(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-26
(45)【発行日】2022-11-04
(54)【発明の名称】コラーゲンを含む高カロリー、高タンパク質の栄養配合物
(51)【国際特許分類】
A23L 33/17 20160101AFI20221027BHJP
A23L 33/18 20160101ALI20221027BHJP
A23L 33/19 20160101ALI20221027BHJP
A23L 33/115 20160101ALI20221027BHJP
A23L 33/125 20160101ALI20221027BHJP
A23L 33/15 20160101ALI20221027BHJP
A23L 33/16 20160101ALI20221027BHJP
【FI】
A23L33/17
A23L33/18
A23L33/19
A23L33/115
A23L33/125
A23L33/15
A23L33/16
(21)【出願番号】P 2018540444
(86)(22)【出願日】2017-02-03
(86)【国際出願番号】 EP2017052428
(87)【国際公開番号】W WO2017134245
(87)【国際公開日】2017-08-10
【審査請求日】2020-01-22
(32)【優先日】2016-02-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(32)【優先日】2016-08-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】509063694
【氏名又は名称】フレゼニウス カービ ドイチュラント ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100122471
【氏名又は名称】籾井 孝文
(72)【発明者】
【氏名】ブリト ドゥ ラ フエンテ, エドムンド
(72)【発明者】
【氏名】カイム, ズザンネ
(72)【発明者】
【氏名】ペスターナ, エリカ
(72)【発明者】
【氏名】マイノウ―シエラ, ジョゼ マリア
(72)【発明者】
【氏名】マルティネス―ボック, マリア フェルナンダ
(72)【発明者】
【氏名】ヴァレンフェルス, アイリーン
(72)【発明者】
【氏名】ヴィーガント, ズザンネ
【審査官】戸来 幸男
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-212006(JP,A)
【文献】特開2001-061444(JP,A)
【文献】特開2008-247748(JP,A)
【文献】特開2006-050935(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 33/00-33/29
A61K 31/00-31/80
FSTA/CAplus/AGRICOLA/BIOSIS/
MEDLINE/EMBASE(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
タンパク質構成要素と、脂質構成要素と、炭水化物構成要素と、ミネラルと、ビタミンと、水とを含む栄養組成物であって、前記タンパク質構成要素が少なくとも2つの異なるタンパク質源を含み、該栄養組成物が5.5~9.0の範囲のpHを有し、
a)第1のタンパク質源が加水分解コラーゲンであり、
b)前記脂質構成要素が、該組成物の総エネルギーの少なくとも30EN%を供給し、
c)前記第1のタンパク質源が、前記タンパク質構成要素の総重量ベースで70重量%~90重量%を占め、
少なくとも2.5kcal/mLのカロリー密度を有し、
生成物100mL当たり少なくとも14gのタンパク質を含み、
第2のタンパク質源として乳タンパク質が選択され、
該乳タンパク質がタンパク質構成要素の総重量ベースで10重量%~30重量%含まれる、栄養組成物。
【請求項2】
前記タンパク質構成要素が、前記栄養組成物の総エネルギーベースで少なくとも15EN%を供給する、請求項1に記載の栄養組成物。
【請求項3】
前記加水分解コラーゲンが1000Da~6000Daの平均分子量Mwを有する、請求項1または2に記載の栄養組成物。
【請求項4】
前記脂質構成要素が、前記栄養組成物の総エネルギーベースで多くとも50EN%を供給する、請求項1~3のいずれか一項に記載の栄養組成物。
【請求項5】
a)前記タンパク質構成要素が、前記栄養組成物の総エネルギーベースで15EN%~25EN%を供給し、
b)前記脂質構成要素が、前記栄養組成物の総エネルギーベースで40EN%~50EN%を供給し、
c)前記炭水化物構成要素が、前記栄養組成物の総エネルギーベースで30EN%~40EN%を供給する、
請求項1~4のいずれか一項に記載の栄養組成物。
【請求項6】
カロリー密度が少なくとも2.8kcal/mLである、請求項1~5のいずれか一項に記載の栄養組成物。
【請求項7】
カロリー密度が少なくとも3.0kcal/mLである、請求項1~5のいずれか一項に記載の栄養組成物。
【請求項8】
栄養学的に完全であることを更に特徴とする、請求項1~7のいずれか一項に記載の栄養組成物。
【請求項9】
療法に使用される、請求項1~8のいずれか一項に記載の栄養組成物。
【請求項10】
栄養失調の予防及び治療に使用される、請求項9に記載の栄養組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、高カロリー密度かつ高タンパク質含量の即時使用可能な栄養組成物に関する。本明細書の組成物は脂質構成要素、炭水化物構成要素、ビタミン、ミネラル、水を更に含み、好ましくは栄養学的に完全である。本開示は、かかる組成物を製造する方法に更に関する。かかる栄養組成物は、非常に高いエネルギー密度(例えば少なくとも2.5kcal/mL、好ましくは少なくとも3kcal/mL)と、非常に高いタンパク質密度(例えば、組成物の総重量ベースで少なくとも12重量%、好ましくは少なくとも14重量%)との組合せであっても、均質な栄養学的に完全なエマルションをもたらすのに好適である。
【背景技術】
【0002】
比較的低容量の配合物中で多量のカロリー及び栄養素を供給する栄養組成物が一般に必要とされている。
【0003】
かかる栄養組成物は、特に食欲が低下した高齢患者、多量又は更には正常量の食物への耐容性が低下した患者、通常よりも多いカロリー及び栄養素の供給を必要とする患者(例えば、(慢性)消耗性疾患を患う患者)に必要とされる。
【0004】
栄養失調のリスクがある又は栄養失調を有する患者の摂食における問題の1つは、栄養療法に対するコンプライアンスの低さである。患者が多量又は更には正常量の食物及び/又は栄養組成物に耐えられないことが多い。
【0005】
通例、比較的低容量での多量のカロリーの必要性は、栄養組成物中の脂質及び/又は炭水化物の量を増大することによって満たされる。タンパク質含量の増大は困難である。特に、栄養学的に完全な組成物等のミネラル及びビタミンを含む組成物中では、多くの場合、ミネラルとタンパク質との相互作用のために安定した均質な組成物を得ることが不可能である。
【0006】
しかしながら、低容量の配合物中で高タンパク質及び高カロリーの組成物が医学的に必要とされることが多い。さらには、主に技術的な理由で、高タンパク質量を有する栄養組成物は通例、より低いカロリー密度を有する。また、高タンパク質の組成物は多くの場合、脂質及び/又は炭水化物を含まないか、又は少なくとも脂質及び/又は炭水化物が少量である。
【0007】
このため、栄養組成物のタンパク質密度は通例、カロリー密度とは同時に増大されない。これは、かかる増大が通例、加工性、均質化、減菌、汚染(fouling)、不安定なエマルション及び/又は高い粘度の点で問題を有するためである。これらの問題は、栄養学的に完全な組成物、すなわち組成物を唯一の栄養源として好適なものとする量でミネラル及びビタミンを供給する組成物で最も顕著である。
【0008】
したがって、即時使用可能な栄養組成物、特に栄養学的に完全な組成物に関しては、患者/介護者は通例、2つの選択肢:1.高カロリー栄養摂取又は2.高タンパク質栄養摂取のうち一方を選ぶ必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって、高カロリー密度及び高タンパク質量を同時にもたらす栄養組成物が必要とされる。特に、栄養学的に完全なものとして付加的に応用可能なかかる組成物が必要とされる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、少なくとも2つの異なるタンパク質源を含み、コラーゲン加水分解物が第1のタンパク質源であり、タンパク質構成要素の総重量ベースで少なくとも35重量%、好ましくは45重量%存在するタンパク質構成要素の使用により、低容量で高カロリー密度及び高タンパク質量の両方を有する均質な栄養組成物を提供することが可能であることを見出した。
【0011】
さらに、本発明者らは、かかる栄養組成物に、栄養組成物を栄養学的に完全なものとし、依然として安定かつ均質なままにするのに十分な量でミネラル及びビタミンを添加することができることを見出した。
【0012】
第1の態様では、本開示は、タンパク質構成要素と、脂質構成要素と、炭水化物構成要素と、ミネラルと、ビタミンと、水とを含む栄養組成物であって、タンパク質構成要素が少なくとも2つの異なるタンパク質源を含み、第1のタンパク質源が加水分解コラーゲンであり、脂質構成要素が、該組成物の総エネルギーの少なくとも30EN%を供給し、第1のタンパク質源が、タンパク質構成要素の総重量ベースで少なくとも35重量%、好ましくは45重量%~95重量%を占める、栄養組成物に関する。
【0013】
第2の態様では、本開示は、かかる栄養組成物を製造する方法に関する。
【0014】
第3の態様では、本開示は、かかる組成物の使用に関する。
【0015】
第4の態様では、本開示は、栄養組成物を含む投与単位に関する。
【0016】
第5の態様では、本開示は、栄養組成物を適用する投与計画に関する。
【発明を実施するための形態】
【0017】
定義
本明細書で使用される「高タンパク質」は、タンパク質構成要素が栄養組成物の総エネルギーベースで少なくとも15EN%、好ましくは少なくとも18EN%、最も好ましくは少なくとも20EN%を供給する栄養組成物を指す。好ましい実施形態では、かかる栄養組成物は、組成物の総重量ベースで少なくとも10重量%、好ましくは少なくとも12重量%、より好ましくは少なくとも14重量%のタンパク質を含む。本開示によると、タンパク質含量には、例えば多くとも40EN%、好ましくは多くとも30EN%、より好ましくは多くとも28EN%という上限があり得る。
【0018】
本明細書で使用される「高カロリー」は、少なくとも2kcal/mL、好ましくは少なくとも2.5kcal/ml、より好ましくは少なくとも2.8kcal/mL、最も好ましくは少なくとも3.0kcal/mLのカロリー密度を有する栄養組成物を指す。
【0019】
本明細書で使用される「加水分解コラーゲン」又は「コラーゲン加水分解物」は、当業者に既知の手順によるコラーゲンの加水分解によって得られる低分子量コラーゲンを指す。本明細書で好ましい加水分解コラーゲンの実施形態は、1000Da~6000Da、好ましくは1000Da~3000Daの平均分子量Mwを有する。平均分子量を決定する方法は、当該技術分野で既知である。例示的な方法を下記に提示する。
【0020】
本明細書の「栄養組成物」は、合成的に製造された食品組成物を指す。このため、栄養組成物は、バルク成分を該成分が通例、固体形態(例えば粉末)又は液体形態(例えば油、水、シロップ)で提供されるように混合/溶解することによって得られる人工栄養生成物である。「栄養組成物」という用語は、「食物」、すなわち自然のままの肉、野菜、果実等の改質されていない自然食料製品、及び従来法で調製された(例えば調理された)食事、又は茶、コーヒー若しくはジュースのような飲料を除外するものである。
【0021】
本開示については、「栄養組成物」は液体又は半固体の組成物に限定される。
【0022】
本明細書で使用される「患者の栄養摂取」は、医学的病態を患う個体を対象とする栄養摂取を指す。本明細書で規定される患者の栄養摂取は、従来法で準備された食事(「食物」)の形態での栄養素の供給を除外するものである。したがって、患者の栄養摂取は、上記で規定される栄養組成物の形態での栄養素の供給のみを指す。本明細書で、患者の栄養摂取は、高カロリーを必要とするとともに、高タンパク質を必要とする患者を対象とする。
【0023】
「栄養学的に完全な」は、唯一の栄養源として好適な栄養組成物を指す。栄養学的に完全なものとするためには、栄養組成物が脂質、炭水化物及びタンパク質構成要素に加えて、ミネラル及びビタミンを含む必要がある。栄養学的に完全なものとするためには、ビタミン及びミネラルが当業者に既知の、すなわち確立された栄養ガイドラインに従う十分な量で存在する必要がある。特にミネラル及びビタミンに関する推奨栄養素所要量は、EU委員会指令1999/21/EC等の標準栄養ガイドラインに見ることができる(下記表1を参照されたい)。本開示による好適な栄養素は、規則(EU)No 609/2013の要件を満たし、それに挙げられる。
【0024】
本明細書で使用される「栄養失調」は、選択肢I:18.5未満のボディマス指数(BMI、kg/m2);選択肢II:意図的でない体重減少(必須)とBMIの低下又は低い除脂肪量指数(FFMI)の少なくとも一方との所見の組合せの一方又は両方を指す。体重減少は、無期限で10%を超える、又は3ヶ月間で5%を超える習慣的な体重の減少と規定される。BMIの低下は、70歳未満及び70歳超の被験体でそれぞれ20kg/m2未満又は22kg/m2未満である。低FFMIは、女性及び男性でそれぞれ15kg/m2未満及び17kg/m2未満である。
【0025】
多数の成分又は構成要素「からなる」組成物は、指定の成分又は構成要素以外に何も含まないものとして理解される。成分又は構成要素の量の範囲が与えられる場合、組成物中の全ての成分又は構成要素の個々の量は当然ながら、存在する全ての成分又は構成要素の全量の和が合計100重量%となるように適合する必要もある。
【0026】
本明細書で使用される「均質化」は、栄養エマルション中の脂肪球のサイズを小さくするプロセスを指す。本明細書の好ましい均質化プロセスは、2つの均質化工程を含む。第1の均質化工程は100バールの圧力で行うことができ、第2の均質化工程は50バールで行うことができる。どちらの工程も60℃~80℃、例えば65℃~75℃、例えば65℃の温度で行うことができる。
【0027】
「UHT処理」は、微生物を死滅させることを目的とする。好ましいUHT処理は90℃で3分間の予熱処理、続いて139℃で6秒間のUHT、続いて40バール~150バールの間で変動させることができる圧力、90℃未満での均質化を必要とする(第3の)均質化工程によって行うことができる。
【0028】
本明細書で使用される「タンパク質構成要素」は、「タンパク質」として申告可能な栄養組成物の成分の全体を指す。
【0029】
本明細書で使用される「脂質構成要素」は、「脂肪」として申告可能な栄養組成物の成分の全体を指す。
【0030】
本明細書で使用される「炭水化物構成要素」は、「炭水化物」として申告可能な栄養組成物の成分の全体を指す。
【0031】
「EN%」は食用組成物、例えば栄養組成物の総栄養エネルギーへの或る特定の構成要素又は特定の成分の寄与を指す。
【0032】
「即時使用可能な」は、患者に投与される栄養組成物の最終形態を指す。通例、本明細書の栄養組成物は、即時使用可能なフォーマットで予め充填され、すなわち任意の更なる希釈等を必要としない別個に充填された投与単位で販売される。
【0033】
栄養組成物
本明細書の栄養組成物は、栄養素を所定の制御可能な量で含む。本開示による栄養組成物はタンパク質構成要素と、脂質構成要素と、炭水化物構成要素と、ミネラルと、ビタミンと、水とを含む。任意に、かかる栄養組成物は食物繊維、及び/又は食品添加物として知られる更なる成分を更に含んでいてもよい。
【0034】
本明細書の栄養組成物は通例、液体又は半固体であり、通例、水中油型エマルション(O/W)中で提供される。
【0035】
栄養組成物は少なくとも2kcal/mL、好ましくは少なくとも2.5kcal/ml、より好ましくは少なくとも2.8kcal/mL、最も好ましくは少なくとも3.0kcal/mLの高いカロリー密度を有するように適合されるのが好ましい。通例、栄養組成物は多くとも5.0kcal/mL、好ましくは多くとも4kcal/ml、最も好ましくは多くとも3.8kcal/mLのカロリー密度を有する。例えば、本明細書の組成物は、3.0kcal/mL~4.0kcal/mLのカロリー密度を有する。
【0036】
本明細書の栄養組成物は脂質構成要素と、タンパク質構成要素と、炭水化物構成要素とを含むことができ、
a.タンパク質構成要素は、組成物の総エネルギーの少なくとも15EN%、好ましくは少なくとも18EN%、より好ましくは少なくとも20EN%を供給し、
b.脂質構成要素は、組成物の総エネルギーの少なくとも30EN%を供給し、
c.炭水化物構成要素は、組成物の総エネルギーの少なくとも20EN%を供給する。
【0037】
好ましくは、本開示による栄養組成物は脂質構成要素と、タンパク質構成要素と、炭水化物構成要素とを含み、
a.タンパク質構成要素は15EN%~25EN%、好ましくは18EN%~22EN%を供給し、
b.脂質構成要素は40EN%~50EN%、好ましくは43EN%~47EN%を供給し、
c.炭水化物構成要素は30EN%~40EN%、好ましくは33EN%~37EN%を供給する。
【0038】
好ましい実施形態では、本組成物中に含まれる水の量は、栄養組成物の総重量ベースで40重量%~60重量%、好ましくは45重量%~55重量%を占める。
【0039】
本開示の栄養組成物は経腸的に、好ましくは経口で投与される。
【0040】
タンパク質構成要素
タンパク質構成要素は少なくとも2つの異なるタンパク質源を含み、第1のタンパク質源は加水分解コラーゲンであり、タンパク質構成要素の総重量ベースで35重量%、好ましくは45重量%~95重量%、より好ましくは55重量%~90重量%、更により好ましくは70重量%~90重量%、最も好ましくは80重量%~85重量%を占める。
【0041】
多量の加水分解タンパク質を含む栄養組成物と比較すると、本栄養組成物(加水分解コラーゲンを含む)は粘度、テクスチャ及び/又は味のようなレオロジー特性及び感覚特性の改善のために患者コンプライアンスの改善につながるはずである。
【0042】
第2のタンパク質源は植物性タンパク質、コラーゲン以外の動物性タンパク質、及びそれらの混合物、例えば乳タンパク質、ダイズタンパク質、エンドウマメタンパク質、卵白及びそれらの加水分解物から選択することができる。好ましい実施形態では、第2のタンパク質源は総乳タンパク質、乳タンパク質分離物、乳タンパク質濃縮物、乳清、カゼイン及びそれらの混合物等の乳タンパク質から選択される。特に好ましい第2のタンパク質源は、乳タンパク質、例えば総乳タンパク質及び/又は乳タンパク質濃縮物である。
【0043】
第2のタンパク質源中では、異なる平均分子量を有するタンパク質を使用することができる。第2のタンパク質源中に使用されるタンパク質の好ましい平均分子量(Mw)は、20kDa~60kDaの範囲内にある。かかる範囲では、栄養組成物の特性について、熱安定性及び/又は粘度の点でバランスを取ることができる。
【0044】
例えば、より低い分子量を有するタンパク質を多量に含む第2のタンパク質源は、栄養組成物の粘度の低下をもたらす。したがって、好ましい第2のタンパク質源は40kDa未満、例えば20kDa~40kDaの平均分子量を有するタンパク質を(第2のタンパク質源の総重量ベースで)40重量%超、好ましくは50重量%超含む。
【0045】
好ましいタンパク質構成要素は、第1のタンパク質源としてコラーゲン加水分解物と、第2のタンパク質源として乳タンパク質とを含む。かかるタンパク質構成要素は、遊離アミノ酸、ジペプチド又はトリペプチドを添加することなく、(例えば、本開示の栄養組成物を唯一の栄養源として使用する場合に)1日摂取量についての現在の国際勧告を満たすのに好適なアミノ酸分布をもたらすように適合させ得ることから特に好適である。かかる例示的な国際勧告は、WHOによって公開されている(Technical Report Series 935, 2007, p. 150)。(各々、タンパク質構成要素の総重量ベースで)第1のタンパク質源として70重量%~90重量%の加水分解コラーゲンと第2のタンパク質源として30重量%~10重量%の乳タンパク質と、例えば80重量%の加水分解コラーゲンと20重量%の乳タンパク質とを含むタンパク質構成要素が特に好ましい。
【0046】
更なるアミノ酸も第2のタンパク質源に寄与し得る。これらは、その化学形態又は低分子ペプチド、例えばジペプチド又はトリペプチドの形態で添加することができる。しかしながら、好ましい実施形態では、遊離アミノ酸もジペプチド又はトリペプチドも本明細書に記載のタンパク質構成要素に添加されない。
【0047】
本明細書の栄養組成物は通例、栄養組成物の総重量ベースで少なくとも10重量%、好ましくは少なくとも12重量%、より好ましくは少なくとも14重量%のタンパク質を含む。
【0048】
好ましい実施形態では、タンパク質構成要素は、栄養組成物の総エネルギーベースで少なくとも15EN%、好ましくは少なくとも18EN%、より好ましくは少なくとも20EN%を供給する。例えば、タンパク質構成要素は、組成物の総エネルギーの15EN%~25EN%、好ましくは18EN%~22EN%を供給する。
【0049】
好ましくは、本栄養組成物のタンパク質対水比は少なくとも2.0/10(g/g)、好ましくは少なくとも2.5/10(g/g)である。
【0050】
コラーゲン加水分解物
上記のように、本明細書のコラーゲン加水分解物は1000Da~6000Da、好ましくは1000Da~3000Daの平均分子量Mwを有する。例が当業者に既知であり、(例えばGelita,Germanyにより)市販されている。かかる加水分解物及びそれを製造する方法は、例えば独国特許出願公開第102010060564号、特に[0004]~[0011]及び実施例1に記載されており、[0030]段落の低分子量加水分解物が特に好適である。当然ながら、ブタゼラチン以外の供給源を使用することができ、ウシが本明細書の用途に特に好ましい。
【0051】
したがって、特に好ましいコラーゲン加水分解物は下記に挙げる分子量分布を有する。
【0052】
【0053】
【0054】
コラーゲン加水分解物の多くとも10重量%、より好ましくは多くとも5重量%が7500Daを超える分子量を有するのが好ましい。
【0055】
コラーゲン加水分解物の多くとも15重量%、より好ましくは多くとも5重量%が500Da未満の分子量を有するのが好ましい。
【0056】
このため、特に好ましいコラーゲン加水分解物は少なくとも75重量%、好ましくは少なくとも90重量%が500Da~7500Daの分子量範囲に含まれることを特徴とする。
【0057】
炭水化物構成要素
炭水化物構成要素は、1つ以上の炭水化物源を含み得る。典型的な炭水化物源はマルトデキストリン(maltodextrine)、グルコースシロップ、スクロース、フルクトース、イソマルツロース、デンプン(加工又は非加工)、タピオカデキストリン(dextrine)及びそれらの混合物からなるリストから選択することができる。
【0058】
通例、本明細書の栄養組成物において、炭水化物構成要素は、栄養組成物の総エネルギーベースで少なくとも25EN%、好ましくは30EN%~40EN%、例えば33EN%~37EN%を供給する。
【0059】
好ましい炭水化物構成要素はグルコースシロップ、好ましくはスクロースを含む。炭水化物構成要素は、炭水化物構成要素の総重量ベースで65重量%~95重量%のグルコースシロップと35重量%~95重量%のスクロースとを含み得る。炭水化物構成要素は、炭水化物構成要素の総重量ベースで60重量%~80重量%のグルコースシロップと20重量%~40重量%のスクロースと、例えば65重量%~75重量%のグルコースシロップと25重量%~35重量%のスクロースとを含むのが好ましい。
【0060】
繊維
本明細書の栄養組成物は、食物繊維として申告可能な成分を含み得る。好適な食物繊維はココアパウダー、イヌリン、小麦デキストリン、セルロース、微結晶性セルロース、ダイズ多糖類、タピオカデキストリン、キサンタン、フラクトオリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、少なくとも部分的に加水分解されたグアーガム、アカシアゴム、ペクチン、オート麦繊維、ポリデキストロース、難消化性デンプン、ヘミセルロース及びそれらの混合物からなる群から選択することができる。
【0061】
脂質構成要素
脂質構成要素は、動物起源及び/又は植物起源の脂質等の1つ以上の脂質源を含み得る。好適な脂質源は、海産物由来の油、植物油及びそれらの組合せから選択することができる。好ましくは、脂質源は魚油、ヒマワリ油、サフラワー油、ダイズ油、菜種油、キャノーラ油、アマニ油及びそれらの組合せから選択することができる。付加的に、脂質構成要素は、C6~C12脂肪酸をもたらす油又は脂肪の形態のMCTを含んでいてもよい。
【0062】
個々の脂肪酸に関して、脂質構成要素は通例、多価不飽和脂肪酸、一価不飽和脂肪酸及び飽和脂肪酸を含む。好適な脂肪酸はカプロン酸(C6:0)、カプリル酸(C8:0)、カプリン酸(C10:0)、ラウリン酸(C12:0)、ミリスチン酸(C14:0)、パルミチン酸(C16:0)、パルミトレイン酸(C16:1w7)、ステアリン酸(C18:0)、オレイン酸(C18:1w9)、リノール酸(C18:2w6)、a-リノレン酸(C18:3w3)、エイコサペンタエン酸(C20:5w3)、ドコサヘキサエン酸(C22:6w3)及びそれらの混合物からなる群から選択することができる。
【0063】
脂質構成要素は、本明細書の栄養組成物の総エネルギーの少なくとも30EN%、好ましくは少なくとも40EN%を供給する。
【0064】
好ましい実施形態では、脂質構成要素は多くとも50EN%を供給する。
【0065】
脂質構成要素は、栄養組成物の総エネルギーベースで40EN%~50EN%、例えば43EN%~47EN%を供給するのが好ましい。
【0066】
ビタミン及びミネラル
栄養学的に完全とみなされるためには、栄養組成物はビタミン及びミネラルを含む必要がある。
【0067】
組成物を本開示に従って栄養学的に完全なものとするために組成物中に含まれる好適なビタミンはビタミンA、ビタミンD、ビタミンK、ビタミンC、チアミン、リボフラビン、ビタミンB6、ナイアシン、葉酸、ビタミンB12、パントテン酸、ビオチン及びビタミンEである。栄養組成物を完全なものとするビタミンの例を表2に挙げる。
【0068】
組成物を本開示に従って栄養学的に完全なものとするために組成物中に含まれる好適なミネラルはナトリウム、塩化物、カリウム、カルシウム、リン、マグネシウム、鉄、亜鉛、銅、ヨウ素、セレン、マンガン、クロム及びモリブデンである。任意にフッ化物が含まれていてもよい。栄養組成物を完全なものとするミネラルの例を表3に挙げる。
【0069】
添加物
栄養組成物は、任意に食品添加物を含む。添加物は通例、栄養組成物の総重量ベースで10重量%、5重量%未満又は更には1重量%未満の総量で存在する。例示的な添加物はコリン、β-カロテン、ルテイン、リコペン、カフェイン、レシチン、タウリン、カルニチン、ミオイノシトール、着色料、香料及びそれらの混合物である。香料はカラメル、バニラ、ヨーグルト、チョコレート、コーヒー、カプチーノ、果実の香料等であり得る。
【0070】
添加物は、安定剤及び乳化剤を含み得る。安定剤はガム及びその混合物、例えば、微結晶性セルロース(E460)、カルボキシメチルセルロースナトリウム(E466)、カラギーナン(E407)、グリセリドのジアセチル酒石酸エステル、セルロースゲル(セルロース、微結晶性)から選択されるのが好ましい。乳化剤はE471、ダイズレシチン等の(蒸留)モノグリセリドから選択することができる。例えば、安定剤及び乳化剤は以下の量/比率で含まれる:モノグリセリド(E471、乳化剤として)1g/L~5g/L、及び0.3g/L~5g/Lを占める安定剤混合物、ダイズレシチン1g/L~5g/L、グリセリドのジアセチル酒石酸(E472、例えばDATEM)0.1g/L~5g/L、及びMCC 1g/L~8g/L。
【0071】
療法への使用
本開示の栄養組成物は療法に使用することができる。
【0072】
例えば、本開示の栄養組成物は、栄養療法に使用することができる。言い換えると、本明細書の栄養組成物は、患者の栄養摂取として使用することができる。
【0073】
一実施形態では、本開示の栄養組成物は、栄養失調と関連する栄養素欠乏の予防及び治療に使用される。
【0074】
更なる実施形態では、本開示の栄養組成物は、治療的水分制限と関連する栄養素欠乏の予防及び治療に使用される。例えば、治療的水分制限を必要とする患者は透析患者、心不全を有する患者及び肝不全を有する患者から選択され得る。
【0075】
更なる実施形態では本開示の栄養組成物は異化、癌悪液質又は心臓悪液質を含む悪液質、HIV、慢性創傷又はサルコペニア等の(慢性)消耗性疾患と関連する栄養素欠乏の予防及び治療に使用される。本開示の栄養組成物は、タンパク質必要量又は全エネルギーの増大、好ましくはその両方と関連する任意の病態における栄養素欠乏の予防及び治療に使用される。例は、タンパク質及び/又はエネルギーの消耗と関連する胃腸病態における栄養素欠乏の予防及び治療への使用である。他の例は、外科患者の栄養素欠乏の予防及び治療への使用、創傷及び褥瘡と関連する栄養素欠乏の予防及び治療への使用、又は癌と関連する栄養素欠乏の予防及び治療への使用である。
【0076】
一実施形態では、本開示の栄養組成物は、タンパク質-エネルギー欠乏と関連する病態を患う患者におけるタンパク質-エネルギー欠乏の予防及び治療に使用される。
【0077】
概して、本明細書の栄養組成物は、タンパク質-エネルギー栄養失調(PEM)の予防及び治療に使用される。このため、本明細書の栄養組成物は、タンパク質栄養失調又はPEMを有する又はそのリスクがある患者の治療に使用される。患者は、タンパク質消耗と関連する全身状態、又は不適切な食事タンパク質若しくはタンパク質及びカロリーの摂取量を考慮して、PEMのリスクがあり得る。患者は、長期間にわたって不適切なタンパク質摂取量の食事を取っている場合にPEMのリスクがあるとみなすことができる。例えば、10EN%未満のタンパク質を含む食事を取っている患者、又はタンパク質所要量もカロリー所要量も満たさない患者である。
【0078】
本明細書の栄養組成物は高齢患者、妊娠又は授乳中の患者、及び小児(1歳超)のタンパク質-エネルギー欠乏の予防及び治療、例えばPEMと診断された又はそのリスクがある高齢患者(65歳超)、妊娠又は授乳中の患者、及び小児(1歳超)のタンパク質-エネルギー欠乏の予防及び治療に特に好適である。
【0079】
一実施形態では、本開示の栄養組成物は高齢患者(65歳超)、より好ましくは入院患者(養護施設内の患者を含む)における栄養素欠乏、特にフレイル(frailty)及び/又はサルコペニアと関連するタンパク質-エネルギー欠乏の予防及び治療に使用される。
【0080】
さらに、本開示の栄養組成物は神経障害、食欲不振、慢性閉塞性肺疾患(COPD)と関連する栄養素欠乏の予防及び治療に使用される。
【0081】
栄養組成物の調製
本明細書に記載の栄養組成物は、以下の工程を含む方法によって得られる。
【0082】
第1の工程では、水を準備し、50℃~70℃の温度まで加熱する。
【0083】
第2の工程では、炭水化物構成要素又はその一部と、任意にMCC等の安定剤とを添加する。
【0084】
第3の工程では、タンパク質構成要素を添加する。
【0085】
第4の工程では、脂質構成要素を、好ましくは80℃~90℃の昇温で、好ましくはダイズレシチン、及び/又はグリセリドのジアセチル酒石酸(例えばDATEM)、及び/又は(蒸留)モノグリセリド等の(更なる)乳化剤及び/又は安定剤と組み合わせて添加する。
【0086】
第5の工程では、ビタミンと、ミネラルと、任意に炭水化物構成要素の残部とを添加する。この工程では、任意の他の粉末成分、例えば繊維、香料及び他の添加物を添加してもよい。第5の工程の前、その最中又はその後の任意の時点で、混合物を55℃~65℃まで冷却する。
【0087】
第6の工程では、混合物のpHを6~9、好ましくは7~8、例えば7に調整する。
【0088】
第7の工程では、混合物を、例えば60℃~65℃、100/50バールの圧力で均質化する。
【0089】
第8の工程では、混合物を滅菌する。第8の工程は、(8.a)予熱工程と、(8.b)加熱工程と、(8.c)付加的な均質化工程とを含み得る。例えば、
a.工程8.aにおいて、混合物を、例えば2分間~5分間にわたって70℃~100℃、好ましくは85℃~95℃に予熱し、
b.工程8.bにおいて、混合物を、例えば6秒間~15秒間にわたって130℃~140℃、好ましくは139℃~141℃に加熱し、
c.工程8.cにおいて、混合物を40バール~200バールの圧力で均質化し、工程8.cは、好ましくは90℃未満で行われる。
【0090】
代替的な実施形態では、香料等の付加的な成分の全て又は一部を、第3の工程と第4の工程との間で既に添加してもよい。
【0091】
投与単位及び1日用量
本明細書の栄養組成物は通例、投与単位で提供される。
【0092】
本明細書の投与単位はボトル、テトラブリック又はバッグ等のパッケージ内で別個に提供される100mL~200mL、好ましくは100mL~150mLを指す。
【0093】
かかる投与単位は300kcal~500kcal、好ましくは350kcal~450kcalを供給する。
【0094】
かかる投与単位は14g~40g、好ましくは15g~30g、より好ましくは18g~22gのタンパク質、例えば20gのタンパク質を供給する。
【0095】
例示的な投与単位は、125mLの投与単位中で400kcal及び20gのタンパク質を供給する。
【0096】
したがって、本明細書の栄養組成物の1500kcal~2500kcalの完全栄養のための例示的な1日用量は、3つ~8つの投与単位、例えば5つの投与単位を用いて提供することができる。したがって、完全経腸栄養のための1日用量は、各々が350kcal~450kcalを供給する5つの投与単位によって提供することができる。
【0097】
本明細書の栄養組成物の300kcal~900kcalの補助栄養のための典型的な1日用量は、1つ~3つの投与単位、例えば各々が350kcal~450kcalを供給する1つ又は2つの投与単位によって提供される。
【0098】
実施形態
実施形態1:タンパク質構成要素と、脂質構成要素と、炭水化物構成要素と、ミネラルと、ビタミンと、水とを含む栄養組成物であって、タンパク質構成要素が少なくとも2つの異なるタンパク質源を含み、
a)第1のタンパク質源が加水分解コラーゲンであり、
b)脂質構成要素が、組成物の総エネルギーの少なくとも30EN%を供給し、
c)第1のタンパク質源が、タンパク質構成要素の総重量ベースで少なくとも35重量%、好ましくは45重量%~95重量%を占め、
好ましくは栄養組成物が5.5~9.0のpHを有する、
栄養組成物。
【0099】
実施形態2:少なくとも2kcal/mL、好ましくは少なくとも2.5kcal/ml、より好ましくは少なくとも2.8kcal/mL、最も好ましくは少なくとも3.0kcal/mLのカロリー密度を有し、該カロリー密度が多くとも5.0kcal/mL、好ましくは多くとも4kcal/ml、最も好ましくは多くとも3.8kcal/mLの上限を有し得る、実施形態1による栄養組成物。
【0100】
実施形態3:加水分解コラーゲンが1000Da~6000Da、好ましくは1000Da~3000Daの平均分子量Mwを有する、実施形態1又は2による栄養組成物。
【0101】
実施形態4:コラーゲン加水分解物の多くとも10重量%、より好ましくは多くとも5重量%が7500Daを超える分子量を有する、前述の実施形態のいずれかによる栄養組成物。
【0102】
実施形態5:コラーゲン加水分解物の多くとも15重量%、より好ましくは多くとも5重量%が500Da未満の分子量を有する、前述の実施形態のいずれかによる栄養組成物。
【0103】
実施形態6:コラーゲン加水分解物の少なくとも75重量%、好ましくは少なくとも90重量%が500Da~7500Daの分子量範囲に含まれることを特徴とする、前述の実施形態のいずれかによる栄養組成物。
【0104】
実施形態7:加水分解コラーゲンが以下を特徴とする分子量分布を有する、前述の実施形態のいずれかによる栄養組成物。
【0105】
【0106】
実施形態8:加水分解コラーゲンが以下を特徴とする分子量分布を有する、前述の実施形態のいずれかによる栄養組成物。
【0107】
【0108】
実施形態9:タンパク質構成要素が栄養組成物の総エネルギーベースで少なくとも15EN%、好ましくは少なくとも18EN%を供給する、前述の実施形態のいずれかによる栄養組成物。
【0109】
実施形態10:栄養組成物100mL当たり少なくとも14.0g、好ましくは少なくとも15.0g、より好ましくは少なくとも15.5g、最も好ましくは少なくとも16gのタンパク質を含み、該タンパク質が多くとも20g/100mL、好ましくは多くとも18g/100mL、最も好ましくは多くとも17g/100mLの上限で存在し得る、前述の実施形態のいずれかによる栄養組成物。
【0110】
実施形態11:少なくとも2.0/10(g/g)、好ましくは少なくとも2.5/10(g/g)のタンパク質対水比を有する、前述の実施形態のいずれかによる栄養組成物。
【0111】
実施形態12:脂質構成要素が栄養組成物の総エネルギーベースで多くとも50EN%、好ましくは少なくとも40EN%を供給する、前述の実施形態のいずれかによる栄養組成物。
【0112】
実施形態13:炭水化物構成要素が、栄養組成物の総エネルギーベースで少なくとも25EN%を供給する、前述の実施形態のいずれかによる栄養組成物。
【0113】
実施形態14:
a)タンパク質構成要素が、栄養組成物の総エネルギーベースで15EN%~25EN%、好ましくは18EN%~22EN%を供給し、
b)脂質構成要素が、栄養組成物の総エネルギーベースで40EN%~50EN%、好ましくは43EN%~47EN%を供給し、
c)炭水化物構成要素が、栄養組成物の総エネルギーベースで30EN%~40EN%、好ましくは33EN%~37EN%を供給する、
前述の実施形態のいずれかによる栄養組成物。
【0114】
実施形態15:第2のタンパク質源が植物性タンパク質、コラーゲン以外の動物性タンパク質、及びそれらの混合物から選択される、前述の実施形態のいずれかによる栄養組成物。
【0115】
実施形態16:第2のタンパク質源がダイズタンパク質、エンドウマメタンパク質及び卵白から選択され、好ましくはダイズタンパク質である、前述の実施形態のいずれかによる栄養組成物。
【0116】
実施形態17:第2のタンパク質源が乳タンパク質から選択される、前述の実施形態のいずれかによる栄養組成物。
【0117】
実施形態18:組成物の総重量ベースで少なくとも10重量%、好ましくは少なくとも12重量%、より好ましくは少なくとも14重量%のタンパク質を含む、前述の実施形態のいずれかによる栄養組成物。
【0118】
実施形態19:o/w(水中油型)エマルションである、前述の実施形態のいずれかによる栄養組成物。
【0119】
実施形態20:5.5~9.0、好ましくは7.0~9.0、例えば6~9又は7~8のpHを有する、前述の実施形態のいずれかによる栄養組成物。
【0120】
実施形態21:γ=1s-1の剪断速度、20℃で決定される50mPas~900mPas、好ましくは200mPas~750mPasの粘度を有する、前述の実施形態のいずれかによる栄養組成物。
【0121】
実施形態22:栄養学的に完全であることを更に特徴とする、前述の実施形態のいずれかによる栄養組成物。
【0122】
実施形態23:療法に使用される、前述の実施形態のいずれかによる栄養組成物。
【0123】
実施形態24:少なくとも2つの異なるタンパク質源を含むタンパク質混合物の使用であって、該混合物が、栄養エマルションの均質化及び/又は減菌加工を支持又は改善するために、タンパク質混合物の総重量ベースで少なくとも35重量%、好ましくは45重量%~95重量%、より好ましくは70重量%~90重量%、最も好ましくは80重量%~85重量%の加水分解コラーゲンを第1のタンパク質源として含む、使用。
【0124】
実施形態25:少なくとも2つの異なるタンパク質源を含むタンパク質混合物の使用であって、該混合物が、栄養エマルションのUHT処理に対する安定性及び/又は保存期間を支持若しくは改善するため、及び/又は適切な粘度を有する栄養エマルションを提供するため、及び/又は飲用に適した粘度の栄養エマルションを提供するために、タンパク質混合物の総重量ベースで少なくとも35重量%、好ましくは45重量%~95重量%、好ましくは70重量%~90重量%、最も好ましくは80重量%~85重量%のコラーゲン加水分解物を第1のタンパク質源として含む、使用。
【0125】
実施形態26:加水分解コラーゲンが1000Da~6000Da、好ましくは1000Da~3000Daの平均分子量Mwを有する、実施形態24又は25による使用。
【0126】
実施形態27:コラーゲン加水分解物の多くとも10重量%、より好ましくは多くとも5重量%が7500Daを超える分子量を有する、実施形態24~26のいずれかによる使用。
【0127】
実施形態28:コラーゲン加水分解物の多くとも15重量%、より好ましくは多くとも5重量%が500Da未満の分子量を有する、実施形態24~27のいずれかによる使用。
【0128】
実施形態29:コラーゲン加水分解物の少なくとも75重量%、好ましくは少なくとも90重量%が500Da~7500Daの分子量範囲に含まれることを特徴とする、実施形態24~28のいずれかによる使用。
【0129】
実施形態30:加水分解コラーゲンが以下を特徴とする分子量分布を有する、実施形態24~29のいずれかによる使用。
【0130】
【0131】
実施形態31:加水分解コラーゲンが以下を特徴とする分子量分布を有する、実施形態24~30のいずれかによる使用。
【0132】
【0133】
実施形態32:タンパク質構成要素と、脂質構成要素と、炭水化物構成要素と、ミネラルと、ビタミンと、水とを含む栄養組成物を製造する方法であって、
a)水を準備し、50℃~70℃の温度まで加熱する第1の工程と、
b)炭水化物構成要素又はその一部を、任意にMCC等の安定剤と組み合わせて添加する第2の工程と、
c)タンパク質構成要素を添加する第3の工程と、
d)脂質構成要素を、好ましくは80℃~90℃の昇温で、好ましくはダイズレシチン、(蒸留)モノグリセリド又はジアセチル酒石酸グリセリド等の(更なる)乳化剤及び/又は安定剤と組み合わせて添加する第4の工程と、
e)ビタミンと、ミネラルと、任意に炭水化物構成要素の残部とを添加する第5の工程であって、任意に、任意の他の粉末成分、例えば繊維、香料及び他の添加物を該第5の工程において添加してもよく、該第5の工程の前、その最中又はその後の任意の時点で、混合物を55℃~65℃まで冷却する、第5の工程と、
f)混合物のpHを6~9、好ましくは7~8、例えば7に調整する第6の工程と、
g)混合物を、例えば60℃~65℃、100/50バールの圧力で均質化する第7の工程と、
h)混合物を滅菌する第8の工程と、
を含む、方法。第8の工程は、(8.a)予熱工程と、(8.b)加熱工程と、(8.c)付加的な均質化工程とを含み得る。
【0134】
実施形態33:工程8が、
a)混合物を、例えば2分間~5分間にわたって70℃~100℃、好ましくは85℃~95℃に予熱する工程8.aと、
b)混合物を、例えば6秒間~15秒間にわたって130℃~140℃、好ましくは139℃~141℃に加熱する工程8.bと、
c)好ましくは90℃未満で行われる、混合物を40バール~200バールの圧力で均質化する工程8.cと、
に分けられる、実施形態32に記載の方法。
【0135】
実施形態34:タンパク質構成要素が少なくとも2つの異なるタンパク質源を含み、第1のタンパク質源が加水分解コラーゲンである、実施形態32又は33の方法。
【0136】
実施形態35:加水分解コラーゲンが1000Da~6000Da、好ましくは1000Da~3000Daの平均分子量Mwを有する、実施形態34の方法。
【0137】
実施形態36:コラーゲン加水分解物の多くとも10重量%、より好ましくは多くとも5重量%が7500Daを超える分子量を有する、実施形態34又は35の方法。
【0138】
実施形態37:コラーゲン加水分解物の多くとも15重量%、より好ましくは多くとも5重量%が500Da未満の分子量を有する、実施形態34~36のいずれかの方法。
【0139】
実施形態38:コラーゲン加水分解物の少なくとも75重量%、好ましくは少なくとも90重量%が500Da~7500Daの分子量範囲に含まれることを特徴とする、実施形態34~37のいずれかの方法。
【0140】
実施形態39:加水分解コラーゲンが以下を特徴とする分子量分布を有する、実施形態34~38のいずれかの方法。
【0141】
【0142】
実施形態40:加水分解コラーゲンが以下を特徴とする分子量分布を有する、実施形態34~39のいずれかの方法。
【0143】
【0144】
実施形態41:実施形態32~40のいずれかの方法によって得られる栄養組成物。
【0145】
実施形態42:請求項32~40のいずれかの方法によって得られる、実施形態1~22のいずれかの栄養組成物。
【0146】
実施形態43:実施形態1~22、41又は42のいずれかの栄養組成物を含む投与単位。
【0147】
実施形態44:300kcal~500kcal、好ましくは350kcal~450kcalを供給する、実施形態43による投与単位。
【0148】
実施形態45:100mL~200mL、好ましくは100mL~150mLの栄養組成物を好ましくはボトル、テトラブリック又はバッグ等のパッケージ内に含む、実施形態43又は44による投与単位。
【0149】
実施形態46:15g~30g、好ましくは18g~22gのタンパク質を含む、実施形態43~45のいずれかによる投与単位。
【0150】
実施形態47:125mL中で400kcal及び20gのタンパク質を供給する、実施形態43~46のいずれかによる投与単位。
【0151】
実施形態48:水分制限を必要とする患者の(栄養)療法に用いられる投与計画であって、完全栄養のための1日用量が、3つ~8つの実施形態43~47のいずれかによる投与単位、例えば各々が350kcal~450kcalを供給する5つの投与単位を用いて提供される、投与計画。
【0152】
実施形態49:完全栄養のための1日用量が1500kcal~2500kcalを指す、実施形態48の投与計画。
【0153】
実施形態50:水分制限を必要とする患者の(栄養)療法に用いられる投与計画であって、補助栄養のための1日用量が1つ~3つ、好ましくは1つ又は2つの実施形態43~47のいずれかによる投与単位を用いて提供される、投与計画。
【0154】
実施形態51:補助栄養のための1日用量が、例えば各々が350kcal~450kcalを供給する1つ又は2つの投与単位を用いた300kcal~900kcalを指す、実施形態50の投与計画。
【0155】
実施形態52:水分制限を必要とする患者における栄養失調の治療又は予防に用いられる、実施形態48~51のいずれかによる投与計画。
【0156】
実施形態53:タンパク質栄養失調又はタンパク質エネルギー栄養失調の治療又は予防に組成物を使用する療法に使用される、実施形態1~22のいずれかによる栄養組成物。
【0157】
実施形態54:栄養失調と関連する栄養素欠乏の予防及び治療に栄養組成物を使用する療法に使用される、実施形態1~22のいずれかによる栄養組成物。
【0158】
実施形態55:例えば透析患者、心不全を有する患者及び肝不全を有する患者から選択される治療的水分制限を必要とする患者における治療的水分制限と関連する栄養素欠乏の予防及び治療に栄養組成物を使用する療法に使用される、実施形態1~22のいずれかによる栄養組成物。
【0159】
実施形態56:異化、癌悪液質、HIV、慢性創傷又はサルコペニア等の(慢性)消耗性疾患と関連する栄養素欠乏の予防及び治療に栄養組成物を使用する療法に使用される、実施形態1~22のいずれかによる栄養組成物。
【0160】
実施形態57:タンパク質必要量又は全エネルギーの増大、好ましくはその両方と関連する任意の病態における栄養素欠乏の予防及び治療に栄養組成物を使用する療法に使用される、例えばタンパク質及び/又はエネルギーの消耗と関連する胃腸病態における栄養素欠乏の予防及び治療に使用される、外科患者の栄養素欠乏の予防及び治療に使用される、創傷及び褥瘡と関連する栄養素欠乏の予防及び治療に使用される、又は癌と関連する栄養素欠乏の予防及び治療に使用される、実施形態1~22のいずれかによる栄養組成物。
【0161】
実施形態58:タンパク質-エネルギー欠乏と関連する病態を患う患者におけるタンパク質-エネルギー欠乏の予防及び治療に栄養組成物を使用する療法に使用される、実施形態1~22のいずれかによる栄養組成物。
【0162】
実施形態59:タンパク質-エネルギー栄養失調(PEM)の予防及び治療に栄養組成物を使用する療法に使用され、好ましくはタンパク質栄養失調又はPEMを有する又はそのリスクがある患者の治療に使用される、実施形態1~22のいずれかによる栄養組成物。
【0163】
実施形態60:高齢患者(65歳超)、妊娠又は授乳中の患者、及び小児(1歳超)のタンパク質-エネルギー欠乏の予防及び治療、好ましくはPEMと診断された又はそのリスクがある高齢患者(65歳超)、妊娠又は授乳中の患者、及び小児(1歳超)のタンパク質-エネルギー欠乏の予防及び治療に栄養組成物を使用する療法に使用される、実施形態1~22のいずれかによる栄養組成物。
【0164】
実施形態61:高齢患者(65歳超)、より好ましくは入院患者(養護施設内の患者を含む)におけるフレイル及び/又はサルコペニアと関連する栄養素欠乏、好ましくはタンパク質-エネルギー欠乏の予防及び治療に栄養組成物を使用する療法に使用される、実施形態1~22のいずれかによる栄養組成物。
【0165】
実施形態62:栄養療法に使用される、実施形態1~22のいずれかによる栄養組成物。
【0166】
実施形態63:完全栄養のための1日用量が、3つ~8つの実施形態43~47のいずれかによる投与単位、例えば各々が350kcal~450kcalを供給する5つの投与単位を用いて提供される、実施形態58~61のいずれかによる(栄養)療法に用いられる投与計画。
【0167】
実施形態64:完全栄養のための1日用量が1500kcal~2500kcalを指す、実施形態63の投与計画。
【0168】
実施形態65:補助栄養のための1日用量が1つ~3つ、好ましくは1つ又は2つの実施形態43~47のいずれかによる投与単位、例えば各々が350kcal~450kcalを供給する1つ又は2つの投与単位を用いて提供される、実施形態58~61のいずれかによる(栄養)療法に用いられる投与計画。
【0169】
実施形態66:補助栄養のための1日用量が、例えば各々が350kcal~450kcalを供給する1つ又は2つの投与単位を用いた300kcal~900kcalを指す、実施形態65の投与計画。
【0170】
実施形態67:各投与単位が15g~30g、好ましくは18g~22gのタンパク質を供給する、実施形態48~52又は63~66のいずれかの投与計画。
【0171】
本開示が、本明細書に記載の栄養組成物又は投与単位をヒト被験体に投与する工程を含む、「療法への使用」のセクションに記載の欠乏及び病態を治療する方法にも関することを理解されたい。特に、本開示は、栄養組成物又は投与単位を本明細書に記載の投与計画に従って投与する工程を含む、かかる方法に関する。
【0172】
本開示が、本明細書に記載のように療法又は治療に使用される治療用組成物又は薬剤の製造における本明細書の栄養組成物の使用にも関することを更に理解されたい。特に、かかる療法は、栄養組成物を、好ましくは投与単位として本明細書に記載の投与計画に従って投与することを含み得る。
【実施例】
【0173】
表1による栄養組成物を調製した。混合後に均質化工程を行った。
【0174】
実施例1は、乳タンパク質のみをベースとするタンパク質構成要素を含む既に高カロリーの標準栄養組成物である。2.0kcal及び20EN%のタンパク質では安定し、均質であったが(実施例1)、カロリー密度を増大した場合に十分に均質な組成物を得ることはできなかった(実施例2)。
【0175】
驚くべきことに、カロリー密度の増大がコラーゲン加水分解物を十分な量で乳タンパク質に添加することによって可能となった(実施例4及び実施例5)。実施例3は、不十分な量のコラーゲン加水分解物を含む比較例である。
【0176】
実施例4から、十分なコラーゲン加水分解物を加えることで、非常に高いタンパク質のエネルギー密度を、高いカロリー密度(実施例4:2.6kcal)又は非常に高いカロリー密度(実施例5:3.2kcal/mL)をもたらす配合物中で達成することができることが更に示される。
【0177】
本発明者らにより、タンパク質構成要素中のコラーゲン加水分解物の重量%を増大した場合に(実施例5)、熱処理時の汚染を低減/防止することができることが更に観察された。
【0178】
高いタンパク質及びエネルギー含量にもかかわらず、栄養組成物を用いて栄養学的に完全な組成物の飲用に適した粘度をもたらすことができる。
【0179】
本発明者らにより、タンパク質構成要素中のコラーゲン加水分解物の重量%を増大することによって生成物の苦味を低減し得ることが更に観察された。したがって、栄養組成物は、より良好な患者コンプライアンスをもたらす。
【0180】
試験
実施例5による栄養組成物(試験飲料)を1日当たりおよそ400kcalの補助栄養の指示と共に被験体に与える。被験体は、65歳以上の年齢群に属する。年齢、性別、身長及びBMIを記録する。投与量は、連続7日間にわたって1日当たり125ml容のボトル1本である。かかるボトル1本は400kcalを供給し、20gのタンパク質(20EN%)、20gの脂肪(45EN%)及び35gの炭水化物(35EN%)を含む。
【0181】
副作用を文書化する。胃腸耐性パラメーターを文書化する。さらに、(タンパク質)エネルギー摂取、コンプライアンス(特に、試験飲料の完全消費までの時間及び/又は1時間以内に消費された量)、活動レベル及び嗜好性を文書化する。
【0182】
方法
GPC/HPLCによる加水分解コラーゲンの分子量の決定
装置:214nmで作動するUV検出器を備えるGPV/HPLC。カラム:TSK 2000 SW XL(Toshoh Biosience GmbH)。400mmol/lリン酸ナトリウムバッファー(pH5.3)を用いた定組成溶離。明確に規定されたI型コラーゲンフラグメント(FILK,Freiburg,Germany)を用いた較正。実施例に使用したコラーゲン加水分解物は、2kDaの平均分子量を有するものであった。概して、GPCによる分子量決定について当業者は十分に理解している。本明細書に記載の加水分解物等の小さな高分子のMwを決定する別の好適な方法は、MALDI-MSである。
【0183】
【0184】
【0185】