(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-26
(45)【発行日】2022-11-04
(54)【発明の名称】杭打機及び杭打機の輸送方法
(51)【国際特許分類】
E02D 7/00 20060101AFI20221027BHJP
【FI】
E02D7/00 Z
(21)【出願番号】P 2019003315
(22)【出願日】2019-01-11
【審査請求日】2021-11-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000004617
【氏名又は名称】日本車輌製造株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100128358
【氏名又は名称】木戸 良彦
(74)【代理人】
【識別番号】100086210
【氏名又は名称】木戸 一彦
(72)【発明者】
【氏名】大塚 明宏
(72)【発明者】
【氏名】磯貝 隆明
【審査官】五十幡 直子
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-137466(JP,A)
【文献】特開2016-141937(JP,A)
【文献】特開2011-256626(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 7/00-13/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下部走行体の上部に上部旋回体を旋回可能に設けたベースマシンと、前記上部旋回体の前部に起伏可能に設けられたリーダと、該リーダに沿って昇降するオーガと、該オーガに回転可能かつ軸方向に移動可能に挿通されたドライブロッドと、前記オーガに挿通した前記ドライブロッドの軸方向の移動を規制するチャック機構とを備えた杭打機において、前記リーダを後方に倒伏させて水平にした状態で、前記オーガから取り外した前記ドライブロッドを前記上部旋回体の後方かつ前記リーダの下面に沿わせて保持する着脱可能なドライブロッド保持具を有し
、
前記上部旋回体の後端下部は、カウンタウエイト搭載部が突設され、該カウンタウエイト搭載部に搭載されたカウンタウエイトの上面に、前記ドライブロッド保持具により保持された前記ドライブロッドの片端部を支持する受け部が設けられていることを特徴とする杭打機。
【請求項2】
前記リーダは、長手方向に対をなして吊り耳が設けられ、前記ドライブロッド保持具は、各吊り耳にそれぞれピン結合されて前記ドライブロッドを保持する前側ブラケットと後側ブラケットとからなり、両ブラケットは、前記リーダの起こし動作に伴って、前記ドライブロッドを前記受け部から離間するように吊り上げ可能に構成されていることを特徴とする請求項
1記載の杭打機。
【請求項3】
前記ドライブロッドは、前記チャック機構に係合可能なチャック溝が設けられ、前記前側ブラケット及び前記後側ブラケットのうちの少なくとも一方のブラケットは、前記チャック溝に係合して前記ドライブロッドの軸方向の移動を規制する係合部が設けられていることを特徴とする請求項
2記載の杭打機。
【請求項4】
前記前側ブラケット及び前記後側ブラケットのうちの少なくとも一方のブラケットは、前記ドライブロッドを載置可能な仮置き架台にボルト結合するためのボルト挿通孔が設けられていることを特徴とする請求項
2又は3記載の杭打機。
【請求項5】
前記ボルト挿通孔は、前記仮置き架台と高さの異なる輸送架台に設けられたボルト挿通孔の位置に対応して設けられていることを特徴とする請求項
4記載の杭打機。
【請求項6】
前記前側ブラケット及び前記後側ブラケットのうちの少なくとも一方のブラケットは、前記ドライブロッドの周面に当接可能な弾性体が設けられていることを特徴とする請求項
2乃至5のいずれか1項記載の杭打機。
【請求項7】
前記カウンタウエイトの上面は、前記ドライブロッドの片端部に係合して該ドライブロッドの位置を固定する固定部材が設けられていることを特徴とする請求項
1乃至6のいずれか1項記載の杭打機。
【請求項8】
下部走行体の上部に上部旋回体を旋回可能に設けたベースマシンと、前記上部旋回体の前部に起伏可能に設けられたリーダと、該リーダに沿って昇降するオーガと、該オーガに回転可能かつ軸方向に移動可能に挿通されたドライブロッドと、前記オーガに挿通した前記ドライブロッドの軸方向の移動を規制するチャック機構とを備えた杭打機であって、前記リーダを後方に倒伏させて水平にした状態で、前記オーガから取り外した前記ドライブロッドを前記上部旋回体の後方かつ前記リーダの下面に沿わせて保持する着脱可能なドライブロッド保持具を有している杭打機の輸送方法において、前記上部旋回体の後方に配置した仮置き架台に前記ドライブロッドを水平に載置する段階と、前記リーダを後方に倒伏させて、該リーダの下面と前記ドライブロッドとを平行に近接配置する段階と、前記ドライブロッド保持具を前記リーダに装着して前記ドライブロッドを前記リーダの下面に沿わせて保持する段階と、前記ドライブロッドを前記ドライブロッド保持具により保持したままで、自走によって輸送車の荷台に搭載する段階とを順に行うことを特徴とする杭打機の輸送方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、杭打機に関し、詳しくは、リーダを倒伏させた輸送姿勢とすることで、分解することなく輸送可能な杭打機及び杭打機の輸送方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、鋼管杭の埋設や地盤改良などが行われる施工現場では、杭打機やアースドリルなどの建設機械が用いられており、これらを輸送する際に、例えば、大型の杭打機では、上部旋回体からリーダやオーガなどの重量物を取り外してベースマシンとは別々に輸送するようにしている。一方、小型で、分解せずに輸送可能な大きさの杭打機では、リーダを後方に倒した輸送姿勢とすることで、低床トレーラなどの輸送車の荷台上において輸送制限にあたる高さ寸法を満足させている。このような小型の杭打機には、輸送時の衝撃や振動などから各部を保護するための治具として、オーガに装着した状態のドライブロッドを支持可能なドライブロッドラック(受け台)が用いられている(例えば、特許文献1参照。)。また、小型の杭打機の中でも、比較的に大きなオーガを備えた杭打機を輸送する際には、あらかじめ下部リーダの部分にオーガを降下させた後、上部リーダを下部リーダとは独立して後方に倒すことにより、高さ寸法を低く抑えることが可能になっている(例えば、特許文献2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上述の特許文献2に記載された杭打機では、オーガのサイズが大きくなっても輸送姿勢を高さ方向にコンパクトにできるものの、オーガに装着したドライブロッドは、その上端部が機体の全高を超えて上方に飛び出てしまうことから、輸送の都度、オーガからドライブロッドを取り外す手間が生じていた。しかも、取り外したドライブロッドは不安定な状況におかれるので、別途に輸送用のトラックを手配する必要があり、コスト高となっていた。
【0005】
そこで本発明は、ドライブロッドを輸送位置に容易に固定でき、輸送中の安全や輸送コストの低減にも寄与することができるドライブロッド保持具を備えた杭打機及び杭打機の輸送方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の杭打機は、下部走行体の上部に上部旋回体を旋回可能に設けたベースマシンと、前記上部旋回体の前部に起伏可能に設けられたリーダと、該リーダに沿って昇降するオーガと、該オーガに回転可能かつ軸方向に移動可能に挿通されたドライブロッドと、前記オーガに挿通した前記ドライブロッドの軸方向の移動を規制するチャック機構とを備えた杭打機において、前記リーダを後方に倒伏させて水平にした状態で、前記オーガから取り外した前記ドライブロッドを前記上部旋回体の後方かつ前記リーダの下面に沿わせて保持する着脱可能なドライブロッド保持具を有し、前記上部旋回体の後端下部は、カウンタウエイト搭載部が突設され、該カウンタウエイト搭載部に搭載されたカウンタウエイトの上面に、前記ドライブロッド保持具により保持された前記ドライブロッドの片端部を支持する受け部が設けられていることを特徴としている。
【0007】
また、前記リーダは、長手方向に対をなして吊り耳が設けられ、前記ドライブロッド保持具は、各吊り耳にそれぞれピン結合されて前記ドライブロッドを保持する前側ブラケットと後側ブラケットとからなり、両ブラケットは、前記リーダの起こし動作に伴って、前記ドライブロッドを前記受け部から離間するように吊り上げ可能に構成されていることを特徴としている。
【0008】
また、前記ドライブロッドは、前記チャック機構に係合可能なチャック溝が設けられ、前記前側ブラケット及び前記後側ブラケットのうちの少なくとも一方のブラケットは、前記チャック溝に係合して前記ドライブロッドの軸方向の移動を規制する係合部が設けられていることを特徴とし、さらに、前記前側ブラケット及び前記後側ブラケットのうちの少なくとも一方のブラケットは、前記ドライブロッドを載置可能な仮置き架台にボルト結合するためのボルト挿通孔が設けられていることを特徴とし、加えて、前記ボルト挿通孔は、前記仮置き架台と高さの異なる輸送架台に設けられたボルト挿通孔の位置に対応して設けられていることを特徴としている。
【0009】
また、前記前側ブラケット及び前記後側ブラケットのうちの少なくとも一方のブラケットは、前記ドライブロッドの周面に当接可能な弾性体が設けられていることを特徴とし、さらに、前記カウンタウエイトの上面は、前記ドライブロッドの片端部に係合して該ドライブロッドの位置を固定する固定部材が設けられていることを特徴としている。
【0010】
また、本発明の杭打機の輸送方法は、下部走行体の上部に上部旋回体を旋回可能に設けたベースマシンと、前記上部旋回体の前部に起伏可能に設けられたリーダと、該リーダに沿って昇降するオーガと、該オーガに回転可能かつ軸方向に移動可能に挿通されたドライブロッドと、前記オーガに挿通した前記ドライブロッドの軸方向の移動を規制するチャック機構とを備えた杭打機であって、前記リーダを後方に倒伏させて水平にした状態で、前記オーガから取り外した前記ドライブロッドを前記上部旋回体の後方かつ前記リーダの下面に沿わせて保持する着脱可能なドライブロッド保持具を有している杭打機の輸送方法において、前記上部旋回体の後方に配置した仮置き架台に前記ドライブロッドを水平に載置する段階と、前記リーダを後方に倒伏させて、該リーダの下面と前記ドライブロッドとを平行に近接配置する段階と、前記ドライブロッド保持具を前記リーダに装着して前記ドライブロッドを前記リーダの下面に沿わせて保持する段階と、前記ドライブロッドを前記ドライブロッド保持具により保持したままで、自走によって輸送車の荷台に搭載する段階とを順に行うことを特徴としている。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、リーダを後方に倒伏させて水平にした状態で、ドライブロッド保持具によってドライブロッドを上部旋回体の後方かつリーダの下面に沿わせて保持するので、輸送前の段取りを地上にいながら容易に行えるとともに、杭打機の本体とドライブロッドとを一体で輸送することが可能となり、輸送費の低減を図ることができる。特に、ドライブロッドは、地上から程よい高さに保持されていることから、輸送車への積込時や現場搬入時の走行に支障を来すおそれはなく、しかも、荷台上において高さ寸法や幅寸法を満足できるので、輸送中の安全も確保される。
【0012】
また、ドライブロッド保持具によって保持したドライブロッドの片端部を、カウンタウエイトの上面に設けた受け部で支持するので、ドライブロッド保持具に作用する負荷を低減させて、ドライブロッド保持具の小型化や軽量化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の杭打機の一形態例を示すもので、リーダを起立した作業姿勢を示す側面図である。
【
図2】リーダを倒伏してドライブロッドをドライブロッド保持具でリーダの下面に保持した状態を示す要部側面図である。
【
図7】同じくドライブロッドを上部旋回体の後方に配置した状態を示す説明図である。
【
図8】同じくリーダを倒伏してドライブロッドに近接配置した状態を示す説明図である。
【
図9】同じくドライブロッド保持具を装着してドライブロッドをリーダの下面に保持した状態を示す説明図である。
【
図10】同じくドライブロッドを保持したままで、輸送車の荷台に搭載する動作を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1乃至
図11は、本発明の杭打機の一形態例を示す図である。この杭打機11は、
図1に示すように、クローラ12aを備えた下部走行体12と、該下部走行体12上に旋回可能に設けられた上部旋回体13とで構成されたベースマシン14と、上部旋回体13の前部に立設したリーダ15と、該リーダ15を後方から支持するリーダ用の起伏シリンダ16とを備えている。また、上部旋回体13の前部には、リーダ15を起伏可能に支持するフロントブラケット17が設けられ、上部旋回体13の前部上方には、油圧配管を支持する配管支持部材18が設けられている。さらに、上部旋回体13の右側部には運転室19が、左側部にはエンジンや油圧ユニットを収納した機器室20がそれぞれ設けられている。また、上部旋回体13の前後左右の4箇所にジャッキシリンダ21がそれぞれ設けられるとともに、上部旋回体13の後端下部に突設されたカウンタウエイト搭載部22に、作業中のベースマシン14のバランスをとるための複数のカウンタウエイト23が積み重ねられた状態で搭載されている。
【0015】
リーダ15は、前記フロントブラケット17に設けられたベースマシン幅方向の支軸24に回動可能に取り付けられた基本リーダ25と、該基本リーダ25の上部に連結される上部リーダ26と、基本リーダ25の下部に連結される下部リーダ27とに分割形成され、さらに、上部リーダ26は、上部第1部材26aと上部第2部材26bと上部第3部材26cとに分割形成されている。これらの各リーダ部材は、上下端のフランジ部材によって連結され、ボルト・ナットを使用して着脱可能に構成されている。
【0016】
また、上部リーダ26の上端部にはトップシーブブロック28が、下部リーダ27の下部前方には着脱可能な振止部材29がそれぞれ配置されており、リーダ15の前面中央には、ラックピニオン式昇降装置の構成品の一つであるラック部材30が、両側面前端部には、左右一対のガイドパイプ31が、リーダ15の全長にわたってそれぞれ連続的に設けられている。さらに、上部リーダ26における上部第3部材26cの後面には、長手方向に対をなして吊り耳32,33が設けられており、各吊り耳32,33には、後述するドライブロッド保持具が着脱可能になっている。
【0017】
オーガ34は、前記ガイドパイプ31に摺接する左右一対のガイドギブ35が後方に突出して設けられるとともに、前記ラック部材30の両側に設けられているラックに歯合する左右一対のピニオンをオーガ昇降用油圧モータ36で回転駆動することにより、リーダ15に沿って昇降する。また、オーガ34は、ドライブロッド37を回転可能かつ軸方向に移動可能に挿通し、ドライブロッド37の長手方向の2箇所に設けられたチャック溝37aの一方を選択してオーガ34の下側に設けられたチャック機構38に係合させることにより、ドライブロッド37の軸方向の移動を規制するとともに、角軸部37bを出力機構39に係合させた状態で、出力機構39をオーガ駆動用油圧モータ40で駆動させることによってドライブロッド37を回転させる。
【0018】
この杭打機11を工事現場で使用する場合には、例えば、施工部材として鋼管杭41が使用され、鋼管杭41の上端がドライブロッド37の下端に設けられたキャップロッド42を介して連結される。一方、杭打機11を輸送する場合には、リーダ15から振止部材29を取り外すとともに、下部リーダ27でオーガ34を支持した状態で、下部リーダ27と基本リーダ25とを分離し、
図2に示すように、基本リーダ25から上の部分を後方に倒伏させて水平にした状態とする。そして、トップシーブブロック28を後方に寝かせることにより、輸送車の荷台上で、全高が高さ制限内に収まるようになる。このとき、オーガ34から取り外されたドライブロッド37は、ドライブロッド保持具43を使用して上部旋回体13の後方かつリーダ15の下面に沿わせて保持され、この状態のままで、輸送車の荷台に運び込まれる。
【0019】
ドライブロッド保持具43は、固定ピン44,45を使用して各吊り耳32,33にそれぞれ装着される前側ブラケット46と後側ブラケット47とからなり、両ブラケット46,47がドライブロッド37の重心を挟んで軸方向の下部側(前部側)と上部側(後部側)とを同時に保持するように構成されている。この保持状態で、ドライブロッド37は、その下端部が、言い換えると、前側ブラケット46の前方に位置する片端部37cがカウンタウエイト23の上面に設けたブロック状の受け部48によって支持されることで、すなわち、リーダ15の下面に沿って上部旋回体13側である前方に寄せられることで、機体後端部にあたるトップシーブブロック28よりも後方に突出しない位置に保持される。
【0020】
各ブラケット46,47は、鋼板に折り曲げ加工などを施して、人手による取り扱いが可能な小型・軽量に形成したものである。前側ブラケット46は、
図3に示すように、ドライブロッド37の周面下部を下方から挟み込んで吊持可能な略U字状のブラケット本体49と、該ブラケット本体49の開放部を閉塞してドライブロッド37の周面上部に当接可能な略コ字状の押さえ部材50とからなる。また、ブラケット本体49の内側円弧面には、ドライブロッド37を、そのチャック溝37aに係合して支持するとともに、この支持状態で、ドライブロッド37の軸方向の移動を規制する略U字状の係合部49aが設けられている。さらに、押さえ部材50には、チャック溝37aの周面に当接可能な円弧面を有した弾性体であるラバー50aが設けられている。これにより、左右の吊り耳32,32の二股部32a,32aにブラケット本体49の両端部49b,49bをそれぞれ差し込んで、係合部49aをチャック溝37aに係合させるとともに、押さえ部材50を配置することにより、係合部49aとラバー50aとでチャック溝37aの周面を包持した状態とし、各部材の互いの重合部に設けたピン挿通孔32b,49c,50bに固定ピン44を挿通することにより、ドライブロッド37の下部側(前部側)が前側ブラケット46で保持される。
【0021】
後側ブラケット47は、
図4に示すように、ドライブロッド37の周面下部を下方から挟み込んで吊持可能な略コ字状のブラケット本体51と、該ブラケット本体51の開放部を閉塞してドライブロッド37の周面上部に当接可能な略コ字状の押さえ部材52とからなる。また、ブラケット本体51及び押さえ部材52には、ドライブロッド37の周面に当接可能な円弧面を有した弾性体であるラバー51a,52aがそれぞれ設けられている。これにより、左右の吊り耳33,33の二股部33a,33aにブラケット本体51の両端部51b,51bをそれぞれ差し込むとともに、押さえ部材52を配置することにより、両ラバー51a,52aでドライブロッド37の周面を包持した状態とし、各部材の互いの重合部に設けたピン挿通孔33b,51c,52bに固定ピン45を挿通することにより、ドライブロッド37の上部側(後部側)が後側ブラケット47で保持される。
【0022】
また、後側ブラケット47は、ブラケット本体51の左右両側下部にボルト結合用のフランジ51d,51dを有しており、前後左右4箇所のボルト53及びナット54で仮置き架台55の上面に着脱可能になっている。これにより、あらかじめ後側ブラケット47を仮置き架台55にボルト結合した状態で、ドライブロッド37の上部側(後部側)を後側ブラケット47で支持しておくことが可能となる。このとき、ドライブロッド37の下部側(前部側)、すなわち、片端部37cは前記受け部48で支持されているので、各ブラケット46,47の装着は、ドライブロッド37の軸線を略水平にした状態で行われる(
図2)。また、輸送車への搭載は自走によるため、一旦、地上で後側ブラケット47と仮置き架台55とを分離させて、荷台上で再度組み立てられるか、又は、仮置き架台55と高さ違いの輸送架台56に置き換えられる。そこで、仮置き架台55において、前後左右4箇所のボルト挿通孔の間隔(ピッチ)は、輸送架台56におけるボルト挿通孔の位置と対応して設けられ、ボルト53及びナット54については流用される。
【0023】
ところで、ドライブロッド37は重量物であることから、輸送時に、より安定して保持されることが望ましい。そこで、カウンタウエイト23の上面には、ドライブロッド37の片端部37cに係合して該ドライブロッド37の位置を固定する固定部材57が設けられている。この固定部材57は、
図5に示すように、ドライブロッド37における片端部37cの周面上部を上方から挟み込んで、受け部48上面にボルト結合される略逆U字状のホルダ58と、
図6に示すように、ドライブロッド37の片端部37cに軸方向に当接可能な突起状のストッパ59とからなる。これにより、ドライブロッド37の片端部37cをストッパ59に当接させた状態で、受け部48とホルダ58とが片端部37c周面に設けた鍔状の係合部37dに一体で係合することによってドライブロッド37が固定される(
図2)。
【0024】
ここで、杭打機11の輸送方法について、
図7乃至
図11を参照しながら説明する。まず、
図7に示すように、あらかじめ後側ブラケット47を取り付けた仮置き架台55を上部旋回体13の後方に配置し、クレーンの吊りワイヤ60を使用して水平に吊したドライブロッド37を降下させ、カウンタウエイト23上面の受け部48と後側ブラケット47とに架け渡して水平に載置する。このとき、ドライブロッド37は、前記係合部37dを受け部48に係合することによって後方への飛び出しが制限されて、前後方向の位置が確定されると同時に、カウンタウエイト23上面に前記ストッパ59を取り付けるためのスペースが確保される。次に、
図8に示すように、上部リーダ26を後方に倒伏させて、上部リーダ26下面とドライブロッド37とを平行に近接配置する。ここで、後側ブラケット47について、押さえ部材52をドライブロッド37の周面上部に配置するとともに、固定ピン45によるピン結合を行い、ドライブロッド37の上部側(後部側)を後側ブラケット47で保持した状態とする(
図4)。
【0025】
続いて、前側ブラケット46について、ブラケット本体49と押さえ部材50とにより、吊り耳32の真下に位置されるドライブロッド37のチャック溝37aを上下方向から挟み込んだ状態で、固定ピン44によるピン結合を行い、ドライブロッド37の下部側(前部側)を前側ブラケット46で保持した状態とする(
図3)。これにより、
図9に示すように、仮置き架台55を取り除いた状態であっても、ドライブロッド37は、両ブラケット46,47によってバランスを失わずに保持され、その結果、ドライブロッド37をリーダ15の下面に沿わせた状態のままで、輸送車の荷台に搭載可能となる。
【0026】
続いて、接地状態にあるジャッキシリンダ21を縮小させ、自走によって輸送車61の荷台62後方に移動した後、
図10に示すように、リーダ15の起伏上げ操作を行って、ドライブロッド37と荷台62との間合いを確保する。このとき、リーダ15の起こし動作に伴って、両ブラケット46,47は、ドライブロッド37を受け部48から離間させて斜めに吊り上げることとなるが、ドライブロッド37のチャック溝37aが前側ブラケット46の係合部49aに係合した状態で保持されている。これにより、ドライブロッド37は、輸送車61への積込時に、リーダ15が上下に振れて更に傾斜した場合であっても脱落することはない。そして、
図11に示すように、輸送車61の荷台62上でジャッキシリンダ21を接地させ、リーダ15の起伏下げ操作を行って、ドライブロッド37を受け部48と輸送架台56とに架け渡して水平に載置する。このとき、輸送架台56は、荷台62上からキックアップして進行方向に延びた牽引フレーム63の上面に、具体的には、トラクタ64に搭載した連結装置(カプラ)65の略真上にあたる位置に配置されており、後側ブラケット47に対応して位置を調節した後、ボルト・ナットで互いに結合される。最後に、ホルダ58とストッパ59とをそれぞれ取り付けてドライブロッド37の片端部37cを固定し、この状態で目的地まで輸送される。
【0027】
このように、リーダ15を後方に倒伏させて水平にした状態で、ドライブロッド保持具43を構成する前側ブラケット46及び後側ブラケット47によってドライブロッド37を上部旋回体13の後方かつリーダ15の下面に沿わせて保持するので、輸送前の段取りを地上にいながら容易に行えるとともに、杭打機11の本体とドライブロッド37とを一体で輸送することが可能となり、輸送費の低減を図ることができる。特に、ドライブロッド37は、地上から程よい高さに保持されていることから、輸送車61への積込時や現場搬入時の走行に支障を来すおそれはなく、しかも、荷台62上において高さ寸法や幅寸法を満足できるので、輸送中の安全も確保される。
【0028】
また、前側ブラケット46及び後側ブラケット47によって保持したドライブロッド37の片端部37cを、カウンタウエイト23の上面に設けた受け部48で支持するので、両ブラケット46,47に作用する負荷を低減させて、これらの部品の小型化や軽量化を図ることができる。
【0029】
さらに、前側ブラケット46及び後側ブラケット47は、リーダ15の長手方向に対をなして設けた吊り耳32,33にそれぞれピン結合されて、リーダ15の起こし動作に伴ってドライブロッド37を吊り上げ可能に構成されているので、作業効率や強度的に有利なだけでなく、簡単な操作でドライブロッド37の傾斜を調節することができる。すなわち、本構成によって輸送車61への搭載を迅速かつ安全に行うことができる。また、クローラ式の走行体は、その構造上、段差を乗り越える際に車体が不安定になるが、前側ブラケット46には、ドライブロッド37のチャック溝37aに係合する係合部49aが設けられているので、積込時の段差によるリーダ15の上下動(傾斜)に対して、ドライブロッド37を安定して保持できる。特に、搬入口が狭い現場では、リーダ15の起伏角度を、例えば、地上に対して45度以上に起こした状態で、自走による搬入が行われる場合もある。しかし、そのような場合であっても、ドライブロッド37を脱落させることなく、リーダ15の下面に確実に保持しておくことができる。
【0030】
また、保持状態において、ドライブロッド37は、両ブラケット46,47に設けられたラバー50a,51a,52aで弾性的に支持されるので、積込時や輸送中におけるドライブロッド37のガタ付きを防止することができ、さらに、固定部材57を構成するホルダ58とストッパ59とでドライブロッド37の片端部37cが固定されるので、安全をより確実なものとした状態で輸送することができる。
【0031】
なお、本形態例では、ドライブロッド保持具を、互いに形状の異なる前側ブラケット及び後側ブラケットからなる複数の部品で構成したが、これらは同一形状のブラケットであってもよい。この場合、ドライブロッドのチャック溝に係合する係合部や架台用のボルト挿通孔は、各ブラケットにそれぞれ備えてもよい。また、ドライブロッドをリーダの下面に沿わせて保持可能であれば、単一の部品で構成してもよく、その取付位置や取付方法も任意である。さらに、仮置き架台と輸送架台とは、後側ブラケットを取り付けるためのボルト挿通孔の間隔を互いに共通にしておくことによって使い勝手が高まることから、例えば、鋼材を組み合わせて、高さ方向に寸法変更が容易な構造とすれば安価である。加えて、ドライブロッドの片端部を支持する受け部や、ホルダやストッパといった固定部材も適宜に形状を変更することができる。また、ドライブロッドを支持する弾性体としてラバーを用いたが、特に限定されず、金属材料や樹脂材料など広く用いることができる。
【符号の説明】
【0032】
11…杭打機、12…下部走行体、12a…クローラ、13…上部旋回体、14…ベースマシン、15…リーダ、16…起伏シリンダ、17…フロントブラケット、18…配管支持部材、19…運転室、20…機器室、21…ジャッキシリンダ、22…カウンタウエイト搭載部、23…カウンタウエイト、24…支軸、25…基本リーダ、26…上部リーダ、26a…上部第1部材、26b…上部第2部材、26c…上部第3部材、27…下部リーダ、28…トップシーブブロック、29…振止部材、30…ラック部材、31…ガイドパイプ、32…吊り耳、32a…二股部、32b…ピン挿通孔、33…吊り耳、33a…二股部、33b…ピン挿通孔、34…オーガ、35…ガイドギブ、36…オーガ昇降用油圧モータ、37…ドライブロッド、37a…チャック溝、37b…角軸部、37c…片端部、37d…係合部、38…チャック機構、39…出力機構、40…オーガ駆動用油圧モータ、41…鋼管杭、42…キャップロッド、43…ドライブロッド保持具、44,45…固定ピン、46…前側ブラケット、47…後側ブラケット、48…受け部、49…ブラケット本体、49a…係合部、49b…端部、49c…ピン挿通孔、50…押さえ部材、50a…ラバー、50b…ピン挿通孔、51…ブラケット本体、51a…ラバー、51b…端部、51c…ピン挿通孔、51d…フランジ、52…押さえ部材、52a…ラバー、52b…ピン挿通孔、53…ボルト、54…ナット、55…仮置き架台、56…輸送架台、57…固定部材、58…ホルダ、59…ストッパ、60…吊りワイヤ、61…輸送車、62…荷台、63…牽引フレーム、64…トラクタ、65…連結装置