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  • 特許-集塵装置及び集塵方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-26
(45)【発行日】2022-11-04
(54)【発明の名称】集塵装置及び集塵方法
(51)【国際特許分類】
   B01D 46/10 20060101AFI20221027BHJP
   B01D 45/08 20060101ALI20221027BHJP
   B09B 3/00 20220101ALI20221027BHJP
   B01D 50/00 20220101ALI20221027BHJP
   B01D 47/02 20060101ALI20221027BHJP
【FI】
B01D46/10 Z
B01D45/08 Z ZAB
B09B3/00
B01D50/00 501G
B01D50/00 501K
B01D47/02 Z
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018229896
(22)【出願日】2018-12-07
(65)【公開番号】P2020089856
(43)【公開日】2020-06-11
【審査請求日】2021-08-02
(73)【特許権者】
【識別番号】306022513
【氏名又は名称】日鉄エンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090697
【弁理士】
【氏名又は名称】中前 富士男
(74)【代理人】
【識別番号】100127155
【氏名又は名称】来田 義弘
(74)【代理人】
【識別番号】100176142
【弁理士】
【氏名又は名称】清井 洋平
(72)【発明者】
【氏名】安達 政隆
(72)【発明者】
【氏名】田中 肇
【審査官】瀧 恭子
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-225789(JP,A)
【文献】特開2011-011184(JP,A)
【文献】実開昭63-034569(JP,U)
【文献】特開2011-224616(JP,A)
【文献】特開2000-246056(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 45/00-45/18、46/00-46/90、
47/00-47/18、49/00-51/10
B09B 1/00-5/00
B09C 1/00-1/10
B23K 9/00、9/007-9/013、9/04、
9/14-10/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
PCB付着物の溶断時に発生するPCB蒸気、ヒューム、及びスパッタを捕捉する集塵装置であって、
上面に設けられた開口部を介して前記PCB蒸気、ヒューム、及びスパッタを内部に取り込む集塵容器と、前記PCB蒸気、ヒューム、及びスパッタを前記集塵容器内に吸引する吸引設備とを備え、
前記開口部に、該開口部を開閉するルーバーが設置され、前記ルーバーを構成する複数のルーバープレートのそれぞれが独立して回動可能とされ
前記PCB付着物が載置される荷受台が前記集塵容器を挟んで両サイドに配置されていることを特徴とする集塵装置。
【請求項2】
請求項1記載の集塵装置において、前記集塵容器内に取り込まれたスパッタを捕捉する金網が前記集塵容器内に配置されると共に、前記金網に捕捉されずに下方に飛散したスパッタを冷却する冷却水が前記集塵容器の底部に張られていることを特徴とする集塵装置。
【請求項3】
請求項1又は2記載の集塵装置において、前記集塵容器及び前記荷受台を覆うことができる開閉フードを備えていることを特徴とする集塵装置。
【請求項4】
PCB付着物の溶断時に発生するPCB蒸気、ヒューム、及びスパッタを、請求項記載の集塵装置を用いて捕捉する方法であって、
前記PCB付着物を前記荷受台に載置した後、前記集塵容器及び前記荷受台を前記開閉フードで覆う工程と、
前記PCB付着物の直下及びその近傍のみ前記ルーバープレートを開いた状態とする工程と、
前記吸引設備を作動させ、前記PCB蒸気、ヒューム、及びスパッタを前記集塵容器内に吸引しながら、溶断装置により前記PCB付着物を溶断する工程とを備えることを特徴とする集塵方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、PCB付着物の溶断時に発生するPCB蒸気、ヒューム、及びスパッタを捕捉する集塵装置及び集塵方法に関する。
【背景技術】
【0002】
PCB(ポリ塩化ビフェニル)が付着しているPCB付着物は、付着しているPCBの濃度が5000ppm以下であれば、無害化処理施設において無害化処理を行うことができるが、無害化処理施設の受入条件を満足するサイズとしなければならない。そのため、PCB付着物を、収集運搬用の漏れ防止型金属容器(2m角程度)に収納できるサイズに切断する必要がある。
【0003】
PCB付着物の溶断作業では、溶断時に発生するPCB蒸気及びヒューム(粉塵)、及びスパッタの拡散を防止しなければならない。そこで、例えば特許文献1では、床面上に間隔をあけて配置され、溶断すべきワークが搭載される複数の架台と、架台間に設置され、ガス溶断の燃焼炎によって下方に飛散した溶断滓を受けて冷却する複数の水槽と、吸引口が各水槽の上側に設けられた吸引ダクトと、ガス溶断による溶断煙を吸引口から吸引ダクト内に吸引させる吸引設備と、吸引ダクトに吸引した溶断煙から浮遊粒子を捕獲する集塵機とを備えた集煙装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2011-224616号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1記載の集煙装置の場合、吸引口の開口面積が一定であるため、吸引風速(力)は常に一定であり、ワークの溶断サイズに応じて吸引風速(力)を最大化して捕集力を高めることができない。そのため、溶断滓が大気中に拡散するおそれがある。
【0006】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたもので、PCB付着物の溶断サイズに応じた最大捕集力を実現することが可能な集塵装置及び集塵方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、第1の発明は、PCB付着物の溶断時に発生するPCB蒸気、ヒューム、及びスパッタを捕捉する集塵装置であって、
上面に設けられた開口部を介して前記PCB蒸気、ヒューム、及びスパッタを内部に取り込む集塵容器と、前記PCB蒸気、ヒューム、及びスパッタを前記集塵容器内に吸引する吸引設備とを備え、
前記開口部に、該開口部を開閉するルーバーが設置され、前記ルーバーを構成する複数のルーバープレートのそれぞれが独立して回動可能とされ
前記PCB付着物が載置される荷受台が前記集塵容器を挟んで両サイドに配置されていることを特徴としている。
【0008】
本発明では、集塵容器の開口部に設置したルーバーを構成する複数のルーバープレートがそれぞれ独立して回動可能とされているので、PCB付着物の直下及びその近傍のみルーバープレートを開いた状態として開口部の開口面積を必要最小限とすることにより、開口部における吸引風速(力)を最大化して捕集力を高めることができる。
【0009】
また、第1の発明に係る集塵装置では、前記集塵容器内に取り込まれたスパッタを捕捉する金網が前記集塵容器内に配置されると共に、前記金網に捕捉されずに下方に飛散したスパッタを冷却する冷却水が前記集塵容器の底部に張られていることを好適とする。
【0010】
当該構成によれば、集塵容器内に配置した金網と集塵容器底部に張った冷却水によりスパッタを確実に捕捉することができるので、吸引設備に設置されているフィルタがスパッタによって焼損したり目詰まりを起こしたりすることがない。
【0011】
また、第1の発明に係る集塵装置では、前記PCB付着物が載置される荷受台が前記集塵容器を挟んで両サイドに配置されている。
【0012】
集塵容器を挟んで両サイドに配置されている荷受台の上にPCB付着物を載置し、集塵容器の開口部上でPCB付着物を溶断する。溶断時に発生するPCB蒸気、ヒューム、及びスパッタは開口部から集塵容器内に取り込まれる。
【0013】
また、第1の発明に係る集塵装置では、前記集塵容器及び前記荷受台を覆うことができる開閉フードを備えていることを好適とする。
【0014】
集塵容器及び荷受台を開閉フードで覆うことにより、PCB蒸気、ヒューム、及びスパッタを吸引する気流が外乱によって阻害されないようにすることができる。
【0015】
また、第2の発明は、PCB付着物の溶断時に発生するPCB蒸気、ヒューム、及びスパッタを、第1の発明に係る集塵装置を用いて捕捉する方法であって、以下の工程を備えることを特徴としている。
(1)前記PCB付着物を前記荷受台に載置した後、前記集塵容器及び前記荷受台を前記開閉フードで覆う工程
(2)前記PCB付着物の直下及びその近傍のみ前記ルーバープレートを開いた状態とする工程
(3)前記吸引設備を作動させ、前記PCB蒸気、ヒューム、及びスパッタを前記集塵容器内に吸引しながら、溶断装置により前記PCB付着物を溶断する工程
【発明の効果】
【0016】
本発明では、集塵容器の開口部に設置したルーバーを構成する複数のルーバープレートがそれぞれ独立して回動可能とされているので、PCB付着物の溶断サイズに応じて開口部の開口面積を必要最小限に調整することにより、開口部の吸引風速を最大化することができる。即ち、PCB付着物の溶断サイズに応じた最大捕集力を実現することができる。その結果、PCB蒸気、ヒューム、及びスパッタが大気中に拡散するおそれがない。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の一実施の形態に係る集塵装置の平面図である。
図2】同集塵装置の側断面図である。
図3】ルーバープレートの開閉機構を示した模式図である。
図4】PCB付着物溶断時における同集塵装置の平面図である。
図5】PCB付着物溶断時における同集塵装置の側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
続いて、添付した図面を参照しつつ、本発明を具体化した実施の形態について説明し、本発明の理解に供する。
【0019】
本発明の一実施の形態に係る集塵装置10を図1及び図2に示す。
本実施の形態に係る集塵装置10は、PCB付着物を溶断した際に発生するPCB蒸気、ヒューム、及びスパッタを内部に取り込む集塵容器11と、それら発生物を集塵容器11内に吸引する吸引設備17と、PCB付着物が載置される荷受台24と、集塵容器11及び荷受台24を覆う開閉フード25とを備えている。
【0020】
集塵容器11は概略直方体形状とされ、集塵容器11上面の短辺方向中央部には、集塵容器11の長辺方向の一端から他端まで延びる帯状の開口部12が形成されている。PCB蒸気、ヒューム、及びスパッタは開口部12を介して集塵容器11内に取り込まれる。
【0021】
集塵容器11の開口部12には、開口部12を開閉するためのルーバー13が設置されている。ルーバー13は、矩形状の板材からなる複数のルーバープレート14が集塵容器11の長辺方向に連続して配置された構成とされている。各ルーバープレート14は独立して回動可能とされ、開口部12を部分的に開閉することができる。即ち、ルーバープレート14が水平のとき、開口部12は当該ルーバープレート14によって一部閉じた状態となり、ルーバープレート14が鉛直のとき、開口部12は当該ルーバープレート14によって一部開いた状態となる。因って、一部のルーバープレート14が開き、他のルーバープレート14が閉じた状態とすることにより、開口部12の開口面積を変更することができる。
【0022】
図3は、ルーバープレート14の開閉機構を示した模式図である。
各ルーバープレート14は、集塵容器11の短辺方向に配置された回転軸26を支点として鉛直面内で回動する。各ルーバープレート14の回動先端部には、集塵容器11の短辺方向に配置された操作棒15の一端部が連結されている。操作棒15の他端部は、集塵容器11の一方の長辺側側壁29に形成された円弧状の溝28から外方に突出しており、操作棒15の突出部位には、作業者が把持する取っ手16が取り付けられている。
【0023】
操作棒15は円弧状の溝28に沿って鉛直面内で移動させることができる。操作棒15が溝28の上端に位置するときルーバープレート14は水平となり、開口部12が一部閉じた状態となる。また、操作棒15が溝28の下端に位置するときルーバープレート14は鉛直となり、開口部12が一部開いた状態となる。溝28の上端部付近には、溝28の上端に位置する操作棒15を保持するためのラッチ27が取り付けられている。
なお、集塵容器11に取り込まれたPCB蒸気、ヒューム、及びスパッタが溝28から大気中に漏れ出ないように、操作棒15が貫通する切り込みが幅方向中央部に形成されたシリコーン製のシール部材30が溝28の内側に取り付けられている。
【0024】
集塵容器11の内部には、集塵容器11内に取り込まれたスパッタを捕捉する金網22が集塵容器11の長辺方向に間隔をあけて集塵容器11の短辺方向に配置されている。また、集塵容器11の底部には、金網22に捕捉されず下方に飛散したスパッタを冷却する冷却水23が張られている。
【0025】
吸引設備17は、PCB蒸気、ヒューム、及びスパッタを吸引するブロワ21と、集塵容器11とブロワ21を接続する連結ホース18と、連結ホース18の途中に設置され、PCB蒸気中のPCB粒子及びヒュームを捕捉するフィルター20と、ブロワ21に接続され、フィルター20によってPCB粒子及びヒュームが除去された排気を大気中に放出する排気ホース19とを備えている。
【0026】
荷受台24は、集塵容器11を挟んで集塵容器11の短辺方向両サイドに設置されている。各荷受台24の長さは集塵容器11の長辺方向長さと同じである。荷受台24の高さは、PCB付着物溶断時のプラズマアークがルーバー13に及ばない高さとされている。
【0027】
開閉フード25は、集塵容器11の長手方向に伸縮可能な蛇腹式とされている。開閉フード25の一端を固定して他端を伸張させることにより、集塵容器11及び荷受台24を覆う。
【0028】
次に、PCB付着物31の溶断時に発生するPCB蒸気、ヒューム、及びスパッタを、集塵装置10により捕捉する方法について、図4及び図5を用いて説明する。なお、図4の開口部12に記載した斜めの線(×印)は、当該部位が開いていることを示している。
[STEP-1]
開閉フード25を縮めて集塵容器11及び荷受台24を露出させ、クレーン(図示省略)を用いてPCB付着物31を荷受台24上に載置する(図4参照)。その際、溶断位置が集塵容器11の開口部12の真上にくるようにする。そして、開閉フード25を伸張させ、集塵容器11及び荷受台24を開閉フード25で覆う。
【0029】
[STEP-2]
操作棒15を操作して、PCB付着物31の直下及びその近傍のみルーバープレート14を開いた状態とすることにより、開口部12における吸引風速(力)を最大化して捕集力を高める(図4参照)。具体的には、全てのルーバープレート14のセットポジションを開いた状態としておき、PCB付着物31の直下及びその近傍以外のルーバープレート14が閉じた状態となるよう操作棒15を操作してもよいし、あるいは、全てのルーバープレート14のセットポジションを閉じた状態としておき、PCB付着物31の直下及びその近傍のルーバープレート14のみ開いた状態となるよう操作棒15を操作してもよい。
【0030】
[STEP-3]
ブロワ21を作動させ、PCB蒸気、ヒューム、及びスパッタを開口部12を介して集塵容器11内に吸引しながら、溶断装置によりPCB付着物を溶断する(図5参照)。
溶断箇所を溶断する溶断装置は、トーチ32及びプラズマ発生装置(図示省略)から構成されるプラズマ切断機を使用するが、これに限定されるものではなく、レーザー切断機やガス切断機など他の溶断装置を使用してもよい。
【0031】
以上、本発明の一実施の形態について説明してきたが、本発明は何ら上記した実施の形態に記載の構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載されている事項の範囲内で考えられるその他の実施の形態や変形例も含むものである。例えば、上記実施の形態では、ルーバープレートの先端部に取り付けられて側方に延びる操作棒を円弧状に移動させることにより当該ルーバープレートを開閉させているが、これに限るものではなく、例えばルーバープレートの基端部を支持する回転軸を回動させるなど他の機構でもよい。
【符号の説明】
【0032】
10:集塵装置、11:集塵容器、12:開口部、13:ルーバー、14:ルーバープレート、15:操作棒、16:取っ手、17:吸引設備、18:連結ホース、19:排気ホース、20:フィルター、21:ブロワ、22:金網、23:冷却水、24:荷受台、25:開閉フード、26:回転軸、27:ラッチ、28:溝、29:長辺側側壁、30:シール部材、31:PCB付着物、32:トーチ
図1
図2
図3
図4
図5