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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-26
(45)【発行日】2022-11-04
(54)【発明の名称】Al4SiC4の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C01B 32/90 20170101AFI20221027BHJP
   C04B 35/56 20060101ALI20221027BHJP
   C01B 32/05 20170101ALI20221027BHJP
【FI】
C01B32/90
C04B35/56
C01B32/05
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018238363
(22)【出願日】2018-12-20
(65)【公開番号】P2020100522
(43)【公開日】2020-07-02
【審査請求日】2021-12-03
(73)【特許権者】
【識別番号】591240722
【氏名又は名称】一般財団法人岡山セラミックス技術振興財団
(74)【代理人】
【識別番号】110002206
【氏名又は名称】弁理士法人せとうち国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】前田 朋之
(72)【発明者】
【氏名】西川 智洋
(72)【発明者】
【氏名】星山 泰宏
【審査官】青木 千歌子
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-156366(JP,A)
【文献】特開2003-176119(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2004/0126561(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 32/90
C04B 35/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
植物由来の炭化物の粉末、アルミニウム粉末及びケイ素粉末の混合物を不活性ガス雰囲気下1600~1800℃で加熱し、得られたAl SiC ブロックを解砕するAlSiCの製造方法。
【請求項2】
前記炭化物が、植物由来の原料を300~2200℃で加熱して得られたものである請求項1に記載のAlSiCの製造方法。
【請求項3】
前記炭化物の炭素元素含有量が70~99.5質量%である請求項1又は2に記載のAlSiCの製造方法。
【請求項4】
前記混合物が、前記炭化物に含まれる炭素原子100モルに対しアルミニウム原子を90~150モル含み、ケイ素原子を20~35モル含む請求項1~のいずれかに記載のAlSiCの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、AlSiCの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
炭化アルミニウムケイ素(AlSiC)は、耐火物など高温で用いられる材料の性能を向上させることができる高性能原料として注目されている。現在、AlSiCの製造方法としては、金属Al、金属Si及び炭素源としての黒鉛やカーボンブラックを含む混合粉末を不活性雰囲気下で加熱して製造する方法が主流である。このような製造方法の例として特許文献1~3に記載された製造方法が挙げられる。
【0003】
特許文献1には、アルミナ成分またはシリカ成分を含有し、更にカルシウム化合物またはナトリウム化合物を含む天然原料と、炭素原料とを含む混合物を、不活性雰囲気中で焼成して得られたAl-Si-C系複合炭化物が記載されている。特許文献1における炭素原料としては、複合炭化物の合成率を高め、高純度のAl-Si-C系複合炭化物を得る観点から、固定炭素分の高いものが好ましく、天然黒鉛、人造黒鉛、熱分解炭素などを使用することができるとされている。そして、実施例には炭素源としてカーボンブラックを用いて、AlSiCの単相を得た例が記載されている。
【0004】
特許文献2には、アルミニウム、珪素および炭素からなる混合組成でアルミニウムの割合が20重量%以上66重量%未満、珪素の割合が8重量%以上52重量%未満、炭素の比が26重量%以上63重量%未満とした構成で、焼成後はアルミニウム-珪素-炭素系化合物としてAlSiC、AlSiC、AlSi、AlSiまたはAlSiなどの一種あるいは多種の化合物となっている導電性セラミックスが記載されている。特許文献2における炭素源としては、黒鉛やカーボンブラックを用いることができるとされていて、その実施例には炭素源としてカーボンブラックを用いて導電性セラミックスを製造した例が記載されている。
【0005】
特許文献3には、金属Al、金属Si及びCの混合粉を、不活性ガス雰囲気中で、マイクロ波により加熱して、平均粒径1μm以下のAlSiC粉を製造する方法が記載されている。特許文献3における原料のC粉末としては、鱗状黒鉛、粉末ピッチ、石油コークス、カーボンブラックなど、各種C源が使用できるとされていて、その実施例には、炭素源として黒鉛又はカーボンブラックを用いてAlSiC粉の製造した例が記載されている。
【0006】
しかしながら、黒鉛やカーボンブラックを炭素源として、それを金属Al及び金属Siとともに加熱して得られたAlSiCは硬いブロックを形成してしまい、ハンマーで容易に解砕することができず、解砕に多大な労力を要していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2009-190961号公報
【文献】特開2007-8793号公報
【文献】特開2014-156366号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、容易に解砕することのできるAlSiCの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題は、植物由来の炭化物の粉末、アルミニウム粉末及びケイ素粉末の混合物を不活性ガス雰囲気下1600~1800℃で加熱するAlSiCの製造方法を提供することによって解決される。
【0010】
このとき、前記炭化物が、植物由来の原料を300~2200℃で加熱して得られたものであることが好ましい。また、前記炭化物の炭素元素含有量が70~99.5質量%であることも好ましい。
【0011】
また、このとき前記混合物を加熱して得られたAlSiCブロックを解砕することが好ましい。前記混合物が、前記炭化物に含まれる炭素原子100モルに対しアルミニウム原子を90~150モル含み、ケイ素原子を20~35モル含むことも好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明の製造方法によれば、容易に解砕することのできるAlSiCを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】熱処理した樹皮のTEM像である。
図2】熱処理した樹皮の電子回折像である。
図3】実施例1における、解砕後の反応物の外観写真である。
図4】実施例1、実施例3及び比較例1における反応物のXRDパターンである。
図5】実施例1において、目開き45μmの篩を通過したAlSiCのSEM像である。
図6】実施例2における反応物のXRDパターンである。
図7】比較例1における、合成後のブロックの破断面の外観写真である。
図8】比較例1において、目開き75μmの篩を通過しなかったAlSiCのSEM像である。
図9】比較例1において、目開き75μmの篩を通過し目開き45μmの篩を通過しなかったAlSiCのSEM像である。
図10】比較例1において、目開き45μmの篩を通過したAlSiCのSEM像である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
近年、化石資源に替わるものとしてバイオマスが注目されている。中でも、木材からなるバイオマスは木質バイオマスと呼ばれ、量が多く、一定周期で生産可能であるとされていることから、その利用方法が模索されている。
【0015】
本発明者らはこの点に着目して、化石資源である黒鉛や化石資源を原料にして生産されるカーボンブラックに替えて、植物由来の炭化物の粉末を用いてAlSiCの製造を試みた。その結果、驚くべきことに、植物由来の炭化物の粉末を用いて得られたAlSiCは、黒鉛やカーボンブラックを用いて得られたものと比べて軟らかく、ハンマーで容易に解砕することのできるものであった。
【0016】
本発明のAlSiCの製造方法は、植物由来の炭化物の粉末、アルミニウム粉末及びケイ素粉末の混合物を不活性ガス雰囲気下1600~1800℃で加熱することを特徴とするものである。
【0017】
本発明における炭化物は、植物由来の原料を加熱することにより炭化して得られた炭素材料である。植物由来の炭化物の原料は、植物由来の材料であれば特に限定されない。当該材料としては、樹皮、木材、葉などが挙げられる。植物種も特に限定されず、針葉樹、広葉樹、草、竹などが挙げられる。中でも、樹皮はもともと廃棄処分されるものであるから経済的に有用である。
【0018】
本発明における炭化物が、植物由来の原料を300~2200℃で加熱して得られたものであることが好ましい。加熱温度が300℃未満の場合、得られる炭化物の炭素元素含有量が少ないものとなり、その結果、得られるAlSiCに不純物が多く含まれるおそれがある。加熱温度は、500℃以上であることがより好ましく、800℃以上であることがさらに好ましい。一方、加熱温度が2200℃を超える場合、植物由来の原料が黒鉛化するおそれがある。また、加熱コストが上昇するので工業的観点から好ましくない。加熱温度は1800℃以下であることがより好ましく、1500℃以下であることがさらに好ましく、1200℃以下であることが特に好ましい。加熱時間は十分に炭化が進行する時間であればよく、加熱温度との関係で適宜設定される。
【0019】
植物由来の原料の加熱は、非酸化性雰囲気下で行うことができる。具体的には、分解ガスを排出でき、空気が流入し難い容器内で加熱する方法などが挙げられる。
【0020】
そして、得られた炭化物を粉砕して炭化物の粉末を得る。粉砕方法は特に限定されず、ハンドミキサー、ボールミル、ライカイ機などを用いた方法が挙げられる。
【0021】
前記炭化物の炭素元素含有量が70~99.5質量%であることが好ましい。炭素元素含有量が70質量%未満の場合、得られるAlSiCに不純物が多く含まれるおそれがある。炭素元素含有量は75質量%以上であることがより好ましく、80質量%以上であることがさらに好ましい。一方、植物由来の原料を用いた場合、炭素元素含有量が99.5質量%を超える炭化物を得ることは通常困難である。炭素元素含有量は99質量%以下であることがより好ましく、95質量%以下であることがさらに好ましい。
【0022】
そして、炭化物の粉末、アルミニウム粉末及びケイ素粉末を混合して混合物を得る。このとき、前記混合物が、前記炭化物に含まれる炭素原子100モルに対しアルミニウム原子を90~150モル含むことが好ましい。アルミニウム原子の量がこの範囲であることで不純物のより少ないAlSiCを得ることができる。アルミニウム原子は95モル以上であることがより好ましく、100モル以上であることがさらに好ましい。一方、アルミニウム原子は130モル以下であることがより好ましく、120モル以下であることがさらに好ましい。
【0023】
また、前記混合物が、前記炭化物に含まれる炭素原子100モルに対しケイ素原子を20~35モル含むことも好ましい。ケイ素原子の量がこの範囲であることで不純物のより少ないAlSiCを得ることができる。ケイ素原子の量は25モル以上であることがより好ましい。一方、ケイ素原子の量は30モル以下であることがより好ましい。
【0024】
そして、こうして得られた混合物を不活性ガス雰囲気下1600~1800℃で加熱する。加熱温度が1600℃未満の場合、AlSiCを得ることができない。加熱温度は1650℃以上であることが好ましい。一方、加熱温度が1800℃を超える場合、AlSiC粒子同士が焼結して、容易に解砕することができないAlSiCが得られる。また、加熱コストが上昇するので工業的観点から好ましくない。加熱温度は1750℃以下であることが好ましい。加熱時間は加熱温度との関係で適宜設定されるが、通常、30分~24時間である。不活性ガスの種類は特に限定されず、ヘリウム、アルゴンなどが好適に用いられる。
【0025】
本発明の製造方法において、前記混合物を加熱して得られたAlSiCブロックを解砕することが好ましい。解砕方法は特に限定されず、ハンマー、クラッシャー、ハンドミキサー、ボールミル、ライカイ機などの機械を用いて解砕することができる。しかしながら、本発明の製造方法で得られたAlSiCブロックは、黒鉛やカーボンブラックを用いて得られたものと比べて軟らかいのでハンマーなどを用いて容易に解砕することができる。
【0026】
以上説明したように、本発明の製造方法によれば、容易に解砕することができるAlSiCを得ることができる。また、本発明の製造方法によれば、化石資源の消費を抑制することができ、バイオマス資源を有効に活用することもできる。したがって、本発明の製造方法は、黒鉛やカーボンブラックを用いた製造方法に替わる方法として大いに期待される。
【実施例
【0027】
以下、実施例を用いて本発明を更に具体的に説明する。
【0028】
実施例1
[AlSiCの製造]
(植物由来原料の加熱処理)
植物由来の炭化物の原料として、岡山県真庭市において産業廃棄物として処分された樹皮を用いた。用いられた樹皮は、主としてスギやヒノキの樹皮からなるものであるが、広葉樹の樹皮が含まれることもある。この樹皮を110℃で乾燥して乾燥樹皮を得た。得られた乾燥樹皮をアルミナ製のるつぼに充填し、アルミナ製の蓋を被せてから1000℃で加熱処理して乾燥樹皮を炭化させて樹皮炭を得た。得られた樹皮炭を透過電子顕微鏡(TEM)で観察して、得られたTEM像を図1に示し、電子回折線像を図2に示す。図2から、1000℃で加熱処理して得られた樹皮炭は非晶質であることが示された。
【0029】
得られた樹皮炭をハンドミキサーで3分間粉砕して、約4μmの粒度の樹皮炭粉末を得た。当該粉末の炭素元素含有量は88.2質量%であった。加熱処理温度及び炭素元素含有量を表1に示す。
【0030】
(C-Si-Al混合物の加熱処理)
金属アルミニウムの粉末(平均粒径:45μm以下、純度:99.9%)108g、金属ケイ素の粉末(平均粒径:45μm以下、純度:98.3%)28g、及び上記樹皮炭粉末42.3gを容器(1L)に入れ混合した。このとき容器に投入した各成分の量比は、各元素のモル比でAl:Si:C=4:1:3.5であった(炭素原子100モルに対しアルミニウム原子が113モル、ケイ素原子が28モル)。この容器にアルミナボール(直径5mm)900gを入れ、容器を250rpmで1時間回転させた。次いで、容器から混合粉末を取り出し、カーボン製のるつぼ(直径70mm×高さ75mm)に充填した。次いで、このるつぼを加熱炉に入れ、アルゴン雰囲気下、昇温速度10℃/minで室温から1700℃まで昇温させた後、1700℃に保持したまま炉内に5時間放置した。加熱温度(合成温度)を表1に示す。
【0031】
(解砕及び分級)
次いで、るつぼから反応物のブロックを取り出し、ハンマーを用いて解砕した。その結果、ハンマーで容易に解砕することができた。結果を表1に示す。また、解砕後の反応物の外観写真を図3に示す。
【0032】
解砕された反応物を乳鉢でほぐした後、反応物を容器(1L)に移した。次いで、この容器にアルミナボールを入れた後、容器を約350rpmで20時間回転させて、反応物を細かく砕いた。このとき容器に入れたアルミナボールは、直径20mmのアルミナボール300g、直径10mmのアルミナボール200g、直径5mmのアルミナボール150gであった。砕いた反応物を、目開き75μmの篩、及び目開き45μmの篩を用いて分級した。分級の結果を表1に示す。
【0033】
(XRDによる分析)
目開き45μmの篩を通過した反応物についてXRDにより定性分析を行った。結果を図4に示す。図4に示すように、得られたピークは全てAlSiC由来のピークと同定され、不純物の極めて少ないAlSiCが得られたことが確認された。
【0034】
(SEM観察)
走査型電子顕微鏡装置(SEM)を用いて、目開き45μmの篩を通過したAlSiCについてSEM像の撮影を行った。得られたSEM像を図5に示す。
【0035】
実施例2
(植物由来原料の加熱処理)
実施例1と同様の乾燥樹皮を用いた。これをアルミナ製のるつぼに充填し、アルミナ製の蓋を被せてから2000℃で加熱した以外は実施例1と同様にして「植物由来原料の加熱処理」を行い樹皮炭粉末を得た。得られた樹皮炭粉末の炭素元素含有量は99.1質量%であった。加熱処理温度及び炭素元素含有量を表1に示す。
【0036】
(C-Si-Al混合物の加熱処理)
金属アルミニウム粉末(平均粒径:45μm以下、純度:99.9%)108g、金属ケイ素粉末(平均粒径:45μm以下、純度:98.3%)28g、及び上記樹皮炭粉末48g(各元素のモル比でAl:Si:C=4:1:3.9、炭素原子100モルに対しアルミニウム原子が100モル、ケイ素原子が25モル)を容器に入れ混合した以外は実施例1と同様にして加熱処理を行い反応物を得た。加熱温度(合成温度)を表1に示す。
【0037】
(解砕及び分級)
実施例1と同様にして解砕及び分級を行った。このとき得られた反応物のブロックについてハンマーを用いて解砕した。その結果、ハンマーで容易に解砕することができた。結果を表1に示す。
【0038】
(XRDによる分析)
実施例1と同様にして解砕された反応物をアルミナボールで砕いた後、目開き45μmの篩を通過した反応物についてXRDによる定性分析を行った。結果を図6に示す。図6に示すように、AlSiC由来のピーク及びAl由来のピークが確認され、不純物の少ないAlSiCが得られたことが確認された。
【0039】
実施例3
(植物由来原料の加熱処理)
市販の木炭を準備した。この木炭は、マングローブを原料とし、これを600~700℃で炭化して得られたものである。そして、この木炭をそのまま用い、ハンドミキサーで3分間粉砕して約4μmの粒度に調整した。得られた木炭粉末の炭素元素含有量は77.2質量%であった。加熱処理温度及び炭素元素含有量を表1に示す。
【0040】
(C-Si-Al混合物の加熱処理)
金属アルミニウム粉末(純度99.9%)108g、金属ケイ素粉末(純度98.3%)28g、及び上記木炭粉末34.8g(各元素のモル比でAl:Si:C=4:1:2.9、炭素原子100モルに対しアルミニウム原子が138モル、ケイ素原子が34モル)を容器に入れ混合した以外は実施例1と同様にして加熱処理を行い反応物を得た。
【0041】
(解砕及び分級)
実施例1と同様にして解砕及び分級を行った。このとき得られた反応物のブロックについてハンマーを用いて解砕した。その結果、ハンマーで容易に解砕することができた。そして、解砕された反応物を実施例1と同様にしてアルミナボールで砕いた。分級の結果を表1に示す。
【0042】
(XRDによる分析)
また、実施例1と同様にして、目開き45μmの篩を通過した反応物についてXRDによる定性分析を行った。結果を図4に示す。図4に示すように、AlSiC由来のピークが確認されるとともに、AlCや未反応のAlやSi由来のピークも確認され、不純物を含むAlSiCが得られたことが確認された。
【0043】
比較例1
(C-Si-Al混合物の加熱処理)
アルミナ粉末(純度:99.9質量%)108g、シリコン粉末(純度:98.3質量%)28g及び鱗状黒鉛(純度:98質量%以上)48g(各元素のモル比でAl:Si:C=4:1:4、炭素原子100モルに対しアルミニウム原子が100モル、ケイ素原子が25モル)を容器に入れ混合した以外は実施例1と同様にして加熱処理を行い反応物を得た。
【0044】
(解砕及び分級)
実施例1と同様にして解砕及び分級を行った。このとき得られた反応物のブロックについてハンマーでの解砕を試みた。しかしながら、この反応物は硬くハンマーで容易に解砕することができず、解砕に多大な労力を要した。結果を表1に示す。図7に合成後のブロックの破断面の写真を示す。合成後のブロックの破断面の中央部には黒色の領域が確認され、特にこの部分が硬くて解砕が困難であった。この黒い領域は、実施例1~3の反応物では確認されなかったものである(例えば図3参照)。そして、ハンマーで割った際に得られた粉末を集めて、実施例1と同様にして当該粉末を分級した。分級の結果を表1に示す。
【0045】
(XRDによる分析)
実施例1と同様にして、目開き45μmの篩を通過した反応物についてXRDによる定性分析を行った。図4に示すように、得られたピークは全てAlSiC由来のピークと同定され、不純物の極めて少ないAlSiCが得られたことが確認された。
【0046】
(SEM観察)
実施例1と同様にして、得られたAlSiCのSEM像の撮影を行った。得られたSEM像を図8~10に示す。図8は、目開き75μmの篩を通過しなかったAlSiCのSEM像であり、図9は、目開き75μmの篩を通過し目開き45μmの篩を通過しなかったAlSiCのSEM像であり、図10は、目開き45μmの篩を通過したAlSiCのSEM像である。図8~9の比較から、目開き75μmの篩を通過しなかったAlSiC図8)、及び目開き75μmの篩を通過し目開き45μmの篩を通過しなかったAlSiC図9)は、いずれもAlSiC粒子が焼結して粗大化していることが確認された。AlSiC粒子が焼結して粗大化したことにより、得られるAlSiCは容易に解砕することができないものとなったと本発明者らは推測している。また、本発明者らは、図7に示した黒色の領域が、AlSiC粒子が焼結して粗大化したものによってできた領域であると推測している。
【0047】
以上説明したように、植物由来の炭化物及び木炭を用いて得られたAlSiCは容易に解砕することができるものであった。
【0048】
【表1】
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10