(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-26
(45)【発行日】2022-11-04
(54)【発明の名称】車両の変速機用摩擦型シフト要素のための摩擦要素
(51)【国際特許分類】
F16D 13/52 20060101AFI20221027BHJP
F16D 13/64 20060101ALI20221027BHJP
F16D 13/69 20060101ALI20221027BHJP
【FI】
F16D13/52 Z
F16D13/64 Z
F16D13/69 B
(21)【出願番号】P 2018500489
(86)(22)【出願日】2016-06-07
(86)【国際出願番号】 EP2016062821
(87)【国際公開番号】W WO2017005432
(87)【国際公開日】2017-01-12
【審査請求日】2019-03-06
【審判番号】
【審判請求日】2021-09-10
(31)【優先権主張番号】102015212667.6
(32)【優先日】2015-07-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】500045121
【氏名又は名称】ツェットエフ、フリードリッヒスハーフェン、アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】ZF FRIEDRICHSHAFEN AG
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】100186716
【氏名又は名称】真能 清志
(72)【発明者】
【氏名】マティアス ライッシュ
(72)【発明者】
【氏名】クリスチャン ジブラ
【合議体】
【審判長】平田 信勝
【審判官】段 吉享
【審判官】内田 博之
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第3412836(US,A)
【文献】特開2014-214787(JP,A)
【文献】特開2004-156632(JP,A)
【文献】特開平6-17841(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16D 13/00-13/76
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の変速機用摩擦型シフト要素のための摩擦要素(1、3)であって、環状の基体を備え、該環状の基体は、円周に亘り分散されて配置された複数の摩擦面要素(5)を備え、
前記摩擦要素(1、3)は、摩擦相手材としての他の摩擦要素とトルク伝達のために互いに接触可能な重なり領域を備え、
前記摩擦面要素(5)は、前記重なり領域に向かって径方向内側または径方向外側に環状の基体から突出する摩擦要素(1、3)において、
前記摩擦要素(1、3)の環状の基体と各前記摩擦面要素(5)とが
、固定されており、
前記摩擦要素(1、3)の環状の基体は、前記複数の摩擦面要素(5)よりも材料品質が低いことを特徴とする摩擦要素(1、3)。
【請求項2】
請求項1に記載の摩擦要素(1、3)であって、前記摩擦要素(1、3)の環状の基体が各前記摩擦面要素(5)を受容する切り欠き(16)を備えることを特徴とする摩擦要素(1、3)。
【請求項3】
請求項2に記載の摩擦要素(1、3)であって、切り欠き(16)は、環状の基体を、内周または外周に沿って部分的に中断することを特徴とする摩擦要素(1、3)。
【請求項4】
請求項2または3に記載の摩擦要素(1、3)であって、
前記切り欠き(16)、および該切り欠き(16)直近の周辺部が、前記摩擦要素(1、3)の環状の基体に摩擦面要素ゾーン(25)を画定し、また、
周方向に隣接する前記摩擦面要素ゾーン(25)の間に、各中間ゾーン(22)が配置され、各前記中間ゾーン(22)は、中央ゾーン(24)、および該中央ゾーン(24)を囲む2つの移行ゾーン(23)を備え、前記中央ゾーン(24)は、第1半径R3のR部を備えて構成され、また各前記移行ゾーン(23)は、半径R4のR部を備えて構成され、および各前記移行ゾーン(23)は、1つの中央ゾーン(24)および1つの摩擦面要素ゾーン(25)に接し、
前記第1半径R3は、前記半径R4よりも大きいことを特徴とする摩擦要素(1、3)。
【請求項5】
請求項1~4の何れか一項に記載の摩擦要素(1、3)であって、前記摩擦面要素(5)は固定手段により、前記摩擦要素(1、3)の環状の基体に移動不能に固定されていることを特徴とする摩擦要素(1、3)。
【請求項6】
請求項1~5の何れか一項に記載の摩擦要素(1、3)であって、前記摩擦面要素(5)は変形工程により、少なくともポイント的に結合ライン(17)に沿って、前記摩擦要素(1、3)の環状の基体に固定されていることを特徴とする摩擦要素(1、3)。
【請求項7】
請求項1~5の何れか一項に記載の摩擦要素(1、3)であって、前記摩擦面要素(5)は前記摩擦要素(1、3)の環状の基体に溶接されていることを特徴とする摩擦要素(1、3)。
【請求項8】
請求項1~7の何れか一項に記載の摩擦要素(1、3)であって、該摩擦要素(1、3)の環状の基体が軸方向に少なくとも1つの第1の厚さD1を有し、また各前記摩擦面要素(5)は軸方向に少なくとも1つの第2の厚さD2を有し、前記少なくとも1つの第1の厚さD1および前記少なくとも1つの第2の厚さD2は、非同一であることを特徴とする摩擦要素(1、3)。
【請求項9】
請求項1~8の何れか一項に記載の摩擦要素(1、3)であって、前記摩擦面要素(5)は面取り部を備えることを特徴とする摩擦要素(1、3)。
【請求項10】
請求項1~9の何れか一項に記載の摩擦要素(1、3)であって、前記摩擦面要素(5)は溝を備えることを特徴とする摩擦要素(1、3)。
【請求項11】
請求項1~10の何れか一項に記載の摩擦要素(1、3)であって、前記摩擦面要素(5)は軸方向に傾斜が付けられている、または円錐状に構成されていることを特徴とする摩擦要素(1、3)。
【請求項12】
請求項1~11の何れか一項に記載の摩擦要素(1、3)であって、前記摩擦面要素(5)と前記摩擦要素(1、3)の環状の基体は、異なる材料で形成されていることを特徴とする摩擦要素(1、3)。
【請求項13】
請求項1~12の何れか一項に記載の摩擦要素(1、3)であって、前記摩擦面要素(5)は、スチール製、焼結されている又はセラミックス製であることを特徴とする摩擦要素(1、3)。
【請求項14】
車両の変速機用摩擦型シフト要素のための摩擦要素(1、3)を製造する方法であって、前記摩擦要素(1、3)は、略環状の基体を備え、該環状の基体は、円周に亘り分散されて配置された複数の摩擦面要素(5)を備え、
前記摩擦要素(1、3)は、摩擦相手材としての他の摩擦要素とトルク伝達のために互いに接触可能な重なり領域を備え、
前記摩擦面要素(5)は、前記重なり領域に向かって径方向内側または径方向外側に環状の基体から突出し、
前記摩擦要素(1、3)の環状の基体は、前記複数の摩擦面要素(5)よりも材料品質が低く、
第1ステップ(110)において、前記略環状の基体を、第1材料から製造するステップと、
第2ステップ(120)において、前記環状の基体を内周または外周に沿って中断する複数の各切り欠き(16)を製造するステップであって、前記切り欠き(16)は
、摩擦面要素(5)を受容する役割を果たすステップと、
第3ステップ(130)において、前
記摩擦面要素(5)を、第2材料から製造するステップと、
第4ステップにおいて、前記複数の摩擦面要素(5)を前記摩擦要素(1、3)の環状の基体に固定するステップと
を含む方法。
【請求項15】
請求項14に記載の方法であって、前記摩擦面要素(5)を前記切り欠き(16)に移動不能に結合するステップを含む方法。
【請求項16】
請求項15に記載の方法であって、更に:前記摩擦面要素(5)を、変形工程により、前記略環状の基体に固定するステップであって、前記変形工程を、前記摩擦面要素(5)に対して、および/または前記略環状の基体に対して、少なくともポイント的に結合ライン(17)に沿って実行するステップを含む方法。
【請求項17】
請求項14に記載の方法であって、更に:前記摩擦面要素(5)を前記略環状の基体に溶接するステップを含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の変速機用摩擦型シフト要素のための摩擦要素に関する。摩擦要素は、環状の基体を備える。環状の基体は、円周に亘り分散されて配置された複数の摩擦面要素を備える。摩擦面要素は、径方向内側または径方向外側に突出する。
【背景技術】
【0002】
摩擦要素は、例えばインナプレートまたはアウタプレート等であり、特に車両の自動変速機である変速機用の摩擦型シフト要素用に使用される。摩擦要素は、例えばインナプレートキャリアまたはアウタプレートキャリアである第1キャリアに配置可能である。複数の摩擦要素はプレートパッケージを形成可能である。インナプレートおよびアウタプレートは、軸方向に交互に相前後して配置され、および摩擦型シフト要素が締結された状態で作動されることにより、第1摩擦要素および第2摩擦要素の各パッケージの間でトルクを伝達するために、互いに押圧し合うことができる。
【0003】
例えば、ドイツ特許出願公開第102009001101号は、様々な変速比を得るための、複数の摩擦型シフト要素を備える変速機を開示する。摩擦型シフト要素は多板型シフト要素として構成される。許容面圧を高めるために、インナプレートおよびアウタプレートはライニングのない摩擦面を備える。従って、同様の伝達性能を有するシフト要素を、より小型化可能であり、および開放された作動状態において、発生するドラグトルクが低減される。
【0004】
さらに、ドイツ特許出願公開第102009027017号明細書は、多板ブレーキまたは多板クラッチ用のプレートパッケージを開示する。このプレートパッケージにおいては、プレートに弾性効果が与えられているため、プレートパッケージが開放された状態でも、プレート間には所望の間隔が存在する。従って、プレートパッケージの全体において、空隙が発生する。
【0005】
ドイツ特許出願公開第10315169号は、ライニングを支承する摩擦要素とライニングのない摩擦要素とが協働し、かつライニングを支承する摩擦要素が、摩擦要素の周囲を流れる液体循環を生成するための液体面装置を備えるクラッチ装置を開示する。この液体循環は、主に摩擦要素の周囲に摩擦面要素を分散して配置することで実現される。
【0006】
英国登録特許第814992号は、ディスクおよびディスクの両側に摩擦ライニングを備える摩擦要素を開示する。摩擦ライニングの一部は、ディスクの少なくとも片側で、ばね要素に接続されている。摩擦ライニングは、摩擦要素の摩擦ライニングキャリアと、接着接続されるか、またはリベットにより接続されている。
【0007】
こうした摩擦型シフト要素に使用される摩擦要素の欠点は、依然として高いドラグトルクが発生する可能性があることである。本出願人による未公開のドイツ特許出願第102014200854号は、ドラグトルクの少ない摩擦型シフト要素を開示する。これは、一方では摩擦ライニングを省くことで、および他方では摩擦面要素を摩擦要素と一体的に形成する、つまり統合的に構成することで達成される。不利な点は、摩擦型シフト要素の摩擦要素を製造するために、材料の消費が依然としてかなり高いことにある。また、摩擦要素は、摩擦面要素と同一の材料製でなげればならない。
【0008】
さらに欧州特許出願公開第1650454号は、費用低減のために、複数のセグメントが結合された摩擦板用のホルダーディスクを開示する。これにより、打抜き屑が減少する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】ドイツ特許出願公開第102009001101号
【文献】ドイツ特許出願公開第102009027017号
【文献】ドイツ特許出願公開第10315169号
【文献】英国登録特許第814992号
【文献】ドイツ特許出願第102014200854号
【文献】欧州特許出願公開第1650454号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の課題は、可及的に優れた費用対効果で製造可能であり、可及的にドラグトルクを低減させ、更に製造の際に材料消費が僅かであり、従ってドイツ特許出願102014200854号が開示する既に有利な発明を更に改善した、車両の変速機用摩擦要素を提供することである。さらに本発明の更なる態様は、費用対効果に優れ、また材料を節約する、摩擦要素のための製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この課題は、本発明により、摩擦要素および各摩擦面要素の双方が、一体的に構成されることにより、解決される。
【0012】
従来技術の欠点は、統合的に構成された実施形態においては、摩擦面要素および略環状の基体が、必然的に同一の材料製なことである。磨耗、強度、摩擦係数プロファイル、およびドラグトルク特性に関する材料要件を満たすことを望むならば、必然的に、プレート全体を高品質材料で製造しなければならないであろう。プレートは、摩擦面に比べて非常に広い面を有するため、高品質材料を大量に消費することが必要であった。摩擦要素および摩擦面要素を「複数部分」構成にして、各摩擦面要素を略歯型形状で、摩擦要素の環状の基体に形成することで、異なる素材、または材料を使用することができる。特に摩擦要素用には、摩擦を受ける摩擦面要素用の材料よりも、材料品質が低く、また実質的に安価な材料を使用可能である。
【0013】
さらに本発明の解決によれば、例えばインナプレートを、アウタプレートの「打抜き屑」から製造可能であることが判明した。部品が径方向に重ならない、つまり、一方のプレートの略環状の基体と、環状の摩擦面を備える摩擦プレートの間に、径方向で重なる部分が存在しないためである。摩擦接触は、専ら、環状体に配置された摩擦面要素を介して実現される。従って、打抜き屑を著しく低減可能であり、これは大幅な費用節約につながる。
【0014】
径方向で重なり領域に突出する摩擦面要素の利点は、このようにして、摩擦要素に、つまりインナプレートまたはアウタプレートのいずれかに、独立した摩擦突起または摩擦歯を設けることで、摩擦面が周方向に繰り返し中断されることになり、両摩擦要素の間にある接触面または対応する摩擦面が低減されることである。例えば、装備された摩擦面要素、つまり摩擦突起または摩擦歯の間にリセスを施すことによっても、周方向に中断可能である。
【0015】
本発明による摩擦要素は、例えば他の摩擦要素と摩擦結的に協働できる。その際環状の基体は、重なり領域を低減するため、または互いに重なり合う摩擦面を低減するために、他の摩擦要素の基体に対して、各突出する摩擦面要素を除いて、径方向に互いに間隔を空けることが可能である。これにより、例えば油等である冷却剤および/または潤滑剤が、ほぼ妨げられることなく径方向に流出可能である。さらに、ドラグトルクは接触面において冷却剤および潤滑剤がせん断されることで発生するが、その接触面が最小にまで低減される。
【0016】
例えば従来技術によるクラッチにおいて既知であるように、摩擦ライニングまたは摩擦体は、接着、リベット留め、または他の方法で摩擦面要素に固定される必要がある。本発明による摩擦面要素を備える本発明による摩擦要素の更なる利点は、一体的に構成されているため、その必要がないことである。
【0017】
いわゆる径方向内側または径方向外側に突出する摩擦ライニングキャリアは、例えば接着可能な摩擦ライニング、またはセラミック小プレートを受容する打抜き穴を装備することが既知である。こうした摩擦ライニングキャリアは、本発明による摩擦要素の摩擦面要素のように、摩擦要素に類似のジオメトリ及び配置を有することが可能であろう。しかしながらこの場合、専ら摩擦ライニングまたはセラミック小プレートが、カウンタプレートを備える摩擦相手材として作用した。そのため、従来技術から既知である径方向内側または径方向外側に突出する摩擦面要素は、常に複数部分で構成された。なぜなら常に、摩擦ライニングキャリアおよび少なくとも1つの摩擦ライニングが装備されたためである。
【0018】
一体的の概念は、摩擦面要素が摩擦ライニングを備えない、ということのみを意味するのではない。この概念は、摩擦面要素がワンピースで構成されていることを、追加的に意味する。従って、摩擦面要素を備える本発明による摩擦要素は、常に複数部分であり、また統合的には構成されていない。これは、例えばドイツ特許出願第102014200854号において開示されているケースであり、摩擦要素が各摩擦面要素とワンピースで構成されている。
【0019】
好適には、本発明の有利な発展形態において、摩擦要素は湿式摩擦型シフト要素用に装備され、好適には油である流体が、潤滑および冷却のために、摩擦要素パッケージまたはプレートパッケージを通って、摩擦面の領域に導かれる。
【0020】
こうしたシフト要素によっては、これらの摩擦型シフト要素に熱的負荷を与えずに、有益なパワーシフトが可能であるため、好適にも、提案する摩擦要素を、自動変速機において連結解除されるシフト要素のために使用可能である。連結解除されるシフト要素は、摩擦型シフト要素が、最低ギヤで締結、最高ギヤで開放され、および全てのギヤ段の連続するスルーシフト操作において、シフト状態が一度だけ変更されることを特徴とする。
【0021】
従って、提案するシフト要素においてはドラグトルクが特に僅かであるため、車両の燃料消費が著しく低減される。さらに、摩擦面が低減されているため、小型化されて必要とする構造スペースが低減され、製造費用も抑えられる。さらに質量慣性モーメントが低減され、それにより本発明による摩擦要素を装備した摩擦型シフト要素を備える変速機を搭載した車両において、良好な運転動特性を実現可能である。
【0022】
さらに好適には、摩擦要素は各摩擦面要素を受容する切り欠きを備える。結合位置とも称する切り欠きは、後鉤部または後部カットを備えることができる。これにより、摩擦面要素を、実質的に形状結合的に保持可能である。このために必要な後鉤部または後部カットは、例えばパズルピースまたは従来技術から既知のように形成可能である。各切り欠きは、好適には締りばめとして構成される。
【0023】
さらに好適には、切り欠きは略環状の基体を、内周または外周に沿って部分的に中断する。
【0024】
さらに好適には、摩擦面要素は、相前後して位置する異なる半径のR部に亘って、環状の摩擦要素に形成されている。特に好適には、切り欠き、および切り欠き直近の周辺部が、摩擦面要素ゾーンを画定する。また、周方向に隣接する摩擦面要素ゾーンの間に、各中間ゾーンが配置されている。各中間ゾーンは、中央ゾーン、および中央ゾーンを囲む2つの移行ゾーンを備える。中央ゾーンは、第1半径R3のR部を備えて構成されている。また各移行ゾーンは、半径R4のR部を備えて構成されている。そして、各移行ゾーンは、1つの中央ゾーンおよび1つの摩擦面要素ゾーンに接する。
【0025】
R部は、例えば摩擦要素の環状の基体の外周領域において、摩擦面要素の歯型形状の摩擦面の端部より大きい。このようにして、突出する摩擦面要素において、基体に対する移行部を、その応力図の点で最適化する。環断面が摩擦面要素の方向に拡大するため、プレートパッケージが全体としては、径方向によりコンパクトな構成となる。従って摩擦面要素は、動力伝達の際に、曲げモーメントを環状ジオメトリへと伝達する。この結果として生じる応力図を、摩擦要素において良好に形成するために、環ジオメトリからのカーブをまず大きな半径のR部から開始し、そして小さな半径のR部で摩擦面要素の方向へ更に導くことが有用である。摩擦面要素におけるジオメトリまたはR部の半径の変化は、摩擦歯または摩擦面要素5の両側で異なるよう形成可能である(好適な回転方向において)。
【0026】
さらに好適には、摩擦面要素は固定手段により、摩擦要素に固定されている。特に好適には、摩擦面要素は変形により、摩擦要素に固定される。従って摩擦面要素を、特に側方に、特に軸方向に外れないよう、プレートに固定することができる。
【0027】
さらに好適には、摩擦面要素は、少なくともポイント的に結合ラインに沿って、摩擦要素に固定されている。結合ラインは、軸線方向から見て、周方向および/または径方向に、切り欠きまたは結合ラインの拡がりを制限する線である。摩擦面要素は、変形により、略環状の基体に固定される。結合工程は、個々の領域において、つまりポイント的に結合ラインにおいて、または結合ライン全体に沿っても、実行可能である。例えば、いわゆる、かしめ、によって、摩擦要素と摩擦面要素の間の摩擦結合および形状結合を、部品のうちの少なくとも1つの部品、つまり摩擦要素または摩擦面要素において、エッジ領域を塑性変形させて、発生させることができる。溶接とは異なり、異なる材料を互いに結合可能である。さらに、かしめ接続を介しては、より高いトルクを伝達可能である。
【0028】
さらに好適には、摩擦面要素は、結合ラインに沿って面取り部を備える。結合ラインの領域に角をそいだ部分を備えると、より薄い部分において、固定を更に容易とすることができる。
【0029】
さらに好適には、摩擦面要素は摩擦要素に溶接されている。溶接の利点は、形状結合された摩擦面要素において、変形による固定を不要とすることが可能なことである。この場合、後鉤部または後部カットを省略可能である。
【0030】
さらに好適には、摩擦要素が軸方向に少なくとも1つの第1の厚さを有し、また各摩擦面要素は軸方向に少なくとも1つの第2の厚さを有する。少なくとも1つの第1の厚さと、少なくとも1つの第2の厚さは、非同一である。特に好適には、第2の厚さ、つまり摩擦面要素の厚さは、第1の厚さ、つまり摩擦要素の厚さよりも薄い。これにより、部品の各々が、特に各々の要件に関して最適化される。例えばこれにより、幾分薄い摩擦面要素は、変形工程により容易く固定される。
【0031】
さらに好適には、摩擦面要素が周方向で流入領域および/または流出領域に、面取り部を備える。面取り部または角をそいだ部分を、例えばカウンタプレートであるカウンタ摩擦要素が、摩擦ゾーンに入る位置および/または出る位置に施すと、ドラグトルクを更に低減可能である。カウンタプレートがそうしたものである。
【0032】
さらに好適には、摩擦面要素は溝を備える。適切な溝加工、例えば平行溝、ワッフル溝、ボトルネック溝等である溝加工を、紙製ライニングと共に施すことによって、ドラグトルクは更に著しく低減され、かつ同時に負荷容量が増加される。
【0033】
さらに好適には、摩擦面要素はスチール製とする。さらに好適には、摩擦面要素は焼結される。さらに好適には、摩擦面要素はセラミックス製とする。
【0034】
同様に好適には、摩擦面要素は、断面において、または軸方向に、傾斜が付けられている、または円錐状に構成されている。これにより、例えば内側および/または外側の摩擦要素は平坦な形状等に構成され、軸方向で構造スペースが節約される。さらに、プレートまたは摩擦要素が、負荷の高い領域でより厚く、つまりより強く構成されるため、同時に強度が更に高まる。負荷の高い領域とは、特に、摩擦要素においてスプラインが装備される領域である。さらに、摩擦面要素が、各摩擦要素の環断面に対して広い面で結合するため、良好に放熱される。従って、熱的な耐久性が高まる。平坦または円錐状としたことにより、好適にも、摩擦型シフト要素を締結するために必要な軸方向の圧接力も、更に低減される。さらには、摩擦要素の製造時に、より低い変形度が要求される。
【0035】
本発明の更なる態様によれば、車両の変速機用摩擦要素を製造する方法が提供される。摩擦型シフト要素は、略環状の基体を備える。環状の基体は、円周に亘り分散されて配置された複数の摩擦面要素を備える。摩擦面要素は、径方向内側または径方向外側に突出する。方法は以下のステップを含む:
第1ステップにおいて、略環状の基体を、第1材料から製造する。
第2ステップ(120)において、環状の基体を内周または外周に沿って中断する複数の各切り欠きを製造する。切り欠き(16)は、一体的に構成された摩擦面要素(5)を受容する役割を果たす。
第3ステップにおいて、一体的に構成された摩擦面要素(5)を、第1材料または第2材料から製造する。
【0036】
本発明による方法の利点は、例えばインナプレートまたはアウタプレートである摩擦要素であって、著しく軽量化され、ドラグトルクが低減され、かつ高いトルクを伝達可能な摩擦要素が製造可能なことである。
【0037】
さらにこれにより、従来技術とは異なり、対応する、同軸上に互いに配置されたプレート対が「互いに」製造される。つまり、従来のプレート製造の際に発生していた内側部分を2倍廃棄することがない。
【0038】
特に好適には、方法において、摩擦面要素を切り欠きに結合させる。
【0039】
さらに方法は、摩擦面要素を、変形工程により、略環状の基体に固定するステップを含む。好適には、変形工程を、摩擦面要素に対して、および/または略環状の基体に対して、少なくともポイント的に結合ラインに沿って実行する。
【0040】
さらに好適には、方法において、摩擦面要素を略環状の基体に溶接する。この方法の利点は、結合位置の位置後鉤部または後部カットを省略可能なことである。
【0041】
さらには、打抜きと同等の製造方法、例えば組み合わせ打抜きが好適である。
【0042】
摩擦要素は、油圧的、空気圧的、電気機械的または機械的に作動可能な摩擦型シフト要素用に装備可能である。既存の冷却剤および潤滑剤を油圧媒体として使用可能であるため、湿式摩擦型シフト要素を油圧的に作動することが好適である。摩擦要素は、金属板、スチール等で製造可能である。スチールは、例えばC15、C60、C75等のカーボン素材を含有可能である。摩擦要素は、例えば浸炭窒化またはガス窒化等により、硬化させて構成可能である。摩擦要素のコーティングとして、例えば焼結材、モリブデン、カーボン等を同期装置と共に備えることが可能である。
【0043】
提案する摩擦要素は、パワーシフトトランスミッションの摩擦型シフト要素において使用可能である。この摩擦要素を、無段マルチレンジ変速機または車両の電気駆動装置の摩擦型シフト要素において適用することも考慮可能である。更なる可能性としては、四輪駆動の連結解除、リターダの連結解除、方向転換グループとして、およびレンジグループとしても適用可能である。
【0044】
本発明は、上述の摩擦要素に加えて、このように形成された摩擦要素を備える車両用の自動変速機も同様に請求する。
【0045】
以下に、図面を参照して本発明を更に詳述する。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【
図1】溶接された径方向外側に突出する複数の摩擦面要素を備える、本発明による摩擦要素の好適な第1実施形態の正面図である。
【
図2】溶接された径方向外側に突出する複数の摩擦面要素を備える、本発明による摩擦要素の好適な第1実施形態の側面図である。
【
図3】溶接された径方向内側に突出する複数の摩擦面要素を備える、本発明による摩擦要素の更なる好適な実施形態の正面図である。
【
図4】溶接された径方向内側に突出する複数の摩擦面要素を備える、本発明による摩擦要素の更なる好適な実施形態の側面図である。
【
図5】挿入された径方向内側に突出する摩擦面要素を備える、本発明による摩擦要素の更なる好適な実施形態の軸方向正面図である。
【
図6】
図5の摩擦面要素が挿入された、本発明による摩擦要素の拡大部分図である。
【
図7】挿入されていない状態の、
図6の摩擦要素および摩擦面要素を示す図である。
【
図8】
図6の摩擦面要素が挿入され、追加的に固定手段により結合位置に沿って固定された図である。
【
図9】挿入された
図8の摩擦面要素の斜視図である。
【
図10】摩擦面要素が溶接された、本発明による摩擦要素の更なる好適な実施形態の拡大部分図である。
【
図12】摩擦面要素に面取り部が配置された、本発明による摩擦要素の更なる好適な実施形態の拡大部分図である。
【
図13】径方向外側に突出する摩擦面要素が挿入された、本発明による摩擦要素の更なる好適な実施形態の図である。
【
図14】アウタプレートとして構成された摩擦要素に対して同軸上に配置された、本発明による
図13の摩擦要素を示す図である。
【
図15】本発明による
図5の摩擦要素の好適なジオメトリを示す図である。
【
図17】摩擦面要素が挿入された本発明による摩擦要素を製造するための、本発明による方法の例示的な工程を示す図である。
【
図18】摩擦面要素が溶接された本発明による摩擦要素を製造するための、本発明による方法の例示的な工程を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0047】
図1乃至
図16は、車両の変速機用摩擦型シフト要素のための、本発明による摩擦要素の異なる実施形態を、例示的に多板型シフト要素として示す。
【0048】
図17および
図18においては、上述の摩擦要素を製造するための例示的な工程を示す。
【0049】
回転不能な状態で第1キャリア2に固定された複数の摩擦要素1、および回転不能な状態で第2キャリア4に固定された複数の摩擦要素3は、摩擦型シフト要素を構成する。
【0050】
摩擦要素1、3は、プレートパッケージとして、交互に相前後して配置され、摩擦要素1と摩擦要素3の各々の間に、重なり合う摩擦面が生じる。トルクを伝達するために、摩擦要素1および3は、軸方向に押圧し合う。摩擦要素1、3は各々、略環状に構成された摩擦面を備える。各他方の摩擦要素1、3は、対応する摩擦面として、径方向で重なり領域に突出する複数の摩擦面要素5を備える。
【0051】
図1および
図2の好適な実施形態では、摩擦要素1がアウタプレートとして、および本発明による摩擦要素3がインナプレートとして構成される。略環状に構成された、各アウタプレートは、アウタプレートキャリア2と結合するための外側スプライン6、および略環状の摩擦面7を備える。インナプレート、つまり摩擦要素3は、インナプレートキャリア4と結合するための内側スプライン8、および円周に亘り分散されて径方向外側に突出し、アウタプレートの環状の摩擦面7と重なり合う、複数の摩擦面要素5を備える。本発明による摩擦要素3は、5つの切り欠き16を備える。各切り欠き16には、摩擦面要素5が溶接されている。これは、溶接線20により表されている。
【0052】
図3および
図4の第2の好適な実施形態では、
図1および
図2の実施形態とは反対に、摩擦面要素5が、アウタプレートとして装備された本発明による摩擦要素1に備わり、および環状の摩擦面7が、インナプレートとして構成された摩擦要素3に備わる。摩擦面要素5は、円周に亘り分散されて径方向内側に突出し、環状の摩擦面7と重なり合うよう配置される。
図2および
図4に示す、プレートパッケージに対する矢印は、摩擦型シフト要素を締結すべく作用する軸力を示す。本発明による摩擦要素1は、5つの切り欠きまたは結合位置16を備える。各切り欠きまたは結合位置16には、摩擦面要素5が溶接されている。これは、溶接線20により表されている。
【0053】
図1乃至
図4の両実施形態に関わらず、互いに摩擦結合が可能な摩擦要素1、3は、突出する摩擦面要素5を除いて、径方向に互いに間隔を空けている。
【0054】
図1乃至
図4に示された摩擦面要素5は、摩擦要素1、または3と溶接されているため、周方向に、複数の独立した歯型形状の摩擦面または接触面が備わる。これらの摩擦面または接触面は、摩擦型シフト要素が締結された状態で、略環状の摩擦面7と接触可能である。可及的に優れた費用対効果で製造可能であり、かつ可及的にドラグトルクを低減させた摩擦型シフト要素を実現するために、摩擦面要素5において、長さおよび幅の関係、角度、エッジ形状、ならびに表面構造を最適化可能である。
【0055】
対応するキャリア2、4と結合し、摩擦面要素5が軸方向で同一の位置に重なり合って配置される取り付けを強制するために、スプライン6、8の内側には、例えば、異なる歯幅および/または異なる歯溝幅および/または異なる歯の角度のような異なるジオメトリが備わる。
【0056】
図5は、径方向内側に突出する摩擦面要素が挿入された、本発明による摩擦要素1の更なる好適な実施形態を示す。
図1乃至4とは異なり、9つの摩擦面要素5は、摩擦面要素5のために装備された結合ライン17に沿う結合位置16に結合されている。結合ライン17は、周方向および径方向で結合位置16を限定する。
図5の結合位置16は、
図1乃至
図4の結合位置16とは、結合位置16が後鉤部18を有する点で異なる。これにより摩擦面要素5は、実質的に形状結合的に保持される。結合ライン17は、周方向および径方向で結合位置16を限定する。
【0057】
もちろん、摩擦擦面要素を他の任意の数とすることも可能である。さらに、摩擦面要素の形状(長さ/幅の関係、角度、エッジ形状、表面構造)を、自由に最適化可能である。
【0058】
図6は、摩擦面要素5が挿入された本発明による摩擦要素1の、拡大部分図である。摩擦面要素は、後鉤部18によって、結合ライン17に沿い、例えばパズルピースとして既知であるように、実質的に形状結合的に保持される。
【0059】
図7は、挿入されていない状態の、
図6の摩擦要素及び摩擦面要素を示す。
【0060】
図8は、挿入されて追加的に4つの固定手段19で結合位置16に固定された、
図6の摩擦面要素5を示す。この場合、摩擦面要素5が側方から落下しないよう固定するために、4点で、つまりポイント的に、変形プロセスが摩擦要素1および/または摩擦面要素5のいずれかの結合ライン17に沿って実施されている。
【0061】
図9は、挿入された
図8の摩擦面要素5を、斜視図で示す。摩擦面要素5は、厚さD1を有するアウタプレート1よりも薄い厚さD2を有する。これにより、変形プロセスによる固定が容易になる。ここでの変形は、ポイント的にのみ、つまり局所的に表れるものである。しかしながら、結合ラインの全体に沿って変形させることも可能である。
【0062】
図10は、
図3乃至
図4の摩擦面要素5が溶接された本発明による摩擦要素1の、拡大部分図を示す。この場合、後鉤部18を省略可能である。
【0063】
図11は、アウタプレートとして構成された本発明による
図5の摩擦要素の、背面図である。両プレート1、3の環状の基体が、いかに径方向に互いに間隔を空けているかを良好に認識できる。この図はまた、いかにインナプレート3をアウタプレート1に同軸に製造可能かを示している。従って、2倍の内側部分を打抜きスクラップとして廃棄する必要がない。
【0064】
図12は、面取り部21を有する、本発明による
図6の摩擦面要素5の拡大部分図である。この摩擦面要素5は、流入ゾーンおよび/または流出ゾーンの領域で、機械的に成形加工されている。これにより、ドラグトルクがまた更に低減される。
【0065】
図13は、インナプレートとして構成された、径方向外側に突出する摩擦面要素5を有する、本発明による摩擦要素3の更なる好適な実施形態を示す。これらの摩擦面要素5は、
図1乃至
図2とは異なり、挿入されているが、溶接されてはいない。
【0066】
図14は、対応するアウタプレート1に対して同軸上に配置された、本発明による
図13の摩擦要素3を示す。
図1乃至
図2と異なり、これらの摩擦面要素5は、挿入されているが、溶接されてはいない。
【0067】
図5と異なり、アウタプレート1ではなく、インナプレート3が摩擦面要素5を受容する。
【0068】
図15は、好適な実施形態のジオメトリを示す。この場合、切り欠き、つまり結合位置16、及び結合位置16直近の周辺部が、摩擦面要素ゾーン25を画定する。周方向に隣接する摩擦面要素ゾーン25の間に、各中間ゾーン22が配置されている。各中間ゾーン22は、中央ゾーン24、および中央ゾーン24を囲む2つの移行ゾーン23を備える。中央ゾーン24は、半径R3のR部を備えて構成されている。また各移行ゾーン23は、半径R4のR部を備えて構成されている。そして、各移行ゾーン23は、1つの中央ゾーン24および1つの摩擦面要素ゾーン25に接する。
【0069】
このようにして、突出する摩擦面要素5の基体への移行部を、応力図に関して最適化する。
【0070】
図16は、円錐状に構成された摩擦要素を備えた、更なる好適な実施形態の側面図である。この場合、インナプレートとして構成された本発明による摩擦要素3、および隣接するカウンタプレートの双方が、互いに相対する摩擦面に対して、断面に傾斜が付けられている、または円錐状に構成されている。特に円錐状とした効果により、必要とされる軸方向の圧接力が低減される。この実施形態においては、摩擦面要素5および摩擦面7が軸方向で先細り、および先細りの部分は対称に構成されている。非対称とするか、または片側を平坦とすることも可能である。
【0071】
(挿入された摩擦面要素5を備える)
図17、および(溶接された摩擦面要素5を備える)
図18は、本発明による摩擦要素を製造するための、本発明による方法の例示的な工程を示す図である。
【0072】
図17では、先ず第1ステップ110において、インナプレートとして構成された摩擦要素3を、板金ストリップから打抜く。続くステップ120では、結合位置として構成された、後鉤部を備える切り欠き16を、インナプレート3に打抜く。続くステップ130では、摩擦歯として構成された摩擦面要素5を製造する。この場合摩擦歯5は、インナプレート3と同一の材料製、または他の材料製とすることが可能である。次のステップ131では、摩擦歯5を結合位置16に挿入する。続くステップ132では、かしめによって、摩擦歯5をインナプレート3に対して、結合ライン17の領域で固定する。そのため、解けることがない摩擦結合および形状結合が発生する。
【0073】
当業者には、
図17に示された方法は、本発明による方法の一例に過ぎないことが明らかである。もちろん、製造のための更なるステップ、またはステップの低減さえも、考慮可能である。例えば、スプラインを製造するステップがある。また例えば、同時に特定のステップを実施可能なためでもある。従って、ステップ110および120、つまりプレートと結合位置の打抜きを同時に実行することを、特に考慮可能である。切り欠き16は、アウタプレート1に打抜くことも可能である。対応して、摩擦歯5は径方向内側に突出することになる。
【0074】
図18のステップ110は、
図17と同一である。ステップ110に続くステップ140では、切り欠き16を、後鉤部18なしでインナプレート3に打抜く。続くステップ141では、摩擦歯5を製造する。続いてステップ142では、摩擦歯5を、摩擦歯5のために装備された切り欠き16内に溶接する。
【0075】
この場合でも、当業者には、
図18に示された方法は、本発明による方法の一例に過ぎないことが明らかである。もちろん、例えばスプラインを製造するステップなど、製造のための更なるステップ、または製造のためのステップの低減さえも、考慮可能である。摩擦歯を、アウタプレート1に打抜かれた切り欠き内に溶接することも可能である。その場合摩擦歯は、径方向内側に突出する。
【符号の説明】
【0076】
1 第1摩擦要素またはプレート、アウタプレート
2 第1キャリア
3 第2摩擦要素またはプレート、インナプレート
4 第2キャリア
5 摩擦面要素、摩擦歯
6 第1摩擦要素のスプライン
7 環状の摩擦面
8 第2摩擦要素のスプライン
16 切り欠き、結合位置
17 結合ライン
18 後鉤部、後部カット
19 固定手段
20 溶接線
21 角をそいだ部分
22 中間ゾーン
23 移行ゾーン
24 中央ゾーン
25 摩擦面要素ゾーン
D1 第1の厚さ、摩擦要素
D2 第2の厚さ、摩擦面要素
R3 中央ゾーンR部の半径
R4 移行ゾーンR部の半径