:7であり、より好ましくは98.5:1.5~94:6であり、さらに好ましくは98:2~94.5:5.5である。
【0038】
本発明のリチウムイオン二次電池用正極ペーストは、さらに導電助剤(D)を含有するのがよい。これにより、得られる正極によって充放電反応を効率的に行う上で有効な、電子伝導性を一層高めることができる。かかる導電助剤(D)としては、特に限定されるものではないが、例えば、人造黒鉛、天然黒鉛等の黒鉛(グラファイト)、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、ファーネスブラック等の有機物の熱分解物、気相成長炭素繊維(VGCF)、カーボンナノチューブ等の炭素繊維などの、炭素材料の群から選択される1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
なかでも、ストラクチャ構造を有する成分(D)をリチウム複合酸化物二次粒子(A)間に介在させて、リチウムイオンの出入りによるリチウム複合酸化物二次粒子(A)の体積変化を緩衝する作用を発揮させる観点から、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、ファーネスブラック等の有機物の熱分解物であることが好ましい。
【0039】
導電助剤(D)の含有量は、後述する溶剤(E)を除く本発明のリチウムイオン二次電池用正極ペースト全量100質量%中に、0.01質量%~20質量%が好ましく、1質量%~10質量%がより好ましく、2質量%~8質量%がさらに好ましい。
導電助剤(D)の含有量が上記下限値未満であると、本発明のリチウムイオン二次電池用正極ペーストを用いて得られる正極の電子伝導性が充分ではなく、得られるリチウムイオン二次電池のレート特性が低下するおそれがある。一方、導電助剤(D)の含有量が上記上限値を超えると、正極中の正極活物質量(リチウム複合酸化物二次粒子(A)とセラミックスナノ粒子集合体(B)の合計含有量)が相対的に減少し、得られるリチウムイオン二次電池の充放電容量が低下するおそれがある。
【0040】
また、本発明のリチウムイオン二次電池用正極ペーストは、溶剤(E)を含有してもよい。溶剤(E)は、本発明のリチウムイオン二次電池用正極ペーストを集電体(アルミニウム箔等)に塗布しやすくするために用いるもので、必要に応じて適宜混合すればよい。 溶剤(E)の種類は、結着剤(C)と、リチウム複合酸化物二次粒子(A)及びセラミックスナノ粒子集合体(B)とを、或いはさらに導電助剤(D)とを、均一に溶解又は分散可能にするものであれば特に制限されず、非プロトン性溶剤であるのが好ましい。具体的には、例えば、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール(イソプロピルアルコール:IPA)、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、オクタノール、ジアセトンアルコール等のアルコール類;酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、γ-ブチロラクトン等のエステル類;ジエチルエーテル、エチレングルコールモノメチルエーテル(メチルセロソルブ)、エチレングルコールモノエチルエーテル(エチルセロソルブ)、エチレングルコールモノブチルエーテル(ブチルセロソルブ)、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル等のエーテル類;アセトン、メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン(MIBK)、アセチルアセトン、シクロヘキサノン等のケトン類;ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドン等のアミド類;エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール等のグリコール類等が挙げられ、これら1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
なかでも、アミド類が好ましく、N-メチル-2-ピロリドンがより好ましい。
【0041】
溶剤(E)の含有量は、かかる溶剤(E)を含むリチウムイオン二次電池用正極ペースト全量100質量%中に、30質量%~70質量%となるのが好ましく、40質量%~60質量%となるのがより好ましい。このような量で溶剤(E)を用いることにより、本発明のリチウムイオン二次電池用正極ペーストの塗工性を良好にし、その結果、得られるリチウムイオン二次電池の電池特性を有効に高めることができる。
【0042】
本発明のリチウムイオン二次電池用正極ペーストは、結着剤(C)を含有するペーストに、上記式(i)又は(ii)で表される1種又は2種以上のリチウム複合酸化物粒子(a)からなるリチウム複合酸化物二次粒子(A)と、
上記セラミックスナノ粒子集合体(B)とを、質量比((A):(B))で99.9:0.1~95:5として添加し、次いで混練する工程を備える製造方法により、得ることができる。
【0043】
結着剤(C)を含有するペーストXは、少なくとも結着剤(C)を添加して混練することにより調製すればよい。この際、結着剤(C)とともに導電助剤(D)を添加してもよい。得られるペーストX中の結着剤(C)の含有量と導電助剤(D)の含有量との質量比((C):(D))は、好ましくは50:1~1:40であり、より好ましくは10:1~1:10である。
【0044】
また、ペーストXは、さらに溶剤(E)を添加して混練することにより調製してもよく、この場合、得られるペーストX中の結着剤(C)の含有量と導電助剤(D)の含有量ととの合計質量((C)+(D))と、溶剤(E)の含有量との質量比(((C)+(D)):(E))は、好ましくは1:2~1:20であり、より好ましくは1:3~1:10である。
【0045】
ペーストXの調製に際し、結着剤(C)、導電助剤(D)及び溶剤(E)の添加順序に特に制限はなく、例えば、溶剤(E)に結着剤(C)を溶解させた後、得られた溶液に導電助剤(D)を添加してもよく、或いは結着剤(C)、導電助剤(D)及び溶剤(E)を一括して添加してもよい。
【0046】
ペーストXの混練には、一般的な非水系電解質リチウムイオン二次電池の正極ペーストの製造で使用されている装置を用いることができ、例えば、ブレード遊星運動型の混練機、容器回転型の遊星運動混練機、自転・公転方式ミキサー、ホモジナイザー、リボンミキサー、スクリュー型ニーダー、スパルタンリューザー、レディゲミキサー、万能ミキサー等の公知の装置を用いることができる。なかでも、気泡の混入が抑制されるとともに脱泡性能をも有する自転・公転方式ミキサーを用いるのが好ましい。
自転・公転方式ミキサーを用いた場合、ペーストXの混練時間は、自転回転数2000rpmでは、7分間以上が好ましく、10分間以上がより好ましい。
【0047】
次にペーストXに、リチウム複合酸化物二次粒子(A)と、セラミックスナノ粒子集合体(B)とを添加して混練することにより、ペーストYを得る。この際、ペーストX(x)の添加量と、リチウム複合酸化物二次粒子(A)とセラミックスナノ粒子集合体(B)の合計添加量((A)+(B))との質量比((x):((A)+(B)))が、好ましくは0.51:99.49~30:70、より好ましくは2:98~25:75となるよう調整すればよい。
【0048】
ペーストXへの、リチウム複合酸化物二次粒子(A)及びセラミックスナノ粒子集合体(B)の添加順序に特に制限はないが、セラミックスナノ粒子集合体(B)をリチウム複合酸化物二次粒子(A)の周囲に均一に配置させて、リチウム複合酸化物粒子の表面に均一に密着させる観点から、予めペーストXにリチウム複合酸化物二次粒子(A)を添加して混練することにより、ペーストyを調製した後、得られたペーストyにセラミックスナノ粒子集合体(B)を添加して混練し、ペーストYを得るのが好ましい。
【0049】
ペーストY及びペーストyの混練には、ペーストXの混練に用いた装置と同一の装置を用いることができ、また、ペーストXと同一の観点から、それらのなかでも自転・公転方式ミキサーを用いるのが好ましい。
自転・公転方式ミキサーを用いた場合、リチウム複合酸化物二次粒子(A)及びセラミックスナノ粒子集合体(B)が添加されたペーストYの混練時間は、自転回転数2000rpmでは10分間以上が好ましく、15分間以上がより好ましい。また、ペーストyを経由した場合は、ペーストyの混練時間は、自転回転数2000rpmでは30秒間以上が好ましく、1分間以上がより好ましく、その後のリチウム複合酸化物二次粒子(A)が添加されたペーストYの混練時間は、自転回転数2000rpmでは10分間以上が好ましく、15分間以上がより好ましい。
【0050】
本発明のリチウムイオン二次電池用正極ペーストを用いて正極を製造するには、公知の方法を用いればよく、すなわち、アルミニウム箔等の集電体上に本発明のリチウムイオン二次電池用正極ペーストを塗工し、次いでローラープレス等による圧密して乾燥する工程を経ることにより、リチウムイオン二次電池の正極を得ることができる。
【0051】
本発明のリチウムイオン二次電池用正極ペーストを用いた正極を適用できるリチウムイオン二次電池としては、正極と負極と非水系電解液とセパレータを必須の構成部材とするものであれば特に制限されない。
【0052】
リチウムイオン二次電池の負極については、リチウムイオンを充電時には吸蔵し、かつ放電時には放出することができれば、その材料構成で特に限定されるものではなく、公知の材料構成のものを用いることができる。
【0053】
非水系電解液は、有機溶媒に支持塩を溶解させたものである。有機溶媒は、リチウムイオン二次電池の電解液として用いられる有機溶媒であれば特に限定されるものではなく、例えば、カーボネート類、ハロゲン化炭化水素、エーテル類、ケトン類、ニトリル類、ラクトン類、オキソラン化合物等を用いることができる。
【0054】
支持塩は、その種類が特に限定されるものではないが、リチウムイオン二次電池の場合、LiPF6、LiBF4、LiClO4及びLiAsF6から選ばれる無機塩、該無機塩の誘導体、LiSO3CF3、LiC(SO3CF32及びLiN(SO3CF32、LiN(SO2252及びLiN(SO2CF3)(SO249)から選ばれる有機塩、並びに、かかる有機塩の誘導体の少なくとも1種であることが好ましい。
【0055】
セパレータは、正極及び負極を電気的に絶縁し、非水系電解液を保持する役割を果たすものである。たとえば、多孔性合成樹脂膜、特にポリオレフィン系高分子(ポリエチレン、ポリプロピレン)の多孔膜を用いればよい。
【0056】
上記の構成を有するリチウムイオン二次電池の形状としては、特に制限を受けるものではなく、コイン型、円筒型,角型等種々の形状や、ラミネート外装体に封入した不定形状であってもよい。
【実施例
【0057】
以下、本発明について、実施例に基づき具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0058】
[製造例1:リチウム複合酸化物(NMC系複合酸化物)二次粒子(A-1)の製造]
Ni:Co:Mnのモル比が1:1:1となるように、硫酸ニッケル六水和物 263g、硫酸コバルト七水和物 281g、硫酸マンガン五水和物 241g、及び水 3Lを混合した後、かかる混合液に25%アンモニア水を、滴下速度300ml/分で滴下して、pHが11の金属複合水酸化物を含むスラリーa1を得た。
次いで、スラリーa1をろ過、乾燥して、金属複合水酸化物の混合物b1を得た後、かかる混合物b1に炭酸リチウム37gをボールミルで混合して粉末混合物c1を得た。
得られた粉末混合物c1を、空気雰囲気下で800℃×4時間仮焼成して解砕した後、本焼成として空気雰囲気下で800℃×12時間焼成し、NMC系複合酸化物二次粒子(A-1)(LiNi0.33Co0.33Mn0.342、平均粒径:12.8μm)を得た。
【0059】
[製造例2:セラミックスナノ粒子集合体(B-1)の製造]
Al2(SO43・16H2O 3.15g、セルロースナノファイバー 3.89g(ダイセルファインケム社製、KY100G、含水量90質量%)、及び水 55mLを60分間混合してスラリーa2を得た。得られたスラリーa2に、10質量%濃度のNaOH水溶液 12gを添加し、5分間混合してスラリーb2を得た。得られたスラリーb2をオートクレーブに投入し、140℃で1時間水熱反応を行った。得られた水熱反応生成物を放冷した後、ろ過、水洗し、80℃の温風乾燥を4時間行って、ベーマイト(AlOOH)のナノアレイc2を得た。得られたベーマイトのナノアレイc2を酸素雰囲気下、1200℃で1時間焼成し、アルミナのナノ粒子が多数配列してなるセラミックスナノ粒子集合体(B-1)(Al23、BET比表面積20m2/g、Al23粒子の平均粒径:20nm)を得た。
【0060】
[製造例3:セラミックスナノ粒子(B-x)の製造]
セルロースナノファイバーを添加しなかった以外、製造例2と同様にし、配列することなく多数存在するのみの状態であるアルミナのナノ粒子(Al23-B、BET比表面積10m2/g、Al23粒子の平均粒径:35nm)を得た。
【0061】
[製造例4:セラミックスナノ粒子集合体(B-2)の製造]
Zr(NO34・5H2O 1.81g、セルロースナノファイバー 19.29g(スギノマシン社製TMa-10002、含水量98質量%)、及び水 55mLを60分間混合してスラリーa4を得た。得られたスラリーa4に、10質量%濃度のNaOH水溶液 20mLを添加し、5分間混合してスラリーb4を得た。得られたスラリーb4をオートクレーブに投入し、140℃で1時間水熱反応を行った。得られた水熱反応生成物を放冷した後、ろ過、水洗し、酸素雰囲気下において600℃で1時間焼成し、ジルコニアのナノ粒子が多数配列してなるセラミックスナノ粒子集合体(B-2)(ZrO2、BET比表面積150m2/g、ナノ粒子の平均粒径:10nm)を得た。
【0062】
[製造例5:セラミックスナノ粒子集合体(B-3)の製造]
Ce(NO33・6H2O 1.11g、セルロースナノファイバー 19.29g(同上)、及び水 55mLを60分間混合してスラリーa5を得た。得られたスラリーa5に、10質量%濃度のNaOH水溶液 9mLを添加し、5分間混合してスラリーb5を得た。得られたスラリーb5をオートクレーブに投入し、140℃で1時間水熱反応を行った。得られた水熱反応生成物を放冷した後、ろ過、水洗し、酸素雰囲気下において600℃で1時間焼成し、セリアのナノ粒子が多数配列してなるセラミックスナノ粒子集合体(B-3)(CeO2、BET比表面積230m2/g、ナノ粒子の平均粒径:10nm)を得た。
【0063】
[実施例1]
アセチレンブラック 100mg、ポリフッ化ビニリデン 100mgに1-メチル-2-ピロリドンを添加後、50mLスクリュー管瓶に入れ、自転・公転方式ミキサー((株)シンキー製、ARE-310)を用い、自転速度2000rpmで10分間混練してペーストX1を得た。得られたペーストX1に、二次粒子(A-1) 1.782gを添加して、自転速度2000rpmで1分間混練後、集合体(B-1) 18mgを添加した後、自転速度2000rpmで20分間混練して、リチウムイオン二次電池用正極ペースト((A-1)99質量%+(B-1)1質量%)を作製した。
【0064】
[実施例2]
二次粒子(A-1)を1.746gに、集合体(B-1)を54mgに変更した以外、実施例1と同様にしてリチウムイオン二次電池用正極ペースト((A-1)97質量%+(B-1)3質量%)を作製した。
【0065】
[実施例3]
二次粒子(A-1)を1.7964gに、集合体(B-1)を3.6mgに変更した以外、実施例1と同様にしてリチウムイオン二次電池用正極ペースト((A-1)99.8質量%+(B-1)0.2質量%)を作製した。
【0066】
[実施例4]
集合体(B-1)を集合体(B-2)に変更した以外、実施例1と同様にしてリチウムイオン二次電池用正極ペースト((A-1)99質量%+(B-2)1質量%)を作製した。
【0067】
[実施例5]
集合体(B-1)を集合体(B-3)に変更した以外、実施例1と同様にしてリチウムイオン二次電池用正極ペースト((A-1)99質量%+(B-3)1質量%)を作製した。
【0068】
[実施例6]
アセチレンブラック 100mgをケッチェンブラック 200mgに、ポリフッ化ビニリデンの添加量100mgを50mgに、二次粒子(A-1)の添加量を0.7425gに、集合体(B-1)の添加量を7.5mgに変更した以外、実施例1と同様にしてリチウムイオン二次電池用正極ペースト((A-1)99質量%+(B-1)1質量%)を作製した。
【0069】
[実施例7]
アセチレンブラックの添加量100mgを20mgに、ポリフッ化ビニリデンの添加量100mgを20mgに、二次粒子(A-1)の添加量を1.94gに、集合体(B-1)の添加量を19.6mgに変更した以外、実施例1と同様にしてリチウムイオン二次電池用正極ペースト((A-1)99質量%+(B-1)1質量%)を作製した。
【0070】
[比較例1]
二次粒子(A-1)の添加量を1.7991gに、集合体(B-1)の添加量18mgを0.9mgをに変更した以外、実施例1と同様にしてリチウムイオン二次電池用正極ペースト((A-1)99.95質量%+(B-1)0.05質量%)を作製した。
【0071】
[比較例2]
二次粒子(A-1)475gとナノ粒子(B-x)25gを、微粒子複合化装置(ホソカワミクロン社製、NOB130)を用いて、インペラの周速度が20m/s(3000rpm)で5分間の複合化処理を行い、正極活物質複合体Zを得た。
次に、二次粒子(A-1)及び集合体(B-1)に代えて、正極活物質複合体Z 1.8gを添加した以外、実施例1と同様にしてリチウムイオン二次電池用正極ペースト((A-1)95質量%+(B-x)5質量%)を作製した。
実施例1~7及び比較例1~2で得られた各リチウムイオン二次電池用正極ペーストにおける物性及び組成を表1に示す。
【0072】
《レート特性の評価》
実施例1~7及び比較例1~2で得られたリチウムイオン二次電池用正極ペーストを用い、リチウムイオン二次電池の正極を作製した。具体的には、得られたリチウムイオン二次電池用正極ペーストを、厚さ20μmのアルミニウム箔からなる集電体に、厚み250μmのドクターブレードを用いて塗布し、80℃で12時間の真空乾燥を行った。その後、φ14mmの円盤状に打ち抜いてハンドプレスを用いて16MPaで2分間プレスし、正極とした。
次いで、上記の正極を用いてコイン型二次電池を構築した。負極には、φ15mmに打ち抜いたリチウム箔を用いた。非水系電解液には、エチレンカーボネート及びエチルメチルカーボネートを体積比1:1の割合で混合した混合溶媒に、LiPF6(リチウムイオン二次電池の場合)を1mol/Lの濃度で溶解したものを用いた。セパレータには、ポリプロピレンを用いた。これらの電池部品を露点が-50℃以下の雰囲気で常法により組み込み収容し、コイン型二次電池(CR-2032)を製造した。
【0073】
≪非水系電解液への遷移金属溶出量≫
得られたコイン型二次電池に対し、充電を行った。具体的には、電流170mA/g、電圧4.5Vの定電流充電を行った。
その後、かかるコイン型二次電池を解体し、取り出した正極を炭酸ジメチルで洗浄後、非水系電解液に浸した。このときの非水系電解液は、エチレンカーボネート及びエチルメチルカーボネートを体積比3:7の割合で混合した混合溶媒に、LiPF6(リチウムイオン二次電池の場合)を1mol/Lの濃度で溶解したものを用いた。正極を浸した非水系電解液を密閉容器に入れ、70℃で1週間静置した。
静置後、正極を取り出した非水系電解液を0.45μmのディスミックフィルタで濾過し、硝酸により酸分解した。酸分解した非水系電解液に含まれるNCM由来のMn、Ni、Coを、ICP発光分光法を用いて定量した。結果を表2に示す。
【0074】
≪サイクル特性の評価≫
上記の非水系電解液への遷移金属溶出量の評価で製造したコイン型二次電池を用いて、サイクル特性を評価した。具体的には、電流密度85mA/g、電圧4.25Vの定電流充電と、電流密度85mA/g、終止電圧3.0Vの定電流放電とし、電流密度85mA/g(0.5CA)における放電容量を求めた。さらに、同じ充放電条件の100サイクル繰り返し試験を行い、下記式(1)により容量保持率(%)を求めた。なお、充放電試験は全て30℃で行った。結果を表2に示す。
容量保持率(%)=(100サイクル後の放電容量)/(1サイクル後の放電容量)
×100 ・・・(1)
【0075】
《レート特性の評価》
上記の非水系電解液への遷移金属溶出量の評価で製造したコイン型二次電池を用いて、レート特性を評価した。具体的には、電流密度34mA/g、電圧4.25Vの定電流充電と、電流34mA/g、終止電圧3.0Vの定電流放電とし、電流密度34mA/g(0.2C)における放電容量を求めた。さらに、同条件で定電流充電を行い、電流密度510mA/g、終止電圧3.0Vの定電流放電とし、電流密度510mA/g(3C)における放電容量を求めた。なお、充放電試験は30℃で行った。
得られた放電容量から、下記式(2)により容量比(%)を求めた。結果を表2に示す。
容量比(%)=(電流密度510mA/gにおける放電容量)/
(電流密度34mA/gにおける放電容量)×100 ・・・(2)
【0076】
【表1】
【0077】
【表2】
【0078】
表2の結果から明らかなように、実施例のリチウムイオン二次電池用正極ペーストを用いて作製したリチウムイオン二次電池は、比較例のリチウムイオン二次電池用正極ペーストを用いて作製したリチウムイオン二次電池と比べ、サイクル特性及びレート特性の双方に優れることがわかる。また、電極から電解液への遷移金属の溶出量が少なく、安全性においても優れていることがわかる。