(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-26
(45)【発行日】2022-11-04
(54)【発明の名称】燃焼装置
(51)【国際特許分類】
F23N 5/24 20060101AFI20221027BHJP
【FI】
F23N5/24 107Z
(21)【出願番号】P 2019012622
(22)【出願日】2019-01-28
【審査請求日】2021-09-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000115854
【氏名又は名称】リンナイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111970
【氏名又は名称】三林 大介
(72)【発明者】
【氏名】長濱 智弘
【審査官】河野 俊二
(56)【参考文献】
【文献】特開平05-026440(JP,A)
【文献】特開平11-051383(JP,A)
【文献】特許第4458795(JP,B2)
【文献】特開昭61-239153(JP,A)
【文献】特開2013-076483(JP,A)
【文献】特開2015-117865(JP,A)
【文献】特開平11-142360(JP,A)
【文献】特開平08-042848(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F23N 5/24
G01N 27/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料ガスをバーナで燃焼させる燃焼装置において、
前記バーナからの燃焼排ガスに含まれる一酸化炭素の濃度を計測可能なCOセンサと、
前記COセンサのゼロ点校正を実行可能なセンサ制御部と、
前記バーナでの燃焼を制御し、前記COセンサの計測値が基準値を超えたことに基づき、前記バーナでの燃焼を停止させる燃焼制御部と、
前記COセンサのゼロ点校正の実行後における前記バーナでの燃焼時間の経過に伴って大きくしていく補正を、前記基準値に対して行う基準値補正部と
を備え
、
前記基準値として、第1基準値と、該第1基準値よりも高い第2基準値とが設定されており、
前記燃焼制御部は、前記COセンサの計測値が前記第1基準値を超えて第1判定時間以上継続するか、前記COセンサの計測値が前記第2基準値を超えて前記第1判定時間よりも短い第2判定時間以上継続すると、前記バーナでの燃焼を停止させ、
前記基準値補正部は、前記第1基準値について補正を行い、前記第2基準値については補正を行わない
ことを特徴とする燃焼装置。
【請求項2】
燃料ガスをバーナで燃焼させる燃焼装置において、
前記バーナからの燃焼排ガスに含まれる一酸化炭素の濃度を計測可能なCOセンサと、
前記COセンサのゼロ点校正を実行可能なセンサ制御部と、
前記バーナでの燃焼を制御し、前記COセンサの計測値が基準値を超えたことに基づき、前記バーナでの燃焼を停止させる燃焼制御部と、
前記COセンサのゼロ点校正の実行後における前記バーナでの燃焼時間の経過に伴って大きくしていく補正を、前記基準値に対して行う基準値補正部と
を備え、
前記基準値補正部は、前記COセンサのゼロ点校正が実行されると、前記基準値を補正前の初期値に戻す
ことを特徴とする燃焼装置。
【請求項3】
燃料ガスをバーナで燃焼させる燃焼装置において、
前記バーナからの燃焼排ガスに含まれる一酸化炭素の濃度を計測可能なCOセンサと、
前記COセンサのゼロ点校正を実行可能なセンサ制御部と、
前記バーナでの燃焼を制御し、前記COセンサの計測値が基準値を超えたことに基づき、前記バーナでの燃焼を停止させる燃焼制御部と、
前記COセンサのゼロ点校正の実行後における前記バーナでの燃焼時間の経過に伴って大きくしていく補正を、前記基準値に対して行う基準値補正部と
を備え、
当該燃焼装置の使用開始からの前記バーナでの積算燃焼時間が所定の閾値に達した後は、前記基準値補正部による前記基準値の補正を停止する
ことを特徴とする燃焼装置。
【請求項4】
燃料ガスをバーナで燃焼させる燃焼装置において、
前記バーナからの燃焼排ガスに含まれる一酸化炭素の濃度を計測可能なCOセンサと、
前記COセンサのゼロ点校正を実行可能なセンサ制御部と、
前記バーナでの燃焼を制御し、前記COセンサの計測値が基準値を超えたことに基づき、前記バーナでの燃焼を停止させる燃焼制御部と、
前記COセンサのゼロ点校正の実行後における前記バーナでの燃焼時間の経過に伴って小さくしていく補正を、前記COセンサの計測値に対して行う計測値補正部と
を備え
、
当該燃焼装置の使用開始からの前記バーナでの積算燃焼時間が所定の閾値に達した後は、前記計測値補正部による前記COセンサの計測値の補正を停止する
ことを特徴とする燃焼装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バーナからの燃焼排ガスに含まれる一酸化炭素の濃度を計測可能なCOセンサを備える燃焼装置に関する。
【背景技術】
【0002】
給湯器や暖房機などに搭載されて、燃料ガスをバーナで燃焼させる燃焼装置が知られている。燃焼装置では、ガス通路を通じて燃料ガスがバーナに供給されると共に、燃料ガスの供給量に応じて燃焼ファンを回転させることでバーナに向けて燃焼用空気が送られるようになっている。そして、バーナでの燃焼によって生じた燃焼排ガスは、熱交換器などを通過した後、排気通路を通って外部に排出される。
【0003】
こうした燃焼装置では、バーナで不完全燃焼が起こると、燃焼排ガス中の一酸化炭素の濃度(以下、CO濃度)が高くなる。そこで、CO濃度を計測可能なCOセンサを排気通路などに設置しておくことが提案されている(例えば、特許文献1)。COセンサとしては、白金製のコイルに酸化アルミなどの触媒を担持した検知片と触媒を担持しない補償片とを対比する構成の接触燃焼式が一般的であり、燃焼排ガス中の一酸化炭素が触媒と反応すると、反応熱で検知片の抵抗値が上昇するため電位差が生じる。この電位差とCO濃度との間には比例関係があり、電位差に基づいてCO濃度を計測することが可能である。そして、バーナでの燃焼中はCOセンサでCO濃度を監視し、COセンサの計測値が所定の基準値を超えたことに基づき不完全燃焼を検知すると、バーナでの燃焼を強制的に停止する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上述のようなCOセンサを備えた燃焼装置では、バーナでの燃焼中にCOセンサのゼロ点が次第にずれていき、COセンサの計測値が実際のCO濃度よりも大きくなるドリフト現象が起こることがあり、実際のCO濃度は基準値に達していない(正常である)のに、COセンサの計測値が基準値を超えたことに基づきバーナでの燃焼を強制的に停止してしまうという問題があった。
【0006】
この発明は従来の技術における上述した課題に対応してなされたものであり、COセンサのドリフト現象に起因するバーナの燃焼停止を抑制することが可能な燃焼装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決するために、本発明の第1の燃焼装置は次の構成を採用した。すなわち、
燃料ガスをバーナで燃焼させる燃焼装置において、
前記バーナからの燃焼排ガスに含まれる一酸化炭素の濃度を計測可能なCOセンサと、
前記COセンサのゼロ点校正を実行可能なセンサ制御部と、
前記バーナでの燃焼を制御し、前記COセンサの計測値が基準値を超えたことに基づき、前記バーナでの燃焼を停止させる燃焼制御部と、
前記COセンサのゼロ点校正の実行後における前記バーナでの燃焼時間の経過に伴って大きくしていく補正を、前記基準値に対して行う基準値補正部と
を備え、
前記基準値として、第1基準値と、該第1基準値よりも高い第2基準値とが設定されており、
前記燃焼制御部は、前記COセンサの計測値が前記第1基準値を超えて第1判定時間以上継続するか、前記COセンサの計測値が前記第2基準値を超えて前記第1判定時間よりも短い第2判定時間以上継続すると、前記バーナでの燃焼を停止させ、
前記基準値補正部は、前記第1基準値について補正を行い、前記第2基準値については補正を行わない
ことを特徴とする。
【0008】
このような本発明の第1の燃焼装置では、ドリフト現象によってCOセンサの計測値が実際のCO濃度よりも大きくなるのに合わせて、基準値も大きくなるように補正していくことにより、実際のCO濃度が正常であれば(高まっていなければ)、COセンサの計測値が基準値を超え難くなるので、ドリフト現象に起因するバーナの燃焼停止を抑制することができる。ただし、COセンサの計測値が第1基準値よりも高い第2基準値を超えるのであれば、ドリフト現象の影響よりも、不完全燃焼が起きて実際のCO濃度が高くなっていることが懸念される。そこで、第1基準値の補正を行いながら、第2基準値の補正を行わずバーナでの燃焼を確実に停止させることで、安全の確保を優先することができる。
【0009】
また、前述した課題を解決するために、本発明の第2の燃焼装置は次の構成を採用した。すなわち、
燃料ガスをバーナで燃焼させる燃焼装置において、
前記バーナからの燃焼排ガスに含まれる一酸化炭素の濃度を計測可能なCOセンサと、
前記COセンサのゼロ点校正を実行可能なセンサ制御部と、
前記バーナでの燃焼を制御し、前記COセンサの計測値が基準値を超えたことに基づき、前記バーナでの燃焼を停止させる燃焼制御部と、
前記COセンサのゼロ点校正の実行後における前記バーナでの燃焼時間の経過に伴って大きくしていく補正を、前記基準値に対して行う基準値補正部と
を備え、
前記基準値補正部は、前記COセンサのゼロ点校正が実行されると、前記基準値を補正前の初期値に戻す
ことを特徴とする。
【0010】
このような本発明の第2の燃焼装置では、ドリフト現象によってCOセンサの計測値が実際のCO濃度よりも大きくなるのに合わせて、基準値も大きくなるように補正していくことにより、実際のCO濃度が正常であれば(高まっていなければ)、COセンサの計測値が基準値を超え難くなるので、ドリフト現象に起因するバーナの燃焼停止を抑制することができる。そして、COセンサのゼロ点校正によってドリフト現象の影響が解消されるので、不要となった補正を解除することにより、COセンサの計測値が基準値を超えたことに基づき不完全燃焼を精度良く検知することができる。結果として、実際に不完全燃焼が起きていてもCOセンサの計測値が基準値を超えずにバーナでの燃焼を継続してしまう不具合を防止することが可能となる。
【0011】
また、前述した課題を解決するために、本発明の第3の燃焼装置は次の構成を採用した。すなわち、
燃料ガスをバーナで燃焼させる燃焼装置において、
前記バーナからの燃焼排ガスに含まれる一酸化炭素の濃度を計測可能なCOセンサと、
前記COセンサのゼロ点校正を実行可能なセンサ制御部と、
前記バーナでの燃焼を制御し、前記COセンサの計測値が基準値を超えたことに基づき、前記バーナでの燃焼を停止させる燃焼制御部と、
前記COセンサのゼロ点校正の実行後における前記バーナでの燃焼時間の経過に伴って大きくしていく補正を、前記基準値に対して行う基準値補正部と
を備え、
当該燃焼装置の使用開始からの前記バーナでの積算燃焼時間が所定の閾値に達した後は、前記基準値補正部による前記基準値の補正を停止する
ことを特徴とする。
【0012】
このような本発明の第3の燃焼装置では、ドリフト現象によってCOセンサの計測値が実際のCO濃度よりも大きくなるのに合わせて、基準値も大きくなるように補正していくことにより、実際のCO濃度が正常であれば(高まっていなければ)、COセンサの計測値が基準値を超え難くなるので、ドリフト現象に起因するバーナの燃焼停止を抑制することができる。そして、ドリフト現象の影響は燃焼装置の使用を開始した直後が最も大きく、バーナでの積算燃焼時間が長くなるに連れて小さくなる傾向にあり、バーナでの積算燃焼時間が閾値に達した後は、ドリフト現象が起こらなくなることから、不要な補正を停止することによって、CO濃度の計測値が基準値を超えたことに基づき不完全燃焼を精度良く検知することが可能となる。
【0013】
また、前述した課題を解決するために、本発明の第4の燃焼装置は次の構成を採用した。すなわち、
燃料ガスをバーナで燃焼させる燃焼装置において、
前記バーナからの燃焼排ガスに含まれる一酸化炭素の濃度を計測可能なCOセンサと、
前記COセンサのゼロ点校正を実行可能なセンサ制御部と、
前記バーナでの燃焼を制御し、前記COセンサの計測値が基準値を超えたことに基づき、前記バーナでの燃焼を停止させる燃焼制御部と、
前記COセンサのゼロ点校正の実行後における前記バーナでの燃焼時間の経過に伴って小さくしていく補正を、前記COセンサの計測値に対して行う計測値補正部と
を備え、
当該燃焼装置の使用開始からの前記バーナでの積算燃焼時間が所定の閾値に達した後は、前記計測値補正部による前記COセンサの計測値の補正を停止する
ことを特徴とする。
【0014】
このような本発明の第4の燃焼装置では、ドリフト現象によってCOセンサの計測値が実際のCO濃度よりも大きくなるのを見越して、小さくするようにCOセンサの計測値を補正していくことにより、実際のCO濃度が正常であれば(高まっていなければ)、COセンサの計測値が基準値を超え難くなるので、ドリフト現象に起因するバーナの燃焼停止を抑制することができる。そして、ドリフト現象の影響は燃焼装置の使用を開始した直後が最も大きく、バーナでの積算燃焼時間が長くなるに連れて小さくなる傾向にあり、バーナでの積算燃焼時間が閾値に達した後は、ドリフト現象が起こらなくなることから、不要な補正を停止することによって、CO濃度の計測値が基準値を超えたことに基づき不完全燃焼を精度良く検知することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本実施例の燃焼装置としての給湯器10を複数搭載した給湯システム1の全体構成を示した説明図である。
【
図2】本実施例の給湯器10の構成を示した説明図である。
【
図3】第1実施例のCO濃度監視処理の一部を示すフローチャートである。
【
図4】第1実施例のCO濃度監視処理の残りの部分を示すフローチャートである。
【
図5】第1実施例の基準値補正処理においてCO濃度の基準値を補正していく例を模式的に示した説明図である。
【
図6】バーナ12での燃焼時間が単位時間に達する毎に一定値を加算することで基準値を段階的に補正していく例を示した説明図である。
【
図7】変形例の基準値補正処理のフローチャートである。
【
図8】変形例の基準値補正処理に従い、バーナ12での積算燃焼時間に応じて基準値の補正量の変化率が減少する例を模式的に示した説明図である。
【
図9】第2実施例のCO濃度監視処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1は、本実施例の燃焼装置としての給湯器10を複数搭載した給湯システム1の全体構成を示した説明図である。図示した給湯システム1は、主に業務用としてホテルなどの屋内に設置され、外装ケース8内に2台の給湯器10a,10bを搭載していると共に、上水を給湯器10a,10bに供給する給水通路2や、給湯器10a,10bで生成された湯を導く出湯通路3や、燃料ガスを給湯器10a,10bに供給するガス通路4や、給湯器10a,10bで生じた燃焼排ガスを屋外に排出する排気通路5などを備えている。
【0021】
2台の給湯器10a,10bは、互いに並列に連結されている。すなわち、上水を供給する給水通路2は、2つに分岐して給湯器10a,10bの各々に接続されており、給湯器10a,10bの各々に接続された2つの出湯通路3は、1つに合流して湯を導く。また、燃料ガスを供給するガス通路4は、2つに分岐して給湯器10a,10bの各々に接続されており、給湯器10a,10bの各々から延設された2つの排気通路5は、1つにまとめられて燃焼排ガスを屋外に排出する。
【0022】
さらに、給湯システム1は、システム全体を制御するコントローラ7を備えており、2台の給湯器10a,10bと電気的に接続されている。コントローラ7は、必要とされる給湯能力に応じて給湯器10a,10bにおける燃焼を制御すると共に、後述するように不完全燃焼を防止するために燃焼排ガス中の一酸化炭素の濃度(以下、CO濃度)を監視している。尚、2台の給湯器10a,10bは、基本的には同じ仕様であり、同様に動作するため、以下では、特に区別する必要がなければ、単に給湯器10と表記することがある。
【0023】
図2は、本実施例の給湯器10の構成を示した説明図である。図示されるように給湯器10は、缶体11内に収容されて燃料ガスを燃焼させる複数(本実施例では16本)のバーナ12を備えている。燃料ガスを供給するガス通路4には、ガス通路4を開閉する元弁13や、元弁13の下流側でガス通路4を通過する燃料ガスの流量を調節する比例弁14が設けられている。また、本実施例の給湯器10では、複数(16本)のバーナ12が3つのバーナ群に分けられていることと対応して、比例弁14の下流側でガス通路4が3つに分岐しており、3本のバーナ12で構成される第1バーナ群に対応する分岐路を開閉する第1切換弁15aと、5本のバーナ12で構成される第2バーナ群に対応する分岐路を開閉する第2切換弁15bと、8本のバーナ12で構成される第3バーナ群に対応する分岐路を開閉する第3切換弁15cとを備えている。尚、元弁13、比例弁14、切換弁15a~15cはコントローラ7と電気的に接続されている。また、本実施例のコントローラ7は、本発明の「燃焼制御部」に相当している。
【0024】
本実施例の給湯器10では、3つの切換弁15a~15cの開閉を制御して燃料ガスを供給するバーナ群を選択すると共に、比例弁14の開度を制御することによって、生成熱量(給湯能力)を変更することが可能である。例えば、必要とされる熱量が最小の場合は、3つの切換弁15a~15cのうち第1切換弁15aのみを開弁する。一方、必要とされる熱量が最大の場合は、3つの切換弁15a~15cの全てを開弁する。そして、その間の熱量が必要な場合は、3つの切換弁15a~15cの中から適宜に1つまたは2つを選択して開弁する。
【0025】
また、給湯器10は、バーナ12に向けて下方から燃焼用空気を送る燃焼ファン20や、高電圧の放電によってバーナ12に火花を飛ばす点火プラグ21や、バーナ12の火炎(着火)を検知するフレームロッド22を備えており、これらはコントローラ7と電気的に接続されている。燃焼ファン20の回転数を比例弁14の開度(燃料ガスの供給量)に応じて制御することで、所定の空燃比に調節することが可能である。尚、外装ケース8の前面には、燃焼用空気を取り込む給気窓(図示省略)が設けられている。
【0026】
バーナ12の上方には、第1熱交換器23が設けられており、第1熱交換器23の上方には、第2熱交換器24が設けられている。バーナ12での燃焼によって生じた燃焼排ガスは、燃焼ファン20の送風によって上方に送られ、第1熱交換器23および第2熱交換器24を通過する。このとき、第1熱交換器23では、燃焼排ガスから顕熱を回収し、第2熱交換器24では、燃焼排ガスから潜熱を回収する。
【0027】
そして、第1熱交換器23および第2熱交換器24を通過した燃焼排ガスは、缶体11の上部に接続された排気通路5を通って屋外に排出される。排気通路5の接続部分には、COセンサ25が設置されて、燃焼排ガス中のCO濃度を計測可能になっており、このCOセンサ25は、コントローラ7と電気的に接続されている。本実施例のCOセンサ25は、一般的な接触燃焼式センサが採用されており、白金製のコイルに酸化アルミなどの触媒を担持した検知片と、触媒を担持しない補償片とを対比してブリッジ回路を構成している。バーナ12での燃焼開始前のCO濃度の低い正常な雰囲気でブリッジ回路が平衡状態となるように可変抵抗を調節しておけば、燃焼排ガス中のCO濃度が高まって一酸化炭素が触媒と反応すると、その反応熱で検知片の抵抗値が上昇することによってブリッジ回路の平衡が崩れて電位差が生じる。この電位差とCO濃度との間には比例関係があるため、電位差に基づいてCO濃度を計測することが可能である。尚、本実施例のコントローラ7は、本発明の「センサ制御部」に相当している。
【0028】
また、第2熱交換器24で燃焼排ガスから潜熱を回収するのに伴い、燃焼排ガスに含まれる蒸気が凝縮してドレンが生じるため、第2熱交換器24の下方には、ドレンを受けるドレン受け26が設けられている。このドレン受け26に溜まった酸性のドレンは、排液管27を通じて中和器28に送られ、中和された後、外部に排出される。
【0029】
上水を供給する給水通路2は、第2熱交換器24の上流側に接続されており、この給水通路2には、給湯器10に流入する上水の流量を計測する水量センサ30や、上水の温度を計測する給水温度センサ31が設けられている。第2熱交換器24の下流側は、第1熱交換器23の上流側と接続されており、第1熱交換器23の下流側には出湯通路3が接続されている。給水通路2を通じて第2熱交換器24に供給される上水は、第2熱交換器24で予備加熱された後に第1熱交換器23で加熱されて湯となり、出湯通路3に流出する。出湯通路3には、第1熱交換器23から流出した直後の湯の温度を計測する熱交出口温度センサ32が設けられている。
【0030】
また、本実施例の給湯器10では、給水通路2と出湯通路3とがバイパス通路33で接続されており、給湯器10に流入した上水は、一部が第2熱交換器24に供給されることなくバイパス通路33を通り、残りが第2熱交換器24に供給される。そして、第2熱交換器24および第1熱交換器23で加熱された湯は、バイパス通路33を通った上水と混合されて給湯器10から流出する。第1熱交換器23で加熱された湯と、バイパス通路33を通った上水との混合比は、バイパスサーボ34によって変更することが可能である。
【0031】
バイパス通路33の接続位置よりも出湯通路3の下流側には、給湯器10から流出する湯の温度を計測する出湯温度センサ35や、給湯器10から流出する湯の流量を調節する湯量サーボ36が設けられている。上述したようにバイパス通路33を有することから、出湯温度センサ35の計測温度は、熱交出口温度センサ32の計測温度よりも低くなり、バイパスサーボ34で混合比を調節することによって、給湯器10から流出する湯の温度変動を抑制することができる。尚、本実施例の給湯器10に設置された各種温度センサ31,32,35には、温度の変化に応じて電気抵抗が変化するサーミスタを用いている。また、各種温度センサ31,32,35、水量センサ30、バイパスサーボ34、湯量サーボ36は、コントローラ7と電気的に接続されている。
【0032】
このような燃焼装置としての給湯器10では、バーナ12で不完全燃焼が起こると、燃焼排ガス中のCO濃度が高くなる。不完全燃焼の原因としては、排気通路5の出口に強風が吹き付けることなどによる急激な排気閉塞や、火炎がバーナ12の内部に潜り込む逆火や、第1熱交換器23のフィンに錆が生じて閉塞するなどの器具劣化や、空燃比が適切でなく燃料ガスが過多であるガスリッチや燃料ガスが過少であるエアリッチなどが考えられる。そこで、不完全燃焼を検知するために、COセンサ25を設置して燃焼排ガス中のCO濃度を監視するようになっており、コントローラ7が以下のようなCO濃度監視処理を実行している。
【0033】
図3および
図4は、第1実施例のCO濃度監視処理のフローチャートである。このCO濃度監視処理は、給湯システム1の電源をONにすると実行される。CO濃度監視処理を開始すると、まず、COセンサ25のヒートアップ処理を行う(STEP1)。COセンサ25が有機物の付着などで汚れていると、CO濃度を正確に計測できないため、ヒートアップ処理では、COセンサ25を加熱することで付着物を除去する。COセンサ25には通常2Vの電圧を印加しているが、一時的に2.74Vに印加電圧を上げることでCOセンサ25を加熱する。
【0034】
ヒートアップ処理に続いて、COセンサ25のゼロ点校正を行う(STEP2)。このゼロ点校正は、バーナ12で燃焼を開始する前のCO濃度が低い正常な雰囲気(大気)に対して行われる。ゼロ点校正が終了すると、バーナ12で燃焼を開始したか否かを判断し(STEP3)、燃焼を開始していない場合は(STEP3:no)、燃焼を開始するまで待機状態となる。
【0035】
その後、バーナ12で燃焼を開始した場合は(STEP3:yes)、COセンサ25の計測値に基づいて不完全燃焼と判定する条件(エラー判定条件)が成立したか否かを判断する(STEP4)。本実施例では、エラー判定条件として、CO濃度の基準値や継続時間が異なる以下の4つが設定されている。
(1)CO濃度が2000ppm以上となって、5秒以上継続。
(2)CO濃度が1300ppm以上となって、20秒以上継続。
(3)CO濃度が800ppm以上となって、40秒以上継続。
(4)CO濃度が600ppm以上となって、225秒以上継続。
【0036】
尚、本実施例のエラー判定条件3,4におけるCO濃度の基準値800ppm,600ppmは、本発明の「第1基準値」に相当し、継続時間40秒,225秒は、本発明の「第1判定時間」に相当している。また、本実施例のエラー判定条件1,2におけるCO濃度の基準値2000ppm,1300ppmは、本発明の「第2基準値」に相当し、継続時間5秒,20秒は、本発明の「第2判定時間」に相当している。
【0037】
上記のエラー判定条件1~4のうち、CO濃度の基準値が比較的に高いエラー判定条件1,2は、主に急激な排気閉塞や、バーナ12での逆火などに起因する突発的な不完全燃焼、および器具劣化に起因する重篤な不完全燃焼を検知するために設定されている。これに対して、CO濃度の基準値が比較的に低いエラー判定条件3,4は、主に空燃比がガスリッチであるなどバーナ12での燃焼状態に起因する軽微な不完全燃焼を検知するために設定されている。STEP4では、エラー判定条件1~4の何れかが成立したか否かを判断する。
【0038】
何れのエラー判定条件も成立していない場合は(STEP4:no)、続いて、使用者の操作によってバーナ12での燃焼を停止したか否かを判断する(
図4のSTEP5)。燃焼を停止していない場合は(STEP5:no)、CO濃度の基準値を補正する処理(以下、基準値補正処理)を実行する(STEP6)。COセンサ25は、バーナ12での燃焼中にゼロ点が次第にずれていき、COセンサ25の計測値が実際のCO濃度よりも大きくなるドリフト現象が起こることがある。そして、実際のCO濃度は基準値に達していない(正常である)のに、COセンサ25の計測値が基準値以上となったことに基づき不完全燃焼と判定してしまうことで誤検知となる。そこで、第1実施例のコントローラ7は、STEP6の基準値補正処理として、COセンサ25のゼロ点校正後におけるバーナ12での燃焼時間の経過に伴って基準値を大きくしていく補正を行うようになっている。尚、第1実施例のコントローラ7は、本発明の「基準値補正部」に相当している。
【0039】
図5は、第1実施例の基準値補正処理においてCO濃度の基準値を補正していく例を模式的に示した説明図である。
図5のグラフでは、横軸にCOセンサ25のゼロ点校正後におけるバーナ12での燃焼時間を取り、縦軸にCO濃度の基準値を取って、エラー判定条件1の基準値を一点鎖線で、エラー判定条件2の基準値を二点鎖線で、エラー判定条件3の基準値を破線で、エラー判定条件4の基準値を実線でそれぞれ示している。また、縦軸上の白丸の印はエラー判定条件1~4の各々における基準値の初期値を表しており、前述したようにエラー判定条件1では2000ppm、エラー判定条件2では1300ppm、エラー判定条件3では800ppm、エラー判定条件4では600ppmが初期値として設定されている。
【0040】
そして、特にCO濃度の基準値が比較的に低いエラー判定条件3,4については、前述したドリフト現象の影響を受け易い(COセンサ25の計測値が基準値の初期値を超えてしまい易い)ことから、図示されるようにバーナ12での燃焼時間の経過に伴ってCO濃度の基準値を初期値から徐々に大きくしていく補正を行う。図示した例では、ドリフト現象によってバーナ12での燃焼1時間あたり1.8ppmずつCOセンサ25のゼロ点が上昇していくことから、バーナ12での燃焼時間(h)に所定の係数として1.8ppm/hを掛け合わせて基準値を無段階(直線的)に補正するようになっている。尚、本実施例では、COセンサ25のゼロ点校正後におけるバーナ12での燃焼時間をコントローラ7で計時することが可能になっている。
【0041】
こうした補正によって、バーナ12での燃焼時間が長時間になるほど基準値が大きくなっていくことになる。この点、前述したようにエラー判定条件3,4は、主にガスリッチなどのバーナ12での燃焼状態に起因する不完全燃焼を検知するために設定されている。仮にバーナ12での燃焼状態に大きな問題がある場合は、燃焼開始から長時間が経過する前にエラー判定条件3,4が成立しているはずであり、バーナ12で燃焼を長時間継続して基準値が大きくなったのであれば、バーナ12での燃焼状態自体に大きな問題はないと考えられる。
【0042】
一方、CO濃度の基準値が比較的に高いエラー判定条件1,2については、ドリフト現象の影響よりも、実際にCO濃度が高くなっていることが懸念されることから、図示されるようにバーナ12での燃焼時間が経過してもCO濃度の基準値を補正することはなく、初期値をそのまま維持するようになっている。
【0043】
こうして
図4のSTEP6で基準値補正処理を実行したら、
図3のSTEP4へと戻り、エラー判定条件1~4の何れかが成立したかの判断(STEP4)、およびバーナ12での燃焼を停止したか否かの判断(
図4のSTEP5)を繰り返すと共に、上述の基準値補正処理(STEP6)を実行する。
【0044】
尚、基準値補正処理においてエラー判定条件3,4のCO濃度の基準値を補正する方法は、
図5に示したような直線的なものに限られない。例えば、
図6に拡大して示すように、バーナ12での燃焼時間が単位時間に達する毎に一定値を加算することで基準値を段階的に補正してもよく、
図5と同様の例では、バーナ12での燃焼1時間毎に一定値として1.8ppmを基準値に加算してもよい。
【0045】
こうしてSTEP4~6の処理を繰り返し行ううちに、何れのエラー判定条件も成立することのないまま、バーナ12での燃焼を停止した場合は(
図4のSTEP5:yes)、続いて、使用者の操作によってバーナ12での燃焼を再開したか否かを判断し(STEP7)、燃焼を再開していない場合は(STEP7:no)、バーナ12の消火から所定の清浄時間(本実施例では30分)が経過したか否かを判断する(STEP8)。未だ消火から30分が経過していない場合は(STEP8:no)、次に、給湯システム1の電源がOFFにされたか否かを判断し(STEP11)、電源がOFFにされた場合は(STEP11:yes)、
図3および
図4のCO濃度監視処理を終了する。
【0046】
これに対して、給湯システム1の電源がOFFにされていない場合は(STEP11:no)、STEP7に戻って、バーナ12で燃焼を再開したか否かを判断し、燃焼を再開した場合は(STEP7:yes)、
図3のSTEP4へと戻り、エラー判定条件1~4の何れかが成立したか否かを再び判断する。
【0047】
一方、バーナ12で燃焼を再開することなく(STEP7:no)、バーナ12の消火から30分(清浄時間)が経過した場合は(STEP8:yes)、COセンサ25のゼロ点校正を行う(STEP9)。前述したようにCOセンサ25では、ドリフト現象によって、計測値と実際のCO濃度とに乖離が生じることがある。また、本実施例の清浄時間には、缶体11内の燃焼排ガスが排出されるのに十分な時間を設定しており、バーナ12の消火から30分が経過していれば、COセンサ25の周囲では、バーナ12で燃焼を開始する前と同等の雰囲気(大気)に戻り、温度も室温に戻っている。そこで、COセンサ25のゼロ点校正を行うことにより、COセンサ25の計測値と実際のCO濃度との乖離をなくし、ドリフト現象の影響を排除することができる。
【0048】
尚、バーナ12の消火から30分が経過するのを待つのではなく、燃焼ファン20の送風で所定の掃気時間(例えば5分)にわたって燃焼排ガスを排出させる掃気処理を行うようにすれば、COセンサ25のゼロ点校正の実行を早めることが可能である。ただし、何れのエラー判定条件も成立しないまま正常にバーナ12での燃焼を停止すると、直ぐにバーナ12での燃焼を再開することがあり、その場合には、掃気処理によってバーナ12や熱交換器23,24が冷却されるので、熱効率が大きく低下してしまうことになる。そこで、本実施例では、バーナ12での燃焼の再開に備えて、掃気処理は行わず、燃焼が再開されることなく30分が経過してからCOセンサ25のゼロ点校正を実行することとしている。
【0049】
こうしてCOセンサ25のゼロ点校正が終了すると、ドリフト現象の影響が解消されることにより、それまでに行ったCO濃度の基準値の補正が不要となるため、基準値の初期化を行う(STEP10)。すなわち、エラー判定条件3における基準値を初期値の800ppmに戻し、エラー判定条件4における基準値を初期値の600ppmに戻す処理を行う。尚、エラー判定条件1,2については、基準値を補正していないので、初期化する必要もない。
【0050】
また、CO濃度の基準値を初期化した後、給湯システム1の電源がOFFにされることなく(STEP11:no)、バーナ12で燃焼を再開すると(STEP7:yes)、エラー判定条件1~4の何れかが成立したか否かを再び判断することになる(
図3のSTEP4)。
【0051】
そして、処理を繰り返すうちに、エラー判定条件1~4の何れかが成立した場合は(STEP4:yes)、不完全燃焼と判定して、エラー停止処理を実行する(STEP12)。本実施例のエラー停止処理では、給湯器10の元弁13を閉弁(燃料ガスの供給を遮断)してバーナ12での燃焼を強制的に停止すると共に、湯量サーボ36を閉じて給湯器10からの湯の流出を停止する。
【0052】
また、エラー停止処理に続いて、バーナ12で不完全燃焼が起きている旨のエラー報知を行うと(STEP13)、
図3および
図4のCO濃度監視処理を終了する。本実施例の給湯システム1では、エラー報知を、図示しないリモコンの液晶画面に表示することで行うようになっているが、これに限らず、音声で報知するようにしてもよい。
【0053】
以上に説明したように第1実施例の燃焼装置としての給湯器10では、COセンサ25で燃焼排ガス中のCO濃度を監視しており、COセンサ25の計測値がエラー判定条件1~4におけるCO濃度の基準値を超えたことに基づきエラー停止処理を実行することとして、COセンサ25のゼロ点校正後におけるバーナ12での燃焼時間の経過に伴って、エラー判定条件3,4におけるCO濃度の基準値を大きくしていく補正を行うようになっている。COセンサ25のドリフト現象で計測値が実際のCO濃度よりも大きくなるのに合わせて、基準値も大きくなるように補正することにより、実際のCO濃度が正常であれば(高まっていなければ)、COセンサ25の計測値が基準値を超え難くなるので、COセンサ25のドリフト現象に起因するバーナ12の燃焼停止(いわゆる早切れ)を抑制することができる。
【0054】
また、第1実施例の給湯器10(燃焼装置)では、CO濃度の基準値や継続時間が異なるエラー判定条件1~4のうち、CO濃度の基準値が比較的に低いエラー判定条件3,4については基準値を補正するのに対し、CO濃度の基準値が比較的に高いエラー判定条件1,2については基準値を補正しないようになっている。エラー判定条件1,2が成立する場合は、ドリフト現象の影響よりも、不完全燃焼が起きて実際のCO濃度が高くなっていることが懸念されるため、エラー判定条件1,2の基準値については補正を行わずバーナ12での燃焼を確実に停止させることで、安全の確保を優先することができる。
【0055】
さらに、第1実施例の給湯器10(燃焼装置)では、COセンサ25のゼロ点校正を実行すると、CO濃度の基準値を初期値に戻すようになっている。COセンサ25のゼロ点校正によってドリフト現象の影響は解消されるので、不要となった補正を解除することによって、COセンサ25の計測値が基準値を超えたことに基づき不完全燃焼を精度良く検知することができる。結果として、実際に不完全燃焼が起きていてもCOセンサ25の計測値が基準値を超えずにバーナ12での燃焼を継続してしまう不具合(いわゆる遅切れ)を防止することが可能となる。
【0056】
また、第1実施例の基準値補正処理(
図4のSTEP6)は、以下のような変形例の態様で実行してもよい。
図7は、変形例の基準値補正処理のフローチャートである。図示されるように変形例の基準値補正処理では、まず、バーナ12での積算燃焼時間が所定の閾値(例えば、200時間)を超えたか否かを判断する(STEP15)。この積算燃焼時間とは、給湯システム1が設置されて給湯器10の使用を開始してからのバーナ12での燃焼時間を合計したものである。
【0057】
そして、バーナ12での積算燃焼時間が未だ閾値を超えていない場合は(STEP15:no)、CO濃度の基準値を補正する際の補正量の変化率を、バーナ12での積算燃焼時間に応じて減少させる処理を行う(STEP16)。COセンサ25のドリフト現象の影響は、給湯システム1が設置されて給湯器10の使用を開始した直後が最も大きく、バーナ12での積算燃焼時間が長くなるに連れて小さくなる傾向にある。そこで、STEP16では、この傾向に合わせて補正量の変化率を減少させるようになっており、バーナ12での積算燃焼時間が50時間に達するまでは、補正量の変化率を当初のまま維持するものの、積算燃焼時間が50時間を越えると補正量の変化率を25%減少させ、積算燃焼時間が100時間を越えると補正量の変化率を50%減少させ、積算燃焼時間が150時間を越えると補正量の変化率を75%減少させる。
【0058】
続いて、STEP16で減少させた補正量の変化率に従い、COセンサ25のゼロ点校正後におけるバーナ12での燃焼時間に応じて大きくなるように、エラー判定条件3,4におけるCO濃度の基準値の補正量を設定する(STEP17)。そして、設定した補正量でCO濃度の基準値を補正すると(STEP18)、
図7の基準値補正処理を終了し、
図3および
図4のCO濃度監視処理に復帰する。
【0059】
一方、
図7のSTEP15の判断において、バーナ12での積算燃焼時間が閾値を超えた場合は(STEP15:yes)、STEP16~18の処理を省略して、
図7の基準値補正処理を終了し、
図3および
図4のCO濃度監視処理に復帰する。COセンサ25は、給湯システム1が設置されて給湯器10の使用開始からバーナ12での積算燃焼時間が閾値(例えば、200時間)を超えると、ドリフト現象が起こらなくなる傾向にある。そこで、積算燃焼時間が閾値に達した後は、CO濃度の基準値の補正を停止するようになっており、閾値を超える直前の基準値が初期化されるまで適用される。
【0060】
図8は、変形例の基準値補正処理に従い、バーナ12での積算燃焼時間に応じて基準値の補正量の変化率が減少する例を模式的に示した説明図である。
図8のグラフでは、横軸にバーナ12での積算燃焼時間を取り、縦軸に基準値の補正量を取って、バーナ12で連続して燃焼している場合における基準値の補正量の変化を示している。前述したようにCOセンサ25のドリフト現象の影響は、給湯システム1が設置されて給湯器10の使用を開始した直後が最も大きいため、バーナ12での積算燃焼時間が50時間に達するまでは、補正量の変化率を減少させることはなく、バーナ12での燃焼時間の経過に伴って基準値の補正量が大きくなっていく。
【0061】
そして、COセンサ25のドリフト現象の影響は、バーナ12での積算燃焼時間が長くなるに連れて小さくなる傾向にあることから、積算燃焼時間が50時間を越えると、補正量の変化率を25%減少させるために、係数として0.75を掛ける。これにより、基準値の補正量は、バーナ12での燃焼時間の経過に伴って大きくなるものの、変化率(傾き)が従前よりも緩やかになる。尚、
図8では、比較として、補正量の変化率を減少させない場合(係数として1.0を掛けた場合)を一点鎖線で示している。
【0062】
また、バーナ12での積算燃焼時間が100時間を越えると、補正量の変化率を50%減少させるために、係数として0.5を掛ける。さらに、バーナ12での積算燃焼時間が150時間を越えると、補正量の変化率を75%減少させるために、係数として0.25を掛ける。そして、バーナ12での積算燃焼時間が閾値の200時間を超えると、基準値の補正を停止するので、以降は補正量が変化することはなく、基準値は一定となる。
【0063】
尚、変形例の基準値補正処理では、バーナ12での積算燃焼時間が50時間延びる毎に、基準値の補正量の変化率を25%ずつ段階的に減少させている。しかし、バーナ12での積算燃焼時間が長くなるに連れて基準値の補正量の変化率が減少するのであれば、これに限られず、補正量の変化率をバーナ12での積算燃焼時間に応じて連続的に減少させてもよい。
【0064】
以上に説明したように変形例の給湯器10(燃焼装置)では、給湯システム1が設置されて給湯器10の使用開始からバーナ12での積算燃焼時間が長くなるに連れて、CO濃度の基準値を補正する際の補正量の変化率を減少させるようになっている。バーナ12での積算燃焼時間が長くなるに連れてCOセンサ25のドリフト現象の影響が小さくなる傾向に合わせて補正量の変化率を減少させることにより、基準値に対して過剰な補正をすることなく、COセンサ25の計測値が基準値を超えたことに基づき不完全燃焼を精度良く検知する(遅切れを防止する)ことが可能となる。
【0065】
また、変形例の給湯器10(燃焼装置)では、バーナ12での積算燃焼時間が所定の閾値(200時間)を超えると、CO濃度の基準値の補正を停止するようになっている。バーナ12での積算燃焼時間が閾値に達した後は、COセンサ25のドリフト現象が起こらなくなることから、不要な補正を停止させることによって、COセンサ25の計測値が基準値を超えたことに基づき不完全燃焼を精度良く検知する(遅切れを防止する)ことが可能となる。
【0066】
以上の第1実施例および変形例では、CO濃度の基準値を補正するようになっていた。しかし、CO濃度の基準値については補正せず、代わりにCOセンサ25の計測値を補正するようにしてもよい。以下では、COセンサ25の計測値を補正する第2実施例について説明する。
【0067】
図9は、第2実施例のCO濃度監視処理のフローチャートである。尚、第2実施例の説明では、第1実施例と同様の部分については詳細な説明を省略する。第2実施例のCO濃度監視処理を開始すると、COセンサ25のヒートアップ処理を行い(STEP21)、続いて、COセンサ25のゼロ点校正を行った後(STEP22)、バーナ12で燃焼を開始するまで待機状態となる(STEP23:no)。そして、バーナ12での燃焼を開始すると(STEP23:yes)、COセンサ25の計測値を補正する処理(以下、計測値補正処理)を実行する(STEP24)。尚、第2実施例のコントローラ7は、本発明の「計測値補正部」に相当している。
【0068】
STEP24の計測値補正処理では、COセンサ25のゼロ点校正後におけるバーナ12での燃焼時間の経過に伴って小さくしていく補正を、COセンサ25の計測値に対して行う。例えば、ドリフト現象によってバーナ12での燃焼1時間あたり1.8ppmずつCOセンサ25のゼロ点が上昇していくとすると、バーナ12での燃焼時間(h)に所定の係数として1.8ppm/hを掛けた補正量を、COセンサ25の計測値から減算する補正を行う。また、バーナ12での燃焼1時間毎に一定値として1.8ppmを補正量に加算していくこととして、その補正量をCOセンサ25の計測値から減算して補正することとしてもよい。
【0069】
こうして計測値補正処理を実行したら、COセンサ25の補正後の計測値に基づいてエラー判定条件1~4の何れかが成立したか否かを判断し(STEP25)、何れのエラー判定条件も成立していない場合は(STEP25:no)、続いて、使用者の操作でバーナ12での燃焼を停止したか否かを判断する(STEP26)。そして、燃焼を停止していない場合は(STEP26:no)、STEP24へと戻り、上述の計測値補正処理を実行しながら、エラー判定条件1~4の何れかが成立したか否かの判断(STEP25)、およびバーナ12での燃焼を停止したか否かの判断(STEP26)を繰り返す。
【0070】
STEP24~26の処理を繰り返し行ううちに、何れのエラー判定条件も成立することのないまま、バーナ12での燃焼を停止した場合は(STEP26:yes)、続いて、使用者の操作によってバーナ12での燃焼を再開したか否かを判断し(STEP27)、燃焼を再開していない場合は(STEP27:no)、バーナ12の消火から所定の清浄時間(30分)が経過したか否かを判断する(STEP28)。未だ消火から30分が経過していない場合は(STEP28:no)、次に、給湯システム1の電源がOFFにされたか否かを判断し(STEP30)、電源がOFFにされた場合は(STEP30:yes)、
図9のCO濃度監視処理を終了する。
【0071】
これに対して、給湯システム1の電源がOFFにされていない場合は(STEP30:no)、STEP27に戻って、バーナ12で燃焼を再開したか否かを判断し、燃焼を再開した場合は(STEP27:yes)、STEP24へと戻り、計測値補正処理を実行した後、エラー判定条件1~4の何れかが成立したか否かを再び判断する(STEP25)。
【0072】
一方、バーナ12で燃焼を再開することなく(STEP27:no)、バーナ12の消火から30分(清浄時間)が経過した場合は(STEP28:yes)、COセンサ25のゼロ点校正を行う(STEP29)。このCOセンサ25のゼロ点校正によって、それまでのバーナ12での燃焼時間はリセットされる。
【0073】
また、COセンサ25のゼロ点校正を行った後、給湯システム1の電源がOFFにされることなく(STEP30:no)、バーナ12での燃焼を再開すると(STEP27:yes)、STEP24に戻って、COセンサ25のゼロ点校正後のリセットされたバーナ12での燃焼時間に基づいて計測値補正処理を行い、エラー判定条件1~4の何れかが成立したか否かを再び判断することになる(STEP25)。
【0074】
そして、処理を繰り返すうちに、エラー判定条件1~4の何れかが成立した場合は(STEP25:yes)、エラー停止処理でバーナ12での燃焼を強制的に停止し(STEP31)、続いて、エラー報知を行うと(STEP32)、
図9のCO濃度監視処理を終了する。
【0075】
以上に説明したように第2実施例の給湯器10(燃焼装置)では、COセンサ25で燃焼排ガス中のCO濃度を監視し、COセンサ25の計測値がエラー判定条件1~4におけるCO濃度の基準値を超えたことに基づきエラー停止処理を実行することとして、COセンサ25のゼロ点校正後におけるバーナ12での燃焼時間の経過に伴って小さくしていく補正を、COセンサ25の計測値に対して行うようになっている。ドリフト現象によってCOセンサ25の計測値が実際のCO濃度よりも大きくなるのを見越して、小さくするようにCOセンサ25の計測値を補正していくことにより、実際のCO濃度が正常であれば(高まっていなければ)、COセンサ25の計測値が基準値を超え難くなるので、COセンサ25のドリフト現象に起因するバーナ12の燃焼停止(早切れ)を抑制することができる。
【0076】
また、第2実施例の給湯器10(燃焼装置)では、前述した第1実施例の変形例と同様に、給湯システム1が設置されて給湯器10の使用開始からバーナ12での積算燃焼時間が長くなるに連れて、STEP24の計測値補正処理でCOセンサ25の計測値を補正する際の補正量の変化率を減少させてもよい。例えば、バーナ12での積算燃焼時間が50時間に達するまでは、補正量の変化率を当初のまま維持することとして、積算燃焼時間が50時間を越えると補正量の変化率を25%減少させ、積算燃焼時間が100時間を越えると補正量の変化率を50%減少させ、積算燃焼時間が150時間を越えると補正量の変化率を75%減少させてもよい。バーナ12での積算燃焼時間が長くなるに連れてCOセンサ25のドリフト現象の影響が小さくなる傾向に合わせて補正量の変化率を減少させることにより、COセンサ25の計測値に対して過剰な補正をすることなく、COセンサ25の計測値が基準値を超えたことに基づき不完全燃焼を精度良く検知する(遅切れを防止する)ことが可能となる。
【0077】
また、第2実施例の給湯器10(燃焼装置)では、前述した第1実施例の変形例と同様に、バーナ12での積算燃焼時間が所定の閾値(200時間)を超えると、STEP24の計測値補正処理におけるCOセンサ25の計測値の補正を停止してもよい。バーナ12での積算燃焼時間が閾値に達した後は、COセンサ25のドリフト現象が起こらなくなることから、不要な補正を停止させることによって、COセンサ25の計測値が基準値を超えたことに基づき不完全燃焼を精度良く検知する(遅切れを防止する)ことが可能となる。
【0078】
以上、実施例(第1実施例および第2実施例)や変形例の給湯システム1について説明したが、本発明は上記の実施例や変形例に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様で実施することが可能である。
【0079】
例えば、前述した実施例では、2台の給湯器10を並列に連結した給湯システム1について説明したが、給湯器10の単体にも本発明を好適に適用することができる。また、3台以上の給湯器10を連結してもよい。複数台の給湯器10を搭載した業務用の給湯システム1では、バーナ12で連続して燃焼させて燃焼時間が長くなる傾向にあり、COセンサ25のゼロ点校正を行う機会を確保し難いため、ドリフト現象が影響することが多く、本発明を好適に適用することができる。
【0080】
また、前述した実施例では、燃焼装置として給湯器10を例に説明したが、本発明の燃焼装置の適用は給湯器10に限られず、加熱した熱媒を循環させて暖房に用いる暖房機などにも適用可能である。
【符号の説明】
【0081】
1…給湯システム、 2…給水通路、 3…出湯通路、
4…ガス通路、 5…排気通路、 7…コントローラ、
8…外装ケース、 10…給湯器、 11…缶体、
12…バーナ、 13…元弁、 14…比例弁、
15a…第1切換弁、 15b…第2切換弁、 15c…第3切換弁、
20…燃焼ファン、 21…点火プラグ、 22…フレームロッド、
23…第1熱交換器、 24…第2熱交換器、 25…COセンサ、
26…ドレン受け、 27…排液管、 28…中和器、
30…水量センサ、 31…給水温度センサ、 32…熱交出口温度センサ、
33…バイパス通路、 34…バイパスサーボ、 35…出湯温度センサ、
36…湯量サーボ。